説明

ロボット、搬送装置、及び電力供給方法

【課題】回動又は摺動自在に支持された移動部に取り付けられた慣性センサーに電力を供給するための、回動又は摺動自在に支持する支持部を経由して基体から移動部に達する電力供給用のケーブルや、発電用の動力を伝達する動力伝達機構などを不要にすることができるロボット、搬送装置、及び電力供給方法を提供する。
【解決手段】ロボット20は、一端に作業端末を支持しもう一端を回動自在に支持されたアーム21と、アームを回動させるための駆動源と、アームに取り付けられておりアームが回動する角速度を検出してアームの角速度情報を出力する慣性センサー32と、アームに取り付けられており慣性センサーに電力を供給する発電装置40と、発電装置で発電した電力を蓄える二次電池52と、を備える。発電装置は、アーム21の運動エネルギーによって駆動される発電機、または太陽電池であり、センサの近傍に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームの先端に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させるロボット、移動部材に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させる搬送装置、及びアームの先端又は移動部材に取り付けられたセンサーに電力を供給する電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アームを回動などさせることによってアームの先端に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させて、当該位置において、端末装置を稼動させるロボットなどの装置が知られている。例えば、把持端末を備え、加工装置に対して被加工部材を給除材する給除材装置や、塗装端末を備えた塗装ロボットや、溶接端末を備えた溶接ロボットなどが知られている。
ロボットを駆動させる際には、ロボットのアームを駆動するモーターなどの駆動源の回転角度を測定し、測定した角度情報に基づいてアームの先端位置などを制御する制御方法が用いられている。しかし、駆動源からアームに駆動力を伝達する伝達機構やアームは剛体ではないことに起因して、伝達機構やアームが変形するために、角度情報に基づいて位置制御されたアームの先端側の位置が必ずしも実際の位置と一致しない場合があった。また、動作時に伝達機構やアームが変形することによって、振動を生ずるという問題があった。これらの問題に対し、アーム先端に慣性センサーを取り付けて先端の動きを測定し、得られた慣性センサーによる角速度情報を制御に用いる方法が考案されている。特許文献1には、慣性センサーの出力信号によってアームの動作を制御することによって、剛性が低い場合でも高精度の位置決めができると共に、振れによる精度低下を防止することができる多関節ロボットの制御方法及び多関節ロボットが開示されている。
【0003】
しかし、慣性センサーをアームの先端に設けるため、慣性センサーを駆動するための電力を供給する必要があるため、ロボットの基体とアームの先端とが電気的に接続されている必要があり、水に濡れる可能性がある装置では不具合が発生する可能性があった。
特許文献2には、アームの先端に発電機を設け、アームを駆動するための動力軸から発電機に至る動力伝達機構を設けることによって、ロボットの基体とアームの先端とを電気的に接続することなく、アームの先端に電力を供給することができる配電工事用ロボットのセンサ用電源供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−9374号公報
【特許文献2】特開2001−233598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された装置においては、慣性センサーをアームの先端に設けるため、慣性センサーを駆動するための電力を、アームを回動させるために変形する接続部分を経由して供給する必要がある。このため、上記した課題以外にも、接続部分では電力供給用のケーブルが屈曲されるため、断線などが発生する可能性があるという課題があった。断線などが発生し難い耐久性に優れるケーブルは、重くなり、体積も大きくなり、装置の小型化を損なう可能性があるという課題がある。また、装置の信頼性を維持するためには、頻繁にメンテナンスを実施する必要があり、メンテナンス費用が増大するという課題もあった。
特許文献2に開示された装置は、アームの先端近くまで達した動力軸が必要であり、そのような動力軸を持たない装置には適用できないという課題があった。アームの先端近くまで達した動力軸を備える装置であっても、動力軸から発電機に至る動力伝達機構を設ける必要があり、複雑な動力伝達機構を設ける必要があるという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかるロボットは、一端に作業端末を支持し、もう一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記アームに取り付けられており、前記アームが回動する角速度を検出して前記アームの角速度情報を出力する慣性センサーと、前記アームに取り付けられており、前記慣性センサーに電力を供給する発電装置と、を備え、前記発電装置は、電力に変換するためのエネルギーを、前記発電装置が配設された位置において取得するエネルギー取得手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかるロボットによれば、発電装置は、電力に変換するためのエネルギーを発電装置が配設された位置において取得するエネルギー取得手段を備えている。これにより、発電装置は、電力に変換するためのエネルギーを、ロボットの基体やアームを経て取得することが不要である。このため、ロボットの基体からアームに達する電力供給用のケーブルや、発電用の動力を伝達する動力伝達機構など、が不要であり、ケーブルや動力伝達機構を備えることで、ロボットの構成が複雑になることを抑制することができる。ケーブルや動力伝達機構の信頼性を確保するためのメンテナンスが不要であり、メンテナンスのための費用を抑制することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかるロボットは、前記エネルギー取得手段が、前記発電装置を構成する部材に作用する慣性力の一部を前記発電装置を構成する部材の運動エネルギーに変換することで、電力に変換するためのエネルギーを取得することが好ましい。
【0010】
このロボットによれば、エネルギー取得手段は、発電装置を構成する部材に作用する慣性力の一部を発電装置を構成する部材の運動エネルギーに変換する。アームが駆動源によって回動させられる際には、アームに取り付けられた発電装置を構成する部材にも慣性力が作用する。したがって、アームが回動させられる際に、部材の運動エネルギーが増加することで、発電装置の固定部に対して当該部材が相対移動している状態を形成することができる。固定部及び部材の一方に磁石を他方にコイルを配置することで、固定部に対して当該部材が相対移動することによって、電力を発生することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかるロボットは、前記エネルギー取得手段が、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させることで、電力に変換するためのエネルギーを取得することが好ましい。
【0012】
