説明

レーダ装置、および、アンテナ角度調整方法

【課題】アンテナの角度調整中に生じた要因に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】アンテナの傾き角度に基づいて、アンテナの角度を目的角度に調整するレーダ装置において、アンテナの角度調整手段により調整されるアンテナの目的角度への調整の判定基準となる調整予測値を算出して、この調整予測値とアンテナの角度変化に伴う計測値との誤差に基づいて調整不良を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に搭載されたレーダ装置のアンテナ角度を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は車両に搭載された場合、他の車両や路側の設置物などの物体を検出する。そして、これらの物体を検出するためには、アンテナから送信された送信波の物体での反射波の反射強度が一定値以上となるようなアンテナ角度にビーム軸方向を調整する必要がある。なお、アンテナ角度の調整とはアンテナ面に垂直な方向のビーム軸の角度調整をいう。
【0003】
ここで、レーダ装置の車両への取り付けは車種ごとに異なる車両の限られたスペースで行うことから、その取り付け位置や作業者の技量により、一定値以上の反射強度を得られる所望のアンテナ角度とはならない場合がある。
【0004】
そのため、所望のビーム軸方向を得るアンテナ角度を予め算出し、その角度を目的角度としてレーダ装置の記憶装置に記憶しておき、アンテナの現在角度から目的角度までチルトセンサとモータを使用して自動調整する技術が知られている。
【0005】
また、移動体用物体検知装置において、受光レンズとそのレンズホルダが揺動可能に保持されており、所定時間経過して揺動が収まった後に、レンズホルダを固定して軸調整する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
さらに、レーダヘッドの車両への取付け角度の基準値からのズレ量を監視し、このズレ量が所定値以上になるとその旨をドライバーに通知したり、表示する技術が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−156948号公報
【特許文献2】特開平10−132920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アンテナ角度の調整を車両工場やディーラーなどで行う場合で、レーダ装置を車両へ取り付けた後のアンテナ角度調整時に作業者の車両ドアの開閉や車両への乗り降りなどの車両への接触による振動が車両に加わることがある。その結果、アンテナ角度を検出するチルトセンサの出力が変動してしまい、正確なアンテナ角度の調整ができない場合がある。
【0009】
また、特許文献1に開示されている技術は、単にビーム軸の調整を行う工程で受光レンズの揺れが収まるのを待ってから処理を行うものである。さらに、特許文献2に開示されている技術は、所定のアンテナ角度に対する角度のずれが起こった場合の処理であり、どちらもアンテナ角度を調整している最中のアンテナ角度の誤差を検出するものではない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、アンテナ角度調整中に生じた要因に伴う誤った角度調整を防止し、目的角度への正確な角度調整を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、アンテナ角度を調整可能なレーダ装置であって、
調整の目的角度に対するアンテナの傾き角度を検出する傾き角度検出手段と、前記傾き角度に基づいて、アンテナ角度を前記目的角度に調整する角度調整手段と、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整予測値を算出する調整予測値算出手段と、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度まで調整する間のアンテナの角度変化に伴う計測値を検出する計測値検出手段と、前記調整予測値と前記計測値との誤差に基づいて調整不良を検出する検出手段と、を備える。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記調整予測値は、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる所定時間ごとのアンテナ予測角度であって、前記計測値は、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度まで調整する間の前記所定時間ごとのアンテナ角度である。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記調整予測値は、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整完了予測時間であって、前記計測値は、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度までの調整完了時間である。