説明

ロドコッカスからのニトリルヒドラターゼ

本発明は、ニトリルヒドラターゼの活性、この酵素を活性化するヘルパータンパク質P15Kの活性およびコバルトトランスポータの活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するロドコッカスからのポリヌクレオチドクラスタ、前記蛋白質をコードするヌクレオチド配列が増強されて存在する形質転換された微生物およびアミドをニトリルから製造するための形質転換された前記微生物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルヒドラターゼの活性、この酵素を活性化するヘルパータンパク質P15Kの活性およびコバルトトランスポータの活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するロドコッカスからのポリヌクレオチドクラスタ、このポリヌクレオチドクラスタで形質転換された、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列が増強された量で存在する微生物およびアミドをニトリルから製造するための形質転換された前記微生物の使用に関する。
【0002】
数多くのニトリルヒドラターゼは、既に刊行物中に記載されている(Synthetic applications of nitrilr-converting enzymes;Martinkova, Ludmila; Mylerova, Veronika; Current Organic Chemistry (2003), 7(13), 1279-1295)。毎年数千トン規模のアクリルアミドの製造のために、ニトリルヒドラターゼは、既に1983年以降使用されている。この生体触媒法は、化学的方法と比較して競争能力を有することが証明された(Enzymic synthesis of acrylamide: a success story not yet over; Kobayashi, Michihiko; Nagasawa, Toru; Yamada, Trends in Biotechnology (1992), 10(11), 402-408)。
【0003】
アクリルニトリルの変換に使用されてよいニトリルヒドラターゼと共に、例えば特にメタクリルニトリルの変換に好適であるものも記載された(Pseudonocardia thermophilaのニトリルヒドラターゼおよび遺伝子のコード化およびニトリルをアミドに変換するための酵素の製造(欧州特許第790310号明細書)、3−シアノピリジン(ロドコッカスのニトリルヒドラターゼを用いてのアミドの製造方法)(WO 2002055670)または2−ヒドロキシニトリル、例えば2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル(ロドコッカスのニトリルヒドラターゼおよびアミドの製造における該酵素の使用)(WO 2002070717)および相応するα−ヒドロキシアミド、酸または酸塩へのα−ヒドロキシニトリルの酵素変換(WO 9832872))。これに対して、2−アミノニトリルが効果的に変換されうるようなニトリルヒドラターゼは、これまで公知ではなかった。ロドコッカスsp. Cr4からのニトリルヒドラターゼは、例えば2−ヒドロキシニトリルを高い活性で変換するが、しかし、簡単な2−アミノニトリル、例えばアミノアセトニトリルを変換することはない(WO 2002070717)。
【0004】
アミノニトリルの相応するアミドへの酵素変換は、アミノ酸への魅力的な合成法の可能性を与えてくれる。それというのも、2−アミノアミドは、簡単な方法で鹸化されうるからである(WO 2001060789)。この方法は、温和な条件下で極めて高い選択度で、化学的加水分解の際に生じる塩のような副生成物の形成なしに進行する。
【0005】
代替的に、アミドとアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物とを反応させて、相応する酸の塩に変えることもできる。この方法は、水酸化カルシウムを使用する場合には、4−メチルチオ−α−ヒドロキシブチルアミド(MHA−アミド)の変換のために特に好ましい。それというのも、カルシウム−MHAはメチオニンの代替生成物形として直接使用できるか、またはMHAは飼料添加物として使用することができるからである。
【0006】
しかし、汎用製品、例えばDL−メチオニンを製造するためには、高い活性を有する生体触媒を提供することでは十分でない。活性を高めるために、増幅すべき遺伝子のために1つの発現系が確立されなければならない。例えば、なかんずくエシェリキア コリ(Escherichia coli), バシルス シュードモナス(Bacillus Pseudomonas), ピチア(Pichia), サカロミケス(Sacharomyces) またはアスペルギルス(Aspergillus)において異質発現が提供される。それというのも、これらの微生物は、急速な成長を示し、極めて高い細胞密度を達成し、極めて高い発現レベルを可能にする有効な分子生物学的ツールであるからである(Lee SY (1996) High cell-density culuture of Escherichia coli. TIBTECH 14; 98-105; Riesenberg D, Guthke R (1999) High-cell-density cultivation of microorganisms Appl Microbiol Biotechnol 51:422-430)。
【0007】
少なくとも3つの遺伝子は、ニトリルヒドラターゼの異質発現のために同時発現されなければならないことが公知である。更に、2つの構造遺伝子と共に、相応するヘルパー蛋白は、鉄依存性酵素ならびにコバルト依存性酵素のために増幅されなければならない(Nojiri M. et al., (1999) Functional expression of Nitrile hydratase in Escherichia coli. Requirement of a nitrile hydratase activator and a post-translational modification of a ligand cystein. J Biochem 125: 696-7-4およびOver-production of stereoselective nitrile hydratase from Pseudomonas putida 5B in Escherichia coli: activity requires a novel downstream protein, Wu, S.; Falle, R.D., Payne, M.S. Applied Microbiology and Biotechnology (1997), 48(6), 704-708)。
【0008】
前記の3個の遺伝子と共に、構造遺伝子およびヘルパー蛋白の遺伝子と並んで遺伝子クラスタ中のロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous) J1において、コバルトトランスポータをコードするもう1つの遺伝子が見出された(A novel transporter involved in cobalt uptake, Komeda, Hidenobu et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (1007), 94(1), 36-41)。ロドコッカス中の過剰発現ならびにE.coli 中の過剰発現は、培地からのCo2+イオンの高められた吸収性を生じる。更に、3個の別のタンパク質と一緒のコバルトトランスポータの同時発現の場合には、構造遺伝子およびヘルパー蛋白の単独発現と比較して、よりいっそう低いCo濃度の際に同じニトリルヒドラターゼ活性を達成しうることが示された。しかし、ロドコッカス中での前記効果は、コメダ他(Komeda et al.)によれば、42μM未満の場合にのみ起こる。
【0009】
欧州特許第0362829号明細書の記載から、コバルト塩の存在でのロドコッカス・ロドクラウスの発酵は、公知である。
【0010】
本発明の課題は、殊にα−アミノニトリルをアミドに変換する、高い活性を有するニトリルヒドラターゼを入手可能にすることである。
【0011】
