説明

ロボットコントローラのフィルタ

【課題】設置形態がどの向きに変更されてもロボットコントローラの内部にオイルが流入することがないようにする。
【解決手段】フィルタ4のフィルタ外板5には、複数の第1の通気孔7、第1の筒部8、第1の鍔部9が形成され、フィルタ内板6には、第1の通気孔7に対して、フィルタ外板5とフィルタ内板6との対向方向で重ならない位置に、複数の第2の通気孔10、第2の筒部11、第2の鍔部12が形成されている。さらに、第1の筒部8の長さと第2の筒部11の長さとを足した長さは、前記フィルタ外板5とフィルタ内板6との対向距離よりも長く、第1の鍔部9と第2の鍔部12とは、フィルタ外板5とフィルタ内板6との対向方向から見て重ならない形態に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットコントローラ内へ流入される外気中のオイルミストを捕捉するロボットコントローラのフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットコントローラは、内部の機器を冷却するために外気を該内部に導入し排出するようにしている。一般に、ロボットコントローラは、種々の環境下で使用されるものであり、例えばオイルミストが多い環境下でも使用されることがある。この場合、ロボットコントローラの内部に、前記オイルミストが入ってオイル塊となり、内部機器をショートあるいは腐食させる危険がある。
【0003】
これに対処するためには、ロボットコントローラに、前記外気を導入する際に該外気からオイルミストを捕捉するフィルタを設ける必要がある。ここで、オイルミストを除去するフィルタとしては、特許文献1に示される構成のものがある。この特許文献1には、相互に空間を置いて配置したフィルタ板にそれぞれ異なる位置に多数の通気孔を形成し、各通気孔縁部から相手フィルタ板へ延びる切起し片を形成する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−37313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のフィルタをロボットコントローラのフィルタに適用することが考えられる。
ところで、ロボットコントローラの筐体は、一般的に矩形箱状をなすものであり、この筐体の一面にフィルタを取り付けることになる。そしてこのロボットコントローラの設置形態は、ロボットの配置のレイアウトなどに合わせて、筐体の一面が設置面となる横置きであったり、前記一面が側面となる別の横置きであったり、前記一面と直交する面が設置面となる縦置きであったりする。この設置面変更によりフィルタの向きも変わる。
【0006】
このような事情を考慮すると、前記特許文献1のフィルタでは、フィルタ板内に付着残留しているオイル塊が、ロボットコントローラの設置姿勢次第で、フィルタ外部、つまりロボットコントローラ内部に流入するおそれがある。特にロボットコントローラでは、上述したようにその設置形態が必要に応じて変更されることがあることから、どの向きに設置されてもオイルがロボットコントローラ内部に流入しないようにすることが肝要であり、前述のフィルタは採用できない問題がある。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットコントローラにおいて床への設置が許容されている複数の面のうちのいずれの面で該ロボットコントローラが設置されたとしても、又、ロボットコントローラが一つの面での設置形態から他の面での設置形態へ変更されてもロボットコントローラの内部にオイルが流入することがないロボットコントローラのフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明においては、前記複数の第1の通気孔に対して、第2の通気孔が、前記フィルタ外板と該フィルタ内板との対向方向で重ならない位置にあり、第1の筒部の長さと第2の筒部の長さとを足した長さは、前記フィルタ外板とフィルタ内板との