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載のレーダ装置おいて、前記調整予測値は、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる所定時間ごとのアンテナ予測角度、および、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整完了予測時間であって、前記計測値は、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度まで調整する間の前記所定時間ごとのアンテナ角度、および、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度までの調整完了時間であって、前記検出手段は前記所定時間ごとのアンテナ予測角度と前記所定時間ごとのアンテナ角度との誤差、および、前記調整完了予測時間と前記調整完了時間との誤差に基づいて、調整不良を検出する。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至5のいずれか記載のレーダ装置において、前記誤差が所定範囲を超えた場合にその旨を報知する報知手段を、さらに備える。
【0016】
また、請求項6の発明は、アンテナ角度を調整可能なアンテナ調整方法であって、調整の目的角度に対するアンテナの傾き角度を検出する傾き角度検出工程と、前記傾き角度に基づいて、アンテナ角度を前記目的角度に調整する角度調整工程と、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整予測値を算出する調整予測値算出工程と、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度まで調整する間のアンテナの角度変化に伴う計測値を検出する計測値検出工程と、前記調整予測値と前記計測値との誤差に基づいて調整不良を検出する検出工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし5の発明によれば、アンテナ角度の調整予測値とアンテナの角度変化に伴う計測値との誤差を検出しながらアンテナの角度調整を行うことで、角度調整中に生じた要因に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行える。
【0018】
また、特に請求項2の発明によれば、アンテナの予測角度とアンテナ角度との誤差を検出しながらアンテナの角度調整を行うことで、角度調整中の時間ごとのアンテナ角度を細かく確認できる。これにより角度調整中に生じた要因に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行える。
【0019】
また、特に請求項3の発明によれば、アンテナの角度調整開始から完了までの時間と調整完了予測時間との誤差を検出することで、調整時間差に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行える。
【0020】
また、特に請求項4の発明によれば、アンテナ角度と予め算出したアンテナの予測角度との誤差を検出しながらアンテナの角度調整を行うことで、角度調整中の時間ごとのアンテナ角度を細かく確認したり、アンテナの角度調整開始から完了までの時間と調整完了予測時間との誤差を検出することで、調整時間差に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行える。これにより角度調整中に生じた要因に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行える。
【0021】
さらに、特に請求項5の発明によれば、アンテナの角度調整の誤差が所定範囲を超えた場合に車両工場やディーラーなどの作業者に対して警報を発する。これにより、レーダ装置2の誤動作を未然に防止でき、車両1を利用するユーザに対して安全な車両制御を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、レーダ装置の構成を示した図である。
【図2】図2は、レーダ装置を車両に搭載した構成を示した図である。
【図3】図3は、レーダ装置の内部構造を示した図である。
【図4】図4は、レーダ装置のブロック構成図である。
【図5】図5は、アンテナ角度調整の際に角度誤差が発生している状態を示した図である。
【図6】図6は、アンテナ角度調整の際に調整時間誤差が発生している状態を示した図である。
【図7】図7は、第1のアンテナ角度調整処理のフローチャートである。
【図8】図8は、第2のアンテナ角度調整処理のフローチャートである。
【図9】図9は、第3のアンテナ角度調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面にしたがって本発明の実施形態にについて説明する。
【実施例1】
【0024】
<1.システム構成>
図1は、アンテナ調整を行うレーダ装置2の構成を説明する図である。レーダ装置2は筐体12と筐体12の内部に備えられたアンテナ14を有している。筐体12は固定ボルト13により車体に固定される。なお、本実施形態のレーダ装置2は水平な地平面g1と平行に位置している状態で、アンテナ14のアンテナ面が地平面g1と垂直である場合に、このアンテナ14のビーム軸方向が水平面f1と平行であるものとする。そして、レーダ装置2がこのような状態でビーム軸方向が水平面f1と平行である場合を、物体からの反射波が一定値以上の反射強度を得られるアンテナ14の目的角度であるとして以下の説明を行う。