本発明は、次の対象を含む:
1.アミノ酸配列のそれぞれ少なくとも90%が配列番号2〜5中に含まれているアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する4つのポリペプチドをコードする4つのヌクレオチド配列を有する、ロドコッカス、殊にロドコッカス・ロドクラウスから単離されたポリヌクレオチドクラスタ、この場合ポリペプチドは、α−サブユニットおよびβ−サブユニット、ヘルパータンパク質P15Kおよびコバルトトランスポータからなるニトリルヒドラターゼの活性を有する。
【0012】
2.次のグループから選択されたポリヌクレオチド:
a)ヌクレオチド配列 配列番号1またはこの配列に対する相補的ヌクレオチド配列の位置1〜708からなるポリヌクレオチド、
b)遺伝子コードの退化範囲内のa)からの配列に相応する、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で相補的配列a)またはb)とハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび
d)機能的に中立の同義突然変異を含む、a)、b)またはc)からのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、この場合このポリヌクレオチドは、ニトリルヒドラターゼのβ−サブユニットをコードする。
【0013】
3.次のグループから選択されたポリヌクレオチド:
a)ヌクレオチド配列 配列番号1またはこの配列に対する相補的ヌクレオチド配列の位置710〜1327からなるポリヌクレオチド、
b)遺伝子コードの退化範囲内のa)からの配列に相応する、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で相補的配列a)またはb)とハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび
d)機能的に中立の同義突然変異を含む、a)、b)またはc)からのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、この場合このポリヌクレオチドは、ニトリルヒドラターゼのα−サブユニットをコードする。
【0014】
4.次のグループから選択されたポリヌクレオチド:
a)ヌクレオチド配列 配列番号1またはこの配列に対する相補的ヌクレオチド配列の位置1324〜1737からなるポリヌクレオチド、
b)遺伝子コードの退化範囲内のa)からの配列に相応する、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で相補的配列a)またはb)とハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび
d)機能的に中立の同義突然変異を含む、a)、b)またはc)からのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、この場合このポリヌクレオチドは、ヘルパータンパク質P15Kをコードする。
【0015】
5.次のグループから選択されたポリヌクレオチド:
a)ヌクレオチド配列 配列番号1またはこの配列に対する相補的ヌクレオチド配列の位置2076〜3146からなるポリヌクレオチド、
b)遺伝子コードの退化範囲内のa)からの配列に相応する、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で相補的配列a)またはb)とハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび
d)機能的に中立の同義突然変異を含む、a)、b)またはc)からのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、この場合このポリヌクレオチドは、コバルトトランスポータの活性を有するタンパク質をコードする。
【0016】
6)アミノ酸配列 配列番号2および配列番号3を有する、2)または3)に記載のポリペプチド、この場合このポリペプチドは、ニトリルヒドラターゼの活性を有する。
【0017】
7)アミノ酸配列 配列番号6を有する4)に記載のポリペプチド、この場合このポリペプチドは、ヘルパータンパク質P15Kの活性を有する。
【0018】
8)アミノ酸配列 配列番号5を有する5)に記載のポリペプチド、この場合このポリペプチドは、コバルトトランスポータの活性を有する。
【0019】
9)ヌクレオチド配列 配列番号1またはその相補形からの位置1〜1327内での連続する少なくとも20個のヌクレオチドを含有するプローブまたはプライマー。
【0020】
10)ヌクレオチド配列 配列番号1またはその相補形からの位置1324〜1737内での連続する少なくとも20個のヌクレオチドを含有するプローブまたはプライマー。
【0021】
11)ヌクレオチド配列 配列番号1またはその相補形からの位置2076〜3146内での連続する少なくとも20個のヌクレオチドを含有するプローブまたはプライマー。
【0022】
12)ストリンジェントな条件下で配列番号1からの位置1〜1327を有する補体とハイブリダイズする、2)および3)に記載の単離されたポリヌクレオチド、この場合このストリンジェントな条件は、50〜68℃の温度で5×SSC中での洗浄を含む。
【0023】
13)ストリンジェントな条件下で配列番号1からの位置1324〜1737を有する補体とハイブリダイズする、4)に記載の単離されたポリヌクレオチド、この場合このストリンジェントな条件は、50〜68℃の温度で5×SSC中での洗浄を含む。
【0024】
14)ストリンジェントな条件下で配列番号1からの位置2076〜3146を有する補体とハイブリダイズする、5)に記載の単離されたポリヌクレオチド、この場合このストリンジェントな条件は、50〜68℃の温度で5×SSC中での洗浄を含む。
【0025】
15)1)〜5)および12)〜14)から選ばれたかまたは2)、3)および4)または5)に記載された、単数かまたは複数のポリヌクレオチドを含有するベクター。
【0026】
16)配列番号1からの2)、3)および6)に記載の配列を有する、ヌクレオチド配列 配列番号24からなるベクターpUD15、この場合出発コドンgtgは、atgに変化されている。
【0027】
17)5)からの配列を有する、ヌクレオチド配列 配列番号25からなるベクターpUD16、この場合出発コドンttgは、atgに変化されている。
【0028】
18)1)〜5)および12)〜14)に記載のポリヌクレオチドを導入することによって形質転換されたかまたは形質移入された宿主細胞。この宿主細胞は、適当な安定性の発現系を有することが公知である真核生物または原核生物であることができる。
【0029】
19)15)〜17)に記載のベクターを導入することによって形質転換された宿主細胞。
【0030】
20)18)または19)に記載の形質転換された宿主細胞、この場合この宿主細胞は、エンテロバクテリアケアエ(Enterobacteriaceae)科の細菌類、殊にエシェリキア(Escherichia)である。
【0031】
ベクターDNAは、真核細胞又は原核細胞中に、公知の形質転換技術または形質移入技術により導入することができる。
【0032】
"形質転換"、"形質移入"、"接合"及び"遺伝子導入"とは、異種DNAを導入するための先行技術により知られる処置に関連する。
【0033】
同様に、本発明の対象は、ロドコッカス・オパクス、その完全な遺伝子または一部を含む相応する遺伝子バンクと、本発明による配列番号1からのポリヌクレオチドまたはその断片を有するプローブとをハイブリダイズさせることによりスクリーニングし、そして挙げられるポリヌクレオチド配列を単離することによって得られるポリヌクレオチド配列から主になっているポリヌクレオチドである。
【0034】
本発明による配列を有するポリヌクレオチドは、RNA、cDNAおよびDNAのためのハイブリダイゼーションプローブとして、本発明によるタンパク質をコードする核酸あるいはポリヌクレオチドまたは遺伝子を全長で単離するかまたは本発明による遺伝子の配列と高い配列相似性を有する核酸あるいはポリヌクレオチドまたは遺伝子を単離するために適している。また該ポリヌクレオチドは、所謂"アレイ"、"マイクロアレイ"または"DNAチップ"上に適用することができ、そこで相応するポリヌクレオチドまたはそこから導き出される配列、例えばRNAまたはcDNAの検出および決定がなされる。
