説明

ロボットシステムのためのスイッチオフ箱

本発明は、ハウジング(33)内にバネ搭載され、複数のパイプ(23)および、バーナー本体(38)、任意にはバーナーハンドル(26)からなる溶接トーチ(10)に接続された結合手段(34)を備えるロボットシステムのための切断箱(27)に関する。本発明の目的は、前記ロボットシステムでいずれの特定の場所または位置で使用可能であり、より迅速で容易な応答で特徴付けられる自律的な切断箱(27)を提供することである。本発明によれば、ハウジング(33)は2つの部品(30,31)からなり、結合手段(34)は、ハウジング(33)に一定の点で配置可能なように実現されている。好ましくは、ハウジング(33)は、バーナー本体(28)と複数のパイプ(23)との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に弾性的に搭載され、ホースパック(hose pack)および、トーチ本体、任意にはトーチハンドルによって形成される溶接トーチに接続されるように設計された結合手段を含む、ロボットシステムのためのスイッチオフ箱に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突保護検出手段あるいはスイッチオフ箱は、先行技術から知られているが、これらはロボット、即ち、ロボットアームに直接設置されている。構成部品は、ロボットに統合化されたスイッチオフ箱に装着されている。これは、こうした統合化されたスイッチオフ箱が、装着された構成部品の全体重量を載せて、極めて剛性的に設計され、よってスイッチオフの動きに悪影響を及ぼすという不具合を伴う。
【0003】
米国特許公報4540869Aから、衝突保護手段を備える溶接ロボットで使用する溶接トーチが公知であり、これは、ホースパックおよび溶接トーチに接続されるように設計され、弾性的に搭載された結合要素を含む。これは、溶接トーチの半径方向の運動を可能にする比較的複雑な構成という欠点をもたらす。
【0004】
日本特許公報7−178546Aは、同様に、衝突保護手段を含む溶接トーチを開示しているが、ホースパックの接続は説明されていない。もしホースパックが結合手段に固定されれば、スイッチオフ箱は、これに装着される構成部品のとても大きい重量を載せる必要があり、スイッチオフの動きに悪影響を及ぼすことになる。
【0005】
英国特許公報1224180Aは、ツール、例えば溶接トーチの運動を制御するためのデバイスを示しており、ツールの運動経路を検出するためにファインダが搭載可能である。ファインダが接続されたロボットアームには、ツールとのファインダの衝突を検出して、ロボット制御のモータを駆動するための要素が配置されている。これも同様に、衝突検出手段がロボットアームに設置されているため、スイッチオフの動きは悪影響を受ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ロボットシステムのいずれの場所や位置にも柔軟に使用可能である、独立したスイッチオフ箱を提供することにある。さらに、スイッチオフ箱は、可及的にシンプルに構成され、可及的に迅速でシンプルな応答によって特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る目的は、ハウジングが2つの部分を備え、結合手段がハウジングに点接触するように設計されることで達成される。これは、スイッチオフ箱が溶接トーチの中、即ち、溶接トーチの個々の構成部品間で直接に配列可能であるという利点を提供する。こうしてスイッチオフ箱は、軽微な衝突を容易に検出できるように、危険に曝される領域にできる限り接近するように位置決め可能になる。さらに、ホースパックおよびトーチハンドルがスイッチオフ箱とそれぞれ接続可能であり、後者が構成部品の重量を載せて、スイッチオフ箱の弾性的に搭載された結合手段は、トーチ本体の重量に適合するように寸法設定するだけでいいという利点がある。衝突の発生時に、こうした衝突が点接触の開放によって直ちに検出されることになるため、ハウジングへの結合手段の点接触は、スイッチオフ箱の素早い応答動きを確保する。そして、ロボットシステムの個々の制御が、接触要素またはスイッチング要素の適切な配列によって実現することになる。
【0008】
更なる好都合な構成は、従属クレーム2〜13に記述されている。これらによる利点は、詳細な説明から理解されよう。
【0009】
本発明は、スイッチオフ箱の例示的な実施形態を図示した添付図面を用いてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、例えば、MIG/MAG溶接、WIG/TIG溶接、電気溶接方法、ダブルワイヤ/タンデム溶接プロセス、プラズマやろう付け方法など、種々のプロセスおよび方法のための溶接デバイス1または溶接装置を示す。当然ながら、電力源または溶接電流源とともに本発明による解決法を用いることが可能である。
【0011】