【0025】
アンテナ14は、前面にアンテナ素子が配置されたアレイアンテナやパッチアンテナなどの平面アンテナで構成され、レドーム15を介してアンテナ14の垂直方向(水平面と平行)にビーム軸方向を形成して送信波を送信し、物体からの反射波を受信する。また、このアンテナ14は送信された送信波の物体での反射波を所定の反射強度で受信するようにアンテナ角度を調整できる。このアンテナ角度の調整の詳細については後述する。
【0026】
図2はレーダ装置2を車両1に搭載した構成を示す図である。本実施形態ではレーダ装置2は、搭載する車両1の種類ごとに異なるレーダ装置2の設置スペースや作業者の技量により、レーダ装置2は地平面g1からθ1の角度傾いた状態で車両に取り付けられている。そのため、アンテナ角度も水平面と平行なビーム軸方向であるビーム軸b1からθ1傾いたアンテナの傾き角度を有するビーム軸方向であるビーム軸b2となっている。
【0027】
このアンテナの傾き角度の結果、アンテナ14の角度がOLE_LINK2物体に対して一定値以上の反射強度を得られるビーム軸方向OLE_LINK2とはなっていない。なお、ここでいう一定値以上の反射強度とはレーダ装置2の検出範囲内に存在する物体の距離、相対速度、および、角度を検出できる反射強度をいう。
【0028】
次に、アンテナ14の角度を調整前のアンテナ角度から目的角度に調整する構成について説明する。図3はレーダ装置の内部構造を示した図である。また、図4はレーダ装置のブロック構成図である。図3に示したレーダ装置の内部構造は図1に示したレーダ装置2のIII−III面による断面図である。
【0029】
アンテナ14は、一方の端部で傾動軸22より筐体12に傾動可能に連結されるとともに、他方の端部でピン20により摺動軸18cと回動可能に連結される。アンテナの角度を変化させる調節部18は、モータ18aと、モータ18aの回転速度を一定比率で減速するとともにその回転運動を摺動軸18cの往復駆動に変換する減速機構18bと、摺動軸18cにより構成される。
【0030】
調節部18が矢印D2で示すように摺動軸18cを往復駆動すると、摺動軸18cの往復に伴ってアンテナ14の端部が傾動軸22を中心に矢印D1で示すように傾動し、アンテナ角度が変化して角度調整が行われる。
【0031】
アンテナ14の背面には、アンテナ14の角度を検出するアンテナ角度検出部26が設けられている。このアンテナ角度検出部26の例としては、チルトセンサやヨーレートセンサがある。また、アンテナ14から出力される送信波の送信信号を生成してアンテナ素子に供給すると共に、アンテナ素子からの受信信号を処理する送受信回路24がアンテナ14の背面に備えられる。
【0032】
さらに、筐体12の内部には、レーダ装置2の制御を行い、物体検出処理を行うCPU(Central Processing Unit)16a、CUP16aが物体検出処理を行うためのデータを記憶しているROM(Read Only Memory)16b、および、物体検出処理を行う場合にデータを一時的に保存するRAM(Random Accsess Memory)16cを備えたマイクロコンピュータと、モータドライバとで構成される制御部16が備えられる。制御部16は、調節部18に対しモータの駆動を指示すると共にその駆動量を決定する。
【0033】
モータの駆動量は、予めROM16bに記憶されたアンテナ14の目的角度をCPU16aが読み出して、アンテナ角度検出部26から入力される調整前のアンテナ角度を検出して、目的角度と調整前のアンテナ角度との角度差に基づいて決定される。
【0034】
制御部16は、物体検出処理においては送受信回路24の動作を制御するとともに、送受信回路24が処理したアンテナ14の送受信信号に基づいて物体の位置、相対速度、および、角度などの情報を検出する。そして、検出した物体情報を制御部16と電気的に接続されている車両制御装置30へ送信する。
【0035】
また、制御部16はアンテナの角度調整において、調整前のアンテナ角度をアンテナ角度検出部26より検出し、目的角度を制御部16内のメモリ16bから読み出す。そして、調整前のアンテナ角度と目的角度の情報から、調整前のアンテナ角度から目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる時間ごとのアンテナ予測角度を算出する。さらに、調整予測値であるアンテナ予測角度と、調整前のアンテナ角度から目的角度まで調整する間の時間ごとのアンテナ角度との誤差を検出する。
【0036】
また、制御部16はアンテナ14の角度調整において、調整前のアンテナ角度をアンテナ角度検出部26を用いて検出し、目的角度を制御部16内のROM16bから読み出す。そして、調整前のアンテナ角度と目的角度の情報から目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整完了予測時間を算出する。さらに、調整予測値である調整完了予測時間と、調整前のアンテナ角度から目的角度までの調整完了時間との誤差を検出する。
【0037】
そして、アンテナ角度調整において、予め設定されている誤差許容範囲を超えた場合は、レーダ装置2の内部または外部に設けられた警報装置を作動させて、ユーザに対して角度調整誤差が発生していることを報知するとともに、アンテナ14の角度調整を停止させる信号を調節部18に送る。
