説明

ロボット用ハンドユニットおよびロボット

【課題】指部の複数の姿勢において、関節駆動部に対する負荷を軽減することが可能なロボット用ハンドユニットを提供する。
【解決手段】このハンドユニット1(ロボット用ハンドユニット)は、根元リンク部124および中間リンク部125と、中間リンク部125を根元リンク部124に対して相対的に回動させる関節駆動部122と、中間リンク部125の根元リンク部124に対する複数の回動位置において、作業対象を把持する際に根元リンク部124に対して係合することによって中間リンク部125が根元リンク部124に対して相対的に回動するのを規制するストッパ部16とを含む人差し指部12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット用ハンドユニットおよびロボットに関し、特に、複数のリンク部を相対的に回動可能な指部を備えるロボット用ハンドユニットおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のリンク部を相対的に回動可能な指部を備えるロボット用ハンドユニットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数のリンク部と、リンク部間に配置され、隣接するリンク部を相対的に回動させる指駆動手段(関節駆動部)とを含む指部を備えたハンド装置(ロボット用ハンドユニット)が開示されている。このハンド装置は、指部が屈曲した状態では、指駆動手段による駆動力だけで指部に加わる外力に対して抗するように構成されている。また、上記特許文献1のハンド装置は、指部が伸展した状態では、隣接するリンク部同士が互いに当接することによって、外力による指部の反りが規制されるように構成されている。これにより、上記特許文献1のハンド装置では、指部が伸展した状態において、指駆動手段による駆動力とは別に、リンク部同士が当接することによっても指部に加わる外力に対して抗することが可能であるので、指駆動手段に対する負荷を軽減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−149444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のハンド装置(ロボット用ハンドユニット)では、指部が伸展した状態でしか隣接するリンク部同士が互いに当接されないので、指部が伸展した単一の姿勢でしか指駆動手段に対する負荷を軽減することができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、指部の複数の姿勢において、関節駆動部に対する負荷を軽減することが可能なロボット用ハンドユニットおよびロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるロボット用ハンドユニットは、第1リンク部および第1リンク部よりも指先側に配置された第2リンク部と、第2リンク部を第1リンク部に対して相対的に回動させる第1関節駆動部と、第2リンク部の第1リンク部に対する複数の回動位置において、作業対象に対して作業する際に第1リンク部および第2リンク部の少なくとも一方に対して係合または当接することによって第2リンク部が第1リンク部に対して相対的に回動するのを規制する第1ストッパ部とを含む第1指部を備える。
【0008】
この発明の第1の局面によるロボット用ハンドユニットでは、上記のように、第2リンク部の第1リンク部に対する複数の回動位置において、作業対象に対して作業する際に第1リンク部および第2リンク部の少なくとも一方に対して係合または当接することによって第2リンク部が第1リンク部に対して相対的に回動するのを規制する第1ストッパ部を第1指部に設けることによって、第2リンク部の複数の回動位置において、第1ストッパ部による係合または当接により、第1指部に加わる外力に対して抗することができるので、第2リンク部の回動位置が異なる第1指部の複数の姿勢において、第1関節駆動部に対する負荷を軽減することができる。
【0009】
この発明の第2の局面におけるロボットは、アーム部と、アーム部の先端部に設けられ、指部を含むロボット用ハンドユニットとを備え、指部は、第1リンク部および第1リンク部よりも指先側に配置された第2リンク部と、第2リンク部を第1リンク部に対して相対的に回動させる関節駆動部と、第2リンク部の第1リンク部に対する複数の回動位置において、作業対象に対して作業する際に第1リンク部および第2リンク部の少なくとも一方に対して係合または当接することによって第2リンク部が第1リンク部に対して相対的に回動するのを規制するストッパ部とを有する。
【0010】
この発明の第2の局面によるロボットでは、上記のように、第2リンク部の第1リンク部に対する複数の回動位置において、作業対象に対して作業する際に第1リンク部および第2リンク部の少なくとも一方に対して係合または当接することによって第2リンク部が第1リンク部に対して相対的に回動するのを規制するストッパ部を指部に設けることによって、第2リンク部の複数の回動位置において、ストッパ部による係合または当接により、指部に加わる外力に対して抗することができるので、第2リンク部の回動位置が異なる指部の複数の姿勢において、関節駆動部に対する負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態によるハンドユニットを備えるロボットの全体構成を示した概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるハンドユニットの構成を示した側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるハンドユニットの人差し指部を示した平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるハンドユニットの人差し指部の押圧部が押圧されていない状態における図3の500−500線に沿った拡大断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるハンドユニットの人差し指部の押圧部が押圧された状態における図3の500−500線に沿った拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるハンドユニットにより小型軽量の対象物を把持する動作を説明するための側面図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるハンドユニットにより大型の対象物を把持する動作を説明するための側面図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるハンドユニットにより大型の対象物が把持された状態を示した側面図である。
【図9】本発明の第2実施形態によるハンドユニットにおいて一対のストッパ部の一方のみが係合位置まで移動された状態を示した拡大断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態によるハンドユニットにおいて一対のストッパ部の両方が係合位置まで移動された状態を示した拡大断面図である。
