説明

ローソニア・イントラセルラーリスの26kDサブユニットワクチン

本発明はとりわけ、新規のローソニア・イントラセルラーリスタンパク質をコードする核酸に関する。本発明はさらに、これらの配列を含むDNA断片、組み換えDNA分子、および生きた組み換え担体に関する。本発明は、このような核酸、DNA断片、組み換えDNA分子、および生きた組み換え担体を含む宿主細胞にも関する。さらに、本発明は、これらのヌクレオチド配列によりコード化されるタンパク質、およびワクチンの調製のためのそれらの使用に関する。本発明は、ローソニア・イントラセルラーリス感染を撲滅するためのワクチン、およびその調製のための使用にも関する。最後に、本発明は、ローソニア・イントラセルラーリス抗原およびローソニア・イントラセルラーリスに対する抗体を検出するための診断用検査に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、新規のローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)のタンパク質をコードする核酸、これらの配列を含むDNA断片、組み換えDNA分子および生きた組み換え担体、このような核酸、DNA断片、組み換えDNA分子および生きた組み換え担体を含む宿主細胞、これらのヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質およびワクチンの製造のためのそれらの使用、ローソニア・イントラセルラーリス感染を撲滅するためのワクチンおよびその調製方法、並びにローソニア・イントラセルラーリス抗原の検出およびローソニア・イントラセルラーリスに対する抗体の検出のための診断用検査に関する。
【背景技術】
【0002】
ブタ増殖性腸疾患(PPEまたはPE)は世界的に、現代の養豚産業の重要な疾病となっている。前記疾病は成育集団の15〜50%、および既定の問題の集団における個々の動物の30%にまで影響を及ぼす。今日、年間経済損失は影響を受けたブタ一匹につき余分な食餌と設備時間コストは、5〜10米国ドルと概算されている。PPEは広く異なる臨床徴候(死亡、青白くおよび貧血の動物、水っぽく濃いまたは明るい赤色の下痢、鬱、食欲減退および鈍い動き、成長の遅延、およびFCRの上昇)の一群の慢性および急性疾患である。しかしながら、二つの一貫した特徴がある。第一に、剖検でのみ観察できる病理学的変化は小腸および結腸の粘膜の肥厚症である。第二は、影響を受けた腸の腸細胞における細胞質内のわずかに曲がったバクテリアの存在である。これらのバクテリアは今やPPEの病因論学的因子として確立されており、ローソニア・イントラセルラーリスと名づけられている。
【0003】
何年にもわたり、ローソニア・イントラセルラーリスは、サル、ウサギ、フェレット、ハムスター、キツネ、ウマ、およびダチョウおよびエモー(emoe)と同じ程度分化した他の動物を含む大きなグループの動物に影響を及ぼすことがわかってきた。ローソニア・イントラセルラーリスは真核生物腸細胞において繁殖する、グラム陰性の鞭毛を有するバクテリアであり、無細胞培養はこれまで記述されていない。細胞内において存続・繁殖するため、ローソニア・イントラセルラーリスは分割している腺窩細胞に浸潤しなければならない。バクテリアは細胞膜と会合し、入り口空胞を介して腸細胞へ迅速に進入する。これは次に迅速にくずれ(3時間以内)、およびバクテリアが繁茂し、細胞質中で自由に繁殖する。バクテリアがそれに感染した細胞に成長しそこなわせ、有糸分裂を行い続けさせ、および形成不全性腺窩細胞を形成し続けさせるメカニズムはまだわかっていない。
【0004】
疾病に関するローソニア・イントラセルラーリス感染、治療、および駆除についての最新の理解は、ローソニア・イントラセルラーリスが無細胞培地中で培養できないという事実によって妨げられてきた。ラット腸細胞においてローソニア・イントラセルラーリスをうまく共培養することに関する報告があるが、このことはローソニア・イントラセルラーリスを撲滅するための不活性化されたワクチンの開発には至っていない。このようなワクチンに対する必要性は明らかに存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ローソニア・イントラセルラーリス感染を撲滅するためのワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、ローソニア・イントラセルラーリスがローソニア・イントラセルラーリスに対する保護的な免疫性を誘導できる新規のタンパク質を生成することが、本発明によって発見された。
【0007】
前記新規タンパク質は26kDタンパク質と称される。
【0008】
前記新規タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2で記される。このタンパク質をコードする遺伝子は配列決定されており、およびその核酸配列は配列番号1において示される。この遺伝子はまた、実施例において「遺伝子5608」と称される。
【0009】
多くの異なる核酸配列が、一つの同一タンパク質をコードできることは本分野で周知である。この現象は、アミノ酸をコードする各トリプレットの第二塩基および特に第三塩基における動揺として共通して知られる。この現象は、同一のタンパク質をコードする二つの核酸配列に約30%の相違をもたらす。それゆえ、約70%の配列相同性を有する二つの核酸配列は一つおよび同一タンパク質をさらにコードできる。
【0010】
したがって、一つの実施態様は、配列が配列番号1の少なくとも90%に与えられる核酸とあるレベルの相同性を有する、ローソニア・イントラセルラーリスのタンパク質をコードする核酸および前記タンパク質の免疫原性断片をコードする核酸の一部に関する。
【0011】
好ましくは、このローソニア・イントラセルラーリスのタンパク質をコードする核酸または前記核酸の一部は配列番号1に与えられる配列を有する核酸と少なくとも92%、好ましくは94%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは96%の相同性を有する。さらに好ましくは、98%または100%もの相同性レベルである。
【0012】
ヌクレオチド相同性のレベルは、www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.html.で見つけることができるサブプログラム「BLASTN」を選択することによってコンピュータプログラム「BLAST2配列」により決定できる。
