説明

ロータディスクの接面凹部の検査装置

【課題】渦電流を使用してロータディスクの接面凹部を検査するための検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置は、走査ストローク時に複数のデータ系列を取得するように配設された複数のセンサ(45)を収容するプローブ(30)を備え、プローブは、検査対象凹部に隣接する凹部と協働する2つの位置決め部材(21、23)を備えた支持体(19)内で摺動可能な移動装置(25)に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流を使用してターボ機械のロータディスク内の接面凹部またはスロットを検査するための装置に関する。より詳細には、本発明は、特に検査手段を素早く、正確に位置決めして、迅速にデータを取得し、より信頼できる、より正確な測定結果を出すことを可能にするための改善に関する。より詳細には、検査装置は上記接面凹部の圧力面を検査するように構成される。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「多素子」渦電流プローブは撮像システムと連動され、プローブは特にロータディスク内の接面凹部に沿って摺動するように形成される。直線プローブは一定の断面から構成され、その横断面の外形は検査対象凹部の断面に対応する。直線プローブは、凹部の長手方向の走査ストローク時に複数のデータ系列を準同時的に取得するために配設される複数の渦電流センサを収容する。各データ系列は、1つのセンサを使用する凹部内面の長手ストリップの走査に対応するものである。プローブは、手動で移動される。
【0003】
測定の信頼性と精度は、凹部に正確に位置決めされるプローブによって決まる。そのために、センサを有さない2つの案内セグメント間のプローブの中央セグメントにセンサが集められる。このことにより、センサが凹部の表面状態を走査し始めたときに、凹部の端部でも確実にプローブが正確に位置決めされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多素子プローブを撮像システムと連動させるのが有利であるが、案内セグメントの存在により、すなわちプローブの端部にセンサを配置できないことにより、システムの性能は制限される。結果として、プローブの中央セグメントが凹部の全長にわたり摺動されない場合、検査は真に信頼性のあるものではない。プローブが凹部の一端部を通って挿入され、他方端部から抜き出されるように、完全に取り外されたディスク上で、上述の摺動が行われる。しかし、並んで位置決めされた(一緒に溶接された)複数のディスクから構成されるロータを検査する必要がある場合、そのような運動は常に可能であるとは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ロータディスクの接面凹部を検査するために、特に凹部の圧力面を検査するために多素子プローブが使用され得る条件の改善を可能にするものである。
【0006】
より精密には、本発明は、渦電流を使用してロータディスクの接面凹部を検査するための検査装置を提供するものであり、検査装置は凹部の断面の外形に一致する外形の横断面のプローブを備え、上記プローブは凹部の長手方向の走査ストローク時に複数のデータ系列を取得するために配設される複数のセンサを収容するタイプの検査装置であって、検査装置は、検査対象凹部に隣接する2つの凹部とそれぞれ協働する2つの位置決め部材を有する支持体と、上記プローブを担持し、検査時に上記凹部に沿って上記プローブを案内するように配設される摺動移動装置との両方を備えることを特徴とする。
【0007】
上記で定義された構成により、プローブの位置決めは凹部内部のそのストロークの始まりから正確であり、したがって、測定結果はより信頼できる、より正確なものとなる。凹部に沿ったプローブの進行は、より簡単に手動でも制御されることが可能である。さらに、別の有利な特性によれば、プローブの長辺全体に、または端部近傍を含むほぼ全長にわたりセンサが分布される。言い換えれば、上述した案内セグメントは省略することができ、それにより、ディスクが別のディスクの側にあるときでも、凹部をその全長にわたりより精密に走査することが可能になる。
【0008】
別の有利な特性によれば、プローブは2つの移動ブロックから構成される。センサはブロック内に分布される。ブロックはヒンジ装着され、上記ブロックが検査対象凹部の対応領域に確実に接触するように(互いに離れて)外側へ弾性バイアスされる。特に、これらの領域は上述した圧力面を含む。
【0009】
さらに、検査対象凹部内のプローブの位置および/またはプローブの進行を監視するインデックス手段が配設されてもよい。