【図11】本発明の第1および第2実施形態によるハンドユニットの変形例を示した側面図である。
【図12】本発明の第1および第2実施形態によるハンドユニットの変形例の構成を親指部側から見た概略図である。
【図13】本発明の第1および第2実施形態によるハンドユニットの変形例の構成において対象物の把持姿勢を変えた状態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1〜図8を参照して、本発明の第1実施形態によるハンドユニット1を備えたロボット100の構成について説明する。なお、ハンドユニット1は、本発明の「ロボット用ハンドユニット」の一例である。
【0014】
ロボット100は、図1に示すように、本発明の第1実施形態によるハンドユニット1と、アーム部2とを備えている。また、ロボット100は、壁面や床面などの設置面に基台3を介して取り付けられている。
【0015】
アーム部2は、第1アームリンク21、第2アームリンク22、第3アームリンク23、第4アームリンク24、第5アームリンク25、第6アームリンク26およびフランジ27が基台3側から先端に向かって順に連結されることによって構成されている。また、アーム部2には、各アームリンクを回動させる第1アクチュエータ211、第2アクチュエータ221、第3アクチュエータ231、第4アクチュエータ241、第5アクチュエータ251、第6アクチュエータ261および第7アクチュエータ271が設けられている。
【0016】
具体的には、第1アームリンク21は、第1アクチュエータ211を介して基台3に連結されている。また、第1アームリンク21は、第1アクチュエータ211の駆動力により設置面に対して垂直な方向である回動軸211a回りに回動可能に構成されている。また、第2アームリンク22は、第2アクチュエータ221を介して第1アームリンク21に連結されている。また、第2アームリンク22は、第2アクチュエータ221の駆動力により第1アームリンク21に対して回動軸211aに対して直交する回動軸221a回りに回動可能に構成されている。
【0017】
上記第1アームリンク21および第2アームリンク22と同様に、第3アームリンク23、第4アームリンク24、第5アームリンク25、第6アームリンク26およびフランジ27は、それぞれ、第2アームリンク22、第3アームリンク23、第4アームリンク24、第5アームリンク25および第6アームリンク26に対して回動軸231a、回動軸241a、回動軸251a、回動軸261aおよび回動軸271a回りに回動可能に構成されている。
【0018】
また、ハンドユニット1は、アーム部2のフランジ27に取り付けられている。次に、ハンドユニット1の構成について詳細に説明する。
【0019】
ハンドユニット1は、図2に示すように、ハンド基部11と、人間の人差し指に相当する人差し指部12と、人間の親指に相当する親指部13とから主として構成されている。また、ハンドユニット1は、人差し指部12および親指部13による対象物(作業対象)の把持動作(本実施形態では「作業」の一例として、把持動作を挙げている)を制御する指制御部14をさらに備えている。また、ハンド基部11および指制御部14は、掌部15により覆われている。なお、人差し指部12は、本発明の「第1指部」および「指部」の一例であり、親指部13は、本発明の「第2指部」の一例である。また、指制御部14は、本発明の「制御部」の一例である。
【0020】
ハンド基部11の一方端部(図2のZ1方向の端部)には、人差し指部12が取り付けられている。また、ハンド基部11の他方端部(図2のZ2方向の端部)には、親指部13が取り付けられている。
【0021】
人差し指部12は、ハンド基部11から指先に向かって順に配置された関節駆動部121、122および123を含んでいる。関節駆動部121、122および123は、ともにフィードバック制御可能なサーボモータにより構成されている。また、関節駆動部121および122は、根元リンク部124により互いに連結されている。また、関節駆動部122および123は、中間リンク部125により互いに連結されている。また、関節駆動部123には、指先側に延びるように先端リンク部126が取り付けられている。また、先端リンク部126のさらに指先側には、指先端部127と爪部128とが設けられている。指先端部127および爪部128は、先端リンク部126に固定的に設けられており、先端リンク部126と一体的に移動するように構成されている。また、指先端部127は、ゴム等の素材により構成され、柔軟性を有するとともに、対象物に対するすべりを抑制するように構成されている。なお、関節駆動部122は、本発明の「第1関節駆動部」の一例であり、関節駆動部123は、本発明の「第2関節駆動部」の一例である。また、根元リンク部124は、本発明の「第1リンク部」の一例であり、中間リンク部125は、本発明の「第2リンク部」の一例である。また、先端リンク部126は、本発明の「第3リンク部」の一例である。
【0022】
関節駆動部121は、根元リンク部124をハンド基部11に対してZ方向に延びる回動軸121a回りに回動可能に構成されている。また、関節駆動部122は、中間リンク部125を根元リンク部124に対して指幅方向に延びる回動軸122a回りに回動可能に構成されている。また、関節駆動部123は、先端リンク部126を中間リンク部125に対して指幅方向に延びる回動軸123a回りに回動可能に構成されている。また、人差し指部12に対して関節駆動部121〜123の駆動力に抗して関節駆動部121〜123の駆動力よりも大きい外力が加えられた場合には、各リンク部124〜126は、駆動方向とは反対方向に他動的に回動されるように構成されている。すなわち、ハンドユニット1では、後述の一対のストッパ部16および17が機能していない場合において、トルクリミット制御によりトルクリミット値よりも大きい所定の大きさの外力に対して関節駆動部121〜123が回動されることによって対象物の形状に追従するように動作する倣い動作が可能となるので、人差し指部12を対象物に対して柔軟に当接させることが可能となる。
【0023】
また、根元リンク部124は、関節駆動部121および122を連結するリンク124aと、リンク124aを覆うカバー124bとを含んでいる。また、中間リンク部125は、関節駆動部122および123を連結するリンク125aと、リンク125a、関節駆動部122および123を覆うカバー125bとを含んでいる。また、カバー125bの親指部13が配置される側(図2のZ2方向側)の表面には、後述の押圧部18を収納可能な凹部125cが形成されている。
【0024】
また、先端リンク部126は、関節駆動部123に取り付けられたリンク126aと、リンク126aを覆うカバー126bとを含んでいる。また、カバー124b、125bおよび126bは、図2および3に示すように、指幅(図3のY方向の幅)および指の高さ(図2のZ方向の高さ)が略同じになるように形成されている。これにより、第1実施形態の人差し指部12は、人の人差し指の形状(姿勢)に近似した形状に形成されている。
【0025】
親指部13は、図2に示すように、ハンド基部11から指先に向かって順に配置された関節駆動部131、132および133を含んでいる。関節駆動部131、132および133は、ともにサーボモータにより構成されている。なお、関節駆動部131は、本発明の「第3関節駆動部」の一例である。