対向距離よりも長く、さらに、第1の鍔部と第2の鍔部とは、前記フィルタ外板とフィルタ内板との対向方向から見て重ならない形態に形成されているから、外気がフィルタ外板の複数の第1の通気孔、第1の筒部の内部を通って、フィルタ内板内面寄りにある該第1の筒部先端から、フィルタ外板及びフィルタ内板の間の空間に入り、そして、第1の鍔部及び第2の鍔部間を通り、さらに前記空間のうちフィルタ外板内面寄りに第2の筒部先端が位置することから、該フィルタ外板内面寄りのほうへ戻って該第2の筒部内に入り、そして、この第2の筒部内及び第2の通気孔を通って、ロボットコントローラ内部に流入する。そして、内部機器を冷却した後、ロボットコントローラ外に排気される。
【0009】
このようなルートを外気が通るときには、外気が持つベクトル(外気の流入方向、速度からくる力)を筒部や鍔部によって強制的に変更させる。その時ベクトルは筒部や鍔部に当たり向きや量が変更される。よって外気の持つベクトルを利用して筒部や鍔部に外気の内包するオイルミストを打ち付けることができるので、単に外気を吸引するだけで良好なオイルミスト低減を図ることができる。
【0010】
この結果、ロボットコントローラ内へのオイルミストの流入を少なくでき、よって、このロボットコントローラ内にオイル塊が発生することも抑えることができ、ロボットコントローラ内部の内部機器のショートや腐食の発生を抑制することができる。
【0011】
又、フィルタ内の各部に付着した(捕捉された)オイルは自然流下することがあるが、本発明によれば、この流下オイルがロボットコントローラ内に流入することはない。
すなわち、ロボットコントローラの設置形態が、フィルタ外板及びフィルタ内板が垂直状態となるような設置形態であると、第1の筒部及び第2の筒部が水平向きとなっており、これら筒部外面に付着したオイルは、下方の筒部外面へと落下し、フィルタ外板内面や、フィルタ内板内面に付着したオイルは、夫々の内面を伝って流下する。
【0012】
上記各筒部を下方の各筒部への落下するオイルは、各筒部が水平向きをなし且つ各先端にそれぞれ鍔部があることから、各筒部内へは流入せず、従って、第2の筒部で囲繞された第2の通気孔にオイルが流入することがなくてロボットコントローラ内にオイルが流入することがない。又、フィルタ外板内面を伝って流下するオイルは、当該フィルタ外板にロボットコントローラ内へ通じる第2の通気孔が無いことから、ロボットコントローラ内に流入することはない。又、フィルタ内板を流下するオイルは、該フィルタ内板の第2の通気孔を水平向きの第2の筒部が囲繞しているから、該第2の通気孔に流入することがなくてロボットコントローラ内にオイルが流入することがない。
【0013】
又、ロボットコントローラの設置形態が、フィルタ外板及びフィルタ内板が上下で水平状態となるような設置形態であると、第1の筒部及び第2の筒部が垂直向きとなっており、この場合、垂直状の第1の筒部外面に付着したオイルが下方へ落下したり、垂直状をなす第2の筒部外面に付着したオイルがフィルタ内板内面へ流下したりする。
【0014】
上述の第1の筒部外面を落下するオイルは、この第1の筒部先端の第1の鍔部と、第2の筒部先端の第2の鍔部とが、フィルタ外板及びフィルタ内板の対向方向へ重ならないから、つまりずれているから、第1の筒部の第1の鍔部から落下したオイルが、第2の鍔部に当たることがなく、よってこの第2の鍔部を備えた第2の筒部内に流入することがなく、この結果、第2の通気孔からロボットコントローラ内部へオイルが流入することはない。
【0015】
又、上述の第2の筒部外面を流下するオイルは、フィルタ内板内面に流下するが、このフィルタ内板における第2の通気孔が前述したように当該第2の筒部で囲繞されているから、この場合も、第2の通気孔からロボットコントローラ内部へオイルが流入することはない。
【0016】
