説明

ロボットコントローラの電源ユニット

【課題】 多様な環境下で使用されることが想定されるロボットコントローラの電源ユニットを、低コストで小形に構成する。
【解決手段】 ロボットコントローラ2に内蔵される電源ボード11を、強電系ブロック11H,弱電系ブロック11Lに分けて電気的に絶縁し、電源電圧の供給制御を及び監視を行うためのCPU21,CPU22を夫々配置する。そして、両者が互いに通信を行うように構成すると共に、CPU22は、コントローラ2のエンジンボード23とも通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットコントローラに内蔵され、前記ロボットコントローラ並びにロボット本体を動作させるための電源を生成して供給する電源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロボットコントローラに内蔵される電源ユニットはハードウエアで構成されており、外部より供給される商用交流電源に基づき各レベルの直流電圧を生成して、コントローラ内部に供給したり、コントローラに接続されるロボット本体に供給するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−298875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年はロボット製品がより多くの国で使用される状況にあると共に各規格への対応やPL法への対応なども必要となっており、様々な電源環境において使用される場合が想定される。すると、ユーザが電源ユニット側の電圧設定に対して、異なる電圧の電源を供給するなどの誤使用が発生する確率はより高くなるため、そのような誤使用が発生した場合のフェイルセーフ対策や、ロボットを緊急停止させるシステムを二重化することが要求される場合もある。
しかしながら、斯様な状況下に対応する電源ユニットをハードウエアで構成しようとすると、異なる電源環境に対応する構成が個別に必要となるため、電源ユニットのサイズが大型化すると共にコストアップを招くことが問題となる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多様な環境下で使用されることが想定されるロボットコントローラの電源ユニットを、低コストで小形に構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、電源ユニット内の強電系ブロック,弱電系ブロックに、電源電圧の供給制御を及び監視を行うための第1CPU,第2CPUを夫々配置する。そして、両者は互いに通信を行うと共に、第2CPUは、ロボットコントローラに内蔵される制御ユニットとも通信を行う。即ち、ロボットコントローラに供給される商用交流電源環境が様々に異なる場合でも、第1CPUは、電源電圧を監視するためのしきい値を使用される環境に応じて適切に設定して対応することができる。従って、異なる電源環境に対応して異なる監視回路を用意する必要がなく、電源ユニット、ひいてはロボットコントローラを小型且つ低価格で構成することができる。また、強電系ブロックにおける電源電圧の監視結果は、第1CPUから第2CPUを介して制御ユニットに伝達されるので、制御ユニットは、自身とは電気的に絶縁されている強電系ブロックの電圧監視結果を、適切な状態で参照することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図4は、一般的な産業用ロボットの制御システム構成を示すものである。当該システムは、ロボット本体1と、このロボット本体1を制御するコントローラ2と、このコントローラ2に接続されたティーチングペンダント3とから構成されている。
上記ロボット本体1は多関節型として構成され、ベース4と、このベース4に水平方向に旋回可能に支持されたショルダ部5と、このショルダ部5に上下方向に旋回可能に支持された下アーム6と、この下アーム6に上下方向に旋回可能に支持された上アーム7と、この上アーム7に上下方向に旋回可能に支持された手首8とから構成されており、手首8は先端部に回転(捻り動作)可能なフランジ9を備えている。尚、図示はしないが、ワークを把持するハンドはフランジ9に取り付けられるようになっている。
【0006】
図1は、コントローラ2の内部構成を、電源ボートを中心として示す機能ブロック図である。電源ボード(電源ユニット)11には、例えば3相200Vの商用交流電源12がコンタクタ13を介して供給されるようになっている。コンタクタ13の出力側には、突入電流防止用のトライアック14(A)及び整流用のダイオードブリッジ15が接続されており、ダイオードブリッジ15の出力側である直流母線16a,16b間には、平滑コンデンサ17が接続されている。
