説明

レールの防音構造

【課題】簡単な構造の防音材によってレールの継目部分から発生する騒音を低減することができるレールの防音構造を提供する。
【解決手段】防音材10A,10Bは、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて、レール6A,6Bの継目部分で発生する騒音を低減し、継目部分の前後のレール6A,6Bを被覆する防音材14に、固定部材11によって着脱自在に固定される。防音材10A,10Bは、レール6A,6Bの継目部分の両側面と防音材10A,10Bの内側側面との間に所定の隙間をあけて配置されており、内側に吸音材10aを有し、外側に制振材10bを有する。継目部分の前後のレール6A,6B上を車輪が通過してレール6A,6Bが振動すると、レール6A,6Bからの転動騒音が制振材10bに伝播するのを吸音材10aが防ぐため、制振材10bの振動が低減し制振材10bからの放射音が低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レールの継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレールの防音構造(従来技術1)は、ゴム又は合成樹脂とモルタルとの混合物からなるモルタル系制振材をレール腹部に接着している(例えば、特許文献1参照)。この従来技術1では、レール上を車両が通過するときにこのレールから発生する振動をモルタル系制振材によって抑制し、レールからの騒音を低減している。
【0003】
従来のレールの防音構造(従来技術2)は、ブチルゴムなどの制振部材と、レール腹部の一方の側面にこの制振部材を押し付けるばね鋼などからなる押圧板などを備えている(例えば、特許文献2参照)。この従来技術2では、曲げ治具などによって押圧板を予め変形させてレールに固定するための折り曲げ部を形成し、この折り曲げ部をレールに掛け止めして制振部材を固定している。
【0004】
従来のレールの防音構造(従来技術3)は、磁性粉を含有する高分子粘弾性体層と、この高分子粘弾性体層を拘束する拘束板とが積層された分割構造の磁性複合型制振材によってレールを被覆している(例えば、特許文献3参照)。この従来技術3では、高分子粘弾性体層がレールに密着するように、レールの左右から磁性複合型制振材をそれぞれ装着しており、この磁性複合型制振材によってレールを被覆してレールの振動によって発生する騒音を低減させている。
【0005】
以上の防音構造(従来技術1〜3)は、既存のレールおよびレールの継目部の構造を大幅に変更することなく付加的に設置する構造といえるが、これとは別に、レールの継目部の構造を変更することにより騒音を低減する技術(従来技術4)として、斜め接着絶縁レールがある。これは従来レールに直角に接続していた継目部において、レールとレールを斜めにつなぎ合わせ、これにより、車輪とレール継目間の連続接触を平滑化させ、それに伴う衝撃を緩和しようとするものである。これにより、レールの振動およびそれに起因する騒音を低減することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52-109206号公報
【0007】
【特許文献2】特開2001-342602号公報
【0008】
【特許文献3】特開平10-159896号公報
【0009】
【特許文献4】特開2001-64901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
鉄道では、レールの両側側面にそれぞれ継目板を固定し、このレールの継目部分をこれらの継目板によって連結するレールの継目構造が採用されている。このようなレールの継目構造では、レールの端部同士の接続部に隙間(継目遊間)が形成されているため、鉄道車両の車輪がレールの継目部分を通過するときに衝撃が発生し、レールが振動することによって転動騒音が発生する。
【0011】
従来技術1では、モルタル系制振材を接着剤によってレール腹部に固定する必要がある。このため、従来技術1では、レールの継目部分に継目板を覆うようにモルタル系制振材を接着剤によって固定すると、レールの交換時や点検時などにモルタル系制振材をレールの継目部分から簡単に取り外すことができず、交換作業や点検作業が困難であるという問題点がある。また、従来技術1では、制振効果を高めるためにはモルタル系制振材を厚くする必要があり、厚みが増すと重量も増加するため、モルタル系制振材を接着剤によってレールの継目部分に強固に固定することができない問題点がある。
【0012】
従来技術2は、曲げ治具などによって押圧板に折り曲げ部を形成し、この折り曲げ部をレールに掛け止めして制振部材をレールに固定している。このため、従来技術2では、レールの継目部分に制振部材を固定する場合には、種々のレールの継目部分の形状に合わせて折り曲げ部を形成する必要があり、製造コストが高くなるという問題点がある。また、従来技術2では、制振効果を高めるために制振部材を大型にすると制振部材の重量増によって折り曲げ部がレールから脱落するおそれがあり、制振部材をレールに強固に固定することが困難であるという問題点がある。さらに、従来技術2では、曲げ治具を使用して押圧板を加工する手間がかかり、施工性が損なわれてしまう問題点がある。また、従来技術2でも、継目部を制振部材が接触するため、継目部の定期点検の支障となり、点検ごとに取りはずし、点検後復旧させるという煩雑な作業を伴う問題が考えられる。
【0013】
従来技術3では、高分子粘弾性体層の磁力によって磁性複合型制振材をレールに固定する構造である。このため、従来技術3では、レールの継目部分の側面のような凹凸面に磁性複合型制振材を密着させて、レールの継目部分の側面を覆うように磁性複合型制振材を固定できない問題点がある。また、従来技術3では、磁性複合型制振材が大型化して重量が増加すると、磁性複合型制振材をレールに磁力だけでは十分に固定できなくなる問題点がある。さらに、従来技術3では、磁力が不十分であると磁性複合型制振材とレールとの間に隙間部が形成され、この間隙部から発生する振動や騒音を低減することができず、防音制振効果が低減してしまう問題点がある。また、従来技術3も従来技術1,2と同様に、継目部の定期点検の支障となる。
【0014】
以上のように従来技術1〜3はいずれも防音構造の安定保持の方法、施工性、効果の保持および定期点検の支障になるなどの問題を有している。これに対し、従来技術4は定期点検の支障となる問題はないが、既存のレールおよびレールの継目部から構造を変更することになるため、大規模な施工が必要となる。一方で、継目部では斜め構造においても長期間の車両走行に伴い多大な荷重負荷がかけられ、やがて接着の保持が困難となる。さらに、接着継目部は長期間暴露されるうえに、雨水が浸入し、やがて腐食が進展し、継目部の剥離や腐食部の応力集中に伴う破損に至るなどの問題が考えられる。
【0015】
この発明の課題は、簡単な構造の防音材によってレールの継目部分から発生する騒音を低減することができるレールの防音構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図5〜図17及び図21に示すように、レール(6A,6B)の継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する第1の防音材(10A,10B)を、この第1の防音材とは分割可能な別部材であり前記継目部分の前後のレールと接触して前記騒音を低減する第2の防音材(12)に着脱自在に固定する固定部材(14)を備えることを特徴とするレールの防音構造(9)である。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレールの防音構造において、図14及び図15に示すように、前記固定部材は、前記第1の防音材の内側の垂直な接合部(10i)と前記第2の防音材の外側の垂直な接合部(12d)とを着脱自在に固定することを特徴とするレールの防音構造である。
【0018】
請求項3の発明は、図18及び図19に示すように、レール(6A,6B)の継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する第1の防音材(10A,10B)と、この第1の防音材とは分割可能な別部材であり前記継目部分の前後のレールと接触して前記騒音を低減する第2の防音材(12)とを、前記レールに着脱自在に固定する固定部材(13)を備えることを特徴とするレールの防音構造(9)である。
【0019】
請求項4の発明は、請求項3に記載のレールの防音構造において、図19に示すように、前記固定部材は、前記第1の防音材を支持する支持部材(13k)と、前記継目部分の前後のレール(6A,6B)に前記第2の防音材が固定されるように、この継目部分の前後のレールとの間でこの第2の防音材を挟み込む挟み込み部材(13a〜13c)と、前記支持部材と前記挟み込み部材とを着脱自在に連結する連結部材(13d)とを備えることを特徴とするレールの防音構造(9)である。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図7、図10、図12及び図14に示すように、前記固定部材は、前記継目部分の側面を前記第1の防音材の内側側面が囲むように、前記第1の防音材と前記第2の防音材とを着脱自在に固定することを特徴とするレールの防音構造である。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図8、図9、図11、図13、図15、図17及び図19に示すように、前記第2の防音材は、前記継目部分の前後のレールの少なくとも腹部(6c)及び底部(6b)の略全面を被覆することを特徴とするレールの防音構造である。
【0022】
請求項7の発明は、図20に示すように、レール(6A,6B)の継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する部分とこの継目部分の前後のレールと接触して前記騒音を低減する部分とが一体構造の防音材(15A,15B)を、前記レールに着脱自在に固定する固定部材(13)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0023】
請求項8の発明は、請求項7に記載のレールの防音構造において、前記固定部材は、前記継目部分の側面を前記防音材の内側側面が囲むように、この防音材とこのレールとを着脱自在に固定することを特徴とするレールの防音構造である。
【0024】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載のレールの防音構造において、前記固定部材は、前記継目部分の前後のレール(6A,6B)に前記防音材が固定されるように、この継目部分の前後のレールとの間でこの防音材を挟み込むことを特徴とするレールの防音構造である。
【0025】
請求項10の発明は、請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、前記防音材は、前記継目部分の前後のレールの少なくとも腹部(6c)及び底部(6b)の略全面を被覆することを特徴とするレールの防音構造である。
【0026】