【0026】
また、関節駆動部131および132は、根元リンク部134により互いに連結されている。また、関節駆動部132および133は、中間リンク部135により互いに連結されている。また、関節駆動部133には、指先側に延びるように先端リンク部136が取り付けられている。また、先端リンク部136のさらに指先側には、指先端部137と爪部138とが設けられている。指先端部137および爪部138は、先端リンク部136に固定的に設けられており、先端リンク部136と一体的に移動するように構成されている。また、指先端部137は、ゴム等の素材により構成され、柔軟性を有するとともに、対象物に対するすべりを抑制するように構成されている。これにより、図6に示すように、小型の対象物110を指先端部127および137で摘む(把持する)際に、対象物が傷つくのを抑制することが可能である。また、対象物がすべることを抑制することができる。
【0027】
関節駆動部131は、根元リンク部134をハンド基部11に対して指幅方向に延びる回動軸131a回りに回動可能に構成されている。また、関節駆動部131は、人差し指部12の関節駆動部121〜123および親指部13の他の関節駆動部132、133よりも駆動力が大きくなるように構成されている。具体的には、人差し指部12の関節駆動部121〜123および親指部13の他の関節駆動部132、133は約20Wの駆動出力を有しており、関節駆動部131はそれらの約5倍の約100Wの駆動出力を有している。また、関節駆動部132は、中間リンク部135を根元リンク部134に対して回動軸132a回りに回動可能に構成されている。また、関節駆動部133は、先端リンク部136を中間リンク部135に対して指幅方向の回動軸133a回りに回動可能に構成されている。また、関節駆動部131〜133は、関節駆動部131〜133の駆動力に抗して関節駆動部131〜133の駆動力よりも大きい外力が加えられた場合には、駆動方向とは反対方向に他動的に回動されるように構成されている。すなわち、ハンドユニット1では、関節駆動部131〜133のトルクリミット制御により倣い動作可能であるので、親指部13を対象物に対して柔軟に当接させることが可能である。
【0028】
また、中間リンク部135は、関節駆動部132および133を連結するリンク135aと、リンク135aおよび関節駆動部133を覆うカバー135bとを含んでいる。また、先端リンク部136は、関節駆動部133に取り付けられたリンク136aと、リンク136aを覆うカバー136bとを含んでいる。また、カバー135bおよび136bは、図2に示すように、指の高さ(図2のZ方向の高さ)が略同じになるように形成されている。また、カバー135bおよび136bは、指幅も略同じになるように形成されている。これにより、第1実施形態の親指部13は、人の親指の形状に近似した形状に形成されている。
【0029】
ここで、第1実施形態では、図2〜図5に示すように、人差し指部12の中間リンク部125には、一対のストッパ部16および17と、押圧部18とが設けられている。一対のストッパ部16および17は、カバー125bの内部において、人差し指部12の延びる方向に隣接して配置されている。また、押圧部18は、隣接する一対のストッパ部16および17の間に配置されている。なお、ストッパ部16は、本発明の「第1ストッパ部」の一例であり、ストッパ部17は、本発明の「第2ストッパ部」の一例である。
【0030】
一対のストッパ部16および17は、図3〜図5に示すように、それぞれ、圧縮バネ16aおよび17aを介して中間リンク部125のカバー125bに取り付けられている。具体的には、人差し指部12の根元側に配置された一方のストッパ部16は、圧縮バネ16aによりカバー125bの根元側(図3〜図5のX2方向側)の壁部の内面に取り付けられている。また、人差し指部12の指先側に配置された他方のストッパ部17は、圧縮バネ17aによりカバー125bの指先側(図3〜図5のX1方向側)の壁部の内面に取り付けられている。
【0031】
また、一方のストッパ部16は、圧縮バネ16aの付勢力に抗して根元リンク部124側(図3〜図5のX2方向側)に向かって中間リンク部125の延びる方向に直線移動可能に構成されている。また、ストッパ部16は、根元リンク部124側に向かって延びる突出ピン161を有している。突出ピン161は、図5に示すように、ストッパ部16が根元リンク部124側に向かって移動する際に、カバー125bの開口部125dを介してカバー125bの外側に突出するように構成されている。また、突出ピン161は、カバー125bの外側に突出することによって根元リンク部124のカバー124bに形成された後述のスリット孔124cに係合するように構成されている。突出ピン161は、スリット孔124cに係合することによって、中間リンク部125が根元リンク部124に対して回動するのを規制するように構成されている。
【0032】
また、ストッパ部16は、図4および図5に示すように、他方のストッパ部17に対向する対向面162を有している。また、対向面162は、押圧部18の後述の傾斜面182aに対応する形状に形成されている。具体的には、対向面162は、ストッパ部16の移動方向(図4および図5のX方向)に対して傾斜するように押圧部18の傾斜面182aと略同じ傾斜角度に形成されている。また、対向面162は、押圧部18の傾斜面182aに当接するように配置されている。また、ストッパ部16は、押圧部18の傾斜面182aにより対向面162が押圧されることによって、根元リンク部124側(図4および図5のX2方向側)に向かって移動するように構成されている。なお、対向面162は、本発明の「第2傾斜面」の一例であり、傾斜面182aは、本発明の「第1傾斜面」の一例である。
【0033】
また、他方のストッパ部17は、上記一方のストッパ部16と同様に構成されている。詳細には、他方のストッパ部17は、圧縮バネ17aの付勢力に抗して先端リンク部126側(図3〜図5のX1方向側)に向かって中間リンク部125の延びる方向に直線移動可能に構成されている。また、ストッパ部17は、先端リンク部126側に向かって延びる突出ピン171を有している。突出ピン171は、図5に示すように、ストッパ部17が先端リンク部126側に向かって移動する際に、カバー125bの開口部125eを介してカバー125bの外側に突出するように構成されている。詳細には、突出ピン171は、カバー125bの外側に突出することによって先端リンク部126のカバー126bに形成された後述のスリット孔126cに係合するように構成されている。突出ピン171は、スリット孔126cに係合することによって、先端リンク部126が中間リンク部125に対して回動するのを規制するように構成されている。
【0034】
また、ストッパ部17は、図4および図5に示すように、一方のストッパ部16に対向する対向面172を有している。また、対向面172は、押圧部18の後述の傾斜面182bに対応する形状に形成されている。具体的には、対向面172は、ストッパ部17の移動方向(図4および図5のX方向)に対して傾斜するように押圧部18の傾斜面182bと略同じ傾斜角度に形成されている。また、対向面172は、押圧部18の傾斜面182bに当接するように配置されている。また、ストッパ部17は、押圧部18の傾斜面182bにより対向面172が押圧されることによって、先端リンク部126側(図4および図5のX1方向側)に向かって移動するように構成されている。