ところで、上述のフィルタを長時間使用していると、捕捉されたオイルのうち、流下しにくい箇所では、オイル塊が発生することがある。このオイル塊は、ロボットコントローラの設置形態を変更すると、これに伴いフィルタの向きが変わることから、オイル塊が動いてロボットコントローラ内に流入することが懸念される。しかしこのような設置形態変更の場合も、本発明によれば、次に述べるように、オイル塊がロボットコントローラ内に流入することはない。
【0017】
すなわち、ロボットコントローラの設置形態が、前述したフィルタ外板及びフィルタ内板が垂直状態となるような設置形態であると、第1の筒部及び第2の筒部が水平向きとなっており、これら各筒部上面にオイル塊が発生しやすい。
【0018】
このフィルタ外板及びフィルタ内板が垂直状態となっているロボットコントローラ設置形態から、フィルタ外板及びフィルタ内板は垂直状態のままで前記各筒部上面が垂直面へと向き変更される設置形態に変更されると、オイル塊が存在していた各筒部上面が垂直面となることで、このオイル塊が下方の各筒部上面に落下することが予想される。ここでオイル塊が第2の筒部上面に落下したとしても、この第2の筒部先端に第2の鍔部があることにより該第2の筒部内にオイル塊が流入することはなく、この結果、オイル塊が第2の通気孔からロボットコントローラ内に流入することはない。
【0019】
又、ロボットコントローラの設置形態が、前述したフィルタ外板及びフィルタ内板が垂直状態となるような設置形態(オイル塊は水平状の各筒部上面に存在する状態)から、フィルタ外板及びフィルタ内板が水平状態となるような設置形態に変更されると、第1の筒部及び第2の筒部が水平状態から垂直状態に向き変更され、オイル塊が、第1の筒部及び第2の筒部を伝って落下もしくは流下する。
【0020】
上述の第1の筒部のオイル塊が落下する場合その下端に位置する第1の鍔部から落下するが、この第1の筒部先端の第1の鍔部と、第2の筒部先端の第2の鍔部とが、フィルタ外板及びフィルタ内板の対向方向で重ならないから、つまりずれているから、前記第1の鍔部から落下したオイル塊が第2の鍔部に当たることがなく、よって第2の筒部内にオイル塊が流入することがなく、この結果、第2の通気孔からロボットコントローラ内部へオイル塊が流入することはない。
【0021】
一方、垂直状態の第2の筒部外面を流下するオイル塊は、該第2の筒部の下端部にあるフィルタ内板内面へと流下するが、このフィルタ内板における第2の通気孔が前述したように当該第2の筒部で囲繞されているから、この場合も、第2の通気孔からロボットコントローラ内部へオイル塊が流入することはない。
【0022】
さらに又、フィルタ外板及びフィルタ内板が水平状態となるようなロボットコントローラ設置形態では、上面となるフィルタ内板内面にオイル塊が発生すると予測される。この設置形態から、フィルタ外板及びフィルタ内板が垂直状態となる設置形態に変更されると、垂直状態となったフィルタ内板内面をオイル塊が流下する。このフィルタ内板における第2の通気孔が前述したように第2の筒部で囲繞されているから、この場合も、第2の通気孔からロボットコントローラ内部へオイル塊が流入することはない。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、第2の鍔部を、その先端側が基端側よりもフィルタ外板方向へ寄る構成としたから、該第2の鍔部の沿面距離が長くて、オイルミストの付着機会も多くなり、さらにオイルミストの低減を図ることができる。さらに、該第2の鍔部の先端側を第1の鍔部の先端側から遠ざけることができて、ロボットコントローラ配置形態変更に伴うオイル塊の第2の通気孔への流入をさらに確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示すロボットコントローラの一部破断の側面図
【図2】ロボットコントローラの全体斜視図
【図3】フィルタ外板を分離した状態のロボットコントローラの斜視図
【図4】第1の筒部及び第1の鍔部部分の斜視図
【図5】第2の筒部及び第2の鍔部部分の斜視図
【図6】図1の設置形態におけるフィルタ部分の拡大縦断側面図
【図7】図1とは異なる設置形態を示すロボットコントローラの一部破断の側面図