請求項11の発明は、図22〜図25に示すように、レール(6A,6B)の継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する防音材(10A,10B)を、前記レールを支持する支持体(2)に着脱自在に固定する固定部材(4)を備え、前記固定部材は、前記レールを前記支持体に締結するレール締結装置であり、前記防音材は、前記レール締結装置によって支持体に着脱自在に固定されることを特徴とするレールの防音構造である。
【0027】
請求項12の発明は、図27に示すように、レール(6A,6B)の継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する防音材(10A,10B)を、前記レールを支持する支持体(2)に着脱自在に固定する固定部材(16)を備え、前記固定部材は、前記支持体に埋め込まれる埋込栓(16a)の雌ねじ部(16f)と噛み合う締結ボルト(16b)と、前記締結ボルトの雄ねじ部と噛み合う締結ナット(16c)とを備え、前記防音材は、前記締結ボルトと前記締結ナットとによって前記支持体に着脱自在に固定されることを特徴とするレールの防音構造である。
【0028】
請求項13の発明は、図28に示すように、レール(6A,6B)の継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する防音材(10A,10B)を、前記レールを支持する支持体(2)に着脱自在に固定する固定部材(17)を備え、前記固定部材は、前記支持体に取り付けられる取付座付きボルト(17a)と、前記取付座付きボルトの雄ねじ部(17f)と噛み合う締結ナット(17b)とを備え、前記防音材は、前記取付座付きボルトと前記締結ナットとによって前記支持体に着脱自在に固定されることを特徴とするレールの防音構造である。
【0029】
請求項14の発明は、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図7、図10、図12、図14、図16、図18、図20、図21、図24、図26及び図28に示すように、前記防音材、前記第1及び前記第2の防音材は、内側に前記騒音を吸収する吸音材(10a;12a;15a)を備え、外側に前記振動を低減する制振材(10b;12b;15b)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0030】
請求項15の発明は、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図21に示すように、前記防音材及び前記第1の防音材は、前記騒音を音源側に二重回折させる二重回折部(10k)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【発明の効果】
【0031】
この発明によると、簡単な構造の防音材によってレールの継目部分から発生する騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図4】図1のIV-IV線で切断した状態を示す断面図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図8】図5のVIII-VIII線で切断した状態を示す断面図である。
【図9】図5のIX-IX線で切断した状態を示す断面図である。
【図10】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図11】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造における防音材の接合部の断面図である。
【図12】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図13】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造における防音材の接合部の断面図である。
【図14】この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図15】この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造における防音材の接合部の断面図である。
【図16】この発明の第6実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図17】この発明の第6実施形態に係るレールの防音構造における防音材の接合部の断面図である。
【図18】この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図19】この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造の固定部材の断面図である。
【図20】この発明の第8実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図21】この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図22】この発明の第10実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図23】この発明の第10実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図24】この発明の第10実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図25】図22のXXV-XXV線で切断した状態を示す断面図である。
【図26】この発明の第11実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図27】この発明の第11実施形態に係るレールの防音構造の固定部材の断面図である。
【図28】この発明の第12実施形態に係るレールの防音構造の固定部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図4は、図1のIV-IV線で切断した状態を示す断面図である。なお、図1〜図4では、左右一対のレールのうち一方のレールのみを図示し、他方のレールについては図示を省略し、左右一対の車輪のうち一方の車輪のみを図示し、他方の車輪については図示を省略している。
【0034】
図4に示す車輪1は、図1〜図3に示すレール6A,6Bと回転接触する部材である。車輪1は、レール頭部6aの頭頂面6dと接触して摩擦抵抗を受ける踏面1aと、脱輪を防止するために車輪1の外周部に連続して形成されたフランジ面1bとを備えている。
【0035】
図1〜図3に示すまくらぎ2は、レール6A,6Bを支持する支持体(支承体)である。まくらぎ2は、左右のレール6A,6Bを固定して軌間を正確に保持し、レール6A,6Bから伝達される列車荷重を道床3に分散させるために、図2に示すようにレール6A,6Bと道床3との間に設置されている。図1〜図3に示すまくらぎ2は、レール6A,6Bに対して直角に並べて敷設される横まくらぎ(一般区間で使用される並まくらぎ)であり、緊張材として使用される鋼材(Prestressing Steel(PC))によってプレストレスが与えられたプレストレスコンクリート製まくらぎ(PCまくらぎ)である。まくらぎ2は、レール6A,6Bの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レール6A,6Bを離散的に支持している。
【0036】
図2に示す道床3は、まくらぎ2を支持し路盤に荷重を分散し伝達する構造体である。道床3は、バラスト3aによって構成されたバラスト道床であり、バラスト3aはまくらぎ2と路盤との間に敷き詰められる砂利又は砕石などの粒状体である。
【0037】
図2に示すレール締結装置4は、レール6A,6Bをまくらぎ2に締結する装置である。レール締結装置4は、タイプレート4aと、締結ばね4bと、締結ボルト4c,4eと、締結ナット4d,4fなどを備えている。タイプレート4aは、レール6A,6Bとまくらぎ2との間に挿入されてレール6A,6Bの横方向の移動を規制する部材であり、締結ばね4bはレール6A,6Bのレール底部6bの底部上面6eを押さえ付けて締結する部材である。締結ボルト4cは、締結ばね4bを締め付ける部材であり、締結ナット4dはこの締結ボルト4cに締結される部材である。締結ボルト4eは、まくらぎ2に埋め込まれた埋込栓の雌ねじ部と噛み合ってタイプレート4aをまくらぎ2に固定する部材であり、締結ナット4fはこの締結ボルト4eに締結される部材である。レール締結装置4は、レール底部6bとタイプレール4aとの間に図示しない軌道パッドなどを挟み込み、締結ばね4bによってレール6A,6Bをまくらぎ2に締結して、鉄道車両が通過する際に発生する振動を吸収する。
【0038】
図3に示す継目構造5は、レール6A,6Bの継目部分の両側に継目板7A,7Bを固定して、この継目部分を継目板7A,7Bによって連結する構造である。継目構造5は、例えば、一対の継目板7A,7Bをレール腹部6cに当てて継目板ボルト8aによって組み立て、レール端部を突き合せて接続した普通継目である。継目構造5は、図1及び図2に示すように、継目部分の直下にまくらぎ2を配置する支え継ぎ法によってこの継目部分を支持する支え継目である。継目構造5には、レール6A,6Bの温度伸縮をある程度吸収するために、図1及び図3に示すようにレール6A,6Bの継目部分の接続部に所定の適正値で隙間(継目遊間)が設定されている。継目構造5は、図3に示すように、レール6A,6Bと、継目板7A,7Bと、締結部材8などを備えている。
【0039】
図1〜図3に示すレール6A,6Bは、鉄道車両の車輪1を支持し案内してこの鉄道車両を走行させる部材である。レール6A,6Bは、いずれも同一構造であり端部が直角に切断された状態で間隔をあけて突き合わされている。レール6A,6Bは、図3及び図4に示すように、レール頭部6aと、レール底部(フランジ部)6bと、レール腹部(ウェブ部)6cなどを備えている。レール頭部6aは、鉄道車両の車輪1と接触する部分であり、車輪1を直接支持する頭頂面(頭部上面)6dなどを備えている。レール底部6bは、まくらぎ2上に設置されて取り付けられる部分であり、レール締結装置4の締結ばね4bによって押さえ付けられる底部上面6eと、まくらぎ2上に設置される底部下面6fと、レール底部6bの左右の側面部分を構成する底部側面6gなどを備えている。レール腹部6cは、レール頭部6aとレール底部6bとを繋ぐ部分であり、レール頭部6aに作用する輪重及び横圧をレール底部6bに伝達する。レール腹部6cは、レール頭部6aとレール底部6bとを繋ぐ部分であり、継目板7A,7Bを取り付ける腹部側面6hなどを備えている。
【0040】
図1に示す継目板7A,7Bは、レール6A,6Bの継目部分におけるレール腹部6cの両側面に継目板ボルト8aによって固定されてレール6A,6Bを接続する部材である。継目板7A,7Bは、レール頭部6aの顎部と対向する頭部7aと、レール底部6bの上部と対向する底部7bと、頭部7aと底部7bとを繋ぐ腹部7cなどを備えている。
【0041】
図1及び図3に示す締結部材8は、レール6A,6Bの継目部分の両側に継目板7A,7Bを締結する部材である。締結部材8は、継目板ボルト8aとナット8bなどを備えている。継目板ボルト8aは、レール6A,6Bと継目板7A,7Bとを締結するためのボルトであり、レール6A,6B及び継目板7A,7Bの長さ方向に所定の間隔をあけて形成された貫通孔に挿入される。ナット8bは、継目板ボルト8aに装着される部材であり、継目板ボルト8aの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が形成されている。