【0038】
車両制御装置30は、制御部16と電気的に接続され、ブレーキ操作やアクセル操作などの各種の車両制御を実行する指示を各種車両装置に対して行う。この車両制御装置30は、パーソナルコンピュータなどの検査端末40と通信可能に接続される。
【0039】
検査端末40は、アンテナ角度調整時にアンテナ角度調整を開始するための指示を車両制御装置30を経由してレーダ装置2の制御部16に送信したり、アンテナ角度調整の状況をユーザに表示する表示装置の役割も有する。なお、上述の制御部16がアンテナ角度調整の際に行う、調整前のアンテナ角度から目的角度まで調整する間の時間ごとのアンテナ角度との誤差検出処理や、調整予測値である調整完了予測時間と、調整前のアンテナ角度から目的角度までの調整完了時間との誤差を検出する処理を検査端末40が行うこととしてもよい。
<2.アンテナ角度調整の際の誤差検出>
次に、角度調整における誤差を検出する具体的な処理について説明する。図5はアンテナ角度調整の際に角度誤差が発生している状態を示した図である。例えばアンテナ14の角度調整時に、作業者が車両1のドアの開閉を行ったことに起因してアンテナ角度に調整誤差が発生することを示したグラフである。また、図6はアンテナ角度調整の際に調整時間誤差が発生している状態を示した図である。例えば、アンテナ14の角度調整時に作業者による車両への乗り降りなどの車両への接触に起因してアンテナ角度に調整誤差が発生することを示したグラフである。各グラフの縦軸は角度、横軸は時間を示している。
【0040】
アンテナ14の角度調整を行う処理は、アンテナ14の現在角度である調整前アンテナ角度θaをアンテナ角度検出部26により検出する。次に、目的角度θbを制御部16のROM16bから読み出して、図5に示すように、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまでの変化する所定時間ごとの調整予測値であるアンテナ予測角度とする。このアンテナ予測角度は目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる。なお、図5に示すように、このアンテナ予測角度から許容されうる誤差の範囲の誤差許容範囲を設けており、この誤差許容範囲を超えた場合に警報による報知を行ったり、アンテナ14の角度調整を停止する。
【0041】
また、図6に示すように調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまでに調整完了する予測時間の調整完了予測時間についても、許容されうる誤差の範囲の誤差許容範囲を設けている。なお、調整完了予測時間は、アンテナの調整角度と、アンテナ角度の調整速度の情報に基づいて、制御部16のCPU16aが算出する。のこの調整完了予測時間も目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となり、誤差許容範囲を超えた場合に、警報による報知を行ったり、アンテナ14の角度調整を停止させる。
【0042】
このように、図5はアンテナ予測角度を調整予測値とし、図6では調整完了予測時間を調整予測値として説明する。図5では、調整前アンテナ角度θaから調整を開始し、所定時間ごと(例えば、10mmsecごと)にアンテナ角度検出部26が検出する計測値のアンテナ角度θcとアンテナ予測角度との誤差を算出している。具体的にはグラフの時間t1からt3まではアンテナ角度θcとアンテナ予測角度との誤差はなく推移しているが、t4は誤差許容範囲を超える誤差が検出されている。そのため、誤差許容範囲を超える誤差が発生した時点でアンテナ14の目的角度への調整に誤差が生じたとして、警報を発生させたり、角度調整を停止する。これにより、OLE_LINK1レーダ装置2の誤動作を未然に防止でき、車両1を利用するユーザに対して安全な車両制御を提供できる。OLE_LINK1例えば、アンテナ角度の調整を車両工場やディーラーなどで行う場合で、レーダ装置を車両へ取り付けた後のアンテナ角度調整時に作業者の車両ドアの開閉による振動が車両に加わった場合などの誤った角度調整を防止できる。
【0043】
なお、1回の検出で誤差許容範囲を超えたとして調整作業を停止させたり、警報を発生させるのではなく、t1〜t6までの複数の時間ごとのタイミングでアンテナ角度検出部26がアンテナ角度θcを検出し、それぞれの時間で検出された角度と角度推移予測値との誤差が所定値以上で、かつ、その誤差が複数回算出されている場合に、アンテナ14の目的角度への調整に誤差が生じたとして、アンテナの調整を停止させたり、警報を発生させることもできる。例えば、図5ではt1〜t6までの6回の検出のうち誤差が誤差許容範囲を超える検出がt4とt6の複数回算出されていることから、警報を発生させたり、角度調整を停止させたりする。
【0044】
図6では調整前アンテナ角度θaから調整を開始し、目的角度θbとなるまでの調整完了予測時間tyを予め算出しておく。そして、目的角度θbとなった際の調整完了時間txが調整完了予測時間tyと同一、または、誤差許容範囲内であれば、目的角度θbに調整完了したとする。
【0045】