【0013】
このプログラムについての参考文献はTatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden FEMS Microbiol. Letters 174: 247−250 (1999)である。用いられる因子はデフォルト因子であり、適合についての報酬は+1、ミスマッチについての罰則は−2、開いた間隙は5、伸長間隙は2、間隙x 低下は50である。
【0014】
ある核酸が本発明の核酸であるか否かを決定するための別のアプローチは、その核酸がストリンジェントな条件下で配列番号1に示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸とハイブリダイズするかどうかという質問に関する。
【0015】
ある核酸が、ストリンジェントな条件下で、配列番号1に図示されるヌクレオチド配列とハイブリダイズすれば、本発明の核酸であると考えられる。
【0016】
ストリンジェントな条件の定義は、MeinkothおよびWahlの式から得られる(1984. Hybridization of nucleic acids immobilized on solid supports. Anal. Biochem. 138: 267−284.)。
【0017】
Tm=[81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%ホルムアミド)−500/L]−1℃/1%ミスマッチ。
【0018】
この式において、Mは一価の陽イオンの重量モル濃度であり、%GCはDNAにおけるグアノシンヌクレオチドとシトシンヌクレオチドの割合であり、Lは塩基対におけるハイブリッドの長さである。
【0019】
ストリンジェントな条件は、核酸またはその断片が最大10%のミスマッチを有する場合に、それらが配列番号1に示される配列を有する核酸となおハイブリダイズするという条件である。
【0020】
本発明は、新規ローソニア・イントラセルラーリスタンパク質をコードする核酸を開示するので、これらのタンパク質を十分量で得ることが初めて可能となる。このことは例えば、前記タンパク質をコードする遺伝子を発現する発現システムを用いることによってなされうる。
【0021】
それゆえ、より好ましい実施態様において、本発明は、本発明の核酸を含むDNA断片に関する。このようなDNA断片は、例えば、その中に本発明の核酸がクローニングされるプラスミドであり得る。このようなDNA断片は、例えば、以下に記述されるように、プライマーとして使用するためのDNAの量を増大するのに有用である。
【0022】
核酸の発現のための不可欠な必要条件は、核酸がプロモーターの調節下にあるように、核酸へ機能的に連結された適切なプロモーターである。プロモーターの選択が、タンパク質発現用の宿主細胞として使用される細胞中で遺伝子転写を誘導することのできる任意の真核細胞プロモーター、原核細胞プロモーター、またはウィルスプロモーターに及ぶことは、当業者に自明である。
【0023】
それゆえ、本実施態様のさらにより好ましい形態は、機能的に連結されたプロモーターの下に置かれた本発明のDNA断片または核酸を含む組み換えDNA分子に関する。これは、例えば標準的な分子生物学的技術によって達成できる(Sambrook, J. and Russell, W., Molecular cloning: a laboratory manual, ISBN 0−87969−577−3)。
【0024】
機能的に連結されるプロモーターとは、それらが連結される核酸の転写を調節できるプロモーターである。
【0025】
このようなプロモーターはローソニアプロモーター例えば前記プロモーターは26kD遺伝子をコードする遺伝子の生体内発現に関与するプロモーターとすることができる(但し、前記プロモーターは、発現に使用される細胞中で機能的である。)。前記プロモーターは、異種性プロモーターでもありうる。宿主細胞がバクテリアである場合には、使用され得る有用な発現調節配列には、Trpプロモーターおよびオペレーター(Goeddel, et al., Nucl. Acids Res., 8, 4057,1980)、lacプロモーターおよびオペレーター(Chang, et al. Nature, 275, 615, 1978)、外膜タンパク質プロモーター(Nakamura, K. and Inoue, M., EMBO J., 1,771−775, 1982)、バクテリオファージλプロモーターおよびオペレーター(Remaut, E. et al., Nucl. Acids Res., 11, 4677−4688, 1983)、α−アミラーゼ(枯草菌)プロモーターおよびオペレーター、終結配列、並びに選択される宿主と互換性のある他の発現亢進および調節配列が含まれる。
【0026】
宿主細胞が酵母であるとき、実用的な発現調節配列には例えばα−接合因子が含まれる。昆虫細胞について、ポリヘドリンまたはバキュロウィルスのp10プロモーターが使用できる((Smith, G. E. et al., Mol. Cell. Biol. 3, 2156−65, 1983)宿主細胞が哺乳類由来である場合には、実例となる実用的な発現調節配列には、SV−40プロモーター(Berman, P. W. et Science, 222,524−527, 1983)、またはメタロチオネインプロモーター(Brinster, R. L., Nature, 296,39−42, 1982)、または熱ショックプロモーター(Voellmy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4949−53, 1985)が含まれる。
【0027】
バクテリア細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、および哺乳類細胞の発現システムは非常に頻繁に用いられるシステムである。このようなシステムは本分野において周知であり、一般に例えばInvitrogen(www.invitrogen.)、Novagen(www. merckbiosciences.de)、またはClontech Laboratories, Inc. 4030 Fabian Way, Palo Alto, California 94303−4607, USAを通じて商業的に入手可能である。これらの発現システムについで、寄生生物ベースの発現システムは非常に興味ある発現システムである。このようなシステムは例えば、発行番号2714074の仏国特許出願および発行番号US08/043109(Hoffman, S. and Rogers, W.: Public. Date 1 December 1993)の米国NTISにおいて記述されている。
