説明

レール部開閉式ダクトレス配線装置

【課題】従来のケーブルダクトを不要化し、かつ、迂回配線を極小としたレール部開閉式ダクトレス配線装置を提供する。
【解決手段】ケーブルを用いて配線するデバイス14をレール部11に取り付け、レール部をベース部15を介してレール取り付け部16に取り付け、レール部とレール取り付け部との間の空間を上記ケーブルの配線部17とし、レール部はヒンジ機構20を用いてベース部に結合し、上記ヒンジ機構にてレール部が回転し傾斜することによって、ケーブルの配線部を露出させる構成を有し、ヒンジ機構は、実質的にヒンジ回転の中心となるヒンジ軸と、ヒンジ軸を中心として回転可能に設けられたヒンジ枠とを具備し、ヒンジ軸とヒンジ枠とはその一方を他方に挿入して結合する構成を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを用いて配線するデバイスを取り付けるためのレール部と、レール部をレール取り付け部に取り付けるためのベース部とを有し、レール部とレール取り付け部との間の空間を上記ケーブルの配線部としたレール部開閉式ダクトレス配線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
制御盤や配電盤などには、各デバイスに接続された無数の配線類(以下、「ケーブル」という。)があり、例えば小型の工作機械でも、従来は制御盤の内部に100メートル以上のケーブルが使用されている。ケーブルの敷設には、ケーブルダクトと通称される部材を使用しているが、従来の制御盤に使用しているケーブルダクトは制御デバイスをダクトとは別に制御盤内に設置する、いわばダクト別置き型と称すべき構造である。この構造の場合、図11に示したように、デバイスdには入力側と出力側の端子tが通常上下に配置されているので、1個のデバイスdに対して上下2個の横方向のケーブルダクトh、hが必要になる。また、各横方向のケーブルダクトに敷設したケーブルを上下方向へ取り回すために、左右2個の縦ダクトv、vを必要とするのでこれに要するスペースの無駄も無視できない。その結果、制御盤内部の正面面積の30〜40パーセントを縦、横のケーブルダクトh、vが占有することになり、その上、ケーブルダクトの正面の前板fは単なる蓋であるため前板正面はデッドスペースとなる。
【0003】
この無駄を解消するために、ケーブルダクトhの前板fをデバイス取り付け箇所に利用するダクト組み込み型というべき改良型が考案され、上記ダクト別置き型におけるデッドスペースの有効利用が図られた(図12)。しかし、ケーブルダクトhの前板fに取り付けたデバイスdのケーブルをダクト上部の開口部からダクト内部に引き込むため、上段のダクトとの間に作業隙間sを設けることが不可欠であり、ダクト別置き型との比較において小型化ないし省スペースの観点から大差がないという指摘がある。さらに、致命的なことは、上下のケーブルダクトの間隔を相当空けないとケーブルダクトの内部を底部まで見ることができない点である。この点はダクト組み込み型に限ったことではないが、保守点検においてユーザーに負担を強いることになり、問題がある。
【0004】
先行技術として、例えば特公昭53−27480号を挙げることができるが、これは前述のダクト別置き型に属する例であり、また、実開昭62−161527号はダクト組み込み型に属する例であるといって良い。より最近のものでは特開2002−95131号があり、端子台の配置スペースを不要としたケーブルダクトを実現することを課題とし、ケーブルダクト本体にケーブルダクトカバーを引き出して作業を行い、作業終了後にはケーブルカバーをケーブルダクト本体に押し入れることによって元の状態に戻すことを可能にしている。しかしながら、ケーブルカバーをケーブル本体に対して引き出し或いは押し込み可能に設けるための具体的構成は示されていないが、引き出しと押し込みを可能にする機械的構造が必要である。また、ケーブルはケーブルカバー部分を通してのみ取り出せるに過ぎない。
【0005】
このため、本件出願人は、先に、制御盤内部のように限られた空間の内部を有効に利用することができ、或いは、使用するデバイスの種類及び大きさが同じである条件において制御盤などの大きさを小型化可能なティルト式ケーブルダクトを提案した。同発明によれば、これまでのケーブルダクトに関する常識を廃して、ケーブルを随所から引き出し可能となるので、前記ダクト組み込み型等のものと比較するとケーブルダクト内部へのアプローチは著しく容易化する。しかしながら同発明は依然としてダクト本体を具備しており、ダクト本体は上下左右が囲まれたダクト構造を有するため、ケーブルをデバイスからダクト内部へ通す手間が掛かり、特にコスト面においては余り差があらわれない。