【0035】
押圧部18は、図2〜図5に示すように、中間リンク部125の親指部13が配置される側(図2〜図5のZ2方向側)に配置されている。また、押圧部18は、図4および図5に示すように、対象物が当接される当接部181と、傾斜面182aおよび182bを有する挿入部182とを含んでいる。また、当接部181は、親指部13に対向するように配置されている。また、当接部181は、中間リンク部125の延びる方向(図4および図5のX方向)に挿入部182よりも張り出した張出部181aを有している。また、挿入部182は、カバー125bの凹部125cに設けられた開口部125fを介してカバー125bの内部に挿入されている。また、挿入部182は、人差し指部12の腹側(図4および図5のZ2方向側)から背側(図4および図5のZ1方向側)に向かって先細りのテーパ形状に形成されている。具体的には、挿入部182の傾斜面182aおよび182bは、それぞれ、ストッパ部16および17に対向するように配置されている。また、傾斜面182aおよび182bは、対象物による押圧方向(図4および図5のZ1方向)に対して傾斜するように形成されている。また、傾斜面182aおよび182bは、人差し指部12の腹側から背側に向かって互いに徐々に接近する方向に傾斜している。
【0036】
また、押圧部18は、当接部181が対象物により押圧されることによって、押圧方向(図4および図5のZ1方向)に移動するように構成されている。具体的には、押圧部18は、人差し指部12の腹側から背側に向かって移動可能に構成されている。また、挿入部182は、図5に示すように、当接部181が押圧された場合に、一対のストッパ部16および17を両側に押し退けるようにしてそれらの間に挿入されるように構成されている。具体的には、挿入部182は、人差し指部12の腹側から背側に向かって移動するのに伴って、傾斜面182aおよび182bにより、それぞれ、対向面162および対向面172を押圧するように構成されている。この際、挿入部182は、圧縮バネ16aおよび17aの付勢力に抗してストッパ部16およびストッパ部17を押圧するように構成されている。また、押圧部18は、押圧方向に移動する際に、当接部181の張出部181aがカバー125bの開口部125fの周囲の部分に当接するように構成されている。これにより、押圧部18が所定量以上押圧方向に移動するのを防止することが可能である。また、当接部181は、張出部181aがカバー125bに当接した状態において、凹部125cの内部に収納されている。
【0037】
また、押圧部18は、図4に示すように、当接部181への押圧力が解除されると、圧縮バネ16aおよび17aの付勢力により、人差し指部12の背側から腹側に向かって移動されるように構成されている。具体的には、押圧部18は、ストッパ部16の対向面162およびストッパ部17の対向面172により挿入部182の傾斜面182aおよび182bがそれぞれ押圧されることによって、押圧方向とは反対方向(図4および図5のZ2方向)に移動されるように構成されている。これにより、押圧部18は、当接部181が凹部125cの内部に収納された図5の位置から当接部181が凹部125cの外側に配置された図4の位置に移動される。
【0038】
また、図4および図5に示すように、根元リンク部124のカバー124bの中間リンク部125側の端部近傍には、ストッパ部16の突出ピン161に係合可能なようにスリット状に形成された3つのスリット孔124cが形成されている。詳細には、カバー124bの中間リンク部125側の端部近傍の部分は、半円形状に形成されており、3つのスリット孔124cは、この半円形状の部分に45度間隔で形成されている。
【0039】
より詳細には、3つのスリット孔124cのうちの1つのスリット孔124cは、中間リンク部125が根元リンク部124に対して回動されていない状態(根元リンク部124および中間リンク部125が互いに伸展された状態)において、突出ピン161が挿入可能な位置に配置されている。そして、他の2つのスリット孔124cは、それぞれ、上記1つのスリット孔124cに対して±45度の位置に形成されている。すなわち、3つのスリット孔124cは、中間リンク部125が根元リンク部124に対して回動されていない状態(根元リンク部124および中間リンク部125が互いに伸展された状態)、および、中間リンク部125が根元リンク部124に対して±45度回動された屈曲状態において、突出ピン161がいずれかのスリット孔124cに挿入可能なように配置されている。これにより、中間リンク部125が根元リンク部124に対して0度および±45度回動された複数の回動位置において、突出ピン161により、中間リンク部125が根元リンク部124に対して回動するのを規制することが可能である。なお、スリット孔124cは、本発明の「第1係合部」の一例である。
【0040】
先端リンク部126のカバー126bの中間リンク部125側の端部近傍の部分は、上記根元リンク部124のカバー124bの中間リンク部125側の端部近傍の部分と同様に構成されている。具体的には、カバー126bには、3つのスリット孔126cが形成されている。これら3つのスリット孔126cは、ストッパ部16の突出ピン161に対するカバー124bの3つのスリット孔124cと同様に、ストッパ部17の突出ピン171に対して係合可能に構成されている。また、3つのスリット孔126cは、先端リンク部126が中間リンク部125に対して回動されていない状態(先端リンク部126および中間リンク部125が互いに伸展された状態)、および、先端リンク部126が中間リンク部125に対して±45度回動された屈曲状態において、突出ピン171がいずれかのスリット孔126cに挿入可能なように配置されている。これにより、先端リンク部126が中間リンク部125に対して0度および±45度回動された複数の回動位置において、突出ピン171により、先端リンク部126が中間リンク部125に対して回動するのを規制することが可能である。なお、スリット孔126cは、本発明の「第2係合部」の一例である。
【0041】
指制御部14は、図示しない上位装置からの指示に基づいて、ハンドユニット1の把持動作を制御するように構成されている。また、指制御部14は、図示しない配線により各関節駆動部121〜123および131〜133に接続されている。また、指制御部14は、各関節駆動部121〜123および131〜133を互いに独立して駆動させることが可能に構成されている。これにより、ハンドユニット1では、把持する対象物の形状に応じて人差し指部12および親指部13の姿勢を変動させることが可能である。また、指制御部14は、各関節駆動部121〜123および131〜133の回動角度、回動速度および回動トルクを制御可能に構成されている。また、上位装置は、対象物の図示しないIDタグ等を検出したり画像認識したりすることによって、対象物の外形寸法や重量等の情報を取得して取得結果を指制御部14に通知するように構成されている。
【0042】
