説明

レール継目板の締結ボルト脱落検出方法および脱落検出装置

【課題】
軌道検測車がレールのカーブに入ったときでもレール継目板の締結ボルト脱落を走行状態で検出することができるレール継目板の締結ボルト脱落検出方法および装置を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、レール継目板の静止画を撮像するカメラの視野を、軌道検測車がレールのカーブを走行するときの軌道検測車の車体の上下変動によるレール継目板の映像の移動範囲をカバーする大きさとして静止画像を得て、軌道検測車の走行方向を検出するあるいは車体の傾きを検出する検出器からの信号、例えば、通り変位器からの信号に応じてレール継目板を含むエリア画像を切出すようにしているので、切出すエリア画像の範囲を制限しても通常の走行状態において軌道検測車がカーブに入ってもレール継目板の画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レール継目板の締結ボルト脱落検出装置に関し、詳しくは、軌道検測車の走行状態において、軌道検測車がレールのカーブに入ったときでもレール継目板の締結ボルト脱落を走行状態で検出することができるようなレール継目板の締結ボルト脱落検出方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用レールは、周囲の温度に応じて伸縮する。そのため、遊間部(継目)を設けてレールとレールとが連結される。その接続は、レール継目板によりレールの端部を表裏両側から挟んでボルトでレール継目板を固定することで行われる。
列車の乗りごこち、レールの損傷などを防止するために、継目が適当な間隔であるか否かが軌道検測車(以下検測車)あるいは点検車などにより定期的に点検され、その間隔が所定の基準幅の範囲にないときには継目間隔が調整される。
このような点検のために検測車に搭載され、レーザ光をレール継目板の位置に照射してレール継目板そのものを検出するレール継目板検出装置が公知である(特許文献1)。
また、レールを枕木に固定するボルトのボルト抜けを検出する技術としてレーザ変位計を用いたレール締結具の脱落の検知装置が公知である(特許文献2)。
【0003】
遊間があるレール継目部分は、車輌の車輪が落ち込むので、その分、振動が発生し易く、レール継目板の締結ボルトが脱落することがみられる。通常、例えば、4本あるいは6本という複数のボルトでレール継目板を締結し、かつ、レール継目板がレールの端を表裏両側から狭持する構造でレール同士が結合される。
1本ボルト抜けがレール継目板に発生してもただそれだけで大きな問題には至らないが、レールの連結状態がゆるむことは確かであり、万が一の事故の問題と乗りこごちの点からボルトの抜けを検測車の走行状態において検出する装置の要請がある。
そこで、出願人は、検測車の走行状態において画像処理によりレール継目板を撮像して締結ボルトの脱落検出をするレール継目板の締結ボルト脱落検出装置の発明を出願し、それがすでに公開されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−280918号公報
【特許文献2】特開平11−172606号公報
【特許文献3】特開2006−250573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3の技術は、レール継目板の締結ボルト脱落判定処理を行う際に、レール継目板の静止画の撮像範囲が固定されかつその静止画像において画像処理のエリアが固定的である関係で、検測車がレールのカーブを走行するときには、遠心力により車体が振られるとともに内側と外側のレールの高さが異なることで車体が内側に傾き、外側のレールで車体が高くなり、内側にレールで車体が低くなる。
その結果、それにより撮像される静止画像が上下にずれ、レール継目板の締結ボルトの画像の一部が画像処理エリアから外れる問題が生じることが発生している。
この場合には、レール継目板の締結ボルト脱落判定処理のために画像処理範囲を特定することが難しくなり、その画像処理を別途すると走行状態での検出が難しく、それに対処するために検測車上ではなく、別途の作業を余儀なくされている。
一方、撮像するレール継目板の静止画像の範囲を大きくして画像処理範囲を大きく採ると画像処理ロードが大きくなり、それが通常の走行状態におけるレール継目板の締結ボルトの脱落検出を難しくしている。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決し、軌道検測車がレールのカーブに入ったときでもレール継目板の締結ボルト脱落を走行状態で検出することができるレール継目板の締結ボルト脱落検出方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するためのこの発明のレール継目板の締結ボルト脱落検出装置の特徴は、レール継目板のフランジの影がレール継目板に落ちる角度で軌道検測車側からレール継目板に光を照射し、軌道検測車がレールのカーブを走行するときの軌道検測車の車体の上下変動によるレール継目板の映像の移動範囲をカバーする視野を有するカメラでレール継目板の静止画を軌道検測車から撮像し、軌道検測車の走行方向を検出するあるいは車体の傾きを検出する検出器からの信号に応じて静止画からレール継目板を含むエリア画像を切出し、このエリア画像におけるレール継目板のフランジの影の画像を基準として締結ボルトの差込み穴に相当する画像がエリア画像にあるか否かを検出するものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明にあっては、レール継目板の静止画を撮像するカメラの視野を、軌道検測車がレールのカーブを走行するときの軌道検測車の車体の上下変動によるレール継目板の映像の移動範囲をカバーする大きさとして静止画像を得て、軌道検測車の走行方向を検出するあるいは車体の傾きを検出する検出器からの信号、例えば、通り変位器からの信号に応じてレール継目板を含むエリア画像を切出すようにしているので、画像の範囲を制限して画像を切出しても通常の走行状態において軌道検測車がカーブに入っていてもレール継目板の画像を切出し画像として得ることができる。
