説明

レール探傷装置、レール探傷システムおよび超音波探傷用試験片

【課題】超音波パルスをレールに放射して得られた反射エコーからレールの傷を探傷する際に、高度な技量を必要とせずに正確な探傷を行う技術を提供すること。
【解決手段】レール探傷装置1は、レール100を探傷するための探触子29,30,31,43,53と、探触子をレール100の近傍に支持する支持部20,40,50と、を備え、支持部20,40,50は、レール100に接触する探触子29,30,31,43,53を、レール100へほぼ一定の圧力にて押圧しながら移動させることが可能に構成されている。このことにより、超音波パルスをレール100に放射して得られた反射エコーからレール100の傷を探傷する際に、高度な技量を必要とせずに正確な探傷を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波パルスをレールに放射して得られた反射エコーからレールの傷を探傷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道などのレールに生じた傷を発見するためのレール探傷方法が知られている。このようなレール探傷方法では、超音波探傷装置にケーブルを介して接続された探触子を垂直にレールに当て、且つ一定速度にて走査させることで、レールの探傷を行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上述の超音波探傷装置では、超音波探触子がレール上を接触して移動する際に、送信部から一定周期で出力する送信信号を超音波探触子に入力し、超音波探触子内部の振動子から超音波パルスがレール1に放射される。この超音波パルスがレール1の傷で反射し、この反射波が超音波探触子内の振動子で受信される。また、上述の超音波探傷装置では、超音波探触子内の振動子で受信された受信信号が受信部に入力され、ここで増幅などを行って、信号処理部に入力される。信号処理部では、ここに設けられたゲート回路によって所定のビーム路程範囲のみを検出範囲として選択し、さらに、アナログ信号をデジタル信号に変換し、受信信号ベルを判定レベルと比較して反射エコーを検出する。この検出した反射エコーデータと図示しない走行距離センサからの移動量データに基づいて、レールの傷の位置や、その重大性の判定を行い、この結果データをブラウン管(CRT)などの表示部で画面表示している。また、記録部のメモリなどに記憶して保存し、さらに必要に応じて記録紙に印刷して出力している。
【特許文献1】特開平09−304364号公報(第3頁、図2、3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようなレール探傷方法においては、正確な探傷を行うためには、レールに対して探触子を常に垂直に当て、且つ一定速度にて走査させることが必要であり、高度な技量を必要としていた。また、2探触子判定方法においては、2つの探触子を同時に正確な位置へ調整しながら超音波エコーの状態を確認する必要があり、さらに高度な技量を必要としていた。
【0005】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、超音波パルスをレールに放射して得られた反射エコーからレールの傷を探傷する際に、高度な技量を必要とせずに正確な探傷を行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係るレール探傷装置は、超音波パルスをレールに放射して得られた反射エコーから前記レールの傷を探傷するレール探傷装置であって、前記レールを探傷するための探触子と、前記探触子を前記レールへ接触する状態で支持可能な支持部と、を備え、前記支持部は、前記探触子を前記レールへほぼ一定の圧力にて押圧しながら移動させることが可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された本発明のレール探傷装置によれば、レールに接触する探触子を、レールへほぼ一定の圧力にて押圧しながら移動させることができるので、超音波パルスをレールに放射して得られた反射エコーからレールの傷を探傷する際に、高度な技量を必要とせずに正確な探傷を行うことができる。
【0008】
なお、探触子の具体例としては、0度垂直探触子や、45度斜角探触子、70度斜角探触子などが挙げられる。
また、レール探傷装置が複数の探触子を備えるようにしてもよい。具体的には、上述の探触子が複数存在するとともに、上述の支持部が、複数の探触子それぞれを対応して複数存在することが考えられる。なおこの場合、複数の探触子の一つが0度垂直探触子であることが考えられる。また、複数の探触子の一つが45度斜角探触子であることが考えられる。また、複数の探触子の一つが70度斜角探触子であることが考えられる。このように構成すれば、レールに合った探傷子を用いてより正確な探傷を行うことができる。
【0009】
ところで、上述のようにレール探傷装置が複数の探触子を備える場合には、簡易データに基づき、適切な探触子を選択するようにすることが考えられる。具体的には、請求項3のように、検測車によってレールを探傷した結果を示す検測車の探傷データを記憶する記憶手段と、記憶手段が記憶する検測車の探傷データに基づき、複数の探触子のうち適切な探触子を選択する選択手段と、を備えることが考えられる。このように構成すれば、高度な技量を必要とせずに、適切な探触子を選択することで、より正確な探傷を行うことができる。
