説明

ロックアップクラッチ制御装置

【課題】ロックアップクラッチの係合制御で一方向クラッチの係合時のショックやトルク変動を抑制しつつコースト走行状態からの再加速時等の応答性を向上させる場合に、そのロックアップクラッチの係合に起因するこもり音の発生やドラビリの悪化を低減する。
【解決手段】一方向クラッチF1が係合状態とされた後にドライブシャフトトルクの変動量TDHが所定の判定値TD1以下となった場合には、ステップS7の判断がYESとなってステップS9でロックアップクラッチ32の係合制御が終了させられるため、一方向クラッチF1の係合に伴って動力伝達が行われる際のトルク変動をロックアップクラッチ32のスリップ係合制御で適切に抑制しつつ、そのロックアップクラッチ32の係合に起因するこもり音の発生やドラビリの悪化が必要最小限に抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロックアップクラッチ制御装置に係り、特に、動力伝達経路に設けられた一方向クラッチが空転状態から係合状態とされる際のロックアップクラッチの係合制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一方向の相対回転に関して係合状態とされるが逆方向の相対回転に関して空転状態とされる一方向クラッチと、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、を動力伝達経路に備えている車両用駆動装置が知られている。この一方向クラッチは、例えば複数のギヤ段を選択的に成立させる有段の自動変速機において、係合要素の一つとして設けられ、クラッチやブレーキの他の係合要素の係合および解放と関連して所定のギヤ段(一方向クラッチ係合ギヤ段)を成立させるが、例えば一方向クラッチが空転状態となるギヤ段からその一方向クラッチ係合ギヤ段へダウンシフトされる場合、或いは一方向クラッチ係合ギヤ段でその一方向クラッチが空転状態となる非駆動状態から駆動状態へ変化して一方向クラッチが係合状態とされる場合に、その一方向クラッチが急係合させられてショックが発生する可能性があった。これに対し、特許文献1には、一方向クラッチが係合させられる前に動力源の出力を増大補正するとともに、一方向クラッチが係合させられる直前または所定時間経過後にその増大補正を終了することにより、一方向クラッチの係合時のショックを抑制しつつ変速所要時間を短縮する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2000−313251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来技術においては、一方向クラッチの係合に伴って動力源の出力がドライブシャフトへ伝達されるようになる際のトルク変動については何等考慮されておらず、未だ改善の余地があった。これに対し、未だ公知ではないが、一方向クラッチが空転状態から係合状態とされる際に前記ロックアップクラッチを所定の係合状態とすることにより、伝達トルク容量を大きくして一方向クラッチが速やかに係合させられるようにし、例えばコースト走行(惰性走行)状態からの再加速時の応答性(レスポンス)を向上させるとともに、そのロックアップクラッチの係合圧を適当に制御することにより一方向クラッチが係合させられる際のショックやトルク変動を抑制することが考えられる。しかしながら、このようにロックアップクラッチを係合制御すると、特に低車速での走行時にはこもり音が発生したり動力源のトルク変動の影響でドラビリが悪くなったりするという別の問題が発生する。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ロックアップクラッチの係合制御で一方向クラッチの係合時のショックやトルク変動を抑制しつつコースト走行状態からの再加速時等の応答性(レスポンス)を向上させる場合に、そのロックアップクラッチの係合に起因するこもり音の発生やドラビリの悪化を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、第1発明は、一方向の相対回転に関して係合状態とされるが逆方向の相対回転に関して空転状態とされる一方向クラッチと、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、を動力伝達経路に備えている車両用駆動装置の前記ロックアップクラッチの制御装置であって、(a) 前記一方向クラッチが空転状態から係合状態とされる際に前記ロックアップクラッチを所定の係合状態とする一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段と、(b) 前記一方向クラッチが係合状態とされた後にドライブシャフトトルクまたはそのドライブシャフトトルクに対応して変化する所定の物理量の変動量が所定値以下となった場合に、前記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段による前記ロックアップクラッチの係合制御を終了させるロックアップクラッチ係合制御終了判定手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
第2発明は、第1発明のロックアップクラッチ制御装置において、前記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段は、前記ドライブシャフトトルクの変動を抑制するように前記ロックアップクラッチのスリップ状態の係合圧を制御するトルク変動抑制スリップ制御手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
第3発明は、第1発明または第2発明のロックアップクラッチ制御装置において、(a) 複数の係合要素を有し、その複数の係合要素および前記一方向クラッチの選択的な係合により複数のギヤ段が成立させられる自動変速機を備えており、(b) 前記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段は、前記一方向クラッチが空転状態となる一方向クラッチ空転ギヤ段からその一方向クラッチの係合により成立させられる一方向クラッチ係合ギヤ段への変速時、またはその一方向クラッチ係合ギヤ段で一方向クラッチが空転状態となる非駆動状態から駆動状態へ変化して一方向クラッチが係合状態とされる際に、前記ロックアップクラッチを所定の係合状態とする一方、(c) 前記ロックアップクラッチ係合制御終了判定手段は、前記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段による前記ロックアップクラッチの係合制御中に前記一方向クラッチ係合ギヤ段から前記一方向クラッチ空転ギヤ段への変速指令が出力された場合には、直ちにその一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段によるそのロックアップクラッチの係合制御を終了させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようなロックアップクラッチ制御装置においては、一方向クラッチが空転状態から係合状態とされる際に一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段によりロックアップクラッチが所定の係合状態とされるため、そのロックアップクラッチを介して動力伝達が行われて一方向クラッチが速やかに係合させられるようになり、例えばコースト走行状態からの再加速時等の応答性(レスポンス)が向上するとともに、そのロックアップクラッチの係合圧を適当に制御することにより一方向クラッチが係合させられる際のショックやトルク変動が抑制される。その場合に、一方向クラッチが係合状態とされた後にドライブシャフトトルクまたはそのドライブシャフトトルクに対応して変化する所定の物理量の変動量が所定値以下となった場合には、ロックアップクラッチ係合制御終了判定手段により上記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段によるロックアップクラッチの係合制御が終了させられるため、一方向クラッチの係合に伴って動力伝達が行われる際のトルク変動を抑制しつつロックアップクラッチの係合に起因するこもり音の発生やドラビリの悪化が必要最小限に抑制される。