その結果、レール継目板の締結ボルトの脱落検出をする画像処理範囲を小さくでき、画像処理ロードを低減でき、かつ、軌道検測車がレールのカーブに入ったときでもレール継目板の締結ボルトの脱落検出をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、この発明のレール継目板の締結ボルト脱落検出装置を適用した一実施例の検測車のレール継目板の締結ボルト脱落検出装置とその継目板画像撮像装置の説明図であり、図2は、レール継目検出器の説明図、図3は、レール継目検出器の検出回路とデータ処理装置の説明図、図4は、レール継目検出器の検出波形の説明図、図5は、通り検出器の説明図、図6(a)〜(c)は、撮像された静止画を二値化した画像の一例を模式的に示した説明図、図7(a)は、エリア切出しされた二値化画像の説明図、図7(b)は、図7(a)のエリア切出しされた二値化画像のY座標に対する明るさ特性の説明図、図8は、ボルト抜けを検出する処理画像に検出領域を設定する説明図、そして図9は、ボルト抜け穴検出の画像処理のフローチャートである。
図1(a)において、10は、レール継目板の締結ボルト脱落検出装置5(以下締結ボルト脱落検出装置5)を搭載する検測車であり、10aは台車フレーム、10bは車輪である。締結ボルト脱落検出装置5は、レール継目検出器6と、通り検出器27、継目板画像撮像装置7、そしてデータ処理装置8とからなる。
レール継目検出器6は、図1(a),図2に示すように、電磁センサ11とケース12、そして検出回路20とからなる。ケース12に内蔵された電磁センサ11は、相互に逆方向に巻かれ、一辺が隣接して配置された巻き形が三角形の2つの空芯コイル11a、11bからなる。これを内装するケース12は、合成樹脂等の非磁性材料で構成され、空芯コイル11a、11bの中心Oa,Obをずらせて樹脂充填された完全密閉状態で固定するものであって、図1(a)に示すように、検測車10の台車フレーム10aからブラケット13を介してレール3あるいはレール4の頭部表面から所定距離、例えば、3cm前後離れて、2本のうち片側のレールに対応して設置される。そして、図1(a)のレール3とレール4との間にある継目1aを検出する。
【0008】
図2に示すように空芯コイル11a、11bは、巻き方が相互に逆方向になっているので、検出信号も相互に逆位相になる。そのため、信号にノイズが乗っても相殺される。さらに、レール3,4の頭部3bの幅は、通常、65mm程度であるが、図1に示すように、ケース12により固定される電磁センサ11の空芯コイル11aの中心Oaは、レールの頭部3aの中心線Oに対応して配置され、空芯コイル11bの中心Obは、レールの頭部3aの中心線Oより10mm程度外側にずれてレール3,4に対応するように配置されている。
空芯コイル11bの中心Obを中心線Oから外側にずらせる理由は、レールにはカーブがあるので、空芯コイル11a、11bが共に外れて電磁センサ11の検出信号が得られなくなることを防止したものである。
【0009】
図1(b)に示すように、継目板画像撮像装置7は、継目板撮像カメラ71と照明光学系72とからなり、継目板撮像カメラ71は、台車フレーム10aの下側に設置されてレール継目板1(以下継目板1)に対してθ=20°〜40°程度の軌道面からの仰角としての角度θで斜め上方からレール継目板1の側面をレール3,4の内側から撮像する。照明光学系72は、それよりも大きなφ=50°〜70°程度の軌道面からの仰角として角度φで斜め上方でレール3,4の内側から継目板1の側面を照明する。これら継目板撮像カメラ71と照明光学系72は、検測車10の台車フレーム10aに固定された筐体73の内部に設置されている。
なお、レール3,4は、それぞれ2本が所定の軌道幅において敷設されているので、図1(a),図1(b)に示されるように、継目板撮像カメラ71が各レールに対して2台ずつ合計4台、照明光学系72が各レールに対して3台で合計6台、筐体73の内部に設置されている。
【0010】
各継目板撮像カメラ71は、例えば、1画面(1フレーム)640×480画素(VGA)の静止画像を撮影画像として得るCCDカメラであり、継目板1を視野に入れた静止画像を両側のそれぞれのレールに対応してそれぞれに生成する。
ここで、重要なことは、照明光学系72の照射角φである。この照明角φは、継目板1のフランジ3aの影がボルト2のボルト差込み穴3cに重なる角度になっている。これにより、例えば、フランジ3aの影が継目板1のボルト部分にかかり、しかもボルトが抜けて穴となっていれば、フランジ3aの影(図6(a)の符号15参照)に連続してボルト差込み穴3cがそのまま黒レベルとなって重なった画像部分(図6(a)の符号16参照)となる静止画を得ることができる。そこで、フランジ3aの影の画像を基準にして撮像画像からボルト抜けの検出が可能になる。すなわち、継目板1のフランジ3aの影の画像部分(図6(a)の符号15参照)と重なって黒の画素の塊(図7(a),図8(a)の符号15と16の画像参照)があった場合に継目板1のボルト抜け穴として検出することが可能になる。それにより、検測車10が走行した状態で継目板1にボルト抜け穴3cがあるか否かを高い信頼性をもって判定することができる。
【0011】
図6(a)〜(c)は、撮像された静止画を二値化した画像の一例を模式的に示した説明図であり、14が継目板撮像カメラ71で撮影した静止画を説明の都合上、二値化した1画面分である。図6(a)は、検測車10がレール上を直線的に走行している通常の走行状態の画像の説明図、図6(b),(c)は、検測車10がカーブしたレール上を走行している画像の説明図である。
カーブでは遠心力により検測車10の車体が振られるとともに内側と外側のレールの高さが異なることで内側に傾き外側のレールで車体が高くなり、内側にレールで車体が低くなる。そこで、撮影した静止画は、検測車10がレール上を直線的に走行している通常の走行状態の静止画は、図6(a)に示すように継目板1の映像がY軸方向において視野のほぼ中央に位置している。X軸は検測車10の走行方向である。
一方、検測車10がカーブしたレール上を走行しているときには、継目板1の映像は、Y軸方向において内側レール側は、車体が低くなるので図6(b)に示すように上にシフトした映像となり、外側レール側は、車体が高くなるので図6(c)に示すように下にシフトした映像となる。