【0010】
ところで、上述の探傷結果を利用者に報知するようにしてもよい。具体的には、請求項4のように、探触子からの出力信号を探傷結果として出力する出力手段と、出力手段によって出力された探傷結果を報知する報知手段と、を備えることが考えられる。このように構成すれば、利用者の利便性を向上させることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた請求項5に係るレール探傷システムは、 請求項1〜請求項4の何れかに記載のレール探傷装置と、前記レール探傷装置によるレールの探傷結果に基づいて各種処理を実行するセンタと、を備え、前記レール探傷装置と前記センタとの間でデータ通信可能に構成されているレール探傷システムであって、前記レール探傷装置は、前記探傷結果を前記センタに対して送信する送信手段を備え、前記センタは、前記レール探傷装置から送信された探傷結果に基づき、各種処理を実行する処理実行手段を備えることを特徴とする。
【0012】
なお、上述の処理実行手段が実行する各種処理の具体例としては、例えばレールが鉄道用レールである場合には、一つ以上のレール探傷装置から送信された探傷結果を一元管理することや、探傷結果に基づき、レールを補修する計画を立案すること、などが挙げられる。
【0013】
このように構成された本発明のレール探傷システムによれば、レール探傷装置から送信された探傷結果に基づき、センタで各種処理を実行することで、レール探傷装置による探傷結果を有効に活用することができる。
【0014】
ところで、レール探傷装置を使用する際には、レールを模して形成された超音波探傷用試験片を用いて、レール探傷装置の探触子を調整しておくことが望ましい。
そこで、請求項6のように、超音波探傷用試験片については、レール探傷装置が取り付けられた際に、そのレール探傷装置が備える支持部によって支持されて移動する探触子との間の距離がほぼ等間隔となるよう形成されていることが考えられる。
【0015】
このように形成された超音波探傷用試験片を用いて、レール探傷装置の探触子を予め調整しておくことで、超音波パルスをレールに放射して得られた反射エコーからレールの傷を判定する際に、高度な技量を必要とせずに正確な探傷を行うことができる。
【0016】
また、超音波探傷用試験片については、アクリル樹脂にて形成されることが考えられる。このようにすれば、超音波探傷用試験片を軽量化することができ、作業現場などへ持ち運ぶ際に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[第一実施形態]
図1は第一実施形態のレール探傷装置1の平面図である。また、図2は第一実施形態のレール探傷装置1の正面図であり、図3は第一実施形態のレール探傷装置1の側面図である。また、図4(a)は探傷計画処理を説明するためのフローチャートであり、図4(b)は探触子選択アルゴリズムを示す説明図(1)である。また、図5は、探触子選択アルゴリズムを示す説明図(2)である。
【0018】
なお、図1〜図3に示すように、このレール探傷装置1において、ベース10に対して取手15が配されている側を「上側」とし、取手15に対してベース10が配されている側を「下側」とする。また、レール探傷装置1において、固定ロック41に対してエンコーダ60および切り替えボックス70が配されている側を「前側」とし、エンコーダ60および切り替えボックス70に対して固定ロック41が配されている側を「後側」とする。また、レール探傷装置1において、左側支持部40に対して右側支持部50が配されている側を「右側」とし、右側支持部50に対して左側支持部40が配されている側を「左側」とする。
【0019】
[レール探傷装置1の構成の説明]
図1〜図3に示すように、レール探傷装置1は、ベース10、上側支持部20、左側支持部40、右側支持部50、エンコーダ(距離計)60、および切り替えボックス70を備えている。
【0020】
[ベース10の構成の説明]
ベース10は、断面が略コの字形状である金属製の長尺材であり、板状のベース本体10aの左右端から左翼部10bおよび右翼部10cがそれぞれ下方に延出する形状を有している。また、ベース10のベース本体10aの前後端における左翼部10bと右翼部10cとの間には、レール探傷装置1をレール100の上面に案内するための上面ローラ11,12が回転可能にそれぞれ取り付けられている。さらに、ベース10のベース本体10aにおける前後端には、レール探傷装置1をレール100の側面に案内するためのサイドローラ13,14が回転可能にそれぞれ取り付けられている。なお、サイドローラ13,14は、レール100の左側と右側とを移動可能に構成されている。また、ベース10のベース本体10aにおける上部には、レール探傷装置1を持ち運ぶための取手15が取り付けられている。
【0021】
このことにより、上述のように構成されたレール探傷装置1については、レール100に接触する上面ローラ11,12およびサイドローラ13,14を介して、レール100上を移動することができる。
【0022】
