説明

ロック構造

【課題】雌雄ロック部を結合するロック構造において、雌雄ロック部の位置が外観できずにブラインド作業となる場合に簡単確実に位置合わせしてロック結合できるようにする。
【解決手段】第1部品の雌ロック部10は、被係止爪と、該被係止爪の両側に空隙をあけて対向配置された断面L形状の一対のメスガイドレール部と、該一対のメスガイドレール部の前記雌ロック部の挿入端側先端から互いに離反する方向へ傾斜させた誘い込み部13A、13Bとを備え、第2部品の雄ロック部は、前記一対のメスガイドレール部にそれぞれ挿入してスライドさせる一対のオスレール部と、該一対のオスレール部の突出端面間に連結した基板と、該基板に溝を介して設けた可撓片と、該可撓片に突設した係止爪を備え、前記第1部品上に第2部品を配置した状態で外観できなくなる前記雄ロック部のオスレール部を前記雌ロック部の誘い込み部に当接させて、該オスレール部を前記メスガイドレール部に誘い込ませる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車搭載部品のロック構造に関し、詳しくは、雌雄ロック部の合わせ位置が外観できずにブラインド作業となる際に、簡単確実に雌雄ロック部の位置合わせできるようにしてロック作業性を高めるものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載する部品は非常に多数であり、かつ、ロック結合される部品も多い。例えば、ジャンクションボックスのケース本体と蓋とは、ケース本体内に所要の回路部材を収容した後に蓋を被せ、ケース本体の周壁の外面に設けた雌ロック部に蓋周壁に設けた雄ロック部をスライドさせてロック結合している。また、自動車に配索するワイヤハーネスに外装するプロテクタ内にコネタクタをロック結合する場合もある。
【0003】
例えば、図6(A)に示すプロテクタ100では底壁内面101に設けた雌ロック部102に、コネクタ110のハウジング111の下面に設けた雄ロック部112をロック結合して取り付けている。
具体的には、プロテクタ100の底壁内面101に設ける雌ロック部102は左右一対の断面L形状のメスガイドレール部103A、103Bの間に断面三角形状の被係止爪104を突設している。一方、コネクタ110のハウジング111の下面に設ける雄ロック部112はメスガイドレール103A、103Bにそれぞれ内嵌する左右一対のオスレール部113A、113Bを備え、該オスレース部113A、113Bの間に前記被係止爪104と係止する係止爪114を突設した可撓片115を設けている。
【0004】
前記プロテクタ100の底壁上にコネタクタ110を固定する際、プロテクタ底壁上の雌ロック部102にコネクタ110のハウジング111の下面の雄ロック部112をロック結合する作業が必要となる。その際、まず、図6(B)に示すように、プロテクタ100側の雌ロック部102のメスガイドレール部103A、103Bの先端にコネクタ110側の雄ロック部112のオスレール部113A、113Bの挿入側先端を位置合わせしてスライドしていく必要がある。
しかしながら、その際、図6(C)に示すように、プロテクタ100側のメスガイドレール部103A、103Bとコネクタ110側のオスレール部113A、113Bはコネクタ110のハウジング111の外壁に隠れてしまい、作業者からは見えない位置になりブラインド作業となる。そのため、ロック結合時に、図6(D)に示すように、メスガイドレール部に対してオスレール部の位置がずれやすく、その位置合わせに時間がかかり、ロック結合作業性が非常に悪くなる問題がある。
【0005】
従来、この種のロック構造として、特開2007−188820号公報(特許文献1)において、図7(A)に示すように、コネクタ150の設ける雌ロック部の左右一対の断面L形状のメススライドレール151A、151Bの横壁の一部を切り欠いて断面I字型152A、152Bとすることにより脆弱部Sを設けている。該ロック構造は、図7(B)に示すように、リサイクルのためにロック結合したコネクタ150を取り外したい時に、コネクタ150を捩ると脆弱部Sが撓むことでロック結合した相手方の部品160のオスレール部161A、161Bから外れることによりコネクタ150を取り外せるようにしている。