直流母線16a,16bによって供給されるDC280Vの電源は、図示しないロボット本体内部の各軸に配置されているACサーボモータを駆動する、例えばインバータを内蔵して構成されるIPM(Intelligent Power Module,何れも図示せず)に供給される。また、直流母線16a,16b間には、上記モータに制動をかけるダイレクトブレーキ(DB)用のNPNトランジスタ18,回生ブレーキ用の抵抗19及びNPNトランジスタ20の直列回路が接続されている。
【0007】
電源ボード11は、比較的高い電源電圧を扱う強電系ブロック11Hと、比較的低い電源電圧を扱う弱電系ブロック11Lとに分かれている。そして、強電系ブロック11H側にはCPU(_A)21(第1CPU)が配置されており、弱電系ブロック11L側にはCPU(_B)22(第2CPU)が配置されている。これらのCPU21,22は相互に通信を行うようになっているが、強電系ブロック11Hと弱電系ブロック11Lとの間は電気的に絶縁されており、CPU21,22はフォトカプラ39(図3参照)を介して信号やデータを伝送するようになっている。
【0008】
また、コントローラ2には、ロボット本体1を制御するための機能を有するエンジンボード(制御ユニット)23が内蔵されている。そのエンジンボード23には、CPU24,FPGA(_1)25,FPGA(_2)26などが搭載されている。CPU24は、制御プログラムに基づいてロボット本体1を制御するものであり、FPGA25,26を介してIPMにPWM制御信号を出力する。信号MTR_OUTは、FPGA26がPWM制御信号をIPMに出力するためのバッファのイネーブル制御を行う信号である。
電源ボード11におけるコンタクタ13の開閉制御は、CPU24がFPGA25及び負論理のANDゲート27を介して、また、FPGA26がANDゲート27を介して行なうようになっている。CPU21,22は夫々内部でウォッチドッグパルスWDT_A,WDT_Bを生成してFPGA25に出力する。
【0009】
FPGA25は、CPU21,22が夫々出力するウォッチドッグパルスWDT_A,WDT_Bの出力状態を監視し、これらの出力状態に異常があることを検出すると、ANDゲート27を介してコンタクタ13を開くように制御する。また、FPGA25,26間においても、夫々が内蔵するウォッチドッグタイマによる相互監視を行なっている。更に、FPGA25はCPU24が使用するレジスタなどを提供し、FPGA26には、IPMモジュールより外部異常モード信号FOが入力されるようになっている。
また、CPU21は、トライアック14,ダイレクトブレーキ用のトランジスタ18及び電源回生用のトランジスタ20をオンオフ制御するが、その制御信号はFPGA25にも与えられることで二重化されている。更に、CPU21,22の何れかが監視している電源電圧の異常を示すPFAIL信号を出力すると、ORゲート28を介してFPGA25に出力される。
【0010】
FPGA25に内蔵されているウォッチドッグタイマがオーバーフローするか、又はFPGA26に与えられる外部異常モード信号FOがアクティブになると、負論理のANDゲート29を介してCPU21,22にFO_OUT信号が出力される。また、FPGA25,26の何れか一方が何らかの要因の異常を検出すると、その異常検出信号は負論理のANDゲート30を介してロボット本体1に出力され、内蔵されているACサーボモータのブレーキ回路がONされるようになっている。
【0011】
図2は、電源ボード11を中心とするより詳細な構成を示す機能ブロック図である。商用交流電源12は、図1では図示しないノイズフィルタ31を介して供給される。強電系ブロック11H側では、AUXコンバータ32により電圧5V,11Vの電源5VH,11VHが生成され、CPU21等に供給されるようになっている。CPU21は、商用交流電源12の電圧や5VH,11VHの電源電圧と共に、DCバス(=直流母線16a)の電圧280Vを監視し、その監視結果をメモリ33に書き込んで記憶させるようになっている。尚、CPU21や図示しないA/D変換器、及びメモリ33を加えたものは、マイクロコンピュータを構成する。
【0012】
一方、弱電系ブロック11L側については、ノイズフィルタ31の出力側より突入防止トライアック41(B)、整流ダイオード34及び平滑コンデンサ35を介してDC_Outputコンバータ36に直流電源が供給されている。コンバータ36は、5VL,12VL,24VL,24VLIO,24VLMB,24VLFB,18VHの各電源電圧を生成し、CPU22を含む各部に供給するようになっている。
