説明

ロープ挙動検出装置

【課題】従来技術においては、例えば、昇降路内でのロープの挙動検出の点でさらなる改善の余地がある。
【解決手段】実施形態のロープ挙動検出装置は、電気回路と、測定装置と、検出装置とを備える。電気回路は、エレベータの昇降体に連結されると共に並べて配置される複数のロープと直流電力を供給する直流電源とを接続したものである。測定装置は、前記電気回路を流れる電流を測定する。検出装置は、前記測定装置によって測定された電流値に基づいて、前記ロープの挙動を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロープ挙動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータは、昇降路内を乗りかごが移動することにより、乗りかごを任意の階床に移動させるが、このようなエレベータは、乗りかごやカウンタウェイトに接続されるメインロープが並列的に複数本設けられているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−120771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、例えば、昇降路内でのロープの挙動検出の点でさらなる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のロープ挙動検出装置は、電気回路と、測定装置と、検出装置とを備える。電気回路は、エレベータの昇降体に連結されると共に並べて配置される複数のロープと直流電力を供給する直流電源とを接続したものである。測定装置は、前記電気回路を流れる電流を測定する。検出装置は、前記測定装置によって測定された電流値に基づいて、前記ロープの挙動を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、実施形態1に係るエレベータの概略構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るロープ挙動検出装置の概略構成例を示す模式図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るロープ挙動検出装置におけるメインロープの交差を示す模式図である。
【図4】図4は、実施形態1に係るロープ挙動検出装置における測定電流値とメインロープの交差数との関係の一例を表した線図である。
【図5】図5は、実施形態2に係るロープ挙動検出装置の概略構成例を示す模式図である。
【図6】図6は、実施形態2に係るロープ挙動検出装置における制限制御の一例を説明するフローチャートである。
【図7】図7は、実施形態3に係るロープ挙動検出装置の概略構成例を示す模式図である。
【図8】図8は、実施形態3に係るロープ挙動検出装置における制限制御の一例を説明するフローチャートである。
【図9】図9は、変形例に係るロープ挙動検出装置の概略構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るエレベータの概略構成例を示すブロック図、図2は、実施形態1に係るロープ挙動検出装置の概略構成例を示す模式図、図3は、実施形態1に係るロープ挙動検出装置におけるメインロープの交差を示す模式図、図4は、実施形態1に係るロープ挙動検出装置における測定電流値とメインロープの交差数との関係の一例を表した線図である。
【0008】
本実施形態に係るロープ挙動検出装置1は、図1に示すようなエレベータ2に適用される。エレベータ2は、昇降路3を昇降可能な乗りかご4とつり合おもりとしてのカウンタウェイト5とをメインロープ6で連結したいわゆるつるべ式のエレベータである。エレベータ2は、昇降路3と、昇降体としての乗りかご4及びカウンタウェイト5と、メインロープ6と、昇降駆動部7と、エレベータ制御盤(以下、特に断りのない限り単に「制御盤」という。)8とを備える。エレベータ2は、制御盤8によって各部の駆動が制御されて乗りかご4が昇降路3内を昇降することで、任意の目的階の乗り場に移動することができるものである。
【0009】