【0028】
本発明の前記実施態様のさらに好ましい形態は、本発明の26kDタンパク質若しくはその免疫原性断片、本発明のDNA断片または本発明の組み換えDNA分子をコードする核酸を含む、生きた組み換え担体(LRC)に関する。このような担体は例えばバクテリアおよびウィルスである。これらのLRCは、さらなる遺伝情報、この場合本発明の26kDタンパク質またはその免疫原性断片をコードする核酸がクローニングされた微生物またはウィルスである。このようなLRCによって感染された動物は担体の免疫原に対してのみでなく、遺伝コードがLRCへとさらにクローニングされるタンパク質、例えば26kDタンパク質の免疫原性部分に対しても免疫原性反応を生じるだろう。
【0029】
バクテリアLRCの一例として、本分野において既知の弱毒化サルモネラ系が興味深く使用できる。
【0030】
生きた組み換え担体寄生生物はとりわけ、Vermeulen, A. N. (Int. Parasitol. 28: 1121−1130 (1998))によって記述されている。
【0031】
また、LRCウィルスは前記核酸を標的細胞へと輸送する方法として使用されてもよい。生きた組み換え担体ウィルスはまたベクターウィルスとも呼ばれる。ベクターとしてしばしば用いられるウィルスは、ワクチニアウィルス(Panicali et al.; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79: 4927 (1982))、ヘルペスウィルス(E.P.A.0473210A2)、およびレトロウィルス(Valerio, D. et al.; in Baum, S. J., Dicke, K. A. , Lotzova, E. and Pluznik, D. H. (Eds.), Experimental Haematology today − 1988. Springer Verlag, New York: pp. 92−99 (1989))である。
【0032】
本分野で周知の生体内相同性組み換えの技術は、宿主動物において本発明に記載の挿入される核酸の発現を誘導できるよう選択されたバクテリア、寄生生物、またはウィルスへと組み換え核酸を導入するのに使用できる。
【0033】
最後に、本発明のこの実施態様の別の形態は、本発明に記載のタンパク質をコードする核酸、このような核酸を含むDNA断片、または機能的に連結されるプロモーターの調節下でこのような核酸を含む組み換えDNA分子を含む宿主細胞に関する。この形態は、本発明の26kDタンパク質またはその断片をコードする核酸分子を含む、生きた組み換え担体を含む宿主細胞にも関する。
【0034】
宿主細胞は、pBR322のようなバクテリアベースのプラスミド、またはpGEXのようなバクテリア発現ベクターと組み合わせた、またはバクテリオファージとの組み合わせた、バクテリア由来、例えば大腸菌種(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)種、および乳酸菌(Lactobacillus)種由来の細胞であってもよい。宿主細胞は、酵母特異的ベクター分子との組み合わせの真核生物由来、例えば酵母細胞由来のものであるか、またはベクター若しくは組み換えバキュロウィルスと組み合わせた、昆虫細胞のようなより高等の真核細胞(Luckow et al; Bio−technology 6: 47−55 (1988))、Tiプラスミドベースのベクターまたは植物ウィルスベクターとの組み合わせの植物細胞(Barton, K. A. et al.; Cell 32: 1033 (1983))、これもまた適切なベクターまたは組み換えウィルスとの組み合わせのHela細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、またはクランデルフェリン(Crandell Feline)腎細胞のような哺乳類細胞に属していてもよい。
【0035】
本発明の別の実施態様は、本発明の前記新規タンパク質およびその免疫原性断片に関する。
【0036】
免疫原性断片の概念は以下に定義される。
【0037】
この実施態様の一つの形式はとりわけ、配列番号2に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも90%相同性のあるアミノ酸配列を有するローソニア・イントラセルラーリスタンパク質、および前記タンパク質の免疫原性断片に関する。
【0038】
好ましい形態において、前記実施態様は配列番号2に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも92%、好ましくは94%、より好ましくは96%の相同性のある配列相同性を有するようなローソニア・イントラセルラーリスタンパク質、およびこのようなタンパク質の免疫原性断片に関する。
【0039】
さらにより好ましくは、98%または100%までもの相同性レベルである。
【0040】
タンパク質相同性のレベルは、www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.html.で見つけることができるサブプログラム「BLASTP」を選択することによってコンピュータプログラム「BLAST2配列」により決定できる。
【0041】
このプログラムについての参考文献は、Tatiana A. Thomas L. Madden FEMS Microbiol. Letters 174: 247−250 (1999)である。用いられるマトリクスは「blosum62」である。用いられる因子はデフォルト因子であり、開いた間隙は11、伸長間隙は1、間隙x_低下は50である。
【0042】