しかしながら、前記特許文献1のロック構造は本発明と課題が相違するものであり、ロック結合作業時において、メスガイドレール部へオスレール部を位置合わせする作業がブラインド作業となる場合には、ロック作業性が非常に悪くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−188820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、雌雄ロック部をロック結合する際、左右一対のメスガイドレールに左右一対のオスレールを挿入する作業がブラインド作業となる場合に、簡単確実にメスガイドレールにオスレールを位置合わせしてロック結合作業となるロック構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、第1部品の表面に突設した雌ロック部に第2部品の裏面から突設した雄ロック部をスライド挿入させて結合し、第1部品上に第2部品を搭載固定する自動車搭載部品のロック構造であって、
前記第1部品の雌ロック部は、被係止爪と、該被係止爪の両側に空隙をあけて対向配置された断面L形状の一対のメスガイドレール部と、該一対のメスガイドレール部の前記雌ロック部の挿入端側先端から互いに離反する方向へ傾斜させた誘い込み部とを備え、
前記第2部品の雄ロック部は、前記一対のメスガイドレール部にそれぞれ挿入してスライドさせる一対のオスレール部と、該一対のオスレール部の突出端面間に連結した基板と、該基板に溝を介して設けた可撓片と、該可撓片に突設した係止爪を備え、
前記第1部品上に第2部品を配置した状態で外観できなくなる前記雄ロック部のオスレール部を前記雌ロック部の誘い込み部に当接させて、該オスレール部を前記メスガイドレール部に誘い込ませる構成としている自動車搭載部品のロック構造を提供している。
【0009】
前記のように、ロック結合時に雌雄ロック部が外観できなくなりブラインド作業となるが、雌ロック部にメスガイドレール部の挿入側先端に傾斜して広がる誘い込み部を連続して設けているため、雄ロック部のオスレール部の位置が多少ずれても、メスガイドレール部側へスライドするにつれて誘い込み部にオスレール部の先端が当接し、誘い込み部に沿ってオスレール部の挿入方向が矯正され、メスガイドレール部の挿入側先端に達する位置で、オスレール部とメスガイドレール部とを正確に位置合わせすることができる。このように、ブラインド作業となるメスガイドレール部に対するオスレール部の位置合わせ作業を簡単確実に行え、ロック作業の効率化を図ることができる。
【0010】
左右一対の前記メスガイドレール部の挿入側先端に連続して設ける左右一対の前記誘い込み部は左右の開き角度を70度〜110度とすることが好ましい。
また、誘い込み部は断面L形状の縦壁の先端に連続する縦壁で形成し、誘い込み部の先端側の突出高さを低くしてもよい。
【0011】
自動車搭載部品は非常に多数であるため、ロック作業の効率化が求められ、よって、本発明は自動車搭載部品のロック構造としている。
特に、前記図5に示すような、自動車に配索するワイヤハーネスを挿通するプロテクタの底壁上面に前記雌ロック部を設け、該底壁上面に固定するコネクタのハウジング下面に雄ロック部を設けている場合はロック結合作業はブラインド作業となり、作業時間がかかり作業性が悪い問題があったため、本発明は好適に用いられる。
【発明の効果】
【0012】
前記のように、ロック結合作業がブラインド作業となり、雌ロック部のメスガイドレール部に雄ロック部のオスレール部の位置合わせが困難となるが、メスガイドレール部の挿入側先端に傾斜して広がる誘い込み部を設けているため、オスレール部は誘い込み部に誘導されて自動的にメスガイドレール部と位置合わせされる。よって、メスガイドレール部にオスレール部をスムーズに挿入でき、雌ロック部に設けた被係止爪に雄ロック部に設けた係止爪を係止して正確にロック結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のプロテクタにコネクタを固定した状態を示す斜視図である。
【図2】プロテクタに設けた雌ロック部を示す斜視図である。
【図3】(A)はコネクタに設けた雄ロック部を示す斜視図、(B)は雄ロック部の拡大図である。