昇降路3は、建物の鉛直方向に沿って設けられる。昇降路3は、建物内の複数の階床に渡って設けられる。昇降駆動部7や制御盤8等は、例えば、昇降路3の上部の機械室9等に設けられている。乗りかご4は、利用者が乗ったり荷物を乗せたりするための構造物である。乗りかご4は、昇降路3内に配置され、ガイドレール10に沿って、昇降路3を昇降可能である。カウンタウェイト5は、メインロープ6を介して乗りかご4に連結されて昇降路3内に配置され、乗りかご4と連動して、ガイドレール11に沿って、昇降路3を昇降可能なつり合いおもりである。メインロープ6は、乗りかご4とカウンタウェイト5とを連結するものである。ここでは、メインロープ6は、昇降路3の上部に設けられた昇降駆動部7の巻上機12のメインシーブ13やソラセシーブ14等に掛けられて、一端に乗りかご4が接続され、他端にカウンタウェイト5が接続される。つまり、カウンタウェイト5は、メインロープ6を介して乗りかご4に連結され乗りかご4と連動してこの乗りかご4とは反対方向に昇降可能である。昇降駆動部7は、例えば、乗りかご4を移動させる動力を発生させる電動機(モータ)15等が駆動することで、この電動機15に連結されたメインシーブ13が回転駆動し、メインシーブ13とメインロープ6との間に生じる摩擦力を利用してメインロープ6を電動で巻き上げる巻上機12などにより構成され、制御盤8によりその駆動が制御される。
【0010】
制御盤8は、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意されたマップデータ、エレベータ2の仕様等の情報を記憶するバックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を備えている。
【0011】
制御盤8は、種々のセンサ、検出器や巻上機12の電動機15等のエレベータ2の各部と電気的に接続され、各部の動作を統括的に制御する。制御盤8は、例えば、かご操作盤、乗り場操作盤への利用者からの操作入力に応じて、巻上機12の駆動を制御し、乗りかご4を呼び登録に応じた指定の目的階に移動させる。
【0012】
上記のように構成されるエレベータ2は、利用者によりかご操作盤、乗り場操作盤等を介してかご呼び操作が行われた場合に、かご操作盤、乗り場操作盤から制御盤8に呼び登録信号が入力され、制御盤8がこの呼び登録信号に応じて乗りかご4の呼び登録を行う。そして、制御盤8は、この呼び登録、種々のセンサ、検出器からの出力、乗りかご4の現在の移動方向(昇降方向)等に基づいて、乗りかご4が合理的に移動しながらそれぞれの呼びに応答するように乗りかご4の着床順序を定め、昇降駆動部7の巻上機12を駆動制御し、乗りかご4を目的の階床へと移動させる。これにより、エレベータ2は、乗りかご4が昇降路3内を鉛直方向上下に昇降移動し、任意の目的階の乗り場に移動する。そして、エレベータ2は、乗りかご4が目的階の乗り場に着床し、所定の着床位置に着床したことが検出されると、その後、制御盤8が乗りかご4の扉を開放する。これにより、乗り場で待機している利用者は、乗りかご4内に乗り込むことが可能となり、また、乗りかご4内の利用者は乗り場に降りることが可能となる。
【0013】
そして、本実施形態のエレベータ2は、図2に示すように、ロープ挙動検出装置1を備えることで、昇降路3内でのメインロープ6の挙動を検出している。なお、この図2は、メインロープ6を長手方向に展開した形を模式的に図示しているものである。また、この図2は、メインロープ6が巻き掛けられているシーブのうちメインシーブ13を図示しソラセシーブ14等、その他のシーブの図示を省略している。
【0014】
本実施形態のロープ挙動検出装置1は、図2に示すように、電気回路16と、測定装置17と、検出装置としての制御盤8とを備える。
【0015】
ここで、本実施形態のエレベータ2は、昇降路3内に複数本のメインロープ6が設けられ、これらがまとまって一群のロープ群を構成している。ここでは、エレベータ2は、複数のメインロープ6として合計4本、すなわち、メインロープ6a、メインロープ6b、メインロープ6c、及び、メインロープ6dが設けられている。なお、以下の説明では、4本のメインロープ6a、6b、6c、6dを特に区別して説明する必要がない場合、単に「メインロープ6」と略記する。
【0016】
複数のメインロープ6は、それぞれ昇降体としての乗りかご4及びカウンタウェイト5に連結されると共に相互に並べて配置される。各メインロープ6は、一方の端が乗りかご4に結合され、他方の端がカウンタウェイト5に結合される。複数のメインロープ6は、互いに接近した状態でほぼ平行をなして昇降路3内を上下方向に延びている。各メインロープ6は、例えば、鋼製の素線を心線に巻いてストランドを構成し、このストランドを複数本、心綱に巻いて形成され、このため、所定の電圧が印加されることで電流が流れる構成となっている。
【0017】
そして、電気回路16は、複数のメインロープ6と、直流電力を供給する直流電源18とを含んで構成される。例えば、電気回路16は、複数のメインロープ6と直流電源18とが直列で接続され閉回路を構成し、すなわち、電流が流れる経路が確立されている回路を構成する。
【0018】
複数のメインロープ6は、これら複数のメインロープ6が巻き掛けられるメインシーブ13及びこれら複数のメインロープ6を乗りかご4、カウンタウェイト5にそれぞれ結合するヒッチ部19、20にて相互に絶縁されている。
