レーダ
所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともにビームの中心方位を変化させて所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出し、方位変化に対する受信信号強度分布を直角座標で表した時にビームの方位幅により定まる方位幅を底辺とする二等辺三角形で近似させたときの頂点方位を物標の中心方位として検知する。これにより、探知用電波のビーム幅より高い分解能で、または方位方向のサンプリング間隔より高い分解能で物標の方位を検知できるようにし、また受信信号強度のピーク位置が物標の中心からずれる問題を解消する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばミリ波帯の電波を用いて車両などの物標を探知するレーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載され、例えば車間距離などを測定するレーダとして特許文献1が開示されている。
上記特許文献1に示されているレーダは、ビーム走査手段によりビームの方向を3方向に切り替えて、同一の物標が方向の異なった複数のビームで検出された時に、それぞれの方向の受信信号強度に応じて物標の角度を演算し、単一のビーム方向でのみ検出されたときには、予め設定されている角度であるとものと判定する。
【特許文献1】特開2000−338222公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような従来の車載用レーダにおいては、探知用電波のビーム幅以下の分解能で物標の動きを追跡することができない。また、ビームの方位方向の変化に対する受信信号強度の変化をみたとき、受信信号強度がピークを示すビームの方位が必ずしも物標の中心位置に正確に一致するものとは限らないため、物標の方位測定精度が低い、といった問題があった。
【0004】
特許文献1に記載された方法とは別に、ビーム幅を極力狭くし、そのビームを方位方向にスキャニングするようにした場合でも、方位方向の分解能は方位方向のサンプリング間隔で決定されてしまう。
【0005】
この発明の目的は、探知用電波のビーム幅より高い分解能で、または方位方向のサンプリング間隔より高い分解能で物標の方位を検知できるようにし、また受信信号強度のピーク位置が物標の中心からずれる問題を解消して、物標の位置検知能力を高めたレーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させて、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位を挟む中心方位検出用方位幅分左右の方位における受信信号強度とビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0007】
また、この発明のレーダは、前記物標中心方位検知手段が、前記ピーク検出用方位幅を複数とおりに定めて、各々の前記近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を検出するとともに、それらの方位を加重平均する手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させて、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の大きい方の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、前記受信信号強度分布のうち、所定距離で最大値を示す方位を挟む所定のピーク検出用方位幅分左右の複数の方位における受信信号強度に基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、前記複数の受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標の中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、この発明のレーダは、前記近似二等辺三角形の底辺が前記ビームの方位幅より短い場合に、その近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として扱わないように処理する手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の小さい方向の1つまたは複数の方位における受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、所定距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位の受信信号強度と、該最大値を示す方位より一つまたは複数の中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位での受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
受信信号の最大値を示す方位が、前記中心方位の探知方位角度範囲の端(左または右)であった場合に、
ビームの方位幅の半分に対するビームの方位幅の半分から中心方位検出用方位幅を差し引いた方位幅の比が、対象物標までの距離における前記受信信号強度のうち最大値を示す最も外側の方位における信号強度と該最大値を示す方位より中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位の受信信号強度との比より小さいという条件を満たすとき、前記最大値を示す最も外側の方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位より一つまたは複数の前記中心方位検出用方位幅分内側の方位の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知し、
前記条件を満たさないときに、対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と該最大値を示す方位より一つまたは複数の中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位における受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する、物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
また、この発明のレーダは、所定距離における前記受信信号強度分布の方位方向の広がりが前記ビームの方位幅より広いとき、前記物標中心方位検知手段により検知された物標の方位を頂点、前記ビームの方位幅を底辺とする二等辺三角形分の分布を前記受信信号強度分布から差し引く手段を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、この発明のレーダは、前記受信信号強度分布修正手段が、中心方位を検知した物標に対応する前記二等辺三角形分の分布を前記受信信号強度分布から順次差し引くものとする。
【0016】
また、この発明のレーダは、前記受信信号強度分布検出手段が、前記ビームの中心方位を探知方位角度範囲内で変化させ、前記物標中心方位検知手段が、前記ビームの前記探知方位角度範囲内での中心方位に応じて前記ピーク検出用方位幅を変化させる手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、受信信号強度分布検出手段が所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出し、物標中心方位検知手段は対象物標までの距離における受信信号強度分布のうち最大値を示す方位を挟む所定のピーク検出用方位幅分左右の方位における受信信号強度とビームの方位幅とに基づいて物標の方位を検知する。物標方位とビーム走査により得られる受信信号強度分布を、方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表せば、その分布は近似的にビームの方位幅により定まる方位幅を底辺とする二等辺三角形の形状を示すので、これにより探知用電波のビーム幅より高い分解能で、または方位方向のサンプリング間隔より高い分解能で物標の方位を検知できる。
【0018】
またこの発明によれば、前記ピーク検出用方位幅を複数とおりに定めておき、各々のピーク検出用方位幅で求めた物標の中心方位を加重平均することによって受信信号強度分布の形状に応じたより高精度な物標中心方位の検知が可能となる。
【0019】
またこの発明によれば、受信信号強度分布検出手段が所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出し、物標中心方位検知手段が対象物標までの距離における受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の大きい方の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づいて物標の中心方位を検知する。これにより受信信号強度分布に表れる山形の頂上付近の受信信号強度を重視した物標の方位検知が可能となる。
【0020】
またこの発明によれば、方位変化に対する受信信号を強度分布の複数の受信信号強度を、2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点を物標の方位として検知することにより、受信信号強度分布の複数の点から物標の中心方位をより正確に求めることができる。
【0021】
またこの発明によれば、受信信号強度分布のうち受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形に当てはめた時、その近似二等辺三角形の底辺がビームのメインローブにより生じる方位幅より短い場合に、その近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として扱わないように処理することにより、サイドローブによる受信信号強度分布から誤って物標の中心方位が検知されるのを防止することができる。
【0022】
また、この発明によれば、方位変化に対する受信信号を強度分布の複数の受信信号強度を、一方の斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点を物標の方位として検知することにより、受信信号強度分布の複数の点から物標の中心方位をより正確に求めることができる。
【0023】
またこの発明によれば、受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位の所定のピーク検出用方位幅分左または右の複数の方位での受信信号強度に基づいて受信信号強度分布の形状を二等辺三角形に当てはめた時の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知するようにしたことにより、物標からの反射波に起因して生じる受信信号強度分布に表れる山形のパターンが所定の探知方位角度範囲内の両端付近に存在しても、物標の中心方位を検知できるようになる。その結果、上記探知方位角度範囲内の略全角度範囲に亘って物標の中心方位を検知できるようになる。
【0024】
またこの発明によれば、受信信号の最大値を示す方位が、探知方位角度範囲の端(左または右)であった場合でも、その最大値が得られた方位より中心方位検出用方位幅分内側の方位での信号強度が、二等辺三角形の2つの斜辺上の点と見なせる場合には、その2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する。そのため、探知方位角度範囲の端部付近でも物標の中心方位を正確に検知できるようになる。
【0025】
またこの発明によれば、2つの物標がビームの方位幅より方位方向に近接している時、それらの物標からの反射波により生じる受信信号強度分布としては2つの山形が部分的に重なった分布が得られるが、この発明によれば、受信信号強度分布の方位方向の広がりがビームの方位幅より広い時、上述の一方の斜辺上の点に相当する受信信号強度から求めた方位に存在する物標によって生じる近似二等辺三角形分の分布を受信信号強度分布から差し引くようにしたので、残る他の物標に起因して生じる受信信号強度分布を抽出できるようになる。その結果、ビームの方位幅より近接している2つの物標についてもそれぞれの中心方位が検知できるようになる。
【0026】
