説明

ロータリ作業機のエプロン跳ね上げ軽減装置

【課題】ローコストに付勢手段を作業機本体に装着することが可能で、コンプレッションロッドによるエプロン接地圧に対し付勢手段の付勢力の影響を排除することが可能なエプロン跳ね上げ軽減装置を提供する。
【解決手段】ガススプリング21が、作業機本体部10の表面とエプロン3の表面との間に支持部材22によりコンプレッションロッド18と並列に配置され、ピストンロッド21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合され、ピストンロッド21aの伸縮動作により支持部材22をコンプレッションロッド18の軸方向に移動させてエプロン3を跳ね上げ方向に回転させる。さらに、ピストンロッド21a端部に、プッシュロッド21bを操作してピストンロッド21aの伸縮動作を規制する切替装置24が配され、ピストンロッド21aの伸張動作を規制することにより、エプロン3の圃場面への接地圧に対してガススプリング21の付勢力が影響を及ぼすことが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後部に昇降可能に装着された作業ロータの上方を覆うエプロンを備えるロータリ作業機において、エプロンを跳ね上げる際の作業者の負荷を軽減するエプロン跳ね上げ軽減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耕耘作業機のような、ロータリ軸の周りに複数の耕耘爪が突設された作業ロータを備えるロータリ作業機では、耕耘爪が跳ね上げる耕耘土が作業機本体に及ぶのを防止すると共に耕耘作業時に上下方向に揺動しながら機体後方に排出される耕耘土の均平を行うために、作業ロータの後方にエプロン(リヤカバー)が回動自在に設けられている。
【0003】
エプロンは、トラクタのPTO軸から動力を受けるギアボックスを中心として作業機本体の幅方向に張り出し、ロータリ軸に動力を伝達する伝動フレームと、ギアボックスを挟んで伝動フレームに連続する支持フレームとの下方に配置されたシールドカバー(メインカバー)の進行方向後方側に、伝動フレームの軸と平行な軸の回りに回動自在に連結されている。エプロンの表面側、すなわち作業ロータの反対側の面には、エプロンの圃場面との接地圧を適度に保つためと、エプロンを跳ね上げた状態に保持するためのコンプレッションロッドが接続される。
【0004】
エプロンは、耕耘爪が跳ね上げる耕耘土の飛散防止を行うと共に耕耘作業時に上下方向に揺動しながら後方に排出される耕耘土の均平を行うために、板厚の厚い板材を用いて頑丈に、重く作られており、爪の付け替え作業や作業後の整備等を行う際に、1人でエプロンを跳ね上げるのは容易ではない。
【0005】
エプロンを跳ね上げる際に作業者にかかる負荷を軽減する軽減装置として、エプロンと作業機本体との間にエプロンを跳ね上げ方向に付勢するガススプリングを設けることがある(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2006−325526号公報(段落0017、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、エプロンとサイド耕耘伝動ケースとの間にエプロンを常に上方に付勢するガススプリングを設けたことにより、エプロンを跳ね上げる際に作業者にかかる負荷が軽減するのは期待できる。
ところで、エプロンは頻繁に上げ下げするものではないから、なるべくコストをかけずにガススプリングを作業機本体に装着することが望まれる。しかしながら、特許文献1では、ガススプリングをエプロンやサイド耕耘伝動ケースに連結するための取付フランジが必要となるうえに、取付フランジをエプロンやサイド耕耘伝動ケースに取り付けるための取り付け作業が必要なことから、部品及び製造コストを低減することは期待できない。
また、特許文献1では、ガススプリングはエプロンを常に上方に付勢することから、コンプレッションロッドによりエプロンを圃場面に接地させる際の接地圧に対してガススプリングの付勢力が影響を及ぼす虞がある。
【0008】
