説明

ロータリ耕耘装置

【課題】ギアケースから突出する入力軸の動力取出し軸側に連動連結する部位を、ギアケース側に取付けられたカバーで覆うにあたり、絞り加工や鋳物を用いることなくカバーを簡単な構造で簡単に取付けるようにする。
【解決手段】カバーに形成される係合孔23を、前後方向に弾性変形するようにして、入力軸3が突出するベアリングホルダ12側の筒状部位を無理嵌めできるようにし、これによって該筒状部に形成の係合溝24に係合孔23を係脱自在に係合取り付けできることにするロータリ耕耘装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の牽引車両に牽引されて圃場の耕耘作業をするためのロータリ耕耘装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種ロータリ耕耘装置は、牽引車両側の動力取出し軸(PTO軸)に連動連結される動力の入力軸をギアケースに回動自在に設けて構成されているものがあり、このようなものでは、前記入力軸の動力取出し軸側との連結部位をカバーで覆う必要がある。ところがロータリ耕耘装置の着脱やメンテナンス等の際にはカバーが邪魔になり、そのためギアケース側に設けた取付け板にカバーを開閉自在に蝶着したもの(特許文献1や3参照)、ギアケースにカバーをボルト固定したもの(特許文献2参照)等が知られている。
【特許文献1】実開昭55−81503号公報
【特許文献2】実開昭61−142502号公報
【特許文献3】実開昭63−201405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが前記従来のものは、カバーのギアケースへの取り付け構造が複雑かつ煩雑である許りでなく、部品点数も多くなってしまうという問題があり、ここに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、ギアケースと、該ギアケースから突出していて、牽引車両の動力取出し軸側に連動連結される入力軸とを備え、ギアケース側に、入力軸の動力取出し軸側との連結部位を覆うカバーを設けて構成されるロータリ耕耘装置において、前記ギアケースの入力軸が突出する筒部外周に係合溝を形成する一方、カバーには、前記係合溝に係合取付けするための係合孔を形成すると共に、該係合孔は、筒部に無理嵌め状に嵌合すべく弾性変形するように構成されていることを特徴とするロータリ耕耘装置である。
請求項2の発明は、カバーに、ギアケース側に向けて突起を設ける一方、ギアケースに、前記突起が係止するストッパを設けて、ギアケースに係合取付されたカバーを回り止め状に位置決めするようにしたことを特徴とする請求項1記載のロータリ耕耘装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、入力軸の動力取出し軸側との連結部位を覆うカバーを備えながら、該カバーのギアケースに対する着脱操作が、係合孔が筒部に無理嵌めするべく弾性変形するという簡単な構成でよいことになって簡単にできることになる。
請求項2の発明とすることにより、係合孔を係合溝に係合取付したカバーの位置決めと回り止めとが簡単にできることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図中、1は牽引車両であるトラクタ2に昇降リンク機構2aを介して昇降自在に連結圃場の耕耘作業を行うロータリ耕耘装置であって、該ロータリ耕耘装置1は、トラクタ2側の動力取出し軸2dに図示しないユニバーサルジョイントを備えた連結軸を介して連動連結される入力軸3と、該入力軸3にベベルギア機構4を介して連動連結される駆動軸5と、該駆動軸5の一端部に設けられるチエン伝動機構6と、該チエン伝動機構6に一端部が設けられるロータリ軸7と、該ロータリ軸7に植設される耕耘爪8とを備えて構成されていること等は何れも従来通りである。
【0007】
Gは前記ベベルギア機構4を内装し、入力軸3と駆動軸5とを回動自在に軸支するギアケースであって、該ギアケースGを構成するケース本体9は、前面板10aと左右側面板10b、10cとで構成されていて、平面視で略冂もしくはU字形をしている第一部材10と、上下面板11a、11bと後面板11cとで構成されていて、側面視で略冂もしくはU字形をしている第二部材11とを用いて一体的に構成されている。