【0012】
検測車10がカーブを走行するときにも継目板1の映像を確保できるように、検測車10がレールのカーブを走行するときの検測車10の車体の上下変動による継目板1の映像の移動範囲をカバーする視野が図6(a)〜(c)に示すように継目板撮像カメラ71に設定されている。
すなわち、先の特許文献3に対してX軸とY軸にそれぞれ2倍の距離を採り、全体で4倍の視野を持つようなレンズがカメラに組み込まれている。その結果、図6(a)〜(c)の映像を得ることができる。軌道検測車10がカーブを走行しているときでも継目板1の映像は、特別な例外を除いて通常のカーブ走行ではこの視野の中に継目板1の画像が必ず入る。
図7(a)に示す、その二値化画像14aにおいて、継目板1のフランジ3aの影の画像部分が15であり、継目板1のボルト差込み穴の画像部分が16である。レール3,4の頭部3bと継目板1の側面は、反射光が強いので、白レベル(データ“1”)となり、それ以外は黒レベル(データ“0”)となる二値化画像14aとなる。17aは、明るい上側背景であり、17bは、暗い下側側背景である。
18は、継目板1のフランジ3aの影の画像部分15に現れるノイズとしての反射光のノイズ画像部分である。
この二値化画像14aにおいて、ボルト差込み穴の画像部分16は、所定の画素数の黒レベルの画素の集合となって現れてくるので、ここでは、これを画像処理により、フランジ3aの影の画像部分15を基準に検出する。
【0013】
ところで、静止画の画素数は、640×480であるが、特許文献1の4倍のエリアの静止画となっているので、その分、各種のノイズが画像に乗ってくる。そのため、採取した画像1画面分の全体からボルト抜けを検出すると画像処理のロードが大きくなる。高い精度でボルト差込み穴の画像部分16を検出しようとすると、そのノイズ除去処理に時間がかかる。その上に、ボルト差込み穴の画像部分16の判定処理にも時間がかかる。
そこで、通り検出器27の信号に応じて図6(a)〜(c)における点線枠19で示すようにX軸方向の中央を基準として640×240画素のエリア画像を切り出す。これにより、Y軸方向の画素数が1/2となり、実質的にY軸方向が2倍となった静止画に対して特許文献1のものと同様な画像処理エリアとなる。X軸方向が特許文献1のものに対して2倍となっていてもボルト差込み穴を検索していく処理となるので処理ロードの増加は少なく、かつ、X軸方向の長さが2倍に拡大したことでボルト差込み穴の検出精度が大きくなる。
このとき切出される静止画像のエリアを二値化画像として示すのが図7(a)である。
なお、後述するが通り検出器27の信号レベルが“0”のときには、Y軸の中央値としてY=180画素の位置を基準として640×240画素のエリア画像が切出される。これは、基準位置を継目板1の画像の中央より35画素程度下にシフトした状態である。これにより基準となり切出し画像は、レールの頭部で切り取られた画像を得ることができる。
図7(a)は、切出し静止画像を二値化してものであり、この図において、画像処理でフランジ3aの影の画像部分15の位置(特にこれの下側の位置)を検出して、さらに640×80画素のエリア(図8の点線枠19a参照)を画像処理の対象としてこれからボルトの穴分に相当する範囲でボルト差込み穴の画像部分16があるか否かを判定する。これによりボルト抜け穴検出を高速に行うことができる。その処理については後述する。
【0014】
図3は、レール継目検出器の検出回路と通り検出器、そしてデータ処理装置の説明図であって、図2に示すレール継目検出器の検出回路20は、逆方向に巻かれた空芯コイル11a、11bからの信号をそれぞれ受ける差動増幅器21a,21bと、空芯コイル11a、11bにバイアス電流を流すバイアス回路22、差動増幅器21a,21bの信号を所定の距離パルスPLに応じてA/D変換回路(A/D)23a,23bとからなり、A/D23a,23bを介して検出信号をデジタル値に変換してデータ処理装置8に送出するものである。
なお、バイアス回路22は、抵抗R1〜R4と定電圧電源回路22aとからなり、空芯コイル11a、11bにそれぞれバイアス電流を流す回路である。
レールの継目1aの部分では、継目板1とレールとレールの間隙とに応じて空芯コイル11a、11bのインダクタンスが変化し、それに応じた電圧が空芯コイル11a、11bの端子に発生するので差動増幅器21a,21bにそれに応じた検出信号を得ることができる。
距離パルスPLは、車輪10bの回転に応じて発生するパルスであって、距離パルス発生回路24により生成され、45mm走行に1個発生する45mm/Pの波長(周期)のパルス信号である。
通り検出器27は、図5に示すように、検出レバー27aの回動量に応じた電圧を発生する角度センサであって、検出レバー27aの回動中心がセンサ本体に回動可能に軸支され、台車フレーム10aの走行台車10cに検出レバー27aの一端が枢支されている。そこで、検測車10がカーブに入ると走行台車10cに対して検測車10の車体が外側に振られるので、これらの間にずれを生じる。そのずれに応じた信号が通り検出器27から得られる。通り検出器27の検出信号は、D/A25cを介してデータ処理装置8に入力される。
なお、通り検出器27は、前後の走行台車10cにそれぞれ2個づつ設けられている。検測車10の通りの検出は、合計4個の通り検出器27のうち非対称に配置された3個の通り検出器の信号を得て演算処理により算出される。ここでは、その通り検出器のうちの1個を走行方向の検出器として利用して直進状態か、車体が傾くカーブに入ったかについての信号をそのレベル値で得る。それに応じて検測車10の車体の傾斜状態を検出できるからである。
【0015】
データ処理装置8は、MPU81とメモリ82、インタフェース83、画像メモリ84、そしてこれらを接続するバス85等とを有し、距離パルスPLと、これに対応してA/D変換された差動増幅器21a,21bの信号をインタフェース83を介して測定データとして受けてこれらの差演算等をする。
なお、検出回路20と距離パルス発生回路24、そしてデータ処理装置8とは検測車10に搭載されている。
