説明

ロータリセンサ

【課題】 取付性が向上したロータリセンサを提供する。
【解決手段】 ロータリセンサ1は、車体Bに設けられた被保持凸部B1を挟むことで車体に対する回転を禁止されるとともにコイル31を収納したハウジング2と、導電体からなりスタンドSに対して固定され車体Bに対するスタンドSの回転に伴ってハウジング2に対して回転するロータ4と、ハウジング2に設けられた軸受け穴に挿通されるとともに第1ピボットボルトPBに対し中心軸を揃えて螺合する軸部51及び軸部51の一端に連結されて軸部51の径方向に突出し車体Bとの間にハウジング2を挟む頭部52を有する第2ピボットボルト5とを備える。第2ピボットボルト5によってハウジング2とロータ4とが一括して取り付けられるから、ハウジング2とロータ4とが個別に取り付けられる場合に比べて取付性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば図8に示すように、二輪車において車体BとスタンドSとの連結部に取り付けられてスタンドSの起立状態を検出するロータリセンサ1が提供されている(例えば、特許文献1参照)。つまり、スタンドSが停車時の起立状態であるときにはエンジンが始動しないようにすることで、スタンドSが起立状態のまま発進することを防ぐのである。
【0003】
図8の例について詳しく説明すると、ロータリセンサ1は、車体部Bに対して連結されたハウジング2と、ハウジング2に対して回転自在に取り付けられるとともにスタンドSに連結されスタンドSが車体Bに対して矢印A1で示すように回転したときにスタンドSに連動してハウジング2に対して回転するロータ(図示せず)とを備える。ハウジング2は、ロータ(図示せず)を覆う有底円筒形状の本体部21と、ハウジング2に対するロータの回転に伴って出力が変化する検出部(図示せず)に電気的に接続された電線Cが引き出される電線引き出し部22と、車体Bから突設された被保持凸部B1を電線引き出し部22との間で挟む挟み部23とを有する。ハウジング2は、電線引き出し部22と挟み部23との間に被保持凸部B1を挟むことで車体Bに対する回転を禁止されている。これにより、スタンドSが車体Bに対して回転したときにはロータがハウジング2に対して回転する。上記の検出部は、スタンドSが起立状態か否かによって出力が切り替わるように構成されている。図8の例では、スタンドSには車体Bの被保持凸部B1と同じ方向へ突出した突起S1が設けられ、車体Bに設けられた被保持凸部B1とスタンドSに設けられた突起S1とは引っ張りコイルばねからなる連結ばねSPを介して連結されており、スタンドSは、連結ばねSPのばね力により、停車時の起立状態か走行時の格納状態かの一方に維持される。
【0004】
検出部としては、例えば、ハウジング2に設けられた固定接点と、ロータに設けられてスタンドSの向き(起立状態か格納状態か)に応じて前記固定接点に対する離接が切り替わる可動接点とからなるロータリスイッチを用いることが考えられる。しかし、検出部として上記のようなロータリスイッチを用いる場合、ハウジング2とロータとの間の隙間を閉塞して固定接点と可動接点とが収納された空間を密閉するために、該空間を囲む環形状のオイルシール(図示せず)をハウジング2とロータとの間に介在させる必要があり、このようなオイルシールはロータに対するハウジング2の回転に伴って磨耗する。そして、オイルシールが磨耗すると、密閉性の低下により外部から進入した塵などの異物や、オイルシール自体の磨耗粉が、固定接点と可動接点との間に入り込んで接触不良の原因となる可能性がある。さらに、固定接点と可動接点とにも磨耗が発生する。また、上記のオイルシールが磨耗して上記空間内に水が浸入した場合には短絡が発生する可能性もある。以上により、検出部として上記のようなロータリスイッチを用いる場合には、固定接点と可動接点との接触不良や短絡が発生するまでのロータリセンサ1の寿命が短くなってしまう。
【0005】
そこで、例えば図9及び図10に示すように、コイル31とコイル31のインダクタンスの変化に基いてスタンドSの向き(起立状態か格納状態か)を検出する検出回路(図示せず)とコイル31及び検出回路がそれぞれ実装されたプリント配線板30とを有する検出部3をハウジング2に収納及び保持するとともに、ロータ4を金属で構成したロータリセンサ1が提案されている。
【0006】