【0035】
更に、本発明による配列を有するポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で本発明によるタンパク質をコードする遺伝子のDNAを作製することができるプライマーとして適している。
【0036】
プローブまたはプライマーとして使用されるかかるオリゴヌクレオチドは、少なくとも25または30、有利には少なくとも20、殊に有利には少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する。同様に、少なくとも40または50のヌクレオチド長を有するオリゴヌクレオチドが適している。場合によっては、少なくとも100、150、200、250または300のヌクレオチド長を有するオリゴヌクレオチドも適している。
【0037】
"単離された"とは、その自然な環境から切り離されたことを意味する。
【0038】
"ポリヌクレオチド"は、一般に、改変されていないRNAもしくはDNAまたは改変されたRNAもしくはDNAであってよいポリリボヌクレオチドおよびポリデオキシリボヌクレオチドを指す。
【0039】
本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号1によるポリヌクレオチドまたはそこに含まれる断片ならびに、配列番号1によるポリヌクレオチドまたはそこに含まれる断片と少なくとも90%、93%、95%、97%又は99%同一であるものを包含する。
【0040】
"ポリペプチド"とは、ペプチド結合を介して結合した2つ又はそれ以上のアミノ酸を有するペプチドまたはタンパク質を表わす。
【0041】
本発明によるポリペプチドは、配列番号2〜4および配列番号6によるポリペプチドならびに、配列番号2〜4および配列番号6によるポリペプチドと少なくとも91%、95%、97%または99%同一であるものを包含する。
【0042】
ポリヌクレオチド 配列番号1は、異なるタンパク質をコードする多数の個々の配列を有する。α−サブユニットのための配列とヘルパータンパク質P15Kのための配列とは、重なり合っている。
【0043】
ニトリルヒドラターゼのα−サブユニットおよびβ−サブユニットをコードする遺伝子は、活性のタンパク質を得るために共通に発現されなければならない。
【0044】
配列番号2は、ニトリルヒドラターゼ活性を示すタンパク質のβ−サブユニットのアミノ酸配列を示し、配列番号3は、ニトリルヒドラターゼ活性を示すタンパク質のα−サブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0045】
配列番号2は、ヌクレオチド配列 配列番号1の位置1〜708から導き出され、配列番号3は、ヌクレオチド配列 配列番号1の位置710〜1327から導き出される。
【0046】
所謂ヘルパータンパク質P15Kのアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列 配列番号1中の位置1324〜1737に相応する配列番号6中に見出される。
【0047】
ヘルパータンパク質は、ニトリルヒドラターゼを活性化し、前記酵素と一緒にニトリルヒドラターゼを形成する微生物中に存在していなければならない。
【0048】
配列番号4は、コバルトトランスポータのアミノ酸配列を表わし、ヌクレオチド配列 配列番号1の位置2076〜3146から導き出される。
【0049】
配列番号4中の出発コドンttgは、PatentIN Version3.1によってロイシンとして飜訳され、配列番号6中の出発コドンgtgは、バリンとして飜訳される。正しくは、メチオニンと呼ばなければならない。
【0050】
E.coli中のニトリルヒドラターゼ活性は、コバルトトランスポータの同時発現によって数倍上昇されることが見出された。これは、培地中の高いコバルト濃度が使用される場合にも当てはまり、この場合この濃度は、自然に発生する濃度を上廻る程度の大きさである。意外なことに、コバルトトランスポータの同時発現は、培地中の高いコバルト濃度に対して微生物の毒作用を生じるのではなく、僅かに上昇する細胞の選択度だけを生じる。
【0051】
一般に、本発明による遺伝子クラスタを単離するために、最初に前記微生物の遺伝子ライブラリーは、大腸菌(E.coli)中で調製される。遺伝子ライブラリーの調製は、一般に公知の教科書およびマニュアル中に記載されている。例としては、Winnacker: Gene und Klone, Eine Einfuhrung in die Gentechnologie (Verlag Chemie, Weinheim, Deutchland, 1990)またはSambrook等の教科書:Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)が挙げられる。極めてよく知られている遺伝子ライブラリーは、Kohara他(Cell 50, 495-508 (1987))によってλ−ベクター中で調製されたE.coli K−12菌株W3110の遺伝子ライブラリーである。Bathe他(Molecular and General Genetics, 252: 255-265, 1996)は、E.coli K−12菌株NM554(Raleigh他, 1988, Nucleic Acids Research 16: 1563-1575)中でコスミドベクターSuperCos I(Wahl他, 1987, Proceedings of the National Academy of Science USA, 84: 2160-2164)を用いて調製されたC. グルタミクム C.glutamicum ATCC13032の遺伝子ライブラリーを記載している。
【0052】
E.coli中で遺伝子ライブラリーを製作するために、プラスミド、例えばpBR322(Bolivar, Life Science, 25, 807-818 (1979))またはpUC9(Vieira他, 1982, Gene, 19: 259-268)が使用されてもよい。ホストとしては、特に制限欠陥および組換え欠陥を有するようなE.coli菌株が適している。このための1例は、Grant他(Proceedings of the National Academy of Science USA, 87 (1990) 4645-4649)によって記載された菌株DH5αmcrである。引続き、コスミドを用いてクローニングされた長いDNA断片は、例えばSanger他(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 74: 5463-5467, 1977)が記載しているように、配列決定に適したコモンベクターにサブクローニングされることができ、引続き配列決定されることができる。
【0053】
更に、得られたDNA配列は、公知のアルゴリズム又は配列分析プログラムを用いて、例えばStaden(Nucleic Acids Research 14, 217-232(1986))、Marck(Nucleic Acids Research 16, 1829-1836 (1988))によるプログラム、またはButler(Methods of Biochemical Analysis 39, 74-97 (1998))によるGCG−プログラムにより調査されてよい。
【0054】
配列番号1の配列に含まれる配列の遺伝子コードの縮重によって得られたコーディングDNA配列も同様に本発明の要素である。同様に、前記の配列又はその一部とハイブリダイズするDNA配列も本発明の要素である。更に、当業界においては、タンパク質中での保存的アミノ酸置換、例えばグリシンとアラニンの置換またはアスパラギン酸とグルタミン酸の置換は、"同義突然変異"("sense mutations")として知られ、この置換は、タンパク質活性の根本的変化をもたらさず、すなわち機能的に中立である。更に、タンパク質のN−末端および/またはC−末端での変化が、その機能を実質的に損なわずまたはむしろ安定化することができることは、公知である。当業者であれば、これについての記載を、なかんずくBen-Bassat他(Journal of Bacteriology 169:751-757 (1987))で、O'Regan他(Gene 77:237-251 (1989)で、Sahin-Toth他(Protein Sciences 3:240-247 (1994))で、Hochuli他(Bio/Technology 6:1321-1325 (1988))で、および遺伝学と分子生物学の公知の教科書において見出す。
