説明

ロータリバルブ

【課題】高い強度を保持して粉砕物或いは粉粒体等の被供給物を堆積させることなく定量供給できるようにしたロータリバルブを提供する。
【解決手段】回転軸5を中心に回転する放射状の複数の回転羽根8間に収容室9が形成され、回転によりケーシング1の上側の供給口11からの被供給物を収容室9で受け、回転により収容室9内の被供給物をケーシング1の下側の排出口13に排出するようにしたロータリバルブであって、収容室9に嵌合するよう底部が湾曲した可撓性の収容カップ14の周縁を収容室9の周縁に固定して備え、更に、排出口13に被供給物を排出した後の収容カップ14の表面aに向けて空気を噴射するエアパージノズル17を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、排ガス中の二酸化炭素削減の必要性から、ボイラ等の燃料として石炭と共にバイオマスを利用することが進められており、特に森林の間伐材を燃料に用いることが検討されている。現在、間伐材は処分に困っているのが実情であり、このような間伐材を燃料に用いることができれば非常に有効となる。
【0003】
間伐材をボイラ等の燃料として用いる場合には、通常は生木の間伐材を裁断機により例えば5センチメートル以下のような棒状に裁断したもの、或いは粉砕機によって所要の大きさに粉砕したもの等からなる粉砕物が用いられる。
【0004】
このような生木の粉砕物をボイラの燃料として用いるには、粉砕物を定量的にボイラに供給する必要があり、このような粉粒体等を定量的に供給するための装置としては従来から用いられているロータリバルブを採用することが考えられる。
【0005】
ロータリバルブは、ケーシング内に回転軸を中心に回転するロータを有しており、該ロータは、放射状に備えた複数の回転羽根間によって形成される複数の収容室を周方向に有しており、ロータが回転してケーシングの上側の供給口からの粉粒体を収容室で受けた後、回転により収容室の粉粒体をケーシングの下側の排出口に排出するようになっている。
【0006】
しかし、前記したような生木の粉砕物は、微細な粉体を含んでいると共に多くの湿分を含んでいるため、ロータリバルブの収容室に粉砕物が付着堆積し、収容室の粉砕物が排出口に切り出されなくなるために定量供給が損なわれるという問題があり、更に、収容室に堆積した粉砕物によって回転羽根の回転が阻害されるトラブルが発生する可能性がある。
【0007】
又、前記したような生木の粉砕物以外に、湿気を含んだ粉粒体ロータリバルブで供給する場合においても粉粒体が収容室に付着堆積して定量供給が損なわれる問題が生じる場合がある。
【0008】
このように、ロータリバルブの回転羽根に粉粒体が付着堆積する問題を防止するために、回転羽根の表面に周囲を接着させた可撓性膜と、前記回転羽根内に設けられ該回転羽根の表面と前記可撓性膜との間に空気室を形成し得る送吸気口とを設けたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平03−042416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1に記載のロータリバルブにおいては、以下のような問題を有していた。
【0011】
即ち、回転羽根の表面に周囲を接着するようにした可撓性膜では強度を高めることが難しく、可撓性膜は破損したり、回転羽根の表面に接着した可撓性膜の接着部が剥離する可能性があり、これらの要因から、可撓性膜を長寿命で使用することが困難である。
【0012】
更に、特許文献1に示されるように、前記可撓性膜の両端部を隣接する回転羽根の先端に接着し、可撓性膜の中間部を回転羽根間のV字状の収容室に沿うように配置した場合には、粉粒体の排出時及び送吸気口からの送気時に、可撓性膜が収容室の外部に飛び出し、このために可撓性膜が回転羽根間とケーシングとの間に挟まって破損する可能性がある。
【0013】
このため、特許文献1では、可撓性膜の中間部をV字状の収容室の底部側に固定する必要があるが、このように可撓性膜の中間部をV字状の収容室の底部側に固定した場合には、収容室の底部に堆積した粉粒体を可撓性膜の膨張によって払い出す効果が低減し、このために収容室の底部に粉粒体が堆積して残ることになり、よって定量供給が行えなくなる可能性がある。
【0014】
従って、特許文献1では可撓性膜の強度を高めることが難しく、更に、依然として収容室に粉粒体が堆積するという問題を有していた。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、高い強度を保持して粉砕物或いは粉粒体等の被供給物を堆積させることなく定量供給できるようにしたロータリバルブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、回転軸を中心に回転する放射状の複数の回転羽根間に収容室が形成され、回転によりケーシングの上側の供給口からの被供給物を収容室で受け、回転により収容室内の被供給物をケーシングの下側の排出口に排出するようにしたロータリバルブであって、前記収容室に嵌合するよう底部が湾曲した可撓性の収容カップの周縁を前記収容室の周縁に固定して備え、更に、前記排出口に被供給物を排出した後の収容カップの表面に向けて空気を噴射するエアパージノズルを備えたことを特徴とするロータリバルブ、に係るものである。