[上側支持部20の構成の説明]
ベース10のベース本体10aにおける上部には、板状の上側支持部20が、左右方向に移動可能に取り付けられている。具体的には、上側支持部20は、図示しない付勢バネの付勢力に抗して幅方向調整ノブ23,24を上方へ移動させた際に、ベース10のベース本体10aにおける上部に取り付けられたラック21,22から爪部25,26がそれぞれ離間することで、ラック21,22に沿って左右方向に移動可能となり、一方、幅方向調整ノブ23,24を下方へ移動させた際に、爪部25,26がラック21,22とそれぞれ噛み合って固定されるよう構成されている。
【0023】
また、ベース本体10aの上部におけるラック21,22の近傍には、レール横方向目盛り27,28がそれぞれ配置されており、ベース本体10aに対する上側支持部20の横方向の位置を容易に決めることができる。
【0024】
また、上側支持部20のほぼ中央部には、前方から順に、45度斜角探触子29、70度斜角探触子30および0度垂直探触子31が取り付けられている。これら45度斜角探触子29、70度斜角探触子30および0度垂直探触子31は、図示しない付勢バネによって下方へそれぞれ付勢され、レール100の上面に押し付けられる。このことにより、レール100の側面への45度斜角探触子29、70度斜角探触子30および0度垂直探触子31の押し付け具合を一定とすることができる。
【0025】
なお、上述の45度斜角探触子29、70度斜角探触子30および0度垂直探触子31については公知技術に従っているので、ここではその詳細な説明は省略する。
[左側支持部40および右側支持部50の構成の説明]
ベース10の左翼部10bにおけるほぼ中央付近には、側面探触子開閉用蝶番16を介して左側支持部40が取り付けられており、左側支持部40は、その先端部をベース10の左翼部10bへ接近させたり離間させたりすることができる。また、左側支持部40の先端には固定ロック41が取り付けられており、左側支持部40は、固定ロック41によってベース10の左翼部10bへ固定されることが可能である。
【0026】
また、左側支持部40のほぼ中央部には、スライド部材42が上下方向に移動可能に取り付けられている。このスライド部材42の下端付近には、2つの回転シュウ型斜角探触子43が取り付けられている。また、スライド部材42の上端付近には、シャフト44が取り付けられている。なお、上述の回転シュウ型斜角探触子43とは、2探頭部透過法を行う際に用いられる可変探触子である。
【0027】
さらに、左側支持部40の上部には、高さ調整ピン45が前後方向に移動可能に取り付けられており、高さ調整ピン45は、その先端部を、シャフト44の側部に形成された3つの係合穴(図示省略)の何れかに挿入することで、左側支持部40に対するスライド部材42、回転シュウ型斜角探触子43およびシャフト44の位置を三段階で容易に決めることができる。また、左側支持部40におけるスライド部材42の近傍には、レール高さ目盛り46が取り付けられており、左側支持部40に対するスライド部材42の位置を容易に知ることができる。
【0028】
また、回転シュウ型斜角探触子43は、左側支持部40の先端がベース10の左翼部10bへ固定ロック41によって固定されている際に、図示しない付勢バネの付勢力によってレール100の側面に押し付けられる。このことにより、レール100の側面への回転シュウ型斜角探触子43の押し付け具合を一定とすることができる。なお、上述の回転シュウ型斜角探触子43については公知技術に従っているので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0029】
ベース10の右翼部10cにおけるほぼ中央付近には、側面探触子開閉用蝶番17を介して右側支持部50が取り付けられており、右側支持部50は、その先端部をベース10の右翼部10cへ接近させたり離間させたりすることができる。また、右側支持部50の先端には固定ロック51が取り付けられており、右側支持部50は、固定ロック51によってベース10の右翼部10cへ固定されることが可能である。
【0030】
また、右側支持部50のほぼ中央部には、スライド部材52が上下方向に移動可能に取り付けられている。このスライド部材52の下端付近には、2つの回転シュウ型斜角探触子53が取り付けられている。また、スライド部材52の上端付近には、シャフト54が取り付けられている。なお、上述の回転シュウ型斜角探触子53とは、2探頭部透過法を行う際に用いられる可変探触子である。
【0031】
さらに、右側支持部50の上部には、高さ調整ピン55が前後方向に移動可能に取り付けられており、高さ調整ピン55は、その先端部を、シャフト54の側部に形成された3つの係合穴(図示省略)の何れかに挿入することで、右側支持部50に対するスライド部材52、回転シュウ型斜角探触子53およびシャフト54の位置を三段階で容易に決めることができる。また、右側支持部50におけるスライド部材52の近傍には、レール高さ目盛り(図示省略)が取り付けられており、右側支持部50に対するスライド部材52の位置を容易に知ることができる。
【0032】
