説明

ロボット用信号伝達装置およびそれを備えたロボット

【課題】省スペースのロボット用信号伝達装置を提供する。
【解決手段】ロボットのエンドエフェクター50へ信号伝達を行うロボット用信号伝達装置60であって、アーム18と、光導波路を備える光伝送路62と、前記アーム18と前記エンドエフェクター50とのそれぞれに設けられ前記光伝送路62を介して互いに光通信する光通信手段と、前記エンドエフェクター50を動作させる駆動機構40と、を備え、前記駆動機構40は、前記エンドエフェクター50を回転および昇降させる中空部30aを有する作業軸30と、前記エンドエフェクター50を動作させる気体を送風もしくは吸引するフレキシブルチューブと、を有し、前記光導波路は、前記フレキシブルチューブに沿って設けられ、前記フレキシブルチューブは、前記作業軸30の前記中空部30aに収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットを制御する信号を伝達するロボット用信号伝達装置およびそれを備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
各種生産現場において、作業の自動化や省力化のため産業用ロボットが多用されている。産業用ロボットとしては、複数の回動式アームを有し、その終端の回動式アームの回動端部に作業軸を設けたスカラー型ロボットが知られている。この種のスカラー型ロボットは、例えば、基台に、水平方向へ延びる第1のアームを回動自在に設けるとともに、この第1のアームの回動端部の上部に水平方向へ延びる第2のアームを回動自在に設け、この第2のアームの回動端部に作業軸を設けている。この作業軸は、軸線が上下方向を指向し、第2のアームに上下方向へ移動自在に支持されるとともに、回転自在に支持されている。第1のアームを駆動するモーターは基台内に設けられ、第2のアームを駆動するモーターは、第2のアームの基端部に設けられている。また、第2のアームには、作業軸を回転駆動するための回転駆動装置と、作業軸を昇降させる昇降装置とが設けられている。この作業軸の下端部には、作業対象物に作業を実施するロボットハンド等のエンドエフェクターが取り付けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−170184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、産業用ロボットによる作業の高度化や精密化に伴い、ロボットハンド等のエンドエフェクターに求められる機能がより高度化、高精度化している。そのため、エンドエフェクターには、電磁バルブ等の駆動部材やカメラを含む各種センサー、および、それらを制御するコントローラー等が搭載される。その結果、エンドエフェクターの動作を制御するための制御信号の送信や各種センサーからのデータの授受を行うために、多くの信号線が必要になってくる。作業軸の回転および昇降に伴って動作するエンドエフェクターとロボット本体との信号の授受を電気配線で行うと、配線の引き回しが極めて煩雑になり、大きなスペースが必要になってしまう。また、クリーン環境で作業を行う場合は、作業軸の動作に伴い配線が屈曲して配線同士の擦れ等が発生し、被覆の一部から粉塵が拡散してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)ロボットのエンドエフェクターへ信号伝達を行うロボット用信号伝達装置であって、アームと、光導波路を備える光通路と、前記アームと前記エンドエフェクターとのそれぞれに設けられ前記光通路を介して互いに光通信する光通信手段と、前記エンドエフェクターを動作させる駆動機構と、を備え、前記駆動機構は、前記エンドエフェクターを回転および昇降させる中空部を有する作業軸と、前記エンドエフェクターを動作させる気体を送風もしくは吸引するフレキシブルチューブと、を有し、前記光導波路は、前記フレキシブルチューブに沿って設けられ、前記フレキシブルチューブは、前記作業軸の前記中空部に収容されていることを特徴とするロボット用信号伝達装置。
【0007】