【0017】
上記ロータリバルブにおいて、前記収容カップがライナテックスからなることは好ましい。
【0018】
又、上記ロータリバルブにおいて、前記収容カップの湾曲部と収容室の底部との間に空間を備えたことは好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のロータリバルブによれば、可撓性を有して回転羽根間の収容室に固定したライナテックス等からなる収容カップは、被供給物の収容時及び排出時に変形するために収容カップの表面に被供給物が付着し難くなり、よって、被供給物が堆積する問題を低減できる効果がある。
【0020】
ライナテックス等からなる可撓性の収容カップの周縁を収容室の周縁に固定して備えたので、収容カップ自体の強度及び回転羽根に対する収容カップの取付強度を高めることができ、よって、収容カップの長寿命化を達成できる効果がある。
【0021】
更に、排出口に被供給物を排出した収容カップの表面に向けて空気を噴射するエアパージノズルを備えたので、収容カップの表面に被供給物が付着していても噴射空気によって剥離されて飛ばされるため、収容カップ表面に被供給物が堆積する問題を確実に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のロータリバルブの一実施例を示す一部切断正面図である。
【図2】図1をX−X方向から見た一部切断側面図である。
【図3】図1をY−Y方向から見た平面図である。
【図4】(a)は収容カップの斜視図、(b)は収容カップの取付状態を示す切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0024】
図1は発明のロータリバルブの一実施例を示す一部切断正面図、図2は図1をX−X方向から見た一部切断側面図、図3は図1をY−Y方向から見た平面図であり、先ず、従来と同様であるロータリバルブの基本構造について説明すると、ロータリバルブは、ケーシング1に、モータ2によって例えばチェーンホイール3及びチェーン4等からなる伝達装置を介して駆動される回転軸5を有するロータRを備えている。このロータRは、前記回転軸5に所要の間隔で端面板6が固定してあり、該端面板6の相互間には回転軸5を包囲する筒体7が一体に固定されており、筒体7の外周には放射状に延びる複数(図2では左半分が4枚で計8枚)の回転羽根8が等間隔に固定されており、この回転羽根8の端面は前記端面板6に固定されている。従って、回転羽根8の相互間と端面板6との間には夫々略V字状を有する収容室9が形成されている。10は前記回転羽根8の相互間を固定する補強材である。
【0025】
前記ケーシング1におけるロータRの上側には、生木の粉砕物或いは湿分を含んだ粉粒体等の被供給物を供給するための供給口11が設けてあり、この供給口11は、矢印Aで示すロータRの回転方向始端11aと終端11bに備えた可撓性の擦切り板12との間が、収容室9の外側開口幅Hの例えば約1.5倍の大きさで開口して前記収容室9に被供給物を供給するようになっている。
【0026】
前記ケーシング1の下側には、前記収容室9から排出される被供給物を受ける排出口13が設けてあり、この排出口13は矢印Aで示すロータRの回転方向始端13aと終端13bの間が、収容室9の外側開口幅Hの例えば約2.0倍の大きさで開口している。そして、前記供給口11と排出口13以外の箇所のケーシング1はロータRの外周を小さい隙間を有して包囲している。
【0027】
上記ロータリバルブの構成において、本発明の実施例では、前記収容室9の夫々に嵌合するようにした収容カップ14を備えている。この収容カップ14は、図4(a)に示すように、回転羽根8間及び端面板6間によって形成される空間に嵌合するように略半円筒容器形状を有しており、従って底部14aは凹状に湾曲している。上記収容カップ14は、ゴム製或いは樹脂製とすることができるが、特に耐摩耗性に優れた材料として知られるライナテックス(商標登録=ライナテックス・ラバー・プロダクト社製の加硫ゴムライナ)によって製作すると、表面が滑らかで被供給物が付着し難く且つ高い強度を有するものとすることができる。
【0028】
そして、前記収容室9に嵌合した収容カップ14の周縁は、図4(b)に示すように、前記収容室9の周縁を形成する回転羽根8及び端面板6の端部に対してプレート状の固定材15と固定ビス16等を介して固定している。このとき、収容カップ14は、固定材15及び固定ビス16等を用いて固定するため、固定によっても強度が保持できる程度の厚さを有していることが好ましい。
【0029】
