説明

レーダ装置

【課題】超分解能ドップラー周波数の推定精度を改善したレーダ装置を得る。
【解決手段】複数の送信パルスを時系列的に繰り返し出射する送信機1、送信アンテナ2と、複数の送信パルスが目標3で反射された反射パルスを複数の受信パルスとして受信する受信アンテナ4、受信機5と、複数の受信パルスに基づいて、目標3の移動にともなうドップラー周波数を推定する超分解能ドップラー周波数推定手段8とを備えている。超分解能ドップラー周波数推定手段8は、複数の受信パルスの位相変化に基づいて、ドップラー周波数を超分解能推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動する目標を検出するためのレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動する目標(目標の位置、方向、相対距離、相対速度など)を検出するレーダ装置として、ドップラー周波数推定処理を適用した技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
図21は特許文献1に記載された従来のレーダ装置を概略的に示すブロック図であり、ドップラー周波数推定処理を適用した際の構成例を示している。
【0003】
図21において、従来のレーダ装置は、送信機1と、送信アンテナ2と、目標3からの電波を受信する受信アンテナ4と、受信機5と、A/D変換器6と、パルス検出手段7と、パルス内超分解能ドップラー周波数推定手段25と、パルスヒット方向平均手段26とを備えている。
【0004】
パルス内超分解能ドップラー周波数推定手段25は、目標3の移動によるパルスの位相変化に基づきドップラー周波数を超分解能推定する。
パルスヒット方向平均手段26は、パルスごとに推定されたドップラー周波数を平均化処理する。
【0005】
図22は図21に示したレーダ装置の動作を示すタイミングチャートであり、図23は図21内のパルス内超分解能ドップラー周波数推定手段25の内部構成を示すブロック図である。
図23において、パルス内超分解能ドップラー周波数推定手段25は、相関行列生成手段27と、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)用固有ベクトル算出手段11と、MUSIC処理手段12とを備えている。
【0006】
次に、図21〜図23を参照しながら、従来のレーダ装置の動作について説明する。
まず、送信機1はパルスを送信し、図22のように、パルス繰り返し周期TPRIとしてNヒットの送受信を行う。
【0007】
送信パルスは、目標数Kの目標3で反射して、時間遅延τで受信される。
A/D変換器6は、レンジビンを単位として時間間隔Tでサンプリングを行い、A/D変換した信号(nヒット目におけるnレンジビンの出力信号snr,np)を出力する。
【0008】
A/D変換器6の出力信号snr,npは、パルス検出手段7に伝達される。
パルス検出手段7は、A/D変換器6の出力信号の振幅値|snr,np|とスレッショルドとを比較して、パルスが含まれる範囲を検出する。
【0009】
たとえば、nr0サンプリング目からnr0+Ngサンプリング目までの範囲にパルスが検出された場合、パルス検出手段7は、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npを出力する。
検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npは、パルス内超分解能ドップラー周波数推定手段25に伝達される。
【0010】
パルス内超分解能ドップラー周波数推定手段25において、まず、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npは、相関行列生成手段27に伝達される。
相関行列生成手段27は、以下の式(1)により、相関行列Rを生成する。
【0011】
【数1】

【0012】
式(1)においては、目標信号成分間の相関を表す行列成分のランクを回復するため行列Rnp,mを平均化するためのスムージング処理が行われる。
また、式(1)において、Mは相関行列Rの次元数、qnp,mはベクトルqnp,mの共役転置を表している。
【0013】
相関行列Rは、MUSIC用固有ベクトル算出手段11に伝達される。
MUSIC用固有ベクトル算出手段11は、相関行列Rの固有値g(1),g(2),・・・,g(M)(g(1)>g(2)>・・・>g(M))と、固有値g(m)(1≦m≦M)に対応する固有ベクトルe(m)とを求め、固有値g(m)の大きさなどから目標数Kを推定して、固有ベクトルe(K+1),e(K+2),・・・,e(M)を出力する。
【0014】
固有ベクトルe(K+1)〜e(M)は、MUSIC処理手段12に伝達される。
MUSIC処理手段12は、固有ベクトルe(K+1)〜e(M)を雑音空間として、MUSIC処理を行う。
具体的には、ドップラー周波数fに対応するステアリングベクトルa(f)を、以下の式(2)により生成する。
【0015】
【数2】

【0016】
また、固有ベクトルe(K+1)〜e(M)のすべてに直交するK種類のステアリングa(f)を求める。このときのステアリングベクトルパラメータは、以下のように表されるものとする。
【0017】
【数3】

【0018】
そして、このステアリングベクトルパラメータ
【数4】

を、nパルスヒットにおけるドップラー周波数推定値
【数5】

とし、この推定値をパルスヒット方向平均手段26に伝達する。
パルスヒット方向平均手段26は、各パルスヒットにおけるドップラー周波数推定値を平均化処理して、以下の式(3)により、平均化後のドップラー周波数推定値を算出する。
【0019】
【数6】