これらの電源のうち、5VL,12VLはCPU22及びエンジンボード23に供給され、24VLFBは図示しない空冷ファンの駆動用電源として供給される。また、24VL,24VLIO,24VLMBは、スイッチ37を介してエンジンボード23に供給されており、18VHは、IPMのゲート駆動用電源として供給されている。また、DCバスに接続されている転流ダイオード38は、電源瞬断などが発生した場合に、ロボット本体1の減速エネルギー、即ちモータの回生エネルギーをDC_OUTPUTコンバータ36に導くことで、エンジンボード23に供給される制御電源を確保するために配置されている。
【0013】
そして、CPU22は、コンバータ36により生成出力される電源のうち、5VL,12VL,24VL,24VLIOの電圧を周期的に監視しており、その監視結果をメモリ38に書き込んで記憶させる。この場合も、CPU22や図示しないA/D変換器、及びメモリ38を加えたものは、マイクロコンピュータを構成する。
また、図3は、電源ボード11の一構成例を示すものである。図3の場合、強電系ブロック11Hと弱電系ブロック11Lとは、夫々独立した基板で構成され、両者を上下に重ねた構造となっている。そして、両者の間は、フォトカプラ39を介して信号等が伝送される。
【0014】
次に、本実施例の作用について図5乃至図14も参照して説明する。
<強電系ブロック11H側:CPU21による処理>
図5乃至図10は、強電系ブロック11H側のCPU21による制御内容を示すフローチャートであり、図5は起動時に行なわれるイニシャライズ処理ルーチンを示す。CPU21は、レジスタ及び制御に使用する各種変数の初期化を行ない(ステップA1,A2)、電源ボード11のハードウエアリビジョン(仕様番号)を取得する(ステップA3)。また、取得した仕様が標準(わが国向け)であれば、交流入力電圧が100/200Vの何れに設定されているかを、例えば図示しないディップスイッチの設定を読み込むなどして取得する(ステップA5)。
次に、CPU21は、ユーザによりティーチングペンダント3を介して入力設定された電源監視条件(所定条件)を、CPU22及びエンジンボード23を介して取得する(ステップA5a)。ここで、「電源監視条件」とは、例えば監視する電源電圧の種類、サンプリング周期及びサンプリングを行なう期間などである。尚、メモリ33の容量には自ずと限りがあるため、サンプリング期間は(サンプリング周期にもよるが)高々数秒程度であり、その期間を超えると最新のデータを順次オーバーライトして記録する。
【0015】
続いて、CPU21は、通常の起動であるか否かを例えばステップA5と同様にして判断する(ステップA6)。通常の起動でなければ(「NO」)ソフトウエアの書き込み処理を行なう場合であるからその処理ループを実行し、通常の起動であれば(「YES」)コンタクタ13をONにすると(ステップA7)商用交流電源12の3相(R,S,T)電圧を夫々検出する(ステップA8)。
そして、それらの交流電圧が正常か否か、即ちユーザが入力したAC電圧がハードウエア仕様と整合しているか否かを判断し(ステップA9)、正常であれば(「YES」)初期状態でOFFとなっているトライアック41(B)をONにする(ステップA10)。それから、メインループの実行を開始する。尚、メインループでは、CPU21は以降の図に示す処理以外の制御に関するコマンドを実行する。
【0016】
また、ステップA8,A9をループしている場合に、所定時間を経過してもステップA9における判断が「YES」とならなければ(ステップA9a,「YES」)、ユーザが入力したAC電圧がハードウエア仕様と相違していることが推定される。従って、その場合には「AC誤入力」と判定してトライアック41(B)をONせず回路を保護し、且つ、各種DC_OUTPUT電圧を出力しないことでシステムの起動を不能とする(ステップA9b)。
【0017】
図6は、200μs毎に発生するタイマ割込み処理であり、CPU21は、この処理においてウォッチドッグタイマパルスWDT_Aを生成出力する。先ず、自身の出力ポートP00の出力レベル設定を「0(L)」にしているか否かを判断し(ステップA11)、設定が「0」であれば(「YES」)出力レベル設定を「1(H)」に反転させて(ステップA12)リターンする。一方、ステップA11において、出力ポートP00の出力レベル設定が「0」でなく「1」であれば(「NO」)出力レベル設定を「0」に反転させて(ステップA13)リターンする。