本発明は上記背景により、ローコストにガススプリング等の付勢手段を作業機本体に装着することが可能であること、また、そのうえで、コンプレッションロッドによるエプロン接地圧に対しガススプリング等の付勢手段の付勢力の影響を排除することが可能なロータリ耕耘機のエプロン跳ね上げ軽減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明のロータリ耕耘機のエプロン跳ね上げ軽減装置は、トラクタの後部に装着され、トラクタと共に走行し、作業ロータの後方を覆うエプロンを有する作業機本体の表面に一端部が連結され、前記エプロンの表面に他端部が接続され、前記エプロンをコイルスプリングの復元力により圃場面に接地させるコンプレッションロッドと、前記コイルスプリングの一端部が係止し、前記コンプレッションロッドの軸方向に摺動可能な係止部と、前記エプロンに連結され、前記コイルスプリングの他端部が係止し、前記エプロンの回転に伴って前記コンプレッションロッドの軸方向に摺動するストッパと、前記エプロンを跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部を有する付勢手段と、を備えるロータリ作業機のエプロン跳ね上げ軽減装置において、
前記付勢手段が、前記作業機本体部の表面と前記エプロンの表面との間に配置され、前記伸縮部が、前記コンプレッションロッドに接合され、前記伸縮部の伸縮動作により前記ストッパを前記コンプレッションロッドの軸方向に摺動させて前記エプロンを回転させることを構成要件とする。
【0010】
付勢手段が、作業機本体部の表面とエプロンの表面との間に配置されるとは、付勢手段が、作業機本体部及びコンプレッションロッドの連結した作業機本体の表面にある連結部と、エプロン及びコンプレッションロッドの接合したエプロンの表面にある接合部との間に配置されることを指している。作業機本体部の表面とは、作業ロータとは反対側の面のことであり、また、エプロンの表面とは、作業ロータとは反対側の面のことである。
【0011】
付勢手段が、作業機本体部の表面とエプロンの表面との間に配置され、伸縮部が、コンプレッションロッドに接合される。これにより、伸縮部の伸縮動作により、見かけ上、コンプレッションロッドをその軸方向に移動させることによって、付勢手段をエプロンや作業機本体に連結するための取付フランジを用いることなく、エプロンの跳ね上げをアシストさせることが可能となる。この場合、伸縮部の伸張動作によりエプロンが跳ね上げ方向に回転するように、見かけ上コンプレッションロッドを移動させるように構成することが合理的である。
【0012】
この場合、請求項2に記載のように、付勢手段をコンプレッションロッドに並列させて支持する支持部材が配置される場合がある。この支持部材は、例えば、支持部材の一端部がコンプレッションロッドの一端部にコンプレッションロッドの軸方向に摺動自在に接続され、他端部がストッパに連結される。
【0013】
付勢手段には、請求項3に記載のように、伸縮部の内部に設けられたプッシュロッドの操作により伸縮部の伸張を任意の位置で停止可能なガススプリングが用いられる。また、プッシュロックタイプのガススプリングの他に、伸縮部の伸張を任意の位置で停止可能な油圧シリンダ、電動油圧シリンダ、電動シリンダ、電動モータ及びモータの回転運動を直線運動に変換するラックアンドピニオン機構の組合せ等が用いられる場合もある。
また、付勢手段にガススプリングを用いた場合、請求項4に記載のように、伸縮部(ピストンロッド)の端部に、プッシュロッドを操作することにより伸縮部の伸縮動作を規制する操作手段が配される。
この操作手段によりガススプリングのプッシュロッドを操作し、伸縮部の伸張動作を阻止(ロック、規制)するか、油圧シリンダ、電動油圧シリンダ等の伸縮部の伸張を任意の位置で停止すると、付勢手段の付勢力がコンプレッションロッドにかからない状態となることから、コンプレッションロッドによりエプロンを圃場面に接地させる際の接地圧に付勢手段の付勢力が影響を及ぼすことが防止される。
【発明の効果】
【0014】
