説明

ロボットハンド

【課題】手掌部と指機構と親指機構を備えたロボットハンドであって、大きな物体から小さな物体まで安定して把持可能なロボットハンドを提供すること。
【解決手段】手掌部2と、該手掌部2の先端側領域Tに位置する主手掌部3から延設され前記主手掌部3の内側に向かって屈曲可能とされる指機構30と、前記手掌部の基端側領域に位置する中手部3と、前記中手部3に接続される親指機構40とを備え、前記親指機構40は、前記指機構30を屈曲させたときに前記指機構30が通る面と交差する方向に前記手掌部2の内側に向かって屈曲可能とされ、前記中手部4は、前記親指機構40を屈曲させたときに前記親指機構40が通る面と交差する方向に回動可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手掌部と手掌部から延在する指機構を備えて構成され物体を把持するロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ロボットが物体を把持するために用いられるロボットハンドに関して、手掌部先端部の指機構に加えて手掌部の側方に親指機構を備えた構造とされ、この親指機構を用いて物体を効率的に把持することを目的とするロボットハンドに関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−160448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかるロボットハンドは、外見上の形態は人間の手と似ているものの物体を把持する機能に関しては、人間の手と機能が大きく相違するために把持可能な物体の大きさが限定され、大きい物体から小さい物体までを汎用的に把持することが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、手掌部と指機構と親指機構を備えたロボットハンドに関して、人間の手に近似した動作をすることにより大きな物体から小さな物体までを汎用的に把持可能なロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明にかかるロボットハンドは、手掌部と、該手掌部の先端側領域に位置する主手掌部から延設され前記主手掌部の内側に向かって屈曲可能とされる指機構と、前記手掌部の基端側領域に位置する中手部と、前記中手部に接続される親指機構とを備え、前記親指機構は、前記指機構を屈曲させたときに前記指機構が通る面と交差する方向に前記手掌部の内側に向かって屈曲可能とされ、前記中手部は、前記親指機構を屈曲させたときに前記親指機構が通る面と交差する方向に回動可能とされていることを特徴とする。
【0006】
この発明に係るロボットハンドによれば、中手部を備え、中手部が親指機構を屈曲させたときに親指機構が通る面と交差する方向に回動可能とされているので、人間の手における母子球部同様に親指機構を手掌部先端側領域や指機構側に接近させる動作が可能とされ、人間の手に近い複雑な動作ができる。
したがって、中手部の回動、指機構及び親指機構の伸張、屈曲を制御することにより大きな物体から小さな物体までを容易に把持することが可能とされる。
【0007】
また、前記指機構が前記主手掌部に接続される基端側の第1の回動軸線と、前記中手部が前記主手掌部に対して回動するときの第2の回動軸線とは、前記手掌部の内側から見たときに、平行または前記手掌部の前記親指機構側において45度以下の交差角で交差する構成としてもよい。
【0008】
この発明に係るロボットハンドによれば、中手部の回動方向は、指機構が屈曲する際に通過する面に対して45度以下の交差角で交差するように構成されているので、物体を把持した際に手掌部の巾方向に力が発生するのを抑制しつつ、指機構、主手掌部、中手部により形成可能な空間を大きな寸法範囲で変化させることができる。
【0009】
また、前記中手部は、前記主手掌部の内側の面より突出して形成されていてもよい。
この発明に係るロボットハンドによれば、中手部は、前記主手掌部の内側の面より突出して形成されているので、親指機構を用いることなく指機構と中手部による物体の把持が可能とされる。
【0010】
なお、この明細書において、手掌部、主手掌部、指機構に関しては、物体を把持する際に物体と対向する側を内側とし、親指機構に関しては指機構の内側に相当する側を、中手部に関しては親指機構を屈曲させた場合に親指機構の内側と対向する側を内側とする。
また、親指機構、中手部に関して、ロボットハンドが物体を把持する場合に物体と当接する手掌部の先端側に位置する側の面を把持面という。