【0009】
第2発明では、一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段が、ドライブシャフトトルクの変動を抑制するようにロックアップクラッチのスリップ状態の係合圧を制御するトルク変動抑制スリップ制御手段を備えているため、一方向クラッチの係合時のショックや係合に伴って動力伝達が行われる際のトルク変動が適切に抑制される。
【0010】
第3発明は、複数の係合要素を有し、その複数の係合要素および一方向クラッチの選択的な係合により複数のギヤ段が成立させられる自動変速機を備えている場合で、一方向クラッチ空転ギヤ段から一方向クラッチ係合ギヤ段への変速時、またはその一方向クラッチ係合ギヤ段で一方向クラッチが空転状態となる非駆動状態から駆動状態へ変化して一方向クラッチが係合状態とされる際に、ロックアップクラッチが所定の係合状態とされる一方、そのロックアップクラッチの係合制御中に一方向クラッチ係合ギヤ段から一方向クラッチ空転ギヤ段への変速指令が出力された場合には、直ちにそのロックアップクラッチの係合制御が終了させられるため、無駄にロックアップクラッチの係合制御が継続されて、こもり音が発生したりドラビリが悪化したりすることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、コースト走行状態からアクセル操作により再加速する際に、ダウンシフト等により一方向クラッチが空転状態から係合状態となる場合に好適に適用されるが、駆動状態のまま或いはコースト状態のままの車速低下に伴うダウンシフトにより一方向クラッチが空転状態から係合状態となる場合、或いは一方向クラッチ係合ギヤ段で一方向クラッチが空転状態となる非駆動状態からアクセル操作により駆動状態へ変化して一方向クラッチが係合状態とされる場合などにも適用され得る。
【0012】
一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段は、例えばドライブシャフトトルクの変動を抑制するようにロックアップクラッチのスリップ状態の係合圧を制御するトルク変動抑制スリップ制御手段を備えて構成されるが、この他に、(a) 一方向クラッチが係合する直前までは比較的大きな係合圧でロックアップクラッチを完全係合状態またはスリップ状態とする強係合制御手段、および(b) 一方向クラッチが係合する直前になったら比較的小さな係合圧でロックアップクラッチをスリップ状態とする弱係合制御手段を備えて構成することもできる。一方向クラッチが係合する直前になったら、そのままトルク変動抑制スリップ制御手段による係合制御が行われるようにしても良い。また、強係合制御手段やトルク変動スリップ制御手段を設けることなく、単に弱係合制御手段により一定の係合力でロックアップクラッチをスリップ状態とするだけでも良いなど、種々の態様が可能である。
【0013】
トルク変動抑制スリップ制御手段は、例えばドライブシャフトトルクを算出(推定)し、そのドライブシャフトトルクに基づいてその変動が抑制されるようにロックアップクラッチのスリップ状態の係合圧を制御するように構成されるが、ドライブシャフトトルクの変動に対応するトルクコンバータの速度比eやトルクコンバータの出力トルクであるタービントルクに基づいて、それ等の速度比eやタービントルクの変動が抑制されるようにロックアップクラッチのスリップ状態の係合圧を制御するようにしても良いなど、種々の態様が可能である。要するに、結果的にドライブシャフトトルクの変動が抑制されるようにロックアップクラッチのスリップ状態の係合圧が制御されれば良い。
【0014】
ロックアップクラッチ係合制御終了判定手段は、例えば一方向クラッチが係合状態とされた後にドライブシャフトトルクの変動量が所定値以下となった場合にロックアップクラッチの係合制御を終了させるように構成されるが、ドライブシャフトトルクに対応するタービントルクの変動量やそれ等の回転速度の変動量などドライブシャフトトルクに対応して変化する他の物理量の変動量が所定値以下となった場合にロックアップクラッチの係合制御を終了させるものでも良い。
【0015】
一方向クラッチは一つ設けられるだけでも良いが、複数の一方向クラッチを設け、それぞれ変速比が異なる複数のギヤ段(一方向クラッチ係合ギヤ段)を成立させることも可能で、その場合には、それぞれの一方向クラッチについて空転状態から係合状態とされる際に本発明を適用することが可能である。
【0016】
本発明は、動力源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関を備えており、その内燃機関からトルクコンバータ、一方向クラッチを有する自動変速機、差動歯車装置等を経て駆動輪に動力が伝達される車両用駆動装置に好適に適用されるが、電動モータおよび内燃機関を動力源として備えているハイブリッド車両用の駆動装置等にも適用され得る。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される車両用駆動装置8の骨子図であり、図2は、その駆動装置8に備えられた有段の自動変速機10において複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の左右方向(横置き)に搭載するFF車両等に好適に用いられるものであって、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。上記入力軸22は入力部材に相当するものであり、エンジン28によって回転駆動されるトルクコンバータ30のタービン軸である。また、上記出力回転部材24は自動変速機10の出力部材に相当するものであり、図示しない差動歯車装置に動力を伝達するためにそのデフドリブンギヤ(大径歯車)と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤとして機能している。上記エンジン28の出力は、トルクコンバータ30、自動変速機10、差動歯車装置、および駆動軸としての一対のドライブシャフト(D/S)を介して一対の駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。なお、この自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1ではその中心線の下半分が省略されている。
【0018】
上記エンジン28は、本実施例の車両用駆動装置8の動力源であり、例えば燃料の燃焼によって車両の駆動力を発生させるガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記トルクコンバータ30は、例えばエンジン28のクランク軸に連結されたポンプ翼車30pと、自動変速機10の入力軸22に連結されたタービン翼車30tと、一方向クラッチを介して上記自動変速機10のハウジング(変速機ケース)26に連結されたステータ翼車30sとを備えており、エンジン28により発生させられた動力を自動変速機10へ流体を介して伝達する流体式動力伝達装置である。また、上記ポンプ翼車30pおよびタービン翼車30tの間には、直結クラッチであるロックアップクラッチ32が設けられており、油圧制御等により係合状態、スリップ状態(弱係合状態)、或いは解放状態とされるようになっている。なお、このロックアップクラッチ32が完全係合状態とされることにより、上記ポンプ翼車30pおよびタービン翼車30tが一体回転させられる。