【0019】
ここでは、メインシーブ13は、複数の絶縁材料21が設けられる。複数の絶縁材料21は、それぞれ複数のメインロープ6の間に介在する。ここでは、絶縁材料21は、各メインロープ6が巻き掛けられる各シーブ溝22間にそれぞれ介在する。これにより、複数のメインロープ6は、メインシーブ13にて相互に絶縁される。なお、ソラセシーブ14等、その他のシーブもメインシーブ13と同様に絶縁材料が設けられる。
【0020】
また、昇降体としての乗りかご4、カウンタウェイト5は、それぞれ、ヒッチ部19、20に複数の絶縁材料23、24が設けられる。ヒッチ部19は、複数のメインロープ6の端部を乗りかご4に結合するためのロープ支持材である。絶縁材料23は、各メインロープ6が挿入される各ヒッチ孔25間にそれぞれ介在する。ヒッチ部20は、複数のメインロープ6の端部をカウンタウェイト5に結合するためのロープ支持材である。絶縁材料24は、各メインロープ6が挿入される各ヒッチ孔26間にそれぞれ介在する。これにより、複数のメインロープ6は、ヒッチ部19、20にて相互に絶縁される。
【0021】
そして、本実施形態の電気回路16は、複数のメインロープ6の間にそれぞれ直列で接続される複数の抵抗器27を有する。ここでは、電気回路16は、複数の抵抗器27として合計4つ、すなわち、抵抗器27a、抵抗器27b、抵抗器27c、及び、抵抗器27dが設けられている。なお、以下の説明では、4つの抵抗器27a、抵抗器27b、抵抗器27c、及び、抵抗器27dを特に区別して説明する必要がない場合、単に「抵抗器27」と略記する。
【0022】
電気回路16は、メインロープ6aの一端が乗りかご4側にて抵抗器27aを介して導体で直流電源18の正極に接続される。電気回路16は、メインロープ6aの他端がカウンタウェイト5側にて抵抗器27bを介して導体でメインロープ6bの一端に接続される。電気回路16は、メインロープ6bの他端が乗りかご4側にて抵抗器27cを介して導体でメインロープ6cの一端に接続される。電気回路16は、メインロープ6cの他端がカウンタウェイト5側にて抵抗器27dを介して導体でメインロープ6dの一端に接続される。電気回路16は、メインロープ6dの他端が乗りかご4側にて導体で直流電源18の負極に接続される。
【0023】
測定装置17は、電気回路16を流れる電流を測定する電流計である。測定装置17は、電気回路16において、メインロープ6aの一端と抵抗器27aとの間に直列で設けられる。測定装置17は、制御盤8に電気的に接続されており、測定した電流値に対応した電気信号を制御盤8に出力する。
【0024】
制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値に基づいて、メインロープ6の挙動を検出する。制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値より大きい場合に、メインロープ6の挙動異常としてメインロープ6の揺れ、あるいは、交差を検出する。さらにここで、制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値に基づいて、例えば、メインロープ6の振れ量、又は、メインロープ6の交差量を検出することもできる。
【0025】
エレベータ2は、例えば、建物の揺れに伴いメインロープ6が大きく揺れることで、いわゆるロープスウェイという現象が発生するおそれがある。このロープスウェイ現象は、エレベータ2の階床が相対的に高く、メインロープ6の長さが相対的に長くなるほど発生しやすい傾向にある。
【0026】
これに対して、本実施形態のロープ挙動検出装置1は、測定装置17によって測定された電流値に基づいて、メインロープ6の挙動異常として、メインロープ6が大きく揺れた状態、複数のメインロープ6が交差した状態等を検出することができる。
【0027】
すなわち、このエレベータ2は、地震、風等により建物が揺れて各メインロープ6が揺れると、揺れの大きさ、言い換えれば、揺れ量に応じて複数のメインロープ6のうちのいくつかが接触して交差する。そして、電気回路16は、図3に示すように、複数のメインロープ6が接触、交差すると、回路が短絡されることにより電気回路16全体での電気抵抗が小さくなる。
【0028】
電気回路16全体での電気抵抗は、図3に実線で例示するように、メインロープ6aがメインロープ6bと接触、交差することで、抵抗器27bの抵抗値、短絡されたメインロープ6の長さ等に応じて相対的に小さくなる。さらに、電気回路16全体での電気抵抗は、図3に一点鎖線で例示するように、メインロープ6の振れ量がさらに大きくなりメインロープ6aがメインロープ6bとメインロープ6cとに接触、交差するようになると、抵抗器27b及び抵抗器27cの抵抗値、短絡されたメインロープ6の長さ等に応じて相対的にさらに小さくなる。