また、手掌部に延設された指機構を伸ばした場合に指機構が伸びる方向をロボットハンド及び手掌部の長手方向とし、この長手方向に直交する方向をロボットハンド及び手掌部の巾方向とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るロボットハンドによれば、親指機構が設けられた中手部が親指機構の屈曲方向と交差する方向に屈曲可能とされるので人間の手と近い複雑な動作をすることが可能とされ、大きな物体から小さな物体まで安定して把持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1から図4を参照し、この発明の一実施形態に係るロボットハンドについて説明する。
ロボットハンド1は、図1に示すように、手掌部2と、3本の指機構30と、親指機構40とを備え、手掌部2は、先端側領域Tに位置する主手掌部3と、基端側領域Fに位置する中手部4とから構成されている。
また、指機構30は、図2、図3に示すように、手掌部2の先端部に接続されロボットハンド1の長手方向に伸張及び屈曲可能とされ、親指機構40は手掌部2の一方の側に中手部4を介して接続されロボットハンド1の巾方向に伸張及び屈曲可能とされている。
【0013】
この実施形態において、親指機構40が屈曲する際に通る面(矢印S1に沿って形成される面)は、指機構30が屈曲する際に通る面(矢印S2に沿って形成される面)と、直交(交差)するように構成されている。
また、中手部4が回動する際に通る面(矢印S3に沿って形成される面)と、親指機構40が屈曲する際に通る面とは、直交するように構成されている。
【0014】
手掌部2は、手掌部2の外側(内側とは反対側、人間の手における甲の側)から見た場合に手掌部2の基端側(手首側)が接続されたコの字型の枠体21と、この枠体21の手掌部2巾方向の両側に配置された2枚の側壁部材22と、手掌部2の内側に配置された3枚の内壁部材23と、中手部4と、中手部駆動装置5とを備えている。
【0015】
枠体21及び側壁部材22は、手掌部2先端側の内側近傍に手掌部2と指機構30とを接続する第1のヒンジ部34Aをなす取付孔が形成されており、指機構30の基端側がこの取付孔に支持ピンを介して接続されことにより指機構30は手掌部2に対して第1の回動軸線J1廻りに回動自在とされている。
【0016】
また、手掌部2内側の面には、中手部支持部材41が配設され、中手部支持部材41には中手部4を手掌部2に接続する中手ヒンジ部4Aを構成する取付孔が形成されている。
中手部4は、概略直方体の筒状に形成され、中手部4の手掌部2先端側が中手部支持部材41の中手ヒンジ部4Aを構成する取付孔に支持ピンにより接続されることにより、中手部4は手掌部2の内側面から離間した位置に形成される第2の回動軸線J2廻りに回動自在とされている。
【0017】
本実施形態において、中手部4が回動する際の回動軸線J2は、回動軸線J1と平行に形成されており、その結果、中手部4が回動する際に通る面は、指機構30が屈曲する際に通る面と平行とされている。
【0018】
また、中手部4は、手掌部2に対して主手掌部3の内側面から突出した状態で配置され、一端に形成された取付孔に支持ピンを介して親指機構40が接続されている。
なお、親指機構40と中手部4の接続は第1のヒンジ部34Aと同一に構成され、図1から図3において第1のヒンジ部34Aとして示している。
【0019】
中手部駆動装置5は、例えば、手掌部2の長手方向に配置されたモータと、モータの軸部に取付けられたウォームギアと、中手部4と回動軸線J2上で接続されるとともにウォームギアと契合するホイールにより構成され、モータで駆動されたウォームギアが回転することによりウォームギアがホイールを回動させ、ホイールの回動に連動して中手部4が回動されるようになっている。
なお、中手部駆動装置5は、中手部4を回動させるものであれば、その構成は自在に選択可能である。
【0020】
本実施形態における指機構30は、伸張することにより手掌部2の先端部から前方に伸び、屈曲することにより指機構30の内側が手掌部2の内側と対向可能に構成されている。
また、親指機構40は、伸張することにより手掌部2の一端から手掌部2の巾方向外方に伸びるとともに、屈曲させることにより親指機構40の内側が中手部4の内側と対向可能に構成されている。
【0021】
図4は、本実施の形態に係る指機構30のリンク機構の一例を示す図であり、図4(A)は指機構30を伸張した状態における概略側面図、図4(B)は指機構30を屈曲させた状態における概略側面図である。図4(A)、図4(B)は、指機構30の第1の構成部材31、第2の構成部材32、第3の構成部材33、連結部材35の一方側の壁部を取り除いた状態を概略図示している。
なお、親指機構40を構成するリンク機構は、この実施形態において指機構30と同一とされ、同一の符号を付して示す。
【0022】
指機構30は、手掌部2の内側及び先端側から見た場合にそれぞれ左右対称とされた、第1構成部材(リンク)31と、第2構成部材(リンク)32と、第3構成部材(リンク)33と、第1のヒンジ部34Aと、第2のヒンジ部34Bと、第3のヒンジ部34Cと、連結部材35と、第1の直動装置36及び第2の直動装置37とから概略構成されている。