また、レール1本に2台ずつ設けられた継目板撮像カメラ71は、それぞれA/D25a,25bを介してデータ処理装置8に接続される。データ処理装置8からインタフェース83を介して4台の継目板撮像カメラ71のシャッタが操作され、各継目板撮像カメラ71の静止画が8ビット256階調の静止画としてA/D変換されて4枚のそれぞれが画像メモリ84の所定の領域にそれぞれに転送されて記憶される。
なお、各レールに対応する2枚のそれぞれの画像は、ボルト差込み穴以上の幅をもってX方向(幅方向)に重複する形で各1枚の画像が撮像される。
さらに、4台の継目板撮像カメラ71のシャッタが操作に対応するタイミングで通り検出器27の信号が取得される。
【0016】
図4(a)は、差動増幅器21a,21bのデジタル値をそれぞれグラフ化したデータ処理装置8における測定データであり、BLaが差動増幅器21aの測定データ、BLbが差動増幅器21bの測定データである。長丸で示す部分がレール継目位置(継目1aの位置)の検出信号であり、その前後で波形に凹凸の波があるのは、継目板1によるものである。なお、横軸は、距離パルスPLによるサンプル数、縦軸は電圧[V]である。横軸の距離パルスPLによるサンプル数は、検測車10の走行距離に対応している。
そして、データ処理装置8において、これら測定データの差BLa−BLbの演算した結果が図4(b)のグラフBLa−BLbである。これにより、レール継目位置の検出信号DLは、大きな波形の検出信号として得ることができる。これに所定のサンプル区間を設定して所定のサンプル数について1サンプルデータ毎に追加し、先頭の1サンプルデータを消去した移動平均(BLa−BLb)mを採ると、パルス状の検出信号をレール継目位置検出信号として得ることができる。そのために、レール継目検出ための測定データBLa,BLbの差算出プログラム、移動平均値算出プログラム、閾値設定・レール継目位置検出プログラム等がメモリ82に記憶されている。
実際のレール継目位置検出信号は、このレール継目位置検出信号にスライスレベル(閾値)を設定して得ることになる。
【0017】
データ処理装置8は、レール継目検出器6の測定データからレール継目位置信号が検出されたときに、メモリ82に設定されたソフトカウンタ領域において、距離パルス発生回路24から受ける距離パルスPLのカウントを開始して所定距離D(図1(a)参照)走行分に相当するカウント値になったとき、すなわち、継目1a(図1(a)参照)を検出してから検測車10が所定距離Dだけ走行したときにインタフェース83を介して各継目板撮像カメラ71のシャッタを切る制御信号を発生して、各継目板撮像カメラ71により得られた1フレームの画像を採取して画像メモリ84に各継目板撮像カメラ71に対応して4枚の静止画として記憶する。同時にこのときの通り検出器27の信号レベルをメモリに記憶する。
各レール対応の1フレームの静止画2枚、合計4枚をそれぞれにY=180画素の位置を基準として通り検出器27の信号に応じて640×240画素のエリア画像を切出し、その後に切出したエリア画像を所定の閾値で二値化してメモリ82の作業領域82hに取り込み、作業領域82hに記憶された1フレームの各レールに対応する継目板1の撮像画像(原静止画像)からフランジ3aの影という図7(a)の画像部分15を得て、それから基準線を決定して、二値化画像から基準線の位置を基準にして図7(a)のボルト差込み穴の画像部分16が存在すべき範囲にそれがあるか否かを判定する。
【0018】
前記処理を行うために、メモリ82には、継目板画像採取プログラム82aと、エリア切出し・二値化処理プログラム82bと、影画像上の基準線検出プログラム82c、継目板ボルト穴画像正規化・エリア切出しプログラム82d、黒画素カウント処理プログラム82e、継目板ボルト穴候補検出プログラム82f、継目板ボルト穴判定プログラム82g等が格納され、作業領域82hが設けられている。
MPU81は、レール継目検出器6の測定データからレール継目位置信号を検出したときに、継目板画像採取プログラム82aをコールして実行する。これがMPU81に実行されたときには、距離パルスPLのカウントを開始して、そのカウント値がレール継目検出器6と継目板画像撮像装置7との間の距離Dに相当するものとなったときに、4台の継目板撮像カメラ71のシャッタを切って、A/D25a、25bを介して8ビット256階調の1フレームの静止画像を4枚、各レールに対応して2枚ずつ画像メモリ84にデジタル値として採取する。そして、このときの通り検出器27の信号レベルをメモリに記憶し、エリア切出し・二値化処理プログラム82bをコールする。
【0019】
図5に示すように、通り検出器27は、検測車10の車体に対して走行台車10cの左右に移動に応じて、例えば、走行台車10cに対して車体が左外側に移動したときには正の電圧[mV]の検出信号を移動量に応じて発生し、走行台車10cに対して車体が右外側に移動したときには負の電圧[mV]の検出信号を移動量に応じて発生し、直進走行のときには実質的に0[mV]の電圧を発生する。
車体は、左外側に移動したときには左側が高く、右側が低い傾きとなる。逆に右外側に車体が移動したときには右側が高く、左側が低い傾きとなる。
その結果、検測車10が直進状態かカーブに入ったことにより、継目板1の映像が上下にシフトする図6(a)〜(c)のような画像が採取される。
エリア切出し・二値化処理プログラム82bは、これがMPU81により実行されたときには、まず通り検出器27からの前記の信号レベルを取得し、その信号レベルに応じてY軸方向の切出し基準画素座標(中心画素座標)Yoを算出して640×480画素(VGA)の静止画像から半分の640×240画素のエリア画像を切出してそれを二値化する。
Yo=K・V+180
ただし、Vは、通り検出器27の検出電圧[mV]であり、係数Kは、電圧を数値に変換するデメンションを持ち、通りの左右の変位を上下方向の画素数変位に変換するものであって、例えば、K=0.3/mVである。
【0020】
画像メモリ84に記憶されたエリア切出しされたそれぞれの640×240のエリア画像について所定の閾値で二値化して、図7(a)に示す上側背景あるいは下側背景を一部に含む二値化画像を4枚、メモリ82の作業領域82hに記憶する。
