説明

レーダ用変調方法及び回路

【課題】レーダでは搬送波やイメージ波を抑圧しなければ雑音としてシステムに多大な影響を与えるため、当該搬送波やイメージ波を抑圧する変調方法と回路を提供する。
【解決手段】ギルバートセル型のミキサ30を用い、I信号を分割してI信号若しくはQ信号のいずれか側だけに、送信信号をそのまま入力する。送信信号をそのまま入力されなかったQ信号には、分割されたI信号の送信信号を微分器4に通過させた後に、Q信号に入力する。結果、ギルバートセル型のミキサの特性により搬送波やイメージ波を抑圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にCW波を送信するレーダ装置の変調方法、およびこの送信装置を用いたレーダ用変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波やミリ波帯で用いられる無線送信装置は、局部発振器と送信信号のミキシングによってアップコンバートされることが多い。ミキシングの方法として多種のミキサやアップコンバートの方法が考案されており、局部発振器の搬送波と変調装置で発振された信号若しくはそのイメージ信号を抑圧される方法も考案されている。
【0003】
レーダの分野においても同様の技術が採用されているが、CWレーダでは搬送波やイメージ波は十分に抑圧しないと雑音の原因となり、受信時にイメージ波帯域を抑圧して雑音を緩和する改善が必要となる。その一例として、特許文献1の記載を参考にすることができる。
【0004】
また、近年はデジタル処理された振幅が複雑に時間変化する送信信号を変調信号として使用することも多く、デジタル処理された周波数が低い送信信号の場合も搬送波及びイメージ波の抑圧方法は不可欠である。その一例として、特許文献2の記載を参考にすることができる。
【特許文献1】特開平8−248124号公報
【特許文献2】特開2006−238243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、CWレーダでは搬送波やイメージ波を抑圧しなければ雑音としてシステムに多大な影響を与える。本発明の課題は、デジタル処理された比較的周波数の低い送信信号においても、送信時における搬送波やイメージ波を容易に抑制する変調方法、変調回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複雑な方法を用いることなく、ギルバートセル型のミキサを用いることで、より簡便に搬送波及びイメージ波を抑制する変調方法を提供する。
【0007】
本発明の変調方法のある実施の形態は、前記ギルバートセル型のミキサを用い、I信号を分割してI信号若しくはQ信号のいずれか側だけに、送信信号をそのまま入力する。
例えば、I信号に送信信号をそのまま入力したものとする。送信信号をそのまま入力されなかったQ信号には、分割された片方のI信号の送信信号を微分又は積分する電子回路を通過させた後に、Q信号に入力する。
【0008】
ギルバートセル型のミキサはその特性上、I信号と、Q信号の位相に90度の差が生じていれば搬送波及びイメージ波を抑制する変調を行う。
CWレーダ、FMCWレーダ、チャープレーダなどCW波の周波数偏差のみを利用するレーダ装置においては送信時に電波の振幅を変動させることを必要としないため、送信信号を微分又は積分する手段を備え、I信号と、Q信号の位相を相対的に90度シフトすることにより、搬送波及びイメージ波を抑制する変調を行うものである。ギルバートセル型ミキサにおいて、搬送波及びイメージ波の抑止が十分でない場合は更にBPFにて不要波を抑制する。
【0009】
ある実施の形態では、ギルバートセル型のミキサ出力を中間周波数のIF信号とし、IF信号を更にアップコンバート若しくは逓倍してRF信号として変調を行うものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デジタル処理された比較的周波数の低い送信信号においても、送信時における搬送波やイメージ波を容易に抑制する変調を実現できるという特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。図1及び図2は変調回路の構成図の一例である。
【0012】
この変調回路では送信信号を例えば、DDS(Direct Digital Synthesizer)1とし、BPF2にて所望のCW(Continuous Wave)波となるようにしている。送信信号はDDSに限らず、CW波が生成できれば、何でもよくVCOでも各種発振回路でも構わない。
【0013】
送信信号は分配器3にてI信号用とQ信号用に分配される。I信号用はギルバートセル30のミキサ6に直接入力されるが、Q信号用に分配された信号は微分器4に入力される。ここで、微分器4は送信信号を微分できれば何でもよく、RCフィルタでも、OPアンプを用いたアクティブフィルタや位相器でもよい。微分器4にて、微分され位相が90度シフトした送信信号はQ信号としてギルバートセル30のミキサ7に入力される。
【0014】
図2では、微分器4の代わりに、積分器14を用いた例を図示した。I信号に対して、Q信号の位相が90度シフトすれば、位相が進もうが、遅れようがレーダ波の位相が変化するものの、レーダ波の周波数には影響を及ぼさないためレーダシステム全体としては問題とはならない。
【0015】
図1及び図2に破線で図示したギルバートセル30、31は公知のミキシング方式であり、半導体集積回路の状態で広く利用されている。図1及び図2に破線で図示したギルバートセル30、31は基本的に同じ動作をするため、以下、図1を例にとって説明する。
【0016】
局部発振器5は搬送波を生成するための発振器である。90度ハイブリッド8において、90度の位相差を生じさせミキサ6、7に搬送波を供給する。ミキサ6、7はI信号及びQ信号とミキシングされ、合成器9にて合成される。
【0017】
合成波はBPF10にて希望波のみを通過させ、不要波を抑制して出力される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、簡便な構成により搬送波及びイメージ波を抑制する変調を実現することができる。本発明の変調方法又は変調回路はCWレーダ装置等、周波数偏差を利用するレーダに広く適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】微分器を用いた変調回路構成図
【図2】積分器を用いた変調回路構成図
【符号の説明】
【0020】
1,11 DDS
2,10,12,20 BPF
3,13 分配器
4 微分器
5 積分器
6,7,16,17 ミキサ
8,18 90度ハイブリッド
9,19 合成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号と該送信信号よりも周波数が高い局部発振信号とを合成して前記送信信号をベースバンドの周波数帯から送信周波数帯へアップコンバートする周波数変換回路であって、前記周波数変換回路は、ギルバートセル型のミキサ回路を備える直交変調回路であり、
前記ミキサ回路の同相成分のI信号を二分割して、分割後の片方を微分器により微分することにより位相を90度シフトして、
基本波と直交成分のQ信号を生成して、同相成分のI信号と、直交成分のQ信号を前記ミキサ回路に入力することで変調を行う、変調方法。
【請求項2】
請求項1に記載の微分器を積分器とすることを特徴とする請求項1に記載の変調方法。
【請求項3】
前記周波数変換回路に入力される前記局部発振信号を生成する発振回路と、
該発振回路により生成された前記局部発振信号の位相を90度シフトして前記ミキサ回路へ供給する位相回路と、
同相成分のI信号を二分割して、分割後の片方の位相を90度シフトして前記ミキサ回路へ供給する位相回路とが、
前記周波数変換回路と同一の半導体チップに形成されている請求項1又は2に記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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