説明

ロボットハンド

【課題】任意の形状を有する対象物体を安定して把持することができるロボットハンド機構を提供することにある。
【解決手段】ロボットハンド機構においては、第1及び第2可動部305A、305Bが直動機構304に移動可能に支持される。第1可動部305Aは、接続機構401を介して指部101Aの受動回転部104及び指部101Cの受動回転部104に結合される。第2可動部305Bは、接続機構401を介して指部101Bの受動回転部104及び指部101Dの受動回転部104に結合される。直動機構が駆動モータ301によって駆動されると、第1及び第2可動部305A、305Bが互いに反対向きに移動される。第1及び第2可動部305A、305Bの直動運動に伴って、接続機構401によって各受動回転部104が回転される。この結果、指部101A、101B、101C、101Dの駆動方向が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体を把持するためにマニピュレータの先端に取り付けられるロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業及びサービス業のみならず、家庭内においても、人手による作業を代行するロボットに対して高い需要があり、このようなロボットは、対象物体を把持するエンドエフェクトとしてのロボットハンド機構を備えている。例えば、飲食業界では、人手不足対策として、自動的に配膳及び下膳作業を行うロボット等の自動機器が使用されている。配膳及び下膳作業では、皿、椀、コップ、トレイ、箸、スプーン等の大きさ及び形状の異なる食器を扱うことから、ロボットハンド機構においては、任意の形状の対象物体を任意の方向から安定的に把持することができることが望まれる。しかしながら、1つのロボットハンド機構で他種多様な対象物体を把持することは困難とされる。
【0003】
特許文献1には、3本の指部を備え、これらの指部を内転及び外転(即ち、横方向への開閉)させて、指部の駆動方向を変更するバレットハンドが開示されている。このバレットハンドは、茶碗を上から鷲掴みにしたり、コップを横から把持することができる。しかしながら、指部を完全には対向させることができないため、箸及びスプーン等の細長い形状の対象物体を把持することは困難とされる。さらに、茶碗等の対象物体を裏返しにする場合、拇指対向になっていない3本指では不安定であり、対象物体を落下させ、対象物体を損傷させる虞がある。
【0004】
また、バレットハンドでは、指部の内転及び外転用に1つのモータが使用されている。対象物体を把持しているときに指部に作用する外力に抗して把持状態を維持するには、このモータに大きなトルクを発生することができることが必要とされ、或いは、強力な減速器が必要とされる。さらに、指部の駆動方向を変更する機構には、歯車が利用されている。歯車の噛み合いによって対象物体を保持しているので、指部に作用する外力に対して弱い。即ち、大きな外力が指部に作用すると、歯車の歯が破損する問題がある。また、歯車の噛み合い音による騒音が発生する。
【0005】
特許文献2には、4本の指部を備え、各指部がワイヤの伸縮動作によって開閉されるハンド機構が開示されている。このハンド機構では、指部の基端部に設けられたベアリンクによって各指部の駆動方向が変更される。しかしながら、指部の駆動方向を変更する機構は、ハンド格納時の省スペース化のためのものであって、対象物体を把持するために指部の駆動方向を能動的に変更することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7168748号明細書
【特許文献1】特開2008−126870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ロボットハンド機構においては、任意の形状の対象物品を安定的に把持することができることが求められている。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、形状及び性質の異なる種々の対象物体を安定的に把持することができるロボットハンド機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、基部と、前記基部に対向して配置され、駆動モータの回転運動を直動運動に変換する直動機構と、前記直動機構によって第1方向に移動可能に支持される第1可動部と、前記第1可動部の一端側に結合され、前記第1可動部の直動運動を、前記第1方向と交差する第2方向の周りの回転運動に変換する第1接続機構と、前記基部に対して回転可能に支持され、前記第1接続機構によって回転される第1受動回転部と、前記第1受動回転部に取り付けられる第1把持部と、前記第1可動部の他端側に結合され、前記第1可動部の直動運動を、前記第2方向の周りの回転運動に変換する第2接続機構と、前記基部に対して回転可能に支持され、前記第2接続機構によって回転される第2受動回転部と、前記第2受動回転部に取り付けられる第2把持部と、を具備することを特徴とするロボットハンド機構が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、任意の形状の対象物体を安定的に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るロボットハンド機構の把持及び解放動作の一例を説明する図である。