【0042】
図1〜図4に示す防音構造9は、レール6A,6Bの継目部分で発生する騒音を低減する構造である。防音構造9は、図1、図3及び図4に示すように、防音材10A,10Bと固定部材11などを備えている。防音構造9は、レール6A,6B上を車両が通過するときに発生する振動を抑制してこのレール6A,6Bから放射する転動騒音を抑制する。
【0043】
図1及び図3に示す防音材10A,10Bは、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて、レール6A,6Bの継目部分で発生する騒音を低減する部材である。防音材10A,10Bは、レール6A,6Bからの騒音を遮る遮音板として機能し、防音材10Aはレール6A,6Bの外側に配置されており、防音材10Bはレール6A,6Bの内側に配置されている。防音材10A,10Bは、レール6A,6Bの継目部分の両側面と防音材10A,10Bの内側側面との間に所定の隙間(例えば、205〜210mm程度)をあけて、レール6A,6Bの長さ方向に沿ってレール6A,6Bと平行に配置されている。防音材10A,10Bは、レール6A,6B及びレール締結装置4から離間して電気的に絶縁されており、レール6A,6Bの継目部分を跨ぐように取り付けられた軟銅線からなる図示しないレールボンドからも離間して電気的に絶縁されている。防音材10A,10Bは、図4に示すように、鉄道車両が安全に走行するために建築物などが入ってはならない軌道上に確保された空間である建築限界Lを超えない範囲内に配置されている。ここで、図5に示す点P1は、レール頭部6aの頭頂面6dと同じ高さであって、このレール頭部6aの外側側面から外方に長さL1= 135mm離れた地点であり、点P2は、点P1から垂直方向に長さL2=25mm離れた地点である。防音材10A,10Bは、図4に示すように、レール6A,6Bの中心から内側及び外側に長さL3(L3=205〜210mm程度)だけ離れてそれぞれ配置されている。防音材10Aは、レール6A,6Bの頭頂面6dよりも高さH1(H1=20mm程度)だけ高くなるように形成されている。防音材10Bは、防音材10Aよりも高さが低く形成されている。防音材10A,10Bは、図1、図3及び図4に示すように、内側(レール6A,6B及び継目板7A,7Bと対向する側)に吸音材10aを有し、外側(レール6A,6B及び継目板7A,7Bと対向する側とは反対側(吸音材10aの外側側面))に制振材10bを有する。また、防音材10A,10Bは、図3に示すように、端部10cと、上縁部10dと、下縁部10eと、固定部10fなどを備えている。
【0044】
図1、図3及び図4に示す吸音材10aは、騒音を吸収する部材であり、制振材10bよりも剛性の低い弾性体である。吸音材10aは、剛体よりも相対的に軟質の軟質弾性材であり、例えば常温でヤング率が1.0×103MPa以下であり、望ましくは粘性も兼ね備え、損失係数が0.05以上であり、厚みが1〜500mm程度(粘弾性材の場合には10〜30mm程度)である。このような材料としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリルゴムなどの加硫ゴム、スチレン系、オレフィンゴム系、塩化ビニル系のTPE(熱可塑エラストマ)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂などの熱可塑性樹脂、シリコンなどのゲル、酢酸ビニル系、EVA系、アクリル樹脂系などのエマルジョン、ゴムラテックスなどを適用することができる。吸音材10aは、レール6A,6Bからの騒音を吸収する吸音機能を有する材料であってもよい。このような吸音材10aとしては、柔軟な弾性材又は柔軟な粘弾性材などである。柔軟な弾性材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による繊維体や、ロックウール、グラスウールなどが好ましい。柔軟な粘弾性材としては、ウレタン、EPDM、クロロプレンなどの発泡体が好ましく、このような発泡体は吸音制振機能を有する粘弾性体であるため、吸音効果とともに制振効果も期待することができる。吸音材10aの厚さは、10mmを下回ると固有振動数が高くなり、100mmを超えるとレール6A,6Bとの間に十分な間隔を確保することが困難になるため、10〜100mmに設定することが好ましく、20〜30mmに設定することが特に好ましい。
【0045】
制振材10bは、振動を低減する部材であり、吸音材10aよりも剛性の高い弾性体である。制振材10bは、例えば、金属又はヤング率が3.0×103MPa以上の剛体などからなる剛弾性体(高剛性弾性体)によって形成されている。制振材10bは、レール6A,6Bの振動を抑制する制振機能を有する硬質弾性材によって形成されている。このような制振材10bとしては、ゴム層と金属板とからなる薄板状の樹脂積層型の制振鋼板(ニチアス株式会社製のメタラミネ(表品名))、株式会社神戸製鋼所製のダンプレ(表品名))、クロム、鉛などが配合された鋼系の制振合金、亜鉛などが配合されたアルミ系の制振合金、又はアスファルト系若しくはアクリル系、クロロプレン系などの制振塗料が塗布された金属板などが好ましい。制振材10bは、レール6A,6Bと対向する側の表面に吸音材10aを接着剤などによって貼り付け固定しており、吸音材10aと制振材10bとの間には接着材層が形成されている。この接着材層は、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系などの反応型接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、変性アクリル樹脂系などのエマルジョン型接着剤、クロロプレンやシリコンなどの合成ゴム型接着剤、エラストマー系、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)系などのホットメルト型接着剤などによって形成することが好ましい。制振材10bは、図6に示すように、吸音材10aが直射日光に曝されるのを防ぎ紫外線による劣化を抑制する。制振材10bの厚さは、0.5mmを下回ると遮音性能が低下し、10mmを超えると曲げ剛性や施工性が低下するとともに重量が増し、レール6A,6Bとの間に十分な間隔を確保することが困難になるため、0.5〜10mmに設定することが好ましく、0.8〜0.9mmに設定することが特に好ましい。
【0046】
図1及び図3に示す端部10cは、防音材10A,10Bの長さ方向の両端部を構成する部分であり平面状に形成されている。上縁部10dは、防音材10A,10Bの上側の縁部を構成する部分であり平面状に形成されている。下縁部10eは、防音材10A,10Bの下側の縁部を構成する部分であり平面状に形成されている。固定部10fは、防音材10A,10Bに固定される部分であり、外観が略L字状の山形鋼などのアングル材である。固定部10fは、図4に示すように、一方の板状部が制振材10bに溶接などによって固定されており、他方の板状部に貫通孔が形成されている。
【0047】
図1及び図3に示す固定部材11は、防音材10A,10Bをレール6A,6Bに固定する部材である。固定部材11は、図1及び図3に示すように、防音材10A,10Bの両端部をそれぞれ支持しており、継目部分の前後のレール6A,6Bに防音材10A,10Bを掛け止めして取り付けるフック状の固定用治具(取付金具)である。固定部材11は、図4に示すように、支持部材11aと、連結部材11b,11dと、防振部材11c,11eなどを備えている。
【0048】
図1及び図3に示す支持部材11aは、防音材10A,10Bを支持する部材である。支持部材11aは、レール6A,6Bと直交して配置される板状部材であり、図4に示すようにこの支持部材11aの両端部をそれぞれ貫通する雌ねじ部11fと、雌ねじ部11fよりも支持部材11aの中央部寄りでこの支持部材11aを貫通する雌ねじ部11gとを備えている。
【0049】
図1及び図4に示す連結部材11bは、防音材10A,10Bと支持部材11aとを着脱自在に連結する部材である。連結部材11bは、締結ボルト11hと、座金11iなどを備えている。締結ボルト11hは、固定部10fと支持部材11aとを締結する部材であり、固定部10fの貫通孔を貫通し支持部材11aの雌ねじ部11fと噛み合う雄ねじ部を備えている。座金11iは、締結ボルト11hと固定部10fとの間に挟み込まれる部材である。
【0050】
図3に示す防振部材11cは、防音材10A,10Bと支持部材11aとの間で伝播する振動を低減する部材である。防振部材11cは、図4に示すように、連結部材11bの固定部10fと支持部材11aとの間に挟み込まれる防振ゴムなどであり、締結ボルト11hの雄ねじ部が貫通する貫通孔が形成されている。
【0051】
図1に示す連結部材11dは、レール6A,6Bと支持部材11aとを着脱自在に連結する部材である。連結部材11dは、図4に示すように、掛け止め部11jと、締結ボルト11kと、座金11mなどを備えている。掛け止め部11jは、図1に示すように、レール6A,6Bのレール底部6bに掛け止めされる部分であり、図4に示すように断面が略S字状の板状部材である。掛け止め部11jは、レール底部6bを挟み込むようにこのレール底部6bの左右にそれぞれ配置されており、一方の端部がレール底部6bの底部上面6eに掛け止めされ、他方の端部が支持部材11aに連結されており、この他方の端部には貫通孔が形成されている。締結ボルト11kは、掛け止め部11jと支持部材11aとを締結する部材であり、掛け止め部11jの貫通孔を貫通し支持部材11aの雌ねじ部11gと噛み合う雄ねじ部を備えている。座金11mは、締結ボルト11kと掛け止め部11jとの間に挟み込まれる部材である。
【0052】
図4に示す防振部材11eは、レール6A,6Bと支持部材11aとの間で伝播する振動を低減する部材である。防振部材11eは、掛け止め部11jと底部上面6eとの間に挟み込まれるとともに、底部下面6fと支持部材11aとの間に挟み込まれる防振ゴムなどである。
【0053】
次に、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の装着方法を説明する。
図2に示すように、レール6A,6Bのレール底部6bと道床3のバラスト3aとの間の間隙部に、図1及び図3に示すように支持部材11aを半分の長さまで挿入して、防音材10A,10Bの長さと略同じ長さだけ間隔をあけて2本の支持部材11aをレール6A,6Bと直交するように配置する。次に、支持部材11aをレール底部6bに向かって持ち上げて、図4に示すようにレール底部6bの底部下面6fと支持部材11aの上面との間に防振部材11eを挟み込む。この状態で、レール底部6bの底部上面6eに防振部材11eを載せ、掛け止め部11jと底部上面6eとの間に防振部材11eを挟み込むように、レール底部6bの左右から掛け止め部11jを支持部材11aの上面に位置決めする。次に、掛け止め部11jと締結ボルト11hとの間に座金11iを挟み込み、締結ボルト11hによって支持部材11aと掛け止め部11jとを締結する。その結果、レール底部6bに支持部材11aが固定されて、継目部分のレール6A,6Bに固定部材11が固定される。次に、支持部材11aの一方の端部に防音材10Aの端部を載せるとともに、支持部材11aの他方の端部に防音材10Bを載せて、防音材10A,10Bの固定部10fと支持部材11aの上面との間に防振部材11cを挟み込む。次に、固定部10fと締結ボルト11hとの間に座金11iを挟み込み、締結ボルト11hによって支持部材11aと固定部10fとを締結する。その結果、支持部材11aに防音材10A,10Bが固定されて、継目部分のレール6A,6Bに防音材10A,10Bが固定される。レール6A,6Bの交換作業を実施する場合には、以上説明した手順と逆の手順によってレール6A,6Bから防音材10A,10B及び固定部材11が取り外される。