【0023】
第1構成部材31、第2構成部材32、第3構成部材33は、それぞれの左右の壁部を構成する1対の平板とこれら左右の平板を連結、支持する支持部材により構成されている。
また、第2の構成部材32は、第1の構成部材31又は第3の構成部材33の接続部分において、第1の構成部材31又は第3の構成部材33は最外方に配置され、その内側に連結部材35、第2の構成部材32の順に配置されている。
【0024】
また、第1の構成部材31、第2の構成部材32、第3の構成部材33を左右で連結、支持する支持部材は、第1の構成部材31、第2の構成部材32、第3の構成部材33における第1のヒンジ部34A、第2のヒンジ部34B、第3のヒンジ部34Cを構成し、それぞれの回動軸線を形成するようになっている。
【0025】
指機構30は、伸張された状態では、図4(A)に示すように、主手掌部3、第1構成部材31、第2構成部材32、第3構成部材33がこの順序で縦列配置され、第1構成部材31は、第1のヒンジ部34Aにおいて主手掌部3と連結され、第1構成部材31と第2構成部材32とは第2のヒンジ部34Bにおいて、第2構成部材32と第3構成部材33とは第3のヒンジ部34Cにおいてそれぞれ連結されている。
なお、親指機構40は、基端側が、中手部4の第1のヒンジ部34Aにおいて、回動軸線J3廻りに回動自在に接続されている。
【0026】
連結部材35は、一端が第4のヒンジ部34Dを介して第1構成部材31に回動自在に連結され、他端が円形凸部35Aを介して第3構成部材33に形成された長孔33Aに連結され、円形凸部35Aが長孔33Aの長手方向に移動自在とされるとともに連結部材35は第4のヒンジ部34D廻りに回動自在とされている。
【0027】
また、連結部材35は、第2のヒンジ部34Bと第3のヒンジ部34Cを結ぶ線分に対して、たすき掛けとされるとともに、第4のヒンジ部34Dと円形凸部35Aを結ぶ線分と、第2のヒンジ部34Bと第3のヒンジ部34Cを結ぶ線分とがほぼ等しい長さに形成されており、第1の構成部材31及び第3の構成部材33は、第2の構成部材32に対して同じ角度だけ屈曲するように構成されている。
その結果、第2の構成部材32を屈曲させた場合、第3の構成部材33は第1の構成部材31に対して、第2の構成部材32の2倍の角度で屈曲される。
【0028】
長孔33Aは、側面視略矩形状に形成された第3構成部材33の基端側かつ内側の隅部に長手方向に伸びて形成されている。また、この隅部と対角をなす位置、つまり、第3の構成部材33の先端側かつ外側の隅部にピン33Bが固設されており、このピン33Bと連結部材35の先端部との間に(引っ張り)コイルスプリング39が掛けられている。
【0029】
指機構30が物体を把持していない状態、つまり第3の構成部材33に負荷が加わっていないときには、円形凸部35Aは常に長孔33Aの先端側に位置している。そして、指機構30が物体を把持して第3の構成部材33に負荷が加わると、その反力の大小に応じてコイルスプリング39が伸び、又円形凸部35Aが長孔33Aの基端側(第2の構成部材32側)に適宜移動する。これにより、第3の構成部材33が、図4(B)において2点鎖線で示すように物体に対して所定の力を以って接した状態で止められる。
【0030】
上記の構成により、指機構30から物体に加わる力が常にコイルスプリング39の弾性域内に止められ、被把持物体に過大な力が加わることが防止される。また、指機構30がリンクのみからなる場合、物体を把持した際の反力が駆動源であるモータに伝わってモータに過負荷が加わる可能性があるが、上記コイルスプリング39等を設けたことによりモータに過負荷が加わることが抑制される。
【0031】
第1の直動装置36は、第1の直動装置本体36A内部に設けられたモータによってロッド36Rを第1の直動装置本体36Aの長手方向に直線的に駆動するボールねじ機構とされており、第1の直動装置本体36Aと、ロッド36Rを含むボールねじ機構と、軸受けからなるロッド受部材36Gとを備え、第1の直動装置本体36Aの長手方向の略中央位置に設けられた揺動部材36Cにより、枠体21、側壁部材22に対して揺動自在に取り付けられている。
【0032】
また、ロッド36Rの先端は、第1の構成部材31の連結部31Cにおいてロッド受部材36Gと連結され、ロッド36Rが回転しながら前進又は後退する際に前進又は後退運動のみが連結部31Cに伝達されるようになっている。
なお、ロッド受部材36Gは、連結部31Cにおいて第1の構成部材31を構成する左右の壁部を連結、支持している。
【0033】
その結果、直動装置36のロッド36Rを前進させると、第1の構成部材31は指機構30が屈曲する方向に第1のヒンジ部34A廻りに回動され、ロッド36Rを後退させると、第1の構成部材31は指機構30が伸張する方向に第1のヒンジ部34A廻りに回動されている。
【0034】
なお、指機構30及び親指機構40を構成する第1の直動装置36はそれぞれロボットハンド1の内部に配設されており、指機構30を駆動する第1の直動装置36は枠体21の内側及び側壁部材22の間の空間に、親指機構40を駆動するための第1の直動装置36は中手部4内部に親指機構40の長手方向に配置されている。
【0035】
第2の直動装置37は、第1の直動装置36と同様の構成とされており、モータを内蔵した第2の直動装置本体37Aと、ロッド37Rを含むボールねじ機構と、ロッド受部材37Gとを備え、第1の構成部材31の内部に配置されるとともに第2の直動装置本体37Aの長手方向の略中央位置に設けられた揺動部材37Cにより、第1の構成部材31に対して揺動自在に取り付けられている。
【0036】
ロッド37Rの先端は、第2の構成部材32の連結部32Cにおいてロッド受部材37Gと連結され、ロッド37Rが回転しながら前進又は後退する際に前進又は後退運動のみが連結部32Cに伝達されるようになっている。
なお、ロッド受部材37Gは、連結部32Cにおいて第2の構成部材32を構成する左右の壁部を連結、支持している。
【0037】
その結果、直動装置37のロッド37Rを前進させると、第2の構成部材32は指機構30が屈曲する方向に第2のヒンジ部34B廻りに回動され、ロッド37Rを後退させると、第2の構成部材32は指機構30が伸張する方向に第2のヒンジ部3BA廻りに回動され。
【0038】
なお、第1の直動装置36及び第2の直動装置37は、それぞれ独立して駆動可能とされており、主手掌部3に対する第1の構成部材31の伸張及び屈曲と、第1の構成部材31に対する第2の構成部材32及び第3の構成部材33の伸張及び屈曲は、それぞれ独立して制御可能とされている。
【0039】
次に、この実施形態に係るロボットハンド1の作用について、図5を参照して説明する。
1)小さい物体を把持する場合(図5(A)参照)
指機構30に関して、第1の直動装置36を駆動してロッド36Rを前進させて第1の構成部材31を主手掌部3に対して屈曲させるとともに、第2の直動装置37を駆動してロッド37Rを前進させて第2の構成部材32及び第3の構成部材33を屈曲させ、第3の構成部材33の先端が物体に当接させる。
親指機構40に関しては、第3の構成部材33の先端が親指機構40に干渉することなく手掌部2の内側面に接近し易くするため、中手部4の一端から手掌部2の外方側に伸張した状態とされることが好適とされる。
また、必要に応じて、中手部駆動装置5を駆動することにより中手部4を手掌部2先端側に回動させ、中手部4の把持面4Hが物体に当接するようにする。
【0040】
2)中程度の大きさの物体を把持する場合(図5(B)参照)
指機構30に関して、第1の直動装置36を駆動してロッド36Rを前進させることにより第1の構成部材31を、第1の構成部材31の内側面が物体に当接する程度、例えば、第1の構成部材31が主手掌部3に対して直交する程度まで屈曲させるとともに、第2のの直動装置37を駆動してロッド37Rを前進させることにより第3の構成部材33の内側面が物体に当接するまで第2の構成部材32及び第3の構成部材33を屈曲させる。
中手部4は、物体の大きさに応じて中手部4の把持面4Hが物体に当接するまで回動させ、回動させる必要がない場合には主手掌部3に対して回動しない状態とする。
また、親指機構40は、必要に応じて伸張し又は屈曲される。
【0041】
3)大きな物体を把持する場合(図5(C)参照)
指機構30に関して、第1の直動装置36及び第2の直動装置37を駆動して第1の構成部材31及び第3の構成部材33が物体に当接するまで、第1の構成部材31、第2の構成部材32、第3の構成部材33を屈曲させる。このとき、物体の中心が、主手掌部3の内側面と第3の構成部材33の先端の間に配置されるとともに、物体の上部が第3の構成部材33により保持されていることが好適である。
中手部4を主手掌部3に対して回動させない状態とし、親指機構40は、第1の直動装置36、第2の直動装置37を物体の大きさに応じて駆動し、親指機構40の手掌部2の把持面40Hが物体に当接するように屈曲させる。
親指機構40の屈曲に関しては、物体の中心が主手掌部3の内側面と第3の構成部材33の先端の間に配置されるとともに、物体が親指機構40の第1の構成部材31又は第3の構成部材33の把持面40Hにより保持されることが好適であり、親指機構40を伸張させることにより大きな物体の把持が容易となる。
なお、第1の構成部材31、第2の構成部材32、第3の構成部材33が物体の上部に廻り込ませて物体を保持し易くするために、必要に応じて中手部4を回動させてもよい。
【0042】
この実施の形態に係るロボットハンド1によれば、中手部4が手掌部2に対して回動可能とされ、親指機構40が屈曲する場合に通る面と中手部4が回動する場合に通る面が直交しているので、人間の手における母子球部のように親指機構40に複雑な動作を付与することが可能とされ、親指機構40を手掌部2先端側領域Tや指機構30側に容易に接近させることができる。