【0006】
【特許文献1】特公昭53−27480号
【特許文献2】実開昭62−161527号
【特許文献3】特開2002−95131号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、従来のケーブルダクトを不要化し、かつ、迂回配線を極小としたレール部開閉式ダクトレス配線装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、レール部とヒンジ機構によって結合されたベース部とを分解可能とし、任意の位置で切断可能とすることによって、設置箇所の条件に応じて長さを容易に調整できるようにすることである。また、本発明の他の課題は、レール部の傾斜が可能であるとともに、ダクトレス構造としたことによって、内部へのアプローチが著しく容易化し、配線作業に必要なコストを極限的に低下させることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明は、ケーブルを用いて配線するデバイスを取り付けるためのレール部と、レール部をレール取り付け部に取り付けるためのベース部とを有し、レール部とレール取り付け部との間の空間を上記ケーブルの配線部とした配線装置であって、レール部をベース部にヒンジ機構を用いて結合し、上記ヒンジ機構にてレール部が回転し傾斜することによって、ケーブルの配線部を露出させることができる構成を有しており、ヒンジ機構として、実質的にヒンジ回転の中心となるヒンジ軸と、ヒンジ軸を中心として回転可能に設けられたヒンジ枠とを具備しており、ヒンジ軸とヒンジ枠とはその一方を他方に挿入して結合する構成を備えているという手段を講じたものである。
【0009】
本発明の装置において、レール部をベース部にヒンジ機構を用いて結合し、上記ヒンジ機構にてレール部が回転することによって、ケーブルの配線部を露出させることができるという構成は、本発明においても特徴的なティルト構造そのものであり、ティルト式ケーブルダクトの方式を踏襲するものであるが、本発明の場合には、これにダクトレス構造を組み合わせることよって、内部へのアプローチを極限的にまで容易なものとする。なお、ティルト(tilt)とは、例えばカメラ等を上下方向へ振って傾けることを言うが、それは実施形態の如くDINレールを左右方向の向きに配置していることに起因するものである。レールが上下方向へ伸びている場合には、レール部を左右方向へ振って傾ける必要を生じるが、本発明はそのような場合にも適用することができるので、このような傾ける動作一般を本発明ではレール部の傾斜と称している。
【0010】
ヒンジ軸とヒンジ枠とは、その一方を他方にヒンジ軸の軸方向端部から挿入して結合した構成を備えていることが望ましい。しかしながら、ヒンジ枠はヒンジ軸と平行な方向から挿入し結合する構成を取ることもできる。いずれの場合においても、ヒンジ軸とヒンジ枠とは分解可能な構成を取ることができるが、ヒンジ枠とヒンジ軸とが挿入、分解可能な構成であることによって、任意の位置で切断可能となり、作業性が向上する。従って、レール部とベース部とは切断可能な材料及び形態を有することも要請される。また、ヒンジ軸とヒンジ枠は強度、加工の容易性、軽量等の条件からアルミニウム合金等金属製材料を想定することになるが、金属部品同士を組み合わせる場合には摺動時の異音発生や切粉の混入、摩耗粉の発生の問題があり、特に切粉、摩耗粉は配線装置にとって好ましいものではない。そこで、本発明ではレール部とベース部が金属製である場合に、ヒンジ機構のヒンジ枠に接触するヒンジ軸の部分を合成樹脂製とし、異音の発生と切粉、摩耗粉の混入を防止するものとする。
【0011】
上記ベース部は、ほぼコの字型の平面形状を有しており、その前端部にヒンジ機構の一部が設けられ、また、後端部にてレール取り付け部に取り付けられており、後述の実施形態ではヒンジ機構の一部はヒンジ軸である。ベース部のコの字型部分はケーブル配線の縦方向の仕切りとするとともに、ベース部の上面がそこにケーブルを載せるケーブル載置部になっている。このような構成は、ベース部をケーブル配線の整理、整頓に利用することを可能にする好ましいものである。
【0012】
また、ヒンジ機構に関連して、ケーブルの配線作業においてケーブルの配線部を露出させる方向へレール部を回転させた作業位置にて停止させる第1停止手段と、作業終了後にレール部を上記と逆方向へ回転させて戻した正規位置にて停止させる第2停止手段とを設けている。停止手段はレール部を作業位置と正規位置に停止させる手段であり、このように構成すれば作業位置での配線作業が容易化し、また、レール部を正規位置にて的確に固定しておくことができる。