この構成によれば、エンドエフェクターの動作を制御するための制御信号やエンドエフェクターに設けた各種センサーからのデータの送受信を、光導波路を用いた光通信で行うことができる。また、光導波路は、エンドエフェクターを動作させる気体を送風もしくは吸引するフレキシブルチューブに埋め込まれ、エンドエフェクターを移動させる作業軸の中空部に収容される。そのため、信号配線の引き回しスペースが低減されロボットの省スペース化に寄与できる。また、光通信によって多くの信号を高速に送受信することができる。また、作業軸の動作に伴い配線が屈曲して配線同士の擦れ等が発生し、被覆の一部から粉塵が発生することを低減させることができるため、クリーン環境に適したロボットを提供することができる。
【0008】
(適用例2)前記フレキシブルチューブは、前記光導波路を外周面内に軸線に沿って収容するとともに、両端部に前記光導波路の光入出部が形成され、前記光通信手段は、前記光入出部に対して光信号を送受信する光送受信部と、前記フレキシブルチューブを位置決めして接続するチューブ接続部と、を備えていることを特徴とする上記のロボット用信号伝達装置。
【0009】
この構成によれば、フレキシブルチューブに収容された光導波路に光信号を伝送することができる。
【0010】
(適用例3)作業対象物に対して作業を実施するエンドエフェクターと、前記エンドエフェクターを保持し移動させる作業軸と、前記作業軸が最終端に配設される複数のアームと、上記のロボット用信号伝達装置と、を備えることを特徴とするロボット。
【0011】
この構成によれば、信号配線の引き回しスペースが低減された省スペースのロボットを提供することができるとともに、光通信によって多くの信号を高速に送受信することができるノイズに強く、クリーン環境に適したロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】スカラー型ロボットの構成を示す概略図。
【図2】作業軸駆動部の構造を示す概略図。
【図3】ロボット用信号伝達装置の全体構造を示す概略図。
【図4】光送受信部の構成を示す断面図。
【図5】光伝送路を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施例のロボット用信号伝達装置について、スカラー型ロボットを例にとり図面を参照して説明する。なお、説明を簡便にするため、図面における各部材は簡略化し、一部、縮尺を異ならせて図示している。
【0014】
(スカラー型ロボットの構造について)
まず、スカラー型ロボットの構造について、図1を参照して説明する。図1は、スカラー型ロボットの構成を示す概略図であり、(a)はスカラー型ロボットの概略斜視図、(b)は、スカラー型ロボットの模式断面図である。なお、スカラー型ロボットは、水平面に設置される。図面において、その水平面上の1方向をX方向とし、水平面上でX方向と直交する方向をY方向とし、X方向およびY方向と直交する方向(重力方向)をZ方向としている。
【0015】
図1(a),(b)に示すように、スカラー型ロボット(以下、ロボット100という)は、基台10と、支持台11と、支持台11に対して水平方向に延びる第1アーム部16と、第1アーム部16に接合され同じく水平方向に延びる第2アーム部18と、この第2アーム部18の他方の端部を貫通して上下方向に延びる作業軸30と、作業軸30を昇降および回転させる作業軸駆動部40と、作業軸30の下端に取り付けられたエンドエフェクターとしてのロボットハンド50と、制御部20とを備えている。
【0016】
基台10は、矩形の板状に形成されロボット100の設置面に配置されており、基台10上には支持台11が配置されている。図1(b)に示すように、支持台11の内部には空間が形成され、この空間は支持板12により上下に分割されている。支持板12の下側には駆動部としての第1モーター13が配置されている。支持板12の上側には第1減速機14が配置されている。また、支持台11の底面側にはロボット100の動作を制御する制御部20が設けられている。
【0017】
第1減速機14の入力軸には第1モーター13の回転軸13aが接続されている。第1減速機14の上側には出力軸14aが配置されている。そのため、第1減速機14は、第1モーター13の回転軸13aの回転を減速し出力軸14aに伝えることができる。なお、第1減速機14には各種の減速機構を採用することができる。本実施形態では、例えば、ハーモニックドライブ(登録商標)を採用している。支持台11の上面には孔部11aが形成され、孔部11aから出力軸14aが突出して配置されている。