【図4】ロック結合時の斜視図である。
【図5】(A)(B)は位置ずれ時の矯正工程を示す図面である。
【図6】(A)〜(D)は従来例を示す図面である。
【図7】(A)(B)は他の従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5に示すように、本実施形態では、自動車搭載部品であるプロテクタ1にコネクタ2をロック結合するロック構造に適用している。即ち、プロテクタ1が雌ロック部10を設ける第1部品であり、コネクタ2が雄ロック部20を設ける第2部品である。これら第1部品のプロテクタ1および第2部品のコネクタ2は樹脂成形品からなる。
なお、プロテクタ1には、ワイヤハーネスを収納した状態で、蓋(図示せず)が取り付けられ、前記コネクタ2を取り付ける部分は前記蓋に開口を設けている。
【0015】
前記プロテクタ1は底壁1aと両側壁1bを備え、該底壁1aと両側壁1bに囲まれた空間にワイヤハーネスW/HをL字状に配索するものである。このワイヤハーネスW/HのL字状の配索経路に沿った一部に、底壁1aを側方に突出させてコネクタ固定部分1xを設けている。このコネクタ固定部分1xを構成するプロテクタの底壁1aの上面に雌ロック部10を突設している。
【0016】
前記プロテクタ1のコネクタ固定部分1xの底壁1a上に搭載してロック固定する前記コネクタ2のハウジング21の下面に前記雄ロック部20を突設している。
【0017】
前記プロテクタ1の底壁1aの上面に突設する雌ロック部10は、図2に示すように、左右一対のメスガイドレール部11A、11Bと、該メスガイドレール部11A、11Bの間に設けた被係止爪12と、メスガイドレール部11A、11Bの一端に連続する誘い込み部13A、13Bとからなる。
【0018】
メスガイドレール部11A、11Bは底壁1aの上面から突出する縦壁11aの先端に横壁11bを連結し、横壁11bを互いに近接方向に突設している。これら左右のメスガイドレール部11Aと11Bとの間に空間をあけて設ける前記被係止爪12は断面略三角形状としている。
【0019】
前記誘い込み部13A、13Bはメスガイドレール部11A、11Bの一端側の縦壁11aに連続させて、互いに開き方向に傾斜させて延在している。該メスガイドレール部11Aと11Bとの開き角度θは70〜110度としている。
また、誘い込み部13A、13Bの高さはメスガイドレール部11A、11Bとの連続部を除いて、メスガイドレール部の縦壁11aより低くしている。
【0020】
前記コネクタ2はジョイントコネクタからなり、該ジョイントコネクタにプロテクタ1内に挿通するワイヤハーネスW/Hの一部の電線端末に接続した端子を挿入してジョイントしている。
該コネクタ2のハウジング21の下面に突設した雄ロック部20は、前記図6(A)に示す従来例と同様であり、前記一対のメスガイドレール部11A、11Bにそれぞれ挿入してスライドさせるオスレール部22A、22Bを備えている。該オスレール部22A、22Bはハウジング21から突出する縦壁22aと該縦壁22aより互いに離反する外方へ突設した横壁22bを有する断面L形状とし、かつ、縦壁22aの突出端面間に基板23を設け、該基板23をハウジング21の下面から縦壁22aを介して突設した下端スライド板としている。
【0021】
前記基板23には挿入側の先端から溝24A、24Bを切り込み、オスレール部22Aと22Bとの間に可撓片25を設けている。該可撓片25に係止爪26を突設している。さらに、オスレール部22A、22Bおよび基板23の他端側にストッパ壁27を設けている。
【0022】
次に、前記プロテクタ1にコネクタ2をロック結合する手順について説明する。
プロテクタ1には、まず、ワイヤハーネスW/HをL字状に挿通させる。其の際、プロテクタ1のコネクタ固定部分1xにはワイヤハーネスW/Hは挿通していない。
前記ワイヤハーネスW/Hを構成する電線群の一部の電線に接続したコネクタ2をコネクタ固定部分1xへ引き出す。
【0023】
次に、コネクタ2のハウジング21の下面の雄ロック部20をプロテクタ1の底壁上面の雌ロック部10とロック結合して、コネクタ2をプロテクタ1の底壁1a上に搭載するが、其の際、コネクタ2のハウジング21により、雌ロック部10と雄ロック部20とのロック位置が見えなくなりロック作業はブラインド作業となる。