この場合の二値化処理の閾値は、レール3,4と垂直方向をY方向としてレール3,4と平行なX方向を水平ラインとして、採取した各静止画像から切出された640×240画素のエリア画像に対して水平方向1ライン分640個の画素の明るさを積算し、この積算した明るさをその水平方向1ラインに対応するY方向の各1画素(Y座標値)に対応して算出して作業領域82hにそれをデータとして記憶し、次に、Y方向において積算値の極小値のうち最初に現れる最小明るさレベルの極小値を求めてそれを640で割って1水平ラインの1画素分の平均的な最小極小値として極小値LPを算出する。そして、これより少し上の明るいレベル最小極小値LP+αを閾値としてこれを基準に二値化し、二値化した画像データを生成する。
これにより、640×240のエリア画像を二値化した図7(a)に示すような二値化画像14aが得られる。
すなわち、水平方向1ライン分640個の画素の明るさを積算した場合、最初の最小極小値LPは、図7(a)のフランジ3aの影の画像部分15において水平1ラインの最も黒レベルが多い領域の水平1ライン、図7(a)では、15aとして示す位置の水平1ラインに当たる。そこで、これに対して最小極小値LP+αを閾値とすれば、図7(a)のフランジ3aの影の画像部分15の領域を黒レベルに落とすことができ、それ以外を白レベルにする図7(a)の二値化画像14aを得ることができる。ただし、このとき、下側背景17bも黒レベルとなる。
これを画像メモリ82の4枚の静止画についてそれぞれ行い、二値化画像14aを4枚、作業領域82hの所定の領域にそれぞれ記憶する。
なお、+αは、影の画像部分15(フランジ3aの影の画像)を黒レベルに落とす値として選択される。
【0021】
基準線検出プログラム82cは、これがMPU81により実行されたときには、図7(a)に示すエリア画像についての二値化画像を作業領域82hから読出して、黒を“0”、白を“255”とした白レベルに重み付けをした重み付け処理をして、Y方向の各1画素(各Y座標)について640個(1水平ライン分)の画素の明るさを640個(1水平ライン分)分積算した明るさを算出して、さらに、640で割って、各1水平ラインの1画素当たりの明るさの平均値のデータを算出し、これをY方向の各画素対応の白レベルを重み付けした基準線検出のための重み付けデータ(基準線検出データ)として作業領域82hに記憶する。この基準線検出データをグラフとして示したのが、図7(b)である。
すなわち、図7(b)は、図7(a)の二値化画像のY座標に対する明るさ特性の説明図であって、この図7(b)において、最初の最小極小値となる明るさAの位置が前記の極小値Lminの画素位置に対応している。
図7(a)に示すように、フランジ3aの影の画像部分(基準線帯)15は、大枠としてみると白のレベルの帯と白のレベルの帯との間に黒レベルを主体とする帯となって現れている。そこで、図7(b)のような明るさ特性のグラフとなる。なお、極小値Lminの画素位置が黒レベル“0”とならないのは、ノイズとしての反射領域18が存在しているからである。
この基準線検出データにおいて、最大の明るさ255と最小の明るさ最小値Aの1/3のところのレベルを二値化画像14aの明るさのスライスレベル(閾値)THaとして次の式により算出する。
THa=(255−A)/3+A
これが、図7(a)におけるノイズ画像部分18を削除したときのフランジ3aの影の画像部分(基準線帯)15に対応する画素位置になる。この処理によりノイズが除去され、フランジ3aの影の画像部分15の画素幅Rと画像部分(基準線帯)15の上側の線を基準線15aとしてこの基準線のY座標の画素位置Sとが決定される。これら画素位置Sの座標と画素幅Rとを作用領域82hに記憶して継目板ボルト穴画像正規化・エリア切出しプログラム82dをコールする。
【0022】
継目板ボルト穴画像正規化・エリア切出しプログラム82dは、これがMPU81により実行されたときには、基準画素幅Gを基準帯幅15の画素幅Rで割って、画像の大きさを正規に戻す倍率nを算出して、二値化画像14aをn倍にして規格化した二値化画像から点線枠19(図6(a)〜(c),図7(a)参照)の範囲で、Y座標のY=(S+10)画素からY=(S+90)画素までの640×80画素のエリアを画像処理の対象として切出して二値化画像14aの正規化画像を二値化画像14b(図8(a)参照)として作業領域82hに記憶する。そして黒画素カウント処理プログラム82eをコールする。
黒画素カウント処理プログラム82eは、これがMPU81により実行されたときには、作業領域82hから正規化された二値化画像14b(図8(a)参照)を読出して、初期値としてi=0,j=0とし、Y座標の画素位置Sを基準として座標(i,S+j)において座標(0,S)からjを+1づつ更新してj=Mまで、各座標における黒画素の数をカウントしてこのカウント値Ciをメモリ82の作用領域82hに座標(0,S)とともにこれと対応して記憶する。次にiを+1インクリメントして同様に算出したカウント値Ciを座標(i,S)とともに記憶し、j=Nまで黒画素の数のカウントを繰り返す。
これは、図7(a)の二値化画像14aを規格化した二値化画像14bにおいて下側方向に黒画素の数をY座標Sの基準線上(上側基準線15a)の各X座標に対応してカウントすることに当たる。そして、X座標値iがi>Nになったときにカウント処理を終了する。
ただし、Mは、図8(a)の切出枠19aのY=(S+90)の画素ラインである。また、Nは、差込み穴の検出範囲を超える値あるいはX方向の総画素数640である。
【0023】
継目板ボルト穴候補検出プログラム82fは、これがMPU81により実行されたときには、作用領域82hから規格化された正規化され切出された点線枠19のエリア画像を読出して、この切出し画素においてボルト差込み穴の画像部分16があるか否かを判定することでボルト抜け穴検出を高速に行う。
640×80画素のエリア(切出枠19a)の二値化画像においてX座標の方向において連続して複数個の座標(i,S+j)があってかつそれらのカウント値Ci(黒画素の数)が差込み穴に相当する画素数の範囲にあるか否を判定して穴判定候補か否かを検出する。
すなわち、図8(a)に示すように、iをX方向の+1づつ更新してカウント値Ciの値Pがn<P<n+pときでこれが例えば5画素以上X方向に連続しているときに穴判定候補と判定する。検出された穴候補の座標(i,S+j)の座標値は、それぞれ作用領域82hに穴候補座標として記憶されていく。