またこの発明によれば、受信信号強度分布検出手段が、ビームの中心方位を探知方位角度範囲内で変化させ、物標中心方位検知手段がビームの探知方位角度範囲内での中心方位に応じてピーク検出用方位幅を変化させることにより、ビームの中心方位が変化することに伴ってビームの方位幅が変化しても物標の中心方位を高精度に検知できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係るレーダの信号系の構成を示すブロック図である。
【図2】アンテナ、ビームおよび物標の位置関係の例を示す図である。
【図3】同レーダの上り変調区間と下り変調区間に生じるビート信号の周波数差の例を示す図である。
【図4】突出部グループの方位方向の信号強度分布の例を示す図である。
【図5】同レーダの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図5におけるステップS10の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】受信信号強度分布と近似二等辺三角形との関係を示す図である。
【図8】ビーム方位と受信信号強度分布の形状変化の例を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係るレーダの物標中心方位検知方法を示す図である。
【図10】同物標中心方位検知の手順を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施形態係る受信信号強度分布と近似二等辺三角形との関係を示す図である。
【図12】第4の実施形態に係るレーダの物標中心方位検知方法を示す図である。
【図13】同物標中心方位検知の手順を示すフローチャートである。
【図14】第5の実施形態に係るレーダの物標中心方位検知方法を示す図である。
【図15】第6の実施形態に係るレーダの物標中心方位検知方法を示す図である。
【図16】第7の実施形態係る受信信号強度分布と近似二等辺三角形との関係を示す図である。
【図17】第8の実施形態に係るメインローブ、サイドローブおよび物標の位置関係の例を示す図である。
【図18】メインローブとサイドローブによる受信信号強度分布の形状の違いを示す図である。
【図19】第9の実施形態に係るレーダに対する2つの物標の位置関係の例を示す図である。
【図20】同関係により生じる受信信号強度分布の例を示す図である。
【図21】一方の物標の中心方位を検知する方法を示す図である。
【図22】他方の物標の中心方位を検知する方法を示す図である。
【図23】同レーダの物標中心方位検知方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
IL−近似二等辺三角形
IB−近似二等辺三角形の底辺(方位幅)
IH−近似二等辺三角形の高さ
Td−近似二等辺三角形の頂点方位(物標の中心方位)
DL−受信信号強度分布
DW−中心方位検出用方位幅
IS−近似二等辺三角形の斜辺
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
第1の実施形態に係るレーダについて図1〜図8を参照して説明する。
図1はレーダの全体の構成を示すブロックである。ここでVCO1は、DAコンバータ11より出力される制御電圧に応じて発振周波数を変化させる。アイソレータ2は、VCO1からの発振信号をカプラ3側へ伝送し、VCO1へ反射信号が入射するのを阻止する。カプラ3は、アイソレータ2を経由した信号をサーキュレータ4側へ伝送するとともに、所定の分配比で送信信号の一部をローカル信号Loとしてミキサ6へ与える。サーキュレータ4は、送信信号をアンテナ5側へ伝送し、また、アンテナ5からの受信信号をミキサ6へ与える。アンテナ5は、VCO1のFM変調された連続波のミリ波ビームを送信し、同方向からの反射信号を受信する。また、そのビームの方向を探知角度範囲に亘って周期的に変化させる。
【0030】
ミキサ6は、カプラ3からのローカル信号Loとサーキュレータ4からの受信信号とをミキシングして中間周波信号IFを出力する。IF増幅回路7は、その中間周波信号を距離に応じた所定のゲインで増幅する。ADコンバータ8は、その電圧信号をディジタルデータに変換してDSP9へ与える。DSP9は、A/Dコンバータ8により変換されたディジタルデータを少なくとも1スキャン分(所定の探知角度範囲内での複数本のビーム走査分)だけ一時蓄積し、後述する処理によって、アンテナを中心とする物標の方位、物標までの距離、およびアンテナに対する物標の相対速度を算出する。マイクロコントローラユニット(MCU)10はD/Aコンバータ11に対してVCO1の変調用データを順次与え、VCO1の発振周波数を三角波状に連続してFM変調させる。またスキャン機構12に対してアンテナ5の指向方向を変更させるための処理を行う。さらにVCO1に対する変調信号のタイミングとアンテナ5の指向方位に関するデータをDSP9へ与える。
【0031】
上記DSP9はA/Dコンバータ8により変換されたディジタルデータを入力し、周波数スペクトルを求めるためのFFT演算処理部91、その周波数スペクトルから周波数軸上のピーク位置を検出する突出部検出処理部92、検出した物標の中心方位を検知するための方位算出処理部93、およびその物標までの距離と相対速度を算出する処理部94とを備えている。
【0032】
図2は、物標である車両、アンテナ、およびビームの位置関係について示している。ここでb−n〜b0〜b+nは、それぞれアンテナ5による探知用電波のビームであり、探知角度範囲に亘ってアンテナ5の指向方向を変化させることによってビームを走査する。
【0033】
図3は、物標までの距離と相対速度に起因する、送信信号と受信信号の周波数変化のずれの例を示している。送信信号の周波数上昇時における送信信号と受信信号との周波数差がアップビートの周波数fBUであり、送信信号の周波数下降時における送信信号と受信信号との周波数差がダウンビートの周波数fBDである。Δfは周波数偏位幅である。この送信信号と受信信号の三角波の時間軸上のずれ(時間差)が、アンテナから物標までの電波の往復時間に相当する。また、送信信号と受信信号の周波数軸上のずれがドップラシフト量であり、これはアンテナに対する物標の相対速度に起因して生じる。この時間差とドップラシフト量によってアップビートfBUとダウンビートfBDの値が変化する。すなわち、このアップビートとダウンビートの周波数を検出することによって、レーダから物標までの距離およびレーダに対する物標の相対速度を算出する。
【0034】
図4は方位別周波数スペクトルを方位方向に並べた例を示している。図4の(A)は、方位の異なるビーム毎の上り変調区間でのビート信号の周波数スペクトルに現れる突出部のピーク周波数を示す図、(B)は、下り変調区間でのビート信号の周波数スペクトルに現れる突出部のピーク周波数を示す図である。ここで横軸にビーム方位、縦軸に周波数スペクトルに含まれる突出部の周波数を採って直角座標で表している。
【0035】
この例では、(A)に示すように上り変調区間で、ビーム方位方向および周波数方向にそれぞれある形状で分布する突出部グループGu1,Gu2が生じている。また、(B)に示すように下り変調区間でもビーム方位方向および周波数方向にそれぞれある形状で分布する突出部グループGd1,Gd2が生じている。
【0036】
この図4では、周波数スペクトルに含まれる突出部の位置のみを黒丸で表したが、その強度(受信信号強度)の分布は方位方向に山形の形状をなす。
【0037】
ここで、上り変調区間と下り変調区間にそれぞれ現れる複数の突出部グループのうちどの突出部グループ同士がペアとなるか、すなわち同一物標からの反射に起因して生じたグループであるかの判定(ペアリング)を行う。
【0038】
そして、ペアとなる2つのグループの上り変調区間での周波数と下り変調区間での周波数とに基づいて、物標までの距離と相対速度を求める。
【0039】
図5は、図1に示したDSP9およびMCU10の処理手順を示すフローチャートである。まず、スキャン機構12の制御によって、ビームを初期方位に向ける(S1)。その状態で、A/Dコンバータ8により変換されたビート信号のディジタルデータを所定のサンプリング数だけ取得し、それについてFFT処理する(S2→S3)。
【0040】
続いて、周波数スペクトルの信号強度が周波数軸上で突出する部分を検出し、そのピーク周波数およびピーク周波数における信号強度を抽出する(S4)。
【0041】
その後、隣接する(前回の)ビーム方位において抽出したピーク周波数およびその信号強度を参照して、今回のビーム方位におけるピーク周波数と、その信号強度をどのグループに入れるかを判定する(S5)。すなわち、ピーク周波数の周波数差が一定周波数以内であるものをグルーピングする。
【0042】
その後、ビーム方位をビーム1本分変位させ、同様の処理を行う(S6→S7→S2→・・・)。
【0043】
以上の処理を最終ビームまで繰り返し行うことによって、方位方向に所定幅広がる探知範囲について、上り変調区間と下り変調区間についてのビーム方位毎のピーク周波数スペクトルを求める。
【0044】
続いて、各グループの、代表方位、代表ピーク周波数、代表信号強度、方位方向の信号強度分布を求める(S8)。例えばビーム方位方向と周波数軸方向に広がるグループの中心方位を代表方位とし、その方位において周波数軸上に広がる周波数範囲の中心を代表ピーク周波数とし、その代表ピーク周波数における信号強度を代表信号強度とする。また、グループの代表周波数における方位方向の信号強度変化を受信信号強度分布のデータとして求める。
【0045】
その後、各グループの中心方位を後述する方法により求める(S10)。そして物標までの距離とともに正確に求めた物標の中心方位のデータを後段システムへ出力する(S11)。
【0046】
図7は所定距離におけるアップビート信号またはダウンビート信号についての受信信号強度のビーム方位方向の分布の例を示している。ここで横軸はビームの中心方位であり、受信信号強度分布のうち山形に突出する範囲について表している。縦軸は受信信号強度のピーク値を1として正規化した受信信号強度である。図中の丸印は各ビーム方位における受信信号強度を示している。これら複数の丸印で示す点を結ぶ曲線DLが方位方向の受信信号強度の分布である。この受信信号強度分布DLは底辺の方位幅IB、高さIHとする二等辺三角形ILで近似することができる。以下この二等辺三角形ILを近似二等辺三角形という。この近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBはこの物標までの距離におけるビームの方位幅と物標の方位幅とにより定まる。すなわち物標の方位方向の幅が広いほどIBは広くなり、ビームの方位方向の幅が広いほどIBは広くなる。しかし、物標の方位幅として採り得る幅は限られている。例えば車載用ミリ波レーダであれば、車両が探知すべき物標である。そのため、近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBはこの物標までの距離におけるビームの方位幅により定めることができる。
【0047】
また、同一サイズの物標であってもレーダのアンテナからの距離が近くなるほど物標の方位幅は大きくなり、遠ざかるほど物標の方位幅は狭くなる。しかし、探知すべき物標の距離範囲は限られている。例えば車載用ミリ波レーダであれば、10[m]より遠方の車両を探知対象とする場合が多い。そのため、上記近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBは物標までの距離にもよらずにビームの方位幅から定まる一定値とすることができる。
【0048】
なお、受信信号強度の絶対値は物標の大きさと反射係数に比例し、物標までの距離の2乗に反比例するが、受信信号強度のピーク値を1として正規化すれば、近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBはビームの方位幅のみにより定まる。但し、図7では図を見やすくするために、受信信号強度分布DLのピークを1として正規化したように表している。
【0049】
さて、図6は図5のステップS10での物標の中心方位を検知するための処理手順をフローチャートとして表している。まず探知可能な距離範囲の各距離毎に略同一距離における受信信号強度分布を求める(S111)。続いて各距離毎に受信信号強度がピークとなる方位を検出する(S112)。図7に示した例では受信信号強度がピークを示すビーム方位A3が検出される。その後、ピーク方位から所定本数離れたビームの受信信号強度と近似二等辺三角形の底辺の方位幅とにより物標の中心方位を算出する(S113)。図7に示した例では、ピーク方位A3から中心方位検出用方位幅DWだけ離れたビームの受信信号強度L1,L5を抽出し、次の式により近似二等辺三角形ILの中心方位Tdを物標の中心方位として求める。