付勢手段が作業機本体部の表面とエプロンの表面との間に配置され、付勢手段の伸縮部が、コンプレッションロッドに接合され、この伸縮部の伸縮動作により、見かけ上、コンプレッションロッドをその軸方向に移動させてエプロンの跳ね上げをアシストさせるようにした。これにより、付勢手段をエプロンやサイド耕耘伝動ケースに連結するための取付フランジは必要なくなるので、部品及び製造コストを低減することができる。また、伸縮部の伸張動作を阻止することで、付勢手段の付勢力がコンプレッションロッドにかからない状態となり、コンプレッションロッドによりエプロンを圃場面に接地させる際の接地圧に付勢手段の付勢力が影響を及ぼすことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
図1は、トラクタの後部に装着され、トラクタと共に走行し、作業ロータ5の後方を覆うエプロン3を有する作業機本体10の表面に一端部が連結され、エプロン3の表面に他端部が接続され、エプロン3をコイルスプリング18aの復元力により圃場面に接地させるコンプレッションロッド18と、コイルスプリング18aの一端部が係止し、コンプレッションロッド18に複数段設けられた位置調節スリット18b1を適宜選択することで最適の接地圧が得られるように、コンプレッションロッド18の軸方向に摺動する係止部18bと、エプロン3に連結され、コイルスプリング18aの他端部が係止し、エプロン3の回転に伴って軸方向に移動するコンプレッションロッド18を摺接可能に支持するストッパ19と、エプロン3を跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部21aを有する付勢手段21と、を備えるロータリ作業機において、付勢手段21が、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合されているエプロン跳ね上げ軽減装置1の構成例を示す。
【0017】
作業機本体10は、トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して昇降可能に装着される。
作業機本体10は、トラクタ後部のトップリンクとロアリンクからなる3点リンクヒッチ機構に連結されるトップマスト11と、ロアリンク連結部12とを備え、トップマスト11の下端部に、トラクタのPTO軸にユニバーサルジョイント、伝動シャフト等を介して連結されるギヤボックス13が配置され、ギヤボックス13から図7、図8に示す作業機本体10の幅方向に伝動フレーム14と支持フレーム15とが架設される。PTO軸からの動力は、ギヤボックス13の入力軸13aに伝達され、入力軸13aで受けた動力は、伝動フレーム14の内部を挿通する伝動シャフトに伝達される。
【0018】
伝動フレーム14の先端部には、チェーン伝動ケース16が垂下する形で固定され、支持フレーム15の先端部には、チェーン伝動ケース16に対向する端部カバー17が固定される。このチェーン伝動ケース16と端部カバー17との間に、作業ロータ5のロータリ軸6が軸回りに回転自在に架設される。チェーン伝動ケース16とロータリ軸6間にはチェーンが張架され、チェーンを通じて伝動シャフトの動力がロータリ軸6に伝達される。
【0019】
ロータリ軸6の外周には、周方向に適度な間隔を置いて耕耘爪等の爪7が突設される。爪7は主にナタ爪であるが、圃場面の土砂を掻き上げる機能を有すれば、代掻き機用や畦塗り機用等の爪も含む。爪7は、ロータリ軸6の軸方向には互いに干渉しない程度の間隔を置いて配置される。作業ロータ5は、ロータリ軸6とその外周に突設された爪7から構成され、作業ロータ5は耕耘ロータになる。
【0020】
伝動フレーム14と支持フレーム15との下方には、作業ロータ5の爪7の回転範囲を覆い、作業機本体10を土砂から保護するシールドカバー本体2(メインカバーとも言う)が配置される。シールドカバー本体2は、図1〜3に示すように、伝動フレーム14と支持フレーム15との下に突設された下部ブラケット14a、15aにフランジ2aにおいて接合されることにより両フレーム14、15に支持される。図7中、符号20は、圃場面上を転動することで、作業中にある作業ロータ5の圃場面からの深度を調整するためのゲージホイールである。
【0021】
シールドカバー本体2の、作業機本体10の進行方向後側には作業ロータ5の後方を覆うエプロン3(リアカバーとも言う)が伝動フレーム14の軸と平行な軸部2bの回りに回転自在に連結される。エプロン3の表面側、すなわち作業ロータ5の反対側の面には、エプロン3の圃場面との接地圧を適度に保つためと、エプロン3を跳ね上げた状態に保持するためのコンプレッションロッド18が接続される。