また、回転シュウ型斜角探触子53は、右側支持部50の先端がベース10の右翼部10cへ固定ロック51によって固定されている際に、図示しない付勢バネの付勢力によってレール100の側面に押し付けられる。このことにより、レール100の側面への回転シュウ型斜角探触子53の押し付け具合を一定とすることができる。
【0033】
なお、上述の回転シュウ型斜角探触子53については公知技術に従っているので、ここではその詳細な説明は省略する。
[エンコーダ60および切り替えボックス70の構成の説明]
エンコーダ60は、レール100上面からの距離を測定する機能を有する。また、エンコーダ60は、測定したレール100上面からの距離を出力信号として外部へ送信する機能を有する。
【0034】
切り替えボックス70は、電気回路によって構成され、スイッチ操作などによって上述の各種探触子を電気的に切替える機能を有する。また、切り替えボックス70は、各種探触子からの出力信号を探傷結果として出力する機能を有する。なお、切り替えボックス70は出力手段に該当する。
【0035】
[効果]
(1)このように第一実施形態のレール探傷装置1によれば、レール100に接触する各種探触子を、レール100へほぼ一定の圧力にて押圧しながら移動させることが可能であるので、超音波パルスをレール100に放射して得られた反射エコーからレール100の傷を探傷する際に、高度な技量を必要とせずに正確な探傷を行うことができる。
【0036】
(2)また、第一実施形態のレール探傷装置1によれば、複数の探触子を備えるので、レール100に合った探傷子を用いてより正確な探傷を行うことができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0037】
(1)レール探傷装置1と外部のセンタとの間でデータ通信可能に構成し、レール探傷装置1による探傷結果をそのセンタに送信するようにしてもよい。つまり、センタでは、送信された探傷結果を保存しておき、各種処理を実行するのである。なお、センタが実行する各種処理の具体例としては、例えば、一つ以上のレール探傷装置1から送信された探傷結果を一元管理することや、探傷結果に基づき、レール100を補修する計画を立案すること、などが挙げられる。このようにすれば、レール探傷装置1から送信された探傷結果に基づき、センタで各種処理を実行することで、レール探傷装置1による探傷結果を有効に活用することができる。
【0038】
(2)また、レール探傷装置1が表示部を備え、各種探触子を表示部と接続し、各種探触子からの出力信号を、表示部でAスコープやBスコープにて表示するようにしてもよい。なお、外部の表示部と各種探触子を接続してもよい。このようにすれば、利用者の利便性を向上させることができる。
【0039】
(3)上記第一実施形態のレール探傷装置1では、切り替えボックス70が、スイッチ操作などによって上述の各種探触子を電気的に切替えるように構成されているが、これには限られず、切り替えボックス70が、検測車による探傷データに基づき、レール探傷に使用する探触子を選択するようにしてもよい。具体的には、図4(a)に例示するように、外部のセンタが、検測車による探傷データを取得し、その取得した探傷データに基づいて探傷計画の作成および編集を行う。そして、作成および編集を行った探傷計画を示すデータをレール探傷装置1(図4の自動探傷器に相当)の切り替えボックス70に送信する。一方、切り替えボックス70では、取得した探傷計画データに基づき、レール探傷に使用する探触子を次のように選択する(図4(b)参照)。
【0040】
(イ)0度垂直探触子を使用していた箇所では0度垂直探触子および2探頭部透過法を選択する。
(ロ)40度斜角探触子を使用していた箇所では45度斜角探触子を選択する。
【0041】
(ハ)70度斜角探触子を使用していた箇所では70度斜角探触子を選択する。
(ニ)54度斜角探触子を使用していた箇所では0度垂直探触子を選択する。
なおこの場合、外部のセンタは記憶手段に該当し、切り替えボックス70は選択手段に該当する。
【0042】
また、上述の外部のセンタが行う処理を切り替えボックス70が行うように構成してもよい。一例を挙げると、切り替えボックス70が、検測車がレール100を探傷した検測車の探傷データを記憶しており、この検測車の探傷データを基づき、複数の探触子のうち適切な探触子を選択するといった具合である。なおこの場合、切り替えボックス70は記憶手段および選択手段に該当する。
【0043】
このようにすれば、高度な技量を必要とせずに、適切な探触子を選択することで、より正確な探傷を行うことができる。
(4)また、切り替えボックス70が、「コード番号」と「傷の種類」と「選択する探触子」とを関連付けた「探触子選択表」(図5参照)を記憶し、その探触子選択表を参照して、上述の探傷計画データに基づき、レール100の傷の種類から探触子を選択するようにしてもよい。一例を挙げると、レール100の傷の種類が「ボルト穴」である場合には、傷ではないと判断して「選択する探触子」を「無し」とし、また、レール100の傷の種類が「ボルト穴クラック」である場合には、「選択する探触子」を「0度垂直探触子」および「45度斜角探触子」とするといった具合である。
【0044】
このようにすれば、高度な技量を必要とせずに、適切な探触子を選択することで、より正確な探傷を行うことができる。