第1アーム部16は、略直方体部を有する形状に形成され、一端が出力軸14aに接続され、出力軸14aを支点として水平方向に回転可能に設けられている。すなわち、第1モーター13が回転駆動することにより、第1アーム部16は水平方向に回動することができる。
【0018】
図1(b)に示すように、第1アーム部16の第1モーター13と反対側の他端には第2減速機15、駆動部としての第2モーター17がこの順にZ方向に重ねて配置されている。そして、第2減速機15の出力軸15aが図中Z方向下側に配置されている。第1アーム部16には第2減速機15と対向する場所に孔部16aが形成され、孔部16aから出力軸15aが突出して配置されている。第2モーター17の回転軸(図示しない)は第2減速機15の入力軸と接続されている。そのため、第2減速機15は、第2モーター17の回転軸17aの回転を減速し第2減速機15の出力軸15aに伝えることができる。
【0019】
第2アーム部18は、略直方体部を有する形状に形成され、一端が出力軸15aに接続され、出力軸15aを支点として水平方向に回転可能に設けられている。すなわち、第2モーター17が回転駆動することにより、第2アーム部18は水平方向に回動することができる。なお、第1モーター13及び第2モーター17は、電気信号によって回転方向を制御可能であればよく、直流モーター、パルスモーター、交流モーター等の各種類のモーターを用いることができる。本実施形態では、例えば、直流モーターを採用している。
【0020】
図1(a),(b)に示すように、第2アーム部18上において出力軸15aに接続された側と反対側の端部には、第2アーム部18の端部を貫通して上下方向に延びる作業軸30と、作業軸30を昇降および回転させる作業軸駆動部40とが設けられている。作業軸駆動部40は、作業軸30を上下方向に移動させる昇降装置35と、作業軸30を回転させる回転駆動装置45と、これらの装置を覆うカバー49とが設けられている。このカバー49は、第2アーム部18の側縁に沿う形状であって、第2アーム部18の第2モーター17と反対側の端部の全域を覆う形状に形成されている。作業軸30は、作業軸駆動部40によって昇降および回転駆動させられる。この作業軸駆動部40の詳細については後述する。
【0021】
ロボットハンド50は、上述の作業軸30の下端に取り付けられている。ロボットハンド50は、作業軸30の昇降および回転動作に伴って、昇降および回転することができる。また、ロボットハンド50は、作業対象物としてのワークに対して各種作業を実施する。そのため、例えば、ワークを挟んで保持し移動させる作業を例にとると、ロボットハンド50は、ワークの位置を確認するためのカメラを含む各種センサー(図示せず)、ワークを挟んで保持するための指部51、その指部51を動作させる機構部(図示せず)、電磁バルブ、エアーシリンダーおよび各種モーター等の機構部の駆動源(図示せず)、およびこれらを制御するコントローラー(図示せず)を備えている。
【0022】
制御部20は、図示しない中央演算部、記憶部、ドライバー回路、インターフェース等を備えている。ドライバー回路は、第1モーター13、第2モーター17、作業軸駆動部40およびロボットハンド50の駆動源を駆動する回路である。そして、ドライバー回路およびロボットハンド50に設けられた各種センサー、コントローラー等が中央演算部と接続されている。また、中央演算部は、インターフェースを介して外部コンピューターに接続されている。記憶部は、ロボット100を制御する動作手順を示したプログラムソフトや制御に用いるデータ等を記憶している。中央演算部はプログラムソフトに従ってロボット100を総合的に制御する。
【0023】
上述の構成を備えるロボット100は、制御部20からの制御信号に従って、第1アーム部16、第2アーム部18および作業軸30の動作を制御して、ロボットハンド50をワークの位置(所定の位置)に移動させ、さらにロボットハンド50の動作を制御してワークに対して所定の作業を実施することができる。
【0024】
(作業軸駆動部の構造について)
ここで、作業軸駆動部の構造について、図2を参照して説明する。図2は、作業軸駆動部の構造を示す概略図である。図2に示すX方向およびZ方向は、図1に示すX方向およびZ方向と同一な方向を示す。
【0025】