図9及び図10の例について詳しく説明すると、ハウジング2は、検出部3が収納される収納凹部20を有してボルトBOによって車体Bに対してねじ止め固定されるボディ2aと、ボディ2aに固着されて収納凹部20aを密閉するカバー2bとからなる。ロータ4は、車体Bに対するスタンドSの回転軸にもなる第1ピボットボルトPBが挿通されることでスタンドSに対して固定されている。ここで、ロータ4は、スタンドSが起立状態と格納状態との一方であるときにスタンドSの回転軸方向(図9での上方)から見てコイルに重なり、スタンドSが起立状態と格納状態との他方であるときにスタンドSの回転軸方向から見てコイルに重ならない形状とされている。すなわち、ロータ4の影響を含むコイル31のインダクタンスはスタンドSが起立状態か格納状態かによって異なるのであり、検出回路は、ハウジング2に対するロータ4の回転に伴うコイル31のインダクタンスの変化に基いて、スタンドSが起立状態か否かを判定する。上記構成によれば、コイル31とロータ4とは互いに接触させる必要がなく、ロータリスイッチにおける可動接点と固定接点とのように互いに同じ空間に配置するべき部品がハウジング2とロータ4との間に存在しないので、上記のような空間を密封するためのオイルシールが不要となるから、ロータリスイッチを用いる場合のような接点の磨耗やオイルシールの磨耗が発生しないことで寿命の延長が可能となる。また、オイルシールが不要となることで部品点数が減少し、製造コストの低減が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−231094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図9や図10の例では、取付時、ハウジング2を車体Bにねじ止めした後に、スタンドSを一旦取り外して第1ピボットボルトPBによりロータ4をスタンドSとともに取り付け直すといったように、ロータ4の取付作業とハウジング2の取付作業とを別途に行う必要があり、取付性が低かった。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、取付性が向上したロータリセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、車体に螺合した第1ピボットボルトが挿通されることで車体に対して回転自在に取り付けられたスタンド並びに車体からスタンドの回転軸に平行な方向に突設された被保持凸部を有する二輪車に取り付けられ、該二輪車の車体に対するスタンドの向きの検出に用いられるロータリセンサであって、コイルと、コイルのインダクタンスに基いてスタンドの向きを検出する検出回路と、コイルと検出回路とをそれぞれ収納したハウジングと、導電体からなりスタンドに対して固定され車体に対するスタンドの回転に伴ってハウジングに対して回転するロータと、ハウジングに設けられた軸受け穴に挿通されるとともに前記第1ピボットボルトに対し中心軸を揃えて螺合する軸部及び軸部の一端に連結されて軸部の径方向に突出し車体との間にハウジングを挟む頭部を有する第2ピボットボルトとを備え、ハウジングは、被保持凸部を挟む挟み部を有して挟み部が被保持凸部を挟むことで車体に対する回転を禁止され、ロータは、第2ピボットボルトの軸部が挿通されるボルト挿通穴が貫設されるとともにハウジングとスタンドとの間に挟まれることでスタンドから離れる方向への変位を禁止された本体部と、本体部から突設されて車体に対するスタンドの回転軸に直交する方向からスタンドに当接しスタンドに対するロータの回転を禁止する回転禁止部とを有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ロータの取付とハウジングの取付とが第2ピボットボルトによって一括して行われるので、ロータの取付とハウジングの取付とを別途に行う場合に比べて取付性が向上する。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ハウジングにおいて第2ピボットボルトの頭部に向けられる面には第2ピボットボルトの軸部を囲む環状凹部が設けられていて、弾性を有する材料からなり環形状であって環状凹部に収納されるとともに第2ピボットボルトの頭部とハウジングとに弾接するOリングを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、Oリングの弾性力によりハウジングがロータに押し付けられるから、ロータに対するハウジングのがたつきが抑えられる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、ハウジングは、第2ピボットボルトの軸部の軸方向に直交する方向から見てロータの本体部を覆う筒形状の囲み部を有することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、ハウジングとロータとの間への異物の進入を囲み部によって阻止することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、ロータは、スタンドを挟む回転禁止部としての挟み部と、本体部から突設されて挟み部がスタンドを挟む方向に直交する方向からスタンドに当接する位置決め部とを有することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、ロータを正しい向きに対してスタンドの回転軸回りに180°回転させた逆向きに取り付けようとしたときには位置決め部が邪魔になるから、ロータがスタンドに対して上記のように逆向きに取り付けられることを防ぐことができる。