【0019】
自動変速機10は、複数の摩擦係合要素すなわち第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)を有し、それら複数の摩擦係合要素の選択的な係合により複数のギヤ段の何れかを成立させる。すなわち、自動変速機10に備えられたクラッチCおよびブレーキBは、好適には、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、車両用駆動装置8に備えられた油圧制御回路40(図4参照)のソレノイド弁の励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられるとともに係合、解放時の過渡油圧などが制御されるようになっている。図2の作動表は、自動変速機10の各ギヤ段とクラッチCおよびブレーキBの作動状態との関係をまとめたもので、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
【0020】
また、上記自動変速機10には、前記第2遊星歯車装置16のリングギヤR2(第3遊星歯車装置18のリングギヤR3)と非回転部材であるハウジング26との間に、一方向の回転に関して係合状態とされて動力を伝達するが逆方向の回転に関して空転状態とされる一方向クラッチ(OWC;One Way Clutch)F1が設けられている。この一方向クラッチF1は、図2に示すように自動変速機10の第1速ギヤ段「1st」を成立させる際に係合状態とされるもので、車両用駆動装置8の駆動時、例えば車両発進時やキックダウン時等にのみ係合させられる一方、非駆動時には空転状態とされる。
【0021】
自動変速機10は、前記第1変速部14および第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)の連結状態の組み合わせに応じて第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」の6つの前進ギヤ段が選択的に成立させられるとともに、1つの後進ギヤ段「R」が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、前記第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。また、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。第2クラッチC2および第1ブレーキB1の係合により第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。また、第2ブレーキB2および第3ブレーキB3の係合により後進ギヤ段「R」が成立させられ、クラッチCおよびブレーキBの何れもが解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。なお、第1速ギヤ段「1st」を成立させる前記第2ブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時や加速時などの駆動時には必ずしもその第2ブレーキB2を係合させる必要は無い。また、各ギヤ段の変速比は、前記第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
【0022】
図3は、車両用駆動装置8を制御するためにその車両用駆動装置8に備えられた電子制御装置34に入力される信号およびその電子制御装置34から出力される信号を例示している。この電子制御装置34は、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェース等から成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記エンジン28の駆動制御、自動変速機10における有段変速制御、およびトルクコンバータ30のロックアップクラッチ圧制御等の各種制御を実行するものである。なお、エンジン28の駆動を制御するための制御装置と、自動変速機10の変速制御等を行うための制御装置とが個別に設けられても良い。
【0023】
図3に示すように、電子制御装置34には、各種のセンサやスイッチ等から前記車両用駆動装置8に関する各種信号が供給されるようになっている。例えば、エンジン水温を表す信号、シフトレバーのP、R、N、D等のシフトポジションを表す信号、エンジン回転速度センサ36により検出されるエンジン回転速度NE(=ポンプ翼車30pの回転速度NP)を表す信号、タービン回転速度センサ38により検出されるタービン回転速度NTを表す信号、駆動輪の回転速度である車輪速を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)スイッチのオン・オフを表す信号、エアコンの作動を表す信号、車速V(前記出力回転部材24の回転速度に対応)を表す信号、自動変速機10の作動油の温度であるATF温度を表す信号、ECTスイッチのオン・オフを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、そのフットブレーキに対応するブレーキマスタシリンダ圧を表す信号、触媒温度を表す信号、アクセル操作量センサ39により検出される図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)に対応するアクセル操作量Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号等がそれぞれ供給される。
【0024】
また、前記車両用駆動装置8の駆動を制御するために、前記電子制御装置34から各種制御信号が出力されるようになっている。例えば、前記エンジン28の吸気管に備えられた電子スロットル弁のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、前記エンジン28への燃料噴射を制御するための燃料噴射装置によるエンジン28の筒内への燃料供給量の制御信号、点火装置による前記エンジン28の点火時期を指令する点火信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、前記油圧制御回路40に備えられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、前記自動変速機10等に備えられた油圧式摩擦係合装置(クラッチCおよびブレーキB)の油圧アクチュエータを制御するために前記油圧制御回路40に含まれる変速用ソレノイド弁等を作動させるバルブ指令信号、前記ロックアップクラッチ32の係合解放状態を切り換えるための切換用ソレノイド弁66を作動させるロックアップ切換指令信号、同じくロックアップクラッチ32のスリップ状態を制御するスリップ制御用ソレノイド弁70を作動させるスリップ制御指令信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、前記油圧制御回路40に設けられた元圧の出力源である電動オイルポンプ44を作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等がそれぞれ出力される。
【0025】
図4は、車両用駆動装置8に備えられた油圧制御回路40の一部を示す図であり、特に、前記トルクコンバータ30に備えられたロックアップクラッチ32の係合圧(ロックアップクラッチ係合圧)を制御する回路を例示する図である。なお、図4の油圧制御回路40において、前記自動変速機10の変速を行うための油圧式摩擦係合装置(クラッチCおよびブレーキB)の作動を制御するための回路等、他の制御に用いられる回路は省略されている。