【0055】
最後に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、配列番号1から得られるプライマーを使用して作製されるDNA配列は、本発明の要素である。この種のオリゴヌクレオチドは、典型的には、少なくとも15のヌクレオチドの長さを有する。
【0056】
当業者は、ハイブリダイゼーションによるDNA配列の同定の手引きを、とりわけベーリンガーマンハイムGmbH社のマニュアル"フィルタハイブリダイゼーションのためのDIGシステム利用者手引き(The DIG System Users Guide for Filter Hybridization)"(ドイツ・マンハイム在、1993年)において、そしてLiebl他(International Journal of Systematic Bacteriology (1991) 41: 255-260)で見出す。ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下で実施される、すなわち、プローブと目的配列、即ちそのプローブで処理されるポリヌクレオチドとが少なくとも90%同一である場合にのみハイブリッドが形成される。洗浄工程を含むハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが、バッファー組成の変更、温度の変更および塩濃度の変更によって影響を及ぼされるかあるいは規定されることは、公知である。ハイブリダイゼーション反応は、洗浄工程と比較して相対的に低いストリンジェンシーで実施することが好ましい(Hybaid社ハイブリダイゼーションガイド(Hybaid Hybridisation Guide)、Hybaid有限会社(Hybaid Limited)、英国・テディントン在、1996年)。
【0057】
ハイブリダイゼーション反応のためには、例えば5×SSCバッファーは、約50℃〜68℃の温度で使用されてよい。この場合に、プローブは、プローブの配列に対して70%未満の同一性を有するポリヌクレオチドともハイブリダイズすることができる。かかるハイブリッドは、あまり安定ではなく、そしてストリンジェントな条件下で洗浄によって取り除かれる。このことは、例えば塩濃度を2×SSCにまで低下させ、場合によっては次に0.5×SSCにまで低下させ、その際に温度を約50℃〜68℃に調整することによって達成することができる(フィルタハイブリダイゼーションのためのDIGシステム利用者手引き(The DIG System Users Guide for Filter Hybridization)、ベーリンガーマンハイム社(ドイツ・マンハイム在、1995年))。場合によっては、塩濃度を0.1×SSCにまで低下させることが可能である。ハイブリダイゼーション温度を、約1〜2℃の幅で、50℃から68℃に段階的に上昇させることによって、使用されるプローブの配列と例えば少なくとも90%〜95%の同一性を有するポリヌクレオチド断片を単離することができる。更に、ハイブリダイゼーションについての手引きは、所謂キットの形で市場から入手することができる(例えばロシュ・ディアグノスティクス Roche Diagnostics GmbH社(ドイツ・マンハイム在)のDIG Easy Hyb、カタログ番号1603558)。
【0058】
当業者によれば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いたDNA配列の増幅のための手引きを、特に、Gaitによるマニュアル:Oligonucleotide synthesis: a practical approach (IRL Press, Oxford, UK, 1984)およびNewtonおよびGrahamによる:PCR(Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg, Deutschland, 1994)に見出す。
【0059】
一般的に、良好に発現可能な遺伝子を低コピー数を有するベクター中に、よりいっそう弱い発現能力を有する遺伝子をよりいっそう高いコピー数および/または強力なプロモーターを有するベクター上でクローニングするように行われる。宿主細胞は、前記のベクターで形質転換されており、こうして該細胞は、出発生物と比較して、ニトリルヒドラターゼの形成をコードするヌクレオチド配列またはさらにタンパク質をコードするヌクレオチド配列の付加的なコピーを少なくともそれぞれ有する。
【0060】
コバルトトランスポータをコードする遺伝子は、僅かな範囲内で、例えばα−サブユニットおよびβ−サブユニットおよびヘルパータンパク質P15Kをコードするポリヌクレオチド配列よりも少ないコピー数、少なくとも1つのコピーより少ないコピー数のベクターを用いて発現することは、好ましいことが判明した。また、記載された遺伝子の異なる発現は、異なる強さのプロモーターを使用することによって達成されてもよい。
【0061】
α−サブユニットおよびβ−サブユニットおよびヘルパータンパク質をコードするヌクレオチドは、有利に1つの共通のプロモーターまたは2つの別々のプロモーターと一緒に共通のベクター上にある。
【0062】
こうして製作された形質転換されたかまたは組換えられた微生物は、同様に本発明の一部である。
【0063】
ニトリルヒドラターゼ、ヘルパータンパク質P15Kおよびコバルトトランスポータをコードする遺伝子を微生物において増強することによって、ニトリルヒドラターゼの産生向上がもたらされ、又はニトリルヒドラターゼの活性増大ももたらされることが見い出された。
【0064】
概念"増強"とは、この関連において、微生物中で相応するDNAによってコードされる1種またはそれ以上の酵素の細胞内活性を、例えば単数あるいは複数の遺伝子のコピー数を高めるか、強力なプロモーターを使用するか、または高い活性を有する相応する酵素をコードする遺伝子を使用し、場合によってはこれらの処置を組み合わせて、高めることを示している。
【0065】
過剰発現の達成のために、構造遺伝子の上流にあるプロモーター領域および調節領域またはリボソーム結合部位を突然変異させることができる。同様に、前記構造遺伝子の上流に構成される発現カセットが作用する。誘導可能なプロモーターにより、この発現を、発酵によるアミノ酸産生の過程において上昇させることが付加的に可能である。m−RNAの寿命の延長のための処置により、同様に前記発現は改善される。
【0066】
更に、この酵素タンパク質の崩壊の防止により、同様に前記酵素活性は増強される。前記遺伝子または遺伝子構築物は、様々なコピー数を有するプラスミド中に存在するかまたは染色体に組み込まれ、増幅されてよい。更に、また、当該遺伝子の過剰発現は、この培地組成および培養操作の変更によって達成されてよい。
【0067】
増強手段、殊に過剰の発現により、相応するタンパク質の活性または濃度は、一般に野生型タンパク質の活性または濃度あるいは本発明によるヌクレオチド配列で形質転換された微生物中のタンパク質の活性または濃度に対して少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%または500%、最大1000%までまたは2000%まで上昇される。
【0068】
本発明の別の対象は、互いに適合可能でありかる請求項2、3および4に記載の少なくとも1つのヌクレオチド配列または請求項4に記載のヌクレオチド配列を有する、選択された宿主菌株中で一般に自律的に複製可能なベクターを調製することである。
【0069】
ベクターDNAは、真核細胞または原核細胞中に、公知の形質転換技術により導入されてよい。
【0070】
宿主生物としては、発現系のために挙げられる有利な微生物、例えばシュードモナス、ピチア、種々異なる酵母、サッカロマイセス、アスペルギルスまたはストレプトマイセス科、特に大腸菌が用いられる。同様に、ロドコッカス・ロドクラウス属の微生物が適している。
【0071】
同様に、本発明の対象は、ロドコッカス、殊にロドコッカス・オパクスまたはこの酵素を含有する微生物に由来するニトリルヒドラターゼの製造法であり、この場合には、