なお、n,pは、それぞれ採取した二値化画像により統計的な処理で決定される。穴候補であるので、これらn,pは、穴であるらしいという確からしさとして選択される数値であればよい。
【0024】
継目板ボルト穴判定プログラム82gは、穴候補として記憶されたX方向で連続した複数個の座標(i,S+j)において、図8(b)に示すように、穴候補として記憶された座標(i,S+j)のX座標の原点側(図面左側)の境界点からX座標において前後に±20画素(総計40画素)の座標データ(i,S+j)を選択して下側基準線15を基準として輪郭線16aを抽出し、基準線15cから下の画像について画素中心Oを算出して、その中心Oを通る黒画素の幅Wと中心Oから外側までの黒画素幅Hとを算出して、これが所定の範囲Wa<=W<=Wb,Ha<=H<=Hbに入っているか否かを判定する。
なお、Wa,Wb,Ha,Hbは、実際の各測定結果の回帰値として決定された画素数であり、例えば、Wa=10,Wb=15,Ha=4,Hb=8である。
【0025】
図9は、前記の各処理プログラムをMPU81が実行して行うボルト抜け穴検出の画像処理の全体的なフローチャートである。
ここでは、レール継目検出処理とボルト抜け穴検出処理とがタスク処理としてそれぞれパラレルに実行される。さらに、ボルト抜け穴検出処理は、各レールについて同時にタスク処理でパラレルに2枚の二値化静止画像を処理してそれぞれに検出処理がなされる。 まず、図1(b)の図面左側のレール継目検出処理から説明する。
レール継目検出処理は、レール継目検出器6からの検出信号を読込んで(ステップ101)、測定データBLa,BLbの差算出処理をし(ステップ102)、そして移動平均値(BLa−BLb)mの移動平均算出処理をし(ステップ103)、閾値設定・レール継目位置コールして閾値THを設定して、(BLa−BLb)m>THかにより、レール継目があるか否かを判定をする(ステップ104)。なお、(BLa−BLb)mは、移動平均値である。
ステップ104の判定結果がYESのときには、前記の検出信号DLの検出位置は、距離パルスPLによるサンプル数に応じて算出された検測車10の走行距離に対応して継目位置の測定データとして外部記憶装置(図示せず)等に記憶される(ステップ105)。そして、ボルト抜け穴検出処理プログラムをコールしてボルト抜け穴検出処理を起動する(ステップ106)。次に処理が終了か否かの判定に入り(ステップ107)、NOのときにはステップ101へ戻り、処理終了にならない限り、ステップ101〜ステップ107までの処理を循環して実行する。
なお、以上のうち、ステップ105の処理とステップ106の処理は、逆になり、ステップ106がステップ105より手前にあってもよい。
【0026】
そして、ステップ104でレール継目1aが検出されると、ステップ106において、ボルト抜け穴検出処理プログラムがコールされて、図面右側のボルト抜け穴検出処理に入る。
ボルト抜け穴検出処理では、カウンタをセットして距離パルスPLのカウントを開始し(ステップ201)、距離パルスPLのカウント値が所定値Kになったか否か判定して(ステップ202)、NOのときにはステップ201へと戻り、次の距離パルスPLを待って距離パルスPLをカウントする。このループで検測車10が図1に示すレール継目検出器6と継目板画像撮像装置7との距離Dだけ走行したかを所定値Kにより判定する。
距離パルスPLの数が所定値Kになったときには判定ステップ202で、YESとなり、検測車10が距離Dだけ走行したことが検出されて、継目板画像採取プログラム82aをMPU81がコールして実行する。そこで、4台の継目板撮像カメラ71のシャッタを切って継目の4枚の画像を画像メモリ84に記憶して、4枚の4画面の画像を採取し(ステップ203)、次に通り検出器27のレベル値の取得してメモリに記憶する(ステップ203a)。そして、MPU81がエリア切出し・二値化処理プログラム82bをコールして実行して、通り検出器27の値に応じた静止画の640×240画素のエリア切出し処理をする(ステップ203b)。
【0027】
この切出し処理は、通り検出器27の信号の電圧値が0[mV]のときには左右の各2枚の静止画については、それぞれに図6(a)に示すようにYo=180画素を基準として640×240画素分の静止画の切出しを行う。
これに対して通り検出器27の信号の電圧値が+側のレベルのときには、そのレベルに応じて左側レールについての各2枚については、図6(b)に示すように静止画のうち上側にシフトしたエリアから640×240画素の静止画の切出しを行い、右側レールについての各2枚については、図6(c)に示すように静止画のうち下側にシフトしたエリアから640×240画素の静止画の切出しを行う。
逆に、通り検出器27の信号の電圧値が−側のレベルのときには、そのレベルに応じて左側レールの各2枚については、図6(c)に示すように静止画のうち下側にシフトしたエリアから640×240画素の切出しを行い、右側レールの各2枚については、図6(b)に示すように静止画のうち上側にシフトしたエリアから640×240画素の切出しを行う。
640×240画素の切出した静止画に対して最小極小値LP+αを閾値に二値化処理をして、図7(a)に示す二値化画像14aを4枚、作業領域82hにそれぞれ記憶する(ステップ204)。なお、このステップ204からは、前記したように各レール対応に2枚の静止画に対してパラレルの検出処理が行われる。以下、そのうち1枚の静止画についての処理を説明する。他のものも同時に同様な処理が行われている。
【0028】
次に、MPU81が基準線検出プログラム82cをコールして実行して、明るさに重み付けをしたY方向各画素対応の基準線検出データを生成して(ステップ205)、最大の明るさ255と最小の明るさ最小値Aの1/3のところのレベルを二値化画像14aの明るさのスライスレベル(閾値)THaとしてフランジ3aの影の画像部分(基準線帯)15の下側の基準線の画素位置を画素位置Sとして検出する(ステップ206)。