【0029】
この結果、測定装置17によって測定される電流値は、複数のメインロープ6が接触することで、相対的に上昇することとなる。さらに言えば、測定装置17によって測定される電流値は、メインロープ6の振れ量、あるいは、交差量の増加に伴って、相対的に上昇することとなる。したがって、制御盤8は、このことを利用して、電気回路16を流れる電流の変化を監視することで、メインロープ6の挙動異常として、メインロープ6の揺れ、あるいは、交差を検出することができ、さらに言えば、メインロープ6の振れ量、又は、メインロープ6の交差量を検出することができる。
【0030】
制御盤8は、図4に示すように、測定装置17によって測定された電流値が相対的に小さい電流値A1以下である場合には、メインロープ6の交差数が0であり、メインロープ6の振れ量が相対的に小さい状態にあることを検出することができる。そして、制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値、ここでは、電流値A1より大きい場合に、メインロープ6の揺れが大きくなりメインロープ6の交差が発生し、メインロープ6の挙動に異常が発生したことを検出することができる。ここで、測定装置17によって測定された電流値に対して設定される所定値(電流値A1)は、実験等に応じて予め設定しておけばよい。以下で説明する電流値A2、A3についても同様である。
【0031】
より詳細には、制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が電流値A1より大きく電流値A2以下である場合には、メインロープ6の振れ量が大きい状態にあり、メインロープ6の交差数が1、すなわち、2本のメインロープ6が交差している状態であることを検出することができる。制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が電流値A2より大きく電流値A3以下である場合には、メインロープ6の振れ量がさらに大きい状態にあり、メインロープ6の交差数が2、すなわち、3本のメインロープ6が交差している状態であることを検出することができる。そして、制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が電流値A3より大きい場合には、メインロープ6の振れ量が極めて大きい状態にあり、メインロープ6の交差数が3、すなわち、4本全てのメインロープ6が交差してしまう状態にあることを検出することができる。
【0032】
以上で説明した実施形態に係るロープ挙動検出装置1によれば、エレベータ2の昇降体としての乗りかご4及びカウンタウェイト5に連結されると共に並べて配置される複数のメインロープ6と直流電力を供給する直流電源18とを接続した電気回路16と、電気回路16を流れる電流を測定する測定装置17と、測定装置17によって測定された電流値に基づいて、メインロープ6の挙動を検出する制御盤8とを備える。
【0033】
したがって、ロープ挙動検出装置1は、制御盤8が電気回路16を流れる電流の測定電流値に基づいてメインロープ6の挙動を検出することで、メインロープ6の実際の揺れ量や交差の有無、交差状態等を簡易な構成で直接的に電気回路16を流れる電流の測定電流値として測定することができる。この結果、ロープ挙動検出装置1は、昇降路3内でのメインロープ6の挙動を検出することができ、例えば、安価で信頼性の高いロープ挙動検出装置とすることができる。
【0034】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係るロープ挙動検出装置の概略構成例を示す模式図、図6は、実施形態2に係るロープ挙動検出装置における制限制御の一例を説明するフローチャートである。実施形態2に係るロープ挙動検出装置は、制限装置を備える点で実施形態1とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する(以下で説明する実施形態でも同様である。)。
【0035】
本実施形態のロープ挙動検出装置201は、制御盤8を備え、本実施形態の制御盤8は、検出装置であると共に、制限装置としても兼用される。
【0036】
本実施形態の制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値、例えば、図4で説明した電流値A1より大きい場合に、エレベータ2の運行制限(いわゆる管制運転)を行う。言い換えれば、制御盤8は、メインロープ6の揺れが大きくなりメインロープ6の交差が発生し、メインロープ6の挙動に異常が発生したことを検出した場合に、エレベータ2の運行制限を行う。