【0050】
図7においてそれぞれハッチングで示した高さL1とL5の2つ直角三角形の底辺の合計の長さは、近似二等辺三角形の底辺長さIBから(A5−A1)分を引いたものとなり、この2つの三角形は縦軸に対称な相似形であるので、高さL1の直角三角形の底辺長さは、{IB−(A5−A1)}L1/(L1+L5)となる。
【0051】
物標の中心方位TdはA1より上記底辺長さを引いたものに、近似二等辺三角形の底辺IBの半分の長さを加えたものとなるので、
Td=A1+IB/2−{(IB−A5+A1)L1}/(L1+L5) …(1)
と表される。
【0052】
ここで、
A1=−2.0°
A2=−1.0°
A3=0°
A4=1.0°
A5=2.0°
IB=6.2°
L1=0.27
L5=0.51
とすると、物標方位Tdは0.33°となる。このようにして、ビームの幅より高い分解能で、また方位方向のサンプリング間隔より高い分解能で物標の中心方位が検知できる。
【0053】
図8は物標の大きさ、物標までの距離を同一条件としてビーム方位を変化させたときの受信信号強度分布の変化を示している。但し、図における横軸は一次放射器の誘電体レンズに対する相対位置をとっている。一次放射器は誘電体レンズの焦点面内を誘電体レンズの光軸に対して略垂直な直線に沿った方向または曲線に沿った方向を移動するが、光軸から離れるほど誘電体レンズのコマ収差の影響により、ビームの方位方向の幅またはそれに垂直な方向の幅が広がるので、ビーム方位が正面から離れるほどビーム幅が広がるとともに受信信号強度のピーク値は相対的に低下する。したがって上記ピーク方位に応じて近似二等辺三角形の底辺(方位幅)IBを定めるためのビームの方位幅を変化させれば、受信信号強度分布に現れる山形のパターンの二等辺三角形への近似(山形のパターンに対する二等辺三角形のマッチング)をより高精度に行うことができる。また、このビーム方位による受信信号強度の変動に応じて中心方位検出用方位幅DWを適宜変更するようにしてもよい。
【0054】
なお、上記近似二等辺三角形の底辺(方位幅)IBとを定めるためのビームの方位幅と中心方位検出用方位幅DWを式の演算により算出してもよいし、予めテーブルとして作成しておき、そのテープル参照によって求めるようにしてもよい。
【0055】
次に、第2の実施形態に係るレーダについて図9・図10を基に説明する。
第1の実施形態と異なるのは物標の中心方位を検知するための処理内容である。図7に示した例では受信信号強度分布から求めたピーク方位A3を中心として中心方位検出用方位幅DWだけ離れた2つのビームでの受信信号強度を基に、近似二等辺三角形の頂点方位を求めたが、この図9に示す例では、上記中心方位検出用方位幅DWとして3通りの中心方位検出用方位幅DW1,DW2,DW3を定め、それぞれの方位幅だけピーク方位から離れたビームでの受信信号強度を基に中心方位を検知する。
【0056】
図10は、第1の実施形態における図5のステップS10の処理手順を示すフローチャートである。まず、探知可能な距離範囲の各距離毎に略同一距離における受信信号強度分布を求める(S111)。続いて各距離毎に受信信号強度がピークとなる方位A3を検出する(S112)。そして、中心方位検出用方位幅DWとして3通りの中心方位検出用方位幅DW1,DW2,DW3を定め、それぞれの方位幅だけピーク方位から離れたビームでの受信信号強度を求め、それぞれの方位幅だけピーク方位から離れたビームでの受信信号強度を基に近似二等辺三角形の頂点方位を求める(S113′)。その後、それらの頂点方位を加重平均した値を物標の中心方位として検知する。
【0057】
具体的には中心方位検出用方位幅DW1,DW2,DW3とした時のそれぞれについて(1)式を基に物標の中心方位Td1,Td2,Td3をそれぞれ算出し、それらの加重平均によって最終的に物標の中心方位を算出する。ここで中心方位検出用方位幅を小さく設定するほど、ピーク方位付近の受信信号強度を基に中心方位を算出することになるので、中心方位を検知するための信頼性が高いものと見なす。すなわち、中心方位Td1,Td2,Td3の加重平均の重みをそれぞれWd1,Wd2,Wd3とすれば、
Td=(Wd1・Td1+Wd2・Td2+Wd3・Td3)/(Wd1+Wd2+Wd3) …(2)
の演算によって求める。ここで各重みはWd1>Wd2>Wd3の関係とする。
【0058】
図9に示した例では中心方位検出用方位幅を3通りに定めたが、これをさらに増やしてもよい。また、受信信号強度分布の全体形状を重視して受信信号強度分布と近似二等辺三角形とのマッチングを行う場合には、ピーク方位からある程度離れたビーム方位での受信信号強度を基にした中心方位の重みを増して、中心方位検出用方位幅がそれより狭いほど、およびそれより広いほどその重みを低下するように加重平均の重みを設定してもよい。
【0059】
次に、第3の実施形態に係るレーダについて図11を参照して説明する。
図11は所定距離におけるアップビート信号またはダウンビート信号についての受信信号強度のビーム方位方向の分布の例を示している。ここで横軸はビームの中心方位であり、受信信号強度分布のうち山形に突出する範囲について表している。各ビーム方位の受信信号強度は図7の場合と同様である。
【0060】
第1・第2の実施形態では、受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位を挟む中心方位検出用方位幅分左右の方位における受信信号強度とビームの方位幅とに基づいて物標の中心方位を検知するようにしたが、この第3の実施形態では、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の大きい方の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づいて物標の中心方位を検知する。すなわち、図11に示した例では、ピーク方位A3に隣接する2つの方位A2,A4のうち受信信号強度の大きいビーム方位A4の受信信号強度と、ピーク方位A3の受信信号強度L3とを抽出し、次の式により近似二等辺三角形ILの中心方位Tdを物標の中心方位として求める。
【0061】
Td=A3+IB/2−{(IB−A4+A3)L3}/(L3+L4) …(3)
この(3)式の導出は、(1)式の場合と同じである。
【0062】
次に、第4の実施形態に係るレーダについて図12・図13を参照して説明する。
第1〜第3の実施形態では、ビームの方位幅により定まる方位幅を近似二等辺三角形の底辺として定めたが、この第4の実施形態では、近似二等辺三角形の2つの斜辺上の点から近似二等辺三角形の頂点方位を求め、その方位を物標の中心方位として検知する。
【0063】
図13は、第1の実施形態における図5のステップS10の処理手順を示すフローチャートである。まず、探知可能な距離範囲の各距離毎に略同一距離における受信信号強度分布を求める(S111)。続いて各距離毎に受信信号強度がピークとなる方位A3を検出する(S112)。そして、それに隣接する方位方向の左右の4つのビームにおける受信信号強度L1,L2,L4,L5をそれぞれ求める。そして、この4点を近似二等辺三角形の2つの斜辺上の点とする、その近似二等辺三角形の頂点の方位を物標の中心方位Tdとして算出する。
【0064】
ここで、
A1=−2.0°
A2=−1.0°
A3=0°
A4=1.0°
A5=2.0°
L1=0.27
L2=0.65
L4=0.90
L5=0.51
とし、縦軸を受信信号強度L、横軸をビーム方位aで表せば、近似二等辺三角形ILの左側の斜辺の直線は、L=0.38a+1.02で表される。同様に近似二等辺三角形ILの右側の斜辺の直線はL=−0.39a+1.29で表される。これにより、この2つの直線が交わる近似二等辺三角形ILの頂点方位はa=0.34°となり、物標の中心方位は0.34°として求まる。
【0065】
なお、図12に示した例では、ピーク方位A3を中心として方位方向に順に隣接する4つのビーム方位A2,A1,A4,A5についてそれぞれの受信信号強度を抽出したが、近似二等辺三角形の2つの斜辺上の点とするビーム方位はこれに限らず、たとえばピーク方位から2つ隣のビームと3つ隣のビームとの2点や、1つ隣のビームと3つ隣のビームとの2点を抽出してもよいし、1つ隣からn個隣までの任意の複数のビーム方位で得られた受信信号強度から最小二乗法等によって近似直線を求め、その2つの近似直線の交点を物標の中心方位として算出するようにしてもよい。
【0066】
次に、第5の実施形態に係るレーダについて図14を基に説明する。
第1〜第4のいずれの実施形態でも、2つまたは2つ以上のビーム方位における受信信号強度の点が2つの斜辺上に位置するように二等辺三角形を求め、その二等辺三角形の頂点に相当する中心方位Tdを物標の中心方位として求めるようにした。しかしこの第6の実施形態では、二等辺三角形の一方の斜辺のみ用いて、その二等辺三角形の頂点に相当する中心方位Tdを物標の中心方位として求める。
【0067】
図14において、最大値を示す方位A3における受信信号強度L3と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分右(この例では1つ右隣)の方位A4の受信信号強度L4と中心方位検出用方位幅分左(この例では1つ左隣)の方位A2の受信信号強度L2を比較し、受信信号強度が小さい方の点と、受信信号強度が最大値となる点とが二等辺三角形の一方の斜辺上に乗り、底辺(方位幅)がIBである二等辺三角形ILを求める。
【0068】
なお、最大値を示す方位から右の方位A4の受信信号強度L4と左の方位A2の受信信号強度L2を比較して、受信信号強度が小さい方の方向に並ぶ複数点を用いてもよい。図14に示した例では、方位A1における受信信号強度L1も用いて、L3,L2,L1の複数の点を通る近似直線が二等辺三角形の一方の斜辺となるように、その二等辺三角形を求めてもよい。
【0069】
次に、第6の実施形態に係るレーダについて図15を基に説明する。
第1〜第4のいずれの実施形態でも探知方位範囲内に物標の中心方位が存在し、受信信号強度分布に山形のパターンが現れた例を示したが、物標の中心方位が探知方位範囲の最端の方位またはそれより外側に存在する場合には、物標からの反射波に起因して生じる受信信号強度分布の山形のパターンの一部のみが探知方位範囲内での受信信号強度分布に表れることになる。この第6の実施形態ではその場合に対応して物標の中心方位を検知する。
【0070】
すなわち、方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表した時、複数の受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、ビームの方位幅により定まる方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する。図15に示した例では、ビーム方位A3の受信信号強度L3とビーム方位A4の受信信号強度L4とに基づいて近似二等辺三角形ILの頂点方位Tdを物標の中心方位として検知する。
【0071】
ここで、ビーム方位A3=−10°、A4=−9°とし、A3,A4のそれぞれにおける受信信号強度L3=0.9、L4=0.52とすれば、近似二等辺三角形ILの右側の斜辺の直線はL=−0.38a−2.9で表され、L=0の時のaは−7.6であり、近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBを6.4°とすれば、上記−7.6からIB/2=3.2を差し引いて、近似二等辺三角形ILの頂点方位Tdを−10.8°として算出する。この例では探知方位範囲が−10°から+10°であるので、このようにして探知方位範囲外に存在する物標の中心方位を検知できたことになる。
【0072】
次に、第7の実施形態に係るレーダについて図16を参照して説明する。
図15に示した例では、物標の中心方位が探知方位角度範囲外に存在する場合について示したが、探知方位角度範囲の端がピーク方位となる場合でも、物標の中心方位が探知方位角度範囲内に存在する場合がある。図16はその場合について示している。すなわち、ピーク方位A3の受信信号強度を示す点と、それに隣接する内側のビーム方位A4の受信信号強度を示す点は二等辺三角形の2つの斜辺上にそれぞれ存在している。
【0073】
図16において、高さL3の左側の直角三角形と高さL4の右側の直角三角形とに着目し、まず近似二等辺三角形の頂点方位がA3に等しい場合を考えると、右側の直角三角形の底辺はIB/2−(A4−A3)、左側の直角三角形の底辺はIB/2である。また左右の2つの直角三角形は相似形であるので、次の関係が成り立つ。