【0018】
請求項5の発明は、導電材料からなり車体に対して回転自在に取り付けられたスタンドを有する二輪車に取り付けられ、該二輪車の車体に対するスタンドの向きの検出に用いられるロータリセンサであって、コイルと、コイルのインダクタンスに基いてスタンドの向きを検出する検出回路と、コイルと検出回路とをそれぞれ収納して車体に対して固定されるハウジングを備えることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、スタンドの向きの変化に伴ってコイルとスタンドとの距離が変化するような位置にハウジングを固定すればよく、導電材料からなりスタンドに連動してコイルのインダクタンスを変動させるように変位するロータが不要となるから、ロータを別途に設ける場合に比べ、取付性が向上するとともに製造コストが低減される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、ハウジングに設けられた軸受け穴に挿通されるとともに前記第1ピボットボルトに対し中心軸を揃えて螺合する軸部及び軸部の一端に連結されて軸部の径方向に突出し車体との間にハウジングを挟む頭部を有する第2ピボットボルトを備え、ハウジングは、被保持凸部を挟む挟み部を有して挟み部が被保持凸部を挟むことで車体に対する回転を禁止され、ロータは、第2ピボットボルトの軸部が挿通されるボルト挿通穴が貫設されるとともにハウジングとスタンドとの間に挟まれることでスタンドから離れる方向への変位を禁止された本体部と、本体部から突設されて車体に対するスタンドの回転軸に直交する方向からスタンドに当接しスタンドに対するロータの回転を禁止する回転禁止部とを有するので、ロータの取付とハウジングの取付とが第2ピボットボルトによって一括して行われるので、ロータの取付とハウジングの取付とを別途に行う場合に比べて取付性が向上する。
【0021】
請求項2の発明によれば、ハウジングにおいて第2ピボットボルトの頭部に向けられる面には第2ピボットボルトの軸部を囲む環状凹部が設けられていて、弾性を有する材料からなり環形状であって環状凹部に収納されるとともに第2ピボットボルトの頭部とハウジングとに弾接するOリングを備えるので、Oリングの弾性力によりハウジングがロータに押し付けられるから、ロータに対するハウジングのがたつきが抑えられる。
【0022】
請求項3の発明によれば、ハウジングは、第2ピボットボルトの軸部の軸方向に直交する方向から見てロータの本体部を覆う筒形状の囲み部を有するので、ハウジングとロータとの間への異物の進入を囲み部によって阻止することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、ロータは、スタンドを挟む回転禁止部としての挟み部と、本体部から突設されて挟み部がスタンドを挟む方向に直交する方向からスタンドに当接する位置決め部とを有するので、ロータを正しい向きに対してスタンドの回転軸回りに180°回転させた逆向きに取り付けようとしたときには位置決め部が邪魔になるから、ロータがスタンドに対して上記のように逆向きに取り付けられることを防ぐことができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、導電材料からなり車体に対して回転自在に取り付けられたスタンドを有する二輪車に取り付けられ、該二輪車の車体に対するスタンドの向きの検出に用いられるロータリセンサであって、コイルと、コイルのインダクタンスに基いてスタンドの向きを検出する検出回路と、コイルと検出回路とをそれぞれ収納して車体に対して固定されるハウジングを備えるので、スタンドの向きの変化に伴ってコイルとスタンドとの距離が変化するような位置にハウジングを固定すればよく、導電材料からなりスタンドに連動してコイルのインダクタンスを変動させるように変位するロータが不要となるから、ロータを別途に設ける場合に比べ、取付性が向上するとともに製造コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態並びに二輪車の要部を示す分解斜視図である。
【図2】同上を二輪車に取り付けた状態の要部を示す断面図である。
【図3】同上のロータをスタンドに取り付けた状態の要部を示す斜視図である。
【図4】同上の比較例のロータをスタンドに取り付けた状態の要部を示す斜視図である。