【0026】
上記油圧制御回路40には、オイルパン42に環流した作動油を吸引して圧送するために、図示しない電動機によって駆動される電動オイルポンプ44が設けられており、その電動オイルポンプ44から圧送された作動油は、リリーフ式の第1調圧弁46により第1ライン圧PL1に調圧されるようになっている。この第1調圧弁46は、図示しないスロットル弁開度検知弁から出力されたスロットル圧に対応して大きくなる第1ライン圧PL1を発生させて第1ライン油路48へ出力する。また、第2調圧弁50も同様にリリーフ形式の調圧弁であって、上記第1調圧弁46から調圧のために排出(リリーフ)された作動油を上記スロットル圧に基づいて調圧することにより、前記エンジン28の出力トルクに応じた第2ライン圧PL2を発生させる。また、第3調圧弁52は、上記第1ライン圧PL1を元圧とする減圧弁であって、予め設定された大きさの一定のモジュレータ圧PMを発生させる。なお、上記第1ライン圧PL1は、自動変速機10のギヤ段を制御するための図示しない変速制御用油圧回路の元圧等として供給される。また、本実施例においては、上記電動オイルポンプ44により元圧を発生させる形式の油圧制御回路について説明するが、前記エンジン28の駆動により元圧を発生させる機械式のオイルポンプを備えたものであってもよい。
【0027】
また、図4に示すように、前記ロックアップクラッチ32は、係合側油路54を介して作動油が供給される係合側油室56内の油圧PONと解放側油路58を介して作動油が供給される解放側油室60内の油圧POFF との差圧ΔP(PON−POFF )によりフロントカバー62に摩擦係合させられる油圧式摩擦係合クラッチである。そして、このロックアップクラッチ32は、(a) 差圧ΔPが負とされて解放状態とされる所謂ロックアップオフ状態、(b) 差圧ΔPが零以上とされて半係合状態とされる所謂スリップ状態、および(c) 差圧ΔPが最大値とされて完全に係合させられる所謂ロックアップオン状態の3つの状態に制御される。
【0028】
油圧制御回路40は、ソレノイド64によりオン・オフ作動させられて切換用信号圧PSWを出力する切換用ソレノイド弁66と、その切換用信号圧PSWに従って、前記ロックアップクラッチ32を解放状態とするオフ側位置(OFF)および係合状態とするオン側位置(ON)の何れか一方に切り換えられるクラッチ切換弁68と、前記電子制御装置34から供給される駆動電流に応じて油圧が連続的に変化する信号圧PSLU を出力するスリップ制御用ソレノイド弁70と、上記クラッチ切換弁68により前記ロックアップクラッチ32が係合状態とされている時に信号圧PSLU に応じてロックアップクラッチ32の作動状態をスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えるロックアップコントロール弁72と、を備えている。
【0029】
上記クラッチ切換弁68は、ロックアップクラッチ32を係合状態および解放状態の何れか一方に切り換えるためものであり、前記解放側油室60に連通する解放側ポート74と、前記係合側油室56に連通する係合側ポート76と、第2ライン圧PL2が供給される入力ポート78と、前記ロックアップクラッチ32の解放時に係合側油室56から係合側油路54を経て係合側ポート76に供給された作動油を排出する排出ポート80と、前記ロックアップクラッチ32の係合時に前記解放側油室60に解放側油路58を介して連通させられる解放側ポート74と連通させられる迂回ポート82と、前記第2調圧弁50から調圧のために排出された作動油が供給されるリリーフポート84と、それら複数のポートの状態を切り換えるためのスプール弁子86と、そのスプール弁子86をオフ側位置に向かって付勢するスプリング88と、スプール弁子86の端部に前記切換用ソレノイド弁66からの切換用信号圧PSWを作用させてオン側位置へ向かう推力を発生させるためにその切換用信号圧PSWを受け入れる油室90と、を備えている。上記排出ポート80は、ロックアップクラッチ32の係合時にはリリーフポート84と連通させられ、第2調圧弁50から調圧のためにリリーフポート84に供給された作動油を排出する。なお、図4に示すクラッチ切換弁68の中心線より左側半分は、ロックアップクラッチ32を解放するオフ側位置(OFF)にスプール弁子86が位置させられた状態で、中心線より右側半分は、ロックアップクラッチ32を係合(スリップ状態を含む)させるオン側位置(ON)にスプール弁子86が位置させられた状態である。
【0030】
前記ロックアップコントロール弁72は、その弁の状態を切り換えるスプール弁子92と、そのスプール弁子92をスリップ側位置(SLIP)へ向かって付勢するスプリング94と、前記トルクコンバータ30の係合側油室56内の油圧PONを受け入れてスプール弁子92にスリップ側位置へ向かう方向の推力を作用させる油室96と、前記トルクコンバータ30の解放側油室60内の油圧POFF を受け入れてスプール弁子92に完全係合側位置(ON)へ向かう方向の推力を作用させる油室98と、前記スリップ制御用ソレノイド弁70から出力される信号圧PSLU を受け入れてスプール弁子92にオン側位置へ向かう方向の推力を作用させる油室100と、前記第2調圧弁50によって調圧された第2ライン圧PL2が供給される入力ポート102と、上記スプール弁子92がスリップ側位置に位置させられた時に上記入力ポート102と連通する制御ポート104と、ドレンポート106とを、備えている。なお、図4に示すロックアップコントロール弁72の中心線より左側半分は、スプール弁子92がスリップ側位置(SLIP)に位置させられた状態で、中心線より右側半分は、スプール弁子92が完全係合側位置(ON)に位置させられた状態である。
【0031】
前記スリップ制御用ソレノイド弁70は、前記電子制御装置34からの指令に基づいて、前記ロックアップクラッチ32の係合時にそのロックアップクラッチ32の係合圧を制御するための信号圧PSLU を出力する。換言すれば、前記第3調圧弁52により発生させられる一定のモジュレータ圧PMを元圧とし、そのモジュレータ圧PMを減圧して信号圧PSLU を発生させる。
【0032】
前記切換用ソレノイド弁66は、非励磁状態(オフ状態)では切換用信号圧PSWをドレン圧とするが、励磁状態(オン状態)では切換用信号圧PSWをモジュレータ圧PMとし、前記クラッチ切換弁68の油室90に作用させる。この油室90にモジュレータ圧PMが供給されると前記クラッチ切換弁68のスプール弁子86は、スプリング88の付勢力に抗してオン側位置(ON)に移動させられる。一方、前記油室90にドレン圧が供給されると、スプール弁子86はスプリング88の付勢力に従ってオフ側位置(OFF)に移動させられる。なお、以下の説明では、切換用信号圧PSWがモジュレータ圧PMの場合に切換用信号圧PSWが供給されると表現し、切換用信号圧PSWがドレン圧の場合は切換用信号圧PSWが供給されないと表現する。
【0033】
前記クラッチ切換弁68において、切換用ソレノイド弁66が励磁され、切換用信号圧PSWが油室90に供給されてスプール弁子86がオン側位置に位置させられると、入力ポート78に供給された第2ライン圧PL2が係合側ポート76から係合側油路54を通って係合側油室56に供給される。この係合側油室56に供給される第2ライン圧PL2が油圧PONとなる。同時に、前記解放側油室60は、解放側油路58から解放側ポート74、迂回ポート82を経て前記ロックアップコントロール弁72の制御ポート104に連通させられる。そして、その解放側油室60内の油圧POFF がロックアップコントロール弁72によって調圧されることにより、ロックアップクラッチ32の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えられる。
【0034】