【0074】
L4/L3={IB/2−(A4−A3)}/(IB/2)
そして二等辺三角形の頂点方位がA3からずれても、左右の直角三角形は相似形を保つので、図16に示したように、方位A3が近似二等辺三角形の左の斜辺に存在するか否かは次の不等式を満足するか否かによって判定できる。
【0075】
L4/L3>(IB/2−(A4−A3))/(IB/2) …(4)
この条件を満足する場合は、第3の実施形態で示したとおり、(3)式に基づいて物標の中心方位を検知する。そして、(4)式を満足しない場合には、第6の実施形態で示した方法により物標の中心方位を検知する。
【0076】
次に、第8の実施形態に係るレーダについて図17・図18を参照して説明する。
図17はレーダのアンテナから見た各物標の方位と距離およびアンテナのメインローブとサイドローブとの関係を示している。アンテナはそのレンズアンテナと一次放射器との関係からメインローブMLの方位が定まり、それとともにメインローブとは異なった方向にサイドローブSL1,SL2が生じる。この図17は、物標Bが存在する場合にメインローブMLによって物標Bが探知される状態(物標Bからの反射波が受信される位置関係)で、且つサイドローブSL1によって物標Aに対してビームが送波され、その反射波が受信される状態を示している。
【0077】
図18はサイドローブSL1による物標Aの受信信号強度分布と、物標Bが存在する場合のメインローブMLによる受信信号強度分布を重ねて表している。ここでDLsは−9°方向に存在する物標Aによる受信信号強度分布、DLmは−2°方向に物標Bが存在する時のメインローブMLによる受信信号強度分布である。
【0078】
受信信号強度分布DLsの各方位の受信信号強度に基づいて、第4の実施形態(図12に示した方法)に基づいて物標の中心方位を算出すると、近似二等辺三角形ILsの頂点方位−2.7°が求まるが、もちろんその値は実際の物標Aの方位−9°とは大きくかけ離れた値となってしまう。
【0079】
この図18に示したように、ビームの方位幅はメインローブMLに比べてサイドローブSLのビームの方位幅は狭いため、物標の方位幅が同じであれば受信信号強度分布から求めた近似二等辺三角形の底辺の幅(方位幅)はメインローブによる受信信号強度分布DLmから求めた近似二等辺三角形の底辺より狭いものとなる。この関係を利用して、誤った物標の中心方位が検知されないように処理する。
【0080】
具体的には、方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表した時、複数の受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の底辺の方位幅を求め、それがメインローブによる近似二等辺三角形の底辺の方位幅より短い場合に、前者の近似二等辺三角形を求める基になった受信信号強度分布はサイドローブによるものとみなして、その近似二等辺三角形の頂点方位を物標の中心方位としては出力しない。
【0081】
次に、第9の実施形態に係るレーダについて図19〜図23を参照して説明する。
第1〜第8の実施形態では、単一の物標により受信信号強度分布に単一の山形のパターンが現れる例を示したが、略同一距離で且つ方位方向に近接した位置に複数の物標が存在するとき、それぞれの物標について中心方位を検知するための処理を行う必要がある。この第9の実施形態ではその処理を行う。
【0082】
図19はレーダとその前方の2つの物標A,Bとの関係を示している。また図20はその場合の受信信号強度分布の例を示している。仮に図19に示した物標Aだけが存在する場合には、受信信号強度分布はDL1で示すような形状となる。逆に、物標Bだけが存在する場合には、受信信号強度分布はDL2で示すような形状となる。そして物標A,Bの両方が存在することによって得られる受信信号強度分布はDLのように崩れた双峰形状の山形パターンとなる。
【0083】
図23はこの第9の実施形態に係るレーダでの物標の中心方位を検知のための処理手順を示すフローチャートである。まず、探知可能な距離範囲の各距離毎に略同一距離における受信信号強度分布を求める(S111)。続いて各距離毎に受信信号強度がピークとなる方位を検出する(S112)。その後、受信信号強度分布DLの所定のしきい値での方位範囲に対するピーク方位の偏りを検出する(S116)。この例では図20に示したように、所定のしきい値での方位範囲DBの中央よりピーク方位Apは左方向に偏っている。
【0084】
続いて、この偏っている側の受信信号強度分布DLの傾斜にマッチングする近似二等辺三角形から、一方の物標の中心方位を検知する(S117)。図21はその例を示している。ここで受信信号強度分布DLの左側の傾斜に左側の斜辺がマッチングする近似二等辺三角形IL1を求める。この斜辺の傾きと上記近似二等辺三角形IL1の底辺の1/2の方位範囲(IB2/2)から上記近似二等辺三角形の頂点方位Td1を求める。この方位Td1が図19に示した物標Aの方位である。
【0085】
続いて、受信信号強度分布DLから上記近似二等辺三角形IL1の分布を差し引くことによって、もう一方の物標からの反射波に起因する受信信号強度分布を求める(S118)。図22の(A)はその例を示している。元の受信信号強度分布DLから近似二等辺三角形IL1の分布を差し引くことによって新たな受信信号強度分布DL2′を求める。なお、図20に示した物標A,Bによるそれぞれの受信信号強度分布DL1とDL2は必ずしも同位相で重なっているわけではないので、実際に求められる受信信号強度分布DLはDL1とDL2の単純な足し算ではない。しかし概略的にはその足し算として扱うことができる。
【0086】
その後、受信信号強度分布DL2′の傾斜にマッチングする近似二等辺三角形からもう一つの物標の中心方位を検知する(S119)。図22の(B)はその例を示している。すなわち、新たに求めた受信信号強度分布DL2′の一方の傾斜部分にマッチングする近似二等辺三角形の斜辺IS2を求め、このIS2の傾きと近似二等辺三角形の底辺の方位幅IBの1/2から上記近似二等辺三角形の頂点方位Td2を物標の中心方位として求める。
【0087】
この近似二等辺三角形の斜辺は先に求めた物標の中心方位Td1から遠い方の傾斜部分にマッチングさせる。このことにより元々の受信信号強度分布DLの一部の形状にマッチングさせるようになり、すなわち、物標Bからの反射波に起因して生じる受信信号強度分布の有効な形状を利用することになり、物標Bの中心方位を高精度に求めることができる。
【0088】
なお、上述の例では、略同一距離で且つ方位方向に2つの物標が近接した場合について示したが、略同一距離で且つ方位方向に3つ以上の物標が存在する場合についても同様の方法を適用する。すなわち、図23に示した処理でステップS112〜S119を繰り返すことにより、中心方位を検知した物標に対応する二等辺三角形分の分布を受信信号強度分布から順次差し引く。このことにより、複数の物標の各物標の中心方位を順次検知する。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばミリ波帯の電波を用いて車両などの物標を探知するレーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載され、例えば車間距離などを測定するレーダとして特許文献1が開示されている。
上記特許文献1に示されているレーダは、ビーム走査手段によりビームの方向を3方向に切り替えて、同一の物標が方向の異なった複数のビームで検出された時に、それぞれの方向の受信信号強度に応じて物標の角度を演算し、単一のビーム方向でのみ検出されたときには、予め設定されている角度であるとものと判定する。
【特許文献1】特開2000−338222公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような従来の車載用レーダにおいては、探知用電波のビーム幅以下の分解能で物標の動きを追跡することができない。また、ビームの方位方向の変化に対する受信信号強度の変化をみたとき、受信信号強度がピークを示すビームの方位が必ずしも物標の中心位置に正確に一致するものとは限らないため、物標の方位測定精度が低い、といった問題があった。
【0004】
特許文献1に記載された方法とは別に、ビーム幅を極力狭くし、そのビームを方位方向にスキャニングするようにした場合でも、方位方向の分解能は方位方向のサンプリング間隔で決定されてしまう。
【0005】
この発明の目的は、探知用電波のビーム幅より高い分解能で、または方位方向のサンプリング間隔より高い分解能で物標の方位を検知できるようにし、また受信信号強度のピーク位置が物標の中心からずれる問題を解消して、物標の位置検知能力を高めたレーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させて、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位を挟む中心方位検出用方位幅分左右の方位における受信信号強度とビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0007】
また、この発明のレーダは、前記物標中心方位検知手段が、前記ピーク検出用方位幅を複数とおりに定めて、各々の前記近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を検出するとともに、それらの方位を加重平均する手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させて、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の大きい方の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、前記受信信号強度分布のうち、所定距離で最大値を示す方位を挟む所定のピーク検出用方位幅分左右の複数の方位における受信信号強度に基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、前記複数の受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標の中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、この発明のレーダは、前記近似二等辺三角形の底辺が前記ビームの方位幅より短い場合に、その近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として扱わないように処理する手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の小さい方向の1つまたは複数の方位における受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、所定距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位の受信信号強度と、該最大値を示す方位より一つまたは複数の中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位での受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
また、この発明のレーダは、所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
受信信号の最大値を示す方位が、前記中心方位の探知方位角度範囲の端(左または右)であった場合に、
ビームの方位幅の半分に対するビームの方位幅の半分から中心方位検出用方位幅を差し引いた方位幅の比が、対象物標までの距離における前記受信信号強度のうち最大値を示す最も外側の方位における信号強度と該最大値を示す方位より中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位の受信信号強度との比より小さいという条件を満たすとき、前記最大値を示す最も外側の方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位より一つまたは複数の前記中心方位検出用方位幅分内側の方位の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知し、
前記条件を満たさないときに、対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と該最大値を示す方位より一つまたは複数の中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位における受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する、物標中心方位検知手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
また、この発明のレーダは、所定距離における前記受信信号強度分布の方位方向の広がりが前記ビームの方位幅より広いとき、前記物標中心方位検知手段により検知された物標の方位を頂点、前記ビームの方位幅を底辺とする二等辺三角形分の分布を前記受信信号強度分布から差し引く手段を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、この発明のレーダは、前記受信信号強度分布修正手段が、中心方位を検知した物標に対応する前記二等辺三角形分の分布を前記受信信号強度分布から順次差し引くものとする。
【0016】
また、この発明のレーダは、前記受信信号強度分布検出手段が、前記ビームの中心方位を探知方位角度範囲内で変化させ、前記物標中心方位検知手段が、前記ビームの前記探知方位角度範囲内での中心方位に応じて前記ピーク検出用方位幅を変化させる手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、受信信号強度分布検出手段が所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出し、物標中心方位検知手段は対象物標までの距離における受信信号強度分布のうち最大値を示す方位を挟む所定のピーク検出用方位幅分左右の方位における受信信号強度とビームの方位幅とに基づいて物標の方位を検知する。物標方位とビーム走査により得られる受信信号強度分布を、方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表せば、その分布は近似的にビームの方位幅により定まる方位幅を底辺とする二等辺三角形の形状を示すので、これにより探知用電波のビーム幅より高い分解能で、または方位方向のサンプリング間隔より高い分解能で物標の方位を検知できる。
【0018】
またこの発明によれば、前記ピーク検出用方位幅を複数とおりに定めておき、各々のピーク検出用方位幅で求めた物標の中心方位を加重平均することによって受信信号強度分布の形状に応じたより高精度な物標中心方位の検知が可能となる。
【0019】
またこの発明によれば、受信信号強度分布検出手段が所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出し、物標中心方位検知手段が対象物標までの距離における受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の大きい方の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づいて物標の中心方位を検知する。これにより受信信号強度分布に表れる山形の頂上付近の受信信号強度を重視した物標の方位検知が可能となる。
【0020】
またこの発明によれば、方位変化に対する受信信号を強度分布の複数の受信信号強度を、2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点を物標の方位として検知することにより、受信信号強度分布の複数の点から物標の中心方位をより正確に求めることができる。
【0021】
またこの発明によれば、受信信号強度分布のうち受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形に当てはめた時、その近似二等辺三角形の底辺がビームのメインローブにより生じる方位幅より短い場合に、その近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として扱わないように処理することにより、サイドローブによる受信信号強度分布から誤って物標の中心方位が検知されるのを防止することができる。
【0022】
また、この発明によれば、方位変化に対する受信信号を強度分布の複数の受信信号強度を、一方の斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点を物標の方位として検知することにより、受信信号強度分布の複数の点から物標の中心方位をより正確に求めることができる。
【0023】
またこの発明によれば、受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位の所定のピーク検出用方位幅分左または右の複数の方位での受信信号強度に基づいて受信信号強度分布の形状を二等辺三角形に当てはめた時の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知するようにしたことにより、物標からの反射波に起因して生じる受信信号強度分布に表れる山形のパターンが所定の探知方位角度範囲内の両端付近に存在しても、物標の中心方位を検知できるようになる。その結果、上記探知方位角度範囲内の略全角度範囲に亘って物標の中心方位を検知できるようになる。
【0024】
またこの発明によれば、受信信号の最大値を示す方位が、探知方位角度範囲の端(左または右)であった場合でも、その最大値が得られた方位より中心方位検出用方位幅分内側の方位での信号強度が、二等辺三角形の2つの斜辺上の点と見なせる場合には、その2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する。そのため、探知方位角度範囲の端部付近でも物標の中心方位を正確に検知できるようになる。
【0025】
またこの発明によれば、2つの物標がビームの方位幅より方位方向に近接している時、それらの物標からの反射波により生じる受信信号強度分布としては2つの山形が部分的に重なった分布が得られるが、この発明によれば、受信信号強度分布の方位方向の広がりがビームの方位幅より広い時、上述の一方の斜辺上の点に相当する受信信号強度から求めた方位に存在する物標によって生じる近似二等辺三角形分の分布を受信信号強度分布から差し引くようにしたので、残る他の物標に起因して生じる受信信号強度分布を抽出できるようになる。その結果、ビームの方位幅より近接している2つの物標についてもそれぞれの中心方位が検知できるようになる。
【0026】
またこの発明によれば、受信信号強度分布検出手段が、ビームの中心方位を探知方位角度範囲内で変化させ、物標中心方位検知手段がビームの探知方位角度範囲内での中心方位に応じてピーク検出用方位幅を変化させることにより、ビームの中心方位が変化することに伴ってビームの方位幅が変化しても物標の中心方位を高精度に検知できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係るレーダの信号系の構成を示すブロック図である。
【図2】アンテナ、ビームおよび物標の位置関係の例を示す図である。
【図3】同レーダの上り変調区間と下り変調区間に生じるビート信号の周波数差の例を示す図である。
【図4】突出部グループの方位方向の信号強度分布の例を示す図である。
【図5】同レーダの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図5におけるステップS10の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】受信信号強度分布と近似二等辺三角形との関係を示す図である。
【図8】ビーム方位と受信信号強度分布の形状変化の例を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係るレーダの物標中心方位検知方法を示す図である。
【図10】同物標中心方位検知の手順を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施形態係る受信信号強度分布と近似二等辺三角形との関係を示す図である。
【図12】第4の実施形態に係るレーダの物標中心方位検知方法を示す図である。
【図13】同物標中心方位検知の手順を示すフローチャートである。
【図14】第5の実施形態に係るレーダの物標中心方位検知方法を示す図である。
【図15】第6の実施形態に係るレーダの物標中心方位検知方法を示す図である。
【図16】第7の実施形態係る受信信号強度分布と近似二等辺三角形との関係を示す図である。
【図17】第8の実施形態に係るメインローブ、サイドローブおよび物標の位置関係の例を示す図である。
【図18】メインローブとサイドローブによる受信信号強度分布の形状の違いを示す図である。
【図19】第9の実施形態に係るレーダに対する2つの物標の位置関係の例を示す図である。
【図20】同関係により生じる受信信号強度分布の例を示す図である。
【図21】一方の物標の中心方位を検知する方法を示す図である。
【図22】他方の物標の中心方位を検知する方法を示す図である。
【図23】同レーダの物標中心方位検知方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
IL−近似二等辺三角形
IB−近似二等辺三角形の底辺(方位幅)
IH−近似二等辺三角形の高さ
Td−近似二等辺三角形の頂点方位(物標の中心方位)
DL−受信信号強度分布
DW−中心方位検出用方位幅
IS−近似二等辺三角形の斜辺
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
第1の実施形態に係るレーダについて図1〜図8を参照して説明する。
図1はレーダの全体の構成を示すブロックである。ここでVCO1は、DAコンバータ11より出力される制御電圧に応じて発振周波数を変化させる。アイソレータ2は、VCO1からの発振信号をカプラ3側へ伝送し、VCO1へ反射信号が入射するのを阻止する。カプラ3は、アイソレータ2を経由した信号をサーキュレータ4側へ伝送するとともに、所定の分配比で送信信号の一部をローカル信号Loとしてミキサ6へ与える。サーキュレータ4は、送信信号をアンテナ5側へ伝送し、また、アンテナ5からの受信信号をミキサ6へ与える。アンテナ5は、VCO1のFM変調された連続波のミリ波ビームを送信し、同方向からの反射信号を受信する。また、そのビームの方向を探知角度範囲に亘って周期的に変化させる。
【0030】
ミキサ6は、カプラ3からのローカル信号Loとサーキュレータ4からの受信信号とをミキシングして中間周波信号IFを出力する。IF増幅回路7は、その中間周波信号を距離に応じた所定のゲインで増幅する。ADコンバータ8は、その電圧信号をディジタルデータに変換してDSP9へ与える。DSP9は、A/Dコンバータ8により変換されたディジタルデータを少なくとも1スキャン分(所定の探知角度範囲内での複数本のビーム走査分)だけ一時蓄積し、後述する処理によって、アンテナを中心とする物標の方位、物標までの距離、およびアンテナに対する物標の相対速度を算出する。マイクロコントローラユニット(MCU)10はD/Aコンバータ11に対してVCO1の変調用データを順次与え、VCO1の発振周波数を三角波状に連続してFM変調させる。またスキャン機構12に対してアンテナ5の指向方向を変更させるための処理を行う。さらにVCO1に対する変調信号のタイミングとアンテナ5の指向方位に関するデータをDSP9へ与える。
【0031】
上記DSP9はA/Dコンバータ8により変換されたディジタルデータを入力し、周波数スペクトルを求めるためのFFT演算処理部91、その周波数スペクトルから周波数軸上のピーク位置を検出する突出部検出処理部92、検出した物標の中心方位を検知するための方位算出処理部93、およびその物標までの距離と相対速度を算出する処理部94とを備えている。
【0032】
図2は、物標である車両、アンテナ、およびビームの位置関係について示している。ここでb−n〜b0〜b+nは、それぞれアンテナ5による探知用電波のビームであり、探知角度範囲に亘ってアンテナ5の指向方向を変化させることによってビームを走査する。
【0033】
図3は、物標までの距離と相対速度に起因する、送信信号と受信信号の周波数変化のずれの例を示している。送信信号の周波数上昇時における送信信号と受信信号との周波数差がアップビートの周波数fBUであり、送信信号の周波数下降時における送信信号と受信信号との周波数差がダウンビートの周波数fBDである。Δfは周波数偏位幅である。この送信信号と受信信号の三角波の時間軸上のずれ(時間差)が、アンテナから物標までの電波の往復時間に相当する。また、送信信号と受信信号の周波数軸上のずれがドップラシフト量であり、これはアンテナに対する物標の相対速度に起因して生じる。この時間差とドップラシフト量によってアップビートfBUとダウンビートfBDの値が変化する。すなわち、このアップビートとダウンビートの周波数を検出することによって、レーダから物標までの距離およびレーダに対する物標の相対速度を算出する。
【0034】
図4は方位別周波数スペクトルを方位方向に並べた例を示している。図4の(A)は、方位の異なるビーム毎の上り変調区間でのビート信号の周波数スペクトルに現れる突出部のピーク周波数を示す図、(B)は、下り変調区間でのビート信号の周波数スペクトルに現れる突出部のピーク周波数を示す図である。ここで横軸にビーム方位、縦軸に周波数スペクトルに含まれる突出部の周波数を採って直角座標で表している。
【0035】
この例では、(A)に示すように上り変調区間で、ビーム方位方向および周波数方向にそれぞれある形状で分布する突出部グループGu1,Gu2が生じている。また、(B)に示すように下り変調区間でもビーム方位方向および周波数方向にそれぞれある形状で分布する突出部グループGd1,Gd2が生じている。
【0036】
この図4では、周波数スペクトルに含まれる突出部の位置のみを黒丸で表したが、その強度(受信信号強度)の分布は方位方向に山形の形状をなす。
【0037】
ここで、上り変調区間と下り変調区間にそれぞれ現れる複数の突出部グループのうちどの突出部グループ同士がペアとなるか、すなわち同一物標からの反射に起因して生じたグループであるかの判定(ペアリング)を行う。
【0038】
そして、ペアとなる2つのグループの上り変調区間での周波数と下り変調区間での周波数とに基づいて、物標までの距離と相対速度を求める。
【0039】
図5は、図1に示したDSP9およびMCU10の処理手順を示すフローチャートである。まず、スキャン機構12の制御によって、ビームを初期方位に向ける(S1)。その状態で、A/Dコンバータ8により変換されたビート信号のディジタルデータを所定のサンプリング数だけ取得し、それについてFFT処理する(S2→S3)。
【0040】
続いて、周波数スペクトルの信号強度が周波数軸上で突出する部分を検出し、そのピーク周波数およびピーク周波数における信号強度を抽出する(S4)。
【0041】
その後、隣接する(前回の)ビーム方位において抽出したピーク周波数およびその信号強度を参照して、今回のビーム方位におけるピーク周波数と、その信号強度をどのグループに入れるかを判定する(S5)。すなわち、ピーク周波数の周波数差が一定周波数以内であるものをグルーピングする。
【0042】
その後、ビーム方位をビーム1本分変位させ、同様の処理を行う(S6→S7→S2→・・・)。
【0043】
以上の処理を最終ビームまで繰り返し行うことによって、方位方向に所定幅広がる探知範囲について、上り変調区間と下り変調区間についてのビーム方位毎のピーク周波数スペクトルを求める。
【0044】
続いて、各グループの、代表方位、代表ピーク周波数、代表信号強度、方位方向の信号強度分布を求める(S8)。例えばビーム方位方向と周波数軸方向に広がるグループの中心方位を代表方位とし、その方位において周波数軸上に広がる周波数範囲の中心を代表ピーク周波数とし、その代表ピーク周波数における信号強度を代表信号強度とする。また、グループの代表周波数における方位方向の信号強度変化を受信信号強度分布のデータとして求める。
【0045】
その後、各グループの中心方位を後述する方法により求める(S10)。そして物標までの距離とともに正確に求めた物標の中心方位のデータを後段システムへ出力する(S11)。
【0046】
図7は所定距離におけるアップビート信号またはダウンビート信号についての受信信号強度のビーム方位方向の分布の例を示している。ここで横軸はビームの中心方位であり、受信信号強度分布のうち山形に突出する範囲について表している。縦軸は受信信号強度のピーク値を1として正規化した受信信号強度である。図中の丸印は各ビーム方位における受信信号強度を示している。これら複数の丸印で示す点を結ぶ曲線DLが方位方向の受信信号強度の分布である。この受信信号強度分布DLは底辺の方位幅IB、高さIHとする二等辺三角形ILで近似することができる。以下この二等辺三角形ILを近似二等辺三角形という。この近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBはこの物標までの距離におけるビームの方位幅と物標の方位幅とにより定まる。すなわち物標の方位方向の幅が広いほどIBは広くなり、ビームの方位方向の幅が広いほどIBは広くなる。しかし、物標の方位幅として採り得る幅は限られている。例えば車載用ミリ波レーダであれば、車両が探知すべき物標である。そのため、近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBはこの物標までの距離におけるビームの方位幅により定めることができる。
【0047】
また、同一サイズの物標であってもレーダのアンテナからの距離が近くなるほど物標の方位幅は大きくなり、遠ざかるほど物標の方位幅は狭くなる。しかし、探知すべき物標の距離範囲は限られている。例えば車載用ミリ波レーダであれば、10[m]より遠方の車両を探知対象とする場合が多い。そのため、上記近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBは物標までの距離にもよらずにビームの方位幅から定まる一定値とすることができる。
【0048】
なお、受信信号強度の絶対値は物標の大きさと反射係数に比例し、物標までの距離の2乗に反比例するが、受信信号強度のピーク値を1として正規化すれば、近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBはビームの方位幅のみにより定まる。但し、図7では図を見やすくするために、受信信号強度分布DLのピークを1として正規化したように表している。
【0049】
さて、図6は図5のステップS10での物標の中心方位を検知するための処理手順をフローチャートとして表している。まず探知可能な距離範囲の各距離毎に略同一距離における受信信号強度分布を求める(S111)。続いて各距離毎に受信信号強度がピークとなる方位を検出する(S112)。図7に示した例では受信信号強度がピークを示すビーム方位A3が検出される。その後、ピーク方位から所定本数離れたビームの受信信号強度と近似二等辺三角形の底辺の方位幅とにより物標の中心方位を算出する(S113)。図7に示した例では、ピーク方位A3から中心方位検出用方位幅DWだけ離れたビームの受信信号強度L1,L5を抽出し、次の式により近似二等辺三角形ILの中心方位Tdを物標の中心方位として求める。
【0050】
図7においてそれぞれハッチングで示した高さL1とL5の2つ直角三角形の底辺の合計の長さは、近似二等辺三角形の底辺長さIBから(A5−A1)分を引いたものとなり、この2つの三角形は縦軸に対称な相似形であるので、高さL1の直角三角形の底辺長さは、{IB−(A5−A1)}L1/(L1+L5)となる。
【0051】
物標の中心方位TdはA1より上記底辺長さを引いたものに、近似二等辺三角形の底辺IBの半分の長さを加えたものとなるので、
Td=A1+IB/2−{(IB−A5+A1)L1}/(L1+L5) …(1)
と表される。
【0052】
ここで、
A1=−2.0°
A2=−1.0°
A3=0°
A4=1.0°
A5=2.0°
IB=6.2°
L1=0.27
L5=0.51
とすると、物標方位Tdは0.33°となる。このようにして、ビームの幅より高い分解能で、また方位方向のサンプリング間隔より高い分解能で物標の中心方位が検知できる。
【0053】
図8は物標の大きさ、物標までの距離を同一条件としてビーム方位を変化させたときの受信信号強度分布の変化を示している。但し、図における横軸は一次放射器の誘電体レンズに対する相対位置をとっている。一次放射器は誘電体レンズの焦点面内を誘電体レンズの光軸に対して略垂直な直線に沿った方向または曲線に沿った方向を移動するが、光軸から離れるほど誘電体レンズのコマ収差の影響により、ビームの方位方向の幅またはそれに垂直な方向の幅が広がるので、ビーム方位が正面から離れるほどビーム幅が広がるとともに受信信号強度のピーク値は相対的に低下する。したがって上記ピーク方位に応じて近似二等辺三角形の底辺(方位幅)IBを定めるためのビームの方位幅を変化させれば、受信信号強度分布に現れる山形のパターンの二等辺三角形への近似(山形のパターンに対する二等辺三角形のマッチング)をより高精度に行うことができる。また、このビーム方位による受信信号強度の変動に応じて中心方位検出用方位幅DWを適宜変更するようにしてもよい。
【0054】
なお、上記近似二等辺三角形の底辺(方位幅)IBとを定めるためのビームの方位幅と中心方位検出用方位幅DWを式の演算により算出してもよいし、予めテーブルとして作成しておき、そのテープル参照によって求めるようにしてもよい。
【0055】
次に、第2の実施形態に係るレーダについて図9・図10を基に説明する。
第1の実施形態と異なるのは物標の中心方位を検知するための処理内容である。図7に示した例では受信信号強度分布から求めたピーク方位A3を中心として中心方位検出用方位幅DWだけ離れた2つのビームでの受信信号強度を基に、近似二等辺三角形の頂点方位を求めたが、この図9に示す例では、上記中心方位検出用方位幅DWとして3通りの中心方位検出用方位幅DW1,DW2,DW3を定め、それぞれの方位幅だけピーク方位から離れたビームでの受信信号強度を基に中心方位を検知する。
【0056】
図10は、第1の実施形態における図5のステップS10の処理手順を示すフローチャートである。まず、探知可能な距離範囲の各距離毎に略同一距離における受信信号強度分布を求める(S111)。続いて各距離毎に受信信号強度がピークとなる方位A3を検出する(S112)。そして、中心方位検出用方位幅DWとして3通りの中心方位検出用方位幅DW1,DW2,DW3を定め、それぞれの方位幅だけピーク方位から離れたビームでの受信信号強度を求め、それぞれの方位幅だけピーク方位から離れたビームでの受信信号強度を基に近似二等辺三角形の頂点方位を求める(S113′)。その後、それらの頂点方位を加重平均した値を物標の中心方位として検知する。
【0057】
具体的には中心方位検出用方位幅DW1,DW2,DW3とした時のそれぞれについて(1)式を基に物標の中心方位Td1,Td2,Td3をそれぞれ算出し、それらの加重平均によって最終的に物標の中心方位を算出する。ここで中心方位検出用方位幅を小さく設定するほど、ピーク方位付近の受信信号強度を基に中心方位を算出することになるので、中心方位を検知するための信頼性が高いものと見なす。すなわち、中心方位Td1,Td2,Td3の加重平均の重みをそれぞれWd1,Wd2,Wd3とすれば、
Td=(Wd1・Td1+Wd2・Td2+Wd3・Td3)/(Wd1+Wd2+Wd3) …(2)
の演算によって求める。ここで各重みはWd1>Wd2>Wd3の関係とする。
【0058】
図9に示した例では中心方位検出用方位幅を3通りに定めたが、これをさらに増やしてもよい。また、受信信号強度分布の全体形状を重視して受信信号強度分布と近似二等辺三角形とのマッチングを行う場合には、ピーク方位からある程度離れたビーム方位での受信信号強度を基にした中心方位の重みを増して、中心方位検出用方位幅がそれより狭いほど、およびそれより広いほどその重みを低下するように加重平均の重みを設定してもよい。
【0059】
次に、第3の実施形態に係るレーダについて図11を参照して説明する。
図11は所定距離におけるアップビート信号またはダウンビート信号についての受信信号強度のビーム方位方向の分布の例を示している。ここで横軸はビームの中心方位であり、受信信号強度分布のうち山形に突出する範囲について表している。各ビーム方位の受信信号強度は図7の場合と同様である。
【0060】
第1・第2の実施形態では、受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位を挟む中心方位検出用方位幅分左右の方位における受信信号強度とビームの方位幅とに基づいて物標の中心方位を検知するようにしたが、この第3の実施形態では、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の大きい方の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づいて物標の中心方位を検知する。すなわち、図11に示した例では、ピーク方位A3に隣接する2つの方位A2,A4のうち受信信号強度の大きいビーム方位A4の受信信号強度と、ピーク方位A3の受信信号強度L3とを抽出し、次の式により近似二等辺三角形ILの中心方位Tdを物標の中心方位として求める。