本明細書に含まれる特定のタンパク質について、天然のバリエーションが個々のローソニア・イントラセルラーリス系の間に存在しうることは理解される。これらのバリエーションは総体的な配列におけるアミノ酸の差異によって、または前記配列におけるアミノ酸の欠失、置換、挿入、反転、または付加によって示され得る。生物学的および免疫学的活性を本質的に変化させないアミノ酸置換は、例えば、Neurath et al in “The Proteins” Academic Press New York (1979)によって述べられている。関連するアミノ酸の間のアミノ酸置換または進化において頻繁に生じた置換はとりわけ、Ser/Ala、Ser/Gly、Asp/Gly、Asp/Asn、Ile/Valである(Dayhof, M. D., Atlas of protein sequence and structure, Nat. Biomed. Res. Found. , Washington D. C., 1978, vol. 5, suppl. 3参照)。他のアミノ酸置換にはAsp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Thr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Leu/Ile、Leu/Val、およびAla/Gluが含まれる。この情報に基づいて、LipmanおよびPearsonは迅速かつ高感度でタンパク質を比較し(Science, 227, 1985)、相同性のあるタンパク質間の機能的類似性を決定するための方法を開発した。本発明の典型的な実施態様に関するこのようなアミノ酸置換並びに欠失及び/又は挿入を有するバリエーション、結果として生じるタンパク質も、それらの免疫反応性を保持する限り、本発明の範囲に属する。このことは、異なる場の単離物から単離されるとき、本発明のローソニア・イントラセルラーリスタンパク質が同じ免疫学的特徴を有する同一タンパク質を呈しながらも、約90%の相同性レベルを有し得る理由を説明する。
【0043】
ローソニア・イントラセルラーリスによる感染に対する、または前記感染の少なくとも臨床的症状に対する免疫反応を誘導できるタンパク質をなお提供する、本発明の特定のタンパク質のアミノ酸配列における前記バリエーションは「免疫原性に本質的には影響しない」と考慮される。
【0044】
タンパク質が例えば抗体を上昇させるための予防接種の目的に使用されるとき、全タンパク質を使用することはしかしながら必要ではない。また、いわゆる免疫原性断片である当該タンパク質に対する免疫反応を、そのまままたは例えばKLHのような担体へ連結されて誘導できる当該タンパク質の断片を使用することができる。「免疫原性断片」は宿主において免疫反応を誘導する能力をなお保持し、すなわちB細胞またはT細胞のエピトープを含む全長のタンパク質の断片であると理解される。このとき、多様な技術が抗原性断片(決定因子)をコードするDNA断片を簡単に同定するために利用可能である。Geysen et al (特許出願WO 84/03564, 特許出願WO 86/06487, 米国特許4,833,092, Proc. Natl. Acad. Sci. 81 : 3998−4002 (1984), J. Imm. Meth. 102, 259−274 (1987)によって記述される方法、いわゆるPEPSCAN法は、タンパク質の免疫学的に重要な領域であるエピトープの検出のための迅速かつ十分に確立された方法を実行するための簡易法である。前記方法は世界的に用いられており、このこと自体は当業者に周知である。この(実証的)方法はB細胞エピトープの検出に特に適している。また、いずれかのタンパク質をコードする遺伝子の配列が与えられたとき、コンピュータアルゴリズムは、今や既知のエピトープを有する特定のタンパク質断片の配列及び/又は構造の一致に基づいて、タンパク質断片を免疫学的に重要なエピトープとして示すことができる。これらの領域の決定はHoppおよびWoods(Proc. Natl. Acad. Sci. 78: 38248−3828 (1981))にしたがった親水性基準および、ChouおよびFasman((Advances in Enzymology 47: 45−148 (1987)および米国特許4,554, 101)にしたがった二次構造の見解の組み合わせに基づいている。T細胞のエピトープはBerzofskyの両親媒性基準を活用してコンピュータによって配列から同様に推定できる(Science 235,1059−1062 (1987)および米国特許出願NTIS US 07/005,885)。凝縮された概説は、共通原理に関してはShan Lu, Tibtech. 9: 238−242 (1991)で、マラリアエピトープに関してはGood et al, Science 235: 1059−1062 (1987)で、総説についてはLu, Vaccine 10: 3−7 (1992)、HIVエピトープについてはBerzowsky, The FASEB Journal, 5: 2412−2418 (1991)で見られる。
【0045】
それゆえ、本発明のさらに別の実施態様の一つの形式は、上述のような本発明のタンパク質またはその免疫原性断片を含み、医薬的に許容できる担体とともに、ローソニア・イントラセルラーリス感染に対してブタを保護できるワクチンに関する。
【0046】
本発明のさらに別の実施態様は、ワクチンにおける使用のための本発明のタンパク質に関する。
【0047】
さらに別の実施態様は、ローソニア・イントラセルラーリス感染を撲滅するためのワクチンの製造向けの、本発明のタンパク質の使用に関する。
【0048】
本発明のワクチンを作製する一つの方法は本発明の前記タンパク質またはその免疫原性断片を、感染した腸壁から採取された粘膜剥離物を通じて得られるバクテリアから生化学的に精製することによる。このことはしかしながら、ワクチンを作製するのに非常に時間を消費する方法である。
【0049】
それゆえ、ワクチンにおいて本発明の前記タンパク質またはその免疫原性断片をコードする遺伝子の発現産物を使用することが非常により簡便である。前記26kDタンパク質をコードする遺伝子の核酸は本発明によって提供される。
【0050】
これらの遺伝子の発現産物に基づいたこのようなワクチンは、本発明のタンパク質または本発明の免疫原性断片を、後述のように医薬的に許容できる担体と混合することによって簡単に作製できる。
【0051】
あるいは、本発明のワクチンは、本発明のタンパク質または本発明のその免疫原性断片を発現できる、上述のような、生きた組み換え担体を含むことができる。例えば腸上皮組織または例えば呼吸器系上皮組織を感染させるサルモネラ担体またはウィルス担体に基づいたこのようなワクチンは、ローソニア・イントラセルラーリスの感染の自然な方法をよりよく模倣するサブユニットワクチンにわたる利点を有する。さらに、自己増殖は、少量の組み換え担体のみが免疫性の付与に必要であるため有利である。
【0052】