図7は、CPU21の出力ポートP00より出力されるウォッチドッグタイマパルスWDT_Aの波形を、エンジンボード23側で見た状態で示すタイミングチャートである。即ち、パルス波形は数100μs周期となるが、フォトカプラ39による信号遅延が数10μsあるため、波形の立上り,立下りが鈍ることで図7に示すような波形となる。
【0018】
ここで、FPGA25は、上述したようにウォッチドッグタイマパルスWDT_A,WDT_Bを監視しており、これらのパルスがレベル変化しなくなり、ハイ又はロウレベルに固定された状態が一定時間継続すると、CPU21,22に問題が発生したと判断する。そして、エンジンボード23上のCPU24によって監視されているWDT異常フラグをセットする。すると、CPU24は、ロボット本体1側のモータ駆動制御を停止する。また、FPGA25は、コンタクタ13を開くように制御する。
【0019】
図8は、500μs毎に発生するタイマ割込み処理である。CPU21は、この割込み処理(ステップA21〜A28)で、FO監視,AC電圧監視,DCバス電圧監視,DC_Output電圧監視,18VH及び11VH電圧監視を行なう。尚、ステップA22における「AC電圧監視」は、R,S,T各相について行い、ステップA23における「バス電圧監視」は、DCバスに出力される280Vと、その280Vを出力するための入力レベルとを検出する。
【0020】
図9は、図8のステップA21における「FO監視」の処理内容を示すフローチャートである。ANDゲート29の出力端子は、CPU21の入力ポートP41に接続されているので、CPU21は、入力ポートP41のレベルが「0」か否かを判断する(ステップA31)。「0」であれば(「YES」)外部異常又はウォッチドッグオーバーフローは発生していないのでカウンタFoを「0」にセットして(ステップA40)リターンする。
一方、ステップA31において、入力ポートP41のレベルが「1」であれば(「NO」)カウンタFoをインクリメントし(ステップA32)、カウンタFoの値が「3」になっていなければ(ステップA33,「NO」)そのままリターンする。そして、図9の処理を500μs毎に繰り返すことでカウンタFoの値が「3」になると(「YES」)、CPU21は、外部異常が発生したことを示すFO発生フラグをセットする(ステップA34)。
【0021】
それから、CPU21は、トライアック14(A)をOFFにすると(ステップA35)トランジスタ19(回生スイッチ)をONにする(ステップA37)。すると、モータが回転していることで回生される電力は抵抗20を介して消費される。続いて、ある電圧以下ではトランジスタ18(DBスイッチ)もONにすると(ステップA38)直流母線16a,16b間は短絡されるのでモータの回転は停止する。そして、
カウンタFoをゼロクリアして(ステップA39)リターンする。これにより、ロボット本体1側のACサーボモータは停止するようになる。
【0022】
図10は、250ms毎に発生するタイマ割込み処理であり、CPU21は、この割込み処理で、「電源」及び「回生抵抗」の温度監視を行なう。ここでの「電源」とは、強電系ブロック11Hであり、その基板の温度を監視する。尚、温度センサはサーミスタなどであり、CPU21は、サーミスタの抵抗変化による電圧の変化をA/D変換して読み込む。先ず、CPU21は、変数iを「0」に初期化すると(ステップA41)、その変数iの値に応じて温度測定対象を選択する(ステップA42)。即ち、変数iが「0」であれば測定対象を「電源」とし、変数iが「1」であれば測定対象を「回生抵抗」とするので、最初は「電源」を選択することになる。
【0023】
選択した対象について測定した温度が異常設定値未満であれば(ステップA43,「NO」)、カウンタPFAIL_HT[i]を「0」とし(ステップA47)、次に、測定温度が警告設定値異常か否かを判断する(ステップA48)。測定温度が警告設定値未満であれば(「NO」)、カウンタALARM_HT[i]を「0」とし(ステップA52)、変数iが「1」か否かを判断する(ステップA53)。変数iが「0」であれば(「NO」)変数iをインクリメントして(ステップA54)ステップA42に移行し、「IPMハーネスボード」について温度測定を行う。そして、変数iが「1」であれば(ステップA53,「YES」)処理を終了しリターンする。
【0024】
また、ステップA48において、測定した温度が警告設定値以上であれば(「YES」)、カウンタALARM_HT[i]をインクリメントし(ステップA49)、そのカウンタ値が「3」に等しいか否かを判断する(ステップA50)。上記カウンタ値が「3」に達してなければ(「NO」)ステップA53に移行し、上記カウンタ値が「3」に達していれば(「YES」)測定対象が高温状態であることを警告出力するためのコマンドをCPU22側に送信し(ステップA51)、ステップA53に移行する。