次に、図6を参照して、人差し指部12の指先端部127および親指部13の指先端部137により、ネジ等の小型軽量の対象物110を把持する動作について説明する。
【0043】
まず、指制御部14により、小型の対象物を人差し指部12の指先端部127および親指部13の指先端部137により挟み込むように、各関節駆動部121〜123を駆動して人差し指部12の姿勢を把持する対象物110の形状に応じた姿勢とするとともに関節駆動部131〜133を駆動して親指部13の形状を把持する対象物110に応じた姿勢とする。この際、指制御部14により、中間リンク部125に設けられた押圧部18に対象物が当接されないように、人差し指部12および親指部13の姿勢を調整する。これにより、突出ピン161および171が共にスリット孔124cおよび126cのいずれにも係合されていない状態で、人差し指部12の指先端部127および親指部13の指先端部137により小型の対象物100を把持することが可能である。この状態において、人差し指部12に対して関節駆動部121〜123の駆動力に抗して関節駆動部121〜123の駆動力よりも大きい外力が加えられた場合には、関節駆動部121〜123の駆動力が外力に負けて、各リンク部124〜126が関節駆動部121〜123の駆動力による回動方向とは反対方向に回動される。すなわち、各リンク部124〜126が外力に対して倣い動作可能であるので、人差し指部12が対象物110に対して柔軟に当接される。また、親指部13についても同様に、各リンク部134〜136が外力に対して倣い動作可能であるので、親指部13が対象物110に対して柔軟に当接される。
【0044】
次に、図4、図5、図7および図8を参照して、第1実施形態の構成において、人差し指部12および親指部13により、大型の対象物120を把持する動作について説明する。
【0045】
まず、図7に示すように、指制御部14により、対象物120の形状に対応するように、各関節駆動部121〜123を駆動して人差し指部12の姿勢を調整する。具体的には、図4に示すように、指制御部14は、突出ピン161が係合可能な位置に3つのスリット孔124cのいずれかが配置されるように関節駆動部122を駆動するとともに、突出ピン171が係合可能な位置に3つのスリット孔126cのいずれかが配置されるように関節駆動部123を駆動する。すなわち、突出ピン161、中間リンク部125の開口部125dおよび根元リンク部124のスリット孔124cが互いに同一直線上に配置されるとともに、突出ピン171、中間リンク部125の開口部125eおよび先端リンク部126のスリット孔126cが互いに同一直線上に配置される。この際、中間リンク部125に設けられた押圧部18は、対象物120に当接されていない。
【0046】
そして、指制御部14により、対象物120の形状に対応するように、各関節駆動部131〜133を駆動して親指部13の姿勢を調整する。この際、指制御部14により、親指部13の人差し指部12側の表面に対象物120が当接されるように親指部13を配置する。その後、指制御部14により、関節駆動部131を駆動して、親指部13により対象物120を人差し指部12側に移動させて押圧部18に押し付ける。これにより、図5および図8に示すように、押圧部18は、当接部181が対象物により押圧されて押圧方向に移動される。そして、図5に示すように、押圧部18の挿入部182により押圧されたストッパ部16および17が、それぞれ、根元リンク部124側および先端リンク部126側に移動される。これにより、ストッパ部16の突出ピン161が根元リンク部124の対応するスリット孔124cに係合されるとともに、ストッパ部17の突出ピン171が先端リンク部126の対応するスリット孔126cに係合される。このようにストッパ部16(17)の突出ピン161(171)がスリット孔124c(126c)に係合されることによって、中間リンク部125(先端リンク部126)が根元リンク部124(中間リンク部125)に対して回動するのが規制される。
【0047】
第1実施形態では、上記のように、中間リンク部125の根元リンク部124に対する複数の回動位置において、対象物を把持する際に根元リンク部124および中間リンク部125の少なくとも一方に対して係合することによって中間リンク部125が根元リンク部124に対して相対的に回動するのを規制するストッパ部16を人差し指部12に設けることによって、中間リンク部125の複数の回動位置において、ストッパ部16による係合により、人差し指部12に加わる外力に対して抗することができるので、中間リンク部125の回動位置が異なる人差し指部12の複数の姿勢において、関節駆動部122に対する負荷を軽減することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、対象物を把持する際に対象物により押圧される押圧部18を人差し指部12に設け、対象物により押圧された押圧部18が押圧方向(Z1方向)に移動するのに伴って中間リンク部125側から根元リンク部124側に向かって移動されるとともに、根元リンク部124に対して係合することによって中間リンク部125が根元リンク部124に対して相対的に回動するのを規制するようにストッパ部16を構成する。これによって、押圧部18の押圧方向への移動に伴ってストッパ部16を容易に根元リンク部124側に移動させることができるので、ストッパ部16を容易に根元リンク部124に対して係合させることができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、押圧方向(Z1方向)に対して傾斜する傾斜面182aを押圧部18に設け、押圧部18の傾斜面182aに対応する形状の対向面162をストッパ部16に設けるとともに、押圧部18が押圧方向に移動する際に対向面162が傾斜面182aにより押圧されることによって、中間リンク部125側から根元リンク部124側に向かって押圧部18に対する押圧方向と交差する方向に移動するようにストッパ部16を構成する。これによって、押圧部18に対する押圧方向と交差する方向に容易にストッパ部16を移動させることができるので、押圧部18に対する押圧方向と中間リンク部125側から根元リンク部124側に向かう方向とが異なる場合にも、容易に、ストッパ部16を中間リンク部125側から根元リンク部124側に向かって移動させることができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、押圧部18が押圧方向(Z1方向)に移動するのに伴って中間リンク部125側から根元リンク部124側に向かってストッパ部16が移動される際に、根元リンク部124側に設けられた複数のスリット孔124cのいずれかに係合することによって中間リンク部125が根元リンク部124に対して相対的に回動するのを規制するようにストッパ部16を構成する。これによって、ストッパ部16とスリット孔124cとの係合により、確実に、中間リンク部125が根元リンク部124に対して相対的に回動するのを規制することができる。