また、本実施形態では調整完了時間txが、調整完了予測時間tyと同一ではなく、また誤差許容範囲内でもない場合は、アンテナ14の目的角度への調整に誤差が生じたとして、警報を発生させたり調整作業を停止させたりする。これにより、レーダ装置2の誤動作を未然に防止でき、車両1を利用するユーザに対して安全な車両制御を提供できる。例えばアンテナ角度の調整を車両工場やディーラーなどで行う場合で、レーダ装置を車両へ取り付けた後のアンテナ角度調整時に作業者の車両への乗り降りなどの車両への接触よる振動が車両に加わった場合の誤った角度調整を防止できる。
<3.第1のアンテナ角度調整の動作>
次に、第1アンテナ角度調整の際の誤差検出の動作について、図7の処理フローチャートを用いて説明する。アンテナ角度調整の誤差検出を行う場合に、検査端末40を車両制御装置30に接続して、レーダ装置2の電源をON状態として調整動作を開始する(ステップS101)。
【0046】
調整を行うために必要な情報としてROM16bから物体に対して一定以上の反射強度を得られるビーム軸方向となるアンテナ14の目的角度θbを読み出す(ステップS102)。
【0047】
そして、調整前アンテナ角度θaをアンテナ角度検出部26により計測し(ステップS103)、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまでの変化を予測したアンテナ予測角度を調整予測値として算出する(ステップS104)。また、アンテナ予測角度の算出に伴い、所定の角度範囲の誤差許容範囲を設ける。
【0048】
次に、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまで調整するのにかかる時間である調整完了予測時間tyを算出する(ステップS105)。その後、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまでのアンテナ14の角度調整を開始する(ステップS106)。そして、調整開始と同時に調整時間のカウントを開始(ステップS107)し、調整中のアンテナの時間ごとの角度θcを計測してアンテナの角度変化に伴う計測値を検出する(ステップS108)。
【0049】
時間ごとのアンテナ角度θcは時間ごとの予測角度θxと比較して、θcがθxと同一または誤差許容範囲内であれば(ステップS109がYes)、時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbと同一または誤差許容範囲内かを判定する(ステップS110)。
【0050】
なお、時間ごとのアンテナ角度θcと時間ごとの予測角度θxとを比較して、θcがθxと同一または誤差許容範囲内でなければ(ステップS109がNo)、車両工場やディーラーなどの作業者に対して警報の出力(ステップS112)を行った後、アンテナ角度調整を停止する(ステップS113)。
【0051】
ステップS110の処理で時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbの範囲内にない場合(ステップS110がNo)は、調整時間のカウントを引き続き行いながら(ステップS107)、時間ごとのアンテナ角度θcを計測する処理(ステップS108)を継続する。また、時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbと同一、または、誤差検出範囲内にある場合(ステップS110がYes)は、アンテナ14の調整を終了させ、予め予測した調整完了予測時間tyが調整完了時間txと同一または誤差許容範囲内かどうかを判断する(ステップS111)。
【0052】
そして、調整完了時間txと同一または誤差許容範囲内であれば(ステップS111がYes)、アンテナ角度調整を停止する(ステップS113)。また調整完了時間txと同一または誤差許容範囲内でなければ(ステップS111がNo)、車両工場やディーラーなどの作業者に対して警報を出力して(ステップS112)、アンテナ角度調整を停止する(ステップS113)。
【0053】
このようにアンテナ角度の調整予測値とアンテナの角度変化に伴う計測値との誤差を検出しながらアンテナの角度調整を行うことで、角度調整中に生じた要因に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行える。例えばアンテナ角度の調整を車両工場やディーラーなどで行う場合で、レーダ装置を車両へ取り付けた後のアンテナ角度調整時に作業者の車両ドアの開閉や車両への乗り降りなどの車両への接触による振動が車両に加わった場合などの誤った角度調整を防止できる。また、レーダ装置の誤動作を未然に防止でき、車両1を利用するユーザに対して安全な車両制御を提供できる。
【0054】
これまで述べた第1のアンテナ角度調整処理では、図5に示すようにアンテナ角度調整の際に角度誤差が発生している状態と、図6に示すようにアンテナ角度調整の際に調整時間誤差が発生している状態のいずれの場合にも誤差検出を行う処理について述べた。これとは別に、アンテナ角度調整の最中に角度誤差が発生している場合に誤差を検出することもできる、また、アンテナ角度調整の最中に調整時間誤差が発生している場合に誤差を検出することもできる。これらの処理について、それぞれ第2のアンテナ角度調整処理、第3のアンテナ角度調整処理として以下に説明する。
<4.第2のアンテナ角度調整の動作>