【0022】
コンプレッションロッド18の一端、すなわちトラクタ側の端部(上端)は、伝動フレーム14と支持フレーム15との上に固定された上部ブラケット14b、15bに回転自在に連結され、他端(下端)は、エプロン3の表面に固定されたブラケット3aに軸方向の位置調整が自在な状態に接続される。コンプレッションロッド18には、コイルスプリング18aが内蔵されるか、外周を巻回することにより装着される。
【0023】
コイルスプリング18aの一端(上端)は、その軸方向に摺動可能な係止部18bに係止し、他端(下端)は、コンプレッションロッド18の軸方向に移動可能なストッパ19に係止しており、係止部18bの位置調節によりコイルスプリング18aが常に復元力を有する状態または復元力を有しない状態のいずれかにある。ストッパ19には、エプロン3のブラケット3aが接続されており、ストッパ19はエプロン3の回転に伴い、コンプレッションロッド18に沿って摺動する。
【0024】
前記または図1〜3に示されるように、付勢手段21が、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合される。
【0025】
付勢手段21には、常に伸張方向に付勢されているが、伸縮部21aの内部に設けられたプッシュロッド21bの操作(例えば、プッシュロッド21bを押すと伸縮部21aが伸縮可能、離すとロック。この逆でもよい。)により伸縮部21aの伸張を任意の位置で停止可能なプッシュロックタイプのガススプリングが使用される。付勢手段(以下、ガススプリング)21は、支持部材22によりコンプレッションロッド18に並列した状態で支持される。
【0026】
支持部材22の上面には、ガススプリング21のシリンダチューブ21cをコンプレッションロッド18に並列した状態で支持する支持部22a、22bが上向きに突設される。また、支持部材22の上面の進行方向後方側には、ストッパ19に接続し、固定される脚部22cが下向きに設けられる。ガススプリング21の左右側面には、上部ブラケット14b、15bとコンプレッションロッド18の一端とを連結する連結部(連結ピン23)が摺接可能に接続されるガイド孔22dが、コンプレッションロッド18の軸方向に向かって穿設されることにより、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向に向かって移動可能とされる。
【0027】
ガススプリング21の伸縮部21a(以下、ピストンロッド)の内部には、シリンダチューブ21cに向かって押し込むとピストンロッド21aの任意の位置での停止が解除され、解放する(離す)とピストンロッド21aの伸縮を任意の位置で停止させるプッシュロッド21bが設けられる。ピストンロッド21aの一端部には、プッシュロッド21bの押し込み、解放を行う操作手段としての切替装置24が装着される。
【0028】
ここで、ガススプリング21(例えばフリーピストンタイプ)の動作原理について図9を用いて説明する。図9(a)、(b)に示すように、シリンダチューブ21cの内部には、フリーピストン21d及びピストン21eがシリンダ軸方向に摺動可能に配置される。ピストン21eには、プッシュロッド21bを摺接可能に支持したピストンロッド21aの他端部が接続される。
【0029】
シリンダチューブ21cとフリーピストン21dによって仕切られたA室には圧縮された窒素ガス、シリンダチューブ21cとフリーピストン21dとピストン21eによって仕切られたB室にはオイルが充填される。また、シリンダチューブ21cとピストン21eとシール21fによって仕切られたC室にもオイルが充填される。B室とC室とのオイルは、ピストン21e内部においてプッシュロッド21bの他端部に接続されたスプール弁21gのシリンダ軸方向への移動によって開閉されるオリフィス孔21hにより移動(流通)可能とされる。なお、図中の符号21iは、ピストンロッド21aを摺接可能に支持するガイド、21jは、シリンダチューブ21c内に異物が入るのを防止するダストシールである。
【0030】
図9(a)に示すように、プッシュロッド21bが解放されている(離されている)場合、B室とC室のオイルは、スプール弁21gによりオリフィス孔21hが閉ざされているので移動(流通)できず、ピストン21eはロック状態となる。