【0037】
制御盤8は、例えば、昇降駆動部7の駆動を制御して、乗りかご4及びカウンタウェイト5の昇降速度を通常運行時の昇降速度よりも低くしたり、場合によっては乗りかご4を最寄階に停止させ、運行を中止したりすることで、運行制限を行う。ここで、通常運行時とは、エレベータ2において通常の運行サービスを行う運行時であり、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値、例えば、図4で説明した電流値A1以下である状態での運行時である。
【0038】
次に、図6のフローチャートを参照してロープ挙動検出装置201における制限制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0039】
まず、制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値を取得し、取得した電流値が予め設定された所定値(例えば、図4で説明した電流値A1)以下であるか否かを判定する(ST1)。
【0040】
制御盤8は、取得した電流値が予め設定された所定値以下であると判定した場合(ST1:Yes)、通常運行を継続して(ST2)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0041】
制御盤8は、取得した電流値が予め設定された所定値より大きいと判定した場合(ST1:No)、エレベータ2の運行制限を行って(ST3)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0042】
なお、制御盤8は、メインロープ6の振れ量、又は、メインロープ6の交差量等に応じてこの運行制限の内容を段階的に切り替えるようにしてもよい。例えば、制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が電流値A1より大きく電流値A2以下である場合には、乗りかご4及びカウンタウェイト5の昇降速度を通常運行時の昇降速度よりも低くし、測定装置17によって測定された電流値が電流値A3より大きい場合には、乗りかご4を最寄階に停止させ、運行を中止するようにしてもよい。
【0043】
以上で説明した実施形態に係るロープ挙動検出装置201によれば、メインロープ6の実際の揺れ量や交差の有無、交差状態等を簡易な構成で直接的に電気回路16を流れる電流の測定電流値として測定することができ、昇降路3内でのメインロープの挙動を検出することができる。
【0044】
そして、以上で説明した実施形態に係るロープ挙動検出装置201によれば、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値より大きい場合に、エレベータ2の運行制限を行う制御盤8を備える。したがって、ロープ挙動検出装置201は、メインロープ6の実際の揺れ量や交差の有無、交差状態等のメインロープ6の挙動をリアルタイムで的確に判断してエレベータ2の運行制限を自動的に行うことができる。
【0045】
この結果、ロープ挙動検出装置201は、例えば、メインロープ6が大きく揺れた状態、複数のメインロープ6が交差した状態等で乗りかご4及びカウンタウェイト5が昇降することで、メインロープ6が絡まったり、周辺機器の破損が発生したりすることを抑制することができる。このため、ロープ挙動検出装置201は、エレベータ2の復旧にかかる時間や手間を低減することができ、より安全で信頼性の高いエレベータ2とすることができる。
【0046】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係るロープ挙動検出装置の概略構成例を示す模式図、図8は、実施形態3に係るロープ挙動検出装置における制限制御の一例を説明するフローチャートである。実施形態3に係るロープ挙動検出装置は、制限装置の構成が実施形態2とは異なる。
【0047】
本実施形態のロープ挙動検出装置301は、制御盤8を備え、本実施形態の制御盤8は、検出装置であると共に、制限装置としても兼用される。また、ロープ挙動検出装置301は、測定装置17の出力に対してタイマ328が設けられている。タイマ328は、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値より大きい期間を計測するものである。タイマ328は、制御盤8に電気的に接続されており、計測した継続期間に対応した電気信号を制御盤8に出力する。
【0048】
本実施形態の制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値、例えば、図4で説明した電流値A1より大きい期間が予め設定された所定期間以上継続した場合に、エレベータ2の運行制限を行う。言い換えれば、制御盤8は、メインロープ6の揺れが大きくなりメインロープ6の交差が発生し、メインロープ6の挙動に異常が発生している期間が所定期間以上継続した場合に、エレベータ2の運行制限を行う。