図2に示すように、作業軸駆動部40は、作業軸30を上下方向に移動させる昇降装置35と、作業軸30を所望の角度だけ回転させる回転駆動装置45とを備えている。昇降装置35は、図示しない第3モーターから駆動力を受けて回転することができるボールねじ軸32と、このボールねじ軸32に螺合されたボールねじナット33と、このボールねじナット33に一端部を固定されるとともに他端部に作業軸30が連結された上部連結部材34とによって構成されている。この昇降装置35の各回転部材は、軸線が上下方向を指向するように形成されている。
【0026】
ボールねじ軸32は、下端部を第2アーム部18に図示しない軸受によって回転自在に支持されるとともに、第2アーム部18に立設したフレーム25に上端部を図示しない軸受によって回転自在に支持されている。上部連結部材34と作業軸30との接続部分には、作業軸30が回転することができるように図示しない軸受が介装されている。なお、この軸受は、上面側にストッパー部を有し、作業軸30の上下方向への移動を規制している。
【0027】
回転駆動装置45は、作業軸30の外周部に回転自在に支持され、図示しない第4モーターから回転力を受けるハーモニックドライブ(登録商標)からなる第3減速機42と、この第3減速機42の出力部材であるフレクスプライン42aに固着されたボールスプラインナット44とによって構成されている。ボールスプラインナット44は、従来からよく知られているものと同等の構造のもので、作業軸30に下端部から上端部まで延びるように形成した縦溝(図示せず)に係入する多数のボール(図示せず)を循環移動できるように内蔵し、作業軸30の上下方向への移動を許容しながら、作業軸30の回転を規制する構造のものである。
【0028】
すなわち、ボールスプラインナット44が第3減速機42のフレクスプライン42aと一体的に回転することによって、作業軸30がボールスプラインナット44と一体的に同一回転で回転する。また、上述した昇降装置35のボールねじ軸32が回転してボールねじナット33が上昇または下降することにより、作業軸30がボールスプラインナット44に支えられながら上下方向に移動する。なお、作業軸30は、ボールスプラインナット44に嵌合されることによって第2アーム部18を貫通するとともに支持されている。
【0029】
上述の構成を備える作業軸駆動部40は、第2アーム部18を貫通する作業軸30を所望の距離だけ上下方向に移動させることができるとともに、所望の角度だけ回転させることができる。なお、ロボットハンド50は、この作業軸30の下端部に固着されているため、所望の距離だけ上下方向に移動することができるとともに、所望の角度だけ回転することができる。
【0030】
なお、作業軸30は、円筒状に形成され、外周部には、ボールスプラインナット44に内蔵された多数のボールが係入する下端部から上端部まで延びるように形成した縦溝(図示しない)が形成されており、内周部は中空となり中空部30aを構成している。本実施形態では、スペース効率向上のために、この作業軸30の内周部の中空部分には、ロボットハンド50の指部51を動作させる機構部の駆動源となるエアーシリンダーに空気を送ったり、ワークを吸着するため空気を吸引するフレキシブルチューブからなるエアーチューブが内蔵される。
【0031】
(ロボット用信号伝達装置について)
ここで、ロボット用信号伝達装置について、図3〜図5を参照して説明する。図3は、ロボット用信号伝達装置の全体構造を示す概略図である。図4は、光送受信部の構成を示す断面図であり、(a)は、第1光送受信部の構成を示す断面図であり、(b)は、第2光送受信部の構成を示す断面図である。図5は、光伝送路を説明する図であり、(a)は、光伝送路の全体図、(b)は、フレキシブルチューブの両端の詳細図、(c)は、光導波路の構造を示す図である。図3に示すX方向およびZ方向は、図1に示すX方向およびZ方向と同一な方向を示す。
【0032】
近年、ロボット100に求められる作業や機能が、非常に高度化、高機能化している。そのため、作業を実施するロボットハンド50等のエンドエフェクターに求められる機能も非常に高精度および高度化している。その結果、ロボットハンド50には、ワークの種類や位置を確認するためのカメラやワークを把持する際の指部51の把持圧力を検出するための圧力センサー等の各種センサーが搭載される。また、ロボットハンド50の動作をより精密に、より高速化するために、エアーシリンダーやモーター等の駆動源を用意した複雑な機構部やそれらを制御するためのコントローラーが搭載される。その結果、ロボットハンド50の動作を制御するための制御信号や各種センサーからのデータの受信するために非常に多くの信号線が必要になってくる。