【図8】図1及び図7とは異なる設置形態を示すロボットコントローラの一部破断の側面図
【図9】図1の設置形態におけるオイルの流れを説明するためのフィルタ部分の拡大縦断側面図
【図10】図8の設置形態におけるオイルの流れを説明するためのフィルタ部分の拡大縦断側面図
【図11】図1の設置形態におけるオイル塊の発生状況を説明するためのフィルタ部分の拡大縦断側面図
【図12】図1の設置形態から図7の設置形態に変更した場合のオイル塊の流下状況を説明するためのフィルタ部分の拡大縦断側面図
【図13】図1の設置形態から図8の設置形態に変更した場合のオイル塊の流下状況を説明するためのフィルタ部分の拡大縦断側面図
【図14】図8の設置形態におけるオイル塊の発生状況を説明するためのフィルタ部分の拡大縦断側面図
【図15】図8の設置形態から図1の設置形態に変更した場合のオイル塊の流下状況を説明するためのフィルタ部分の拡大縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。図1〜図6において、ロボットコントローラ1の筐体2は、図1に示す設置形態で上側となる壁板2a、手前側となる壁板2b、下側となる壁板2c、向こう側となる壁板2d(これは図7参照)、左側となる壁板2e、右側となる壁板2fとから、矩形箱状に構成されている。この筐体2の内部には、内部機器として制御機器3が設けられている。さらに、この筐体2の前記壁板2eには、フィルタ4が設けられている。
【0026】
このフィルタ4は、フィルタ外板5と、フィルタ内板6とを備えている。この場合、フィルタ内板6は、前記筐体2の壁板2eにより構成されている。前記フィルタ外板5は、矩形状をなす本体板部5aと、該本体板部5aの各辺部からほぼ直角方向へ延出する側板部5b、5c、5d、5eとを備えて構成されている。このフィルタ外板5は、その本体板部5aが前記フィルタ内板6と対向する状態で、図示しない取付手段により前記筐体2に取り付けられている。
【0027】
このフィルタ外板5の本体板部5aには、外気を取り入れる第1の通気孔7が多数貫通形成されている。この第1の通気孔7は矩形状をなしている。さらに、このフィルタ外板5の本体板部5aにおいて前記フィルタ内板6と対向する内面5fには、前記各第1の通気孔7の周縁部から夫々前記フィルタ内板6方向へ延出する角筒状の第1の筒部8が、フィルタ外板5と一体に形成されている。各第1の筒部8の先端周縁には、夫々該第1の筒部8の外周方向へ延びる矩形板状の第1の鍔部9が同じく一体に形成されている。
【0028】
前記フィルタ内板6には、前記複数の第1の通気孔7に対して、前記フィルタ外板5と該フィルタ内板6との対向方向で重ならない位置に、矩形状の第2の通気孔10が複数貫通形成されている。このフィルタ内板6において前記フィルタ外板5と対向する内面6aには、前記各第2の通気孔10の周縁部から夫々前記フィルタ外板5方向へ延出する角筒状の第2の筒部11がこのフィルタ内板6と一体に形成されている。
【0029】
さらに、各第2の筒部11の先端周縁には、夫々該第2の筒部11の外周方向へ延びる矩形板状の第2の鍔部12が同じく一体に形成されている。この第2の鍔部12は、その先端側が基端側よりもフィルタ外板5方向へ寄る形態に傾斜している。
【0030】
前記第1の筒部8の長さL1(図6参照)と第2の筒部11の長さL2(図6参照)とを足した長さL12は、前記フィルタ外板5とフィルタ内板6との対向距離Lt(図6参照)も長くなるように設定されている。又、前記第1の鍔部8と第2の鍔部12とは、前記フィルタ外板5とフィルタ内板6との対向方向から見て重ならない形態に形成されている。さらに前記フィルタ外板5の各側板部5b〜5eには、それぞれオイル排出口13a〜13dが切欠き形成されている。
【0031】