溶接デバイス1は、電力要素3、制御デバイス4、電力要素3および制御デバイス4とともにそれぞれ組み込まれたスイッチ部材5を含むエネルギー源2を備える。スイッチ部材5および制御デバイス4は、供給ライン7中に、ガス貯蔵器9と溶接トーチ10やバーナーとの間に配置され、ガス8、特に、例えばCO、ヘリウム、アルゴンなどの保護ガスのための制御弁6に接続されている。
【0012】
さらに、MIG/MAG溶接に共通するワイヤ前進システム11は、制御デバイス4を介して起動可能であり、フィラー金属または溶接ワイヤ13は、供給ライン12を通じて供給ドラム14からトーチ10の領域へ供給される。当然ながら、溶接デバイス1は、図1に示すように付属品ユニットとして設計するのとは別に、先行技術から知られているように、ワイヤ前進システム11、特に、基本ハウジング内に統合化することも可能である。
【0013】
ワイヤ前進システム11は、溶接ワイヤ13またはフィラー金属を溶接トーチ10の外部にある溶接箇所へ供給することも可能であり、その端部には、WIG/TIG溶接で共通するように、非溶電極を溶接トーチ10に配置することが好ましい。
【0014】
電気アーク15を確立するのに必要な電力、特に、溶接ワイヤ13とワーク品16との間で動作する電気アークは、エネルギー源2の電力要素3から溶接ライン17を経由して溶接トーチ10へ供給される。溶接されるワーク品16は、幾つかの部品で構成され、同様に、溶接デバイス1に、特に、更なる溶接ライン18を介して電力源2に接続されており、これによりプロセスのための電力回路が、電気アーク15またはプラズマジェットを確立することが可能になる。
【0015】
溶接トーチ10の冷却を提供するために、溶接トーチ10は、流量コントローラ20が介在する冷却回路19を介して、流体貯蔵器、特に、水貯蔵器に接続可能であり、これにより冷却回路19、特に、流体貯蔵器21に格納される流体に用いられる流体ポンプは、溶接トーチ10が動作に移行するにつれて、始動する。こうして溶接トーチ10の冷却を実施する。
【0016】
溶接デバイス1は、入力及び/又は出力デバイス22をさらに備え、これにより、溶接デバイスの異なる動作パラメータ、動作モードまたは溶接プログラムは、調整したり、及び/又は呼び出しが可能になる。このようにして、入力及び/又は出力デバイス22によって調整された溶接パラメータ、動作モードまたは溶接プログラムは、制御デバイス4へ送信され、そして、溶接装置または溶接デバイス1の個々の構成部品を起動することになる。
【0017】
さらに、図示した例示的実施形態における溶接トーチ10は、ホースパック23を介して溶接デバイス1または溶接装置に接続される。溶接デバイス1から溶接トーチ10へ導く個々のラインは、ホースパック23の内部に配置される。ホースパック23は、結合デバイス24または中央接続部を介して溶接トーチ10に接続される。ホースパック23内の個々のラインは、接続ソケットまたはプラグイン接続を介して、溶接装置1の個々の接触部に接続されている。ホースパック23の適切な張力緩和を確保するために、ホースパック23は、張力緩和手段25を介して、ハウジング26、特に、溶接デバイス1の基本ハウジングに接続される。結合デバイス24は、当然ながら、溶接デバイス1での接続のためにも使用してもよい。
【0018】
基本的には、例えば、WIGデバイス、MIG/MAGデバイス、またはプラズマデバイスなど、種々の溶接方法または溶接装置1のために、上述した全ての構成部品を用いる必要がないことに留意すべきである。
【0019】
図2および図3において、ロボットシステム、特に、溶接装置のためのスイッチオフ箱27の応用例を示している。この場合、スイッチオフ箱27は、溶接トーチ10に直接に配置されており、即ち、図2ではトーチ本体28とホースパック23との間、そして、図3ではトーチ本体28とトーチハンドル29との間に配置される。このトーチハンドルは、例えば、ホースパック23が接続された、統合化されたワイヤ供給を含む。統合化されたスイッチオフ箱27を持つ溶接トーチ10は、固定手段30によってロボットシステム(不図示)に固定される。
【0020】
溶接トーチ20に直接配置されたスイッチオフ箱27の使用により、スイッチオフ箱27はより少ない重量を載せるという利点を提供し、これにより衝突時のスイッチオフの動きを改善することができる。さらに、スイッチオフ箱は、ロボットシステムにおいて最も多種多様な点に使用可能であることから、独立したスイッチオフ箱27は、スイッチオフ箱27の配置において最適な適合を確保する。スイッチオフ箱27は、溶接の構成部品を何ら接続せずに、例えば、ロボットアームと溶接トーチ10のための固定手段30との間で用いるようにして、使用することも可能である。
【0021】