【0033】
図3に示すように、ロボット用信号伝達装置60は、ロボット100の制御部20から第1アーム部16および第2アーム部18の内部を、例えば電気配線等で伝送されるロボットハンド50の制御信号や、ロボットハンド50から送信される各種センサーからのデータを、作業軸駆動部40を介して、第2アーム部18とロボットハンド50との間で伝達する役割を担うものである。
【0034】
図3に示すように、ロボット用信号伝達装置60は、光通信手段として、第1接続部61と、光伝送路62と、第2接続部63とを有している。図3および図4(a)に示すように、第1接続部61は、作業軸駆動部40の昇降装置35を構成する上部連結部材34に配置されており、光送受信部としての第1光送受信部65と、チューブ接続部としての第1チューブ接続部66とから構成されている。第1光送受信部65は、光コネクター67と第1光入出射部72とを有する。光コネクター67は、光プラグ68と光プラグ68が結合する光レセプタクル69とから構成され、光プラグ68には、光ファイバーケーブル70が接続されている。光ファイバーケーブル70には、例えば、ロボット100の制御部20からの電気信号である制御信号が、図示しない光信号―電気信号変換器もしくは電気信号―光信号変換器(OE/EO変換器)により光信号に変換され、伝送されている。第1光入出射部72は、レンズ群71を内蔵し、光を集光し出射もしくは入射する機能を有し、光レセプタクル69の光軸に沿って設けられている。
【0035】
すなわち、光ファイバーケーブル70で伝送される光信号は、光コネクター67を介して第1光入出射部72に入力され、レンズ群71によって集光され、任意の点に対して出射される。また、この逆、第1光入出射部72に入力された光信号は、レンズ群71によって集光され光コネクター67に接続された光ファイバーケーブル70に伝送され、制御部20方向に伝送されることも可能である。
【0036】
第1チューブ接続部66は、第1アーム部16および第2アーム部18の内部の収納された第1エアーチューブ73と後述する第2エアーチューブ75とを接続する継ぎ手76とを有している。継ぎ手76は、第1エアーチューブ73と第2エアーチューブ75とをそれぞれ挿入するチューブレセプタクル76aおよびチューブレセプタクル76bと、第2エアーチューブ75の軸方向および回転方向を位置決めできる位置決め部74とを有している。また、位置決め部74は、第1光入出射部72の近傍に設けられ、第1光入出射部72から光が出射される点の位置に穴部74aが形成されている。なお、第2エアーチューブ75の位置決め方法については、特に限定しない。第2エアーチューブ75の端面を軸線方向の度当たりとし、第2エアーチューブ75の端面に切り欠きを設け、継ぎ手76の位置決め部74に切り欠きに対応する係合部を設けて位置決めとしてもよい。
【0037】
図5(a)に示すように、光伝送路62は、上述のロボットハンド50の機構部の駆動源となる空気を送るための第2エアーチューブ75と光導波路77とから構成されている。図5(b)に示すように、光導波路77は、光学的な特性をもつ物質を用いてテープ状または薄板状に形成され、光路となるコア78と、コアを取り囲むクラッド79から構成されている。コア78とクラッド79は屈折率が異なり境界面で全反射を起こして光を進行させる。コア78およびクラッド79の材料としては、例えば、高純度ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂等が好適に用いられる。本実施例では、光導波路は、クラッド79の上下を保護部材77dで覆った薄いテープ状に形成されている。そのため、本実施例の光導波路77は、可撓性を有する。
【0038】
第2エアーチューブ75は、合成ゴム等からなる可撓性を有するとともに捻回耐性を有するフレキシブルチューブであって、側面に長手方向に沿って一本の溝部75aが形成されている。この第2エアーチューブ75の溝部75aには上述の光導波路77が第2エアーチューブ75の外周面から突出しないように接着剤等で貼り付けられている。図5(b)に示すように、光伝送路62の両端部62a,bには、光入出部80a,bが形成されている。光入出部80a,bは、光導波路77の保護部材77dが一部除去されているとともに、その位置に対応する光導波路77が光入出部80a,b側を頂点とする直角二等辺三角形状にダイシング加工されている。