なお、図1において、前記筐体2の内部において壁板2fの近傍部には冷却用のファン14が配置されており、そして、該壁板2fには多数の孔部からなる排気口2gが形成されている。また、該壁板2a〜2dには夫々通気用切欠部15a〜15dが形成されている。なお、ロボットコントローラ1の設置形態としては、代表的には、図1に示すように、筐体2の一面である壁板2cが設置面となる横置き形の設置形態(上下反転状態も同じ設置形態となる)と、図7に示すように、筐体2の別の面である壁板2dが設置面となる別の横置き形の設置形態(図1から手前に90度回転した形態、上下反転状態も同じ設置形態となる)と、筐体2のさらに別の面(上述の壁板2c、2dと直交する面)である壁板2f側が設置面となる図8に示す縦置き形の設置形態とがある。
【0032】
上記構成の作用につき説明する。今、ロボットコントローラ1が図1に示すように設置面Fに、壁板2cが下になるように設置している横置き設置形態(フィルタ外板5及びフィルタ内板6が垂直状態)にあるとする。前記ファン14が運転されると、外気が、次に述べるようにフィルタ4内を通って、ロボットコントローラ1内に吸入される。すなわち、本実施形態では、前記複数の第1の通気孔7に対して、第2の通気孔10が、前記フィルタ外板5と該フィルタ内板6との対向方向で重ならない位置にあり、第1の筒部8の長さと第2の筒部11の長さとを足した長さは、前記フィルタ外板5とフィルタ内板6との対向距離よりも長く、さらに、第1の鍔部9と第2の鍔部12とは、前記フィルタ外板5とフィルタ内板6との対向方向から見て重ならない形態に形成されているから、外気が、図6に矢印Aで示すように、フィルタ外板5の複数の第1の通気孔7、第1の筒部8の内部を通って、フィルタ内板6の内面6a寄りにある該第1の筒部8先端から、フィルタ外板5及びフィルタ内板6の間の空間に入り、そして、第1の筒部8及び第2の筒部11間を通り、さらに前記空間のうちフィルタ外板5の内面5f寄りに第2の筒部11先端が位置することから、該フィルタ外板5の内面5f寄りのほうへ戻って該第2の筒部11内に入り、そして、この第2の筒部11内及び第2の通気孔10を通って、ロボットコントローラ1内部に流入する。そして、制御機器3を冷却した後、ロボットコントローラ1外に排気される。
【0033】
なお、オイル排出口13a〜13dからも外気が流入するが、これは全体流入外気量のごく一部であり、又フィルタ4内に流入後は上述同様に第1の筒部8及び第2の筒部11間を通り第2の通気孔10に流入するから、この場合も良好にオイルミストが捕捉される。
【0034】
上述の矢印Aで示すようなルートを外気が通るときにおいて、外気が持つベクトル(外気の流入方向、速度からくる力)は、第1の筒部8内に流入するときにまず該第1の筒部8入り口に絞り込まれることで、この筒部8入り口部分で、外気が筒部8内周面に擦られ、そして、この第1の筒部8を出たところで、フィルタ内板6の内面6aに当たり、向きが横方向へ変更される。その後、この外気は、第2の筒部11外面に当たって向きが変更され、さらに第2の鍔部12裏面に当たり、両鍔部12、9間を通る。そして、フィルタ外板5の内面5fに当たり、この内面5fと第2の筒部11の第2の鍔部12表面(左面)との間を通って、第2の筒部11先端開口に絞り込まれる。この絞込み作用により外気がこの第2の筒部11先端開口内周面に擦られる。
【0035】
このように外気が筒部8、11や鍔部9、12、フィルタ内板6の内面6a、フィルタ外板5の内面に当たる都度、あるいは、擦られる都度、外気のもつベクトルの向きや量が強制的に変更される。そして、外気中のオイルミストが、上述した各部に当たる都度及び擦られる都度、その部分に打ち付けられて付着する(捕捉される)。これにより、外気が第2の通気孔10からロボットコントローラ1内に流入するときには、外気中のオイルミストが効果的に除去されたものとなる。
【0036】
以上から分かるように、単に外気を吸引するだけで良好なオイルミスト低減を図ることができる。この結果、ロボットコントローラ1内へのオイルミストの流入を少なくでき、よって、このロボットコントローラ1内にオイル塊が発生することも抑えることができ、ロボットコントローラ1内部の制御機器3のショートや腐食の発生を抑制することができる。