その結果、指機構30、親指機構40の屈曲、及び中手部4の回動を制御することにより大きな物体から小さな物体まで容易に把持することが可能とされる。
【0043】
また、手掌部2に対する指機構30の回動軸線J1と中手部4の回動軸線J2が平行とされて、指機構30と中手部4が互いに対向する方向に移動するので、物体に手掌部2の巾方向の力が発生することが抑制され物体を安定して把持することができる。
【0044】
また、中手部4が手掌部2の主手掌部3の内側面より突出して形成されているので、指機構30と中手部4により物体を把持することができる。
【0045】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、中手部4が主手掌部3の内側の面より突出して形成されている場合について説明したが、例えば、中手部4の内側の面を、主手掌部3の内側の面と同一平面上又は主手掌部3の内側の面よりも凹んだ位置に配置してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態においては、手掌部2の内側から見た場合に、回動軸線J2が回動軸線J1と平行に延在する場合について説明したが、回動軸線J2と回動軸線J1とが手掌部2の親指機構40側において45度以下の交差角をもって交差する構成としてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態においては、ロボットハンド1に3本の指機構30が延設され、指機構30及び親指機構40が、第1の構成部材31、第2の構成部材32、第3の構成部材33の3つのリンクにより構成される場合について説明したが、ロボットハンド1に設けられる指機構30の数、指機構30、親指機構40を構成するリンクの数、指機構30の構造等については任意に設定することが可能であり、指機構30、親指機構40の構造に関し、リンク機構を用いない構造としてもよい。また、指機構30と、親指機構40とを異なる構造としてもよい。
【0048】
さらに、上述したロボットハンドでは指機構30としてリンク機構が用いられているが、これに限らず、屈曲自在で指として機能する構成のものであれば適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの概略を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの概略構成を説明する斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの概略構成を説明する斜視図である。
【図4】本実施形態に係るロボットハンドの指機構を説明する概略側面図であり、(A)は指機構を伸張した状態、(B)は指機構を屈曲した状態を示している。
【図5】本実施形態に係るロボットハンドの作用を説明する図であり、(A)は小さな物体を把持する場合を、(B)は中程度の大きさの物体を把持する場合を、(C)は大きな物体を把持する場合の状態を示している。
【符号の説明】
【0050】
T 先端側領域
F 基端側領域
J1 第1の回動軸線
J2 第2の回動軸線
1 ロボットハンド
2 手掌部
3 主手掌部
4 中手部
30 指機構
40 親指機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手掌部と、
該手掌部の先端側領域に位置する主手掌部から延設され前記主手掌部の内側に向かって屈曲可能とされる指機構と、
前記手掌部の基端側領域に位置する中手部と、
前記中手部に接続される親指機構とを備え、
前記親指機構は、
前記指機構を屈曲させたときに前記指機構が通る面と交差する方向に前記手掌部の内側に向かって屈曲可能とされ、
前記中手部は、前記親指機構を屈曲させたときに前記親指機構が通る面と交差する方向に回動可能とされていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記指機構が前記主手掌部に接続される基端側の第1の回動軸線と、
前記中手部が前記主手掌部に対して回動するときの第2の回動軸線とは、
前記手掌部の内側から見たときに、平行または前記手掌部の前記親指機構側において45度以下の交差角で交差することを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記中手部は、前記主手掌部の内側の面より突出して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロボットハンド。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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