(5)また、上述のレール探傷装置1を使用する際には、レール100を模して形成された超音波探傷用試験片を用いて、レール探傷装置1の探触子を調整しておくことが望ましい。そこで、上述の超音波探傷用試験片については、レール探傷装置1が取り付けられた際に、移動する各種探触子との間の距離がほぼ等間隔となるよう、レール100に模して形成することが考えられる。
【0045】
このようにすれば、上述の超音波探傷用試験片を用いて、レール探傷装置1の各種探触子を予め調整しておくことで、超音波パルスをレール100に放射して得られた反射エコーからレール100の傷を探傷する際に、高度な技量を必要とせずに正確な探傷を行うことができる。
【0046】
(6)また、上述の超音波探傷用試験片については、アクリル樹脂にて形成されることが考えられる。このようにすれば、超音波探傷用試験片を軽量化することができ、作業現場などへ持ち運ぶ際に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第一実施形態のレール探傷装置の平面図である。
【図2】第一実施形態のレール探傷装置の正面図である。
【図3】第一実施形態のレール探傷装置の側面図である。
【図4】(a)は探傷計画処理を説明するためのフローチャートであり、(b)は探触子選択アルゴリズムを示す説明図(1)である。
【図5】探触子選択アルゴリズムを示す説明図(2)である。
【符号の説明】
【0048】
1…レール探傷装置、10…ベース、10a…ベース本体、10b…左翼部、10c…右翼部、11,12…上面ローラ、13,14…サイドローラ、15…取手、16,17…側面探触子開閉用蝶番、20…上側支持部、21,22…ラック、23,24…幅方向調整ノブ、25,26…爪部、27,28…レール横方向目盛り、29…45度斜角探触子、30…70度斜角探触子、31…0度垂直探触子、40…左側支持部、41,51…固定ロック、42,52…スライド部材、43,53…回転シュウ型斜角探触子、44,54…シャフト、45,55…高さ調整ピン、46…レール高さ目盛り、50…右側支持部、60…エンコーダ、70…切り替えボックス、100…レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波パルスをレールに放射して得られた反射エコーから前記レールの傷を探傷するレール探傷装置であって、
前記レールを探傷するための探触子と、
前記探触子を前記レールへ接触する状態で支持可能な支持部と、
を備え、
前記支持部は、前記探触子を前記レールへほぼ一定の圧力にて押圧しながら移動させることが可能に構成されていることを特徴とするレール探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレール探傷装置において、
前記探触子は複数存在するとともに、
前記支持部は、前記複数の探触子それぞれを対応して複数存在すること
を特徴とするレール探傷装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレール探傷装置において、
検測車によって前記レールを探傷した結果を示す検測車の探傷データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する前記検測車の探傷データに基づき、前記複数の探触子のうち適切な探触子を選択する選択手段と、
を備えることを特徴とするレール探傷装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のレール探傷装置において、
前記探触子からの出力信号を探傷結果として出力する出力手段と、
前記出力手段によって出力された前記探傷結果を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とするレール探傷装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載のレール探傷装置と、前記レール探傷装置によるレールの探傷結果に基づいて各種処理を実行するセンタと、を備え、前記レール探傷装置と前記センタとの間でデータ通信可能に構成されているレール探傷システムであって、
前記レール探傷装置は、
前記探傷結果を前記センタに対して送信する送信手段を備え、
前記センタは、
前記レール探傷装置から送信された前記探傷結果に基づき、各種処理を実行する処理実行手段を備えること
を特徴とするレール探傷システム。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れかに記載のレール探傷装置が取り付けられた際に、前記レール探傷装置が備える前記支持部によって支持されて移動する前記探触子との間の距離がほぼ等間隔となるよう、前記レールを模してアクリル樹脂にて形成された超音波探傷用試験片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−132758(P2007−132758A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325182(P2005−325182)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】