a)請求項1から4までのいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を有する過剰発現された遺伝子を有する形質転換された微生物を、Co2+ 0.15〜4mM(mmol/l)、殊に0.3〜4mMの存在で、ニトリルヒドラターゼを形成する条件下で発酵させ、
b)この酵素を微生物中に蓄積させ、
c)この酵素を細胞から単離するかまたは
d)微生物を回収し、酵素を有する休眠細胞として取得する。
【0072】
組換えにより産生されたニトリルヒドラターゼは、乾燥生物体量1mg当たり50Uを上廻る活性を有するα−アミノニトリルを変換する。
【0073】
好ましくは、有利に可溶性塩として発酵液体培地に添加されるCo2+ 0.5〜3.5mM、殊に0.7〜3mMの存在で発酵が実施される。
【0074】
本発明により使用される微生物は、連続的にかまたは非連続的に回分法(バッチ培養)または流加回分法(流加法)または反復した流加回分法(反復流加法)において培養されてよい。公知の培養方法に関する概要は、Chmiel(Bioprozesstechnik 1. Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))による教本またはStorhasによる教本(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))に記載されている。
【0075】
使用すべき培地は、適当な方法で、前記のそれぞれの株の要求を満足しなくてはならない。種々の微生物の培地の記載は、American Society for Bacteriologyの教本"Manual of Methods for General Bacteriology"(Washington D.C., USA, 1981)に含まれている。
【0076】
炭素供給源として、糖及び炭水化物、例えばグルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、澱粉およびセルロース、油脂、例えば大豆油、ヒマワリ油、落花生油およびヤシ脂、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸、アルコール、例えばグリセリンおよびエタノール、および有機酸、例えば酢酸が使用されてよい。これらの物質は単独でかまたは混合物として使用されてよい。
【0077】
窒素供給源として、窒素含有化合物、例えばペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、大豆粉および尿素または無機化合物、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムが使用されてよい。前記窒素供給源は、単独でかまたは混合物として使用されてよい。
【0078】
燐供給源として、燐酸、燐酸水素カリウムまたは燐酸水素二カリウムまたは相応するナトリウム含有塩が使用されてよい。更に、前記培地は、金属塩、例えば硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄を含有しなければならず、これらの金属塩は成長に必要である。最後に、必須栄養成長物質、例えばアミノ酸およびビタミンは、上述の物質と共に使用されてよい。上述の使用物質は、1回のバッチの形で培養物に添加してもよいし、適した方法で、この培養の間に供給されてもよい。
【0079】
前記培養物のpH調節のために、塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、またはアンモニア水、または酸性化合物、例えば燐酸または硫酸は、適当な方法で使用される。泡の発生の制御のために、消泡剤、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルが使用されてよい。プラスミドの安定性の維持のために、前記溶媒には、適した選択的に作用する物質、例えば抗生物質が添加されてよい。好気的条件を維持するために、酸素または酸素含有混合物、例えば空気が前記培養物に導入される。
【0080】
前記培養物の温度は通常は、10℃〜40℃、有利に10℃〜30℃である。この培養は、有利には少なくとも対数増殖期を経過するまで継続される。この目標は通常は、10〜70時間の間に達成される。
【0081】
同様に、本発明の対象は、ニトリルからアミドを酵素により製造する方法であり、この方法は、次の工程を含む:
a)ニトリル基を含有する化合物を、ニトリルヒドラターゼ活性を有するロドコッカス、殊にロドコッカス・オパクス反応させる工程、および
b)場合によってはアミドを分離する工程。
【0082】
1つの変法において、前記細胞は、回収され、洗浄され、緩衝液中に懸濁液としてpH値5〜9、殊に6.8〜7.9で取り込まれる。休眠細胞の細胞濃度は、一般に1〜25%、殊に1.5〜15%に達する(湿分質量/v)。前記細胞は、物理的または化学的方法により、例えばトルエンで、例えばWilms et al., J. Biotechnol., 86巻 (2001), 19-30に記載されているように、この変換すべきニトリル化合物がこの細胞壁を透過し、かつ生じたアミドが流出しうるように透過処理されていてよい。
【0083】
生体触媒(全細胞触媒)は、顕著な安定性を示し、したがって100g/lを上廻る生成物濃度が達成されうる。
【0084】
本発明によるニトリルヒドラターゼを細胞から公知方法により分離し、場合によっては精製し、ニトリルの反応に使用することも可能である。
【0085】
また、本発明の対象は、一般式
【化1】

および R′′−CN (II)
〔式中、
Xは、OH、H、1〜4個のC原子を有するアルキル、アリールまたは殊にNH2を表わし、
Rは、H、1〜12個のC原子を有する飽和アルキル基、分枝鎖状または非分枝鎖状の場合によってはNH2で置換された、1〜12個のC原子を有するアルケニル基、3〜6個のC原子を有する分枝鎖状または非分枝鎖状のシクロアルキル基、アルキルチオ基で置換されたアルキレン基を表わし、この場合アルキルは、C1〜C3基に対応し、アルキレンは、二価のC3〜C8基に対応し、
R′は、Hまたは1〜3個のC原子を有するアルキルを表わし、
R′′は、6〜12個のC原子を有し、場合によっては1または2個のアルキル基(C1〜C3)またはClもしくはFで置換された単核または二核の芳香環、1〜6個のC原子を有するアルキルニトリルを表わす〕で示される化合物を相応するアミドに変換することを特徴とする方法である。
【0086】
次のニトリルが有利に変換される:
飽和モノニトリル:
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、カプロニトリル、
飽和ジニトリル:
マロニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、
芳香族の非置換および置換のモノニトリルおよびジニトリル:
ベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリル、
α−アミノニトリル:
α−アミノプロピオニトリル、α−アミノメチルチオブチロニトリル、α−アミノブチロニトリル、アミノアセトニトリル、天然アミノから導き出された全てのニトリル、α−アミノ−3,3−ジメチルプロピオニトリルおよびα−アミノ−2,3−ジメチルプロピオニトリル、
カルボキシル基を有するニトリル:
シアノ酢酸、
β−アミノニトリル:
3−アミノプロピオニトリル、
不飽和ニトリル:
アクリルニトリル、メタクリルニトリル、シアン化アリル、クロトノンニトリル、
α−ヒドロキシニトリル:
α−ヒドロキシ−n−プロピオニトリル、α−ヒドロキシ−n−ブチロニトリル、α−ヒドロキシ−イソブチロニトリル、α−ヒドロキシ−n−ヘキサノニトリル、α−ヒドロキシ−n−ヘプタノニトリル、α−ヒドロキシ−n−オクチロニトリル、α,γ−ジヒドロキシ−β,β−ジメチルブチロニトリル、アクロレインシアノヒドリン、メタクリルアルデヒドシアノヒドリン、3−クロロラクトニトリル、4−メチルチオ−α−ヒドロキシブチロニトリルおよびα−ヒドロキシ−α−フェニルプロピオニル。
【0087】
変換すべきニトリルの反応溶液中での濃度は、規定の範囲に制限されない。
【0088】
基質による酵素活性の阻害を回避するために、ニトリルの濃度は、一般には、乾燥細胞質量としての生体触媒の量に対して、0.001〜10w/w%、殊に0.1〜2w/w%に維持される。基質は、変換開始時に全体を添加することもできるし、変換の進行中に連続的にかまたは非連続的に添加することもできる。