【0039】
すなわち、45度にダイシング加工でカットされているため、カット面81がミラーとして機能する。そのため、一方の光入出部80aから入射した光は、カット面81で反射して進行方向が変えられ、コア78とクラッド79の境界面で全反射しつつコア78内を進み、同じく、もう一つのカット面81で反射され光の進行方向が変えられ、他方の光入出部80bから出射される。なお、この第2エアーチューブ75は、ロボット100の作業軸30の中空部分に第1接続部61から第2接続部63に向かうように収容されている。また、第2エアーチューブ75は、前述の第1接続部61の継ぎ手76の一方に挿入される。このとき、第2エアーチューブ75は、一方の光入出部80aが継ぎ手76の位置決め部74の穴部74aに重なるように軸方向および回転方向が位置決めされる。
【0040】
図4(b)に示すように、第2接続部63は、ロボットハンド50に配置されており、第2光送受信部85と、第2チューブ接続部86とから構成されている。第2光送受信部85は、第2光入出射部88と光信号―電気信号変換器もしくは電気信号―光信号変換器(以降、OE/EO変換器87という)とを有する。第2光入出射部88は、第1光入出射部72と同様に、レンズ群71を内蔵し、光を集光し出射もしくは入射する機能を有する。OE/EO変換器87は、光信号を電気信号に、電気信号を光信号に変換する機能を有し、光信号送受信部側を第2光入出射部88側に向け、第2光入出射部88と光軸を共通にして配置されている。また、電気信号送受信側は、電気コネクター89を介してロボットハンド50に設けられた回路基板90に接続されている。
【0041】
第2チューブ接続部86は、上述の第2エアーチューブ75とロボットハンド50内に設けられ、ロボットハンド50の指部51を動作させる機構部を駆動させる図示しないエアーシリンダーに空気を送る第3エアーチューブ92とを接続する継ぎ手93とを有している。継ぎ手93は、第2エアーチューブ75と第3エアーチューブ92とをそれぞれ挿入するチューブレセプタクル93a,bと、第2エアーチューブ75の軸方向および回転方向を位置決めできる位置決め部94とを有している。また、位置決め部94は、第2光入出射部88の近傍に設けられ、第2光入出射部88の光軸が対応する位置に穴部94aが形成されている。
【0042】
第2エアーチューブ75は、継ぎ手93の一方に挿入される。このとき、第2エアーチューブ75は、他方の光入出部80bが継ぎ手93の位置決め部94の穴部94aに重なるように軸方向および回転方向が位置決めされる。なお、第2エアーチューブ75の位置決め方法については、特に限定しない。第2エアーチューブ75の端面を軸線方向の度当たりとしたり、第2エアーチューブ75の端面に切り欠きを設け、継ぎ手93の位置決め部94に切り欠きに対応する係合部を設けて位置決めとしてもよい。
【0043】
上述の構成を有するロボット用信号伝達装置60は、ロボット100の制御部20から光ファイバーケーブル70を介して伝送されるロボットハンド50の制御信号(光信号)を、第1接続部61の光コネクター67を介して第1光入出射部72に入力し、レンズ群71によって集光させ、第1チューブ接続部66の継ぎ手76の位置決め部74に設けられた穴部74aに照射することができる。
【0044】
照射された光信号は、継ぎ手76に挿入され位置決め部74で位置決めされた光伝送路62を構成する第2エアーチューブ75の光入出部80aから光導波路77内に入射して光導波路77内をコア78とクラッド79の境界面で全反射しながら進み、第2エアーチューブ75の他方の光入出部80bから出射される。第2エアーチューブ75の他方の端部は、第2接続部63の継ぎ手93に挿入され位置決め部94で位置決めされている。
【0045】
そのため、出射された光信号は、継ぎ手93の位置決め部94に設けられた穴部94aを介して、第2接続部63の第2光送受信部85に入射される。入射された光信号は、第2光入出射部88のレンズ群71によって集光され、OE/EO変換器87の光信号送受信部に入力される。入力された光信号は、OE/EO変換器87で電気信号に変換され、電気信号送受信側に接続された電気コネクター89を介してロボットハンド50に設けられた回路基板90に伝送される。
【0046】