具体的には、クラッチ切換弁68のスプール弁子86がオン側位置に位置させられているとき、すなわち前記ロックアップクラッチ32が係合状態に切り換えられているときに、ロックアップコントロール弁72の油室100に供給される信号圧PSLU が、スプール弁子92を完全係合側位置(ON)へ移動させる最大圧よりも低く、その信号圧PPLU とスプリング94の付勢力との釣り合いによってスプール弁子92が完全係合側位置(ON)とスリップ側位置(SLIP)との間の中間位置に保持されると、制御ポート104と入力ポート102およびドレンポート106との連通状態が、その信号圧PSLU に応じて連続的に変化させられ、制御ポート104に連通させられている解放側油室60内の油圧POFF も連続的に変化させられる。これにより、係合側油室56内の油圧PON(=PL2)と解放側油室60内の油圧POFF との差圧ΔPが、スリップ制御用ソレノイド弁70の信号圧PSLU に応じて連続的に制御され、ロックアップクラッチ32のスリップ状態(係合圧)が連続的に制御される。
【0035】
また、クラッチ切換弁68のスプール弁子86がオン側位置(ON)へ付勢されているとき、ロックアップコントロール弁72の油室100に供給される信号圧PSLU が最大圧とされ、スプール弁子92が完全係合側位置(ON)へ移動させられると、入力ポート102と制御ポート104との連通が遮断され、解放側油室60への第2ライン圧PL2の供給が停止されるとともに、制御ポート104とドレンポート106とが連通させられることにより、解放側油室60内の作動油が制御ポート104からドレンポート106を経て排出される。これにより、差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ32が完全係合状態(ロックアップオン)となる。
【0036】
ロックアップクラッチ32が、上記のようにスリップ状態もしくは完全係合状態とされている場合、クラッチ切換弁68のスプール弁子86はオン側位置に位置させられるため、リリーフポート84と排出ポート80とが連通させられる。これにより、前記第2調圧弁50から排出された作動油は、クラッチ切換弁68を介して図示しない潤滑油供給油路へ排出される。
【0037】
一方、クラッチ切換弁68において、切換用信号圧PSWが油室90に供給されず、スプール弁子86がスプリング88の付勢力によってオフ側位置(OFF)に位置させられると、入力ポート78に供給された第2ライン圧PL2が解放側ポート74から解放側油路58を通って解放側油室60へ供給される。また、係合側油室56内の作動油は、係合側油路54を通り係合側ポート76へ供給され、排出ポート80から図示しない潤滑油供給油路へ排出される。これにより、ロックアップクラッチ32が解放状態(ロックアップオフ)とされる。
【0038】
図5は、前記電子制御装置34が備えている制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図5において、変速制御手段108は自動変速機10の変速動作を制御するもので、予め定められた変速条件(変速マップ等)に従って、図示しないシフトレバーのレバーポジション、アクセル操作量(アクセル開度)Acc、および車速V等に基づいて、第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」或いは後進ギヤ段「R」のうち何れのギヤ段を成立させるべきかを判断し、そのギヤ段を成立させるように前記油圧制御回路40を介して前記クラッチCおよびブレーキBの係合解放状態を制御する。
【0039】
ロックアップクラッチ圧制御手段110は、前記油圧制御回路40を介して前記トルクコンバータ30に備えられたロックアップクラッチ32の係合圧(ロックアップクラッチ圧)を制御する。具体的には、切換用ソレノイド弁66の切換用信号圧PSWおよびスリップ制御用ソレノイド弁70の信号圧PSLU を制御し、ロックアップクラッチ32の係合側油室56および解放側油室60の差圧ΔPを制御することで、そのロックアップクラッチ32の係合、解放、およびスリップ状態を制御する。このロックアップクラッチ32の係合解放制御は、基本的には予め定められたロックアップ係合解放マップに従って行われ、例えば車速Vが60km/h程度の所定車速以上の係合領域でロックアップクラッチ32をロックアップオン(完全係合状態)とし、その所定車速付近に設定されたスリップ領域でスリップ状態とし、それ以外の解放領域でロックアップオフ(解放状態)とする。
【0040】
電子制御装置34はまた、機能的に一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段120、一方向クラッチ係合予測手段130、ロックアップクラッチ係合制御終了判定手段132を備えており、図6のフローチャートに従って信号処理を行うことにより、前記自動変速機10に設けられた一方向クラッチF1が空転状態から係合状態とされる際に一時的にロックアップクラッチ32を係合制御する。図6のフローチャートのステップS1は一方向クラッチ係合予測手段130に相当し、ステップS2〜S6は一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段120に相当し、ステップS7〜S9はロックアップクラッチ係合制御終了判定手段132に相当する。また、一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段120は、更に係合予測時強係合制御手段122、係合直前弱係合制御手段124、およびトルク変動抑制スリップ制御手段126を機能的に備えており、ステップS2は係合予測時強係合制御手段122に相当し、ステップS3およびS4は係合直前弱係合制御手段124に相当し、ステップS5およびS6はトルク変動抑制スリップ制御手段126に相当する。
【0041】
図6のステップS1は、自動変速機10に備えられた一方向クラッチF1が空転状態から係合状態となることを予測するもので、具体的には、一方向クラッチF1が空転状態とされる一方向クラッチ空転ギヤ段から、その一方向クラッチF1の係合により成立させられる一方向クラッチ係合ギヤ段への変速が行われるか否か、或いは一方向クラッチ係合ギヤ段において一方向クラッチF1が空転する非駆動状態から駆動状態へ変化して一方向クラッチF1が係合状態とされるか否か、等を判断する。本実施例では、図2の作動表から明らかなように第1速ギヤ段「1st」の駆動状態では一方向クラッチFが係合しているが、第2速ギヤ段「2nd」以上では空転させられるため、第2速ギヤ段「2nd」以上のギヤ段から第1速ギヤ段「1st」へ駆動状態でダウンシフトされる場合に、一方向クラッチF1が空転状態から係合状態になると予測でき、例えばアクセル操作量Accが零のコースト走行状態から加速操作(再加速)が行われた場合に一方向クラッチF1が空転状態から係合状態になると予測できる。すなわち、第2速ギヤ段「2nd」以上のギヤ段でのコースト走行時に、前記アクセル操作量センサ39により検出されるアクセル操作量Accの時間変化率dAcc/dtが予め定められた所定の判定値以上となった場合には、第1速ギヤ段「1st」へのダウンシフトが行われて一方向クラッチF1が空転状態から係合状態になると予測することができる。本実施例では第1速ギヤ段「1st」が一方向クラッチ係合ギヤ段で、それ以外のギヤ段すなわち第2速ギヤ段「2nd」以上の各ギヤ段は一方向クラッチ空転ギヤ段である。
【0042】