【図5】同上を分解した状態の要部を示す断面図である。
【図6】同上を分解した状態を示す斜視図である。
【図7】ロータが不要となるようなスタンドの例の要部を示す斜視図である。
【図8】ロータリセンサの使用形態の例を示す説明図である。
【図9】従来例を示す斜視図である。
【図10】同上を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1及び図2に示すように、本実施形態のロータリセンサ1は、車体B(具体的には例えばブラケット)に螺合した第1ピボットボルトPBが挿通されることで車体Bに対して第1ピボットボルトPBの軸周りに回転自在に取り付けられたスタンドS、並びに、車体BからスタンドSの回転軸に平行な方向に突設された被保持凸部B1を有する二輪車に取り付けられ、該二輪車の車体Bに対するスタンドSの向きの検出に用いられるものである。
【0028】
具体的に説明すると、本実施形態は、コイル31とコイル31のインダクタンスに基いてスタンドの向きを検出する検出回路32とがそれぞれプリント配線板30に実装されてなる検出部3を収納したハウジング2と、導電体からなりスタンドSに対して固定され車体Bに対するスタンドSの回転に伴ってハウジング2に対して回転するロータ4と、ハウジング2に設けられた軸受け穴24に挿通されるとともに第1ピボットボルトPBに対し中心軸を揃えて螺合する軸部51及び軸部51の一端に連結されて軸部51の径方向に突出し車体Bとの間にハウジング2を挟む頭部52を有する第2ピボットボルト5とを備える。以下、左右方向は図2を基準として説明する。すなわち、二輪車の車体B及びスタンドSに対して本実施形態が取り付けられる方向であって車体Bからの被保持凸部B1の突出方向(図1における右上方向)を左方向と呼ぶ。
【0029】
プリント配線板30は、第2ピボットボルト5を囲む扁平な円環形状であって、厚さ方向を左右方向に向けてハウジング2内に固定されている。検出回路32は1チップの集積回路で構成されており、コイル31とともにプリント配線板30の右面に実装されている。検出回路32は、図9及び図10の従来例の検出回路と同様に、コイル31のインダクタンスに基いてスタンドSの向きを検出し、検出結果に応じた出力を生成するものである。このような検出回路32は周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【0030】
ハウジング2は、絶縁材料からなり内部に検出部3が固定される環形状の収納凹部20が右面に開口したボディ2aと、絶縁材料からなり扁平な円環形状であって厚さ方向を左右方向に向けて収納凹部20を密閉する形でボディ2aに固着されるカバー2bとからなる。ボディ2a及びカバー2bの材料としては例えば合成樹脂を用いることができ、収納凹部20内に検出部3を固定する手段としては例えばボディ2aに対するプリント配線板30の熱溶着を用いることができ、カバー2bをボディ2aに固着する手段としては例えばレーザー溶着を用いることができる。収納凹部20の底面からは第2ピボットボルト5の軸部51を囲む円筒形状であって外周面が収納凹部20の内面を構成し内周面が軸受け穴24の内面を構成する筒状凸部20aが右方に突設されており、筒状凸部20aの外周面と収納凹部20の内周面とには、それぞれ、検出部3のプリント配線板30の左面に当接する段20bと、カバー2bの左面に当接する段20cとが設けられている。筒状凸部20aの右端面はカバー2bの右面よりも右方に突出してロータ4に摺接するのであり、車体Bへの取付時にはハウジング2とロータ4との間の摩擦を低減するために筒状凸部20aの右端面にグリスが塗布される。
【0031】
また、ハウジング2のボディ2aは、全体として円筒形状であって収納凹部20が設けられた本体部21のほか、従来例と同様に本体部21の外周面から径方向に突設されて被保持凸部B1を挟む挟み部としての電線引き出し部22及び挟み部23を有する。検出回路32の出力は電線引き出し部22から引き出された電線(図示せず)を介して外部に出力される。電線引き出し部22及び挟み部23の左面(図1での右上面)には、それぞれ左方に突出して被保持凸部B1を挟んで互いに対向する挟み凸部22a,23aが設けられている。ハウジング2は、電線引き出し部22と挟み部23の間に被保持凸部B1を挟むことで車体Bに対する回転を禁止されている。
【0032】