このようにして、ロボット用信号伝達装置60は、ロボット100の制御部20から伝送されるロボットハンド50の制御信号をロボットハンド50の回路基板やコントローラーに伝達することができる。また、ロボットハンド50から送信される各種センサーからのデータは、上述とは逆の経路を経てロボット100の制御部20に伝達されることができる。
【0047】
以下、実施形態の効果を記載する。
(1)上述のロボット用信号伝達装置60は、ロボットハンド50の動作を制御するための制御信号やロボットハンド50に設けられた各種センサーからのデータの送受信を、第2エアーチューブ75の軸線方向に沿って設けられた光導波路77を用いた光通信で行うことができる。そのため、多くの信号や大容量のデータをノイズの影響を低減させつつ、高速に伝送することができる。また、第2エアーチューブ75は、ロボットハンド50を保持し回転および昇降させる作業軸30の中空部に収容される。そのため、信号配線の引き回しスペースを低減することができる。
【0048】
(2)上述のロボット用信号伝達装置60の光導波路77は、可撓性および捻回耐性を有する第2エアーチューブ75の側面に溝部75aに取り付けられている。そのため、作業軸30の回転や昇降に伴なう第2エアーチューブ75の屈曲に対して光導波路77の損傷を防ぐことができる。
【0049】
(3)上述のロボット用信号伝達装置60は、電気配線のかわりに光導波路77を用いている。そのため、作業軸30の回転や昇降に伴なう電気配線の屈曲による配線同士の擦れを低減させ、配線から粉塵の拡散を防止することができる。また、信号に対するノイズの影響を低減させることができ、ロボットの信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
20…制御部、30…作業軸、30a…中空部、34…上部連結部材、40…作業軸駆動部、50…ロボットハンド、60…ロボット用信号伝達装置、61…第1接続部、62…光伝送路、63…第2接続部、65…第1光送受信部、66…第1チューブ接続部、67…光コネクター、71…レンズ群、72…第1光入出射部、75…第2エアーチューブ、76,93…継ぎ手、77…光導波路、78…コア、79…クラッド、80a,80b…光入出部、85…第2光送受信部、86…第2チューブ接続部、87…OE/EO変換器、88…第2光入出射部、100…ロボット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのエンドエフェクターへ信号伝達を行うロボット用信号伝達装置であって、
アームと、
光導波路を備える光通路と、
前記アームと前記エンドエフェクターとのそれぞれに設けられ前記光通路を介して互いに光通信する光通信手段と、
前記エンドエフェクターを動作させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記エンドエフェクターを回転および昇降させる中空部を有する作業軸と、前記エンドエフェクターを動作させる気体を送風もしくは吸引するフレキシブルチューブと、を有し、
前記光導波路は、前記フレキシブルチューブに沿って設けられ、
前記フレキシブルチューブは、前記作業軸の前記中空部に収容されていることを特徴とするロボット用信号伝達装置。
【請求項2】
前記フレキシブルチューブは、前記光導波路を外周面内に軸線に沿って収容するとともに、両端部に前記光導波路の光入出部が形成され、
前記光通信手段は、前記光入出部に対して光信号を送受信する光送受信部と、前記フレキシブルチューブを位置決めして接続するチューブ接続部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のロボット用信号伝達装置。
【請求項3】
作業対象物に対して作業を実施するエンドエフェクターと、
前記エンドエフェクターを保持し移動させる作業軸と、
前記作業軸が最終端に配設される複数のアームと、
請求項1および2に記載のロボット用信号伝達装置と、を備えることを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−51035(P2011−51035A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199468(P2009−199468)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】