上記ステップS1の判断がNO(否定)であれば、そのまま終了するが、YES(肯定)の場合にはステップS2以下を実行する。また、この段階で、通常は前記変速制御手段108により第2速ギヤ段「2nd」以上のギヤ段から第1速ギヤ段「1st」へのダウンシフト制御が開始される。図9は、図6のフローチャートに従って一方向クラッチF1の係合時にロックアップクラッチ32の係合制御が行われた場合の各部の作動状態の変化を模式的に示すタイムチャートの一例で、第2速ギヤ段「2nd」でのコースト走行時にアクセルペダルが踏込み操作されて第1速ギヤ段「1st」へのダウンシフトが行われた場合であり、時間t1 は、アクセル操作量Accの時間変化率dAcc/dtが所定の判定値以上となってステップS1の判断がYESとなった時間である。図9のタービン回転速度NTの欄の「ntdoki1」、「ntdoki2」は、それぞれ第1速ギヤ段「1st」、第2速ギヤ段「2nd」の同期回転速度、すなわち実際の出力回転部材24の回転速度(車速Vに対応)に各ギヤ段の変速比を掛け算した速度であり、第2速ギヤ段「2nd」ではNT=ntdoki2となり、第1速ギヤ段「1st」ではNT=ntdoki1となる。そして、時間t1 以降の2→1ダウンシフトの進行でタービン回転速度NTが上昇し、NT=ntdoki1となる時間t3 で一方向クラッチF1が係合状態となる。なお、図9の速度比eおよびトルク比τは、それぞれトルクコンバータ30の速度比およびトルク比である。
【0043】
ステップS2では、一方向クラッチF1が係合状態となる前にロックアップクラッチ32の係合圧を増圧制御し、そのロックアップクラッチ32を強係合状態とする。具体的には、ロックアップクラッチ32を比較的大きな係合圧(差圧ΔPに対応)でスリップ係合させるか、係合圧を最大圧として完全係合させるように、前記ロックアップクラッチ圧制御手段110を介して前記スリップ制御用ソレノイド弁70の信号圧PSLU を増大させる。このようにロックアップクラッチ32の係合圧が高められると、そのロックアップクラッチ32の係合トルクを含むトルクコンバータ30の全体の伝達トルク容量が大きくなるため、アクセルペダルの踏込み操作に伴うエンジン回転速度NEの上昇に追従してタービン回転速度NTが速やかに上昇させられ、一方向クラッチF1が係合状態とされるまでのレスポンス、すなわち2→1ダウシンフトの変速応答性が向上し、アクセルペダルの踏込み操作による運転者の駆動力要求に対して速やかにダウンシフトが行われて、実際の駆動力が速やか立ち上げられるようになる。図9は、このステップS2の実行によりロックアップクラッチ32が完全係合させられる場合で、時間t1 〜t2 は完全係合させられる強係合状態の時間帯である。
【0044】
次のステップS3では、一方向クラッチF1が係合直前になったか否かを、例えば係合状態となるまでの係合所要時間Tcが予め定められた判定時間T0 以下になったか否かよって判断する。係合所要時間Tcは、一方向クラッチF1が係合状態となるまでの残り時間で、トルクコンバータ30のタービン回転速度NTに基づいて算出することができる。図7は、第2速ギヤ段「2nd」から第1速ギヤ段「1st」への2→1ダウンシフト時におけるタービン回転速度NTの変化を示すタイムチャートの一例で、ntdoki1、ntdoki2は、それぞれ第1速ギヤ段「1st」、第2速ギヤ段「2nd」の同期回転速度であり、時間tsは2→1ダウンシフトの変速開始時間で時間teは変速終了時間である。この図7に示すように、変速開始からのタービン回転速度NTの変化は、変速制御手段108によるクラッチCおよびブレーキBの油圧制御に応じて経過時間に対して略一義的に定まり、一方向クラッチF1は変速終了時点teにおいて係合状態とされる。したがって、例えば図7に示されるように予め定められた関係(同期回転速度と実際のタービン回転速度NTとから求まる変速の進行度合と、変速終了までの残り時間との関係を定めたマップなど)から、前記タービン回転速度センサ38により検出されるタービン回転速度NTに基づいて現在時点(変速の進行度合に対応)t1を決定し、その現在時点t1から変速終了時間teまでの残り時間を係合所要時間Tcとして求めることができる。また、タービン回転速度NTの時間変化率dNT/dtを求めて、現在のタービン回転速度NTがその変化率dNT/dtで変化した場合に第1速ギヤ段同期回転速度ntdoki1に到達するまでの予測時間を係合所要時間Tcとして求めるようにしても良い。そして、その係合所要時間Tcが判定時間T0 以下になるまでは前記ステップS2を繰り返し実行し、ロックアップクラッチ32を強係合状態に保持するが、Tc≦T0 になって一方向クラッチF1が係合直前であると判定されると、ステップS3の判断がYESとなってステップS4以下を実行する。図9の時間t2 は、一方向クラッチF1が係合直前であると判定されてステップS3の判断がYESとなった時間である。
【0045】
ステップS4では、一方向クラッチF1が係合状態となる直前にロックアップクラッチ32の係合圧を低下させ、そのロックアップクラッチ32を弱係合状態とする。具体的には、ロックアップクラッチ32を比較的小さな所定の係合圧(差圧ΔPに対応)でスリップ係合させるように、前記ロックアップクラッチ圧制御手段110を介して前記スリップ制御用ソレノイド弁70の信号圧PSLU を低下させる。このようにロックアップクラッチ32の係合圧が低下させられると、そのロックアップクラッチ32の係合トルクを含むトルクコンバータ30の全体の伝達トルク容量が低下させられ、エンジン28から入力軸22に伝達されるトルクが低下するため、タービン回転速度NTが第1速ギヤ段同期回転速度ntdoki1に達して一方向クラッチF1が空転状態から係合状態になる際のショックが低減される。この時のロックアップクラッチ32の係合圧は、予め定められた一定圧であっても良いが、アクセル操作量Accやエンジントルク等をパラメータとして異なる係合圧が設定されるようにしても良い。自動変速機10に複数の一方向クラッチが設けられ、複数の変速で本制御が実行される場合には、変速の種類に応じて異なる係合圧が設定されるようにしても良い。前記ステップS3の判定時間T0 は、予め一定値が定められても良いが、上記係合圧と同様にアクセル操作量Accやエンジントルク等をパラメータとして異なる値が設定されるようにしても良く、自動変速機10に複数の一方向クラッチが設けられ、複数の変速で本制御が実行される場合には、変速の種類に応じて異なる判定時間T0 が設定されるようにしても良い。図9の時間t2 〜t3 は、上記ステップS4の実行によりロックアップクラッチ32が比較的小さな係合圧でスリップ係合させられる弱係合状態の時間帯である。
【0046】
次のステップS5では、一方向クラッチF1が係合状態になったか否か、言い換えれば第1速ギヤ段「1st」が成立したか否かを判断する。具体的には、例えばタービン回転速度NTが第1速ギヤ段同期回転速度ntdoki1と一致するか否かを判断し、NT≒ntdoki1になるまではステップS4を繰り返し実行して、ロックアップクラッチ32を弱係合状態に保持するが、NT≒ntdoki1になって一方向クラッチF1が係合状態になったと判断されると、ステップS5の判断がYESとなってステップS6以下を実行する。図9の時間t3 は、一方向クラッチF1が係合状態になったと判断されてステップS5の判断がYESとなった時間である。
【0047】
ステップS6では、ドライブシャフトトルク(D/Sトルク)の変動が抑制されるようにトルクコンバータ32の速度比eまたはタービントルクTTに応じてロックアップクラッチ32の係合圧を制御する。具体的には、例えばタービン回転速度NTとエンジン回転速度NE(ポンプ翼車30pの回転速度NPと同じ)との比(NT/NE)を速度比e(=NT/NP)として算出し、その速度比eに基づいて、速度比eの急な変化を抑制するように予め定められた関係に従ってロックアップクラッチ32のスリップ係合(弱係合)状態における係合圧を求め、その係合圧となるように前記ロックアップクラッチ圧制御手段110を介して前記スリップ制御用ソレノイド弁70の信号圧PSLU を制御する。
【0048】