【0049】
すなわち、制御盤8は、エレベータ2の運行制限(管制運転)への移行の要否を判定するためのパラメータとして、測定装置17によって測定された電流値と、測定された電流値の継続期間とを用いる。制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が所定値より大きく、かつ、その継続期間が所定期間以上である場合に、エレベータ2の運行制限を行う。ここで、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値より大きい期間に対して設定される所定期間は、予め任意に設定しておけばよい。
【0050】
次に、図8のフローチャートを参照してロープ挙動検出装置301における制限制御の一例を説明する。
【0051】
制御盤8は、ST1にて、取得した電流値が予め設定された所定値より大きいと判定した場合(ST1:No)、タイマ328からの計測信号に基づいて電流値が所定値より大きい期間が所定期間以上継続したか否かを判定する(ST304)。
【0052】
制御盤8は、継続期間が所定期間以上であると判定した場合(ST304:Yes)、エレベータ2の運行制限を行って(ST3)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0053】
制御盤8は、継続期間が所定期間未満であると判定した場合(ST304:No)、通常運行を継続して(ST2)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0054】
以上で説明した実施形態に係るロープ挙動検出装置301によれば、メインロープ6の実際の揺れ量や交差の有無、交差状態等を簡易な構成で直接的に電気回路16を流れる電流の測定電流値として測定することができ、昇降路3内でのメインロープ6の挙動を検出することができる。
【0055】
そして、以上で説明した実施形態に係るロープ挙動検出装置301によれば、測定装置17によって測定された電流値が予め設定された所定値より大きい期間が予め設定された所定期間以上継続した場合に、エレベータ2の運行制限を行う制御盤8を備える。したがって、ロープ挙動検出装置301は、メインロープ6の実際の揺れ量や交差の有無、交差状態等のメインロープの挙動をリアルタイムで的確に判断してエレベータ2の運行制限を自動的に行うことができる。
【0056】
この結果、ロープ挙動検出装置301は、例えば、運行に支障のない範囲でメインロープ6の揺れを許容することができ、その上でメインロープ6が絡まったり、周辺機器の破損が発生したりすることを抑制することができる。このため、ロープ挙動検出装置301は、より安全で信頼性の高いエレベータ2とすることができると共に、利便性も向上することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態に係るロープ挙動検出装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係るロープ挙動検出装置は、以上で説明した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【0058】
以上で説明したエレベータは、複数のメインロープとして合計4本を備えるものとして説明したが、これに限らず、5本以上であってもよいし、2本、あるいは、3本であってもよい。
【0059】
以上で説明した電気回路は、常時、閉回路を構成してなくてもよい。
【0060】
図9は、変形例に係るロープ挙動検出装置の概略構成例を示す模式図である。この変形例に係るロープ挙動検出装置401が適用されるエレベータ402は、合計2本のメインロープ6、すなわち、メインロープ6a、メインロープ6bが設けられている。
【0061】
そして、本実施形態のロープ挙動検出装置401の電気回路416は、メインロープ6aの一端が乗りかご4側にて抵抗器27を介して導体で直流電源18の正極に接続される。また、電気回路416は、メインロープ6bの一端が乗りかご4側にて導体で直流電源18の負極に接続される。そして、この電気回路416は、メインロープ6aの他端とメインロープ6bの他端とはカウンタウェイト5側において接続されておらず、絶縁されている。
【0062】