このロボットによれば、エネルギー取得手段は、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させる。当該伝導電子を取り出すことで、電力として使用することができる状態にすることできる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかるロボットは、前記発電装置によって発電された電力を蓄積する蓄電装置をさらに備えることが好ましい。
【0014】
このロボットによれば、蓄電装置によって電力を蓄積しておくことができる。これにより、慣性センサーに安定して電力を供給することができる。
【0015】
[適用例5]本適用例にかかる搬送装置は、作業端末を支持し、摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に作用する慣性力を検出して前記移動部に作用する慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記移動部に取り付けられた発電装置と、を備え、前記発電装置は、電力に変換するためのエネルギーを、前記発電装置が配設された位置において取得するエネルギー取得手段を備えることを特徴とする。
【0016】
本適用例にかかる搬送装置によれば、発電装置は、電力に変換するためのエネルギーを発電装置が配設された位置において取得するエネルギー取得手段を備えている。これにより、発電装置は、電力に変換するためのエネルギーを、搬送装置の基体や移動部を経て取得することが不要である。このため、搬送装置の基体から移動部に達する電力供給用のケーブルや、発電用の動力を伝達する動力伝達機構など、が不要であり、ケーブルや動力伝達機構を備えることで、搬送装置の構成が複雑になることを抑制することができる。ケーブルや動力伝達機構の信頼性を確保するためのメンテナンスが不要であり、メンテナンスのための費用を抑制することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる搬送装置は、前記エネルギー取得手段が、前記発電装置を構成する部材に作用する慣性力の一部を前記発電装置を構成する部材の運動エネルギーに変換することで、電力に変換するためのエネルギーを取得することが好ましい。
【0018】
この搬送装置によれば、エネルギー取得手段は、発電装置を構成する部材に作用する慣性力の一部を発電装置を構成する部材の運動エネルギーに変換する。移動部が駆動源によって移動させられる際には、移動部に取り付けられた発電装置を構成する部材にも慣性力が作用する。したがって、移動部が移動させられる際に、部材の運動エネルギーが増加することで、発電装置の固定部に対して当該部材が相対移動している状態を形成することができる。固定部及び部材の一方に磁石を他方にコイルを配置することで、固定部に対して当該部材が相対移動することによって、電力を発生することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる搬送装置は、前記エネルギー取得手段が、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させることで、電力に変換するためのエネルギーを取得することが好ましい。
【0020】
この搬送装置によれば、エネルギー取得手段は、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させる。当該伝導電子を取り出すことで、電力として使用することができる状態にすることができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる搬送装置は、前記発電装置によって発電された電力を蓄積する蓄電装置をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この搬送装置によれば、蓄電装置によって電力を蓄積しておくことができる。これにより、慣性センサーに安定して電力を供給することができる。
【0023】
[適用例9]本適用例にかかる電力供給方法は、回動又は摺動自在に支持された移動部に取り付けられた慣性センサーに電力を供給する電力供給方法であって、前記移動部に取り付けられたエネルギー取得手段によって、電力に変換するためのエネルギーを取得するエネルギー取得工程と、前記エネルギー取得工程において取得したエネルギーを電力に変換することで発電する発電工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
本適用例にかかる電力供給方法によれば、エネルギー取得工程において、移動部に取り付けられたエネルギー取得手段によって、電力に変換するためのエネルギーが取得される。発電工程では、エネルギー取得工程において取得されたエネルギーを電力に変換することで発電する。
これにより、発電工程において電力に変換するためのエネルギーを、回動又は摺動自在に支持された移動部の回動又は摺動自在である支持部を経て取得することが不要である。このため、回動又は摺動自在である支持部を経由して移動部に達する電力供給用のケーブルや、発電用の動力を伝達する動力伝達機構など、が不要であり、ケーブルや動力伝達機構を備えることで、移動部を備える装置の構成が複雑になることを抑制することができる。ケーブルや動力伝達機構の信頼性を確保するためのメンテナンスが不要であり、メンテナンスのための費用を抑制することができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる電力供給方法は、前記エネルギー取得工程では、前記移動部が回動又は摺動される際に前記発電工程を実施する装置を構成する部材に作用する慣性力を、前記発電工程を実施する装置を構成する部材の運動エネルギーに変換することで、電力に変換するためのエネルギーを取得することが好ましい。
【0026】
この電力供給方法によれば、エネルギー取得工程では、慣性力を、発電工程を実施する装置を構成する部材の運動エネルギーに変換する。したがって、移動部が移動させられる際に、部材の運動エネルギーが増加することで、発電工程を実施する装置の固定部に対して当該部材が相対移動している状態を形成することができる。固定部及び部材の一方に磁石を他方にコイルを配置することで、固定部に対して当該部材が相対移動することによって、電力を発生することができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる電力供給方法は、前記エネルギー取得工程では、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させることで、電力に変換するためのエネルギーを取得することが好ましい。
【0028】
この電力供給方法によれば、エネルギー取得工程においてエネルギー取得手段は、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させる。発電工程では、当該伝導電子を取り出すことで、電力として使用できるようにすることができる。
【0029】
[適用例12]上記適用例にかかる電力供給方法は、前記発電工程において発電された電力を蓄積する蓄電工程をさらに有することが好ましい。
【0030】
この電力供給方法によれば、蓄電工程において電力が蓄積される。これにより、発電工程において発電された電力に加えて、蓄電工程において蓄積された電力も慣性センサーに供給することができるため、慣性センサーに安定して電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】給除材装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図2】ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図。