上述のワクチンはすべて活発な予防接種に関与し、すなわち、宿主の免疫系は本発明のタンパク質またはその免疫原性断片によって惹起され、これらのタンパク質に対する抗体を産生する。
【0053】
あるいは、このような抗体は、例えばウサギにおいて上昇できるか、または後述のように抗体産生細胞系から得られることができる。このような抗体は次に、宿主動物へ投与できる。この方法の予防接種、すなわち受動的予防接種は、動物がすでに感染しており、および自然な免疫反応が惹起できる時間がないときに選択される予防接種である。それはまた、免疫が危険に暴露された動物を予防接種するための好ましい方法でもある。投与される、ローソニア・イントラセルラーリスに対する抗体はこれらの場合、バクテリアへ直接結合できる。このことはローソニア・イントラセルラーリスの成長を即時低下または停止する利点を有する。
【0054】
それゆえ、本発明のこの実施態様の他の一つの形式は本発明の26kDローソニア・イントラセルラーリスタンパク質に対する抗体を含むワクチンに関する。
【0055】
ワクチンは本発明の前記タンパク質またはその免疫原性断片を含む、上述のような宿主細胞に基づいていることができる。
【0056】
予防接種の別のおよび効率のよい方法は前記関連抗原をコードするDNAによる直接的な予防接種である。タンパク質をコードするDNAによる直接的な予防接種は、多くの異なるタンパク質にとって成功している(例えばDonnelly et al., The Immunologist 2: 20−26 (1993)において総説されるように)。
【0057】
この方法の予防接種はローソニア・イントラセルラーリス感染に対するブタの予防接種にとって非常に興味深い。
【0058】
それゆえ、本発明の実施態様のさらに他の形式は、本発明のタンパク質または本発明のその免疫原性断片をコードする核酸を含むワクチン、およびこのような核酸を含むDNA断片を含むワクチンに関する。
【0059】
この実施態様のさらに他の形式は、本発明の組み換えDNA分子を含むワクチンに関する。
【0060】
DNAワクチンは皮内適用を通じて、例えば針なし注射器を使用して簡単に投与できる。この方法の投与はDNAを、予防接種される動物の細胞へ直接送達する。1〜100μgの間の範囲の微生物中のDNAの量は、非常によい結果を提供する。
【0061】
さらなる実施態様において、本発明のワクチンはさらに、他のブタ病原性生命体およびウィルスに由来する一つ以上の抗原、またはこのような抗原をコードする遺伝情報をさらに含む。
【0062】
このような生命体およびウィルスは、仮性狂犬病ウィルス、ブタインフルエンザウィルス、ブタパルボウィルス、伝染性胃腸炎ウィルス、ロタウィルス、大腸菌(Escherichia coli)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、豚コレラ菌(Salmonella cholerasuis)、ヘモフィラス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パストゥレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)、マイコプラズマ・ハイオプヌーモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ブラキスピラ・ハイオダイセンテリエ(Brachyspira hyodysenteriae)、およびアクチノバチラス・プレウロニューモニアエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)のグループから好んで選択される。
【0063】
本発明のすべてのワクチンは医薬的に許容できる担体を含む。医薬的に許容できる担体は、例えば滅菌水または滅菌生理塩類溶液でありうる。より複雑な形式において、担体は例えば緩衝液でありうる。
【0064】
ワクチンの調製のための方法は、本発明のタンパク質またはその免疫原性断片、および医薬的に許容できる担体の混合物を含む。
【0065】
本発明のワクチンは、好ましい呈示において、アジュバントも含む。アジュバントは一般に、非特異的な様式で宿主の免疫反応を惹起する物質を含む。多くの異なるアジュバントが本分野において既知である。
【0066】
アジュバントの例は、Freundsの完全および不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、クィルA(R)、鉱油例えばバイヨール(R)またはマルコール(R)、野菜油、およびカルボポール(R)(ホモポリマー)、またはディルバック(R)フォルトである。
【0067】
ワクチンは、いわゆる「担体」も含有してもよい。担体は、ある化合物へ共有結合せずにポリペプチドが接着する化合物である。しばしば使用される担体化合物は、例えば水酸化アルミニウム、リン酸化アルミニウム、または酸化アルミニウム、シリカ、カオリン、およびベントナイトである。
【0068】
抗原が担体に部分的に組み込まれるこのような担体の特殊な形式は、いわゆるISCOM(EP109.942、EP180.564、EP242.380)である。さらに、ワクチンは一つ以上の適切な界面活性化合物または乳化剤、例えばスパンまたはトゥイーンを含有してもよい。
【0069】
しばしば、ワクチンは安定化剤と混合され、例えば分解傾向性ポリペプチドを分解されることから保護し、ワクチンの有効期間を延長し、または凍結乾燥の効率性を亢進する。実用的な安定化剤はとりわけ、SPGA(Bovarnik et al ; J. Bacteriology 59: 509 (1950))、炭水化物例えばソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、ショ糖、デキストラン、またはブドウ糖、アルブミンまたはカゼインのようなタンパク質、またはそれらの分解産物、およびアルカリ金属リン酸塩のような緩衝剤である。
【0070】
さらに、ワクチンは生理学的に許容できる希釈剤中に懸濁され得る。アジュバント処理し、担体化合物または希釈剤を添加し、ポリペプチドを乳化または安定化させることに関する他の方法も、本発明において具現化されることは言うまでもない。
【0071】
本発明のワクチンは1〜100μgの間の範囲にある量で非常に適切に投与できるが、より少量の投与量は原理上使用できる。100μgを超える投与量は免疫学的に非常に適切ではあるが、商業上の理由のためあまり興味深くはないだろう。
【0072】