因みに、第一部材左側面板10bには駆動軸5を遊嵌状に貫通するための貫通孔10dが穿設され、前面板10aにはギアケースGを構成する後述のベアリングホルダ12を組込むための組込み孔10eと、該ベアリングホルダ12を固定するためのボルト孔10fとが形成されている。また第二部材上面板11aには、ケース本体9内に潤滑油を注油するための注油口11dが穿設されていると共に、第二部材11には昇降リンク機構2aのトップリンク2bを連結するためのトップマスト1aの取付けブラケット11eが上方に突出するようにして固着されている。
【0008】
そしてこのものでは、第一部材10の左右側面板10b、10cの上下および後端縁部の形状が、第二部材11の左右端縁部、つまり上面板11a、後面板11cそして下面版11bと一連状に続く左右端面部の形状に対応し、前面板10aの上下端縁部の形状が、第二部材11の上下面板11a、11bの前端縁部の形状に対応していて、前記対応する端縁部同志が互いに突き合う(当接する)ようになっており、そしてこれら突合せ縁部を溶着(固着)することで前後左右および上下の板面を有した箱状のケース本体9が形成されるようになっている。
【0009】
そしてケース本体9の左右側面板10b、10cには円錐台形をした筒状のサポート13、13の大径側の内端がそれぞれ溶着され、該サポート13、13の小径側の外端には、円筒状をした延長筒14、14の内端が溶着されており、そのうちの左側のサポート13と延長筒14とによって前記駆動軸5を内装したカバーを構成している。そして左側延長筒14の外端(左端)がチエン伝動機構6を覆蓋するサイドチエンケース15に固定される一方、右側延長筒14の外端(右端)がロータリ軸7の右端を支持しているサイドプレート16に固定されている。尚、サポート13、13の延長筒14、14連結部位には、三点リンク機構2aのロアリンク2cを連結するためのブラケット13aが固着されている。
【0010】
前記ベアリングホルダ12は、入力軸3を支持する入力軸支持部12aと、駆動軸5を支持する駆動軸支持部12bと、ベアリングホルダ12をケース本体9に固定するための固定部12cとを備えて構成されている。入力軸支持部12aは、後端にベベルギア4aが取付けられた入力軸3をテーパローラベアリング16、16aを介して回動自在に軸支し、その前側にオイルシール17が設けられている。そして入力軸支持部12aの前端開口は、オイルシール17を保持する状態で入力軸支持部12aに圧入取付けされてベアリングホルダ12と一体化された塞ぎ体18によって閉鎖されている。一方、駆動軸支持部12bは、駆動軸5の右端に取付けたベベルギア4bをベアリング19を介して回動自在に軸支している。尚、20は座金、21はナットである。
【0011】
因みに、ベアリングホルダ12に入力軸3と駆動軸5との組込み手順は次のようになっている。つまり、ベアリングホルダ12の各支持部12a、12bにベベルギア4aを取付けた状態の入力軸3と駆動軸側ベベルギア4bとを組込んだ状態で、該ベアリングホルダ12をケース本体9に組込んだ後、駆動軸5を延長筒14側から遊嵌状に嵌入し、該挿入端をベベルギア4bにスプライン嵌合で挿入組み込みすることになるが、ケース本体9に形成される、つまり第一部材左側面板10bに形成される貫通孔10dは丸孔で、駆動軸5よりも少し大径になっており、これによって駆動軸5の挿入組込み時、駆動軸5を貫通孔10dの下内縁に持たせる(当接させる)状態にすることで前後方向の位置決めがなされ、そして駆動軸5の挿入先端がベベルギア4bに突当たったら、駆動軸5の挿入基端を少し下げるようにして挿入先端下部をベベルギア4bの軸挿入孔4cに乗り上げさせ、この状態で駆動軸5を軸周りに回してスプラインの溝合わせをした後、駆動軸5の基端を持上げつつ押しやることで軸合わせされた状態でスプライン嵌合ができるようになっている。
【0012】