図4〜図7は、スイッチオフ箱27の詳細を概略的に示し、結合手段34は、2つの部品31,32からなるハウジング33に弾性的に搭載される。結合手段34は、溶接トーチ10、特に、その構成部品とホースパック23との接続のために設計されており、溶接技術から商業的に利用可能な中央接続部または結合デバイスが、ホースパック23を溶接トーチ10に接続するために、結合要素34の上で実現される。スイッチオフ箱27の機能は衝突検出を行うことであり、これにより、スイッチオフ箱27は、コンパクトな構造ユニットとして、そして使用現場の機能として適切に位置決め可能な独立した構成部品として、設計される。
【0022】
スイッチオフ箱27は、結合手段34が、2つの部品31,32からなるハウジング33に弾性的に搭載されるように構成されており、結合手段34は、開口35を介してハウジング33から突出している。一方、結合手段34の他端は、ハウジング33の内部で終結しても構わない。トーチ本体28は、結合手段34の突出端部に固定してもよい。空洞36がハウジング33の内部に形成される。結合手段34は、ハウジング33に対して絶縁されていることが好ましく、これにより電気エネルギー、特に、溶接電流が結合手段34を介して伝送されるのを可能にする。このため、絶縁リング37が、図示した例示的実施形態に配置されている。チャネル38を結合手段34の内部に配置してもよく、これにより、供給される媒体、例えば、冷却液、保護ガスなどを、結合手段34の一方から他方へ移送してもよく、溶接トーチ10の機能を保護することができる。さらに、結合手段34は、ハウジング33への点接触のための支持面39を備え、図示した例示的実施形態における該支持面は、L字状断面を有する外部リング40によって形成され、絶縁リング37に固定される。L字状断面を有する前記外部リング40は、周辺に延びるように、あるいは幾つかの断面だけを含むように、設計してもよい。こうして、一方では、結合手段34がハウジング33からの滑り落ちに対して安全になり、他方では、点接触がハウジング33内に設けられるようになる。実際には、結合手段34は、衝突時にハウジング33から点での持ち上げが可能となるように、ハウジング33に点だけで接触することが、本質的である。外部リング40は、当然ながら、結合手段34で形成しても構わない。
【0023】
ハウジング33に対する点での突当てや接触を確保するために、突起41が外部リング40に配置され、ハウジング33への点支持を確保している。支持面39とハウジング33との間の点接触を設けるために、突起41の代わりに、例えば球など、別のスペーサ要素を使用することも可能である。好ましい手法では、3つまたは5つの突起41がそこに配置される。結合手段34の固定は、外部リング40および支持面39をそれぞれ介して、ネジ接続42によって実現され、スプリング要素44が、ネジ頭43と外部リング40と支持面39の間に配置される。こうして全体の結合手段34は、接続された部品、特に、トーチ本体28とある固体物との衝突時に、結合手段34の適切な変位を引き起こすように、弾性的に搭載される。これを検出するためには、接触要素またはスイッチ要素(不図示)が突起41および支持面39にそれぞれ接続されており、接触要素は、ハウジング33からの単一の突起41の持ち上げによって活性化または不活性化するようになり、信号は、接触要素またはスイッチ要素から、インタフェース接続された制御デバイス4またはロボットシステムへ伝送されるようになる。
【0024】
さらに、他の開口45が、ハウジング33において、結合手段34が出現している反対側に設けられ、ホースパック23を経由して供給されるラインが、ハウジング33内へ結合手段34に導かれるようになる。好ましい手法では、更なる突起またはネジ山(thread)46が、ホースパック23の外部ホースをハウジング33に接続するように配置される。このことは、ホースパック23の重量が、結合手段34に直接には作用せずに、スイッチオフ箱27のハウジング33に伝わることを確実にする。結合手段34の搭載のためのスプリング要素44は、より弱くなるように設計され、スイッチオフ箱27の応答動きをかなり増強する。
【0025】
原理的には、スイッチオフ箱27は、スイッチオフ箱27に固定されたトーチ本体28と物体との衝突を検出するように機能する。これは、ハウジング33の内部にある結合手段34の変位または運動によって行われ、これにより突起41を持ち上げて、信号が配給されるようになる。こうして所定の変位、特に、スイッチオフ箱27のハウジング33内での点支持の持ち上げが、衝突発生時に確実に行われるように、結合手段34はハウジング33内に搭載される。実際、接触要素またはスイッチ要素を単に配置することによって、結合手段34の運動の適切な検出を行うことが可能になり、これにより実質的に構造の簡素化を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】溶接装置または溶接デバイスの概略図である。
【図2】トーチ本体とホースパックの間で、溶接トーチでのスイッチオフ箱の配置についての概略図である。
【図3】トーチ本体とホースパックの間で、溶接トーチでのスイッチオフ箱の配置についての他の図である。