LRCウィルスおよび上述のバクテリアのような生きた弱毒化された組み換え担体に基づいたワクチンは、感染期間中ワクチンがそれ自体を繁殖させるため、非常により少量の投与量で投与できる。それゆえ、非常に適切な量はバクテリアおよびウィルスについてそれぞれ、10〜10CFU/PFUの範囲になるであろう。
【0073】
多くの投与方法が適用できる。経口適用は、感染が消化管の感染であるため、非常に興味深い方法の投与である。経口投与の好ましい方法は、本分野において既知でありかつ頻繁に使用され、カプセル入りのワクチンが胃の非常に酸性の環境を通過した後で崩壊するだけであるカプセル入りのワクチンの包装である。また、ワクチンは胃のpHを一時的に亢進するため、本分野において既知である化合物と混合されてもよい。
【0074】
全身性適用も適切であり、例えばワクチンの筋内適用によって行われる。もしこの経路にしたがえば、全身性適用についての本分野で既知の標準的な手法が適切である。
【0075】
疾病に対する保護の観点から、ローソニア・イントラセルラーリス感染の迅速かつ正確な診断は重要である。それゆえ、本発明の別の目的は、ローソニア・イントラセルラーリス感染の検出に適した診断ツールを提供することである。
【0076】
血清中のローソニア・イントラセルラーリス抗体の検出のための診断用検査は、例えば、本発明の26kDタンパク質またはその抗原性断片がELISAプレートのウェルの壁へコーティングされる単純で標準的なサンドイッチELISA検査でありうる。このような抗体の検出のための方法は、例えば、検査される哺乳類由来の血清とともに26kDタンパク質またはその抗原性断片を定温放置した後、例えば、関連哺乳類抗体に対する標識された抗体とともに定温放置することである。次に、呈色反応はローソニア・イントラセルラーリスに対する抗体の有無を評価できる。診断用検査システムの別の例は、例えば本発明の26kDタンパク質またはその抗原性断片を含むウェスタンブロットを、検査される哺乳類の血清とともに定温放置した後、ブロットを分析することである。
【0077】
したがって、本発明の別の実施態様は、ローソニア・イントラセルラーリスに対する抗体の検出のための診断用検査に関する。このような検査は本発明のタンパク質またはその断片を含む。
【0078】
ローソニア・イントラセルラーリス抗原の特異的26kDタンパク質に関する抗原性材料の検出に基づいた、およびそれゆえローソニア・イントラセルラーリス感染の検出に適した診断用検査は、例えば標準的なELISA検査でもありうる。このような検査の一例において、ELISAプレートのウェルの壁は、前記26kDタンパク質に対して向かう抗体でコーティングされる。検査される材料とともに定温放置した後、標識されたローソニア・イントラセルラーリス抗体がウェルへ添加される。次に、呈色反応はローソニア・イントラセルラーリス由来の抗原性材料の存在を評価する。
【0079】
それゆえ、本発明のさらに別の実施態様は、ローソニア・イントラセルラーリスの抗原性材料の検出のための診断用検査に関する。このような検査は本発明のタンパク質またはその断片に対する抗体を含む。
【0080】
上述に特徴付けられるように表現された本発明のポリペプチドまたはその免疫原性断片は、ポリクローナル、モノ特異的、またはモノクローナル(またはそれらの誘導体)であってもよい抗体を産生するのに使用できる。もしポリクローナル抗体が望まれれば、ポリクローナル血清を産生・処理するための技術が本分野において周知である(例、Mayer and Walter, eds. Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology, Academic Press, London, 1987)。
【0081】
本発明のポリペプチド(または本発明のその変異体または断片)に対して反応するモノクローナル抗体は、本分野でこれもまた既知の技術によって近交系のマウスを免疫付与することによって調製できる(Kohler and Milstein, Nature, 256, 495−497, 1975)。
【0082】
本発明の抗体の大規模な産生のための方法も本分野で既知である。このような方法は、ファージディスプレイのための糸状ファージにおいて、本発明の前記タンパク質をコードする遺伝情報の(断片の)クローニングに依存する。このような技術はとりわけ、http://aximt1.imt.uni−marburg.de/〜rek/aepphage.htmlにおける「filamentous phage display」の下での「Antibody Engineering Page」で、および、Trends Biotechn. 12: 262−267のCortese, R. et al., (1994)によって、Trends Biotechn. 12: 173−183のClackson, T. & Wells, J. A. (1994)によって、J. Biol. Chem. 267: 16007−16010のMarks, J. D. et al., (1992)によって、Annu. Rev. Immunol. 12: 433−455のWinter, G. et al.によって、およびLittle, M. et al., (1994) Biotechn. Adv. 12: 539−555によって記述されている。ファージはその後、ラクダ科動物重鎖抗体を発現するラクダ科動物発現ライブラリをスクリーニングするのに使用される(Muyldermans, S. and Lauwereys, M., Journ. Molec. Recogn. 12: 131−140 (1999)およびGhahroudi, M. A. et al., FEBS Letters 414: 512−526 (1997))。望まれる抗体を発現するライブラリからの細胞は複製でき、その後、抗体の大規模発現のために使用できる。
【0083】
実施例
【実施例1】
【0084】
感染したブタ回腸からのローソニア・イントラセルラーリスの単離。
【0085】