図8は、速度比eに応じて係合圧すなわち差圧ΔPを制御する際に用いられる関係(データマップ)の一例で、速度比eとロックアップクラッチ圧(係合圧)との関係を示す図である。かかる関係は、トルクコンバータ32の速度比eの変化を相殺するようなロックアップクラッチ圧となるように実験的に求められて定められたものであり、速度比eが大きいほど、すなわちエンジン回転速度NEとタービン回転速度NTとの速度差が小さくなって速度比eが1.0に近くなる程、ロックアップクラッチ圧が低くなるように設定されており、例えば速度比eが大きくなると、ロックアップクラッチ圧が低下させられることによりトルクコンバータ30の全体の伝達トルク容量が低下させられ、それに伴ってエンジン回転速度NEとタービン回転速度NTとの速度差が拡大して速度比eが小さくなり、速度比eの変化が抑制される。
【0049】
そして、このように速度比eの変化が抑制されると、タービントルクTTの変化、更にはドライブシャフトトルクの変化が抑制されるため、一方向クラッチF1が係合状態とされてエンジン28のトルクが駆動輪側へ伝達されるようになる時の軸捩れ等による駆動トルク変動が抑制される。図9の時間t3 〜t4 は、このステップS6の実行によりドライブシャフトトルクの変動が抑制されるようにトルクコンバータ32の速度比eに応じてロックアップクラッチ32の係合圧が制御されるトルク変動抑制スリップ制御の時間帯で、一方向クラッチF1が係合状態とされて非駆動状態から駆動状態に切り換わる際の軸捩れ等による駆動トルク変動(ドライブシャフトトルクの変動)が速やかに収束させられる。
【0050】
なお、速度比eの変化はタービントルクTTの変化やトルク比τの変化に対応するため、そのタービントルクTTやトルク比τに基づいてロックアップクラッチ32の係合圧を制御することもできる。タービントルクTTは、例えばエンジン回転速度NEおよび吸入空気量等から求められるエンジントルクTEと、上記速度比eをパラメータとして予め定められたマップ等から求められるトルク比τ=f(e)とから、それ等の積(TE×τ)をタービントルクTTとして求めることができる。
【0051】
次のステップS7では、ドライブシャフトトルクの変動量TDHが予め定められた所定の判定値TD1以下になったか否かを判断する。具体的には、前記エンジントルクTEやトルクコンバータ30のトルク比τ、自動変速機10の第1速ギヤ段「1st」の変速比、差動歯車装置を含む終減速装置のギヤ比等から推定ドライブシャフトトルクを求め、その推定ドライブシャフトトルクの所定時間内の変動幅、或いは直近の最大値と最小値との差(ピークツーピーク値)等を変動量TDHとして算出し、その変動量TDHが判定値TD1以下か否かを判断する。判定値TD1は、予め一定値が定められても良いが、アクセル操作量Accやエンジントルク等をパラメータとして異なる値が設定されるようにしても良い。自動変速機10に複数の一方向クラッチが設けられ、複数の変速で本制御が実行される場合には、変速の種類に応じて異なる判定値TD1が設定されるようにしても良い。なお、ドライブシャフトトルクの変動量TDHの代りに、ドライブシャフトトルクに対応する前記タービントルクTTの変動量などドライブシャフトトルクに対応して変化する他の物理量の変動量を用いて判断することもできる。
【0052】
そして、上記ステップS7の判断がYESの場合は、ステップS9を実行し、前記ステップS6のロックアップクラッチ32のスリップ係合制御を終了してロックアップクラッチ32を解放する。すなわち、ドライブシャフトトルクの変動量TDHが判定値TD1以下になれば、一方向クラッチF1の係合に伴う駆動トルク変動を抑制するためのロックアップクラッチ32のスリップ係合制御を継続する必要はないため、直ちにロックアップクラッチ32を解放することにより、ロックアップクラッチ32の係合に起因するこもり音の発生やドラビリの悪化を必要最小限に抑制するのである。図9の時間t4 は、ドライブシャフトトルクの変動量TDHが判定値TD1以下になってステップS7の判断がYESとなった時間であり、ロックアップクラッチ32の係合圧が所定の勾配で徐々に低下させられてロックアップクラッチ32が解放される。
【0053】
上記ステップS7の判断がNOの場合、すなわちドライブシャフトトルクの変動量TDHが大きくてTDH>TD1の場合は、続いてステップS8を実行する。ステップS8では、車速Vの上昇或いはアクセル操作量Accの減少などで第1速ギヤ段「1st」から第2速ギヤ段「2nd」ヘアップシフトする1→2変速指令が前記変速制御手段108から出力されたか否かを判断する。1→2変速指令が出力された場合は、第2速ギヤ段「2nd」への変速に伴って一方向クラッチF1が空転状態とされるため、これ以上ステップS6のロックアップクラッチ係合制御を行う必要はなく、直ちにステップS9を実行してロックアップクラッチ32の係合制御を終了するが、1→2変速指令が出力されていない場合、すなわち第1速ギヤ段「1st」のままの場合には、前記ステップS6以下を繰り返し実行してロックアップクラッチ32のスリップ係合制御を継続する。
【0054】
このように、本実施例のロックアップクラッチ制御装置においては、一方向クラッチF1が空転状態から係合状態とされる2→1ダウンシフト時等に、一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段120によりステップS2でロックアップクラッチ32が強係合状態とされるため、そのロックアップクラッチ32を介して動力伝達が行われることによりタービン回転速度NTが速やかに上昇させられ、一方向クラッチF1の係合所要時間すなわち2→1ダウンシフトの変速所要時間が短縮される。これにより、コースト走行状態からの再加速時等の応答性(レスポンス)が向上するとともに、一方向クラッチF1の係合直前にはステップS4でロックアップクラッチ32が弱係合状態とされ、且つ一方向クラッチF1の係合後にはステップS6でドライブシャフトトルクの変動が抑制されるようにロックアップクラッチ32の係合圧が制御されるため、一方向クラッチF1の係合時のショックや係合に伴って動力伝達が行われる際のトルク変動が適切に抑制される。すなわち、一方向クラッチF1の係合時のショックや係合に伴って動力伝達が行われる際のトルク変動を抑制しつつ、コースト走行状態からの再加速時等の応答性(レスポンス)を向上させることができるのである。
【0055】
ここで、本実施例では、一方向クラッチF1が係合状態とされた後にドライブシャフトトルクの変動量TDHが所定の判定値TD1以下となった場合には、ステップS7の判断がYESとなってステップS9でロックアップクラッチ32の係合制御が終了させられるため、一方向クラッチF1の係合に伴って動力伝達が行われる際のトルク変動をロックアップクラッチ32のスリップ係合制御で適切に抑制しつつ、そのロックアップクラッチ32の係合に起因するこもり音の発生やドラビリの悪化が必要最小限に抑制される。
【0056】
また、本実施例では、一方向クラッチF1が空転する第2速ギヤ段「2nd」以上のギヤ段から一方向クラッチF1が係合させられる第1速ギヤ段「1st」へのダウンシフト時、或いは第1速ギヤ段「1st」において一方向クラッチF1が空転する非駆動状態から駆動状態へ変化して一方向クラッチF1が係合状態とされる場合に、ステップS2以下を実行してロックアップクラッチ32を所定の係合状態とするが、そのロックアップクラッチ32の係合制御中に第1速ギヤ段「1st」から第2速ギヤ段「2nd」ヘアップシフトする1→2変速指令が出力された場合には、ステップS8の判断がYESとなって直ちにステップS9が実行され、ロックアップクラッチ32の係合制御が終了させられるため、無駄にロックアップクラッチ32の係合制御が継続されて、こもり音が発生したりドラビリが悪化したりすることが防止される。
【0057】