【0037】
ところで、ロボットコントローラ1が設置された環境のオイルミスト濃度が高かったり、あるいは高温度であるような場合には、フィルタ4内の各部に付着した(捕捉された)オイルが自然流下することが考えられる。しかし本実施形態によれば、次に述べるように、この流下オイルがロボットコントローラ1内に流入することはない。
【0038】
すなわち、ロボットコントローラ1の設置形態が、図1及び図9に示すように壁板2cが設置面となる設置形態では、フィルタ外板5及びフィルタ内板6が垂直状態となり、第1の筒部8及び第2の筒部11は水平向きとなっている。この設置形態において、フィルタ外板5の内面5fに付着したオイルは、矢印B1で示すように該内面5fを伝って流下するが、フィルタ外板5と離れたフィルタ内板6に存在する第2の筒部11の内部に流入することはなく、この結果、流下オイルが第2の通気孔10からロボットコントローラ1内に流入することはない。
【0039】
又、フィルタ内板6の内面6aに付着したオイルは矢印B2で示すように、該内面6aを伝って流下するが、フィルタ内板6において第2の通気孔10が第2の筒部11で囲繞された形態で且つこの第2の筒部11先端には鍔部12があるから、オイルが該第2の筒部11先端開口から第2の通気孔10へ流入することがなくてロボットコントローラ内にオイルが流入することがない。
【0040】
さらに又、各筒部8及び11の外面に付着したオイルは、図9に矢印B3〜B6で示すように、各筒部8及び11先端の各鍔部9及び12から下方の各筒部8及び11外面へと落下したり、フィルタ外板5内面5fやフィルタ内板6の内面6aに流下したりするが、各筒部8及び11が水平向きをなし各先端にそれぞれ外周方向に延びる鍔部9及び12があることから、上記各筒部8及び11を下方への落下するオイルは、各筒部8及び11内へは流入せず、従って、第2の通気孔10に流入することがなくてロボットコントローラ1内にオイルが流入することがない。なお、フィルタ外板5内面5fやフィルタ内板6の内面6aに流下したオイルは矢印B1及び矢印B2を用いて前述したように第2の通気孔10に流入することはない。
【0041】
又、ロボットコントローラ1の設置形態が、図8及び図10に示すように、壁板2f側が載置面となる設置形態であると、フィルタ外板5及びフィルタ内板6が上下で水平状態となり、第1の筒部8及び第2の筒部11が垂直向きとなる。このような設置形態では、第1の筒部8外面に付着していたオイルは、矢印C1で示すように、第1の鍔部9から落下し、又、フィルタ外板5内面に付着したオイルは、図10の矢印C2で示すように、該フィルタ外板5から垂下する状態のこの第1の筒部8外面を伝ってその第1の鍔部9から落下する。このオイルは、この第1の筒部8先端の第1の鍔部9と、第2の筒部11先端の第2の鍔部12とが、フィルタ外板5及びフィルタ内板6の対向方向で重ならないから、つまりずれているから、この第1の筒部8の第1の鍔部9から落下したオイルが第2の鍔部12に当たることがなく、よって第2の筒部11内にオイルが流入することがなく、この結果、第2の通気孔10からロボットコントローラ1内部へオイルが流入することはない。
【0042】
又、図10において、第2の筒部11外面を矢印C3で示すように流下するオイルは、フィルタ内板5の内面5fに流下するが、このフィルタ内板6における第2の通気孔10が当該第2の筒部11で囲繞されているから、この場合も、第2の通気孔10からロボットコントローラ1内部へオイルが流入することはない。
【0043】
ところで、上述のフィルタを長時間使用していると、捕捉されたオイルのうち、流下しにくい箇所では、オイル塊が発生することがある。このオイル塊は、ロボットコントローラ1の設置形態を変更すると、これに伴いフィルタの向きが変わることから、このオイル塊が動いてロボットコントローラ1内に流入することが懸念される。しかしこのような設置形態変更の場合も、次に述べるように、オイル塊がロボットコントローラ1内に流入することはない。
【0044】