【0025】
また、ステップA43において、測定した温度が異常設定値以上であれば(「YES」)、ステップA49,A50の処理と同様に、カウンタPFAIL_HT[i]をインクリメントし(ステップA44)、そのカウンタ値が「3」に等しいか否かを判断する(ステップA45)。上記カウンタ値が「3」に達していなければ(「NO」)ステップA48に移行し、上記カウンタ値が「3」に達していれば(「YES」)PFAILを出力するため出力ポートP10のレベルを「1」にセットすると共に、カウンタPFAIL_HT[i]をゼロクリアし(ステップA46)、ステップA53に移行する。
【0026】
<弱電系ブロック11L側:CPU22による処理>
図11乃至図14は、弱電系ブロック11L側のCPU22による制御内容を示すフローチャートであり、図11は起動時に行なわれるイニシャライズ処理ルーチンを示す。CPU22は、レジスタの初期化を行ない(ステップB1)、電源ボード11のハードウエアリビジョンを取得する(ステップB2)。また、CPU22は、CPU21と同様に、ユーザによりティーチングペンダント3を介して入力設定された電源監視条件を、CPUエンジンボード23を介して取得する(ステップB2a)。
【0027】
続いて、CPU22は、通常の起動であるか否かを判断し(ステップB3)、通常の起動でなければ(「NO」)ソフトウエアの書き込み処理を行なう場合であるからその処理ループを実行し、通常の起動であれば(「YES」)シリアル通信/書込みの切替えスイッチをONにする(ステップB4)。次に、CPU22は、スイッチ37及び40をONにして、24VL,24VLMB,24VLIO,18VHの供給を開始させる(ステップB5)。
それから、CPU22は、電源ボード11の使用が標準仕様か、特定客先向けの仕様かを判断し(ステップB6)、標準仕様であれば(「YES」)そのままメインループの実行を開始する。また、特定仕様であれば(「NO」)、特定仕様フラグをセットしてから(ステップB7)メインループの実行を開始する。
【0028】
図12は、「500μs処理」の内容を示すフローチャートである。CPU22は、先ず、FO入力に対応するポートP16のレベルが「1(H)」であるか否かを確認し(ステップB21)、レベルが「0(L)」であれば(「NO」)そのまま、レベルが「1」であれば(「YES」)「FO発生フラグ」をセットしてから(ステップB22)リターンする。
【0029】
尚、図13及び図14は、A/D変換処理に関するフローであり、A/D変換対象とするアナログ信号入力チャネルAD0〜8は、夫々以下のように対応する。
入力チャネル 変換対象
AD0 信号電圧レベル検出
AD1 5VLレベル検出
AD2 12VLレベル検出
AD3 24VLレベル検出
AD4 バッテリレベル検出
AD5 温度検出(1)
AD6 温度検出(2)
AD7 温度検出(3)
AD8 24VLIOレベル検出
【0030】
図13は、1ms毎に実行される処理ルーチンである。CPU22は、このルーチンでは入力チャネルAD0〜8について順次A/D変換処理を行なう。先ず、入力チャネルAD0を選択してA/D変換処理を行ない(ステップB31)、制御レジスタADCONのビット4が立つことでそのA/D変換処理が終了すると(ステップB32,「YES」)、A/D変換結果のデータを入力チャネルAD0に対応する変数に格納する(ステップB33)。次に、入力チャネルAD0を選択して上記と同様の処理を行ない(ステップB34〜B36)、以下同様の処理を入力チャネルAD8まで繰り返し実行する。
【0031】
そして、CPU22は、CPU21が行う図10のフローチャートと同様に、温度監視処理を行なうようになっている(図14参照)。但し、ステップB52における温度測定対象は「電源」及び「IPMハーネスボード」となっており、前者は弱電系ブロック11Lの基板温度である。後者の「IPMハーネスボード」とは、ロボット本体1の各ACサーボモータに対応するIPMが接続される基板(ハーネスに替わる基板)である。
また、CPU21,22が上記の処理を行なうことで各測定対象につきA/D変換して得たデータは、夫々のメモリ33,38に随時書き込まれて記憶されるようになっている。尚、CPU21,22間、又はCPU22とエンジンボード23との間における通信処理は、CPU21,22が上記の処理を行なっている間に送受信割込みを互いに発生させ、その割込み処理として行なわれる。