【図2】図1に示したロボットハンド機構が備える3つの動作モードを説明する図である。
【図3】本実施の形態に係るロボットハンド機構が備える回転機構の構成を示す概略図である。
【図4】図3に示した回転機構の第1変形例の構成を示す概略図である。
【図5】図3に示した回転装置の第2変形例の構成を示す概略図である。
【図6】(a)は、第1対向移動モードで動作される回転機構、(b)は、対角移動モードで動作される回転機構、(c)は、第2対向移動モードで動作される回転機構、の構成を示す図である。
【図7】図1に示したロボットハンド機構であって、動作モードが変更されても指部間の間隔が一定に保たれることを説明する図である。
【図8】比較例に係るロボットハンド機構であって、動作モードの変更に伴って指部間の間隔が変更されることを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るロボットハンド機構を説明する。なお、以下の実施の形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0013】
まず、図1及び図2を参照して、本実施の形態に係るロボットハンド機構の把持及び解放動作を説明する。本実施の形態のロボットハンド機構は、図1の斜視図及び解放により特定される欄、並びに斜視図及び把持により特定される欄に示されるように、4本の指部101A、101B、101C、101Dを備えている。指部101A、101B、101C、101Dでは、受動回転部104が基部102に対して回転自在に支持軸103によって支持されている。図1及び図2においては、これらの受動回転部104を駆動する回転機構を省略しており、回転機構については図3から図6を参照して後に詳細に説明する。
【0014】
受動回転部104の出力軸105には、対象物体を把持する把持部としての平行リンク機構106が設けられている。平行リンク機構106は、図1の自由度配置図及び解放により特定される欄、並びに自由度配置図及び把持により特定される欄に示されるように、複数の回転部107及びリンクを有している。平行リンク機構106では、図示しないアクチュエータによって、複数の回転部107のうちの1つ(例えば、出力軸105に結合されている回転部)が回転駆動され、対向するリンク108が平行に保たれた状態で、平行リンク機構106が動作される。このように回転部107がアクチュエータによって駆動されることにより、図1の正面図及び把持により特定される欄に示されるように、対向する指部101A及び101B(又は、指部101C及び101D)の平行リンク機構106の先端部が近接され、また、正面図及び解放で特定される欄に示されるように、対向する指部101A及び101B(又は、指部101C及び101D)の平行リンク機構106の先端部が離反される。
【0015】
本実施の形態に係るロボットハンド機構は、例えば、マニピュレータの先端部に取り付けられる。ロボットハンド機構がマニピュレータの先端部に取り付けられる場合、ロボットハンド機構は、対象物体が平行リンク機構106間に位置するように、任意の方向から、例えば、側方又は上方から対象物体に向けられる。
【0016】
本実施の形態では、説明を簡単にするために、基部102が略立方体の箱型に形成され、基部の1つの面(以下、接合面という)上に指部101A、101B、101C、101Dが設けられる場合を例に説明する。基部102の接合面からは、4つの支持軸103が接合面に対して垂直に、かつ直線状に延出され、これらの支持軸103は、夫々基部102に対して回転自在に受動回転部104を支持している。受動回転部104は、その回転軸が互いに平行となるように設計される。また、受動回転部104は、夫々仮想的な平面上に含まれ、この平面上に設定される正方形の頂点に対応する位置に配置される。即ち、受動回転部104は、隣接する受動回転部104と所定の距離だけ離間して配置される。
【0017】
なお、把持部106は、上述したような1自由度を有する平行リンク機構の例に限定されず、複数の自由度を有する平行リンク機構であってもよく、或いは、他のいかなる形態のものであってもよい。
【0018】
図2を参照すると、本実施の形態に係るロボットハンド機構を動作する3つの動作モードが示されている。3つの動作モードは、第1及び第2対向移動モード、並びに対角移動モードを含む。第1対向移動モードは、図2の第1対向移動モードの各欄に示されるように、隣接する指部101A及び101Bが対向し、かつ隣接する指部101C及び101Dが対向して対象物体を把持するモードである。また、対角移動モードは、図2の対角移動モードの各欄に示されるように、対角に配置される指部101A及び101Dが対向し、かつ対角に配置される指部101B及び101Cが対向して対象物体を把持するモードである。さらに、第2平行移動モードは、図2の第2対向移動モードの各欄に示されるように、隣接する指部101A及び101Cが対向し、かつ隣接する指部101B及び101Dが対向して対象物体を把持するモードである。