【0020】
このとき、ドップラー周波数推定値の互いに近い値のもの同士を選択することなどにより、各パルスヒットにおける目標番号k(k=1,2,・・・,K)は対応できているものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2003−121544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従来のレーダ装置は、特許文献1のように構成されていることから、ドップラー周波数推定用の観測時間がパルス幅に相当する長さとなり、観測時間が短いので、超分解能ドップラー周波数推定処理において十分な精度が得られないという課題があった。
【0023】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、超分解能ドップラー周波数推定精度を改善したレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この発明に係るレーダ装置は、移動する目標を検出するレーダ装置であって、複数の送信パルスを時系列的に繰り返し出射する送信系と、複数の送信パルスが目標で反射された反射パルスを複数の受信パルスとして受信する受信系と、複数の受信パルスに基づいて、目標の移動にともなうドップラー周波数を推定するドップラー周波数検出系とを備え、ドップラー周波数検出系は、複数の受信パルスの位相変化に基づいて、ドップラー周波数を超分解能推定するものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、超分解能ドップラー周波数推定を行うための観測時間を長く設定することにより、超分解能ドップラー周波数の推定精度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図2】図1内の超分解能ドップラー周波数推定手段の内部構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図4】図3内のレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段の内部構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図6】図5内の高速型超分解能ドップラー周波数推定手段の内部構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図8】図7内の高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段の内部構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態5に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図10】図9内のレンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段の内部構成を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態6に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図12】図11内のレンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段の内部構成を示すブロック図である。
【図13】この発明の実施の形態7に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態7による送受信動作を示すタイミングチャートである。
【図15】図13内の相関信号生成手段による参照パルス生成動作を示すタイミングチャートである。
【図16】この発明の実施の形態8に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図17】この発明の実施の形態9に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図18】この発明の実施の形態10に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図19】この発明の実施の形態11に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図20】この発明の実施の形態12に係るレーダ装置を示すブロック図である。
【図21】従来のレーダ装置を概略的に示すブロック図である。
【図22】従来のレーダ装置の送受信動作を示すタイミングチャートである。
【図23】図21内のパルス内超分解能ドップラー周波数推定手段の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示すブロック図である。
図1において、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置は、送信パルスを生成する送信機1と、送信パルスを目標3に向けて出射する送信アンテナ2と、目標3からの反射電波を受信する受信アンテナ4と、受信信号の帯域制限および位相検波を行う受信機5と、アナログ信号をサンプリングしてディジタル信号を生成するA/D変換器6と、目標3で反射したパルスを検出するパルス検出手段7と、超分解能ドップラー周波数推定手段8と、ドップラー周波数推定値を出力するレンジ方向平均手段9とを備えている。
【0028】
なお、煩雑さを避けるために図示を省略するが、レーダ装置は、図1内の回路要素1、5〜9の動作タイミングを制御するためのコントローラを備えている。
送信機1および送信アンテナ2は、送信系を構成しており、複数の送信パルスを時系列的に繰り返し出射する。
【0029】
受信アンテナ4および受信機5は、受信系を構成しており、複数の送信パルスが目標3で反射された反射パルスを複数の受信パルスとして受信する。
また、A/D変換器6、パルス検出手段7、超分解能ドップラー周波数推定手段8およびレンジ方向平均手段9は、ドップラー周波数検出系を構成しており、複数の受信パルスに基づいて、目標3の移動にともなうドップラー周波数を推定する。
【0030】
パルス検出手段7は、複数の受信パルスが存在するレンジ範囲を検出する。
ドップラー周波数検出系の主要部を構成する超分解能ドップラー周波数推定手段8は、後述するように、複数の受信パルスの位相変化に基づいて、ドップラー周波数を超分解能推定する。
【0031】
具体的には、超分解能ドップラー周波数推定手段8は、パルスヒット方向に対する目標信号の位相変化に基づきドップラー周波数を超分解能推定する。
また、レンジ方向平均手段9は、複数のレンジビンごとに推定されたドップラー周波数の平均値をドップラー周波数推定値として算出する。
【0032】
図2は図1内の超分解能ドップラー周波数推定手段8の内部構成を示すブロック図である。
図2において、超分解能ドップラー周波数推定手段8は、パルス検出手段7からの検出パルス(受信パルス)snr0,np〜snr0+Ng,npを入力情報とするパルスヒット方向相関行列生成手段10と、パルスヒット方向相関行列生成手段10から生成される相関行列Rを入力情報とするMUSIC処理手段12とを備えている。
【0033】
図2の構成により、超分解能ドップラー周波数推定手段8は、ドップラー周波数の超分解能推定処理を、MUSICを用いて複数のレンジビンごとに行う。
MUSIC処理手段12からのドップラー周波数推定値(後述する)は、レンジ方向平均手段9に伝達され、レンジ方向平均手段9は、複数のレンジビンごとに推定されたドップラー周波数推定値を平均化処理する。
【0034】
次に、前述の図22とともに、図1および図2を参照しながら、この発明の実施の形態1による動作について説明する。
まず、送信機1により、送信アンテナ2から送信パルスが出射され、パルス繰り返し周期TPRI(図22参照)としてNヒットの送受信が行われる。
【0035】
送信パルスは、目標数Kの目標3で反射して、時間遅延τで受信される。
A/D変換器6は、レンジビンを単位として時間間隔Tでサンプリングを行い、A/D変換した信号(nヒット目におけるnレンジビンの出力信号snr,np)を出力する。
【0036】
A/D変換器6の出力信号snr,npは、パルス検出手段7に伝達される。
パルス検出手段7は、A/D変換器6の出力信号の振幅値|snr,np|とスレッショルドとを比較して、パルスが含まれる範囲を検出する。
【0037】
たとえば、nr0サンプリング目からnr0+Ngサンプリング目までの範囲にパルスが検出された場合、パルス検出手段7は、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npを出力する。
目標3で反射したパルスは、受信アンテナ4で受信され、受信機5、A/D変換器6およびパルス検出手段7を介して、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npとなり、この検出パルスは、超分解能ドップラー周波数推定手段8に伝達される。
【0038】
超分解能ドップラー周波数推定手段8において、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npは、まず、パルスヒット方向相関行列生成手段10に伝達される。
パルスヒット方向相関行列生成手段10は、以下の式(4)により、相関行列Rを生成する。
【0039】
【数7】