【0013】
ヒンジ機構において、ヒンジ軸は、ベース部の前部にて上方へ立ち上がる立ち上がり部の上端に設け、ヒンジ枠は、レール部の下部にて前方から斜め後上方へ所定の角度で設けられた、ほぼJ字型の横断面形状を有し、J字型の横断面形状における曲線部がヒンジ軸に上方から係合する軸受けとなり、J字型の横断面形状における直線部がヒンジ軸の立ち上がり部に接して作業位置に規定する第1停止手段を構成する。この構成はレール部を作業位置にて停止させる第1停止手段の例であり、このように構成すれば作業位置でのレール部の位置決めを的確に行うことができる。
【0014】
レール部を正規位置に戻した時にレール部を正規位置に規定する第2停止手段として、レール部の下部にて前方から斜め後上方へ所定の角度で設けたJ字型の直線部とヒンジ軸の立ち上がり部との間に介在して、レール部を正規位置に規定する仮止め機構と、ベース部前部の上部にてそこから前方へ突き出た突き出し部を設け、かつ、正規位置にてレール部に係止するようにレール取り付け部に設けた係止部材とを有する構成とすることができる。仮止め機構により配線作業の途中でもレール部を正規位置に規定することができ、係止部材によるレール部の正規位置への固定という構成を取ることによって、レール部の姿勢及び状態が最終的に正規位置にて安定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、従来のケーブルダクトを不要化し、かつ、迂回配線が極小となるレール部開閉式ダクトレス配線装置を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、レール部とヒンジ機構によって結合されたベース部とは分解可能な構成であり、任意の位置で切断可能であって、設置可能な長さやその他の設置箇所の条件に応じて容易に調整することができる。また、本発明によれば、レール部のティルトが可能であるとともに、ダクト構造を有していないことによって、内部へのアプローチが著しく容易化し、配線作業に必要なコストを極限的に低下させることができる。本発明の装置は、密閉したダクト構造を有していないため、キャビネット内部の密閉空間においても、熱気流が発生し自由な熱交換が行われ、発熱による故障リスクを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係るレール部開閉式ダクトレス配線装置10の一例を示す正面図であり、11は左右方向に伸びるレール部、12はDINレールを示している。DINレール12はレール部11の正面にて左右方向に伸びており、DINレール12にはケーブル13を用いて配線するデバイス14を取り付ける(図2参照)。13aはソケット等の接続部であり、ケーブル13をデバイス14に接続する手段である。上記レール部11は背後に位置するベース部15を用いてレール取り付け部16に取り付けられ、レール部11とレール取り付け部16との間の空間は上記ケーブル13の配線部17となる。図示の例における本装置10の適用対象は工作機械等の制御盤であり、上記取り付け部16は制御盤のキャビネット背面部の壁面である。
【0017】
本発明の装置10は、上記レール部11をベース部15にヒンジ機構20を用いて結合するとともに、ヒンジ機構20にてレール部11が回転し、ティルトすることによって、ケーブル13の配線部17を露出させるという構成を有している。ヒンジ機構20は、実質的にヒンジ機構20の回転の中心となるヒンジ軸18と、ヒンジ軸18を中心として回転可能に設けられたヒンジ枠19とを具備している(図4等参照)。ヒンジ軸18とヒンジ枠19とは、ヒンジ枠19をヒンジ軸18に軸方向端部から挿入して係合する構成を備えており、これによって分解、組み立てが容易に可能ないわゆるオープンヒンジになっている。なお、ヒンジ軸18に挿入したヒンジ枠19は、最終的な組立完了により左右方向へも固定されることになる。
【0018】