図8に示す第2のアンテナ角度調整は、アンテナ角度調整の場合に角度誤差が発生している場合に誤差を検出するものである。アンテナ角度調整の誤差検出を行う場合に、検査端末40を車両制御装置30に接続して、レーダ装置2の電源をON状態として調整動作を開始する(ステップS201)。
【0055】
調整を行うために必要な情報としてROM16bから物体に対して一定以上の反射強度を得られるビーム軸方向となるアンテナ14の目的角度θbを読み出す(ステップS202)。
【0056】
そして、調整前アンテナ角度θaをアンテナ角度検出部26により計測し(ステップS203)、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまでの変化を予測したアンテナ予測角度を調整予測値として算出する(ステップS204)。また、アンテナ予測角度の算出に伴い、所定の角度範囲の誤差許容範囲を設ける。
【0057】
次に、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまでのアンテナ14の角度調整を開始する(ステップS205)。そして、調整中のアンテナ14の時間ごとの角度θcを計測する(ステップS206)。
【0058】
時間ごとのアンテナ角度θcは時間ごとの予測角度θxと比較して、調整中のアンテナのθcがθxと同一または誤差許容範囲内であれば(ステップS207がYes)、時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbと同一または誤差許容範囲内かを判定する(ステップS208)。
【0059】
なお、時間ごとのアンテナ角度θcと時間ごとの予測角度θxとを比較して、θcがθxと同一または誤差許容範囲内でなければ(ステップS207がNo)、車両工場やディーラーなどの作業者に対して警報の出力(ステップS209)を行った後、アンテナ角度調整を停止する(ステップS210)。
【0060】
ステップS208の処理で時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbの範囲内にない場合(ステップS208がNo)は、時間ごとのアンテナ角度θcを計測する処理(ステップS206)を継続する。また、時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbと同一、または、誤差検出範囲内にある場合(ステップS208がYes)は、アンテナ14の角度調整を停止する(ステップS210)。
【0061】
このようにアンテナの予測角度とアンテナ角度との誤差を検出しながらアンテナの角度調整を行うことで、角度調整中の時間ごとのアンテナ角度を細かく確認できる。これにより角度調整中に生じた要因に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行える。例えば、アンテナ角度の調整を車両工場やディーラーなどで行う場合で、レーダ装置を車両へ取り付けた後のアンテナ角度調整時に作業者の車両ドアの開閉による振動が車両に加わった場合などの誤った角度調整を防止できる。
<5.第3のアンテナ角度調整の動作>
図9に示す第3のアンテナ角度調整は、アンテナ角度調整の場合に時間誤差が発生している場合に誤差を検出するものである。検査端末40を車両制御装置30に接続して、レーダ装置2の電源をON状態として調整動作を開始する(ステップS301)。
【0062】
調整を行うために必要な情報としてROM16bから物体に対して一定以上の反射強度を得られるビーム軸方向となるアンテナ14の目的角度θbを読み出す(ステップS302)。
【0063】
そして、調整前アンテナ角度θaをアンテナ角度検出部26により計測し(ステップS303)、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまでの変化を予測したアンテナ予測角度を調整予測値として算出する(ステップS304)。また、アンテナ予測角度の算出に伴い、所定の角度範囲の誤差許容範囲を設ける。
【0064】
次に、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまで調整するのにかかる時間である調整完了予測時間tyを算出する(ステップS305)。その後、調整前アンテナ角度θaから目的角度θbまでのアンテナ14の角度調整を開始する(ステップS306)。そして、調整開始と同時に調整時間のカウントを開始(ステップS307)し、時間ごとの角度θcを計測してアンテナの角度変化に伴う計測値を検出する(ステップS308)。
【0065】
そして、時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbと同一または誤差許容範囲内かを判定する(ステップS309)。この処理で時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbの範囲内にない場合(ステップS309がNo)は、調整時間のカウントを引き続き行いながら(ステップS307)、調整中のアンテナ角度θcを計測する処理(ステップS308)を継続する。また、時間ごとのアンテナ角度θcが目的角度θbと同一、または、誤差検出範囲内にある場合(ステップS309がYes)は、アンテナ14の調整を終了させ、予め予測した調整完了予測時間tyが調整完了時間txと同一または誤差許容範囲内かどうかを判断する(ステップS310)。
【0066】