【0040】
以下、MUSIC用固有ベクトル算出手段11は、相関行列Rの固有値g(1),g(2),・・・,g(M)(g(1)>g(2)>・・・>g(M))と、固有値g(m)(1≦m≦M)に対応する固有ベクトルe(m)とを求め、固有値g(m)の大きさなどから目標数Kを推定して、固有ベクトルe(K+1),e(K+2),・・・,e(M)を出力する。
【0041】
固有ベクトルe(K+1)〜e(M)は、MUSIC処理手段12に伝達される。
MUSIC処理手段12は、固有ベクトルe(K+1)〜e(M)を雑音空間としてMUSIC処理を行い、ステアリングベクトルパラメータを出力する。
具体的には、ドップラー周波数fに対応するステアリングベクトルa(f)は、前述の式(2)内のTをパルス繰り返し周期TPRIに換えることにより生成される。
【0042】
また、固有ベクトルe(K+1)〜e(M)のすべてに直交するK種類のステアリングa(f)を求め、ステアリングベクトルパラメータ
【数8】

を、nパルスヒットにおけるドップラー周波数推定値として出力する。
すなわち、MUSIC処理手段12は、以下の式(4)の相関行列Rを用いて算出したステアリングベクトルパラメータ
【数9】

を、nレンジビンにおけるk番目目標のドップラー周波数推定値
【数10】

とし、このドップラー周波数推定値をレンジ方向平均手段9に伝達する。
レンジ方向平均手段9は、nレンジビンにおけるk番目目標のドップラー周波数推定値を平均化処理して、以下の式(5)により、ドップラー周波数推定値を算出する。
【0043】
【数11】

【0044】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1、図2)によれば、パルスヒット間隔T×パルスヒット数Nに相当する長い時間で観測して得られた受信信号を使用して、ドップラー周波数を超分解能推定するので、超分解能ドップラー周波数推定手段8およびレンジ方向平均手段9によるドップラー周波数推定値の推定精度を改善することができる。
【0045】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1、図2)では、ドップラー周波数検出系として、超分解能ドップラー周波数推定手段8およびレンジ方向平均手段9とを用いたが、図3のように、レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13を用いてもよい。
図3はこの発明の実施の形態2に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0046】
図3において、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置は、図1内の超分解能ドップラー周波数推定手段8およびレンジ方向平均手段9に代えて、レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13を備えている。
【0047】
レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13は、レンジ方向平均手段の機能を含み、複数の受信パルスに基づく目標信号成分の相互間の相関を表す相関行列Rを、レンジ方向に平均化処理して超分解能ドップラー周波数推定を行い、ドップラー周波数推定値を生成する。
【0048】
図4は図3内のレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13の内部構成を示すブロック図であり、前述(図2参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図4において、レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13は、図2内のパルスヒット方向相関行列生成手段10に代えて、レンジ方向平均型相関行列生成手段14を備えている。
【0049】
図4の構成により、レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13は、ドップラー周波数の超分解能推定処理を行う際に必要となる複数の受信パルスに基づく目標信号成分の相互間の相関をレンジビンごとに算出し、レンジビンごとの相関算出値を平均化処理して相関行列Rを生成し、相関行列Rを用いたMUSIC処理によりドップラー周波数を推定する。
【0050】
次に、図3および図4を参照しながら、この発明の実施の形態2による動作について説明する。
送信機1および送信アンテナ2から送信パルスが出射され、目標3からの反射パルスが受信アンテナ4で受信されると、A/D変換器6およびパルス検出手段7を介して、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npがレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13に伝達される。
【0051】
検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npは、まず、レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13内のレンジ方向平均型相関行列生成手段14に伝達される。
レンジ方向平均型相関行列生成手段14は、以下の式(6)により、相関行列Rを生成する。
【0052】
【数12】

【0053】
以下、前述と同様に、MUSIC用固有ベクトル算出手段11およびMUSIC処理手段12により、MUSIC処理が行われ、ステアリングベクトルパラメータ
【数13】