なお、上記実施例では係合直前弱係合制御手段124を備えていたが、図10の一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段140のように係合直前弱係合制御手段124を省略し、代りにトルク変動抑制係合制御手段126によるロックアップクラッチ32のスリップ係合制御を行うようにしても良い。すなわち、図11のフローチャートに示すように、ステップS3で一方向クラッチF1の係合直前である旨の判断が為されたら、ステップS4−1でトルク変動抑制係合制御手段126により前記ステップS6と同様にドライブシャフトトルクの変動が抑制されるようにトルクコンバータ32の速度比e等に応じてロックアップクラッチ32の係合圧を制御するのである。また、一方向クラッチF1が係合状態になったか否かを判断するステップS5の判断がNOの場合、すなわち一方向クラッチF1が未だ空転状態の場合には、続いて前記ステップS8を実行し、1→2変速指令が出力されたか否かを判断するとともに、そのステップS8の判断がNOの場合には上記ステップS4−1以下を繰り返し実行する。すなわち、一方向クラッチF1の係合直前にステップS3の判断がYESになったら、トルク変動抑制係合制御手段126によるロックアップクラッチ32のスリップ係合制御を開始し、一方向クラッチF1の係合後もそのままトルク変動を抑制するスリップ係合制御を継続して行い、ステップS7またはS8の判断がYESになったらステップS9でそのスリップ係合制御を終了するのである。本実施例においても、実質的に前記実施例と同様の作用効果が得られる。この実施例では、ステップS5、S7〜S9がロックアップクラッチ係合制御終了判定手段132に相当する。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明が好適に適用される車両用駆動装置を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置が備えている自動変速機において複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。
【図3】図1の車両用駆動装置を制御するために備えられた電子制御装置に入力される信号およびその電子制御装置から出力される信号を例示する図である。
【図4】図1の車両用駆動装置に備えられた油圧制御回路のうちロックアップクラッチ制御に関係する部分を示す回路図である。
【図5】図4の電子制御装置が備えている制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図6】図5の一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段等により一方向クラッチの係合時に実施されるロックアップクラッチの係合制御を具体的に説明するフローチャートである。
【図7】図6のステップS3で一方向クラッチが係合状態となるまでの係合所要時間Tcを求める際に用いられる関係の一例で、変速開始からの経過時間とタービン回転速度との関係を示す図である。
【図8】図6のステップS6で速度比eに応じてロックアップクラッチの係合圧を制御する際に用いられるマップの一例で、速度比eとロックアップクラッチ圧(係合圧)との関係を示す図である。
【図9】一方向クラッチが空転状態から係合状態とされる際に図6のフローチャートに従ってロックアップクラッチの係合制御が行われた場合の各部の作動状態の変化を模式的に示すタイムチャートの一例である。
【図10】本発明の他の実施例を説明する図で、図5に対応する機能ブロック線図である。
【図11】図10の一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段等により一方向クラッチの係合時に実施されるロックアップクラッチの係合制御を具体的に説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
8:車両用駆動装置 10:自動変速機 30:トルクコンバータ 32:ロックアップクラッチ 34:電子制御装置 120、140:一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段 126:トルク変動抑制スリップ制御手段 132:ロックアップクラッチ係合制御終了判定手段 F1:一方向クラッチ C1、C2:クラッチ(係合要素) B1〜B3:ブレーキ(係合要素) TDH:ドライブシャフトトルクの変動量 TD1:判定値(所定値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向の相対回転に関して係合状態とされるが逆方向の相対回転に関して空転状態とされる一方向クラッチと、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、を動力伝達経路に備えている車両用駆動装置の前記ロックアップクラッチの制御装置であって、
前記一方向クラッチが空転状態から係合状態とされる際に前記ロックアップクラッチを所定の係合状態とする一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段と、
前記一方向クラッチが係合状態とされた後にドライブシャフトトルクまたは該ドライブシャフトトルクに対応して変化する所定の物理量の変動量が所定値以下となった場合に、前記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段による前記ロックアップクラッチの係合制御を終了させるロックアップクラッチ係合制御終了判定手段と、
を有することを特徴とするロックアップクラッチ制御装置。
【請求項2】
前記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段は、前記ドライブシャフトトルクの変動を抑制するように前記ロックアップクラッチのスリップ状態の係合圧を制御するトルク変動抑制スリップ制御手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のロックアップクラッチ制御装置。
【請求項3】
複数の係合要素を有し、該複数の係合要素および前記一方向クラッチの選択的な係合により複数のギヤ段が成立させられる自動変速機を備えており、
前記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段は、前記一方向クラッチが空転状態となる一方向クラッチ空転ギヤ段から該一方向クラッチの係合により成立させられる一方向クラッチ係合ギヤ段への変速時、または該一方向クラッチ係合ギヤ段で該一方向クラッチが空転状態となる非駆動状態から駆動状態へ変化して該一方向クラッチが係合状態とされる際に、前記ロックアップクラッチを所定の係合状態とする一方、
前記ロックアップクラッチ係合制御終了判定手段は、前記一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段による前記ロックアップクラッチの係合制御中に前記一方向クラッチ係合ギヤ段から前記一方向クラッチ空転ギヤ段への変速指令が出力された場合には、直ちに該一方向クラッチ係合時ロックアップ制御手段による該ロックアップクラッチの係合制御を終了させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のロックアップクラッチ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−293791(P2009−293791A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151119(P2008−151119)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】