そして、次にMPU81が継目板ボルト穴画像正規化・エリア切出しプログラム82dを実行して画素幅Rに従って倍率を算出して二値化画像14aを正規化し(ステップ207)、次に図8(a)の点線枠19aの処理エリアを切出して正規化した二値化画像14bを得て(ステップ207a)、黒画素カウント処理プログラム82eを実行して、切出された二値化画像14bにおいてX座標をインクリメントしながら黒画素カウント処理をし、次に継目板ボルト穴候補検出プログラム82fを実行して穴候補の検出をする(ステップ208)。
次にMPU81が継目ボルト穴判定プログラム82gを実行して穴候補に対してX座標の原点側(図面左側)の境界からX座標にして40画素分の映像を選択して輪郭線を抽出する(ステップ209)。そして、輪郭線に基づいて穴候補の画素中心Oを算出して、その中心Oを通る黒画素の幅Wとその側までの黒画素幅Hとを算出して(ステップ210)、これが所定の範囲Wa<=W<=Wb,Ha<=H<=Hbに入っているか否かを判定する(ステップ211)。これにより穴候補がボルト差込み穴か否かを判定して所定の範囲のときには穴候補がボルト差込み穴となる。
この判定でNOのときには画素位置SをS=S+pにより前記の検出された穴候補の座標p分にX座標を更新して(ステップ213)、S>=Nかを判定して継目板1のX座標の検査範囲の最大画素位置NあるいはN=640を超えたか否かを判定し(ステップ215)、NOのときにはステップ208に戻る。
【0029】
ステップ211の判定でYESとなったときには、ボルト差込み穴検出として、ステップ105で記憶された検出信号DLの検出位置の測定データにボルト差込み穴検出のフラグとして加えられて、現在の走行位置とともに外部記憶装置等に記録して(ステップ212)、次の検索開始の座標位置としてステップ213に移り、X座標の位置を更新して前記ステップ214の判定に入る。
ステップ214の判定でYESのときには、ボルト抜け穴検出処理は終了するが、レール継目検出処理が終了しない限り、ステップ104でレール継目が検出されるとボルト抜け穴検出処理が再び開始される。
このようにして、継目板1のボルト抜け穴検出が行われ、外部記憶装置にそのデータが記憶される。なお、継目板1は、検測開始地点から番号付けされて管理されてもよい。
ところで、この実施例では、上側の線を基準線としてそのY座標の画素位置Sとしているが、画素位置Sを画像部分(基準線帯)15の下側としてここを基準線としてもよいことはもちろんである。この場合のステップ207aにおける、規格化した二値化画像から点線枠19(図8参照)の範囲の切出しは、Y座標のY=S画素からY=(S+80)画素までの640×80画素のエリアを画像処理の対象として切出すことになる。
【0030】
ところで、実施例では、図7(b)に示すY座標に従う基準線検出データにおいてその中に黒レベルの塊領域(画像部分16に対応)があるか否かを判定してボルト抜け穴の検出を行っているが、さらに黒レベルの塊領域について、画像メモリ84の原静止画あるいは作用領域82eに記憶された二値化静止画像から黒レベルの塊領域19に対応するXY座標から得られる、この領域の画素数(面積)を求めて、その画素数(面積)がボルト抜け穴に対応するものか否かでボルト抜け穴の有無の判定をしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明してきたが、実施例では、車体(検測車両)の走行方向に応じてレール継目の静止画の画像の切出し位置を所定の式に従ってリニアに上下変動しているが、なお、小さいカーブでは、検測車が直進状態の画像(図6(a)参照)からエリア切り出ししても継目板の二値化画像が得られボルト抜けは検出できるので、例えば、上側、真中、下側の3段階に切出し位置を選択するようにしてもよい。この場合には、通り検出器の信号を上側、真中、下側のいずれかの切出し範囲にあるか否かの範囲判定をするとよい。
また、実施例では、通り検出器を用いて車体(検測車両)の走行方向を検出するあるいは車体の傾きを検出しているが、例えば、車両の高さの変位を検出する変位検出器等のレールに対して車体の高さの変化を検出する検出器から検出信号を得て、これによりレールに対する車体の高さに応じてエリア画像を切出すようにしてもよい。
さらに、実施例では、1レールについてカメラ2台を用いているが、1台のカメラの視野が大きいので1台であってもよい。
なお、継目板が長い場合には、3台のカメラを設けてもよい。また、複数台のカメラで採取した画像は、レール対応に各一枚の静止画に合成されて、これに対してボルト抜け穴の検出処理が行われてもよい。
また、実施例では、レール継目検出器として隣接して配置され相互に逆方向に巻かれた第1、第2の空芯コイルを利用した電磁センサを用いているが、レール継目検出器は、非接触型であれば、レーザ式変位センサや他の光学的なセンサを用いることができることはもちろんである。なお、実施例における電磁センサの空芯コイルの形状は一例であって、円形の空芯コイルであってもよいことはもちろんである。また、必ずしも、プログラム処理によりレール継目(継目1a)を検出する必要はない。
またさらに、実施例では、継目板のフランジの影とボルト抜け穴とが重なる例を示しているが、これらは、必ずしも重なる状態になくてもよい。ボルト抜け穴の画像部分の検索基準線を得るものとして継目板のフランジの影があればよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1(a)は、この発明のレール継目板の締結ボルト脱落検出装置を適用した一実施例の検測車のレール継目板の締結ボルト脱落検出装置の説明図、図1(b)は、と継目板画像撮像装置の説明図である。
【図2】図2は、レール継目検出器の説明図である。
【図3】図3は、レール継目検出器の検出回路とデータ処理装置の説明図である。
【図4】図4は、レール継目検出器の検出波形の説明図である。
【図5】図5は、通り検出器の説明図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、撮像された静止画を二値化した画像の一例を模式的に示した説明図であって、図6(a)は、検測車10が直線的にレール上を走行している通常の走行状態の画像の説明図、図6(b),(c)は、検測車10がカーブしたレール上を走行している画像の説明図である。