調整完了予測時間tyが調整完了時間txと同一または誤差許容範囲内であれば(ステップS310がYes)、アンテナ角度調整を停止する(ステップS312)。また調整完了時間txと同一または誤差許容範囲内でなければ(ステップS310がNo)、車両工場やディーラーなどの作業者に対して警報を出力して(ステップS311)、アンテナ角度調整を停止する(ステップS312)。
【0067】
このようにアンテナの角度調整開始から完了までの時間と調整完了予測時間との誤差を検出することで、調整時間差に伴う誤った角度調整を防止し、目的とする角度への正確な角度調整を行える。例えばアンテナ角度の調整を車両工場やディーラーなどで行う場合で、レーダ装置を車両へ取り付けた後のアンテナ角度調整時に作業者の車両への乗り降りなどの車両への接触よる振動が車両に加わった場合の誤った角度調整を防止できる。
【符号の説明】
【0068】
1・・・・・車両
2・・・・・レーダ装置
12・・・・筐体
14・・・・アンテナ
15・・・・レドーム
16・・・・制御部
26・・・・アンテナ角度検出部
30・・・・車両制御装置
40・・・・検査端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ角度を調整可能なレーダ装置であって、
調整の目的角度に対するアンテナの傾き角度を検出する傾き角度検出手段と、
前記傾き角度に基づいて、アンテナ角度を前記目的角度に調整する角度調整手段と、
前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整予測値を算出する調整予測値算出手段と、
調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度まで調整する間のアンテナの角度変化に伴う計測値を検出する計測値検出手段と、
前記調整予測値と前記計測値との誤差に基づいて調整不良を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記調整予測値は、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる所定時間ごとのアンテナ予測角度であって、
前記計測値は、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度まで調整する間の前記所定時間ごとのアンテナ角度であることを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記調整予測値は、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整完了予測時間であって、
前記計測値は、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度までの調整完了時間であることを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーダ装置おいて、
前記調整予測値は、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる所定時間ごとのアンテナ予測角度、および、前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整完了予測時間であって、
前記計測値は、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度まで調整する間の前記所定時間ごとのアンテナ角度、および、調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度までの調整完了時間であって、
前記検出手段は前記所定時間ごとのアンテナ予測角度と前記所定時間ごとのアンテナ角度との誤差、および、前記調整完了予測時間と前記調整完了時間との誤差に基づいて、調整不良を検出することを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項1乃至5のいずれか記載のレーダ装置において、
前記誤差が所定範囲を超えた場合にその旨を報知する報知手段を、
さらに備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
アンテナ角度を調整可能なアンテナ調整方法であって、
調整の目的角度に対するアンテナの傾き角度を検出する傾き角度検出工程と、
前記傾き角度に基づいて、アンテナ角度を前記目的角度に調整する角度調整工程と、
前記目的角度への予定した調整が行われているか否かの判定基準となる調整予測値を算出する調整予測値算出工程と、
調整前の前記アンテナ角度から前記目的角度まで調整する間のアンテナの角度変化に伴う計測値を検出する計測値検出工程と、
前記調整予測値と前記計測値との誤差に基づいて調整不良を検出する検出工程と、
を備えることを特徴とするアンテナ調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−58817(P2011−58817A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205525(P2009−205525)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】