【0054】
次に、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の作用を説明する。
図1及び図3に示す継目部分の前後のレール6A,6B上を図4に示す車輪1が通過すると、レール6A,6Bの継目部分から騒音が発生し、防音材10A,10Bがこの騒音を遮るとともに防音材10A,10Bの吸音材10aが振動しようとする。吸音材10aが柔軟な弾性材によって形成されている場合には、力学モデルとしてばね定数が小さい柔軟なばねを構成する。その結果、ばね定数の低下によって振動伝達率が低下し、レール6A,6Bの継目部分からの騒音が制振材10bに伝播し難くなる。一方、吸音材10aが柔軟な粘弾性材によって形成されている場合には、力学モデルとして柔軟なばねと減衰器(ダッシュポット)とを構成する。このため、ばね定数の低下によって振動伝達率が低下するとともに、粘性による振動減衰によってレール6A,6Bからの騒音エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて、レール6A,6Bの継目部部分からの騒音が吸収され減衰する。その結果、レール6A,6Bから外層の制振材10bに伝播する振動が低減するため、制振材10bの振動が低減し制振材10bからの放射音が低減する。特に、柔軟な粘弾性材が制振材10bによって拘束されている場合には、吸音材10aのせん断変形の程度が振動時に高められるため、粘弾性材の内部損失が増大し制振能力が増幅させられる。レール6A,6Bの継目部分と間隔をあけて防音材10A,10Bを配置しているため、防音材10A,10Bの制振材10bからの放射音の音響インピーダンスが低減し、レール6A,6B自体の放射音パワーが減少し防音効果が向上する。
【0055】
この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて、レール6A,6Bの継目部分から発生する騒音を防音材10A,10Bが低減し、防音材10A,10Bをレール6A,6Bに固定部材11が着脱自在に固定する。このため、レール6A,6Bの継目部分から発生する転動騒音を防音材10A,10Bによって遮りこの転動騒音を低減することができる。また、レール6A,6Bの継目部分の側面と防音材10A,10Bの内側側面との間に間隙部が形成されているため、保線作業時や点検作業時に目視で継目部分を確認することができる。また、レール6A,6Bや継目板7A,7Bの交換時に防音材10A,10Bをレール6A,6Bから簡単に取り外すことができ、交換作業を簡単に短時間で実施することができる。さらに、レール6A,6Bと防音材10A,10Bとが非接触であるため、継目構造5が絶縁継目又は接着絶縁継目であるときにレール6Aとレール6Bとの間に電流が流れるのを防ぐことができる。
【0056】
(2) この第1実施形態では、防音材10A,10Bを支持部材11aが支持し、この支持部材11aと防音材10A,10Bとを連結部材11bが着脱自在に連結し、この支持部材11aとレール6A,6Bとを連結部材11dが着脱自在に連結する。その結果、レール6A,6Bの継目部分の側面に防音材10A,10Bを接着剤などによって固定する構造ではないため、防音材10A,10Bをレール6A,6Bから簡単に取り外すことができる。また、防音材10A,10Bの重量が重くても固定部材11によって防音材10A,10Bをレール6A,6Bに確実に固定することができる。
【0057】
(3) この第1実施形態では、防音材10A,10Bの内側に騒音を吸収する吸音材10aを備え、防音材10A,10Bの外側に振動を低減する制振材10bを備える。このため、レール6A,6Bの継目部分から放射される転動騒音を吸音材10aによって吸収し、この吸音材10aの振動を制振材10bが抑えるため、制振材10bから外部に放射する騒音を低減することができる。
【0058】
(第2実施形態)
図5は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図6は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図7は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図8は、図5のVIII-VIII線で切断した状態を示す断面図である。図9は、図5のIX-IX線で切断した状態を示す断面図である。以下では、図1〜図4に示す部分と同一の部分については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
図5〜図9に示す防音構造9は、防音材10A,10Bと、防音材12と、固定部材13と、固定部材14などを備えている。防音材10A,10Bは、図1〜図6に示すような固定部材11によってレール6A,6Bに固定される構造ではなく、図5〜図7に示すような固定部材14によって防音材12に固定される構造である。防音材10A,10Bは、図5及び図7に示すように、レール6A,6Bの上方から見たときに外観が略U字状に形成されている。防音材10A,10Bは、図1〜図4に示す防音材10A,10Bとは異なり、図6及び図7に示す切欠部10gと、図5、図7及び図9に示す屈曲部10hと、図5〜図7及び図9に示す接合部10iなどを備えている。防音材10A,10Bは、図6及び図7に示すように、レール6A,6B及び継目板7A,7Bの側面方向から見たときに下縁部10eが凹凸状に形成された板状部材であり、下縁部10eが道床3内に所定の深さだけ埋設されている。防音材10Aは、図9に示すように、防音材12の上縁部よりも高さH2(H2=70〜80mm程度)だけ高くなるように形成されている。
【0060】
図6及び図7に示す切欠部10gは、防音材10A,10Bとまくらぎ2との干渉を防ぐ部分であり、防音材10A,10Bの下縁部10eに形成された逃げ部である。切欠部10gは、レール6A,6Bの側面方向から見たときに外観が凹状に形成されており、まくらぎ2の上面及び側面と接触している。切欠部10gは、隣接するまくらぎ2の間隔と略同じ間隔で形成されている。切欠部10gの長さは、まくらぎ2の幅よりも僅かに長く形成されており、切欠部10gの高さは防音材10A,10Bをレール6A,6Bに固定したときに下縁部10eが道床3内に所定の深さだけ埋設されるように、まくらぎ2の厚さよりも長く形成されている。
【0061】
図7及び図9に示す屈曲部10hは、レール6A,6Bの継目部分の側面と防音材10A,10Bの内側側面との間の隙間からレール6A,6Bの長さ方向に騒音が放射するのを防ぐ部分である。屈曲部10hは、図7に示すように、防音材10A,10Bの両端部をそれぞれ内側(レール6A,6Bの側面側)に略90度で折り曲げて形成されており、図5及び図7に示すように屈曲部10hの裏面には吸音材10aが接着剤などによって固定されている。図7及び図9に示すように、屈曲部10hの上縁部は防音材12の制振材12bの上縁部と略同じ高さになるように形成されており、屈曲部10hの下縁部は切欠部10gと略同じ高さになるように、接合部10iと切欠部10gとが同じ高さで形成されている。屈曲部10hは、図5に示すように、レール6A,6Bの継目部分の側面と防音材10A,10Bの内側側面との間の空間内にレール締結装置4が位置するように、このレール締結装置4と防音材10A,10Bとが接触しないような長さに設定されている。
【0062】
図5〜図7及び図9に示す接合部10iは、防音材12側の接合部12dと接合する部分である。接合部10iは、図5及び図7に示すように、防音材10A,10Bの屈曲部10hの先端部を外側に略90度に折り曲げて形成されており、防音材12側の接合部12dと密着するように平坦面に形成されている。接合部10iには、防音材10A,10Bを長さ方向に微調整して防音材12に固定可能なように、レール6A,6Bの長さ方向に長い図示しない長孔が所定の間隔をあけて複数形成されている。
【0063】
図5〜図7に示す防音材12は、継目部分の前後のレール6A,6Bを被覆して、レール6A,6Bの振動によって発生する騒音を低減する部材であり、防音材10A,10Bとは分割可能な別部材である。防音材12は、可能な限り騒音低減効果を発揮するように、まくらぎ2及びレール締結装置4と干渉する部分を除き、レール6A,6Bの一部を被覆している。防音材12は、図8及び図9に示すように、例えばレール底部6b及びレール腹部6cの略全面を被覆しており、図5及び図7に示すようにレール6A,6Bに着脱自在に固定されている。防音材12は、レール6A,6Bの長さ方向におけるレール締結装置4の設置間隔と略同じ長さに形成されており、レール6A,6Bの長さ方向に並べて装着されている。防音材12は、レール6A,6Bと接触する側に吸音材12aを有し、レール6A,6Bと接触する側とは反対側(吸音材12aの裏面)に制振材12bを有する。防音材12は、吸音材12aと、制振材12bと、保護部12cと、接合部12dなどを備えている。
【0064】
図5及び図7に示す吸音材12aは、騒音を吸収する部材であり、図1、図3及び図4に示す吸音材10aと同一材料であって制振材12bよりも剛性の低い弾性体である。吸音材12aは、図8及び図9に示すように、レール底部6b及びレール腹部6cに着脱自在に装着可能な分割構造を有し、吸音材12aを構成する複数(合計7枚)の板状の吸音材片12eを備えている。吸音材片12eは、レール底部6b及びレール腹部6cを囲むように隙間なく被覆している。吸音材12aは、外側の制振材12bが装着されることによって、レール底部6b及びレール腹部6cの表面形状に沿った形状に内側の吸音材片12eが押圧されて弾性変形し、レール底部6b及びレール腹部6cに密着する。
【0065】
図5〜図7に示す制振材12bは、振動を低減する部材であり、図1〜図4に示す制振材10bと同一材料であって吸音材12aよりも剛性の高い弾性体である。制振材12bは、図8及び図9に示すように、レール6A,6Bを挟み込むようにこのレール6A,6Bの左右から着脱自在に装着可能な分割構造を有し、外観形状が左右対称であり制振材12bを構成する複数(2枚)の制振材片12fを備えている。制振材片12fは、吸音材片12eの表面と密着しており、この吸音材片12eの表面を被覆し保護している。
【0066】
図8及び図9に示す保護部12cは、吸音材12aを保護する部分であり、吸音材12aの上端面から雨水などが浸入するのを防ぐシール材などである。保護部12cは、電気絶縁性、耐候性及び防水性などを有する柔軟な薄膜状のゴム又は合成樹脂などによって形成されており、レール頭部6aの首下表面及び吸音材12aの上縁部を被覆する。このような保護部としては、フッ素樹脂(テフロン(登録商標))、ポリエステル、ナイロンなどによって形成することが好ましい。