【0019】
これらの3つの動作モードは、回転機構によって4つの受動回転部104が同時に回転され、これによって各把持部106の駆動方向が変更されて、切り替えられる。図2の平面図の各欄に示されるように、第1対向移動モードから対角移動モードへの移行では、各把持部106が各受動回転部104の回転軸周り所定方向に45°だけ所定方向に回動され、対角移動モードから第2対向移動モードへの移行では、各把持部106が各受動回転部104の回転軸周り所定方向にさらに45°だけ回動される。
【0020】
図3は、把持部106を回転可能に支持する受動回転部104を駆動する回転機構の構成を概略的に示している。この回転機構は、図3に示されるように、基部102に設けられた駆動モータ301の回転運動を第1及び第2可動部305A、305Bの直動運動に変換する直動機構304としてのボールネジ機構を備えている。このボールネジ機構は、基部102の接合面に対向して配置されるボールネジ軸304、及びこのボールネジ軸304にネジ係合された第1及び第2のボールネジナット(第1及び第2可動部)305A、305Bを備え、ボールネジ軸304の一端は、カップリング(軸継手)302を介して駆動モータ301の回転軸に結合され、その他端は、基部102に固定された軸受部303によって回転可能に支持されている。ボールネジ機構では、駆動モータ301によってボールネジ軸304が回転されると、第1及び第2のボールネジナット305A、305Bは、ボールネジ軸304に沿った方向(x方向と称す)に移動される。
【0021】
駆動モータ301が駆動されて駆動モータ301の回転軸が回転されると、この回転軸の回転がボールネジ軸304に伝達され、ボールネジ軸304が回転される。ボールネジ軸304が回転されると、第1及び第2のボールネジナット305A、305Bは、ボールネジ軸304の回転方向に応じた方向に移動される。駆動モータ301の回転軸の回転方向を選択することにより、ボールネジ軸304の回転方向を選択することができ、従って、第1及び第2のボールネジナット305A、305Bの移動方向を決定することができる。
【0022】
また、第1及び第2のボールネジナット305A、305Bの移動方向は、ボールネジ軸304の回転方向とともに、ボールネジ軸304に切られているネジ溝の向きに応じて定まる。図3のボールネジ軸304においては、ボールネジ軸304の中央部と駆動モータ301との間の第1部分304Aと、ボールネジ軸304の中央部と軸受部303との間の第2部分304Bとでは、ネジ溝が反対向きに切られている。第1のボールネジナット305Aは、第1部分304Aに配置され、第2のボールネジナット305Bは、第2部分304Bに配置される。従って、ボールネジ軸304が駆動モータ301によって回転されると、第1及び第2のボールネジナット305A、305Bは、互いに反対向きに移動され、即ち、互いに近接するように、或いは、離反するように移動される。
【0023】
第1のボールネジナット305Aの両端部からは、ボールネジ軸304に交差する方向(y方向と称す)に沿って直線状に第1リンク306が延出されている。第1リンク306の端部には、夫々x方向及びy方向に交差する方向(z方向と称す)に突出するピン307が設けられている。このピン307は、夫々受動回転部104の出力軸105と一体に形成された第2リンク308に形成されている長穴309にスライド可能かつ回転可能に支持されている。第2リンク308は、一例として、く字型に形成され、即ち、中央部が屈曲した形状を有し、また、中央部を回転軸としてz方向周りに回動される。第2リンク308の回転軸310は、前述したような基部102に対して回転可能に支持されている受動回転部104の回転軸に一致する。
【0024】
第2リンク308の一端部には、第1リンク306に設けられているピン307を係合するための長穴309が形成され、第1のボールネジナット305Aの移動に伴ってピン307がこの長穴309内を摺動して(スライドして)、ピン307と回転軸310との距離が変化される。このようにピン307が長穴309内を摺動する際には、第1リンク306と第2リンク308とがなす角度が変化され、即ち、ピン307を回転軸として第2リンク308が回転される。また、第2リンク308の回転軸310が基部102に対して固定されることから、第1のボールネジナット305Aが矢印Aで示される方向に移動されると、指部101Aでは、第2リンク308が矢印RAで示される方向に回動され、指部101Cでは、第2リンク308が矢印RCで示される方向に、即ち、指部101Aとは反対向きに回動される。第2リンク308の他端部には、図1に示したような把持部106が取り付けられる。
【0025】