【0089】
水性反応系中でニトリル化合物の溶解度が低すぎる場合には、溶解補助剤が添加されてよい。
【0090】
しかしながら代替的に、この反応は、水/有機溶剤の二相系中で実施されてもよい。
【0091】
微生物の細胞を酵素活性物質として使用する場合には、使用される細胞の量は、基質量に対して、乾燥細胞質量として有利には0.001〜8w/w%である。
【0092】
細胞物質の乾燥質量は、水分分析装置MA45(Sartorius)を用いて測定される。
【0093】
また、単離された酵素を、一般に知られる技術により固定化し、さらにこの形で使用することも可能である。
【0094】
反応は、一般に、−5℃〜50℃、特に0℃〜30℃の温度および0.1〜100時間の時間で実施される。
【0095】
反応混合物の維持すべきpH値は、酵素活性が損なわれない限りは一定の範囲に制限されていない。変換の後に、形成されたアミドは、反応溶液から公知の記載と同様に分離されかつ精製されてよい。
【0096】
また、本発明の対象は、アミドまたはアミドを含有する溶液を、例えばバイオマスの細胞から分離し、このアミドを、鹸化させて相応する酸に変えるか、またはアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を添加しつつ変換させて、相応の酸の塩に変える方法である。
【0097】
好ましくは、MHA−アミドは水酸化カルシウムで鹸化され、相応するカルシウム塩が単離される。
【0098】
実施例
実施例1
ロドコッカス・オパクスからのニトリルヒドラターゼのクローニング
ロドコッカス・オパクスの染色体DNAを制限酵素PinAI、pStIおよびXmaI(Roche)で消化し、断片を0.8%のアガロースゲル上で分離した。サザンブロット分析を標準法(例えば、Sambrook他, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Habor Laboratory Press, 1989)により正電荷のナイロン膜(Hybond-N+, Amersham)上に実施した。ハイブリダイゼーションをDIGマークプローブを用いて製造業者(Roche)の使用説明書に従って行なった。プローブを変性プライマー1Fおよび1Rを有するPCRによりテンプレートとしてのゲノムDNAを用いて製作した。プライマーは、βーサブユニットの相同領域から導き出されたものであり、この場合この相同領域は、種々のNHアーゼの配列を整列させることによって測定された。これらの配列は、データーベースから得られた。検出された約2.2kbの大きさのPinAI断片を単離するために、PinAIで切断された、2〜2.5kbのDNA断片を分取ゲル電気泳動により精製し、XmaIで切断されたベクターpUC18(プロメガ)中に結紮し、この結紮混合物をE.coli JM109(プロメガ)中に形質転換した。プラスの形質転換体をコロニーハイブリダイゼーションプにより同じプローブで同定した。こうして得られたクローンは、βーサブユニットの遺伝子およびニトリルヒドラターゼのα−サブユニットの遺伝子の大部分を有する2206ntのインサートを含有していた。
【0099】
帰属できなかった配列を得るために、上記方法でプライマー2Fおよび2Rを用いて新しいプローブを製作し、このプローブをクローン化したPinAI断片の3′末端でハイブリダイズした。テンプレートとしてpUC18中でクローン化したPinAI断片を使用した。前記プローブでのハイブリダイズ前に、上記膜から製造業者(Roche)の使用説明書に従って最初に色信号を除去し、ならびに第1のプローブを除去した。前記膜上で、第2のプローブを用いて約2kbの大きさのPstIバンドを検出した。上記の記載と同様に、相応するDNA断片をPstIで開かれたベクターpUC18中でクローン化し、産生物をE.coli JM109中で形質転換し、プラスのクローンをコロニーハイブリダイゼーションにより同定した。PstI断片は、1883ntの大きさであり、ニトリルヒドラターゼのα−サブユニットの遺伝子の(3′−)部分、ヘルパータンパク質P15Kの遺伝子およびコバルトトランスポータの遺伝子の(5′−)部分を含んでいた。
【0100】
コバルトトランスポータ遺伝子の帰属できなかった配列を有するDNA断片をクローン化するために、プライマー3Fおよび3RおよびpUC18中でクローン化した、テンプレートとしてのPstI断片を用いて新しいプローブを製作し、このプローブをクローン化したPstI断片の3′−末端でハイブリダイズした。このプローブを用いて、同様に先に色信号および第2のプローブが除去された同じ膜上で約1.1kbの大きさのXmaIバンドを検出した。相応するDNA断片をXmaIで開かれたベクターpUC18中でクローン化し、産生物をE.coli JM109中で形質転換し、プラスのクローンをコロニーハイブリダイゼーションにより同定した。そのために、プライマー4Fおよび3Rで増幅されたプローブを使用した。XmaI断片は、1747ntの大きさであり、コバルトトランスポータの遺伝子の(3′−)部分を含んでいた。
【0101】
ニトリルヒドラターゼ、ヘルパータンパク質P15Kおよびコバルトトランスポータのα−サブユニットおよびβーサブユニットをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子クラスターの連続配列は、配列番号1に記載されている。
【0102】
実施例2
発現ベクターの構造
構造遺伝子をE.coliのための公知の発現ベクター中でクローン化し、この場合挿入された遺伝子は、ラムノースプロモーターの制御下にある。付加的に、第2のラムノースプロモーターを挿入した。このために、βーサブユニットのための遺伝子を、制限酵素NdeI、BamIおよびHindIIIのための切断個所を挿入するプライマー5Fおよび5Rで増幅させた。第2のラムノースプロモーターを、制限酵素BamHI、NcoIおよびHindIIIのための切断個所を挿入するプライマー6Fおよび6Rで増幅させた。α−サブユニットのための遺伝子を、制限酵素NcoI、KpnIおよびHindIIIのための切断個所を挿入するプライマー7Fおよび7Rで増幅させた。タンパク質P15Kのための遺伝子を、制限酵素KpnIおよびHindIIIのための切断個所を挿入しかつ開始コドンをGTGからATGに変えるプライマー8Fおよび8Rで増幅させた。こうして生成された発現ベクターは、pUD15と呼ばれる。
【0103】
制限地図は、図1に記載されており、配列は、配列番号24に記載されている。
【0104】
コバルトトランスポータのための遺伝子をE.coliのための別の発現ベクターにクローン化し、この場合挿入された遺伝子は、ラムノースプロモーターの制御下にある。このために、コバルトトランスポータをプライマー9Fおよび9Rで増幅させ、制限酵素NdeIおよびHindIIIのための切断個所を挿入し、開始コドンをTTGからATGに変えた。こうして得られた発現ベクターは、pUD16と呼ばれる。
【0105】
制限地図は、図2に記載されており、配列は、配列番号25に記載されている。
【0106】
発現プラスミドを、ドイツ微生物細胞培養コレクションGmbH(DSMZ)で寄託されている大腸菌DSM14459に形質転換した。
【0107】
プライマー
【表1】

【0108】
遺伝子は、セグメント上に位置している:
pUD15:βーサブユニットの遺伝子:nt25〜732,
α−サブユニットの遺伝子:nt949〜1566、
P15Kの遺伝子:nt1592〜2005、
pUD16:コバルトトランスポータの遺伝子:nt25〜1095。
【0109】
実施例3
E.coli DSM14559でのニトリルヒドラターゼの非相同発現
大腸菌DSM14459は、ドイツ連邦共和国特許第10155928号明細書との関連で寄託された。
【0110】
pDU15で形質転換された細胞を、1mMのCoCl2および100μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地(MillerによるLBブイヨン、VWR)中で37℃で振盪しつつ増殖させた。pUD15およびpUD16で形質転換された細胞を同様に成長させるが、しかし、培地は、付加的にクロラムフェニコール50μg/mlを含有していた。その後に、細胞が少なくとも2のOD600を達成した後に、細胞をなお3回同じ培地中に接種した。12〜16時間後に、かかる量の前培養を主培養中に接種し、そのOD600を0.1とした。主培養の培養培地は、前培養の培養培地に相当したが、しかし、付加的に2g/LのL−ラムノースを含有していた。細胞は、22時間後に取得された。
【0111】
実施例4
酵素活性の測定
細胞を、実施例3の記載と同様に増殖させ、遠心分離によって培養培地から分離し、標準的バッファー(50mMの燐酸カリウムバッファー pH7.5)中に再懸濁した。この細胞懸濁液50μlを、標準的バッファー700μlに添加し、反応の開始のために、ニトリルを標準的バッファー中に溶かした200mM溶液250μlと混合した。この場合に、細胞懸濁液中の細胞の濃度は、ニトリルが20℃で10分後に、5〜30%まで変換されるように算定された。20℃で10分後に、半分に濃縮された燐酸20μlを添加することによって反応を停止させ、細胞を遠心分離によって分離した。
【0112】
【表2】

【0113】
1ユニットの活性を、1マイクロモルのメタクリルニトリルが1分間変換してアミドとなる酵素量として定義した。比活性を乾燥生物体量1mg当たりのUで記載する。
【0114】
この乾燥生物体量を水分分析装置MA45(Sartorius)を用いて測定する。
【0115】
実施例5
ニトリルヒドラターゼα−サブユニット、βーサブユニットおよびタンパク質P15Kをコードする遺伝子の同時発現
発現を実施例3の記載と同様に、プラスミドpUD15を含む形質転換された菌株E.coli DSM14459を用いて実施した。この細胞の比活性は、23U/mg BTMであった。
【0116】
実施例6
ニトリルヒドラターゼ、α−サブユニット、βーサブユニット、タンパク質P15Kおよびコバルトトランスポータをコードする遺伝子の同時発現
発現を実施例3の記載と同様に、プラスミドpUD15およびpUD16を含む形質転換された菌株E.coli DSM14459を用いて実施した。この細胞の比活性は、81U/mg BTMであった。
【0117】
実施例7
基質の特異性
種々のニトリルを実施例3の記載と同様にプラスミドpUD15を含む形質転換されたE.coli DSM 14459休眠細胞と反応させた。N−ホルミルバリンニトリルを用いて得られた比活性を100%に等しいものとして設定した。別の活性をこれと比較して記載した。結果は、図3に記載されている。
【0118】
実施例8
Co+2塩の存在での形質転換されたE.coli DSM 14459の成長
プラスミドpUD15のみまたはpUD15およびpUD16を含む形質転換されたE.coli DSM 14459を実施例3の記載と同様に培養した。この場合、培地中のコバルト濃度を0.5mMから2mMへ変えた。24時間後、培地の光学的密度を600nmで測定した。
【0119】
【表3】

【0120】
高いコバルト濃度の場合にも細胞の成長に対する影響は僅かであることを確認することができることが判明した。
【0121】
実施例9
メチオニンニトリルとプラスミドpUD15を含む形質転換されたE.coli DSM 14459休眠細胞との反応
プラスミドpUD15を含むE.coli DSM 14459細胞を実施例3の記載と同様に培養し、遠心分離した。湿量に対して細胞2.8gを50mMの燐酸カルシウム緩衝液pH7.5 47.2ml中に再懸濁させ、メチオニンニトリルを20℃で強力に攪拌しながら連続的に、反応中の濃度が如何なる時でも15g/lを超えないような速度で添加した。pHは、7.5で一定に保持した。反応の追跡は、HPLCを用いて、実施例4の記載と同様に実施した。320分後、ニトリル9.1gは、完全にアミド10.4gに変換されていた。これは、176g/lの濃度に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】プラスミドpUD15を示す制限地図である略図。
【図2】プラスミドpUD16を示す制限地図である略図。
【図3】N−ホルミルバリンニトリルの変換の際の活性と比較した種々のニトリルの変換の際の相対的比活性をグラフで示す略図。
【符号の説明】
【0123】
rhaP ラムノースプロモーター、 β ニトリルヒドラターゼのβーサブユニットの遺伝子、 α ニトリルヒドラターゼのα−サブユニットの遺伝子、 P15K ヘルパータンパク質P15Kの遺伝子、 ori 複製の出所、 bla アンピシリンに耐性の遺伝子(βーラクタマーゼ)、 rhaP ラムノースプロモーター、 CoTrans コバルトトランスポータの遺伝子、 ori 複製の出所、 Cmr クロラムフェニコールに耐性の遺伝子
【0124】

【0125】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列のそれぞれ少なくとも90%が配列番号2〜配列番号5中に含まれているアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する4つのポリペプチドをコードする4つのヌクレオチド配列を有する、ロドコッカス・オパクスから単離されたポリヌクレオチドクラスタであって、この場合ポリペプチドは、α−サブユニットおよびβ−サブユニット、ヘルパータンパク質P15Kおよびコバルトトランスポータからなるニトリルヒドラターゼの活性を有する、前記ポリヌクレオチドクラスタ。
【請求項2】
次のグループ:
a)ヌクレオチド配列 配列番号1またはこの配列に対する相補的ヌクレオチド配列の位置1〜708からなるポリヌクレオチド、
b)遺伝子コードの退化範囲内のa)からの配列に相応する、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で相補的配列a)またはb)とハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび
d)機能的に中立の同義突然変異を含む、a)、b)またはc)からのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドから選択され、この場合このポリヌクレオチドは、ニトリルヒドラターゼのβ−サブユニットをコードする、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
次のグループ:
a)ヌクレオチド配列 配列番号1またはこの配列に対する相補的ヌクレオチド配列の位置710〜1327からなるポリヌクレオチド、
b)遺伝子コードの退化範囲内のa)からの配列に相応する、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で相補的配列a)またはb)とハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび
d)機能的に中立の同義突然変異を含む、a)、b)またはc)からのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドから選択され、この場合このポリヌクレオチドは、ニトリルヒドラターゼのα−サブユニットをコードする、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
次のグループ:
a)ヌクレオチド配列 配列番号1またはこの配列に対する相補的ヌクレオチド配列の位置1324〜1737からなるポリヌクレオチド、
b)遺伝子コードの退化範囲内のa)からの配列に相応する、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で相補的配列a)またはb)とハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび
d)機能的に中立の同義突然変異を含む、a)、b)またはc)からのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドから選択され、この場合このポリヌクレオチドは、補助蛋白P15Kをコード化する、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
次のグループ:
a)ヌクレオチド配列 配列番号1またはこの配列に対する相補的ヌクレオチド配列の位置2076〜3146からなるポリヌクレオチド、
b)遺伝子コードの退化範囲内のa)からの配列に相応する、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