【0010】
1つの可能な実施形態において、両方の位置決め部材は、上記隣接凹部間の距離に対応する距離だけ互いに離間した拡張要素を含む。これらの要素は、上記隣接凹部に係合され、ロックされるように成形され、配置される。このことにより、上記プローブが上記検査対象凹部に係合され得るように支持体が位置決めされるのが可能になる。
【0011】
有利には、検査装置は多チャンネルの発生受信器を含む。そのような発生受信器は、上記検査対象凹部内のプローブに沿った異なる位置でセンサの全てを同時に作動させる働きをする。発生受信器は、受信段階で取得を同期させる働きをする。
【0012】
本発明の原理に従った渦電流を使用する検査装置の以下の説明に照らして、本発明をより良く理解し、本発明の利点をより明白にすることができる。以下の説明は一例としてのみ挙げられ、添付図面を参照して説明されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面に関して、ロータディスク15の外周に画定された接面凹部13の表面で(または表面近くで)不具合を検出するのに適した渦電流検査装置11が示されている。これら凹部はブレード根元部を受承し、保持する。このような凹部13は特に、遠心力効果を受けてブレード根元部が強く押圧する、いわゆる2つの「圧力面」17を含む。特に、定期的なメンテナンス時の検証を行うときに、これらの圧力面の状態を検査することがとても重要である。この検査は、圧力面に形成された疲労亀裂の発見に役立つ。
【0014】
検査装置は、検査対象凹部に隣接する各凹部とそれぞれ協働するように適合した2つの位置決め部材21および23を有する支持体19を備える。これらの位置決め部材は平行ロッド21aおよび23aにより形成され、各平行ロッドは環状拡張要素21bまたは23bを有する。これらのロッドは拡張要素を備え、検査対象凹部に隣接する凹部間の距離、特に本例においては検査対象凹部の両側にある2つの最近傍の凹部間の距離に対応する距離だけ離間している。支持体19は、概してブリッジの形態をして、多素子型渦電流プローブ30を装着した摺動移動装置25を支持する。移動装置は、支持体に画定された摺動面に沿って摺動する。組立部は、拡張要素21bおよび23bを使用することにより2つのロッド21aおよび23aが2つの隣接凹部に係合され、そこでロックされるとき、プローブ30が検査対象接面凹部に係合し得るように配設される。この組立部には、1つの隣接凹部に最初に係合されるように設計される固定ロッド21aと、その次に他方の隣接凹部に挿入されるように適合した、支持体19内で摺動可能な移動ロッド23bとが存在する。
【0015】
固定ロッドの拡張要素21bは、横方向レバー28により制御されるが、移動ロッドの拡張要素23bは、その後端部に位置するノブ29により制御される。
【0016】
支持体19は、2つの当接面31を有する。ロッド21aおよび23aは当接面のそれぞれから突出する。
【0017】
2つのロッドが2つの隣接凹部内でロックされると、検査対象凹部の両側で、当接面31がディスク15の一面を押圧するように支持体が位置決めされ、移動装置およびプローブが厳密に検査対象凹部に合わされ、その結果、上記プローブは凹部に係合され得る。
【0018】
プローブ30は、センサを収容したプラスチック材料の単一ブロックにより構成されることもある。そのようなブロックは、凹部13の断面の外形の少なくとも一部に一致する外形の横断面を有する。ところが、本例では、プローブ30は、スプリング40を介して外側へ弾性バイアスされて、すなわち互いに離れて、平行なピボット軸38上でヒンジ連結された2つの対称ブロック35および36を備える。この構成は、ブロックと検査対象凹部の対応する領域、より精密には本例の圧力面17との接触を確実にする。このタイプの構造は、プローブを凹部に挿入しながらブロックが互いに向かって移動される必要があることを意味する。
【0019】
渦電流センサ45は、接面凹部に沿ってプローブが移動する間の重なりを求めるために、各ブロック35および36内の複数のライン上に配置される。センサは、端部を含むプローブのほぼ全長にわたって分布され得る。特に、複数のセンサ45が(プローブ30の移動方向に対して)プローブ30の前面に配置されるのが有利である。好ましくは、接面凹部の端部が開口していない場合でも走査されるように、可能な最大の数のセンサを各ブロック35の前面に配置することが可能である。
【0020】