【図3】発電装置の主要な構成を示す模式図。
【図4】給除材装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図5】(a)は、天吊搬送装置の概略構成を示す外観斜視図。(b)は、印刷装置におけるヘッド搬送装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図6】発電装置の主要な構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、ロボット、搬送装置、及び電力供給方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する図面では、構成部材をわかり易く表示するために、部材又は部分の縦横の縮尺や部分ごとの縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0033】
(第一の実施形態)
ロボット、搬送装置、及び電力供給方法の一実施形態である第一の実施形態について、説明する。本実施形態は、搬送装置の一例である、給除材装置を例にして説明する。本実施形態の給除材装置は、例えば、半導体装置の製造工程において、半導体装置を構成する複数の半導体チップが区画形成されたウェハーを取扱う給除材装置である。
【0034】
<給除材装置>
最初に、給除材装置10の機械的構成について、図1を参照して説明する。図1は、給除材装置の概略構成を示す外観斜視図である。
図1に示すように、給除材装置10は、保持ハンド12と、ロボット機構20と、給除材装置制御部30と、角速度センサー32と、角度センサー34(図2参照)と、電源装置50と、を備えている。
【0035】
ロボット機構20は、ハンド保持機構24と、給除材アーム21と、アーム軸部26と、機台28と、を備えている。機台28は、内蔵する軸受機構(図示省略)を介して、アーム軸部26をアーム軸部26の回動軸回りに回動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持している。アーム軸部26は、機台28に内蔵されたアーム駆動モーター22(図2参照)と、アーム駆動機構23(図2参照)を介して接続されており、アーム駆動モーター22によって回動させられる。アーム駆動モーター22には角度センサー34が接続されており、角度センサー34によってアーム駆動モーター22の回動角度が測定される。
アーム軸部26の機台28に支持された側と反対側の端には、給除材アーム21の一端が固定されている。給除材アーム21は、アーム駆動モーター22によって、アーム軸部26の回動軸を中心に回動させられる。給除材アーム21の回動角度は、角度センサー34によってアーム駆動モーター22の回動角度を測定することによって測定される。
【0036】
給除材アーム21のアーム軸部26に固定された反対側の端には、ハンド保持機構24が固定されている。ハンド保持機構24は、給除材アーム21に固定された保持軸受24aと、保持軸受24aに摺動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持された保持機構軸24bとを備えている。保持機構軸24bは、図示省略した上下駆動源によって、保持軸受24aに対して保持機構軸24bの軸方向に摺動可能である。保持機構軸24bの軸方向は、アーム軸部26の軸方向と略平行である。
保持機構軸24bの自由端には、保持ハンド12が取り付けられている。給除材アーム21を回動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に臨む位置に位置させる。保持軸受24aに対して保持機構軸24bを摺動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に離接させると共に、保持ハンド12によって保持した搬送対象物を、載置場所から持ち上げたり、載置場所に接近させたりする。
【0037】
保持ハンド12が取り付けられているハンド保持機構24には、保持ハンド12と反対側に角速度センサー32が固定されている。すなわち、角速度センサー32は、給除材アーム21の先端近くの上面に固定されており、給除材アーム21が回動させられる角速度を測定可能である。
電源装置50は、発電装置40と二次電池52とを備えている。二次電池52は、給除材アーム21の上面の角速度センサー32に隣接する位置に配設されている。二次電池52は、角速度センサー32の電源端子と電気的に接続されている。
発電装置40は、給除材アーム21の上面の二次電池52に隣接する位置に配設されている。発電装置40の出力端子は、二次電池52及び角速度センサー32の電源端子と接続されている。発電装置40は、内蔵する摺動錘41(図3参照)が、保持機構軸24bの軸とアーム軸部26の軸とを結ぶ方向に摺動する状態で配設されている。
給除材装置制御部30は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、給除材装置10の各部の動作を統括制御する。
【0038】
<ロボット機構の機能的構成>
次に、ロボット機構20を駆動させる機能的構成について、図2を参照して説明する。図2は、ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図である。
上述したように、給除材アーム21を回動させるために、給除材装置10は、アーム駆動モーター22と、アーム駆動機構23と、角速度センサー32と、角度センサー34と、電源装置50と、給除材装置制御部30とを備えている。
角速度センサー32としては、例えばジャイロセンサーを用いることができる。角度センサー34としては、例えばエンコーダーを用いることができる。給除材アーム21がアームに相当し、ロボット機構20がロボットに相当し、アーム駆動モーター22が駆動源に相当し、角速度センサー32が慣性センサーに相当する。
【0039】
図2に示すように、給除材装置制御部30は、アーム駆動モーター22を制御するためのロボット制御部31を備えている。ロボット制御部31は、制御指令発生部36と、アーム動作制御部38と、モータードライバー39とを備えている。
制御指令発生部36は、給材又は除材の稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令を実行するための給除材アーム21の動作指令を出力する。稼動指令は、図示省略した入力装置から給除材装置10に入力される。稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令は、給除材装置制御部30が備える統括制御部(図示省略)から制御指令発生部36に出力される。制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令は、例えば、給除材アーム21の先端の軌道が、時間ごとの給除材アーム21の先端の位置として指令される。
【0040】
アーム動作制御部38は、制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令を実行するためのアーム駆動モーター22の制御信号を出力する。アーム動作制御部38は、給除材アーム21の動作指令を実行するために最適なアーム駆動モーター22の制御信号を、角度センサー34からの角度情報、及び角速度センサー32からの角速度情報に拠って、生成して出力する。モータードライバー39は、アーム動作制御部38から出力された制御信号に従ってアーム駆動モーター22に電力を供給して、アーム駆動モーター22を駆動させる。アーム駆動モーター22が駆動することによって、アーム駆動機構23を介して給除材アーム21が、アーム軸部26を中心に回動させられる。