【0032】
以上のように本実施例によれば、ロボットコントローラ2に内蔵される電源ボード11を、強電系ブロック11H,弱電系ブロック11Lに分けて電気的に絶縁し、電源電圧の供給制御を及び監視を行うためのCPU21,CPU22を夫々配置する。そして、両者が互いに通信を行うように構成すると共に、CPU22は、コントローラ2のエンジンボード23とも通信を行うようにした。
即ち、コントローラ2に供給される商用交流電源の環境(例えば、電源波形やノイズの重畳状態等)が様々に異なる場合でも、CPU21は、電源電圧を監視するためのしきい値を定格電圧に応じて適切に設定して対応することができ、異なる電源環境に対応して異なる監視回路を用意する必要がなく、電源ボード11、ひいてはコントローラ2を小型且つ低価格で構成することができる。例えば、コントローラ2が様々な国で使用される場合において、コントローラ2側の電源電圧設定と、実際に入力された商用交流電源電圧とが異なることで「AC誤入力」検出を行なうことも簡単に対応することができる。
また、強電系ブロック11Hにおける電源電圧の監視結果は、CPU21からCPU22を介してエンジンボード23に伝達されるので、エンジンボード23は、自身とは電気的に絶縁されている強電系ブロック11Hの電圧監視結果を適切な状態で参照することができる。
【0033】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
CPU21,22が行なう処理内容は、個別の設計に応じて必要となるものを適宜選択して実行すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例であり、ロボットコントローラの内部構成を、電源ボートを中心として示す機能ブロック図
【図2】電源ボードを中心とするより詳細な構成を示す機能ブロック図
【図3】電源ボードの一構成例を示す概略的な斜視図
【図4】一般的な産業用ロボットの制御システム構成を示す図
【図5】強電系ブロック側のCPUにより、起動時に行なわれるイニシャライズ処理ルーチンを示すフローチャート
【図6】200μs毎に発生するタイマ割込み処理を示すフローチャート
【図7】強電系ブロック側CPUの出力ポートP00より出力されるウォッチドッグタイマパルスの波形を、エンジンボード側で見た状態で示すタイミングチャート
【図8】500μs毎に発生するタイマ割込み処理を示すフローチャート
【図9】図8のステップA21における「FO監視」の処理内容を示すフローチャート
【図10】250ms毎に発生するタイマ割込み処理を示すフローチャート
【図11】弱電系ブロック側CPUにより起動時に行なわれるイニシャライズ処理ルーチンを示すフローチャート
【図12】500μs処理の内容を示すフローチャート
【図13】1ms毎に実行される処理ルーチンを示すフローチャート
【図14】弱電系ブロック側CPUにより実行される図10と同様の処理内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0035】
図面中、1はロボット本体、2はコントローラ、11は電源ボード(電源ユニット)、11Hは強電系ブロック、11Lは弱電系ブロック、21はCPU(第1CPU)、22はCPU(第2CPU)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットコントローラに内蔵され、前記ロボットコントローラ並びにロボット本体を動作させるための電源を生成して供給する電源ユニットにおいて、
比較的高い電源電圧を生成供給する強電系ブロックと、
この強電系ブロックと電気的に絶縁されており、比較的低い電源電圧を生成供給する弱電系ブロックと、
前記強電系ブロックに配置され、電源電圧の供給制御を及び監視を行うための第1CPUと、
前記弱電系ブロックに配置され、電源電圧の供給制御を及び監視を行うための第2CPUとを備え、
前記第1,第2CPUは相互に通信を行うように構成され、
前記第2CPUは、前記ロボットコントローラに内蔵される制御ユニットとも通信を行うように構成されていることを特徴とするロボットコントローラの電源ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−34697(P2007−34697A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217415(P2005−217415)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】