センサのワイヤは、センサの全てが同時に作動されるのを可能とし、受信段階で取得を同期させる働きをする多重多チャンネル発生受信器48に接続される。発生受信器は、上記検査対象凹部に沿った種々の位置に配置されたプローブと共に使用される。そのような発生受信器48は、ブロックがヒンジ連結されるユニット50(移動装置の一部を形成する)内に設置され得る。信号を転送する電気ケーブル52は、発生受信器を、読み出し可能な取得情報をいわゆる「C−SCAN」フォーマットでの再生用に構築されるのを可能にする再構成ソフトウェアおよび画像プロセッサソフトウェアを含む撮像装置(図示せず)に接続する。
【0021】
画像再生を改善するために、検査装置はさらに、検査対象凹部内のプローブ30の位置および/または進行を監視するインデックス手段55に取り付けられ得る。例えば、ピニオン56が支持体19に装着される。そのアクスルは、パルス発生器57などに接続される。ピニオンは、摺動移動装置25により担持された直線ラック58とかみ合う。
【0022】
したがって、データ取得は相対的に操作者の影響を受けない、特にプローブを担持する移動装置を操作者が移動させるスピードの影響を受けない。移動装置は、所定の一定のスピードで走査するように、モータ駆動とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】渦電流を使用してロータディスクの凹部の1つを検査するためにロータディスクの外周に設置された本発明の検査装置の概略的な斜視図である。
【図2】インデックス手段を示す詳細図である。
【図3】プローブの構造を示す別の詳細図である。
【符号の説明】
【0024】
11 渦電流検査装置
13 凹部
15 ロータディスク
17 圧力面
19 支持体
21、23 位置決め部材
21a 固定ロッド
21b、23b 拡張要素
23a 移動ロッド
25 摺動移動装置
28 横方向レバー
29 ノブ
30 プローブ
31 当接面
35、36 ブロック
38 ピボット軸
40 スプリング
45 センサ
48 多チャンネル発生受信器
50 ユニット
52 電気ケーブル
55 インデックス手段
56 ピニオン
57 パルス発生器
58 直線ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦電流を使用してロータディスク内の接面凹部(13)を検査するための検査装置にして、前記凹部の断面の外形に一致する外形を有する横断面のプローブ(30)を備え、前記プローブが凹部の長手方向の走査ストローク時に複数のデータ系列を取得するために配設される複数のセンサ(45)を収容するタイプの検査装置であって、
前記検査装置が、検査対象凹部に隣接する2つの凹部とそれぞれ協働する2つの位置決め部材(21、23)を有する支持体(19)と、前記プローブを担持し、検査時に前記凹部に沿って前記プローブを案内するように配設された摺動移動装置(25)との両方を備えることを特徴とする、検査装置。
【請求項2】
2つの位置決め部材が、前記隣接凹部間の距離に対応する距離だけ離間した2つの拡張要素(21b、23b)を含み、前記拡張要素が、前記隣接凹部に係合され、ロックされるように配置されて、前記プローブが前記検査対象接面凹部に係合され得るように前記支持体を位置決めすることを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検査装置が、前記検査対象凹部内の前記プローブ(30)の位置および/または進行を監視するためのインデックス手段(55)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記センサ(45)が、前記プローブ(30)のブロック(35)に分布され、ブロックが、確実に前記ブロックを前記検査対象凹部の対応する領域に接触させるように、外側へ弾性バイアスされてヒンジ連結されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
検査装置が、センサの全てを前記検査対象凹部内のプローブに沿った異なる位置でほぼ同時に作動させるための多チャンネル発生受信器(48)を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
センサ(45)が、プローブ(30)の先端部に配置されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−75106(P2009−75106A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−238980(P2008−238980)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【出願人】(599102789)
【Fターム(参考)】