この場合、電気回路416は、複数のメインロープ6が接触していない正常な状態では電流が流れないため、測定装置17によって測定される電流値は、0である。一方、この電気回路416は、図9に一点鎖線で例示するように、地震、風等により建物が揺れて各メインロープ6が揺れてメインロープ6aがメインロープ6bと接触、交差することで、閉回路が形成される。この結果、電気回路416は、複数のメインロープ6が接触している状態では電流が流れるため、測定装置17によって測定される電流値は、上昇し0より大きくなる。したがって、制御盤8は、このことを利用して、電気回路416を流れる電流の変化を監視することで、メインロープ6の挙動異常としてメインロープ6の揺れ、あるいは、交差を検出することができる。
【0063】
つまりこの場合、制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が0である場合には、メインロープ6の揺れ、交差が発生していないと判定する。一方、制御盤8は、測定装置17によって測定された電流値が0より大きい場合には、メインロープ6の挙動異常として、メインロープ6の揺れ、交差の発生を検出することができる。したがって、この場合であっても、ロープ挙動検出装置401は、昇降路3内でのメインロープ6の挙動を検出することができる。
【0064】
また、以上の説明では、検出装置、制限装置は、制御盤8によって兼用されるものとして説明したが、これに限らず、それぞれ制御盤8とは別体に構成され、エレベータ2の各部と電気的に接続されるものであってもよい。
【0065】
以上の説明では、ロープ挙動検出装置は、メインロープに適用するものとして説明したが昇降体に連結される他のロープに適用してもよい。
【0066】
以上で説明したロープ挙動検出装置は、いわゆる1:1のローピング方式のエレベータに適用されるものとして説明したが、これに限らず、いわゆる2:1のローピング方式のエレベータに適用してもよい。
【0067】
以上で説明した実施形態、変形例に係るロープ挙動検出装置によれば、昇降路内でのロープの挙動を検出することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1、201、301、401 ロープ挙動検出装置
2、402 エレベータ
3 昇降路
4 乗りかご(昇降体)
5 カウンタウェイト(昇降体)
6、6a、6b、6c、6d メインロープ
7 昇降駆動部
8 制御盤(検出装置、制限装置)
16、416 電気回路
17 測定装置
18 直流電源
19、20 ヒッチ部
21、23、24 絶縁材料
22 シーブ溝
25、26 ヒッチ孔
27、27a、27b、27c、27d 抵抗器
328 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降体に連結されると共に並べて配置される複数のロープと直流電力を供給する直流電源とを接続した電気回路と、
前記電気回路を流れる電流を測定する測定装置と、
前記測定装置によって測定された電流値に基づいて、前記ロープの挙動を検出する検出装置とを備えることを特徴とする、
ロープ挙動検出装置。
【請求項2】
前記電気回路は、前記複数のロープと前記直流電源とが直列で接続され閉回路を構成する、
請求項1に記載のロープ挙動検出装置。
【請求項3】
前記複数のロープは、当該複数のロープが巻き掛けられるシーブ及び当該複数のロープを前記昇降体に結合するヒッチ部にて相互に絶縁され、
前記電気回路は、前記複数のロープの間にそれぞれ直列で接続される複数の抵抗器を有する、
請求項2に記載のロープ挙動検出装置。
【請求項4】
前記測定装置によって測定された電流値が予め設定された所定値より大きい場合に、前記エレベータの運行制限を行う制限装置を備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のロープ挙動検出装置。
【請求項5】
前記測定装置によって測定された電流値が予め設定された所定値より大きい期間が予め設定された所定期間以上継続した場合に、前記エレベータの運行制限を行う制限装置を備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のロープ挙動検出装置。
【請求項6】
前記検出装置は、前記測定装置によって測定された電流値に基づいて、前記ロープの振れ量、又は、前記ロープの交差量を検出する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のロープ挙動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−1491(P2013−1491A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133406(P2011−133406)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】