また、複数のスリット孔124cを設けることによって、根元リンク部124に対する中間リンク部125の複数の回動位置で容易にストッパ部16とスリット孔124cとを係合させることができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、中間リンク部125よりも指先側に配置された先端リンク部126と、先端リンク部126を中間リンク部125に対して相対的に回動させる関節駆動部123と、押圧部18により押圧されることによって中間リンク部125側から先端リンク部126側に向かって移動される際に、先端リンク部126側に設けられた複数のスリット孔126cのいずれかに係合することによって先端リンク部126が中間リンク部125に対して相対的に回動するのを規制するストッパ部17とを設けるとともに、押圧部18を、ストッパ部16および17がそれぞれの係合位置まで移動されるようにストッパ部16および17の両方を押圧するように構成する。これによって、1つの押圧部18を用いる簡易な方法でストッパ部16および17の両方を係合位置まで移動させることができるので、容易に、中間リンク部125の根元リンク部124に対する回動および先端リンク部126の中間リンク部125に対する回動の両方を規制することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、根元リンク部124に対してストッパ部16が係合していない状態において、関節駆動部122による駆動力に抗する所定の大きさの外力が加えられた場合に、関節駆動部122による回動方向とは反対方向に回動することによって倣い動作可能に人差し指部12を構成する。これによって、根元リンク部124に対してストッパ部16が係合しないように対象物を把持すれば、対象物を柔軟に把持することができる。これにより、本発明の第1実施形態によるハンドユニット1では、ストッパ部16を機能させて対象物を強固に把持することができるとともに、ストッパ部16を機能させずに対象物を柔軟に把持することもできる。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、人差し指部12との間に対象物を挟み込むことによって対象物を把持する親指部13と、親指部13を人差し指部12側に向かって回動させる関節駆動部131とを設け、関節駆動部131により親指部13が回動されることによって対象物が人差し指部12側に移動されて押圧部18が押圧されるように構成する。これによって、親指部13を回動させる関節駆動部131を用いて、押圧部18を確実に押圧することができるので、ストッパ部16を確実に機能させることができる。
【0054】
また、第1実施形態では、上記のように、親指部13側の関節駆動部131を、人差し指部12側の関節駆動部122よりも駆動力が大きくなるように構成する。これによって、大きな駆動力を有する親指部13側の関節駆動部131により対象物を人差し指部12に押し付ける場合でも、押圧部18が押圧されてストッパ部16が機能するので、より強固に対象物を把持することができる。したがって、人差し指部12側に駆動力の小さい関節駆動部122を用いた場合でも、親指部13側の関節駆動部131の駆動力をより有効に用いることができる。
【0055】
また、第1実施形態では、上記のように、把持動作を制御する指制御部14を設け、指制御部14を、人差し指部12を対象物に対応した姿勢とした状態で、押圧部18が対象物により押圧されるように制御するように構成する。これによって、指制御部14により、人差し指部12の姿勢が対象物に対応するように形成された状態で容易に押圧部18を押圧することができるので、容易に、対象物に対応する姿勢に形成された人差し指部12により対象物を強固に把持することができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、図9および図10を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、突出ピン161、開口部125dおよびスリット孔124cを互いに同一直線上に配置させるとともに、突出ピン171、開口部125eおよびスリット孔126cを互いに同一直線上に配置させた状態で押圧部18を押圧する構成の上記第1実施形態とは異なり、スリット孔124cおよび126cの配置位置に拘わらず押圧部218を押圧可能な構成について説明する。なお、第2実施形態では、上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0057】
第2実施形態では、押圧部218は、弾性変形可能なゴム部材により構成されている。これにより、図9に示すように、ストッパ部16の突出ピン161、開口部125dおよびスリット孔124cが互いに同一直線上に配置されていない状態であっても、ストッパ部16に当接する挿入部182が弾性変形されるので、押圧部218を押圧して押圧方向(図9のZ1方向)に移動することが可能である。
【0058】
次に、図7〜図10を参照して、第2実施形態の構成において、人差し指部12および親指部13により大型の対象物120を把持する動作について説明する。
【0059】
まず、図7に示すように、指制御部14により、対象物120の形状に対応するように、各関節駆動部121〜123を駆動して人差し指部12の姿勢を調整する。第2実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、スリット孔124c(126c)を突出ピン161(171)および中間リンク部125の開口部125d(125e)に対して同一直線上に配置させる必要がない。また、指制御部14により、対象物120の形状に対応するように、各関節駆動部131〜133を駆動して親指部13の姿勢を調整する。そして、指制御部14により、関節駆動部131を駆動して、親指部13により対象物120を人差し指部12側に移動させて押圧部18に押し付ける。これにより、図8に示すように、押圧部18は、当接部181が対象物120により押圧されて押圧方向に移動される。
【0060】
この際、たとえば、図9に示すように、突出ピン171、開口部125eおよびスリット孔126cが互いに同一直線上に配置されている一方、突出ピン161、開口部125dおよびスリット孔124cが互いに同一直線上に配置されていない場合には、ストッパ部17は、突出ピン171がスリット孔126cに係合される係合位置まで移動されるように押圧部18の傾斜面182bにより押圧されるとともに、ストッパ部16は、突出ピン161が根元リンク部124のカバー124bの外側表面に当接されて係合位置まで移動されない。すなわち、押圧部18は、弾性変形することによって一対のストッパ部16および17の一方のみを係合位置まで移動させることが可能である。
【0061】
図9の状態において、先端リンク部126は、ストッパ部17の突出ピン171により、中間リンク部125に対して回動が規制されているとともに、中間リンク部125は、ストッパ部16の突出ピン161がスリット孔124cに係合されていないので、根元リンク部124に対して倣い動作可能(関節駆動部122の駆動力に抗して回動可能)な状態になっている。そして、人差し指部12側の関節駆動部122、123よりも駆動力が大きい親指部13側の関節駆動部131により、対象物120を押圧部18にさらに押し付けると、図10に示すように、中間リンク部125が根元リンク部124に対して回動されて、根元リンク部124のスリット孔124cが突出ピン161および開口部125dに対して同一直線上に配置される。この際、ストッパ部16が係合位置まで移動されることによって、突出ピン161がスリット孔124cに係合される。これにより、中間リンク部125は、根元リンク部124に対して回動するのが突出ピン161により規制される。