アーム駆動モーター22が駆動することによるモーター軸の回動角度が、アーム駆動モーター22のモーター軸に接続された角度センサー34によって測定されて、給除材アーム21の回動角度情報として、アーム動作制御部38に送られる。給除材アーム21が回動させられる角速度が、給除材アーム21の先端近くの上面に固定された角速度センサー32によって測定されて、給除材アーム21の角速度情報として、アーム動作制御部38に送られる。
【0041】
角速度センサー32には、電源装置50の発電装置40及び二次電池52が接続されている。発電装置40によって発電された電力、又は発電装置40によって発電されて二次電池52に蓄電された電力が、角速度センサー32を駆動するための電力として、角速度センサー32に供給される。
【0042】
<発電装置>
次に、発電装置40の構成について、図3を参照して説明する。図3は、発電装置の主要な構成を示す模式図である。
図3に示すように、発電装置40は、摺動錘41と、摺動錘ばね48と、伝達歯車42と、中間歯車43と、ローター44と、ステーター45と、磁心46と、コイル47と、整流回路54とを備えている。
【0043】
摺動錘41は、略直方体形状を有している。摺動錘41は、図3に矢印a又は矢印bで示した略直方体形状の長手方向に摺動自在であって、他の方向への移動を規制されて、図示省略した発電装置40の基体に取り付けられている。上述したように、摺動錘41の摺動可能な方向(矢印a又は矢印bで示した方向)は、保持機構軸24bの軸とアーム軸部26の軸とを結ぶ方向と、略一致している。
摺動錘41のアーム軸部26に近い側の端には、摺動錘ばね48の一端が固定されている。摺動錘ばね48のもう一端は、図示省略した発電装置40の基体に形成された固定壁49に固定されている。摺動錘41が矢印a又は矢印bの方向に摺動すると、摺動錘ばね48が伸縮して、摺動錘41を元の位置に戻す方向の力が摺動錘41に加えられる。
摺動錘41の長手方向に延在する1面にはラックの歯(図示省略)が形成されている。ラックには、伝達歯車42の小歯車42aがかみあっている。伝達歯車42の大歯車42bには、中間歯車43の小歯車43aがかみあっており、中間歯車43の大歯車43bには、ローター44のローター歯車44aがかみあっている。
【0044】
ローター44は、永久磁石で構成された円板形状を有するローター本体44bの一面にローター歯車44aが突設されている。ローター本体44bは、ステーター45に形成された孔に遊嵌しており、ローター本体44bの円板形状の円筒面が、ステーター45の孔の壁面に対向している。ステーター45は高透磁率材から成り、高透磁率材から成る磁心46と一体に形成されている。磁心46には、一対のコイル47,47が巻回されている。
【0045】
給除材アーム21が回動させられると、摺動錘41に遠心力が作用するため、摺動錘41は、給除材アーム21の先端側である図3に矢印aで示した方向に移動する。このとき摺動錘ばね48は伸ばされる。給除材アーム21が回動させられる角速度が遅くなると、摺動錘41に作用する遠心力が減少して、摺動錘41は、摺動錘ばね48が元に戻ろうとする力で給除材アーム21の回動中心側である図3に矢印bで示した方向に戻される。すなわち、給除材アーム21が回動することによる遠心力と、摺動錘ばね48の力によって、摺動錘41が往復移動する。摺動錘ばね48と摺動錘41とが、慣性力である遠心力を摺動錘41の運動エネルギーに変換するエネルギー取得手段に相当する。
【0046】
摺動錘41の矢印a又は矢印b方向への往復移動運動は、摺動錘41のラックと伝達歯車42の小歯車42aとの組によって、伝達歯車42の回動運動に変換される。伝達歯車42の回動運動は、中間歯車43を介して増速されて、ローター44に伝えられる。
ローター44が回転すると、ステーター45及び磁心46にローター44の回転運動に応じて変化する磁束が誘導される。この磁束の変化により一対のコイル47,47にそれぞれ公知の電磁誘導作用によって交番電力が誘起される。
【0047】
一対のコイル47,47は、整流回路54に接続されており、整流回路54で整流された電力は、角速度センサー32を駆動するための電力として、角速度センサー32に供給される。または、一旦、二次電池52に蓄電された後、角速度センサー32を駆動するための電力として、角速度センサー32に供給される。
【0048】
以下、第一の実施形態の効果を記載する。第一の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)発電装置40は、摺動錘41と、摺動錘ばね48とを備えている。発電装置40は、給除材アーム21が回動させられると、慣性力によって摺動錘41が摺動錘ばね48に抗して移動する状態で、給除材アーム21に固定されている。この構成により、給除材アーム21が回動させられることによって摺動錘41に作用する慣性力を、摺動錘41の運動エネルギーとして取り出すことができる。これにより、発電装置40では、電力に変換するためのエネルギーを、ロボット機構20の給除材アーム21などを経て取得することを必要とせずに発電を実施することができる。
【0049】
(2)電源装置50は、発電装置40と二次電池52とを備えている。発電装置40によって発電された電力を二次電池52に蓄積しておくことができる。これにより、角速度センサー32に安定して電力を供給することができる。
【0050】
(3)電源装置50は、発電装置40と二次電池52とを備え、二次電池52は、給除材アーム21の上面の角速度センサー32に隣接する位置に配設され、発電装置40は、二次電池52に隣接する位置に配設されている。これにより、発電装置40から角速度センサー32に電力を送るための配線を、給除材アーム21に配線を配設するだけで、形成することができる。配線はアーム軸部26と機台28とのように、互いに相対移動する部分には配設されていないため、配線が曲げられたり捻られたりすることを実質的になくすることができる。
【0051】
(4)回動可能な給除材アーム21の先端近くには角速度センサー32が配設されている。これにより、給除材アーム21が回動する際の角速度を測定することができる。測定された角速度情報を用いて、給除材アーム21の回動動作や停止時の動作を制御することができる。
【0052】
(第二の実施形態)
次に、ロボット、搬送装置、及び電力供給方法の一実施形態である第二の実施形態について、説明する。本実施形態では、第一の実施形態で説明した給除材装置とは異なるロボット又は搬送装置の例について説明する。
【0053】
<給除材装置>
ロボット、搬送装置、及び電力供給方法の一実施形態である給除材装置であって、第一の実施形態で説明した給除材装置10とは異なる、給除材装置310について、図4を参照して説明する。図4は、給除材装置の概略構成を示す外観斜視図である。
図4に示すように、給除材装置310は、保持ハンド12と、ロボット機構320と、給除材装置制御部330と、角速度センサー332と、角度センサー(図示省略)と、電源装置350と、を備えている。
【0054】