【図7】図7(a)は、エリア切出しされた二値化画像の説明図、図7(b)は、図7(a)のエリア切出しされた二値化画像のY座標に対する明るさ特性の説明図である。
【図8】図8は、ボルト抜けを検出する処理画像の説明図である。
【図9】図9は、ボルト抜け穴検出の画像処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1…レール継目板、1a…継目、2…ボルト、
2a…ボルトの頭部、2b…ナット、
3,4…レール、3a…フランジ、3b…レールの頭部、
3c…ボルト差込み穴、
5…レール継目板の締結ボルト脱落検出装置、
6…レール継目検出器、7…継目板画像撮像装置、
8…データ処理装置、10…検測車、10a…台車フレーム、
10b…車輪、10c…走行台車、
11…電磁センサ、
11a,11b…空芯コイル、
12…ケース、13…ブラケット、
20…検出回路、21a,21b…差動増幅器、
22a…定電圧電源回路、
23a,23b,25a,25b…A/D変換回路(D/A)、
24…距離パルス発生回路、27…通り検出器、
71…継目板撮像カメラ、72…照明光学系、
81…MPU、82…メモリ、
82a…継目板画像採取プログラム、
82b…エリア切出し・二値化処理プログラム、
82c…影画像上の基準線検出プログラム、
82d…継目板ボルト穴画像正規化・エリア切出しプログラム、
82e…黒画素カウント処理プログラム、
82f…継目板ボルト穴候補検出プログラム、
82g…継目板ボルト穴判定プログラム、
82h…作業領域82、
83…インタフェース、84…画像メモリ、85…バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールとレールとを連結するレール継目板の締結ボルト抜けを軌道検測車において検出するレール継目板の締結ボルト脱落検出方法において、
前記レール継目板のフランジの影が前記レール継目板に落ちる角度で前記軌道検測車側から前記レール継目板に光を照射し、前記軌道検測車がレールのカーブを走行するときの前記軌道検測車の車体の上下変動による前記レール継目板の映像の移動範囲をカバーする視野を有するカメラで前記レール継目板の静止画を前記軌道検測車から撮像し、前記軌道検測車の走行方向を検出するあるいは前記車体の傾きを検出する検出器からの信号に応じて前記静止画から前記レール継目板を含むエリア画像を切出し、このエリア画像における前記レール継目板のフランジの影の画像を基準として前記締結ボルトの差込み穴に相当する画像が前記エリア画像にあるか否かを検出するレール継目板の締結ボルト脱落検出方法。
【請求項2】
前記カメラによるレール継目板の静止画の撮像は、前記レールに対応して前記軌道検測車に設けられた非接触型の継目検出器により前記レール継目の検出に応じて行われ、前記締結ボルトの差込み穴に相当する画像が前記エリア画像にあるか否かの検出は、前記エリア画像を二値化した画像において前記フランジの影の画像を基準とした所定の範囲で行われる請求項1記載のレール継目板の締結ボルト脱落検出方法。
【請求項3】
前記照明光学系は、前記軌道検測車に搭載され、前記レールに対して50°〜70°のうちの選択された角度で前記レールの内側から前記フランジの影を作る光りを前記継目板に照射するものであり、前記所定の範囲は、前記フランジの影の画像の上側あるいは下側の画像ラインを基準とした範囲である請求項2記載のレール継目板の締結ボルト脱落検出方法。
【請求項4】
前記車体の傾きを検出する検出器は、前記レールに対して車体の高さの変化に応じた検出信号を発生する検出器である請求項1記載のレール継目板の締結ボルト脱落検出方法。
【請求項5】
レールとレールとを連結するレール継目板の締結ボルト抜けを検出する軌道検測車におけるレール継目板の締結ボルト脱落検出装置において、
前記軌道検測車の走行方向を検出するあるいは車体の傾きを検出する第1の検出器と、
前記軌道検測車に設けられ前記レール継目板のフランジの影が前記レール継目板に落ちる角度で前記レール継目板を照射する照射光学系と、
前記軌道検測車において前記継目検出器に対して前記軌道検測車の走行方向に対して後方に設けられ前記レール継目板の静止画を撮像しかつ前記軌道検測車がレールのカーブを走行するときの前記軌道検測車の車体の上下変動による前記レール継目板の映像の移動範囲をカバーする視野を有するカメラと、
前記第1の検出器からの信号に応じて前記静止画から前記レール継目板を含むエリア画像を切出し、このエリア画像における前記レール継目板のフランジの影の画像を基準として前記締結ボルトの差込み穴に相当する画像が前記エリア画像にあるか否かを検出するデータ処理手段とを備えるレール継目板の締結ボルト脱落検出装置。
【請求項6】
さらに、前記レールに対応して前記軌道検測車に設けられ前記レール継目を検出する非接触型の第2の検出器と、この第2の検出器の検出信号に応じて前記カメラが前記レール継目に対応する位置に来たタイミングで前記カメラのシャッタを切って前記カメラから前記静止画を採取する制御手段とを有し、
前記データ処理手段は、前記締結ボルトの差込み穴に相当する画像が前記エリア画像にあるか否かの検出を、前記エリア画像を二値化した画像において前記フランジの影の画像を基準とした所定の範囲で行う請求項5記載のレール継目板の締結ボルト脱落検出装置。
【請求項7】
前記照明光学系は、前記軌道検測車に搭載され、前記レールに対して50°〜70°のうちの選択された角度で前記レールの内側から前記フランジの影を作る光りを前記継目板に照射するものであり、前記所定の範囲は、前記フランジの影の画像の上側あるいは下側の画像ラインを基準とした範囲である請求項6記載のレール継目板の締結ボルト脱落検出装置。
【請求項8】
前記車体の傾きを検出する検出器は、前記レールに対して車体の高さの変化に応じた検出信号を発生する検出器である請求項5記載のレール継目板の締結ボルト脱落検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−184763(P2008−184763A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17421(P2007−17421)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】