組織病理学および抗酸性Ziehl−Neelsen染色によって確認されるローソニア・イントラセルラーリスに感染した回腸がPEで死亡したブタから回収され、−80℃で保存された。融解後、ローソニア・イントラセルラーリスバクテリアを、感染した腸壁から採取した粘膜剥離物から単離した。前記回腸剥離物をオムニミキサー中のPBSにおいて繰り返し均質化し、Lawson et al.(Vet. Microbiol. 10: 303−323 (1985))によって記述されるように細胞内バクテリアを放出した。低速遠心分離で細胞くずを除去した後に得られる上清を、5.0μm、3.0μm、1.2μm、および0.8μmのフィルター(ミリポア)でろ過した。前記ろ液をその後、8000gで30分間遠心分離し、小さなペレットのローソニア・イントラセルラーリスバクテリアを得た。これらのバクテリアをさらにPercoll勾配を使用して精製した。前記精製されたバクテリアの同定はPCRにより査定され(Jones et al. , J. Clin. Microbiol. 31: 2611−2615)、一方で、単離されたバクテリアの精製度(>95%)は位相差顕微鏡により査定し、いずれかの夾雑するバクテリアまたは存在する腸のくずを評価した。
【0086】
バクテリア株およびプラスミド
ローソニア・イントラセルラーリス細胞を上述のように、感染した回腸材料から単離した。ベクターpLysSrareおよびプラスミドpET22bを含む大腸菌宿主系BL21star(DE3)をNovagen(米国ウィスコンシン州マディソン市)から購入し、大腸菌系TOP10F’をInvitrogen(オランダ国フローニンゲン)から購入した。30%グリセロールを含有しているすべてのバクテリア株のストックは−70℃で保存した。LB培地およびLBプレートを標準的な手技にしたがって調製した。
【0087】
DNA単離
高度に精製されたローソニア・イントラセルラーリス染色体DNAを得るため、Biorad染色体DNA単離キット(Biorad、オランダ国 フェーネンダール)を使用してDNAをバクテリア細胞から調製した。Qiagen製品を使用して、プラスミドDNAを単離した。
【0088】
PCR増幅
52U/ml伸長高忠実度酵素ミックス、2.5mMMgCl、16mMdNTP(Promega、米国ウィスコンシン州)、20pmolのプライマー、およびテンプレートとしての15ngのローソニア・イントラセルラーリス染色体DNAを含む伸長HF緩衝液を含有しているPCR混合物を用いて、PCR増幅を実行した。
【0089】
標準的な適用(つまり、コロニーPCR)のため、前記PCR混合物は、20U/mlスーパータック(HT Biotechnology社、英国ケンブリッジ)および、8mMdNTP(Promega、米国ウィスコンシン州)、10pmolのプライマー、および15ngのテンプレートを含有するスーパータック緩衝液(HT Biotechnology社、英国ケンブリッジ)を含有した。
【0090】
ライゲーションおよび形質変換
ライゲーションは1単位のライゲーション酵素(Gibco BRL Life Technologies社、米国)を有する1×ライゲーション緩衝液中で、16℃で一晩実行した。1μlのライゲーション反応液を大腸菌コンピテント細胞へ、熱ショックにより形質変換した。BL21star(DE3)大腸菌コンピテント細胞およびTOP10F’大腸菌コンピテント細胞は標準的な方法を使用して形質変換受容性にした。
【0091】
10×HIS融合タンパク質の発現
発現ベクターのDNA配列を確認した後、pLysSrareを含有するBL21star(DE3)へ発現ベクターを形質変換した。生じた株を100μg/mlアンピシリン含有の5mlLB中で一晩、37℃、200rpmで生育させた。前記一晩の培養物を、100μg/mlアンピシリン含有の50mlLB中で1:100に希釈した。この培養物を同一条件下で、OD600が0.5に到達するまで生育させた。前記培養物をIPTGにより終濃度1mMになるよう誘導し、その後3時間生育させ続けた。100μlの試料を分析用に採取した。pLysSrareを含有する大腸菌系BL21star(DE3)を同一条件下で生育させ誘導し、試料をネガティブコントロールとして採取した。前記試料をSDS−PAGEにより分析した。
【0092】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェスタンブロッティング
NuPAGE電気泳動システム(Invitrogen、www.invitrogen.com)からの4〜12%ビス−トリスゲルを使用して、SDS−PAGEを実行した。ウェスタンブロッティングはセミドライブロッティング手法を使用して実行した。ウェスタンブロットは水:油が45:55の乳化剤中の全細胞調製物に対して上昇するニワトリ抗ローソニアポリクローナル血清を使用して、または精製したローソニア・イントラセルラーリス細胞で経口試験し、ローソニア・イントラセルラーリス感染に対して典型的な臨床知見および死後の障害を発現した動物から得られたブタ血清を使用して現像した。4℃で4時間、ベクターpLysSrareを含有するBL21star(DE3)由来の等量の細胞粗抽出物を使用して、前記血清をあらかじめ吸着させた。
【0093】
結果
T7ベースの発現ベクターにおけるローソニア・イントラセルラーリス遺伝子5608のクローニング
プライマー2179(CATGCCATGGATTTGATGGAACAGGATTAAAG)およびプライマー2180(CCGCTCGAGCCATAACCCCTTTTCGATAC)を使用して、遺伝子5608を増幅した。前記処理において、5’NcoIおよび3’XhoIの部位を前記PCR産物へ導入した。前記得られたPCR産物を、制限酵素NcoIおよびXhoIを使用して消化した。前記消化したPCR産物をその後、前記同一の二つの制限酵素で切断しておいたpET22bへライゲートした。前記ライゲーション混合物を大腸菌TOP10Fへ形質変換し、および37℃で一晩定温放置した。推定上の形質変換因子を、コロニーPCRを使用して正確なプラスミドについてチェックした。コロニーPCR陽性の形質変換因子の前記プラスミドインサートを、ヌクレオチド配列分析によりチェックした。クローン戦略に基づいて期待される配列を含有したクローンのうちの一つを選択し、pET5608と命名した。
【0094】
大腸菌におけるT7プロモーターからのローソニア・イントラセルラーリス遺伝子5608の発現
プラスミドpET5608をBL21Star(DE3)pLysSrareへ形質変換した。生じた株を、上述のように組み換えタンパク質産生のために検査した。前記誘導される培養物の試料および対照試料をSDS−PAGEゲル電気泳動により分析した(図1A)。約26kDaの透明なタンパク質のバンドが、誘導されていない試料(図1A、レーン2)と比較して、誘導3時間後に採取した試料(図1A、レーン3)において観察された。
【0095】