すなわち、ロボットコントローラ1の設置形態が、図1で示したように、壁板2cが設置面となる設置形態であると(フィルタ外板5及びフィルタ内板6が垂直状態となるような設置形態であると)、第1の筒部8及び第2の筒部11が水平向きとなっており、図11に示すように、これら各筒部8及び11上面にオイル塊Q1、Q2が発生しやすい。
【0045】
この図1及び図11で示すフィルタ外板5及びフィルタ内板6が垂直状態となっているロボットコントローラ1設置形態から、図7及び図12に示すように、壁板2dが設置面となる設置形態(フィルタ外板5及びフィルタ内板6は垂直状態のままで前記各筒部8及び11上面が垂直面へと向き変更される設置形態)に変更されると、オイル塊Q1、Q2が存在していた各筒部8及び11上面が垂直面と変わることで、このオイル塊Q1、Q2が下方へ矢印Kで示すように、各筒部8及び11上面に落下することが予想される。しかし、オイル塊Q1、Q2が第2の筒部11上面に落下したとしても、この第2の筒部11先端に外周方向に延びる第2の鍔部12があることにより該第2の筒部11内にオイル塊Q1、Q2が流入することはなく、この結果、オイル塊Q1、Q2が第2の通気孔10からロボットコントローラ1内に流入することはない。
【0046】
又、上述の図11に示したロボットコントローラの設置形態(フィルタ外板5及びフィルタ内板6が垂直状態となるような設置形態)から、図8及び図13に示すように壁板2f側が設置面となる設置形態(フィルタ外板5及びフィルタ内板6が水平状態となるような設置形態)に変更されると、第1の筒部8及び第2の筒部11が水平状態から垂直状態に向き変更され、オイル塊Q1、Q2が、第1の筒部8及び第2の筒部11を伝って落下もしくは流下する。
【0047】
上記オイル塊Q1は、上述の第1の筒部8から落下する場合、図13矢印E1で示すように、その下端に位置する第1の鍔部9から落下するが、この第1の鍔部9と、第2の筒部11先端の第2の鍔部12とが、フィルタ外板5及びフィルタ内板6の対向方向で重ならないから、つまりずれているから、前記第1の鍔部9から落下したオイル塊Q1が第2の鍔部12に当たることがなく、よって第2の筒部11内にオイル塊Q1が流入することがなく、この結果、第2の通気孔10からロボットコントローラ1内部へオイル塊Q1が流入することはない。
【0048】
一方、この図13において、垂直状態の第2の筒部11外面を流下するオイル塊Q2は、矢印E2で示すように、該第2の筒部11の下端部にあるフィルタ内板6の内面6aへと流下するが、このフィルタ内板6における第2の通気孔10が前述したように当該第2の筒部11で囲繞されているから、この場合も、第2の通気孔10からロボットコントローラ1内部へオイル塊Q2が流入することはない。
【0049】
さらに又、図8で示したように壁板2f側が設置面となるロボットコントローラ1設置形態(フィルタ外板5及びフィルタ内板6が水平状態となるような設置形態)では、図14に示すように、上面となるフィルタ内板6の内面6aにオイル塊R1が発生すると予測される。この設置形態から、図1で示した載置状態(フィルタ外板及びフィルタ内板が垂直状態となる設置形態)に変更されると、図15に示すように、垂直状態となったフィルタ内板6の内面6aをオイル塊R1が、矢印Gで示すように流下する。この場合、このフィルタ内板6における第2の通気孔10が前述したように第2の筒部11により囲繞されているから、この場合も、第2の通気孔10からロボットコントローラ1内部へオイル塊R1が流入することはない。
【0050】
このように、オイル塊が発生した状況でロボットコントローラ1の配置形態を変更しても、オイル塊が第2の通気孔10からロボットコントローラ1内に流入することがなく、制御機器3のショートや腐食の発生を抑制できる。なお、上記実施形態では、壁板2c、2d、2fを設置面としたロボットコントローラ1の設置形態を例示したが、この設置形態としては、筐体2において設置面として許容されている他の設置面での設置形態としても良く、当該他の設置面での設置形態としても、あるいは設置形態変更があっても、上述したように、流下オイルあるいはオイルオイル塊がロボットコントローラ1内に流入することはない。