が算出される。そして、このステアリングベクトルパラメータの算出値を、k番目目標のドップラー周波数推定値
【数14】

とする。
【0054】
以上のように、この発明の実施の形態2(図3、図4)によれば、行列Snrnrをレンジ方向に平均化処理することにより、目標信号成分の相互間の相関を表す成分のランクを回復しているので、スムージング処理で発生する検出可能な目標数の減少が防止される。
【0055】
実際に、前述の実施の形態1においては、使用した相関行列Rの次元数が「M」であることから、検出可能な目標数が「M−1」となるのに対し、この発明の実施の形態2においては、使用した相関行列Rの次元数が「N(>M)」であることから、検出可能な目標数は「N−1(>M−1)」となり、前述の実施の形態1と比べて多くなっていることが分かる。
【0056】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1(図1、図2)では、ドップラー周波数検出系として、超分解能ドップラー周波数推定手段8を用いたが、図5のように、高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15を用いてもよい。
図5はこの発明の実施の形態3に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0057】
図5において、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置は、図1内の超分解能ドップラー周波数推定手段8に代えて、高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15を備えている。
高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15は、後述するように、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法を用いて、超分解能ドップラー周波数の推定処理を高速に行う。
【0058】
図6は図5内の高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15の内部構成を示すブロック図であり、前述(図2参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0059】
図6において、高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15は、図2内のMUSIC用固有ベクトル算出手段11およびMUSIC処理手段12に代えて、ESPRIT用固有ベクトル算出手段16およびESPRIT処理手段17を備えている。
図6の構成により、高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15は、ドップラー周波数の超分解能推定処理を、ESPRITを用いて複数のレンジビンごとに行う。
【0060】
次に、図5および図6を参照しながら、この発明の実施の形態3による動作について説明する。
送信機1および送信アンテナ2から送信パルスが出射され、目標3からの反射パルスが受信アンテナ4で受信されると、A/D変換器6およびパルス検出手段7を介して、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npが高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15に伝達される。
【0061】
検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npは、まず、高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15内のパルスヒット方向相関行列生成手段10に伝達される。
続いて、パルスヒット方向相関行列生成手段10により生成された相関行列Rは、ESPRIT用固有ベクトル算出手段16に伝達される。
【0062】
ESPRIT用固有ベクトル算出手段16は、まず、相関行列Rの固有値g(1),g(2),・・・,g(M)(g(1)>g(2)>・・・>g(M))と、固有値g(m)(1≦m≦M)に対応する固有ベクトルe(m)を求める。
また、固有値g(m)の大きさなどから目標数Kを推定して、固有ベクトルe(1),e(2),・・・,e(K)を出力する。
【0063】
固有ベクトルe(1)〜e(K)は、ESPRIT処理手段17に伝達される。
ESPRIT処理手段17は、まず、以下の式(7)により、行列Eを算出する。
【0064】
E=[e(1),e(1),・・・,e(K)] ・・・(7)
【0065】
また、以下の式(8)により、行列Ψを算出する。
【0066】
【数15】

【0067】
式(8)において、行列Eは、行列Eのエルミート共役を表している。
また、行列J、行列Jは、それぞれM−1行M列の行列である。
さらに、J(i,k)は、行列Jのi行k列の成分を表し、J(i,k)は、行列Jのi行k列の成分を表している。
続いて、ESPRIT処理手段17は、k番目目標のステアリングベクトルパラメータを、以下の式(9)により求める。
【0068】
【数16】

【0069】
式(9)において、g’(k)は、行列Ψのk番目の固有値を表し、arg[g’(k)]は、固有値g’(k)の偏角を表している。
次に、ESPRIT処理手段17は、式(9)から求まるステアリングベクトルパラメータを、レンジビンnにおけるドップラー周波数推定値
【数17】

として、レンジ方向平均手段9に伝達する。
すなわち、前述と同様に、ドップラー周波数推定値
【数18】

が算出されて、レンジ方向平均手段9に入力される。
【0070】
以上のように、この発明の実施の形態3(図5、図6)によれば、超分解能ドップラー周波数推定処理においてESPRITを用いた効果により、高速にドップラー周波数推定値を算出することができる。
【0071】
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図5、図6)では、ドップラー周波数検出系として、高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15を用いたが、図7のように、高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18を用いてもよい。
図7はこの発明の実施の形態4に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図5参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0072】
図7において、この発明の実施の形態4に係るレーダ装置は、図5内の高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15に代えて、高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18を備えている。
高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18は、後述するように、最尤推定を用いて、複数のレンジビンごとに高精度の超分解能ドップラー周波数の推定処理を行う。
【0073】
図8は図7内の高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18の内部構成を示すブロック図であり、前述(図6参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0074】
図8において、高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18は、図6内のESPRIT用固有ベクトル算出手段16およびESPRIT処理手段17に代えて、最尤推定処理手段19を備えている。
図8の構成により、高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18は、ドップラー周波数の超分解能推定処理を、最尤推定を用いて複数のレンジビンごとに行う。
【0075】
次に、図7および図8を参照しながら、この発明の実施の形態4による動作について説明する。
送信機1および送信アンテナ2から送信パルスが出射され、目標3からの反射パルスが受信アンテナ4で受信されると、A/D変換器6およびパルス検出手段7を介して、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npが高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18に伝達される。
【0076】
検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npは、まず、高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18内のパルスヒット方向相関行列生成手段10に伝達され、前述と同様に、相関行列Rが生成される。
相関行列Rは、最尤推定処理手段19に伝達される。
最尤推定処理手段19は、まず、目標信号のドップラー周波数f,f,・・・,fを変数とする評価関数Θ(f,f,・・・,f)を、以下の式(10)のように設定する。
【0077】
【数19】

【0078】
続いて、評価関数Θ(f,f,・・・,f)を最大とするステアリングベクトルパラメータ
【数20】

を求める。
次に、最尤推定処理手段19は、求められたステアリングベクトルパラメータ
【数21】

を、レンジビンnにおけるドップラー周波数推定値
【数22】

として、レンジ方向平均手段9に伝達する。
すなわち、前述と同様に、ドップラー周波数推定値
【数23】

が算出されて、レンジ方向平均手段9に入力される。
【0079】
以上のように、この発明の実施の形態4(図7、図8)によれば、高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18を設け、最尤推定処理を用いてドップラー周波数を推定するように構成したので、高精度のドップラー周波数推定を行うことができる。
【0080】
実施の形態5.
なお、上記実施の形態2(図3、図4)では、ドップラー周波数検出系として、レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13を用いたが、図9のように、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20を用いてもよい。
図9はこの発明の実施の形態5に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図3参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0081】
図9において、この発明の実施の形態5に係るレーダ装置は、図2内のレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13に代えて、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20を備えている。
レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20は、後述するように、複数の受信パルスに基づく目標信号成分の相互間の相関を表す相関行列Rをレンジ方向に平均化処理し、ESPRIT法を用いて超分解能ドップラー周波数推定を高速に行う。
【0082】
図10は図9内のレンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20の内部構成を示すブロック図であり、前述(図4、図6参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0083】
図10において、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20は、図4内のMUSIC用固有ベクトル算出手段11およびMUSIC処理手段12に代えて、図6に示したESPRIT用固有ベクトル算出手段16およびESPRIT処理手段17を備えている。
【0084】
図10の構成により、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20は、複数のレンジビンごとに推定されたドップラー周波数推定値を平均化処理した後に、ドップラー周波数の超分解能推定処理を、ESPRITを用いて複数のレンジビンごとに行う。
【0085】
次に、図9および図10を参照しながら、この発明の実施の形態5による動作について説明する。
まず、送信機1および送信アンテナ2からの送信パルスが目標3で反射して、反射パルスが受信アンテナ4および受信機5で受信されると、A/D変換器6およびパルス検出手段7を介して、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npがレンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20に伝達される。
【0086】
検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npは、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20内のレンジ方向平均型相関行列生成手段14に伝達される。
以下、レンジ方向平均型相関行列生成手段14は、前述の実施の形態2(図4)と同様に相関行列Rを生成し、ESPRIT用固有ベクトル算出手段16は、前述の実施の形態3(図6)と同様に、相関行列Rを用いて、ステアリングベクトルパラメータ
【数24】

を算出して、ステアリングベクトルパラメータ
【数25】

を、k番目目標のドップラー周波数推定値
【数26】

とする。
【0087】
以上のように、この発明の実施の形態5(図9、図10)によれば、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20を設け、目標信号成分の相互間の相関を、レンジ方向に平均化処理して相関行列Rを求めるように構成したので、スムージング処理で発生する検出可能な目標数Kの減少を防止することができる。
また、超分解能処理においてESPRITを用いた効果により、高速にドップラー周波数推定値を算出することができる。
【0088】
実施の形態6.
なお、上記実施の形態5(図9、図10)では、ドップラー周波数検出系として、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20を用いたが、図11のように、レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21を用いてもよい。
図11はこの発明の実施の形態6に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図9参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0089】
図11において、この発明の実施の形態6に係るレーダ装置は、図9内のレンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20に代えて、レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21を備えている。
レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21は、目標信号成分の相互間の相関を表す相関行列Rをレンジ方向に平均化処理し、最尤推定を用いてドップラー周波数を高精度推定する。
【0090】
図12は図11内のレンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21の内部構成を示すブロック図であり、前述(図8、図10参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図12において、レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21は、図10内のESPRIT用固有ベクトル算出手段16およびESPRIT処理手段17に代えて、図8に示した最尤推定処理手段19を備えている。
【0091】
次に、図11および図12を参照しながら、この発明の実施の形態6による動作について説明する。
まず、送信機1および送信アンテナ2からの送信パルスが目標3で反射して、反射パルスが受信アンテナ4および受信機5で受信されると、A/D変換器6およびパルス検出手段7を介して、検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npがレンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21に伝達される。
【0092】
検出パルスsnr0,np〜snr0+Ng,npは、レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21内のレンジ方向平均型相関行列生成手段14に伝達される。
以下、レンジ方向平均型相関行列生成手段14は、前述と同様に相関行列Rを生成し、最尤推定処理手段19は、前述の実施の形態4(図8)と同様に、相関行列Rを用いて、ステアリングベクトルパラメータ
【数27】

を算出して、ステアリングベクトルパラメータを、k番目目標のドップラー周波数推定値
【数28】

とする。
【0093】
以上のように、この発明の実施の形態6(図11、図12)によれば、レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21を設け、目標信号成分の相互間の相関をレンジ方向に平均化処理して相関行列Rを求めるように構成したので、スムージング処理で発生する検出可能な目標数Kの減少を防止することができる。
また、最尤推定処理を用いてドップラー周波数を推定する効果により、高精度のドップラー周波数推定を実現することができる。
【0094】
実施の形態7.
なお、上記実施の形態1〜6(図1〜図12)では、ドップラー周波数検出系においては、パルス検出手段7を用いたが、図13のように、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24を用いてもよい。
【0095】
図13はこの発明の実施の形態7に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
ここでは、代表的に実施の形態1に適用した場合の構成例を示している。
【0096】
図13において、この発明の実施の形態7に係るレーダ装置は、図1内の送信機1に代えて、パルス内変調型送信機22を備え、また、図1内のパルス検出手段7に代えて、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24を備えている。
パルス内変調型送信機22は、符号変調が施された送信パルスを生成して、送信アンテナ2から出射するとともに、送信パルスの波形をドップラー周波数検出系内の相関信号生成手段23に入力する。
【0097】
相関信号生成手段23は、送信パルスと受信パルスとの相関信号を生成する。
また、目標信号検出手段24は、相関信号生成手段23から出力された相関信号に基づき、送信パルスと受信パルスとの相関が高い目標信号を検出して、超分解能ドップラー周波数推定手段8に入力する。
【0098】
次に、図13とともに、図14および図15のタイミングチャートを参照しながら、この発明の実施の形態7による動作について説明する。
図14は送信パルスと受信パルスとの関係を示すタイミングチャートであり、上段には、パルス内変調型送信機22で生成される送信パルスの状況が示され、下段には、受信パルスの状況が示されている。
また、図15は相関信号生成手段23により生成される参照パルスを示すタイミングチャートであり、送信パルスを遅延することにより生成される参照パルスの状況を表している。
【0099】
図14において、パルス内変調型送信機22は、あらかじめ生成したランダム符号列の値(「+1」または「−1」)にしたがって、チップ幅Tchipごとに位相が「0°」または「180°=π(rad)」だけ回転した送信パルスを出射する。
送信パルスは、目標数Kの目標3で反射して、時間遅延τの経過後に受信されて受信パルスとなる。
【0100】
相関信号生成手段23は、A/D変換器6の出力信号(nヒット目におけるnレンジビンの出力信号snr,np)による受信パルス波形と、パルス内変調型送信機22から入力される送信パルス波形との相関処理を行う。
【0101】
このとき、相関信号生成手段23は、図15に示すように、送信パルスsnr,npを時間nr1Tだけ遅延させた参照パルスs’nr(nr1)、・・・を生成し、この参照パルスを用いて、時間遅延nr1Tを想定した相関信号pnr,np(nr1)を、以下の式(11)のように生成する。
【0102】
【数29】

【0103】
式(11)から求められた相関信号pnr,np(nr1)は、目標信号検出手段24に伝達される。
まず、目標信号検出手段24は、相関信号にFFTを施した信号pfnr1,nd(n’)を、以下の式(12)のように算出する。
【0104】
【数30】

【0105】
式(12)において、n’は、パルス長Ng・Tだけ観測して推定したドップラー周波数推定値のドップラービンを表している。
続いて、目標信号検出手段24は、式(12)内のレンジビン番号nr1を変えて、振幅値|pfnr1,np(n’)|とスレッショルドとを比較することにより、受信パルスの圧縮信号|pfnr0,np(n’d0)|を検出する。
この圧縮信号において、n’d0は、受信パルスから生成された相関信号(目標信号のドップラービン)を表している。
【0106】
以下、目標信号検出手段24は、目標信号pnr0,np(nr0)〜pnr0+Ng,np(nr0)を超分解能ドップラー周波数推定手段8に伝達し、超分解能ドップラー周波数推定手段8は、前述(図2)と同様に、ドップラー周波数推定値
【数31】

を算出する。
【0107】
以上のように、この発明の実施の形態7(図13〜図15)による送信系は、符号変調が施されたパルスを複数の送信パルスとして送信するパルス内変調型送信機22を備えている。
また、ドップラー周波数検出系は、複数の送信パルスと複数の受信パルスとの相関性を用いて目標信号を検出する相関信号生成手段23および目標信号検出手段24と、ドップラー周波数の超分解能推定処理を、MUSICを用いて複数のレンジビンごとに行う超分解能ドップラー周波数推定手段8と、複数のレンジビンごとに推定されたドップラー周波数推定値を平均化処理するレンジ方向平均手段9とを備えている。
これにより、ランダム符号で変調したパルスを圧縮する効果によって、S/N比が高くなるので、パルス検出精度を改善することができる。
【0108】
実施の形態8.
なお、上記実施の形態7(図13)では、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24を、前述の実施の形態1(図1)の構成に適用したが、図16のように、実施の形態2(図3)の構成に適用してもよい。
【0109】
図16はこの発明の実施の形態8に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図3、図13参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
この場合、レーダ装置は、図13内の超分解能ドップラー周波数推定手段8およびレンジ方向平均手段9に代えて、図3内のレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13を備えている。
【0110】
図16において、パルス内変調型送信機22および送信アンテナ2からランダム符号で変調した送信パルスが出射され、目標3からの反射パルスが受信アンテナ4で受信されると、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24で算出された目標信号pnr0,np(nr0)〜pnr0+Ng,np(nr0)がレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13に伝達される。
【0111】
以下、レンジ方向平均手段の機能を含むレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13は、前述の実施の形態2(図4)と同様に、複数の受信パルスに基づく目標信号成分の相互間の相関を表す相関行列Rを、レンジ方向に平均化処理して超分解能ドップラー周波数推定を行い、ドップラー周波数推定値
【数32】