前記同一試料をまた、ブタおよびニワトリの血清を使用したウェスタンブロットにより分析した。タンパク質5608との反応は、精製されたローソニア・イントラセルラーリスで経口試験したブタ由来の血清(図1B、レーン3)およびニワトリ抗ローソニア・イントラセルラーリス血清で経口試験したブタ由来の血清(図1C、レーン3)を使用して観察された。
【0096】
結論
前記26kDワクチン成分は、多量にうまく発現でき、および、ブタ抗ローソニア・イントラセルラーリス血清およびニワトリ抗ローソニア・イントラセルラーリス血清の両者とも経口試験することによって実際に明らかに認識される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】SDS−PAGE(A)および、ポリクローナルブタ血清(B)およびポリクローナルニワトリ血清(C)を使用するウェスタンブロッティングによる大腸菌BL21STAR/pLysSRAREにおけるローソニア・イントラセルラーリス遺伝子5608の過剰発現の分析。レーン1、分子量マーカー;レーン2、pET5608、T=0;レーン3、pET5608、T=3。矢印は発現産物の位置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載されている配列を有する核酸と少なくとも90%、好ましくは92%、より好ましくは94%、さらにより好ましくは96%の相同性を有する、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)の26kDのタンパク質をコードする核酸または前記タンパク質の免疫原性断片をコードする前記核酸の一部。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸を含むDNA断片。
【請求項3】
機能的に連結されたプロモーターの調節下にある、請求項1に記載の核酸または請求項2に記載のDNA断片を含む組み換えDNA分子。
【請求項4】
請求項1に記載の核酸、請求項2に記載のDNA断片、または請求項3に記載の組み換えDNA分子を含む、生きた組み換え担体。
【請求項5】
請求項1に記載の核酸、請求項2に記載のDNA断片、請求項3に記載の組み換えDNA分子、または請求項4に記載の生きた組み換え担体を含む、宿主細胞。
【請求項6】
配列番号2に記載されているアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは92%、より好ましくは94%、さらにより好ましくは96%相同であるアミノ酸配列を含むローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)の26kDのタンパク質または該タンパク質の免疫原性断片。
【請求項7】
ワクチンにおいて使用するための、請求項6に記載のローソニア・イントラセルラーリスのタンパク質。
【請求項8】
ローソニア・イントラセルラーリス感染を撲滅するためのワクチンを製造のための、請求項6に記載のローソニア・イントラセルラーリスのタンパク質。
【請求項9】
請求項1に記載の核酸、請求項2に記載のDNA断片、請求項3に記載の組み換えDNA分子、請求項4に記載の生きた組み換え担体、請求項5に記載の宿主細胞または請求項6に記載のタンパク質と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)感染を撲滅するためのワクチン。
【請求項10】
アジュバントを含むことを特徴とする、請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】
ブタに対して病原性のあるウィルスまたは微生物に由来するさらなる抗原または前記抗原をコードする遺伝情報を含むことを特徴とする、請求項9または請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
ブタに対して病原性のある前記ウィルスまたは微生物が、仮性狂犬病ウィルス、ブタインフルエンザウィルス、ブタパルボウィルス、感染性胃腸炎、ロタウィルス、大腸菌(Escherichia coli)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella cholerasuis)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、マイコプラズマ・ハイオニューモニアエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ブラチスピラ・ハイオダイセンテリエ(Brachyspira hyodysenteriae)およびアクチノバチラス・プレウロニューモニアエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
請求項6に記載のタンパク質に対する抗体を含むことを特徴とする、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)感染を撲滅するためのワクチン。
【請求項14】
請求項1に記載の核酸、請求項2に記載のDNA断片、請求項3に記載の組み換えDNA分子、請求項4に記載の生きた組み換え担体、請求項5に記載の宿主細胞、請求項6に記載のタンパク質、または請求項6に記載のタンパク質に対する抗体と、薬学的に許容される担体とを混合することを含む、請求項9ないし13に記載のワクチンを調製する方法。
【請求項15】
前記検査が請求項6に記載のタンパク質またはその断片を含むことを特徴とする、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)に対する抗体の検出のための診断用検査。
【請求項16】
前記検査が請求項6に記載のタンパク質またはその断片に対する抗体を含むことを特徴とする、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)の抗原性材料の検出のための診断用検査。

【図1】
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【公表番号】特表2007−537715(P2007−537715A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543544(P2006−543544)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053342
【国際公開番号】WO2005/056586
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】