【0051】
特に、本実施形態によれば、第2の鍔部12を、その先端側が基端側よりもフィルタ外板5方向へ寄る構成としたから、該第2の鍔部12の沿面距離が長くて、オイルミストの付着機会も多くなり、さらにオイルミストの低減を図ることができる。さらに、該第2の鍔部12の先端側を第1の鍔部9の先端側から遠ざけることができて、ロボットコントローラ1配置形態変更に伴うオイル塊の第2の通気孔10への流入をさらに確実に防止できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、前記フィルタ内板6を、前記ロボットコントローラ1の箱状をなす筐体2の一壁部である壁板2eにより構成し、前記第2の筒部11及び第2の鍔部12を、該筐体2の壁板2eに一体に形成し、前記フィルタ外板5を、前記筐体2の壁板2eに空間を置いて対向配置する構成としたから、ロボットコントローラ1の筐体2の一部をフィルタ4の一部に利用でき、構成部品数の低減を図ることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、第1及び第2の通気孔、第1及び第2の筒部、並びに第1及び第2の鍔部を夫々矩形状に形成したが、円形など他の形状としても良い。
【符号の説明】
【0054】
図面中、1はロボットコントローラ、2は筐体、3は制御機器(内部機器)、4はフィルタ、5はフィルタ外板、6はフィルタ内板、7は第1の通気孔、8は第1の筒部、9は第1の鍔部、10は第2の通気孔、11は第2の筒部、12は第2の鍔部、14はファンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体が矩形箱状をなすロボットコントローラの内部機器を冷却するために外気を該筐体内部に導入し排出するようにしたロボットコントローラに設けられて、前記外気を導入する際に該外気からオイルミストを捕捉するロボットコントローラのフィルタであって、
フィルタ外板と、
このフィルタ外板と空間を置いて対向するフィルタ内板とを備え、
前記フィルタ外板には、外気を取り入れる第1の通気孔が複数貫通形成され、
このフィルタ外板において前記フィルタ内板と対向する面には、前記各第1の通気孔の周縁部から夫々前記フィルタ内板方向へ延出する第1の筒部が形成され、
各第1の筒部の先端周縁には、夫々該第1の筒部の外周方向へ延びる第1の鍔部が形成され、
前記フィルタ内板には、前記複数の第1の通気孔に対して、前記フィルタ外板と該フィルタ内板との対向方向で重ならない位置に、前記第1の通気孔から取り入れた外気を流通させて前記ロボットコントローラ内部に供給する第2の通気孔が複数貫通形成され、
このフィルタ内板において前記フィルタ外板と対向する面には、前記各第2の通気孔の周縁部から夫々前記フィルタ外板方向へ延出する第2の筒部が形成され、
各第2の筒部の先端周縁には、夫々該第2の筒部の外周方向へ延びる第2の鍔部が形成され、
前記第1の筒部の長さと第2の筒部の長さとを足した長さは、前記フィルタ外板とフィルタ内板との対向距離よりも長く、
前記第1の鍔部と第2の鍔部とは、前記フィルタ外板とフィルタ内板との対向方向から見て重ならない形態に形成されていることを特徴とするロボットコントローラのフィルタ。
【請求項2】
前記第2の鍔部は、その先端側が基端側よりもフィルタ外板方向へ寄っていることを特徴とする請求項1に記載のロボットコントローラのフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−673(P2011−673A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145331(P2009−145331)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】