c)ストリンジェントな条件下で相補的配列a)またはb)とハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび
d)機能的に中立の同義突然変異を含む、a)、b)またはc)からのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドから選択され、この場合このポリヌクレオチドは、コバルトトランスポータをコードする、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
アミノ酸配列 配列番号2および配列番号3を有し、この場合このポリペプチドは、ニトリルヒドラターゼの活性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項7】
アミノ酸配列 配列番号4を有し、この場合ポリペプチドは、ヘルパータンパク質P15Kの活性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項8】
アミノ酸配列 配列番号5を有し、この場合このポリペプチドは、コバルトトランスポータの活性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項9】
ヌクレオチド配列 配列番号1またはその相補形からの位置1〜1327内での連続する少なくとも20個のヌクレオチドを含有するプローブまたはプライマー。
【請求項10】
ヌクレオチド配列 配列番号1またはその相補形からの位置1324〜1737内での連続する少なくとも20個のヌクレオチドを含有するプローブまたはプライマー。
【請求項11】
ヌクレオチド配列 配列番号1またはその相補形からの位置2076〜3146内での連続する少なくとも20個のヌクレオチドを含有するプローブまたはプライマー。
【請求項12】
ストリンジェントな条件下で配列番号1からの位置1〜1327を有する補体とハイブリダイズし、この場合このストリンジェントな条件は、50〜68℃の温度で5×SSC中での洗浄を含む、請求項2記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
ストリンジェントな条件下で配列番号1からの位置1324〜1737を有する補体とハイブリダイズし、この場合このストリンジェントな条件は、50〜68℃の温度で5×SSC中での洗浄を含む、請求項4記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
ストリンジェントな条件下で配列番号1からの位置2076〜3146を有する補体とハイブリダイズし、この場合このストリンジェントな条件は、50〜68℃の温度で5×SSC中での洗浄を含む、請求項5記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1から5までのいずれか1項および請求項12から14までのいずれか1項または請求項2、3または4記載または請求項1記載のものから選択された単数または複数のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項16】
ヌクレオチド配列 配列番号23からなるベクターpUD15。
【請求項17】
ヌクレオチド配列 配列番号24からなるベクターpUD16。
【請求項18】
請求項1から5までのいずれか1項または請求項11から14までのいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを導入することによって形質転換されたかまたは形質移入された宿主細胞。
【請求項19】
請求項15から17までのいずれか1項に記載のベクターを導入することによって形質転換された宿主細胞。
【請求項20】
ベクターpUD15およびベクターpUD16を導入することによって形質転換された宿主細胞。
【請求項21】
宿主細胞がエンテロバクテリアケアエ(Enterobacteriaceae)科の細菌類、殊にエシェリキア(Escherichia)である、請求項18または19記載の形質転換された宿主細胞。
【請求項22】
ロドコッカス、殊にロドコッカス・オパクスまたはこの酵素を含有する微生物に由来するニトリルヒドラターゼの製造法において、
a)請求項1から5までのいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を有する過剰発現された遺伝子を有する形質転換された微生物を、Co2+ 0.15〜4mM(mmol/l)の存在で、ニトリルヒドラターゼを形成する条件下で発酵させ、
b)この酵素を微生物中に蓄積させ、
c)この酵素を細胞から単離するかまたは
d)微生物を回収し、酵素を有する休眠細胞として取得することを特徴とする、前記ニトリルヒドラターゼの製造法。
【請求項23】
請求項18から21までのいずれか1項に記載の宿主細胞を使用する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
乾燥生物体量1mg当たり50Uを上廻る比活性を有するα−アミノニトリルを変換する、ロドコッカス・オパクスに由来する組換えにより産生されたニトリルヒドラターゼ。
【請求項25】
ニトリルからアミドを酵素により製造する方法において、次の工程
a)ニトリル基を含有する化合物を、少なくとも90%が配列番号2および配列番号3から公知の配列を同一である、ニトリルヒドラターゼ活性およびアミノ酸配列を有するロドコッカス、殊にロドコッカス・オパクスからの酵素と反応させる工程、および
b)アミドを分離する工程を有することを特徴とする、ニトリルからアミドを酵素により製造する方法。
【請求項26】
精製された酵素および場合によっては固定された酵素を使用する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
酵素を有する休眠細胞を使用する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
一般式
【化1】

および R′′−CN (II)
〔式中、
Xは、OH、H、1〜4個のC原子を有するアルキルまたは殊にNH2を表わし、
Rは、H、1〜12個のC原子を有する飽和アルキル基、分枝鎖状または非分枝鎖状の場合によってはNH2で置換された、1〜12個のC原子を有するアルケニル基、3〜6個のC原子を有する分枝鎖状または非分枝鎖状のシクロアルキル基、アルキルチオ基で置換されたアルキレン基を表わし、この場合アルキルは、C1〜C3基に対応し、アルキレンは、二価のC3〜C8基に対応し、
R′は、Hまたは1〜3個のC原子を有するアルキルを表わし、
R′′は、6〜12個のC原子を有し、場合によっては1または2個のアルキル基(C1〜C3)またはClもしくはFで置換された単核または二核の不飽和環、1〜6個のC原子を有するアルキルニトリルを表わす〕で示される化合物を相応するアミドに変換する、請求項25から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
アミドまたはアミド含有溶液からバイオマスの細胞を分離し、アミドを鹸化させて相応する酸に変える、請求項25から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
アミドもしくはアミド含有溶液からバイオマスの細胞を分離し、アミドをアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物により鹸化させて相応するカルボン酸の塩に変える、請求項25から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
MHA−アミドを水酸化カルシウムで鹸化させ、カルシウム塩を取得する、請求項30記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−529231(P2007−529231A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504280(P2007−504280)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002134
【国際公開番号】WO2005/093080
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】