図示の例におけるヒンジ機構20はレール部11の下部に設けられている。即ち、ヒンジ軸18は、ベース部15の前部にて下方から上方へ立ち上がる部分である立ち上がり部18bの上端に設けられ、ヒンジ枠19は、レール部11の下部にて前方から斜め後上方へ所定の角度で設けられたほぼJ字型の横断面形状を有している。そのJ字型の横断面形状における曲線部19aは、ヒンジ軸18に上方から係合する軸受け即ちヒンジ枠19となり、J字型の横断面形状における直線部19bがヒンジ軸18の立ち上がり部18bに接触可能な角度にて傾斜して、作業位置に規定する第1停止手段21を構成している(図2参照)。図示の例において、レール部11及びベース部15は共にアルミニウム合金製とし、任意の長さでの切断を可能にしている。また、ほぼJ字型のヒンジ枠19を有するレール部11は押し出し金型を使用して製造した成型品であり、それによって高いねじれ剛性を得ている。他方ヒンジ軸18はエンジニアリングプラスチック(EP)によって形成され、立ち上がり部分18bの上端に接着によって取り付けることができる。
【0019】
上記レール部11を正規位置に戻したときにレール部11を正規位置に規定する第2停止手段22の一つとして、レール部11の下端にて前方から斜め後上方へ所定の角度で設けたJ字型の横断面形状における直線部19bとヒンジ軸18の立ち上がり部18bとの間に介在して、レール部11を正規位置に規定する仮止め機構23が設けられている。仮止め機構23は、ベース部15の前板15aに形成された、上下方向のスリット15bに係合可能な係合部24aを有するクサビ部材24と、クサビ部材24の下方前部から立ち上がるクサビ状部24bと、J字型の横断面形状における直線部19bとヒンジ軸18の立ち上がり部18bとの間に介在する位置にクサビ状部24bを規定するために、上記立ち上がり部18bの下部にて正面に突出し、クサビ状部24bの下部に設けられた係合部24cと係合する係合凸部25を備えている(図4参照)。クサビ状部24bの先端角度はJ字型の横断面形状における直線部19bの折り返し角度Sと等しく例えば45度に設定され、クサビ状部24bがJ字型の横断面形状における直線部19bとヒンジ軸18の立ち上がり部18bとの間に介在することで、レール部11を図示の如く垂直に立てた状態に保つ。
【0020】
さらに第2停止手段として、ベース部前部の上部にてそこから前方へ突き出た突き出し部26を設け、かつ、正規位置にてレール部11に係止するようにレール取り付け部16に取り付ける係止部材27を設けている(図3参照)。突き出し部26はレール部11の背面に当接してレール部11を垂直に立てた状態に保つ長さを有しており、係止部材27は先端部に下方へ曲折した係止部27aを有していて、ほぼ垂直に立てた状態にあるレール部11の前面に上記係止部27aを係止させた状態において、基部にてレール取り付け部16にネジ止めされるものである。従って、前述のクサビ状部24bを有する仮止め機構23が配線完了まで一時的に使われることがある第2停止手段22の役割を果たし、係止部材27を有する方は配線完了後に恒久的に使われる第2停止手段であるといえる。
【0021】
図6は、第1停止手段21の他の例を示す。前記の例が組み込み型であるのに対してこの例は着脱型というべきもので、24′は着脱可能なクサビ部材を示しており、クサビ部材24′はベース部15の前板15aに形成された、左右方向のスリット15cに係合する係合部24′aを有し、スリット15cに係合部24′aを係合させることによって、J字型の直線部19bとヒンジ軸18の立ち上がり部18bとの間に介在する位置にクサビ状部24bを規定する構成である。従って、図6の例におけるクサビ部材24′は、その着脱によってレール部11を図示の如く垂直に立てた状態に保つ。他の構成については前記の符号を援用し、詳細な説明は繰り返さない。
【0022】
図1において、28は櫛歯状のケーブル引き込み部を示しており、レール部11の上端に位置する空間であり、デバイス14に接続しているケーブル13を配線部17に引き込む部分である。このケーブル引き込み部28にはケーブル13を保持する手段を設けることができる。なお、各図を通じて、部材同士の結合はネジとして図示した緊締部材29によって行われる。
【0023】
上記ケーブル引き込み部28の背後に配線部17が位置することは既に説明したとおりであるが、図示の例において配線部17を構成するベース部15は、ほぼコの字型の平面形状を有しており、その前板15aにヒンジ機構20の一部が設けられ、また、後端部15dにてレール取り付け部16に取り付けられている。故に、コの字型の配線部17を横断する取り付けアーム部分15eはケーブル配線の縦方向の仕切りを構成するとともに、取り付けアーム部分15eの上面がそこにケーブル13を載せるケーブル載置部になっている。配線部17を横断する上記アーム部分15eで仕切られる3箇所の区画1、2、3はケーブル13を整理して通すために使われる(図7)。
【0024】