【0062】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
第2実施形態では、上記のように、押圧部218を、変形可能に構成するとともに、変形することによってストッパ部16および17の一方のみが係合位置まで移動されるようにストッパ部16および17を押圧することが可能に構成する。これによって、上記第1実施形態の場合とは異なり、スリット孔124cおよび126cの両方が係合可能な位置に配置されるように人差し指部12の姿勢を調整する必要がなく、押圧部218により、ストッパ部16および17を互いに独立して係合位置に移動させることができるので、把持動作を容易に行うことができる。
【0064】
第2実施形態では、上記のように、人差し指部12側の関節駆動部122(123)よりも駆動力が大きくなるように親指部13側の関節駆動部131を構成することによって、人差し指部12側の関節駆動部122(123)を回動させやすくなるので、ストッパ部16(17)が係合可能な状態になるようにスリット孔124c(126c)を容易に移動させることができる。
【0065】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0066】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0067】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、本発明のハンドユニットを、主としてアーム部からなるロボットに適用する例について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明のハンドユニットを、たとえば、人型ロボットなど、主としてアーム部からなるロボット以外のロボットに適用してもよい。
【0068】
また、上記第1および第2実施形態では、一対のストッパ部を設けて2つの回動部分(人間の関節に相当する部分)の回動を規制する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つのストッパ部を設けて1つの回動部分の回動を規制する構成であってもよいし、3つ以上のストッパ部を設けて3つ以上の回動部分の回動を規制する構成であってもよい。たとえば、図11に示すように、人差し指部12の根元の関節駆動部321が指幅方向に延びる回動軸321a回りに回動可能なハンドユニット301の構成において、中間リンク部125に加えて、根元リンク部124にもストッパ部316を設けることによって、押圧部318が押圧された際に根元リンク部124が回動するのをストッパ部316により規制するように構成してもよい。
【0069】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明のストッパ部を人差し指部に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ストッパ部を親指部に設けてもよいし、人差し指部および親指部の両方に設けてもよい。また、図12および図13に示すように、ハンドユニット401に、人差し指部12および親指部13に加えて、人間の小指に相当する小指部402を設けて、人差し指部12および小指部402の両方に本発明のストッパ部を設けてもよい。この場合、ストッパ部を機能させながら、人差し指部12および小指部402の姿勢を独立して変形させることによって把持する対象物の角度を変えることができる。これにより、たとえば、ドリル等の工具を把持する場合に、周辺の作業スペースを考慮して工具の向きを変えながら作業することができるので、作業性を向上させることができる。
【0070】
また、上記第1および第2実施形態では、第2指部としての親指部を用いて対象物を押圧部に押し付けることによって押圧部を押圧する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、親指部を用いることなく、第1指部としての人差し指を移動させることによって押圧部を対象物に押し付ける構成であってもよい。この場合、親指部を用いることなく人差し指部だけで、鉄棒にぶら下がったり買い物袋をぶら下げたりすることができる。また、押圧部を対象物に押し付けるようにしながら人差し指部を対象物に引っ掛けることによって、ストッパ部を機能させた状態で対象物を引き寄せることができる。
【0071】
また、上記第1および第2実施形態では、(第1および第2)係合部としてのスリット孔を45度間隔で3つ設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スリット孔を45度間隔以外の間隔で設けてもよいし、複数であれば、2つまたは4つ以上のスリット孔を設ける構成であってもよい。
【0072】
また、上記第1および第2実施形態では、(第1および第2)係合部の一例として、スリット孔を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ストッパ部と係合可能であれば、たとえば、凸部などスリット孔以外の係合部であってもよい。
【0073】
また、上記第1および第2実施形態では、ストッパ部を第1係合部としてのスリット孔に係合させることによって回動を規制する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、係合により回動を規制する場合に限らず、ストッパ部が第1リンク部および第2リンク部の少なくとも一方に対して当接することによって回動を規制してもよい。たとえば、ストッパ部と第1リンク部および第2リンク部の少なくとも一方との間の摩擦力によって回動を規制する構成であってもよい。このように構成しても、係合の場合と同様に、中間リンク部125の複数の回動位置において、ストッパ部16による当接により、人差し指部12に加わる外力に対して抗することができるので、人差し指部12の複数の姿勢において、関節駆動部122に対する負荷を軽減することができる。
【0074】
また、上記第1および第2実施形態では、第2リンク部としての中間リンク部に設けられたストッパ部16を第1リンク部としての根元リンク部に対して係合させることによって第2リンク部の第1リンク部に対する回動を規制する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ストッパ部を第2リンク部に係合(当接)させることによって第2リンク部の第1リンク部に対する回動を規制する構成であってもよいし、ストッパ部を第1リンク部および第2リンク部の両方に係合(当接)させることによって第2リンク部の第1リンク部に対する回動を規制する構成であってもよい。
【0075】