【図4】装着される構成部品無しのスイッチオフ箱の正面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った、スイッチオフ箱の断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿った、スイッチオフ箱の断面図である。
【図7】図4のVII−VII線に沿った、スイッチオフ箱の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(33)内に弾性的に搭載され、ホースパック(23)および、トーチ本体(28)、任意にはトーチハンドル(26)によって形成される溶接トーチに接続されるように設計された結合手段(34)を含み、
ハウジング(33)は、2つの部品(30,31)からなり、結合手段(34)は、ハウジング(33)と点接触するように設計されていることを特徴とするロボットシステムのためのスイッチオフ箱。
【請求項2】
ハウジング(33)は、トーチ本体(28)とホースパック(23)との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチオフ箱。
【請求項3】
ハウジング(33)は、トーチ本体(28)と、ホースパック(23)が接続されたトーチハンドル(29)との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチオフ箱。
【請求項4】
結合手段(34)は、ハウジング(33)に対して絶縁されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチオフ箱。
【請求項5】
結合手段(34)は、開口(35)を介してハウジング(33)から突出しており、結合手段(34)の他端は、ハウジング(33)の内部で終結していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチオフ箱。
【請求項6】
結合手段(34)は、ハウジング(33)への接触のための支持面(39)を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスイッチオフ箱。
【請求項7】
支持面(39)は、結合手段(34)に直接形成されていることを特徴とする請求項6記載のスイッチオフ箱。
【請求項8】
前記支持面(39)は、L字状断面を有する外部リング(40)によって形成されていることを特徴とする請求項6記載のスイッチオフ箱。
【請求項9】
ハウジング(33)への点接触のために、複数の突起(41)が外部リング(40)および支持面(39)にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のスイッチオフ箱。
【請求項10】
結合手段(34)の固定は、外部リング(40)および支持面(39)をそれぞれ介して、ネジ接続(42)によって実現され、スプリング要素(44)が、ネジ頭(43)と外部リング(40)と支持面(39)の間に配置されていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のスイッチオフ箱。
【請求項11】
接触要素またはスイッチ要素が、突起(41)および支持面(39)にそれぞれ接続されており、個々の接触要素は、ハウジング(33)からの単一の突起(41)の持ち上げによって活性化または不活性化するようになり、信号は、接触要素またはスイッチ要素から、インタフェース接続された制御デバイスまたはロボットシステムへ伝送されることを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載のスイッチオフ箱。
【請求項12】
更なる開口(45)が、ハウジング(33)において、ハウジング(33)の開口(35)の反対側に設けられていることを特徴とする請求項5〜11のいずれかに記載のスイッチオフ箱。
【請求項13】
突起またはネジ山(46)が、ホースパック(23)の外部ホースとの接続のために、ハウジング(33)の一方に配置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のスイッチオフ箱。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−502005(P2006−502005A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542078(P2004−542078)
【出願日】平成15年10月6日(2003.10.6)
【国際出願番号】PCT/AT2003/000300
【国際公開番号】WO2004/033141
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(504380611)フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (65)
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
【Fターム(参考)】