を算出する。
【0112】
以上のように、この発明の実施の形態8(図16)によれば、ランダム符号で変調した送信パルスを圧縮する効果により、S/N比が高くなるので、パルス検出精度を改善することができる。
また、レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13により、目標信号成分の相互間の相関をレンジ方向に平均化処理して相関行列Rを求めているので、スムージング処理で発生する検出可能な目標数Kの減少を防止することができる。
【0113】
実施の形態9.
なお、上記実施の形態8(図16)では、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24を、前述の実施の形態2(図3)の構成に適用したが、図17のように、実施の形態3(図5)の構成に適用してもよい。
【0114】
図17はこの発明の実施の形態9に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図5、図13参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
この場合、レーダ装置は、図13内の超分解能ドップラー周波数推定手段8に代えて、図5内の高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15を備えている。
【0115】
図17において、パルス内変調型送信機22および送信アンテナ2からランダム符号で変調した送信パルスが出射され、目標3からの反射パルスが受信アンテナ4で受信されると、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24で算出された目標信号pnr0,np(nr0)〜pnr0+Ng,np(nr0)が、高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15に伝達される。
以下、高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15は、前述の実施の形態3(図6)と同様に、ESPRITを用いて、ドップラー周波数推定値
【数33】

を算出し、レンジ方向平均手段9に入力する。
【0116】
以上のように、この発明の実施の形態9(図17)によれば、ランダム符号で変調したパルスを圧縮する効果により、S/N比が高くなるので、パルス検出精度を改善することができる。
また、超分解能処理にESPRITを用いる効果により、高速にドップラー周波数推定値を算出することができる。
【0117】
実施の形態10.
なお、上記実施の形態9(図17)では、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24を、前述の実施の形態3(図5)の構成に適用したが、図18のように、実施の形態4(図7)の構成に適用してもよい。
【0118】
図18はこの発明の実施の形態10に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図7、図17参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
この場合、レーダ装置は、図17内の高速型超分解能ドップラー周波数推定手段15に代えて、図7内の高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18を備えている。
【0119】
図18において、パルス内変調型送信機22および送信アンテナ2からランダム符号で変調した送信パルスが出射され、目標3からの反射パルスが受信アンテナ4で受信されると、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24で算出された目標信号pnr0,np(nr0)〜pnr0+Ng,np(nr0)が、高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18に伝達される。
以下、高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段18は、前述の実施の形態4(図8)と同様に、最尤推定処理を用いて、ドップラー周波数推定値
【数34】

を算出し、レンジ方向平均手段9に入力する。
【0120】
以上のように、この発明の実施の形態10(図18)によれば、ランダム符号で変調したパルスを圧縮する効果により、S/N比が高くなるので、パルス検出精度を改善することができる。
また、最尤推定処理を用いてドップラー周波数を推定しているので、高精度のドップラー周波数推定を実現することができる。
【0121】
実施の形態11.
なお、上記実施の形態10(図18)では、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24を、前述の実施の形態4(図7)の構成に適用したが、図19のように、実施の形態5(図9)の構成に適用してもよい。
【0122】
図19はこの発明の実施の形態11に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図9、図16参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
この場合、レーダ装置は、図16内のレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段13に代えて、図9内のレンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20を備えている。
【0123】
図19において、パルス内変調型送信機22および送信アンテナ2からランダム符号で変調した送信パルスが出射され、目標3からの反射パルスが受信アンテナ4で受信されると、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24で算出された目標信号pnr0,np(nr0)〜pnr0+Ng,np(nr0)が、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20に伝達される。
【0124】
以下、レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20は、前述の実施の形態5(図10)と同様に、複数の受信パルスに基づく目標信号成分の相互間の相関を表す相関行列Rをレンジ方向に平均化処理するとともに、ESPRIT法を用いて、ドップラー周波数推定値
【数35】

を算出する。
【0125】
以上のように、この発明の実施の形態11(図19)によれば、ランダム符号で変調したパルスを圧縮する効果により、S/N比が高くなるので、パルス検出精度を改善することができる。
また、目標信号成分の相互間の相関を、レンジ方向に平均化処理して相関行列Rを求めているので、スムージング処理で発生する検出可能な目標数Kの減少を防止することができる。
【0126】
実施の形態12.
なお、上記実施の形態11(図19)では、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24を、前述の実施の形態5(図9)の構成に適用したが、図20のように、実施の形態6(図11)の構成に適用してもよい。
【0127】
図20はこの発明の実施の形態12に係るレーダ装置を示すブロック図であり、前述(図11、図19参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
この場合、レーダ装置は、図19内のレンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段20に代えて、図11内のレンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21を備えている。
【0128】
図20において、パルス内変調型送信機22および送信アンテナ2からランダム符号で変調した送信パルスが出射され、目標3からの反射パルスが受信アンテナ4で受信されると、相関信号生成手段23および目標信号検出手段24で算出された目標信号pnr0,np(nr0)〜pnr0+Ng,np(nr0)が、レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21に伝達される。
【0129】
以下、レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段21は、前述の実施の形態6(図12)と同様に、複数の受信パルスに基づく目標信号成分の相互間の相関を表す相関行列Rをレンジ方向に平均化処理するとともに、最尤推定処理を用いて、ドップラー周波数推定値
【数36】