ロボット機構320は、ハンド保持機構24と、給除材アーム321と、アーム軸部326と、機台328と、を備えている。機台328は、内蔵する軸受機構(図示省略)を介して、アーム軸部326をアーム軸部326の回動軸回りに回動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持している。アーム軸部326は、機台328に内蔵されたアーム駆動モーター(図示省略)と、アーム駆動機構(図示省略)を介して接続されており、アーム駆動モーターによって回動させられる。アーム駆動モーターには角度センサーが接続されており、角度センサーによってアーム駆動モーターの回動角度が測定される。
【0055】
アーム軸部326の機台328に支持された側と反対側の端には、給除材アーム321の一端が固定されている。給除材アーム321は、アーム部321aと、アーム部321bと、アーム関節部323とを備えている。アーム部321aの一端とアーム部321bの一端とは、アーム関節部323で接続されている。アーム部321bのアーム関節部323に接続された一端の反対側の一端が、アーム軸部326に固定されている。アーム軸部326は、機台328に対してアーム軸部326の回動軸回りに回動自在であるため、アーム軸部326に一端を固定されたアーム部321bは、機台328に対してアーム軸部326の回動軸回りに回動自在である。
【0056】
アーム部321bは、アーム部321aを、アーム関節部323を介して、アーム関節部323の回動軸を中心に回動可能に支持している。アーム関節部323のアーム部321aが固定された部分は、アーム部321bに内蔵されたアーム部駆動モーター(図示省略)と、アーム部駆動機構(図示省略)を介して接続されており、アーム部駆動モーターによって回動させられる。アーム部321aとアーム部321bとは、アーム関節部323において互いのなす角度を調整可能である。即ち、給除材アーム321は、アーム関節部323において屈伸可能である。アーム部駆動モーターにはアーム角度センサーが接続されており、アーム角度センサーによってアーム部駆動モーターの回動角度が測定される。アーム部駆動モーターの回動角度を測定することで、アーム部321bに対するアーム部321aの回動角度を測定することができる。
アーム軸部326の回動軸の軸方向と、アーム関節部323の回動軸の軸方向とは、互いに略平行である。
【0057】
アーム部321aのアーム関節部323に固定された反対側の端には、ハンド保持機構24が固定されている。ハンド保持機構24は、アーム部321aに固定された保持軸受24aと、保持軸受24aに摺動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持された保持機構軸24bとを備えている。保持機構軸24bは、図示省略した上下駆動源によって、保持軸受24aに対して保持機構軸24bの軸方向に摺動可能である。保持機構軸24bの軸方向は、アーム軸部326の回動軸の軸方向及びアーム関節部323の回動軸の軸方向と略平行である。
保持機構軸24bの自由端には、保持ハンド12が取り付けられている。給除材アーム321を回動及び屈伸させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に臨む位置に位置させる。保持軸受24aに対して保持機構軸24bを摺動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に離接させると共に、保持ハンド12によって保持した搬送対象物を、載置場所から持ち上げたり、載置場所に接近させたりする。
【0058】
保持ハンド12が取り付けられているハンド保持機構24には、保持ハンド12と反対側に角速度センサー332aが固定されている。すなわち、角速度センサー332aは、アーム部321aの先端に固定されており、アーム部321aが回動させられる角速度を測定可能である。
アーム部321bのアーム関節部323に接続された一端の側面には、角速度センサー332bが固定されている。したがって、角速度センサー332bは、アーム部321bの先端に固定されており、アーム部321bが回動させられる角速度を測定可能である。
【0059】
電源装置350は、上述した電源装置50と基本的に同様の構成を備えている。アーム部321aに配設された電源装置350を電源装置350aと表記し、アーム部321bに配設された電源装置350を電源装置350bと表記する。
電源装置350aは、発電装置340aと二次電池352aとを備えている。二次電池352aは、アーム部321aの上面に配設されている。二次電池352aは、角速度センサー332aの電源端子と電気的に接続されている。
発電装置340aは、アーム部321aの上面の二次電池352aに隣接する位置に配設されている。発電装置340aの出力端子は、二次電池352a及び角速度センサー332aの電源端子と接続されている。発電装置340aは、摺動錘41(図3参照)と同様の摺動錘を備えており、当該摺動錘が、保持機構軸24bの軸とアーム関節部323の軸とを結ぶ方向に摺動する状態で配設されている。アーム部321aが回動させられると、上述した発電装置40と同様に、アーム部321aが回動させられることによって摺動錘に作用する遠心力から電力が発電される。
発電装置340aによって発電された電力、又は発電装置340aによって発電されて二次電池352aに蓄電された電力が、角速度センサー332aを駆動するための電力として、角速度センサー332aに供給される。
【0060】
電源装置350bは、発電装置340bと二次電池352bとを備えている。二次電池352bは、アーム部321bの上面のアーム関節部323の近くに配設されている。二次電池352bは、角速度センサー332bの電源端子と電気的に接続されている。
発電装置340bは、アーム部321bの上面の二次電池352bに隣接する位置に配設されている。発電装置340bの出力端子は、二次電池352b及び角速度センサー332bの電源端子と接続されている。発電装置340bは、摺動錘41と同様の摺動錘を備えており、当該摺動錘が、アーム関節部323の軸とアーム軸部326の軸とを結ぶ方向に摺動する状態で配設されている。アーム部321bが回動させられると、上述した発電装置40と同様に、アーム部321bが回動させられることによって摺動錘に作用する遠心力から電力が発電される。
発電装置340bによって発電された電力、又は発電装置340bによって発電されて二次電池352bに蓄電された電力が、角速度センサー332bを駆動するための電力として、角速度センサー332bに供給される。
【0061】
給除材装置制御部330は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、給除材装置310の各部の動作を統括制御する。給除材装置制御部330は、角速度センサー332bによる角速度情報と機台328に内蔵された角度センサーによる角度情報とによって、アーム部321bの動作を制御可能である。同時に、角速度センサー332aによる角速度情報とアーム部321bに内蔵されたアーム角度センサーによる角度情報とによって、アーム部321aのアーム部321bに対する相対動作を制御可能である。すなわち、アーム部321aの動作とアーム部321bを統括した給除材アーム321の動作を、角速度情報と角度情報とを用いて制御することができる。
【0062】
<搬送装置>
次に、搬送対象物を保持する保持装置などが直交座標系に沿って平行移動する構成を備える搬送装置について、図5を参照して説明する。図5は、搬送装置の概略構成を示す外観斜視図である。図5(a)は、天吊搬送装置の概略構成を示す外観斜視図であり、図5(b)は、印刷装置におけるヘッド搬送装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【0063】