更に、前記排出口13に被供給物を排出した後の収容カップ14が位置する箇所、即ち、図2の矢印Aのように右回転するロータRの収容カップ14が排出口13を通り過ぎたケーシング1の左側位置には、収容カップ14の被供給物と接した表面aに向けて空気を噴射するエアパージノズル17を備える。図2ではエアパージノズル17が回転軸5の軸心に向けて空気を噴射するように設けられている。18はエアパージ配管である。
【0030】
前記エアパージノズル17は、排出口13の終端13bと供給口11の始端11aの間であれば、任意の位置に設置することができる。このとき、図2に示すように排出口13の終端13bであるBの位置に設けるようにすると、エアパージノズル17による噴射空気によって収容カップ14の表面aから剥離した被供給物は排出口13に排出されるようになる。前記エアパージノズル17は図1、図3に示すように、収容カップ14の長手方向に複数箇所(図示例では2個所)に設けるようにしてもよい。
【0031】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0032】
図2に示すように、ロータRが矢印Aで示すように右回転した状態において、上側の供給口11から被供給物が供給されると、収容カップ14は被供給物を収容して右方向に移動し、終端の擦切り板12により擦切られて回転する。被供給物を収容した収容カップ14は回転により排出口13の位置に到達し、収容カップ14内に収容された被供給物は重力によって排出口13に落下する。
【0033】
このとき、ライナテックス等によって形成した収容カップ14は表面が滑らかで被供給物が付着し難く、しかも、被供給物の収容時及び排出時には収容カップ14自身がその可撓性によって変形するため、この変形によっても収容カップ14の表面aには被供給物が付着し難くなり、よって、収容カップ14の表面aに被供給物が堆積する問題は低減される。
【0034】
更に、ロータRの回転により被供給物を排出した収容カップ14が排出口13の終端13bを過ぎると、エアパージノズル17によって収容カップ14の表面aに空気が噴射されるため、収容カップ14の表面aに被供給物が付着していても噴射空気によって剥離されて飛ばされることになり、よって、収容カップ14の表面に被供給物が堆積する問題を確実に防止できる。このとき、前記収容カップ14は凹状に湾曲しているため、凹状の一側から吹き込まれた噴射空気は収容カップ14の表面aの湾曲に沿って流動して、被供給物を剥ぎ取る効果を高めることができる。
【0035】
このように、収容カップ14の表面aに被供給物が付着堆積する問題を確実に防止できるため、ロータリバルブによって生木の粉砕物或いは湿分を含んだ粉粒体等の被供給物を確実に定量供給することが可能になる。
【0036】
更に、ライナテックス等によって形成した前記収容カップ14は高い強度を有しており、従って、収容カップ14を収容室9に固定する取付強度も高めることができ、よって、収容カップ14を長寿命化して、ロータリバルブの長寿命化を達成することができる。
【0037】
尚、本発明のロータリバルブは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、種々の粉砕物或いは湿分を有する粉粒体の供給に適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 ケーシング
5 回転軸
8 回転羽根
9 収容室
11 供給口
13 排出口
14 収容カップ
14a 底部
17 エアパージノズル
R ロータ
a 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転する放射状の複数の回転羽根間に収容室が形成され、回転によりケーシングの上側の供給口からの被供給物を収容室で受け、回転により収容室内の被供給物をケーシングの下側の排出口に排出するようにしたロータリバルブであって、前記収容室に嵌合するよう底部が湾曲した可撓性の収容カップの周縁を前記収容室の周縁に固定して備え、更に、前記排出口に被供給物を排出した後の収容カップの表面に向けて空気を噴射するエアパージノズルを備えたことを特徴とするロータリバルブ。
【請求項2】
前記収容カップがライナテックスからなることを特徴とする請求項1に記載のロータリバルブ。
【請求項3】
前記収容カップの湾曲部と収容室の底部との間に空間を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−101868(P2012−101868A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249489(P2010−249489)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000180438)四電エンジニアリング株式会社 (14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】