ロータ4は例えば金属板に打ち抜き加工と絞り加工とが施されてなり、厚さ方向を左右方向に向けた扁平な形状であって第2ピボットボルト5の軸部51が挿通される円形状のボルト挿通穴41aが左右に貫設された本体部41を有する。すなわち、ロータ4は、ハウジング2のボディ2aの筒状凸部20aの右端面とスタンドSとの間に挟まれることで、スタンドSに対する左右方向の変位を禁止されている。ここで、第2ピボットボルト5はいわゆる段付きボルトであって、第2ピボットボルト5の軸部51は、外周面にねじ山が設けられて第1ピボットボルトPBに螺合する螺合部51aと、螺合部51aの左側に連結され中心軸が螺合部51aの中心軸と一致し外径が螺合部51aよりも大きく軸受け穴24の内径よりも僅かに小さい円柱形状であって軸受け穴24内に位置する軸部51bとからなっている。ロータ4のボルト挿通穴41aの内径は上記の螺合部51aの外径よりも大きく且つ上記の軸部51bの外径よりも小さく、ロータ4は本体部41が軸部51bとスタンドSとの間に挟まれることによってもスタンドSに対して固定されている。また、本体部41は、ボルト挿通穴41aと同心の4分の1円弧形状の被検出部41bと、被検出部41bの一方の弦をボルト挿通穴41aを跨いだ反対側へ延長した形状の腕部41cとを有する。被検出部41bはスタンドSが起立状態と格納状態との一方の状態であるときのみコイル31の右側に位置するものであり、スタンドSが他方の状態であるときにはコイル31の右側にはロータ4は位置しない。つまり、車体Bに対するスタンドSの回転に伴ってロータ4がハウジング2に対して回転したときには、主に被検出部41bとコイル31との距離が変化することにより、コイル31のインダクタンスが変化する。
【0033】
さらに、ロータ4は、腕部41cの先端から右方に突設された第1挟み凸部42と、被検出部41bの外周縁から右方に突設されスタンドSの一端部を第1挟み凸部42との間に挟む円弧形状の第2挟み凸部43とを有している。すなわち、挟み部としての第1挟み凸部42と第2挟み凸部43とがスタンドSの一端部を挟んでいることにより、ロータ4はスタンドSに対する回転を禁止されており、スタンドSが車体Sに対して回転する際にはロータ4はスタンドSに連動して車体B及びハウジング2に対して回転する。また、第2挟み凸部43は被検出部41bの上記一方の弦の右側(図3における下側)の部位が第1挟み凸部42とともにスタンドSの延長方向(図3における右上方向)に直交する方向(図3における左上−右下方向)からスタンドSを挟む一方、被検出部41bの他方の弦の右側(図3における下側)の部位がスタンドSの延長方向の反対方向(図3における左下方向)からスタンドSに当接する。ロータ4をスタンドSに対して取り付ける際には上記のようにロータ4の第1挟み凸部41b及び第2挟み凸部41cが90°ずつ異なる3方向からスタンドSに当接することで、スタンドSに対するロータ4の位置決めがなされる。すなわち、第2挟み凸部43は請求項における挟み部であると同時に請求項における位置決め部でもある。ここで、図4に示すように第2挟み凸部43がスタンドSの延長方向の反対方向からスタンドSに当接しない場合、ロータ4をスタンドSに対して図4のような正しい向きから第1ピボットボルトPBの中心軸(すなわち車体Bに対するスタンドSの回転軸)周りに180°回転させた逆向きに誤って取り付けられてしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、ロータ4をスタンドSに対して図3のような正しい向きから第1ピボットボルトPBの中心軸周りに180°回転させた逆向きに取り付けようとした場合には第2挟み凸部43がスタンドSに当接して取り付けることができないのであり、第2挟み凸部43によって上記のような逆向きの取り付けが防止されるとともに、上記のような位置決めによって図4の例に比べて取付性が向上している。
【0034】
ここで、図5及び図6に示すように、ボディ2aにおいて第2ピボットボルト5の頭部52に向けられる面である左面には、軸受け穴24の内側と左方とに開放された円環形状の環状凹部25が設けられている。環状凹部25には、例えば合成ゴムのような弾性を有する材料からなるOリング6が収納されている。Oリング6の弾性変形していない状態での厚さ寸法(図5の左右方向での寸法)は環状凹部25の深さ寸法よりも大きく、第2ピボットボルト5が締め付けられた状態ではOリング6は第2ピボットボルト5の頭部52と環状凹部25の底面とに挟まれて潰れるように弾性変形した状態となっている。すなわち、Oリング6の弾性力でハウジング2がロータ4に押し付けられることにより、ロータ4に対するハウジング2のがたつき(及びこれに伴う誤検出)が抑えられている。
【0035】
また、ボディ2aは、収納凹部20の内周面を構成する部位が右方に延長されて筒状凸部20aの右端よりも右方に突出しカバー2bを囲む円筒形状の囲み部26を有する。囲み部26は、第2ピボットボルト5が締め付けられた状態ではロータ4の本体部41よりも右方へ突出し、第2ピボットボルト5の軸部51の軸方向(左右方向)に直交する方向から見てロータ4の本体部41を覆う。すなわち、ハウジング2とロータ4との間への泥などの異物の進入が囲み部26によって阻止される。