このように構成されている本発明の装置10を用いて機器を実装するには、図2に示すように、クサビ状部24bをJ字型の横断面形状における直線部19bとヒンジ軸18の立ち上がり部18bとの間から外し、ヒンジ機構20を中心としてレール部材11を回転させ、第1停止手段21の上記直線部19bと立ち上がり部分18bが接触して前傾した状態、即ちクサビ部材24を下げした向きにティルトさせて行う。レール部11がティルトしたこの状態では、上部が開いて配線部17が露出するのみならず配線部17を遮るような部材が一切存在していないので、デバイス14に接続しているケーブル13を配線部17に直接引き回すことができ、作業を著しく容易化することができる。配線作業においてケーブル13を横方向に走らせるときはベース部材15のアーム部分15eが桁となってケーブル13の荷重を支え、ケーブル13を縦方向に走らせるときは区画1、2、3・・・によってケーブル13を整理することができる。」
【0025】
特に本発明の装置10では、ヒンジ機構20がレール部11のヒンジ枠19とベース部15のヒンジ軸18から構成され、レール部11の全体はアルミニウム合金から成り、ベース部15はアルミニウム合金を主体としてその一部にEP製のヒンジ軸18を接着して構成を有している。従って、長尺の型材の形態で供給するとともにその材形のものを、適用するレール取り付け部16の形態に応じて、任意の長さに、特別の切断装置を必要とすることなく、作業の現場においても随時を行うことができる。また、ヒンジ機構20はEP製のヒンジ軸18とアルミニウム合金製のヒンジ枠19との摺動となるのでヒンジ動作は滑らかであり、摩擦による摩耗粉等の発生を心配する必要はない。
【0026】
本発明の装置を使用して行った実装作業の結果、例えば図9に示すように多数のデバイス14をDINレール12に取り付けた状態において、デバイス14を取り付けたレール部11とレール取り付け部16との間にはベース部15が存在する以外は何もなく、上下左右がほぼ開放した配線部17となっている。このため配線作業を極めて簡便に行われるようになり、例えばケーブル13の両端を装置外部で直接配線し、その配線済みケーブル13を左右のオープンスペースにぐるりと回して格納することが可能になる。
【0027】
また、図10に示すように、本発明の装置10は制御盤30のキャビネット内に適用されるようなケースが多いのであるけれども、本発明は小型化と冷却特性の向上に寄与するところが多い。即ち、図11のダクト別置き型ではデバイスdがダクトhで遮断されており、クーラーからの冷却気が到達し難いので熱の滞留が発生し、ダクト内部においては密集したケーブルの熱がダクト外部に放出されることはない、従ってより大きな冷却能力が要求される、一方、図12に示したダクト組み込み型の装置ではデバイスdがダクトhの前面に出ているので冷却されるがダクト内部においては密集したケーブルの熱がダクト外部に放出されないことは変わらない。
【0028】
これに対して本発明の装置10ではデバイス14はレール部11の正面に出ており、それとレール取り付け部16との間にはベース部15以外何も存在しておらず、しかもベース部15は金属板より成るアーム状のもので良く、配線部17のケーブル13は冷却気流にさらされた状態に置かれる。従って、小型化されたキャビネット内部において、デバイス14及びケーブル13共々十分に冷却され、ケーブル13の熱はダクトに遮られることなく上昇気流となり、いわば煙突効果を起してキャビネット内部を対流する結果、冷却効果の有効性が高まり、必要に応じてクーラー31を使用する場合でもその容量を抑制できることとなる。
【0029】
また、本発明に関する説明においては、DINレール12とこれを取り付けたレール部11が左右方向に伸びる形態を基本として記述して来た。これは、DINレールの一般的な使用方法にしたがったためであって、本発明の装置10をこれと異なるDINレール以外のレールや、或いは上下方向に伸びる形態で実施されるレール部11に適用できることは当然である。そしてレール部11の方向を変更した場合には、ヒンジ機構の軸方向を上記と平行の方向に変更して対応することができるが、そのためには、これまでに説明した装置を単に上下方向に向きを変えるだけも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るレール部開閉式ダクトレス配線装置の一例を示す正面説明図である。
【図2】同上の装置の作業位置の状態を示す側面図である。
【図3】同上の装置の正規位置の状態を示す側面図である。
【図4】同上要部を拡大して示す側面図である。
【図5】さらに要部を拡大した部分側面図である。
【図6】同じく本発明の装置の変形例を示すもので、Aは部分正面図、Bは部分断面図である。