<天吊搬送装置>
最初に、天吊搬送装置410について説明する。図5(a)に示すように、天吊搬送装置410は、主走査方向移動機構402と、副走査方向移動機構403と、昇降移動機構404と、保持機構412と、距離センサーと、加速度センサー432と、電源装置450と、搬送装置制御部(図示省略)と、を備えている。
【0064】
主走査方向移動機構402は、主走査方向に延在する一対の主走査ガイドレール421,421と、主走査ガイドレール421に形成された主走査リニアモーターと、走査プレート422に形成された主走査スライダーとを備えている。走査プレート422は、一対の主走査ガイドレール421,421の間に架け渡されて、主走査方向と略直交する副走査方向に延在している。走査プレート422は、主走査リニアモーターと主走査スライダーとによって、主走査方向に自在に移動させられる。一対の主走査ガイドレール421,421は、例えば天井などに懸吊されて固定されている。
副走査方向移動機構403は、走査プレート422に形成された副走査リニアモーターと、副走査枠423に形成された副走査スライダーとを備えている。副走査枠423は、副走査リニアモーターと副走査スライダーとによって、副走査方向に自在に移動させられる。
走査プレート422が移動部に相当し、主走査リニアモーターと主走査スライダーとが駆動源に相当する。
【0065】
昇降移動機構404は、副走査枠423に配設されたボール軸受と、ボール軸受駆動モーターと、昇降軸424に固定されたボールねじとを備えている。昇降軸424は、ボール軸受とボール軸受駆動モーターとボールねじとによって、昇降させられる。
昇降軸424のボールねじと反対側に固定された保持機構412を、主走査方向移動機構402と、副走査方向移動機構403と、によって主走査方向及び副走査方向の任意の位置に移動し、昇降移動機構404によって、搬送対象物に対して離接させることができる。
搬送装置制御部は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、天吊搬送装置410の各部の動作を統括制御する。
【0066】
主走査リニアモーターと、副走査リニアモーターとには、それぞれによる駆動距離を測定する距離センサーが接続されている。
副走査枠423の主走査方向に略平行な外面には、加速度センサー432aが固定されている。加速度センサー432aは、主走査方向の加速度を測定可能である。副走査枠423の副走査方向に略平行な外面には、加速度センサー432bが固定されている。加速度センサー432bは、副走査方向の加速度を測定可能である。
主走査リニアモーター、又は副走査リニアモーターに接続された距離センサーによる、それぞれの方向における移動距離情報と、加速度センサー432a、又は加速度センサー432bによる、それぞれの方向における加速度情報と、によって、保持機構412の移動を制御することができる。距離センサーとしては、例えばリニアエンコーダーを用いることができる。加速度センサー432a又は加速度センサー432bが、慣性センサーに相当し、加速度情報が、慣性力情報に相当する。
【0067】
副走査枠423の主走査方向に略平行な外面に配設された電源装置450を電源装置450aと表記し、副走査枠423の副走査方向に略平行な外面に配設された電源装置450を電源装置450bと表記する。
電源装置450aは、発電装置440aと二次電池452aとを備えている。二次電池452aは、加速度センサー432aに隣接して副走査枠423の外面に配設されている。二次電池452aは、加速度センサー432aの電源端子と電気的に接続されている。
発電装置440aは、副走査枠423の外面の二次電池452aに隣接する位置に配設されている。発電装置440aの出力端子は、二次電池452a及び加速度センサー432aの電源端子と接続されている。発電装置440aは、揺動錘441(図6参照)を備えており、発電装置440aは、揺動錘441が主走査方向に略平行な面において揺動可能に配設されている。
【0068】
走査プレート422が主走査方向に移動させられることに伴い副走査枠423が主走査方向に移動させられることによって、移動の際の加速又は減速時に、揺動錘441に、加速又は減速する際の加速度に対応する慣性力が作用する。揺動錘441に作用する慣性力から電力が発電される。
発電装置440aによって発電された電力、又は発電装置440aによって発電されて二次電池452aに蓄電された電力が、加速度センサー432aを駆動するための電力として、加速度センサー432aに供給される。
【0069】
電源装置450bは、発電装置440bと二次電池452bとを備えている。二次電池452bは、加速度センサー432bに隣接して副走査枠423の外面に配設されている。二次電池452bは、加速度センサー432bの電源端子と電気的に接続されている。
発電装置440bは、副走査枠423の外面の二次電池452bに隣接する位置に配設されている。発電装置440bの出力端子は、二次電池452b及び加速度センサー432bの電源端子と接続されている。発電装置440bは、揺動錘441を備えており、発電装置440bは、揺動錘441が副走査方向に略平行な面において揺動可能に配設されている。
【0070】
副走査枠423が副走査方向に移動させられることによって、移動の際の加速又は減速時に、揺動錘441に、加速又は減速する際の加速度に対応する加速度が作用する。揺動錘441に作用する慣性力から電力が発電される。
発電装置440bによって発電された電力、又は発電装置440bによって発電されて二次電池452bに蓄電された電力が、加速度センサー432bを駆動するための電力として、加速度センサー432bに供給される。
【0071】
<ヘッド搬送装置>
次に、ヘッド搬送装置460について説明する。図5(b)に示すように、ヘッド搬送装置460は、印刷装置の吐出ヘッド462を移動させるものであり、ヘッドキャリッジ476と、キャリッジ軸474と、駆動ベルト473と、駆動プーリー472と、駆動モーター471と、加速度センサー482と、エンコーダー484と、電源装置490と、を備えている。印刷装置は、印刷装置の各部の動作を統括制御する印刷装置制御部(図示省略)を備えている。
【0072】
駆動モーター471は図示省略した装置枠に固定されており、駆動軸の一端に駆動プーリー472が固定されている。駆動プーリー472と図示省略した従動プーリーとに、駆動ベルト473が張渡されており、駆動ベルト473は、駆動モーター471によって駆動される。キャリッジ軸474は、駆動ベルト473の延在方向と平行に配設されている。キャリッジ軸474には、ヘッドキャリッジ476がキャリッジ軸474の軸方向に摺動自在に嵌合して支持されている。ヘッドキャリッジ476は、駆動ベルト473と固定されており、駆動ベルト473が駆動されることによって、キャリッジ軸474に沿って移動させられる。ヘッドキャリッジ476に保持された吐出ヘッド462は、キャリッジ軸474の軸方向に移動させられ、任意の位置に保持される。
印刷装置制御部は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、印刷装置の各部の動作を統括制御する。
【0073】
エンコーダー484は、駆動モーター471の駆動軸に接続されており、駆動モーター471の回動角度を測定することによって、吐出ヘッド462の移動距離を測定することができる。加速度センサー482はヘッドキャリッジ476に固定されており、ヘッドキャリッジ476が駆動されることによってヘッドキャリッジ476に作用する加速度を測定可能である。エンコーダー484による移動距離情報から求められる位置情報と、加速度センサー482による加速度情報と、によって、ヘッドキャリッジ476に保持された吐出ヘッド462の移動を制御することができる。