【0024】
該ブラインド作業は、図4に示すように、コネクタ2の雄ロック部20の下端の基板23をプロテクタ底壁1aの表面に当接させ、該コネクタ2の雄ロック部20のオスレール部22A、22Bをプロテクタ底壁1aの雌ロック部10の誘い込み部13A、13Bの先端側に位置させる。その際、誘い込み部13A、13Bの先端側の間隔は広いため、オスレール部22A、22Bを誘い込み部13Aと13Bの間に位置させることができる。
【0025】
オスレール部22A、22Bの位置がメスガイドレール部11A、11Bの位置と同一線上に位置せずに、図5(A)に示すように、左右いずれか一方に位置ずれしている場合、オスレール部22A、22Bを誘い込み部13A、13Bの間に挿入していくと、オスレール部22A、22Bのいずれか一方の挿入側先端の横壁22bが、図5(B)に示すように、誘い込み部13A、13Bのいずれか一方に接触する。該接触させながらオスレール部22Aまたは22Bを挿入していくと、誘い込み部13Aまたは13Bにより位置ずれが矯正される方向へとオスレール部22Aまたは22Bが誘導される。これにより、メスガイドレール部11A、11Bの先端とオスレール部22A、22Bが接触する位置では、自動的に正確に位置合わせされている。
【0026】
メスガイドレール部11A、11Bにオスレール部22A、22Bがそれぞれ挿入した後は、オスレール部22A、22Bはメスガイドレール部11A、11Bに沿って移動し、係止爪26が被係止爪12と接触すると、可撓片25が撓んで係止爪26は被係止爪12を乗り越え係止爪26と係止してロック結合される。
【0027】
このように、ブラインド作業となるプロテクタ底壁上へのコネクタのロック作業を、プロテクタ底壁上の雌ロック部20に誘い込み部13A、13Bを設けていることにより、簡単確実に行うことができる。よって、従来必要とされた雌ロック部のメスガイドレール部への雄ロック部のオスレール部の位置合わせ確認作業が不要となり、ロック作業の迅速化を図ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 プロテクタ
1a 底壁
1x コネクタ固定部分
2 コネクタ
10 雌ロック部
11A、11B メスガイドレール部
12 被係止爪
13A、13B 誘い込み部
20 雄ロック部
21 ハウジング
22A、22B オスレール部
23 基板
25 可撓片
26 係止爪
W/H ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品の表面に突設した雌ロック部に第2部品の裏面から突設した雄ロック部をスライド挿入させて結合し、第1部品上に第2部品を搭載固定する自動車搭載部品のロック構造であって、
前記第1部品の雌ロック部は、被係止爪と、該被係止爪の両側に空隙をあけて対向配置された断面L形状の一対のメスガイドレール部と、該一対のメスガイドレール部の前記雌ロック部の挿入端側先端から互いに離反する方向へ傾斜させた誘い込み部とを備え、
前記第2部品の雄ロック部は、前記一対のメスガイドレール部にそれぞれ挿入してスライドさせる一対のオスレール部と、該一対のオスレール部の突出端面間に連結した基板と、該基板に溝を介して設けた可撓片と、該可撓片に突設した係止爪を備え、
前記第1部品上に第2部品を配置した状態で外観できなくなる前記雄ロック部のオスレール部を前記雌ロック部の誘い込み部に当接させて、該オスレール部を前記メスガイドレール部に誘い込ませる構成としている自動車搭載部品のロック構造。
【請求項2】
自動車に配索するワイヤハーネスを挿通するプロテクタの底壁上面に前記雌ロック部を設け、該底壁上面に固定するコネクタのハウジング下面に前記雄ロック部を設けている請求項1に記載の自動車搭載部品のロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−108461(P2011−108461A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261311(P2009−261311)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】