【0067】
図9に示す接合部12dは、防音材10A,10B側の接合部10iと接合する部分であり、防音材10A,10B側の接合部10iと密着するように平坦面に形成されている。接合部12dには接合部10i側の長孔と同一間隔で図示しない貫通孔が複数形成されている。
【0068】
図5〜図8に示す固定部材13は、防音材12をレール6A,6Bに着脱自在に固定する部材である。固定部材13は、図8に示すように、挟み込み部材13a〜13cと連結部材13dなどを備えており、防音材12の制振材12bの表面に着脱自在に装着されている。
【0069】
図8に示す挟み込み部材13a〜13cは、継目部分の前後のレール6A,6Bに防音材12が固定されるように、この継目部分の前後のレール6A,6Bとの間でこの防音材12を挟み込む部材である。挟み込み部材13a〜13cは、防音材12の表面と密着可能なように制振材12bの表面形状に沿った形状に形成されており、レール6A,6Bの左右両側面及び下側から着脱自在に装着可能な分割構造を有する。挟み込み部材13a,13bは、左右の制振材片12fの側面をそれぞれ保持し、挟み込み部材13cは左右の制振材片12fの下面を保持する。挟み込み部材13a〜13cは、例えば、薄板状のどぶ付けめっき鋼板やステンレス鋼板などによって形成されている。挟み込み部材13a〜13cは、レール6A,6Bの長さ方向に沿って防音材12を複数並べて装着するときには、この防音材12の長さ方向に所定の間隔をあけて装着されている。
【0070】
連結部材13dは、挟み込み部材13a〜13cを着脱自在に連結する部材である。連結部材13dは、連結作業を容易に実施可能なように、防音材12がレール6A,6Bに装着されたときにこのレール6A,6Bの内側及び外側に位置するように配置されている。連結部材13dは、貫通孔13f,13hに挿入される締結ボルト13iと、この締結ボルト13iに装着される締結ナット13jなどを備えている
【0071】
接合部13e,13gは、挟み込み部材13a,13bと挟み込み部材13cとが接合する部分である。接合部13eは、挟み込み部材13a,13bの一端部に形成された平坦面であり、接合部13gは挟み込み部材13cの両端部に一端部に形成された平坦面である。貫通孔13f,13hは、締結ボルト13iが貫通する部分であり、貫通孔13fは接合部13eに形成されており、貫通孔13hは接合部13gに形成されている。
【0072】
図5〜図7に示す固定部材14は、防音材10A,10Bを防音材12に着脱自在に固定する部材である。固定部材14は、図5及び図7に示すように、レール6A,6Bの継目部分の側面を防音材10A,10Bの内側側面が囲むように、防音材10A,10Bと防音材12とを着脱自在に固定する。固定部材14は、図9に示すように、防音材10A,10B側の接合部10iと防音材12側の接合部12dとを接合させた状態でこれらの接合部10i,12dを着脱自在に連結する。固定部材14は、連結作業を容易に実施可能なように、防音材12がレール6A,6Bに装着されたときにこのレール6A,6Bの内側及び外側に位置するように配置されている。固定部材14は、接合部10i側の長孔と接合部12d側の貫通孔とに挿入される締結ボルト14aと、吸音材12aが貼り付けられる側の制振材12bの表面に溶接などによって固定されており締結ボルト14aと噛み合う締結ナット14bなどを備えている。
【0073】
次に、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の装着方法について説明する。
図5及び図7に示すように、継目部分の前後のレール6A,6Bに防音材12を固定部材13によって固定する。図8に示すように、継目部分の前後のレール6A,6Bのレール底部6b及びレール腹部6cの表面を吸音材片12eによって被覆して、レール底部6b及びレール腹部6cの表面に吸音材12aを装着する。その後に、吸音材12aの表面を制振材片12fによって被覆して、この吸音材12aの表面に制振材12bを装着する。次に、レール6A,6Bの長さ方向に所定の間隔をあけて、挟み込み部材13a〜13cを防音材12に装着し、締結ボルト13iを貫通孔13f,13hに挿入して締結ナット13jと締結ボルト13iとを締結し、挟み込み部材13a,13bと挟み込み部材13cとを連結する。その結果、レール底部6b及びレール腹部6cが防音材12によって被覆され、継目部分の前後のレール6A,6Bに固定部材13によって防音材12が固定される。
【0074】
次に、図5及び図7に示すように、継目部分のレール6A,6Bに防音材10A,10Bを固定部材14によって固定する。先ず、図9に示すように、防音材10A,10B側の接合部10iと防音材12側の接合部12dとを互に接合させて、防音材10A,10B側の長孔と防音材12側の貫通孔とに締結ボルト14aを挿入する。このとき、防音材10A,10B側の貫通孔が長孔であるため、防音材12に対して防音材10A,10Bを長さ方向に微調整することによって、最適な位置に防音材10A,10Bが位置決めされる。防音材10A,10Bが最適な位置に位置決めされた後に、締結ナット14bに締結ボルト14aを噛み合わせて締結し、防音材12に防音材10A,10Bが固定される。レール6A,6Bの交換作業を実施する場合には、以上説明した手順と逆の手順によって防音材12から防音材10A,10Bが取り外される。
【0075】
次に、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の作用を説明する。
継目部分の前後のレール6A,6B上を車輪1が通過してレール6A,6Bが振動すると、レール6A,6Bと一体となって防音材12の吸音材12aが振動しようとする。また、レール6A,6Bの継目部分を車輪1が通過してレール6A,6Bが振動すると、レール6A,6Bから転動騒音が放射し、防音材10A,10Bがこの転動騒音を遮るとともに防音材10A,10Bの吸音材12aが振動しようとする。吸音材10a,12aが柔軟な弾性材によって形成されている場合には、力学モデルとしてばね定数が小さい柔軟なばねを構成する。その結果、ばね定数の低下によって振動伝達率が低下し、レール6A,6Bからの振動や転動騒音が制振材10b,12bに伝播し難くなる。一方、吸音材10a,12aが柔軟な粘弾性材によって形成されている場合には、力学モデルとして柔軟なばねと減衰器(ダッシュポット)とを構成する。このため、ばね定数の低下によって振動伝達率が低下するとともに、粘性による振動減衰によってレール6A,6Bの振動エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて、レール6A,6Bの振動が吸収され減衰する。また、レール6A,6Bからの騒音エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて、レール6A,6Bからの転動騒音が吸収され減衰する。その結果、レール6A,6Bから外層の制振材10b,12bに伝播する振動が低減するため、制振材10b,12bの振動が低減し制振材10b,12bからの放射音が低減する。特に、柔軟な粘弾性材が制振材10b,12bによって拘束されている場合には、吸音材10a,12aのせん断変形の程度が振動時に高められるため、粘弾性材の内部損失が増大し制振能力が増幅させられる。継目部分の前後のレール6A,6Bの略全面を防音材12によって被覆しているため、防音材10A,10B,12の制振材10b,12bからの放射音の音響インピーダンスが低減し、レール6A,6B自体の放射音パワーが減少し防音効果が向上する。
【0076】
この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて騒音を低減する防音材10A,10Bを、これらの防音材10A,10Bとは分割可能な別部材でありこの継目部分の前後のレール6A,6Bを被覆して騒音を低減する防音材12に着脱自在に固定部材14が固定する。このため、図1〜図4に示すような防音材10A,10Bをレール6A,6Bに固定するための専用の固定部材11が不要になって、防音材10A,10Bを防音材12に短時間で簡単に着脱することができる。また、防音材10A,10Bと防音材12とが分割可能な別部材であるため、既存の防音材12に防音材10A,10Bを簡単な追加工事によってレール6A,6Bに取り付けることができる。
【0077】
(2) この第2実施形態では、レール6A,6Bの継目部分の側面を防音材10A,10Bの内側側面が囲むように、防音材10A,10Bと防音材12とを着脱自在に固定部材14が固定する。例えば、図1〜図4に示す防音構造9では、レール6A,6Bの継目部分の外側側面と防音材10A,10Bの内側側面との間にはレール6A,6Bの長さ方向に開口部があるため、レール6A,6B上を車輪1が通過するとレール6A,6Bの長さ方向に転動騒音が放射される。この第2実施形態では、レール6A,6Bの長さ方向に放射される転動騒音を防音材10A,10Bの屈曲部10hが遮るように、レール6A,6Bの継目部分の外側側面を防音材10A,10Bの内側側面によって囲んでいる。このため、レール6A,6B上を車輪1が通過して発生する転動騒音がレール6A,6Bの長さ方向に放射するのを防音材10A,10Bが防ぎ、騒音低減効果をより一層向上させることができる。
【0078】
(3) この第1実施形態では、継目部分の前後のレール6A,6Bのレール底部6b及びレール腹部6cの略全面を防音材12が被覆する。このため、レール6A,6Bの継目部分から発生する騒音を防音材10A,10Bによって低減できるとともに、継目部分の前後のレール6A,6Bから発生する騒音を防音材12によって低減することができる。
【0079】
(第3実施形態)
図10は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図11は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造における防音材の接合部の断面図である。
図10及び図11に示す防音構造9は、図7及び図9に示す防音構造9とは切欠部10g及び屈曲部10hの形状が異なる。図10及び図11に示す防音材10A,10Bは、これらの防音材10A,10Bの長さ方向の両端部の切欠部10gと道床3との間に隙間が形成されておらず、屈曲部10hの下縁部と道床3との間にも隙間が形成されていない。切欠部10gは、レール6A,6Bの側面方向から見たときに外観が略U字状に形成されており、まくらぎ2の上面及び両側面と接触し、まくらぎ2を跨ぐように形成されている。屈曲部10hは、切欠部10gと略同じ高さで形成されており、屈曲部10hの下縁部が道床3内に所定の深さだけ埋設されている。この第3実施形態には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、レール6A,6Bの継目部分の側面を可能な限り防音材10A,10の内側側面によって囲むため、レール6A,6Bの長さ方向に放射する騒音をより一層低減することができる。
【0080】
(第4実施形態)
図12は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図13は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造における防音材の接合部の断面図である。
図12及び図13に示す防音構造9は、図7、図9、図10及び図11に示す防音構造9とは屈曲部10h及び接合部10iの形状が異なる。図13に示す屈曲部10hは、図9及び図11に示す屈曲部10hよりも高さが低く、図13に示す接合部10iは図9及び図11に示す接合部10iよりも面積が狭く固定部材14による固定箇所が少ない。この第4実施形態には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、防音材10A,10Bを防音材12の一部に固定するため、防音材10A,10Bの着脱作業をより一層短時間で実施することができる。
【0081】
(第5実施形態)
図14は、この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図15は、この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造における防音材の接合部の断面図である。
図14及び図15に示す防音構造9は、図7、図9、図10〜図13に示す防音構造9とは吸音材10a及び接合部10iの形状が異なる。図14及び図15に示す防音材10A,10Bは、接合部10iが垂直な壁面に形成されている。防音材12は、図15に示すように、レール腹部6cの腹部側面6hと制振材12bとの間に挟み込まれる吸音材片12eが図9、図11及び図13に示す吸音材片12eに比べて厚い。防音材12は、図15に示すように、制振材12bの外壁面を構成する接合部12dが垂直な壁面に形成されている。固定部材14は、防音材10A,10Bの内側の垂直な接合部10iと防音材12の外側の垂直な接合部12dとを着脱自在に固定する。この第5実施形態には、第1実施形態〜第4実施形態と同様の効果がある。
【0082】
(第6実施形態)
図16は、この発明の第6実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図17は、この発明の第6実施形態に係るレールの防音構造における防音材の接合部の断面図である。
図16及び図17に示す防音構造9は、図7、図9、図10〜図13に示す防音構造9とは固定部材14の構造が異なる。図16に示す防音材10A,10Bの端部10cには、防音材10A,10Bを長さ方向に微調整して防音材12に固定可能なように、レール6A,6Bの長さ方向に長い図示しない長孔が形成されている。図16及び図17に示す固定部材14は、締結ボルト14aと、締結ナット14bと、支持部材14cなどを備えている。固定部材14は、図17に示すように、締結ボルト14aと締結ナット14bとを締結することによって、支持部材14cの一方の端部を防音材10A,10Bに連結し、支持部材14cの他方の端部を防音材12に連結して、防音材10A,10Bと防音材12とを着脱自在に固定する。締結ボルト14aは、防音材12側の長孔と支持部材14cの貫通孔とに挿入される部材であり、締結ナット14bは締結ボルト14aと噛み合う部材であり、制振材12bの裏面と支持部材14cの表面に溶接などによって固定されている。支持部材14cは、防音材10A,10Bを支持する部材であり、外観が略L字状の山形鋼などのアングル材である。支持部材14cの両端部には、締結ボルト14aが挿入される図示しない貫通孔がそれぞれ形成されている。この第6実施形態には、第1実施形態〜第5実施形態と同様の効果がある。
【0083】
(第7実施形態)
図18は、この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図19は、この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造の固定部材の断面図である。
図18及び図19に示す防音構造9は、図5〜図17に示す防音構造9とは固定部材13の構造が異なる。図18及び図19に示す固定部材13は、防音材10A,10Bと防音材12とをレール6A,6Bに着脱自在に固定する部材であり、防音材10A,10Bとこれらの防音材10A,10Bとは分割可能な別部材である防音材12とをレール6A,6Bに固定する。防音材10A,10Bは、図19に示すように、端部10cの下側角部に貫通孔10jが形成されている。貫通孔10jは、防音材10A,10Bを長さ方向に微調整してレール6A,6Bに固定可能なように、レール6A,6Bの長さ方向に長い長孔である。固定部材13は、挟み込み部材13a〜13cと、連結部材13dと、支持部材13kと、連結部材13mなどを備えている。図19に示す連結部材13dは、支持部材13kと挟み込み部材13a〜13cとを着脱自在に連結する部材であり、図8に示す連結部材13dと同一構造である。
【0084】
図19に示す支持部材13kは、防音材10A,10Bを支持する部材であり、外観が略L字状の山形鋼などのアングル材である。支持部材13kは、一方の端部に接合部13nを備え、他方の端部に接合部13pを備えている。接合部13nは、防音材10A,10Bの制振材10bと接合する部分であり、接合部13nには貫通孔13qが形成されている。接合部13pは、接合部13eと接合する部分であり、接合部13eと接合した状態で連結部材13dによって挟み込み部材13a〜13cに着脱自在に連結される。接合部13nには連結部材13dの締結ボルト13iが貫通する貫通孔13rが形成されている。
【0085】
連結部材13mは、防音材10A,10Bと支持部材13kとを着脱自在に連結する部材である。連結部材13mは、貫通孔10j,13qに挿入される締結ボルト13sと、この締結ボルト13sに装着される締結ナット13tなどを備えている。
【0086】
この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第6実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第7実施形態では、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて騒音を低減する防音材10A,10Bと、これらの防音材10A,10Bとは分割可能な別部材でありこの継目部分の前後のレール6A,6Bと接触して騒音を低減する防音材12とを、固定部材13がレール6A,6Bに着脱自在に固定する。このため、固定部材13を使用して防音材10A,10B,12をレール6A,6Bにまとめて固定することができる。その結果、防音材10A,10B,12の着脱作業をより一層軽減することができる。
【0087】
(2) この第7実施形態では、継目部分の前後のレール6A,6Bに防音材12が固定されるように、この継目部分の前後のレール6A,6Bとの間で挟み込み部材13a〜13cが防音材12を挟み込み、防音材10A,10Bを支持する支持部材13kと挟み込み部材13a〜13cとを連結部材13dが着脱自在に連結する。このため、防音材10A,10B及び防音材12を連結部材13dによってレール6A,6Bから簡単に着脱することができる。また、防音材10A,10Bと防音材12とが分割可能な別部材であるため、防音材12をレール6A,6Bに装着した状態で防音材10A,10Bのみをレール6A,6Bから簡単に取り外すことができる。また、固定部材13が振動したときにこの振動を防音材12によって抑えることができるため、連結部材13d,13mなどが振動によって緩むのを防ぐことができ、支持部材13kと挟み込み部材13a〜13cを強固に連結することができる。
【0088】
(第8実施形態)
図20は、この発明の第8実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
図20に示す防音構造9は、図1〜図19に示す防音構造9とは防音材15A,15Bの構造が異なる。図20に示す固定部材13は、防音材15A,15Bをレール6A,6Bに着脱自在に固定する部材であり、図8に示す固定部材13と同一構造である。防音材15A,15Bは、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて騒音を低減する部分とこの継目部分の前後のレール6A,6Bと接触して騒音を低減する部分とが一体構造の部材であり、レール6A,6Bの継目部分からこの継目部分の前後のレール6A,6Bまでが一体に形成されている。防音材15A,15Bは、図5〜図19に示す防音材10A,10Bと防音材12とを一体化させたような構造であり、以下では防音材10A,10B及び防音材12側の部分と対応する防音材15A,15B側の部分については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。防音材15A,15Bは、図20に示すように、吸音材15aと、制振材15bと、端部15cと、上縁部15dと、下縁部15eと、切欠部15gと、屈曲部15hなどを備えている。
【0089】
この発明の第8実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第7実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第8実施形態では、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて騒音を低減する部分とこの継目部分の前後のレール6A,6Bと接触して騒音を低減する部分とが一体構造の防音材15A,15Bを、レール6A,6Bに固定部材13が着脱自在に固定する。このため、レール6A,6Bの継目部分とこの前後のレール6A,6Bとが振動して発生する騒音を防音材15A,15Bによって同時に低減することができる。また、防音材15A,15Bが一体化されているため、防音材15A,15Bの着脱作業をより一層軽減することができる。
【0090】
(2) この第8実施形態では、継目部分の前後のレール6A,6Bに防音材15A,15Bが固定されるように、この継目部分の前後のレール6A,6Bとの間でこの防音材15A,15Bを固定部材13が挟み込む。このため、防音材15A,15Bを固定部材13によってレール6A,6Bから簡単に着脱することができる。
【0091】
(第9実施形態)
図21は、この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
図21に示す防音構造9は、図1〜図20に示す防音構造9とは防音材10A,10Bの構造が異なり、防音材10A,10Bが二重回折部10kを備えている。二重回折部10kは、レール6A,6Bからの騒音を音源側に二重回折させる部分であり、レール6A,6Bと防音材10A,10Bとの間の空間に音響エネルギーを閉じ込める。二重回折部10kは、例えば、図21に示すように制振材10bの上縁部をレール6A,6B側に略90度屈曲させて形成されており、この屈曲部分の内側には吸音材10aが取り付けられている。
【0092】
この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第8実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第8実施形態では、レール6A,6Bからの騒音を音源側に二重回折部10kが二重回折させる。このため、レール6A,6Bが振動して発生する騒音の音響エネルギーを音源側に閉じ込めて、遮音効果をより一層向上させることができる。
【0093】
(第10実施形態)
図22は、この発明の第10実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図23は、この発明の第10実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図24は、この発明の第10実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図25は、図22のXXV-XXV線で切断した状態を示す断面図である。
【0094】
図22〜図25に示す防音構造9は、図1〜図21に示す防音構造9とは異なり、図22、図24及び図25に示すようにレール締結装置4によって防音材10A,10Bをまくらぎ2に着脱自在に固定している。防音構造9は、図19に示す防音構造9と同様に支持部材13kと連結部材13mなどを備えている。
【0095】
レール締結装置4は、レール6A,6Bをまくらぎ2に締結する機能に加えて、防音材10A,10Bをまくらぎ2に着脱自在に固定する固定部材としても機能する。レール締結装置4は、図25に示すように、タイプレート4aと、締結ばね4bと、締結ボルト4c,4eと、締結ナット4d,4fと、軌道パッド4gと、調節パッキン4hと、調整鋼板4iと、絶縁板4jと、座金4kと、ばね座金4mと、平座金4n,4pと、絶縁カラー4qと、カバープレート4rなどを備えている。軌道パッド4gは、レール6A,6Bとまくらぎ2との間に挿入する絶縁性の弾性体であり、調整パッキン4hはレール6A,6Bとまくらぎ2との間に挿入してレール6A,6Bの上下位置を調節する部材である。調整鋼板4iは、まくらぎ2とタイプレート4aとの間に挿入されてレール6A,6Bの上下位置を調整する部材であり、絶縁板4jはまくらぎ2と調整鋼板4iとの間に挿入されてこれらの間を電気的に絶縁する部材であり、座金4kは締結ばね4bと締結ナット4dとの間に挟み込まれる部材である。ばね座金4mは、締結ナット4fの緩みを防止する部材であり、平座金4nは締結ナット4fとばね座金4mとの間に挟み込まれる部材であり、平座金4pは支持部材13kの接合部13pとばね座金4mとの間に挟み込まれる部材である。絶縁カラー4qは、レール6A,6Bとまくらぎ2とを電気的に絶縁する部材であり、支持部材13kの接合部13pとカバープレート4rとの間に挿入されており、カバープレート4rはタイプレート4aと絶縁カラー4qとの間に挿入される部材である。レール締結装置4は、図25に示すように、平座金4pと絶縁カラー4qとの間に支持部材13kの接合部13pを挟み込み、この接合部13pを貫通する締結ボルト4eに締結ナット4fを装着することによって、支持部材13kをまくらぎ2に固定している。
【0096】
この発明の第10実施形態には、第1実施形態〜第9実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第10実施形態では、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて騒音を低減する防音材10A,10Bを、レール6A,6Bを支持するまくらぎ2に着脱自在に固定する。このため、既存のまくらぎ2を有効に利用してレール6A,6Bからの騒音を低減することができる。
【0097】
(2) この第10実施形態では、レール6A,6Bをまくらぎ2に締結するレール締結装置4によって防音材10A,10Bをまくらぎ2に着脱自在に固定する。このため、防音材10A,10Bを固定するための特別な固定部材を用意せずに、レール締結装置4を利用してまくらぎ2に防音材10A,10Bを簡単な作業によって短時間で固定することができる。
【0098】
(第11実施形態)
図26は、この発明の第11実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図27は、この発明の第11実施形態に係るレールの防音構造の固定部材の断面図である。
図26及び図27に示す防音構造9は、図22〜図25に示す防音構造9とは固定部材16の構造が異なる。図26及び図27に示す固定部材16は、防音材10A,10Bをまくらぎ2に着脱自在に固定する部材である。固定部材16は、レール6A,6B及びレール締結装置4と電気的に絶縁するように、図27に示すようにレール6A,6B及びレール締結装置4から離間してレール締結装置4よりも外側に配置されている。固定部材16は、埋込栓16aと、締結ボルト16bと、締結ナット16cと、座金16dと、絶縁材16eなどを備えている。埋込栓16aは、締結ボルト16bを締結するためにまくらぎ2に埋め込まれる部材である。埋込栓16aは、防音材10A,10Bとまくらぎ2とを電気的に絶縁する不飽和ポリエステル樹脂製又はナイロン製の受け栓であり、まくらぎ2に形成された埋込用の穴に埋め込まれてこのまくらぎ2に装着されている。埋込栓16aの内周部には雌ねじ部16fが形成されている。締結ボルト16bは、支持部材13kの接合部13pを固定する部材であり、締結ボルト16bの外周部には埋込栓16aの雌ねじ部16fと噛み合う雄ねじ部が形成されている。締結ナット16cは、締結ボルト16bと噛み合う部材であり、締結ボルト16b装着されて支持部材13kの接合部13pをまくらぎ2に押し付けて締結し、座金16dは締結ナット16cと接合部13pとの間に挟み込まれる部材である。絶縁材16eは、支持部材13kの接合部13pとまくらぎ2との間を電気的に絶縁する部材であり、加硫ゴム製、ウレタン製又はプラスチック製の板状部材である。絶縁材16eには締結ボルト16bが貫通する貫通孔16gが形成されている。固定部材16は、座金16dと絶縁材16eとの間に支持部材13kの接合部13pを挟み込み、この接合部13pを貫通する締結ボルト16bに締結ナット16cを装着することによって、支持部材13kをまくらぎ2に固定している。
【0099】
この発明の第11実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第10実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第11実施形態では、まくらぎ2に埋め込まれた埋込栓16aの雌ねじ部16fと、この埋込栓16aの雌ねじ部16fと噛み合う締結ボルト16bとによって、防音材10A,10Bをまくらぎ2に着脱自在に固定する。このため、埋込栓16aが埋設されたまくらぎ2を新たに製造する場合には、まくらぎ2に防音材10A,10Bを現場で簡単に固定することができる。また、既存のまくらぎ2に埋込栓16aを新たに装着する場合には、簡単な追加工事によって埋込栓16aを装着して防音材10A,10Bをまくらぎ2に簡単に固定することができる。
【0100】
(第12実施形態)
図28は、この発明の第12実施形態に係るレールの防音構造の固定部材の断面図である。
図28に示す防音構造9は、図22〜図27に示す防音構造9とは固定部材17の構造が異なる。図28に示す固定部材17は、防音材10A,10Bをまくらぎ2に着脱自在に固定する部材であり、図26及び図27に示す固定部材16と同様に、図28に示すようにレール締結装置4よりも外側に配置されている。固定部材17は、取付座付きボルト17aと、締結ナット17bと、座金17cなどを備えている。取付座付きボルト17aは、支持部材13kの接合部13pを固定する部材であり、台座部17dとボルト部17eなどを備えている。台座部17dは、まくらぎ2に取り付けられる板状部材であり、下面がまくらぎ2の上面に取り付けられる。台座部17dは、防音材10A,10Bとまくらぎ2とを電気的に絶縁するフェノール樹脂などの合成樹脂によって形成されている。ボルト部17eは、支持部材13kの接合部13pを締結する部材であり、ボルト部17eの外周部には雄ねじ部17fが形成されている。ボルト部17eは、台座部17dと一体にこの台座部17dの上面に形成されている。締結ナット17bは、ボルト部17eと噛み合う部材であり、ボルト部17eに装着されて支持部材13kの接合部13pを台座部17dに押し付けて締結する。座金17cは、締結ナット17bと支持部材13kの接合部13pとの間に挟み込まれる部材である。固定部材17は、締結ナット17bと座金17cとの間に支持部材13kの接合部13pを挟み込み、この接合部13pを貫通するボルト部17eに締結ナット17bを装着することによって、支持部材13kをまくらぎ2に固定している。
【0101】
接着層18は、取付座付きボルト17aとまくらぎ2とを接着する層であり、取付座付きボルト17aの台座部17dの下面とまくらぎ2の上面とを接着剤によって接合する。このような接着層としては、例えば、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系などの反応型接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、変性アクリル樹脂系などのエマルジョン型接着剤、クロロプレンやシリコンなどの合成ゴム型接着剤、エラストマー系、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)系などのホットメルト型接着剤などによって形成することが好ましい。
【0102】
この発明の第12実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第11実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第12実施形態では、まくらぎ2に取り付けられる取付座付きボルト17aと、この取付座付きボルト17aの雄ねじ部17fと噛み合う締結ナット17bとによって、防音材10A,10Bをレール6A,6Bに着脱自在に固定する。その結果、例えば、第10実施形態のような埋込栓16aをまくらぎ2に埋設するような特別な加工を施さずに、取付座付きボルト17aを接着剤によって簡単に取り付けることができるため、防音材10A,10Bをまくらぎ2に短時間で固定することができる。
【0103】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、バラスト3aによって構成された有道床軌道を例に挙げて説明したが、橋梁上に敷設された軌道などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、継目構造5が普通継目である場合を例に挙げて説明したが普通継目以外の継目構造についてもこの発明を適用することができる。例えば、継目部分の両側と継目板との間に絶縁材を挟み込みこの継目部分を電気的に絶縁して接続する絶縁継目、継目部分の両側に継目板を絶縁性の接着材によって接着してこの継目部分を電気的に絶縁して接続する接着絶縁継目、又は継目部分を伸縮自在に接続する伸縮継目などについてもこの発明を適用することができる。この場合に、継目構造5が伸縮継目の場合には、レール6A,6Bの伸縮を阻害しないように防音材10A,10Bをまくらぎ2などの支持体側に固定することができる。
【0104】
(2) この実施形態では、支持体がまくらぎ2である場合を例に挙げて説明したが、まくらぎ2以外の支持体についてもこの発明を適用することができる。例えば、レール6A,6Bをそれぞれ支持するプレストレスコンクリート構造(PRC構造)の縦梁を鋼管製の継材によって連結する梯子状のラダーまくらぎなどの支持体についても、この発明を適用することができる。この場合には、防音材10A,10B,15A,15Bの下縁部10eを縦梁に接触させることができる。同様に、矩形平板状のプレキャストのコンクリート版(スラブ版)によって構成されて道床とまくらぎとを一体化させた省力化軌道の一種である軌道スラブなどの支持体についてもこの発明を適用することができる。この場合には、防音材10A,10B,15A,15Bの下縁部15eをスラブ版の表面に接触させることができる。また、この実施形態では、継目部分の直下にまくらぎ2を配置する支え継目を例に挙げて説明したが、継目部分の直下にまくらぎ2を配置させずに、隣り合うまくらぎ2の中間に継目を設ける掛け継目についてもこの発明を適用することができる。
【0105】
(3) この実施形態では、レール締結装置4から防音材10A,10B,15A,15Bを離間させて配置する場合を例に挙げて説明したがこのような配置に限定するものではない。例えば、レール締結装置4と干渉しないように防音材10A,10B,15A,15Bの吸音材10a,15aの一部を切り欠いたり、吸音材10aを電気絶縁性の高分子材料によって形成したりして、レール締結装置4に防音材10A,10B,15A,15Bを接近させて配置することもできる。また、この実施形態では、レール6A,6Bの内側及び外側に防音材10A,10B,15A,15Bをそれぞれ1枚ずつ配置する場合を例に挙げて説明したが、防音材10A,10B,15A,15Bを複数枚に分割してそれぞれをボルトなどの締結部材によって連結及び分離可能な構造にすることもできる。さらに、この実施形態では、継目部分の前後のレール6A,6Bのレール底部6b及びレール腹部6cの全面を防音材12によって被覆する場合を例に挙げて説明したが、これらの表面を防音材12によって部分的に被覆したり、車輪1の踏面1a及びフランジ面1bと接触しない範囲内でレール頭部6aの一部を防音材12によって被覆したりすることもできる。
【0106】
(4) この第1実施形態では、レール6A,6Bの継目部分の側面に間隔をあけて防音材10A,10Bのみを配置しているが、この継目部分の前後のレール6A,6Bに防音材12を接触させて防音材10A,10Bとともに防音効果を向上させることもできる。また、この第2実施形態〜第6実施形態及び第9実施形態では、防音材10A,10Bと防音材12とを複数本の締結ボルト14aによって連結しているが、締結ボルト14aの本数は任意に設定することができる。さらに、この発明の第6実施形態では、締結ボルト14a及び締結ナット14bによって支持部材14cを防音材12に固定する場合を例に挙げて説明したが、支持部材14cを防音材12の表面に溶接又は接着することによって支持部材14cを防音材12に固定することもできる。
【0107】
(5) この第7実施形態及び第10実施形態〜第12実施形態では、防音材10A,10Bを防音材12又はまくらぎ2に別部材の支持部材13kによって固定しているが、防音材10A,10Bの一部を折り曲げて支持部材13kに相当する支持部を形成することもできる。また、この第9実施形態では、レール6A,6B側に略90度屈曲させて二重回折部10kを形成する場合を例に挙げて説明したが、レール6A,6B側に90度未満(例えば、30度程度)屈曲させて二重回折部10kを形成することもできる。
【0108】
(6) この第9実施形態では、防音材10A,10Bに二重回折部10kを形成する場合を例に挙げて説明したが、図20に示す防音材15A,15Bに二重回折部を形成することもできる。さらに、この第10実施形態では、レール締結装置4がタイプレート式のレール締結装置である場合を例に挙げて説明したが、タイプレート4aを使用しない方式のレール締結装置についてもこの発明を適用することができる。この場合には、締結ばねとこの締結ばねを支持する絶縁性のばね受け台との間に、支持部材13kの接合部13pを挟み込み固定することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 車輪
2 まくらぎ(支持体)
3 道床
4 レール締結装置(固定部材)
5 継目構造
6A,6B レール
6a レール頭部
6b レール底部
6c レール腹部
7A,7B 継目板
8 締結部材
9 防音構造
10A,10B 防音材(第1の防音材)
10a 吸音材
10b 制振材
10i 接合部
10k 二重回折部
11 固定部材
11a 支持部材
11b 連結部材(第1の連結部材)
11d 連結部材(第2の連結部材)
12 防音材(第2の防音材)
12a 吸音材
12b 制振材
12d 接合部
13 固定部材
13a〜13c 挟み込み部材
13d 連結部材
13k 支持部材
14 固定部材
15A,15B 防音材
15a 吸音材
15b 制振材
16 固定部材
16a 埋込栓
16b 締結ボルト
16c 締結ナット
17 固定部材
17a 取付座付きボルト
17b 締結ナット
17e ボルト部
17f 雄ねじ部
18 接着層
L 建築限界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する第1の防音材を、この第1の防音材とは分割可能な別部材であり前記継目部分の前後のレールと接触して前記騒音を低減する第2の防音材に着脱自在に固定する固定部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項2】
請求項1に記載のレールの防音構造において、
前記固定部材は、前記第1の防音材の内側の垂直な接合部と前記第2の防音材の外側の垂直な接合部とを着脱自在に固定すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項3】
レールの継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する第1の防音材と、この第1の防音材とは分割可能な別部材であり前記継目部分の前後のレールと接触して前記騒音を低減する第2の防音材とを、前記レールに着脱自在に固定する固定部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項4】
請求項3に記載のレールの防音構造において、
前記固定部材は、
前記第1の防音材を支持する支持部材と、
前記継目部分の前後のレールに前記第2の防音材が固定されるように、この継目部分の前後のレールとの間でこの第2の防音材を挟み込む挟み込み部材と、
前記支持部材と前記挟み込み部材とを着脱自在に連結する連結部材とを備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記固定部材は、前記継目部分の側面を前記第1の防音材の内側側面が囲むように、前記第1の防音材と前記第2の防音材とを着脱自在に固定すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記第2の防音材は、前記継目部分の前後のレールの少なくとも腹部及び底部の略全面を被覆すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項7】
レールの継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する部分とこの継目部分の前後のレールと接触して前記騒音を低減する部分とが一体構造の防音材を、前記レールに着脱自在に固定する固定部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項8】
請求項7に記載のレールの防音構造において、
前記固定部材は、前記継目部分の側面を前記防音材の内側側面が囲むように、この防音材とこのレールとを着脱自在に固定すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のレールの防音構造において、
前記固定部材は、前記継目部分の前後のレールに前記防音材が固定されるように、この継目部分の前後のレールとの間でこの防音材を挟み込むこと、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、前記継目部分の前後のレールの少なくとも腹部及び底部の略全面を被覆すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項11】
レールの継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する防音材を、前記レールを支持する支持体に着脱自在に固定する固定部材を備え、
前記固定部材は、前記レールを前記支持体に締結するレール締結装置であり、
前記防音材は、前記レール締結装置によって支持体に着脱自在に固定されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項12】
レールの継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する防音材を、前記レールを支持する支持体に着脱自在に固定する固定部材を備え、
前記固定部材は、
前記支持体に埋め込まれる埋込栓の雌ねじ部と噛み合う締結ボルトと、
前記締結ボルトの雄ねじ部と噛み合う締結ナットとを備え、
前記防音材は、前記締結ボルトと前記締結ナットとによって前記支持体に着脱自在に固定されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項13】
レールの継目部分で発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記継目部分の側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減する防音材を、前記レールを支持する支持体に着脱自在に固定する固定部材を備え、
前記固定部材は、
前記支持体に取り付けられる取付座付きボルトと、
前記取付座付きボルトの雄ねじ部と噛み合う締結ナットとを備え、
前記防音材は、前記取付座付きボルトと前記締結ナットとによって前記支持体に着脱自在に固定されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記防音材、前記第1及び前記第2の防音材は、内側に前記騒音を吸収する吸音材を備え、外側に前記振動を低減する制振材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記防音材及び前記第1の防音材は、前記騒音を音源側に二重回折させる二重回折部を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−144977(P2012−144977A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96448(P2012−96448)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2007−292198(P2007−292198)の分割
【原出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】