【0074】
電源装置490は、発電装置491と二次電池492とを備えている。二次電池492は、加速度センサー482に隣接してヘッドキャリッジ476の外面に配設されている。二次電池492は、加速度センサー482の電源端子と電気的に接続されている。
発電装置491は、ヘッドキャリッジ476の外面の二次電池492に隣接する位置に配設されている。発電装置491の出力端子は、二次電池492及び加速度センサー482の電源端子と接続されている。発電装置491は、揺動錘441を備えており、発電装置491は、揺動錘441がキャリッジ軸474に略平行な面において揺動可能に配設されている。
ヘッドキャリッジ476がキャリッジ軸474に案内されて移動させられることによって、移動の際の加速又は減速時に、揺動錘441に、加速又は減速する際の加速度に対応する慣性力が作用する。揺動錘441に作用する慣性力から電力が発電される。
発電装置491によって発電された電力、又は発電装置491によって発電されて二次電池492に蓄電された電力が、加速度センサー482を駆動するための電力として、加速度センサー482に供給される。
【0075】
<発電装置>
次に、発電装置440及び発電装置491の構成について、図6を参照して説明する。図6は、発電装置の主要な構成を示す模式図である。なお、発電装置440の構成と発電装置491の構成は実質的に同一であるため、ここでは発電装置440について説明する。
図6に示すように、発電装置440は、揺動錘441と、伝達歯車442と、中間歯車443と、ローター444と、ステーター445と、磁心446と、コイル447と、整流回路454とを備えている。
【0076】
揺動錘441は回転重錘であり、伝達歯車442の回動軸442aに固定されている。伝達歯車442は回動軸442aの軸芯回りに回動可能であって、揺動錘441は、回動軸442aの軸芯回りに回動可能である。揺動錘441は、揺動錘441の重心の位置を回動軸442aの軸芯から大きくずらした形状に形成されている。揺動錘441が回動することによって、伝達歯車442が回動する。
伝達歯車442の大歯車442bには、中間歯車443の小歯車443aがかみあっている。中間歯車443の大歯車443bには、ローター444のローター本体444bの一面に突設されているローター歯車444aがかみあっている。
ローター444、ステーター445、磁心446、コイル447、及び整流回路454の構成は、上述したローター44、ステーター45、磁心46、コイル47、及び整流回路54の構成と実質的に同一である。
【0077】
発電装置440が取り付けられた副走査枠423などが、揺動錘441の回動軸に略垂直な、例えば矢印cの方向に移動すると、移動に際しての加速又は減速に伴って、揺動錘441に慣性力が作用する。慣性力は揺動錘441の重心位置に作用するとみなせるため、揺動錘441は、図6に矢印d又はeで示したように、揺動する。揺動錘441を回動軸の軸方向が鉛直方向に対して交差する方向となるように配設することで、加速度が減少すると、揺動錘441は重力によって、元の位置に戻される。すなわち、副走査枠423などが移動することによる慣性力と重力とによって、揺動錘441が揺動する。揺動錘441が、慣性力を揺動錘441の運動エネルギーに変換するエネルギー取得手段に相当する。
【0078】
ローター444、ステーター445、磁心446、コイル447、及び整流回路454の機能は、上述したローター44、ステーター45、磁心46、コイル47、及び整流回路54の機能と実質的に同一である。上述した発電装置40と同様に、揺動錘441に作用する慣性力が電力に変換され、加速度センサー432などを駆動するための電力として、加速度センサー432などに供給される。または、一旦、二次電池452などに蓄電された後、加速度センサー432などを駆動するための電力として、加速度センサー432などに供給される。
【0079】
以下、第二の実施形態の効果を記載する。第二の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)発電装置440は、揺動錘441を備えている。発電装置440は、副走査枠423が主走査方向又は副走査方向に移動させられると、慣性力によって揺動錘441が揺動させられる状態で、副走査枠423に固定されている。この構成により、副走査枠423が移動させられることによって揺動錘441に作用する慣性力を、揺動錘441の運動エネルギーとして取り出すことができる。これにより、発電装置440では、電力に変換するためのエネルギーを、主走査ガイドレール421や走査プレート422など、互いに相対移動する部分を経て取得することを必要とせずに発電を実施することができる。
【0080】
(2)発電装置491は、揺動錘441を備えている。発電装置491は、ヘッドキャリッジ476がキャリッジ軸474に沿って移動させられると慣性力によって揺動錘441が揺動させられる状態で、ヘッドキャリッジ476に固定されている。この構成により、ヘッドキャリッジ476が移動させられることによって揺動錘441に作用する慣性力を、揺動錘441の運動エネルギーとして取り出すことができる。これにより、発電装置491では、電力に変換するためのエネルギーを、ヘッドキャリッジ476が印刷装置の基体などと互いに相対移動する部分を経て取得することを必要とせずに発電を実施することができる。
【0081】
(3)電源装置450及び電源装置490は、発電装置440又は発電装置491と二次電池452又は二次電池492とを備えている。発電装置440又は発電装置491によって発電された電力を二次電池452又は二次電池492に蓄積しておくことができる。これにより、加速度センサー432又は加速度センサー482に安定して電力を供給することができる。
【0082】
(4)電源装置450は、発電装置440と二次電池452とを備え、二次電池452は、加速度センサー432に隣接する位置に配設され、発電装置440は、二次電池452に隣接する位置に配設されている。これにより、発電装置440から加速度センサー432に電力を送るための配線を、副走査枠423に配線を配設するだけで、形成することができる。配線は主走査ガイドレール421や走査プレート422など、他の部材と互いに相対移動する部分には配設されていないため、配線が曲げられたり捻られたりすることを実質的になくすることができる。
【0083】
(5)電源装置490は、発電装置491と二次電池492とを備え、二次電池492は、加速度センサー482に隣接する位置に配設され、発電装置491は、二次電池492に隣接する位置に配設されている。これにより、発電装置491から加速度センサー482に電力を送るための配線を、ヘッドキャリッジ476に配線を配設するだけで、形成することができる。配線はヘッドキャリッジ476が印刷装置の基体などと互いに相対移動する部分には配設されていないため、配線が曲げられたり捻られたりすることを実質的になくすることができる。
【0084】
(6)移動させられる副走査枠423及びヘッドキャリッジ476には、加速度センサー432又は加速度センサー482が配設されている。これにより、副走査枠423及びヘッドキャリッジ476が移動させられる際の加速度を測定することができる。測定された加速度情報を用いて、副走査枠423又はヘッドキャリッジ476の移動動作や停止時の動作を制御することができる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0086】