また、上記第2実施形態では、押圧部をゴム部材により構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、押圧部を、変形可能に構成すれば、ゴム部材以外の材質で構成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、301、401 ハンドユニット(ロボット用ハンドユニット)
2 アーム部
12 人差し指部(第1指部、指部)
13 親指部(第2指部)
14 指制御部(制御部)
16 ストッパ部(第1ストッパ部)
17 ストッパ部(第2ストッパ部)
18、218、318 押圧部
100 ロボット
122 関節駆動部(第1関節駆動部)
123 関節駆動部(第2関節駆動部)
124 根元リンク部(第1リンク部)
124c スリット孔(第1係合部)
125 中間リンク部(第2リンク部)
126 先端リンク部(第3リンク部)
126c スリット孔(第2係合部)
131 関節駆動部(第3関節駆動部)
162 対向面(第2傾斜面)
182a 傾斜面(第1傾斜面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リンク部および前記第1リンク部よりも指先側に配置された第2リンク部と、
前記第2リンク部を前記第1リンク部に対して相対的に回動させる第1関節駆動部と、
前記第2リンク部の前記第1リンク部に対する複数の回動位置において、作業対象に対して作業する際に前記第1リンク部および前記第2リンク部の少なくとも一方に対して係合または当接することによって前記第2リンク部が前記第1リンク部に対して相対的に回動するのを規制する第1ストッパ部とを含む第1指部を備える、ロボット用ハンドユニット。
【請求項2】
前記第1指部は、前記作業対象に対して作業する際に前記作業対象に接触する部分に設けられ、前記作業対象により押圧される押圧部をさらに含み、
前記第1ストッパ部は、前記作業対象により押圧された前記押圧部が押圧方向に移動するのに伴って前記第1リンク部および前記第2リンク部の一方側から他方側に向かって移動されるとともに、前記第1リンク部および前記第2リンク部の他方に対して係合または当接することによって前記第2リンク部が前記第1リンク部に対して相対的に回動するのを規制するように構成されている、請求項1に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項3】
前記押圧部は、前記押圧方向に対して傾斜する第1傾斜面を有し、
前記第1ストッパ部は、前記押圧部の第1傾斜面に対応する形状の第2傾斜面を有し、
前記押圧部が前記押圧方向に移動する際に前記第2傾斜面が前記第1傾斜面により押圧されることによって、前記第1リンク部および前記第2リンク部の一方側から他方側に向かって前記押圧部に対する前記押圧方向と交差する方向に移動するように構成されている、請求項2に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項4】
前記第1ストッパ部は、前記押圧部が前記押圧方向に移動するのに伴って前記第1リンク部および前記第2リンク部の一方側から他方側に向かって移動される際に、前記他方側に設けられた複数の第1係合部のいずれかに係合することによって前記第2リンク部が前記第1リンク部に対して相対的に回動するのを規制するように構成されている、請求項2または3に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項5】
前記第1ストッパ部は、前記押圧部により押圧されることによって前記第2リンク部側から前記第1リンク部側に向かって移動される際に、前記第1リンク部に設けられた前記複数の第1係合部のいずれかに係合するように構成されており、
前記第1指部は、前記第2リンク部よりも指先側に配置された第3リンク部と、前記第3リンク部を前記第2リンク部に対して相対的に回動させる第2関節駆動部と、前記押圧部により押圧されることによって前記第2リンク部側から前記第3リンク部側に向かって移動される際に、前記第3リンク部側に設けられた複数の第2係合部のいずれかに係合することによって前記第3リンク部が前記第2リンク部に対して相対的に回動するのを規制する第2ストッパ部とをさらに含み、
前記押圧部は、前記第1ストッパ部および前記第2ストッパ部がそれぞれの係合位置まで移動されるように前記第1ストッパ部および前記第2ストッパ部の両方を押圧するように構成されている、請求項4に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項6】
前記押圧部は、変形可能に構成されているとともに、変形することによって前記第1ストッパ部および前記第2ストッパ部の一方のみが係合位置まで移動されるように前記第1ストッパ部および前記第2ストッパ部を押圧することが可能に構成されている、請求項5に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項7】
前記第1指部は、前記第1リンク部および前記第2リンク部の少なくとも一方に対して前記第1ストッパ部が係合または当接していない状態において、前記第1関節駆動部による駆動力に抗する所定の大きさの外力が加えられた場合に、前記第1関節駆動部による回動方向とは反対方向に回動することによって倣い動作可能に構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項8】
前記第1指部との間に前記作業対象を挟み込むことによって前記作業対象を把持する第2指部と、
前記第2指部を前記第1指部側に向かって回動させる第3関節駆動部とをさらに備え、
前記第3関節駆動部により前記第2指部が回動されることによって前記作業対象が前記第1指部側に移動されて前記押圧部が押圧されるように構成されている、請求項2〜7のいずれか1項に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項9】
前記第3関節駆動部は、前記第1関節駆動部よりも駆動力が大きくなるように構成されている、請求項8に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項10】
把持動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1指部を前記作業対象に対応した姿勢にした状態で、前記押圧部が前記作業対象により押圧されるように制御するように構成されている、請求項2〜9のいずれか1項に記載のロボット用ハンドユニット。
【請求項11】
アーム部と、
前記アーム部の先端部に設けられ、指部を含むロボット用ハンドユニットとを備え、
前記指部は、
第1リンク部および前記第1リンク部よりも指先側に配置された第2リンク部と、
前記第2リンク部を前記第1リンク部に対して相対的に回動させる関節駆動部と、
前記第2リンク部の前記第1リンク部に対する複数の回動位置において、作業対象に対して作業する際に前記第1リンク部および前記第2リンク部の少なくとも一方に対して係合または当接することによって前記第2リンク部が前記第1リンク部に対して相対的に回動するのを規制するストッパ部とを有する、ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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