【0061】
Td=A3+IB/2−{(IB−A4+A3)L3}/(L3+L4) …(3)
この(3)式の導出は、(1)式の場合と同じである。
【0062】
次に、第4の実施形態に係るレーダについて図12・図13を参照して説明する。
第1〜第3の実施形態では、ビームの方位幅により定まる方位幅を近似二等辺三角形の底辺として定めたが、この第4の実施形態では、近似二等辺三角形の2つの斜辺上の点から近似二等辺三角形の頂点方位を求め、その方位を物標の中心方位として検知する。
【0063】
図13は、第1の実施形態における図5のステップS10の処理手順を示すフローチャートである。まず、探知可能な距離範囲の各距離毎に略同一距離における受信信号強度分布を求める(S111)。続いて各距離毎に受信信号強度がピークとなる方位A3を検出する(S112)。そして、それに隣接する方位方向の左右の4つのビームにおける受信信号強度L1,L2,L4,L5をそれぞれ求める。そして、この4点を近似二等辺三角形の2つの斜辺上の点とする、その近似二等辺三角形の頂点の方位を物標の中心方位Tdとして算出する。
【0064】
ここで、
A1=−2.0°
A2=−1.0°
A3=0°
A4=1.0°
A5=2.0°
L1=0.27
L2=0.65
L4=0.90
L5=0.51
とし、縦軸を受信信号強度L、横軸をビーム方位aで表せば、近似二等辺三角形ILの左側の斜辺の直線は、L=0.38a+1.02で表される。同様に近似二等辺三角形ILの右側の斜辺の直線はL=−0.39a+1.29で表される。これにより、この2つの直線が交わる近似二等辺三角形ILの頂点方位はa=0.34°となり、物標の中心方位は0.34°として求まる。
【0065】
なお、図12に示した例では、ピーク方位A3を中心として方位方向に順に隣接する4つのビーム方位A2,A1,A4,A5についてそれぞれの受信信号強度を抽出したが、近似二等辺三角形の2つの斜辺上の点とするビーム方位はこれに限らず、たとえばピーク方位から2つ隣のビームと3つ隣のビームとの2点や、1つ隣のビームと3つ隣のビームとの2点を抽出してもよいし、1つ隣からn個隣までの任意の複数のビーム方位で得られた受信信号強度から最小二乗法等によって近似直線を求め、その2つの近似直線の交点を物標の中心方位として算出するようにしてもよい。
【0066】
次に、第5の実施形態に係るレーダについて図14を基に説明する。
第1〜第4のいずれの実施形態でも、2つまたは2つ以上のビーム方位における受信信号強度の点が2つの斜辺上に位置するように二等辺三角形を求め、その二等辺三角形の頂点に相当する中心方位Tdを物標の中心方位として求めるようにした。しかしこの第6の実施形態では、二等辺三角形の一方の斜辺のみ用いて、その二等辺三角形の頂点に相当する中心方位Tdを物標の中心方位として求める。
【0067】
図14において、最大値を示す方位A3における受信信号強度L3と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分右(この例では1つ右隣)の方位A4の受信信号強度L4と中心方位検出用方位幅分左(この例では1つ左隣)の方位A2の受信信号強度L2を比較し、受信信号強度が小さい方の点と、受信信号強度が最大値となる点とが二等辺三角形の一方の斜辺上に乗り、底辺(方位幅)がIBである二等辺三角形ILを求める。
【0068】
なお、最大値を示す方位から右の方位A4の受信信号強度L4と左の方位A2の受信信号強度L2を比較して、受信信号強度が小さい方の方向に並ぶ複数点を用いてもよい。図14に示した例では、方位A1における受信信号強度L1も用いて、L3,L2,L1の複数の点を通る近似直線が二等辺三角形の一方の斜辺となるように、その二等辺三角形を求めてもよい。
【0069】
次に、第6の実施形態に係るレーダについて図15を基に説明する。
第1〜第4のいずれの実施形態でも探知方位範囲内に物標の中心方位が存在し、受信信号強度分布に山形のパターンが現れた例を示したが、物標の中心方位が探知方位範囲の最端の方位またはそれより外側に存在する場合には、物標からの反射波に起因して生じる受信信号強度分布の山形のパターンの一部のみが探知方位範囲内での受信信号強度分布に表れることになる。この第6の実施形態ではその場合に対応して物標の中心方位を検知する。
【0070】
すなわち、方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表した時、複数の受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、ビームの方位幅により定まる方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する。図15に示した例では、ビーム方位A3の受信信号強度L3とビーム方位A4の受信信号強度L4とに基づいて近似二等辺三角形ILの頂点方位Tdを物標の中心方位として検知する。
【0071】
ここで、ビーム方位A3=−10°、A4=−9°とし、A3,A4のそれぞれにおける受信信号強度L3=0.9、L4=0.52とすれば、近似二等辺三角形ILの右側の斜辺の直線はL=−0.38a−2.9で表され、L=0の時のaは−7.6であり、近似二等辺三角形ILの底辺の方位幅IBを6.4°とすれば、上記−7.6からIB/2=3.2を差し引いて、近似二等辺三角形ILの頂点方位Tdを−10.8°として算出する。この例では探知方位範囲が−10°から+10°であるので、このようにして探知方位範囲外に存在する物標の中心方位を検知できたことになる。
【0072】
次に、第7の実施形態に係るレーダについて図16を参照して説明する。
図15に示した例では、物標の中心方位が探知方位角度範囲外に存在する場合について示したが、探知方位角度範囲の端がピーク方位となる場合でも、物標の中心方位が探知方位角度範囲内に存在する場合がある。図16はその場合について示している。すなわち、ピーク方位A3の受信信号強度を示す点と、それに隣接する内側のビーム方位A4の受信信号強度を示す点は二等辺三角形の2つの斜辺上にそれぞれ存在している。
【0073】
図16において、高さL3の左側の直角三角形と高さL4の右側の直角三角形とに着目し、まず近似二等辺三角形の頂点方位がA3に等しい場合を考えると、右側の直角三角形の底辺はIB/2−(A4−A3)、左側の直角三角形の底辺はIB/2である。また左右の2つの直角三角形は相似形であるので、次の関係が成り立つ。
【0074】
L4/L3={IB/2−(A4−A3)}/(IB/2)
そして二等辺三角形の頂点方位がA3からずれても、左右の直角三角形は相似形を保つので、図16に示したように、方位A3が近似二等辺三角形の左の斜辺に存在するか否かは次の不等式を満足するか否かによって判定できる。
【0075】
L4/L3>(IB/2−(A4−A3))/(IB/2) …(4)
この条件を満足する場合は、第3の実施形態で示したとおり、(3)式に基づいて物標の中心方位を検知する。そして、(4)式を満足しない場合には、第6の実施形態で示した方法により物標の中心方位を検知する。
【0076】
次に、第8の実施形態に係るレーダについて図17・図18を参照して説明する。
図17はレーダのアンテナから見た各物標の方位と距離およびアンテナのメインローブとサイドローブとの関係を示している。アンテナはそのレンズアンテナと一次放射器との関係からメインローブMLの方位が定まり、それとともにメインローブとは異なった方向にサイドローブSL1,SL2が生じる。この図17は、物標Bが存在する場合にメインローブMLによって物標Bが探知される状態(物標Bからの反射波が受信される位置関係)で、且つサイドローブSL1によって物標Aに対してビームが送波され、その反射波が受信される状態を示している。
【0077】
図18はサイドローブSL1による物標Aの受信信号強度分布と、物標Bが存在する場合のメインローブMLによる受信信号強度分布を重ねて表している。ここでDLsは−9°方向に存在する物標Aによる受信信号強度分布、DLmは−2°方向に物標Bが存在する時のメインローブMLによる受信信号強度分布である。
【0078】
受信信号強度分布DLsの各方位の受信信号強度に基づいて、第4の実施形態(図12に示した方法)に基づいて物標の中心方位を算出すると、近似二等辺三角形ILsの頂点方位−2.7°が求まるが、もちろんその値は実際の物標Aの方位−9°とは大きくかけ離れた値となってしまう。
【0079】
この図18に示したように、ビームの方位幅はメインローブMLに比べてサイドローブSLのビームの方位幅は狭いため、物標の方位幅が同じであれば受信信号強度分布から求めた近似二等辺三角形の底辺の幅(方位幅)はメインローブによる受信信号強度分布DLmから求めた近似二等辺三角形の底辺より狭いものとなる。この関係を利用して、誤った物標の中心方位が検知されないように処理する。
【0080】
具体的には、方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表した時、複数の受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の底辺の方位幅を求め、それがメインローブによる近似二等辺三角形の底辺の方位幅より短い場合に、前者の近似二等辺三角形を求める基になった受信信号強度分布はサイドローブによるものとみなして、その近似二等辺三角形の頂点方位を物標の中心方位としては出力しない。
【0081】
次に、第9の実施形態に係るレーダについて図19〜図23を参照して説明する。
第1〜第8の実施形態では、単一の物標により受信信号強度分布に単一の山形のパターンが現れる例を示したが、略同一距離で且つ方位方向に近接した位置に複数の物標が存在するとき、それぞれの物標について中心方位を検知するための処理を行う必要がある。この第9の実施形態ではその処理を行う。
【0082】
図19はレーダとその前方の2つの物標A,Bとの関係を示している。また図20はその場合の受信信号強度分布の例を示している。仮に図19に示した物標Aだけが存在する場合には、受信信号強度分布はDL1で示すような形状となる。逆に、物標Bだけが存在する場合には、受信信号強度分布はDL2で示すような形状となる。そして物標A,Bの両方が存在することによって得られる受信信号強度分布はDLのように崩れた双峰形状の山形パターンとなる。
【0083】
図23はこの第9の実施形態に係るレーダでの物標の中心方位を検知のための処理手順を示すフローチャートである。まず、探知可能な距離範囲の各距離毎に略同一距離における受信信号強度分布を求める(S111)。続いて各距離毎に受信信号強度がピークとなる方位を検出する(S112)。その後、受信信号強度分布DLの所定のしきい値での方位範囲に対するピーク方位の偏りを検出する(S116)。この例では図20に示したように、所定のしきい値での方位範囲DBの中央よりピーク方位Apは左方向に偏っている。
【0084】
続いて、この偏っている側の受信信号強度分布DLの傾斜にマッチングする近似二等辺三角形から、一方の物標の中心方位を検知する(S117)。図21はその例を示している。ここで受信信号強度分布DLの左側の傾斜に左側の斜辺がマッチングする近似二等辺三角形IL1を求める。この斜辺の傾きと上記近似二等辺三角形IL1の底辺の1/2の方位範囲(IB2/2)から上記近似二等辺三角形の頂点方位Td1を求める。この方位Td1が図19に示した物標Aの方位である。
【0085】
続いて、受信信号強度分布DLから上記近似二等辺三角形IL1の分布を差し引くことによって、もう一方の物標からの反射波に起因する受信信号強度分布を求める(S118)。図22の(A)はその例を示している。元の受信信号強度分布DLから近似二等辺三角形IL1の分布を差し引くことによって新たな受信信号強度分布DL2′を求める。なお、図20に示した物標A,Bによるそれぞれの受信信号強度分布DL1とDL2は必ずしも同位相で重なっているわけではないので、実際に求められる受信信号強度分布DLはDL1とDL2の単純な足し算ではない。しかし概略的にはその足し算として扱うことができる。
【0086】
その後、受信信号強度分布DL2′の傾斜にマッチングする近似二等辺三角形からもう一つの物標の中心方位を検知する(S119)。図22の(B)はその例を示している。すなわち、新たに求めた受信信号強度分布DL2′の一方の傾斜部分にマッチングする近似二等辺三角形の斜辺IS2を求め、このIS2の傾きと近似二等辺三角形の底辺の方位幅IBの1/2から上記近似二等辺三角形の頂点方位Td2を物標の中心方位として求める。