を算出する。
【0130】
以上のように、この発明の実施の形態12(図20)によれば、ランダム符号で変調したパルスを圧縮する効果により、S/N比が高くなるので、目標検出精度を改善することができる。
また、目標信号成分の相互間の相関をレンジ方向に平均化処理して相関行列Rを求めているので、スムージング処理で発生する検出可能な目標数Kの減少を防止することができる。
さらに、最尤推定処理を用いてドップラー周波数を推定しているので、高精度のドップラー周波数推定を実現することができる。
【符号の説明】
【0131】
1 送信機、2 送信アンテナ、3 目標、4 受信アンテナ、5 受信機、6 A/D変換器、7 パルス検出手段、8 超分解能ドップラー周波数推定手段、9 レンジ方向平均手段、10 パルスヒット方向相関行列生成手段、11 MUSIC用固有ベクトル算出手段、12 MUSIC処理手段、13 レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段、14 レンジ方向平均型相関行列生成手段、15 高速型超分解能ドップラー周波数推定手段、16 ESPRIT用固有ベクトル算出手段、17 ESPRIT処理手段、18 高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段、19 最尤推定処理手段、20 レンジ方向平均型高速型超分解能ドップラー周波数推定手段、21 レンジ方向平均型高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段、22 パルス内変調型送信機、23 相関信号生成手段、24 目標信号検出手段、K 目標数、R 相関行列、T 時間間隔、Tchip チップ幅、τ 時間遅延。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する目標を検出するレーダ装置であって、
複数の送信パルスを時系列的に繰り返し出射する送信系と、
前記複数の送信パルスが前記目標で反射された反射パルスを複数の受信パルスとして受信する受信系と、
前記複数の受信パルスに基づいて、前記目標の移動にともなうドップラー周波数を推定するドップラー周波数検出系とを備え、
前記ドップラー周波数検出系は、前記複数の受信パルスの位相変化に基づいて、前記ドップラー周波数を超分解能推定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記送信系は、
前記複数の送信パルスを生成する送信機と、
前記複数の送信パルスを出射する送信アンテナとを備え、
前記受信系は、
前記反射パルスを受信する受信アンテナと、
前記複数の受信パルスの帯域制限および位相検波を行う受信機とを備え、
前記ドップラー周波数検出系は、
前記複数の受信パルスをアナログ信号からディジタル信号に変換するA/D変換器を備えことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記複数の受信パルスが存在するレンジ範囲を検出するパルス検出手段と、
前記ドップラー周波数の超分解能推定処理を、MUSICを用いて複数のレンジビンごとに行う超分解能ドップラー周波数推定手段と、
前記複数のレンジビンごとに推定されたドップラー周波数推定値を平均化処理するレンジ方向平均手段と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記複数の受信パルスが存在するレンジ範囲を検出するパルス検出手段と、
前記ドップラー周波数の推定値を生成するレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段とを備え、
前記レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段は、
前記ドップラー周波数の超分解能推定処理を行う際に必要となる、前記複数の受信パルスに基づく目標信号成分の相互間の相関を、レンジビンごとに算出し、
前記レンジビンごとの相関算出値を平均化処理して相関行列を生成し、
前記相関行列を用いたMUSIC処理により前記ドップラー周波数を推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記送信系は、符号変調が施されたパルスを前記複数の送信パルスとして出射し、
前記ドップラー周波数検出系は、目標信号検出手段を備え、
前記目標信号検出手段は、前記複数の送信パルスと前記複数の受信パルスとの相関性を用いて目標信号を検出すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記ドップラー周波数の超分解能推定処理を、MUSICを用いて複数のレンジビンごとに行う超分解能ドップラー周波数推定手段と、
前記複数のレンジビンごとに推定されたドップラー周波数推定値を平均化処理するレンジ方向平均手段と
を備えたことを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記ドップラー周波数の推定値を生成するレンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段を備え、
前記レンジ方向平均型超分解能ドップラー周波数推定手段は、
前記ドップラー周波数の超分解能推定処理を行う際に必要となる、前記複数の受信パルスに基づく目標信号成分の相互間の相関を、レンジビンごとに算出し、
前記レンジビンごとの相関算出値を平均化処理して相関行列を生成し、
前記相関行列を用いたMUSIC処理により前記ドップラー周波数を推定することを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記ドップラー周波数の超分解能推定処理を、ESPRITを用いて複数のレンジビンごとに行う高速型超分解能ドップラー周波数推定手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記ドップラー周波数の超分解能推定処理を、最尤推定を用いて複数のレンジビンごとに行う高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記複数の受信パルスが存在するレンジ範囲を検出するパルス検出手段と、
前記ドップラー周波数の超分解能推定処理を、ESPRITを用いて複数のレンジビンごとに行う高速型超分解能ドップラー周波数推定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記複数の受信パルスが存在するレンジ範囲を検出するパルス検出手段と、
前記ドップラー周波数の超分解能推定処理を、最尤推定を用いて複数のレンジビンごとに行う高精度型超分解能ドップラー周波数推定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記ドップラー周波数検出系は、
前記複数のレンジビンごとに推定されたドップラー周波数推定値を平均化処理するレンジ方向平均手段を備えたことを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれか1項に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−69779(P2011−69779A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222817(P2009−222817)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】