【図7】同じく本発明の装置を示す背面側の斜視図である。
【図8】同じく背面側から見た区画の説明図である。
【図9】同じく本発明の装置を模式的に示すもので、Aは正面図、Bは側面図、Cは上面図である。
【図10】同じく本発明の装置の冷却効果を模式的に示す縦断側面図である。
【図11】従来のダクト別置き型で、Aは縦断側面図、Bは正面図である。
【図12】従来のダクト組み込み型で、Aは縦断側面図、Bは正面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 レール部開閉式ダクトレス配線装置
11 レール部
12 DINレール
13 ケーブル
14 デバイス
15 ベース部
16 レール取り付け部
17 配線部
18 ヒンジ軸
19 ヒンジ枠
20 ヒンジ機構
21 第1停止手段
22 第2停止手段
23 仮止め機構
24 クサビ部材
25 係合凸部
26 突き出し部
27 係止部材
28 ケーブル引き込み部
29 緊締部材
30 キャビネット
31 クーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを用いて配線するデバイスを取り付けるためのレール部と、レール部をレール取り付け部に取り付けるためのベース部とを有し、レール部とレール取り付け部との間の空間を上記ケーブルの配線部とした配線装置であって、
レール部をベース部にヒンジ機構を用いて結合し、上記ヒンジ機構にてレール部が回転し傾斜することによって、ケーブルの配線部を露出させることができる構成を有しており、ヒンジ機構として、実質的にヒンジ回転の中心となるヒンジ軸と、ヒンジ軸を中心として回転可能に設けられたヒンジ枠とを具備し、ヒンジ軸とヒンジ枠とはその一方を他方に挿入して結合する構成を備えている
レール部開閉式ダクトレス配線装置。
【請求項2】
ヒンジ軸とヒンジ枠とは、その一方を他方にヒンジ軸の軸方向端部から挿入して結合した構成を備えている請求項1記載のレール部開閉式ダクトレス配線装置。
【請求項3】
レール部とベース部が金属製であって、レール部にヒンジ機構のヒンジ枠、ベース部にヒンジ機構のヒンジ軸を夫々設け、少なくともヒンジ軸の部分を合成樹脂製とした請求項1記載のレール部開閉式ダクトレス配線装置。
【請求項4】
ベース部は、ほぼコの字型の平面形状を有しており、その前端部にヒンジ機構の一部が設けられ、また、後端部にてレール取り付け部に取り付けられ、かつ、コの字型部分はケーブル配線の縦方向の仕切りとするとともに、ベース部の上面がそこにケーブルを載せるケーブル載置部になっている請求項1記載のレール部開閉式ダクトレス配線装置。
【請求項5】
ヒンジ機構に関連して、ケーブルの配線作業においてケーブルの配線部を露出させる方向へレール部を回転させた作業位置にて停止させる第1停止手段と、作業終了後にレール部を上記と逆方向へ回転させて戻した正規位置にて停止させる第2停止手段と設けている請求項1記載のレール部開閉式ダクトレス配線装置。
【請求項6】
ヒンジ機構において、ヒンジ軸は、ベース部の前部にて上方へ立ち上がる部分の上端に設けられ、ヒンジ枠は、レール部の下部にて前方から斜め後上方へ所定の角度で設けられた、ほぼJ字型の横断面形状を有し、J字型の曲線部がヒンジ軸に上方から係合する軸受けとなり、J字型の直線部がヒンジ軸の立ち上がる部分に接触可能な角度にて傾斜して作業位置に規定する第1停止手段を構成している請求項5記載のレール部開閉式ダクトレス配線装置。
【請求項7】
レール部を正規位置に戻したときにレール部を正規位置に規定する第2停止手段として、レール部の下端にて前方から斜め後上方へ所定の角度で設けたJ字型の直線部とヒンジ軸の立ち上がる部分との間に介在して、レール部を正規位置に規定する仮止め機構と、ベース部前部の上部にてそこから前方へ突き出た突き出し部を設け、かつ、正規位置にてレール部に係止するようにレール取り付け部に設けた係止部材とを有している請求項5記載のレール部開閉式ダクトレス配線装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−66160(P2011−66160A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214891(P2009−214891)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(509031497)エレンベルガー ウント ペンスケン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】