【0036】
さらに、ボディ2aの左面には、第2ピボットボルト5の頭部52が収納される円形状の凹部27が設けられており、環状凹部25及び軸受け穴24はそれぞれ上記凹部27の底面に開口している。
【0037】
上記構成によれば、ロータ4の取付とハウジング2の取付とが第2ピボットボルト5によって一括して行われるので、図9及び図10の従来例のようにロータ4の取付とハウジング2の取付とが別途に行われる場合に比べて取付性が向上する。
【0038】
また、図9及び図10の従来例と違い、ハウジング2を固定するための面積を車体B上に確保する必要がないので、車体Bに被保持凸部B1を有する二輪車への取付に適する。
【0039】
なお、スタンドSが金属などの導電材料からなる場合であって、図7に示すように、スタンドSが車体Bに対して起立状態と格納状態との間で回転する際にコイル31との距離が変化するような被検出部S2がスタンドSに設けられている場合には、ロータ4は不要となる。
【符号の説明】
【0040】
1 ロータリセンサ
2 ハウジング
4 ロータ
5 第2ピボットボルト
6 Oリング
24 軸受け穴
25 環状凹部
26 囲み部
31 コイル
32 検出回路
41 本体部
42 第1挟み凸部(請求項における回転禁止部、挟み部)
43 第2挟み凸部(請求項における回転禁止部、挟み部、位置決め部)
51 軸部
52 頭部
B 車体
B1 被保持凸部
PB 第1ピボットボルト
S スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に螺合した第1ピボットボルトが挿通されることで車体に対して回転自在に取り付けられたスタンド並びに車体からスタンドの回転軸に平行な方向に突設された被保持凸部を有する二輪車に取り付けられ、該二輪車の車体に対するスタンドの向きの検出に用いられるロータリセンサであって、
コイルと、コイルのインダクタンスに基いてスタンドの向きを検出する検出回路と、コイルと検出回路とをそれぞれ収納したハウジングと、導電体からなりスタンドに対して固定され車体に対するスタンドの回転に伴ってハウジングに対して回転するロータと、ハウジングに設けられた軸受け穴に挿通されるとともに前記第1ピボットボルトに対し中心軸を揃えて螺合する軸部及び軸部の一端に連結されて軸部の径方向に突出し車体との間にハウジングを挟む頭部を有する第2ピボットボルトとを備え、
ハウジングは、被保持凸部を挟む挟み部を有して挟み部が被保持凸部を挟むことで車体に対する回転を禁止され、
ロータは、第2ピボットボルトの軸部が挿通されるボルト挿通穴が貫設されるとともにハウジングとスタンドとの間に挟まれることでスタンドから離れる方向への変位を禁止された本体部と、本体部から突設されて車体に対するスタンドの回転軸に直交する方向からスタンドに当接しスタンドに対するロータの回転を禁止する回転禁止部とを有することを特徴とするロータリセンサ。
【請求項2】
ハウジングにおいて第2ピボットボルトの頭部に向けられる面には第2ピボットボルトの軸部を囲む環状凹部が設けられていて、
弾性を有する材料からなり環形状であって環状凹部に収納されるとともに第2ピボットボルトの頭部とハウジングとに弾接するOリングを備えることを特徴とする請求項1記載のロータリセンサ。
【請求項3】
ハウジングは、第2ピボットボルトの軸部の軸方向に直交する方向から見てロータの本体部を覆う筒形状の囲み部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロータリセンサ。
【請求項4】
ロータは、スタンドを挟む回転禁止部としての挟み部と、本体部から突設されて挟み部がスタンドを挟む方向に直交する方向からスタンドに当接する位置決め部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータリセンサ。
【請求項5】
導電材料からなり車体に対して回転自在に取り付けられたスタンドを有する二輪車に取り付けられ、該二輪車の車体に対するスタンドの向きの検出に用いられるロータリセンサであって、
コイルと、コイルのインダクタンスに基いてスタンドの向きを検出する検出回路と、コイルと検出回路とをそれぞれ収納して車体に対して固定されるハウジングを備えることを特徴とするロータリセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−163093(P2010−163093A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7939(P2009−7939)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】