第2のボールネジナット305Bに関連する構成は、第1のボールネジナット305Aに関連して上述したものと同様であるため、詳細な説明を省略する。駆動モータ301によってボールネジ軸304が回転されると、第1のボールネジナット305Aは、矢印Aで示される方向に移動され、第2のボールネジナット305Bは、矢印Bで示される方向に、即ち、第1のボールネジナット305Aとは反対の方向に移動される。第2のボールネジナット305Bが矢印Bで示される方向に移動されると、指部101Bでは、第2リンク308が矢印RBで示される方向に回動され、指部101Dでは、第2リンク308が矢印RDで示される方向に、即ち、指部101Bとは反対向きに回動される。
【0026】
このように、本実施の形態に係るロボットハンド機構では、単一の駆動モータ301によって複数の指部101A、101B、101C、101Dの駆動方向が同時に変更される。
【0027】
なお、第1リンク306の先端部にピン307が設けられ、第2リンク308にこのピンをスライド可能及び回転可能に係合するための長穴が形成される例に代えて、第2リンク308の端部にピンが設けられ、第1リンク306にこのピンをスライド可能及び回転可能に係合するための長穴が形成されてもよい。
【0028】
次に、図4及び図5を参照して、回転機構の第1及び第2変形例を説明するとともに、図6(a)〜(c)を参照して第1変形例に係る回転機構の動作を説明する。
図4は、図3に示した回転機構の第1変形例を示している。第1変形例では、第1及び第2可動部305A、305Bは、図4に示されるように、互いに反対方向に移動可能に、図3に示した基部102上に設けられた1軸直動機構304によって支持されている。この直動機構304は、図3に示したボールネジ機構の例に限定されず、駆動モータ301の回転運動を可動部305A、305Bの直動運動に変換することができればよく、例えば、ラック及びピニオンを利用したものであってもよい。
【0029】
ボールネジ機構は、駆動モータ301の出力を高効率で伝達することができる。従って、直動機構304としてボールネジ機構を利用する場合、指部の駆動方向を変更するための駆動モータ301として、低出力の駆動モータを使用することができる。また、対象物体の把持しているときに指部101A、101B、101C、101Dに強い外力が作用した場合でも指部101A、101B、101C、101Dの把持姿勢が維持される。
【0030】
指部101Aの受動回転部104は、第1接続機構401を介して第1可動部305Aに結合されている。第1接続機構401は、可動リンク402を直動自在に支持する直動機械要素403及び可動リンク402回転自在に支持する回転機械要素404を備える。直動機械要素403は、第1可動部305Aに固定された第1リンク306及び可動リンク402間に設けられ、回転機械要素404は、可動リンク402及び第2リンク308間に設けられる。第1接続機構401は、第1可動部305Aの直動運動を指部101Aの受動回転部104の回転運動に変換する。
【0031】
同様に、指部101Cの受動回転部104は、第2接続機構401を介して第1可動部305Aに結合される。第2接続機構401は、第1可動部305Aの直動運動を指部101Cの受動回転部104の回転運動に変換する。また同様に、指部101Bの受動回転部104は、第3接続機構401を介して第2可動部305Bに結合される。第3接続機構401は、第2可動部305Bの直動運動を指部101Bの受動回転部104の回転運動に変換する。さらに、指部101Dの受動回転部104は、第4接続機構401を介して第2可動部305Bに結合される。第4接続機構401は、第2可動部305Bの直動運動を指部101Dの受動回転部104の回転運動に変換する。
【0032】
図3に示される例では、接続機構(第1乃至第4接続機構を含む)401は、第1リンク306に設けられたピン307及び第2リンク308に設けられた長穴309の組み合わせにより実現される。他の例では、接続機構401は、直動スライダ及びベアリングの組み合わせにより実現されてもよい。接続機構401が直動スライダ及びベアリングの組み合わせにより実現される例では、第1リンク306の先端部に、案内レール及びこの案内レール上をy方向移動可能に支持される可動リンク402を備えた直動スライダが設けられる。ベアリングは、可動リンク402及び第2リンク308間に配置され、これら可動リンク402及び第2リンク308をz方向周りに回転可能に支持する。さらに、接続機構401は、図5に示されるように、直動機械要素403及び回転機械要素404の配置を入れ替えてもよい。
【0033】
次に、図6(a)〜(c)を参照して、図3に示した回転機構の動作について説明する。
図6(a)〜(c)は、夫々第1対向移動モードで動作されるロボットハンド機構の構成、対角移動モードで動作されるロボットハンド機構の構成、及び第2対向移動モードで動作されるロボットハンド機構の構成を示している。ロボットハンド機構が第1対向移動モードから対角移動モードに移行する場合、図6(a)に示されるように、駆動モータ301によって、第1及び第2可動部305A、305Bが互いに離反される方向に移動される。第1可動部305Aがx方向に移動されると、指部101Aの直動機械要素403及び指部101Cの直動機械要素403は、夫々第1可動部305Aとともにx方向に移動され、指部101Aの回転機械要素404及び指部101Cの回転機械要素404は、夫々指部101Aの受動回転部104及び指部101Cの受動回転部104を中心とする円軌道上を移動される。この際、指部101Aの可動リンク402及び指部101Cの可動リンク402がy方向にスライドされて第1可動部305A及び受動回転部104間の距離が短縮され、また、可動リンク402及び第2リンク308がなす角度が増大される。
【0034】
同様に、第2可動部305Bがx方向であって、第1可動部305Aとは反対向きに移動されると、指部101Bの直動機械要素403及び指部101Dの直動機械要素403は、夫々第2可動部305Bとともにx方向に移動され、指部101Bの回転機械要素404及び指部101Dの回転機械要素404は、夫々指部101Bの受動回転部104及び指部101Dの受動回転部104を中心とする円軌道上を移動される。この際、指部101Bの可動リンク402及び指部101Dの可動リンク402がy方向にスライドされて第2可動部305B及び受動回転部間104の距離が短縮され、また、可動リンク及び第2リンクがなす角度が増大される。第1対向移動モードから対角移動モードへの移行では、図6(a)及び(b)に示されるように、各受動回転部104が45度だけ回転される。受動回転部104の回転角度は、駆動モータ301の出力を調節することで制御される。
【0035】
ロボットハンド機構が対角移動モードから第2対向移動モードに移行する場合、図6(b)に示されるように、駆動モータ301によって、第1及び第2可動部305A、305Bが互いに離反される方向に移動される。第1可動部305Aがx方向に移動されると、指部101Aの直動機械要素403及び指部101Cの直動機械要素403は、夫々第1可動部305Aとともにx方向に移動され、指部101Aの回転機械要素404及び指部101Cの回転機械要素404は、夫々指部101Aの受動回転部104及び指部101Cの受動回転部104を中心とする円軌道上を移動される。この際、指部101Aの可動リンク402及び指部101Cの可動リンク402がy方向にスライドされて第1可動部305A及び受動回転部104間の距離が伸張され、また、可動リンク402及び第2リンク308がなす角度が増大される。
【0036】
同様に、第2可動部305Bがx方向に移動されると、指部101Bの直動機械要素403及び指部101Dの直動機械要素403は、夫々第2可動部305Bとともにx方向に移動され、指部101Bの回転機械要素404及び指部101Dの回転機械要素404は、夫々指部101Bの受動回転部104及び指部101Dの受動回転部104を中心とする円軌道上を移動される。この際、指部101Bの可動リンク402及び指部101Dの可動リンク402がy方向にスライドされて第2可動部305B及び受動回転部間104の距離が伸張され、また、可動リンク及び第2リンクがなす角度が増大される。第1対向移動モードから対角移動モードへの移行では、図6(b)及び(c)に示されるように、各受動回転部104が45度だけ回転される。
【0037】
第2対向移動モードから対角移動モードへの移行、及び対角移動モードから第1対向移動モードへの移行は、夫々、対角移動モードから第2対向移動モードへの移行、及び第1対向移動モードから対角移動モードへの移行と逆の動作であるため、その説明を省略する。
【0038】
本実施の形態に係るロボットハンド機構では、図7に示されるように、指部101A、101B、101C、101Dの駆動方向が変更されても、指部101A、101B、101C、101Dの基部に対する位置は、変化されない。以下では、指部の駆動方向を変える際に、指部の位置が移動されるロボットハンド機構を比較例として、本実施の形態と比較例とを比較して説明する。
【0039】
比較例に係るロボットハンド機構は、本実施の形態と同様に、4本の指部801A、801B、801C、801Dを備え、第1及び第2対向移動モード及び対角移動モードで動作される。比較例では、図8に示されるように、指部801A、801B、801C、801Dが夫々円軌道上を移動されることで、指部801A、801B、801C、801Dの駆動方向が変更され、即ち、動作モードが変更される。より具体的には、対角移動モードでの指部801A及び801C間の距離を基準とすると、第1対向移動モードでの指部801A及び801C間の距離が基準よりも大きくなる。
【0040】
比較的に小さい対象物体を把持する場合、比較例のロボットハンド機構は、指部間の間隔が広がっているため、比較的小さな対象物体を把持することができない。他方、本実施の形態のロボットハンド機構は、第1対向移動モードで動作される場合にも、指部間の間隔が小さいことから、このような比較的に小さい対象物体を把持することができる。このように、本実施の形態に係るロボットハンド機構においては、比較例よりも対象物体に対する適用範囲が広い。
【0041】
さらに、比較例に係るロボットハンド機構では、指部が平面(xy平面)上を移動されるため、指部の駆動方向は、2変数(x及びy)の関数で表わされる。他方、本実施の形態に係るロボットハンド機構では、指部101A、101B、101C、101Dの駆動方向は、受動回転部104の回転角度θのみ関数として表わされる。従って、本実施の形態に係るロボットハンド機構においては、比較例よりも制御が容易になる。
【0042】
以上のように、本実施の形態に係るロボットハンド機構においては、対象物体の形状に応じて指部の駆動方向を変更することができ、任意の形状の対象物品を安定的に把持することができる。また、指部の駆動方向の変更を単一の駆動モータで行うことができる。さらに、指部の駆動方向を変更する機構にボールネジ機構が利用される場合、ボールネジ機構が高い伝達効率を有することから、低出力の駆動モータを使用することができる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0044】
101A、101B、101C、101D…指部、102…基部、103…支持部、104…受動回転部、105…出力軸、106…平行リンク機構、107…回転部、108…リンク、301…駆動モータ、302…カップリング、303…軸受部、304…直動機構(ボールネジ軸)、305…可動部(ボールネジナット)、306…第1リンク、307…ピン、308…第2リンク、309…長穴、310…回転軸、401…接続機構、402…可動リンク、403…直動機械要素、404…回転機械要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部に対向して配置され、駆動モータの回転運動を直動運動に変換する直動機構と、
前記直動機構によって第1方向に移動可能に支持される第1可動部と、
前記第1可動部の一端側に結合され、前記第1可動部の直動運動を、前記第1方向と交差する第2方向の周りの回転運動に変換する第1接続機構と、
前記基部に対して回転可能に支持され、前記第1接続機構によって回転される第1受動回転部と、
前記第1受動回転部に取り付けられる第1把持部と、
前記第1可動部の他端側に結合され、前記第1可動部の直動運動を、前記第2方向の周りの回転運動に変換する第2接続機構と、
前記基部に対して回転可能に支持され、前記第2接続機構によって回転される第2受動回転部と、
前記第2受動回転部に取り付けられる第2把持部と、
を具備することを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記直動機構によって前記第1可動部とは反対方向に移動可能に支持される第2可動部と、
前記第2可動部の一端側に結合され、前記第2可動部の直動運動を、前記第2方向の周りの回転運動に変換する第3接続機構と、
前記基部に対して回転可能に支持され、前記第3接続機構によって回転される第3受動回転部と、
前記第3受動回転部に取り付けられる第3把持部と、
前記第2可動部の他端側に結合され、前記第2可動部の直動運動を、前記第2方向の周りの回転運動に変換する第4接続機構と、
前記基部に対して回転可能に支持され、前記第4接続機構によって回転される第4受動回転部と、
前記第4受動回転部に取り付けられる第4把持部と、
をさらに具備する請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記直動機構は、前記第1及び第2可動部を移動させることで、前記第1及び第3把持部が対向し、かつ、前記第2及び第4把持部が対向した第1動作モードと、前記第1及び第2把持部が対向し、かつ、前記第3及び第4把持部が対向した第2動作モードとを切り替えることを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記第1乃至第4接続機構は、可動リンクと、当該可動リンクをスライド可能に支持する直動機械要素と、当該可動リンクを回転可能に支持する回転機械要素とを備えることを特徴とする請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記第1乃至第4接続機構は、先端部にピンが設けられた第1リンクと、当該ピンをスライド可能及び回転可能に支持する長穴が形成された第2リンクと、を備えることを特徴とする請求項3に記載のロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−183475(P2011−183475A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48307(P2010−48307)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト、作業知能(社会・生活分野)の開発、ロバストに作業を実行するための作業知能モジュール群の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】