22は入力軸3と動力取り出し軸2d側との連結部位を覆蓋する樹脂製のカバーであって、該カバー22は有底円筒体を軸芯方向の割り形状をしているが、その底面である後面部22aと周面である覆い面22bとを備え、後面部22aは、割り側に向けて円弧状に延長したものであって、円弧状の係合孔23が穿設されている。この係合孔23は、所定幅を有した切り込み23aが孔周り方向に間隙を存して複数形成され、これによって係合孔23は前後方向に弾性変形するようになっている。一方、ベアリングホルダ12側、具体的には塞ぎ体18の入力軸3が突出する筒状部位の外周に係合溝24が形成されている。そしてカバー22は、係合孔23をベアリングホルダ12側の入力軸3突出部位に無理嵌めして凹溝24に嵌合することで着脱自在でかつ軸回り方向回動自在に取付けられるようになっている。因みに、係合孔23を弾性変形できるようにするには、切り込み23aを形成することに限定されず、肉薄にする等しても構成することができる。
【0013】
さらにカバー後面部22aの後面には後方に向けて一対の突起25が弾性状に突設されており、前記取付けられた状態のカバー22を軸回り方向に回転させ、突起25がベアリングホルダ12に形成のストッパ26に一方の突起25が無理越えしてストッパ26を突起25で両側から挟むようにして係止することで位置決め保持されるようになっている。
【0014】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、入力軸9を動力取出し軸2a側に連動連結する部位は、ギアケースG側に取付けられたカバー22によって覆われることになるが、該カバー22は、係合孔23を前後方向に弾性変形してベアリングホルダ12側の筒状部位を無理嵌めされ、これによって係合溝24との係脱ができることになる。
この結果、カバー22の着脱操作が簡単になるだけでなく、カバー22をギアケースGに取付ける構造自体も簡略化されることになって部品点数が低減する。
【0015】
しかも前記ギアケースG側に無理嵌め嵌合で係合取付けされたカバー22は、そのままでは回動してしまうことになるが、カバー22に設けた突起25がベアリングホルダ12に形成のストッパ26に係止して回り止めされる状態で入力軸9の連動連結部上方を覆う姿勢に維持されることになって、作業時の振動等を受けてカバー22が不用意に下側に回って連動連結部の上方が露出してしまうことが無い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ロータリ耕耘装置の側面図である。
【図2】ロータリ耕耘装置の平面図である。
【図3】ロータリ耕耘装置の断面図である。
【図4】ギアケース部位の断面図である。
【図5】ケース本体を示すものであって、(A)は分解斜視図、(B)は組み込み斜視図である。
【図6】ギアケース部位の背面斜視図である。
【図7】ギアケースの断面斜視図である。
【図8】カバーを取り外した状態を示すギアケース部位の斜視図である。
【図9】カバーの一部を切り欠いた状態のギアケース部位の平面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ロータリ耕耘装置
3 入力軸
9 ケース本体
22 カバー
23 係合孔
24 係合溝
25 突起
26 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアケースと、該ギアケースから突出していて、牽引車両の動力取出し軸側に連動連結される入力軸とを備え、ギアケース側に、入力軸の動力取出し軸側との連結部位を覆うカバーを設けて構成されるロータリ耕耘装置において、前記ギアケースの入力軸が突出する筒部外周に係合溝を形成する一方、カバーには、前記係合溝に係合取付けするための係合孔を形成すると共に、該係合孔は、筒部に無理嵌め状に嵌合すべく弾性変形するように構成されていることを特徴とするロータリ耕耘装置。
【請求項2】
カバーに、ギアケース側に向けて突起を設ける一方、ギアケースに、前記突起が係止するストッパを設けて、ギアケースに係合取付されたカバーを回り止め状に位置決めするようにしたことを特徴とする請求項1記載のロータリ耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−252216(P2007−252216A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77491(P2006−77491)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】