【0031】
図9(b)に示すように、プッシュロッド21bがシリンダチューブ21cに向かって押し込まれると、スプール弁21gが軸方向(フリーピストン21d側)に移動してオリフィス孔21hを開く。すると、B室、C室のオイルはオリフィス孔21hを介して移動(流通)可能となり、ピストン21eのロックが解除される。その場合、A室のガス圧によりピストンロッド21aは伸張可能となるが、ピストンロッド21aに押し込む力を加えると、ピストンロッド21aは短縮する。
【0032】
プッシュロッド21bが、図9(a)に示すように再び解放されると、ガス圧によりスプール弁21gは閉じられ、ピストン21eはロック状態となる。
以上、ガススプリング21の動作原理について説明した。
【0033】
図6に示すように、この切替装置24の本体側面には、プッシュロッド21bの押し込み、解放(離す)を行う切替レバー24aが水平軸回りに回転自在に設けられる。切替レバー24aの基部には、プッシュロッド21bが接合し、プッシュロッド21bの押し込み、解放を可能とする凹凸状のカム面を有する回動カム24bが連結されており、切替レバー24aをシリンダチューブ21b側に倒すと、プッシュロッド21bが解放され、ピストンロッド21aの伸縮が阻止(ロック、規制)される。また、切替レバー24aをシリンダチューブ21b側とは異なる方向に倒すと、プッシュロッド21bが押し込まれ、ピストンロッド21aは常に伸張方向へ付勢されている状態で伸縮が可能となる。
【0034】
切替装置24の端部(シリンダチューブ21bとは異なる側)には、コンプレッションロッド18の他端(下端)に抜け止め固定されたフランジ25を離脱可能に押圧する円筒状の押圧部24cが設けられる。また、フランジ25の一端(上部)には、押圧部24cが接合される際に押圧部24cを適正な位置に誘導し、押圧部24cによる押圧を確実に受容する側面視弓状の受容部25aが設けられる。
【0035】
通常の耕耘作業時にあっては、図2に示すように、ピストンロッド21aが短縮された状態で、切替装置24のレバー24aによりプッシュロッド21bが解放され(図6(b)参照)、ピストンロッド21aの伸張が阻止された状態となる。また、ピストンロッド21aの短縮に伴って、押圧部24cは受容部25aから離脱している。また、コイルスプリング18aは、コンプレッションロッド18に複数段設けられた位置調節スリット18b1の下側(フランジ25側)に配置された係止部18bと、軸部に沿って摺動可能なストッパ19とによって適度に圧縮された状態にあり、この際に発生するコイルスプリング18aの復元力によって、エプロン3は下方(圃場面)に向かって付勢される。
【0036】
そして、前記した状態において、エプロン3が圃場表面に応じて上方に向かって回転しようとすると、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上方(連結ピン23側)に摺動し、コイルスプリング18aを上方(連結ピン23側)に移動させようとするが、コンプレッションロッド18に固定された係止部18bによってコイルスプリング18aの上方(連結ピン23側)への移動は規制されるので、コイルスプリング18aはより圧縮され、より強い復元力を発生する。その際のより強い復元力によりエプロン3を圃場面により強く接地させる。このように、エプロン3の圃場面との接地圧は、コイルスプリング18aの復元力に抗しながら一定範囲内に収まるようになっている。
【0037】
耕耘作業状態の一形態でもあるエプロン3の最垂下状態にあっては、図3に示すように、エプロン3の下方側への回転に伴ってストッパ19がコンプレッションロッド18の下方(フランジ25側)に向かって摺動され(このとき、コイルスプリング18aの上部は、図2に示す位置と同じ位置にある係止部18bから離脱している)、これに伴って支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向エプロン3側に向かって移動し、押圧部24cが受容部25aに突く(接合する)ことで、エプロン3の垂下が規制される。また、押圧部24cが受容部25aに突かない場合は、コンプレッションロッド18の下部(フランジ25側)に装着されたコイルスプリング18cの上部(連結ピン23側)がストッパ19に係止されることによって、エプロン3の垂下が規制される。なお、コイルスプリング18cの下部(フランジ25側)は常にフランジ25に係止され、下方側への抜け止めがなされる。
【0038】
エプロン3の跳ね上げは、前記したようなエプロン3の最垂下状態(図3に示した状態)から行われるのが望ましい。これは、押圧部24cが受容部25aに接合されることで、レバー24aによるプッシュロッド21b押し込み時におけるピストンロッド21aの突発的な伸張動作が規制され、ピストンロッド21aを緩やかに伸張動作させるためである。
【0039】
エプロン3の跳ね上げ時にあっては、図1に示すように、係止部18bを、複数段設けられた位置調節スリット18b1の上側(連結ピン23側)方向、つまり係止部18bが最上段のスリット位置よりも上側(連結ピン23側)に位置するように、まず移動させることで、コイルスプリング18a及びストッパ19の上側(連結ピン23側)への移動が許容される。また、その状態において、切替装置24のレバー24aによりプッシュロッド21bが押し込まれ(図6(a)参照)、押圧部24cが受容部25aに突いた状態でピストンロッド21aが伸張動作すると、支持部材22がコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動し、ストッパ19がコンプレッションロッド18の上端側(連結ピン23側)へ移動させられ、ストッパ19とフランジ25との間の距離が広げられる(間隔をあける)ことによって、エプロン3の跳ね上げがアシストされる。そして、跳ね上げられたエプロン3は、ストッパ19がコンプレッションロッド18の図示しない係止部に係止されることにより跳ね上げ状態が維持される。
【0040】
上述したように、ピストンロッド21aの伸縮動作により支持部材22をコンプレッションロッド18の軸方向トラクタ側に移動させることによって、(見かけ上、コンプレッションロッド18がその軸方向に移動し)、ストッパ19とフランジ25との間の距離が広げられ、これにより、ガススプリング18をエプロン3や作業機本体10に連結するための取付フランジを用いることなく、エプロン3の跳ね上げをアシストさせることが可能となるので、従来のような取付フランジが必要な場合と比較して、部品及び製造コストが大幅に低減される。また、ピストンロッド21aが大きく縮んだ状態で、切替装置24によるピストンロッド21aの伸張阻止をしておくことで、通常の作業中においてはガススプリング21がエプロン3に作用を及ぼすことはなくなるので、コンプレッションロッド18によるエプロン3を圃場面に接地させる際の接地圧に対してガススプリング21の付勢力が影響を及ぼすことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】エプロンを跳ね上げたときの作業ロータと本発明のエプロン跳ね上げ軽減装置との関係を示したロータリ軸に直交する断面図である。
【図2】エプロンのレベルが高い状態(耕耘作業時)にある作業ロータと本発明のエプロン跳ね上げ軽減装置との関係を示したロータリ軸に直交する断面図である。
【図3】エプロンのレベルが低い状態にある作業ロータと本発明のエプロン跳ね上げ軽減装置との関係を示したロータリ軸に直交する断面図である。
【図4】(a)は、ガススプリングの伸張力を作用させ、エプロンを跳ね上げたときの本発明のエプロン跳ね上げ装置の平面図、(b)は、(a)の側面図である。
【図5】(a)は、ガススプリングの伸張を停止させ、エプロンのレベルが低い状態にあるときの本発明のエプロン跳ね上げ装置の平面図、(b)は、(a)の側面図である。
【図6】(a)は、プッシュロッドを押し下げたときの操作装置の側面図、(b)は、プッシュロッドを解放したときの操作装置の側面図である。
【図7】作業機ロータを装着した作業機本体を示した側面図である。
【図8】図7の作業機本体から本発明のエプロン跳ね上げ装置を省いたときの背面図である。
【図9】(a)は、プッシュロッドを解放したときのガススプリングの動作原理を説明するための図、(b)は、プッシュロッドを押し下げたときのガススプリングの動作原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
1…エプロン跳ね上げ軽減装置
2…シールドカバー本体、2a…フランジ、2b…軸部
3…エプロン、3a…ブラケット
5…作業ロータ、6…ロータリ軸、7…爪
10…作業機本体、11…トップマスト、12…ロアリンク
13…ギヤボックス、13a…入力軸
14…伝動フレーム、14a…下部ブラケット、14b…上部ブラケット
15…支持フレーム、15a…下部ブラケット、15b…上部ブラケット
16…チェーン伝動ケース、17…端部カバー
18…コンプレッションロッド、18a…コイルスプリング、18b…係止部、18b1…位置調節スリット、18c…コイルスプリング、
19…ストッパ
20…ゲージホイール
21…ガススプリング(付勢手段)、21a…ピストンロッド(伸縮部)、21b…プッシュロッド、21c…シリンダチューブ、21d…フリーピストン、21e…ピストン、21f…シール、21g…スプール弁、21h…オリフィス孔、21i…ロッドガイド、21j…ダストシール
22…支持部材、22a…保持部、22b…保持部、22c…脚部、22d…ガイド孔
23…連結ピン(連結部)
24…切替装置(操作手段)、24a…切替レバー、24b…回動カム、24c…押圧部
25…フランジ、25a…受容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部に装着され、トラクタと共に走行し、作業ロータの後方を覆うエプロンを有する作業機本体の表面に一端部が連結され、前記エプロンの表面に他端部が接続され、前記エプロンをコイルスプリングの復元力により圃場面に接地させるコンプレッションロッドと、
前記コイルスプリングの一端部が係止し、前記コンプレッションロッドの軸方向に摺動可能な係止部と、
前記エプロンに連結され、前記コイルスプリングの他端部が係止し、前記エプロンの回転に伴って前記コンプレッションロッドの軸方向に摺動するストッパと、
前記エプロンを跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部を有する付勢手段と、を備えるロータリ作業機のエプロン跳ね上げ軽減装置において、
前記付勢手段が、前記作業機本体部の表面と前記エプロンの表面との間に配置され、前記伸縮部が、前記コンプレッションロッドに接合され、前記伸縮部の伸縮動作により前記ストッパを前記コンプレッションロッドの軸方向に摺動させて前記エプロンを回転させることを特徴とするロータリ作業機のエプロン跳ね上げ軽減装置。
【請求項2】
前記付勢手段を前記コンプレッションロッドに並列させて支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記支持部材の一端部が前記コンプレッションロッドの一端部に前記コンプレッションロッドの軸方向に摺動自在に接続され、他端部が前記ストッパに連結され、前記伸縮部の伸張動作により前記コンプレッションロッドの軸方向に移動して、前記ストッパを前記コンプレッションロッドの軸方向に摺動させて前記エプロンを回転させることを特徴とする請求項1に記載のロータリ作業機のエプロン跳ね上げ軽減装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記伸縮部の内部に設けられたプッシュロッドの操作により前記伸縮部の伸張を任意の位置で停止可能なガススプリングであることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリ作業機のエプロン跳ね上げ軽減装置。
【請求項4】
前記伸縮部の端部に、前記プッシュロッドを操作することにより前記伸縮部の伸縮動作を規制する操作手段が配されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリ作業機のエプロン跳ね上げ軽減装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−63367(P2010−63367A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229822(P2008−229822)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】