【0087】
この近似二等辺三角形の斜辺は先に求めた物標の中心方位Td1から遠い方の傾斜部分にマッチングさせる。このことにより元々の受信信号強度分布DLの一部の形状にマッチングさせるようになり、すなわち、物標Bからの反射波に起因して生じる受信信号強度分布の有効な形状を利用することになり、物標Bの中心方位を高精度に求めることができる。
【0088】
なお、上述の例では、略同一距離で且つ方位方向に2つの物標が近接した場合について示したが、略同一距離で且つ方位方向に3つ以上の物標が存在する場合についても同様の方法を適用する。すなわち、図23に示した処理でステップS112〜S119を繰り返すことにより、中心方位を検知した物標に対応する二等辺三角形分の分布を受信信号強度分布から順次差し引く。このことにより、複数の物標の各物標の中心方位を順次検知する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させて、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位を挟む中心方位検出用方位幅分左右の方位における受信信号強度とビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項2】
前記物標中心方位検知手段は、前記中心方位検出用方位幅を複数とおりに定めて、各々の前記近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を検出するとともに、それらの方位を加重平均する手段を備えた請求項1に記載のレーダ。
【請求項3】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の大きい方の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項4】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位を挟む所定の中心方位検出用方位幅分左右の複数の方位における受信信号強度に基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、前記複数の受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標の中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項5】
前記近似二等辺三角形の底辺が前記ビームのメインローブによる前記ビームの方位幅より短い場合に、当該近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として扱わないように処理する手段を備えた請求項4に記載のレーダ。
【請求項6】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の小さい方向の1つまたは複数の方位における受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項7】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位の受信信号強度と、該最大値を示す方位より一つまたは複数の中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位における受信信号強度のとに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項8】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
受信信号の最大値を示す方位が、前記中心方位の探知方位角度範囲の端(左または右)であった場合に、
ビームの方位幅の半分に対するビームの方位幅の半分から中心方位検出用方位幅を差し引いた方位幅の比が、対象物標までの距離における前記受信信号強度のうち最大値を示す最も外側の方位における受信信号強度と該最大値を示す方位より中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位の受信信号強度との比より小さいという条件を満たすとき、前記最大値を示す最も外側の方位における信号強度と、該最大値を示す方位より前記中心方位検出用方位幅分内側の方位の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知し、
前記条件を満たさないときに、対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と該最大値を示す方位より一つまたは複数の中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位における受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する、物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項9】
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布の方位方向の広がりが前記ビームの方位幅より広いとき、前記物標中心方位検知手段により検知された物標の方位を頂点、前記ビームの方位幅を底辺とする二等辺三角形分の分布を前記受信信号強度分布から差し引く受信信号強度分布修正手段を備えたことを特徴とする請求項6または7に記載のレーダ。
【請求項10】
前記受信信号強度分布修正手段は、中心方位が検知した物標に対応する前記二等辺三角形分の分布を前記受信信号強度分布から順次差し引くものである請求項9に記載のレーダ。
【請求項11】
前記受信信号強度分布検出手段は、前記ビームの中心方位を探知方位角度範囲内で変化させ、前記物標中心方位検知手段は、前記対象物標までの距離における受信信号強度分布のうち最大値を示す方位に応じて前記中心方位検出用方位幅を変化させる手段を備えた請求項1〜3,6〜10のいずれかに記載のレーダ。
【請求項1】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させて、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位を挟む中心方位検出用方位幅分左右の方位における受信信号強度とビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項2】
前記物標中心方位検知手段は、前記中心方位検出用方位幅を複数とおりに定めて、各々の前記近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を検出するとともに、それらの方位を加重平均する手段を備えた請求項1に記載のレーダ。
【請求項3】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の大きい方の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項4】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位を挟む所定の中心方位検出用方位幅分左右の複数の方位における受信信号強度に基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、前記複数の受信信号強度を2つの斜辺上の点とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標の中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項5】
前記近似二等辺三角形の底辺が前記ビームのメインローブによる前記ビームの方位幅より短い場合に、当該近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として扱わないように処理する手段を備えた請求項4に記載のレーダ。
【請求項6】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と、該最大値を示す方位から中心方位検出用方位幅分左または右の方位のうち受信信号強度の小さい方向の1つまたは複数の方位における受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項7】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位の受信信号強度と、該最大値を示す方位より一つまたは複数の中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位における受信信号強度のとに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項8】
所定方位を中心としてその左右の所定方位幅に広がる探知用電波のビームを送信し、物標からの反射波を受信するとともに、前記ビームの中心方位を変化させるとともに、所定単位角度毎且つ所定距離毎の受信信号の強度分布を検出する受信信号強度分布検出手段と、
受信信号の最大値を示す方位が、前記中心方位の探知方位角度範囲の端(左または右)であった場合に、
ビームの方位幅の半分に対するビームの方位幅の半分から中心方位検出用方位幅を差し引いた方位幅の比が、対象物標までの距離における前記受信信号強度のうち最大値を示す最も外側の方位における受信信号強度と該最大値を示す方位より中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位の受信信号強度との比より小さいという条件を満たすとき、前記最大値を示す最も外側の方位における信号強度と、該最大値を示す方位より前記中心方位検出用方位幅分内側の方位の受信信号強度と、前記ビームの方位幅とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき前記ビームの方位幅を底辺とし、前記2つの受信信号強度を2つの斜辺上の点とする、近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知し、
前記条件を満たさないときに、対象物標までの距離における前記受信信号強度分布のうち、最大値を示す方位における受信信号強度と該最大値を示す方位より一つまたは複数の中心方位検出用方位幅分内側(左または右)の方位における受信信号強度とに基づき、前記方位変化に対する受信信号強度の分布を直角座標で表したとき、複数の前記受信信号強度を一方の斜辺上の点とし、前記ビームの方位幅を底辺とする近似二等辺三角形の頂点に相当する方位を物標の中心方位として検知する、物標中心方位検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項9】
対象物標までの距離における前記受信信号強度分布の方位方向の広がりが前記ビームの方位幅より広いとき、前記物標中心方位検知手段により検知された物標の方位を頂点、前記ビームの方位幅を底辺とする二等辺三角形分の分布を前記受信信号強度分布から差し引く受信信号強度分布修正手段を備えたことを特徴とする請求項6または7に記載のレーダ。
【請求項10】
前記受信信号強度分布修正手段は、中心方位が検知した物標に対応する前記二等辺三角形分の分布を前記受信信号強度分布から順次差し引くものである請求項9に記載のレーダ。
【請求項11】
前記受信信号強度分布検出手段は、前記ビームの中心方位を探知方位角度範囲内で変化させ、前記物標中心方位検知手段は、前記対象物標までの距離における受信信号強度分布のうち最大値を示す方位に応じて前記中心方位検出用方位幅を変化させる手段を備えた請求項1〜3,6〜10のいずれかに記載のレーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【国際公開番号】WO2005/050250
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515552(P2005−515552)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014636
【国際出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/014636
【国際出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]