(変形例1)前記実施形態においては、給除材装置10の電源装置50における発電装置40などの発電装置は、給除材アーム21などが回動などされる際に摺動錘41などに作用する慣性力を摺動錘41などの運動エネルギーに変換し、当該運動エネルギーから電力を発電する装置であった。しかし、電力を発電するためのエネルギーを慣性力から得ることは必須ではない。太陽電池のように、光のエネルギーによって光電子を発生させて、当該光電子を取り出すことによって電力を発生させる装置であってもよい。
【0087】
(変形例2)前記実施形態においては、給除材装置10の電源装置50などの電源装置は、電源装置50が発電装置40と二次電池52とを備えるように、発電装置に加えて蓄電装置としての二次電池を備えていたが、発電装置が蓄電装置を備えることは必須ではない。慣性センサーを稼動させているときに並行して発電装置によって発電される電力によって、慣性センサーを稼動させるために必要な電力を供給できる場合には、電源装置は二次電池などの蓄電装置を備えない構成であってもよい。
【0088】
(変形例3)前記実施形態においては、ロボット及び搬送装置の例として、ロボット機構20を備える給除材装置10、ロボット機構320を備える給除材装置310、天吊搬送装置410、印刷装置が備えるヘッド搬送装置460、などを例に説明した。しかし、上述した電力供給方法を用いて慣性センサーに好適に電力を供給できるロボット及び搬送装置は、これらの例示した装置に限らない。回動又は摺動自在に支持された移動部に取り付けられた慣性センサーを備える装置であれば、上述した電力供給方法を用いることで、慣性センサーに好適に電力を供給することができる。すなわち、慣性センサーに電力を供給するための、回動又は摺動自在に支持する支持部を経由してロボットの基体からアームに達する電力供給用のケーブルや、回動又は摺動自在に支持する支持部を経由して発電用の動力を伝達する動力伝達機構などを不要にすることができる。これにより、ケーブルや動力伝達機構を備えることで、ロボットの構成が複雑になることを抑制することができる。ケーブルや動力伝達機構の信頼性を確保するためのメンテナンスが不要であり、メンテナンスのための費用を抑制することができる。
【符号の説明】
【0089】
10,310…給除材装置、20,320…ロボット機構、21,321…給除材アーム、22…アーム駆動モーター、30,330…給除材装置制御部、32,332a,332b…角速度センサー、40,340a,340b…発電装置、41…摺動錘、42…伝達歯車、44…ローター、45…ステーター、50,350,350a,350b…電源装置、52,352a,352b…二次電池、402…主走査方向移動機構、403…副走査方向移動機構、410…天吊搬送装置、423…副走査枠、432,432a,432b…加速度センサー、440,440a,440b…発電装置、441…揺動錘、442…伝達歯車、443…中間歯車、444…ローター、445…ステーター、450,450a,450b…電源装置、452,452a,452b…二次電池、460…ヘッド搬送装置、471…駆動モーター、476…ヘッドキャリッジ、482…加速度センサー、490…電源装置、491…発電装置、492…二次電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に作業端末を支持し、もう一端を回動自在に支持されたアームと、
前記アームを回動させるための駆動源と、
前記アームに取り付けられており、前記アームが回動する角速度を検出して前記アームの角速度情報を出力する慣性センサーと、
前記アームに取り付けられており、前記慣性センサーに電力を供給する発電装置と、を備え、
前記発電装置は、電力に変換するためのエネルギーを、前記発電装置が配設された位置において取得するエネルギー取得手段を備えることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記エネルギー取得手段は、前記発電装置を構成する部材に作用する慣性力の一部を前記発電装置を構成する部材の運動エネルギーに変換することで、電力に変換するためのエネルギーを取得することを特徴とする、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記エネルギー取得手段は、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させることで、電力に変換するためのエネルギーを取得することを特徴とする、請求項1に記載のロボット。
【請求項4】
前記発電装置によって発電された電力を蓄積する蓄電装置をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項5】
作業端末を支持し、摺動自在に支持された移動部と、
前記移動部を移動させるための駆動源と、
前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に作用する慣性力を検出して前記移動部に作用する慣性力情報を出力する慣性センサーと、
前記移動部に取り付けられた発電装置と、を備え、
前記発電装置は、電力に変換するためのエネルギーを、前記発電装置が配設された位置において取得するエネルギー取得手段を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
前記エネルギー取得手段は、前記発電装置を構成する部材に作用する慣性力の一部を前記発電装置を構成する部材の運動エネルギーに変換することで、電力に変換するためのエネルギーを取得することを特徴とする、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記エネルギー取得手段は、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させることで、電力に変換するためのエネルギーを取得することを特徴とする、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記発電装置によって発電された電力を蓄積する蓄電装置をさらに備えることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
回動又は摺動自在に支持された移動部に取り付けられた慣性センサーに電力を供給する電力供給方法であって、
前記移動部に取り付けられたエネルギー取得手段によって、電力に変換するためのエネルギーを取得するエネルギー取得工程と、
前記エネルギー取得工程において取得したエネルギーを電力に変換することで発電する発電工程と、を有することを特徴とする電力供給方法。
【請求項10】
前記エネルギー取得工程では、前記移動部が回動又は摺動される際に前記発電工程を実施する装置を構成する部材に作用する慣性力を、前記発電工程を実施する装置を構成する部材の運動エネルギーに変換することで、電力に変換するためのエネルギーを取得することを特徴とする、請求項9に記載の電力供給方法。
【請求項11】
前記エネルギー取得工程では、電子に光のエネルギーを吸収させて、伝導電子を発生させることで、電力に変換するためのエネルギーを取得することを特徴とする、請求項9に記載の電力供給方法。
【請求項12】
前記発電工程において発電された電力を蓄積する蓄電工程をさらに有することを特徴とする、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の電力供給方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate