説明

ローヤルゼリー含有飲料組成物

【課題】ローヤルゼリーの全含有成分を含み、且つ、ローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の生成を簡易に抑制し、長期間保存しても安定なローヤルゼリー含有飲料組成物を提供する。
【解決手段】酸性加熱処理したローヤルゼリー、及びブドウ糖を含有することを特徴とする飲料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性加熱処理したローヤルゼリーを配合した飲料組成物に関し、医薬品、医薬部外品及び食品の分野に応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
ローヤルゼリーは古くから栄養価の高い生薬として、健康食品や医薬品として利用されてきた。その効果としては抗腫瘍、高脂血症や糖尿病の予防若しくは改善、精神的疲労の予防若しくは改善、抗酸化又は老化抑制など種々の生理活性作用が報告されている(非特許文献1参照)。ローヤルゼリーは蜜蜂の働き蜂が女王蜂の餌として咽喉腺から分泌する微量の乳白色クリーム状の物質であり、その化学的組成は、産地により多少の差異があるものの、一般的に水分約65%、蛋白質9〜17%、脂質3〜8%、糖質約12%と報告されている。そして、ローヤルゼリー特有の成分としては、10―ヒドロキシ−δ−2デセン酸、パロチン様物質、ビオプテリンなどが知られているが、その優れた有効性は、個々の成分単独の生理活性の相加作用ではなく、含有されている多くの栄養素が相乗的に作用すると報告されている(非特許文献2参照)。
【0003】
ローヤルゼリーは、医薬品、医薬部外品及び食品の分野に属する各種飲料に配合されているが、そのまま添加した場合、飲料のpHや他の配合成分である砂糖、クエン酸や乳酸などの酸類、多価フェノール、金属イオン等の影響によって、経時的に凝集、沈殿又は相分離等を起こすことがある。飲料中のローヤルゼリーに起因する凝集又は沈殿物は、成分の有効性等に直接影響するものではないが、異物として消費者からのクレームの対象となることもあり、商品性という点では好ましいものではなかった。
【0004】
そこで、従来より、ローヤルゼリーを飲料等に配合する場合には、その飲料製品の外観を損なわないように、ローヤルゼリーのエチルアルコール抽出画分のみを添加する方法(特許文献1参照)、プロテアーゼにより可溶化処理する方法(特許文献2参照)などが提案されている。また、他の方法としては、前処理として高濃度の分散剤と混合後、超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザー等の強力な分散装置を必要とする方法がある(特許文献3及び4参照)。
【0005】
しかし、ローヤルゼリーのエチルアルコール抽出画分だけを添加した場合では、ローヤルゼリーの重要な要素である蛋白質成分が除去されてしまうことになる。また、プロテアーゼによる可溶化処理や高濃度の分散剤、分散装置を用いた方法においても、砂糖などの還元糖を配合すると蛋白質が凝集又は沈殿してしまう問題点があった。
【0006】
このように、従来から知られているローヤルゼリー含有飲料の調製方法は、煩雑な工程や装置を要し、必ずしも簡便なものではなく、且つ、ローヤルゼリーの一部の有効成分のみを含有する方法であった。
【0007】
【非特許文献1】中島将次 New Food Industry,VOL3,No3,54,(1994)
【非特許文献2】Jozef Simuth ミツバチ科学,VOL25,No2,53,(2004)
【特許文献1】特開平1−215268号公報
【特許文献2】特許第2623044号公報
【特許文献3】特開平4−23956号公報
【特許文献4】特開平5−9125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ローヤルゼリーの一部の有効成分を抽出して使用することなく全成分を含有し、ローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の生成を簡易に抑制し、長期間保存しても安定な、酸性加熱処理したローヤルゼリー含有飲料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記の課題解決を目的として鋭意検討した結果、ローヤルゼリーを酸性加熱処理し、ブドウ糖を配合することにより、ローヤルゼリー本来の生理活性作用に悪影響を及ぼすことなく、かつ沈殿や浮遊物の発生することがない長期間安定なローヤルゼリー配合組成物を得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、酸性加熱処理したローヤルゼリー、及びブドウ糖を含有することを特徴とする飲料組成物である。
【0011】
本発明の他の態様は、pHが2.0〜4.0であり、ブドウ糖を配合することによる、酸性加熱処理したローヤルゼリー含有飲料組成物の安定化方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ローヤルゼリーの全含有成分を含み、且つ、ローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の生成を簡易に抑制し、長期間保存しても澄明であるローヤルゼリー含有飲料組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における酸性加熱処理したローヤルゼリーとは、例えば「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」で定義されているような「生ローヤルゼリー」、「乾燥ローヤルゼリー」又は「調製ローヤルゼリー」を用いて水分散させ、酸性域にて加熱溶解させたものである。酸性加熱処理したローヤルゼリーは、その処理前に含有している有効成分を変えることなく含んでいる。本発明によれば、含有する有効成分にかかわらず沈殿や浮遊物の生成を抑制することができるため、天然状態で含まれる各種有効成分を可能な限り高濃度に含有するローヤルゼリーをも使用することができる。
【0014】
加熱処理時の温度は、約70℃以上、好ましくは約80℃以上である。上限温度は特に限定されないが、約100℃程度で充分である。加熱処理時のpHは酸性域が良く、3.0以下であることが好ましい。pHを調整する際には、可食性であり、ローヤルゼリーの風味を損なわない有機酸あるいは無機酸を適宜に選択して用いることができ、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸又は塩酸などの有機酸又は無機酸が挙げられ、好ましくは有機酸が挙げられ、より好ましくはクエン酸が挙げられる。
【0015】
本発明で用いる酸性加熱処理したローヤルゼリーの配合量は、ローヤルゼリーの配合目的により異なり、飲料組成物中に均質に溶解又は配合できる量であれば良く、特に制限はない。
本発明におけるブドウ糖とは分子式C12で表される代表的なアルドヘキソースであって、グルコース、デキストロースとも言う。本発明におけるブドウ糖の配合量は通常甘味剤として使用される範囲であり特に制限は無い。
【0016】
本発明の組成物は、さらに非還元性を有する甘味剤を配合することができ、非還元性を有する甘味剤とは、糖アルコール又は高甘味度甘味剤を示し、糖アルコールとしては、例えばソルビトール、キシリトール、マルチトール、トレハロースが挙げられ、高甘味度甘味剤としては、例えばステビア、アセスルファムカリウムが挙げられる。本発明における非還元性を有する甘味剤は、一種または二種以上を任意に組み合わせて用いることができる。本発明における非還元性を有する甘味剤の配合量は、通常甘味剤として使用される範囲であり、特に制限はない。糖アルコールにおいては緩下作用があるため、本発明における糖アルコールの配合量は、1回1g〜40gであり、最大無作用量以下に設定する必要がある。
【0017】
本発明の組成物のpHは、2.0〜4.0であり、好ましくは2.0〜3.5であり、より好ましくは2.0〜3.0である。本発明の組成物を内服液剤等の飲料として提供する場合、pH2.0未満の酸性域では酸味が強すぎて服用性の点で好ましくなく、pH4.0を超える領域ではブドウ糖の還元力が強くなりメイラード反応を生じるため好ましくないからである。
【0018】
pHの調整としては、可食性の酸をpH調整剤として用いることができ、例えば、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、乳酸及びコハク酸などの有機酸、及びこれら有機酸の塩類、リン酸、塩酸などの無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基が挙げられる。
【0019】
本発明における飲料組成物は、内服液剤、ドリンク剤、シロップ剤等の医薬品及び医薬部外品の他、健康飲料、栄養機能性食品、特定保険用食品等の食品領域における各種飲料として提供できる。
【0020】
本発明の飲料組成物には、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、生薬、生薬抽出物、カフェインなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合できる。また、必要に応じて抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、甘味料、高甘味度甘味料などの飲料組成物一般に使用される成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0021】
本発明の飲料組成物を調製する方法は特に限定されるものではないが、通常、各成分を適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、更に精製水を加えて容量調整し、必要に応じて濾過、滅菌処理を施す方法が挙げられ、本発明の飲料組成物を得ることができる。
【実施例】
【0022】
以下に製造例、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0023】
製造例1
生ローヤルゼリー10gに精製水を全量200gになるように加え、さらにクエン酸6gを加え攪拌後、pHを2.1に調整した。この溶液を80℃で10分間加温し、均一な、酸性加熱処理したローヤルゼリー溶液として得た。この酸性加熱処理したローヤルゼリー溶液中の各種成分残存率と、エチルアルコールを用いて常法により抽出して得られたものとを比較して表1に示す。
【0024】
実施例及び比較例においては、製造例1で得た酸性加熱処理したローヤルゼリー溶液を用い、処方に記載のローヤルゼリー含有量となるように配合した。
【0025】
実施例及び比較例中のローヤルゼリー溶液とは、製造例1で得た酸性加熱処理したローヤルゼリー溶液を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1
ローヤルゼリー 0.50g
無水ブドウ糖 6.00g
安息香酸ナトリウム 0.06g
クエン酸 0.30g
希塩酸 適量
無水ブドウ糖、安息香酸ナトリウム、クエン酸を精製水に溶解した後、ローヤルゼリー溶液を添加し、希塩酸を用いてpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて全量を100mLとした。ガラス瓶に充填してキャップを施し、内服液剤を得た。
【0028】
実施例2
ローヤルゼリー 0.50g
無水ブドウ糖 12.00g
安息香酸ナトリウム 0.06g
クエン酸 0.30g
希塩酸 適量
無水ブドウ糖、安息香酸ナトリウム、クエン酸を精製水に溶解した後、ローヤルゼリー溶液を添加し、希塩酸を用いてpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて全量を100mLとした。ガラス瓶に充填してキャップを施し、内服液剤を得た。
【0029】
比較例1
ローヤルゼリー 0.50g
砂糖 12.00g
安息香酸ナトリウム 0.06g
クエン酸 0.30g
希塩酸 適量
砂糖、安息香酸ナトリウム、クエン酸を精製水に溶解した後、ローヤルゼリー溶液を添加し、希塩酸を用いてpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて全量を100mLとした。ガラス瓶に充填してキャップを施し、内服液剤を得た。
【0030】
比較例2
ローヤルゼリー 0.50g
果糖 6.00g
安息香酸ナトリウム 0.06g
クエン酸 0.30g
希塩酸 適量
果糖、安息香酸ナトリウム、クエン酸を精製水に溶解した後、ローヤルゼリー溶液を添加し、希塩酸を用いてpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて全量を100mLとした。ガラス瓶に充填してキャップを施し、内服液剤を得た。
【0031】
比較例3
ローヤルゼリー 0.50g
無水ブドウ糖 12.00g
安息香酸ナトリウム 0.06g
クエン酸 0.30g
水酸化ナトリウム 適量
無水ブドウ糖、安息香酸ナトリウム、クエン酸を精製水に溶解した後、ローヤルゼリー溶液を添加し、水酸化ナトリウムを用いてpHを5.0に調整し、更に精製水を加えて全量を100mLとした。ガラス瓶に充填してキャップを施し、内服液剤を得た。
【0032】
試験例1
実施例及び比較例で得たローヤルゼリー配合液剤を、5℃および65℃の恒温槽にて保存し、内溶液中の沈殿及び浮遊物を目視により観察した。その結果を表2に示す。なお、沈殿及び浮遊物の程度は以下の基準により判定した。
沈殿及び浮遊物の観察基準
沈殿及び浮遊物ともになし : −
沈殿及び浮遊物が少量存在 : +
沈殿及び浮遊物が存在 : ++
沈殿及び浮遊物がかなり存在 : +++

【0033】
【表2】

【0034】
以上の結果より、酸性加熱処理したローヤルゼリーに、ブドウ糖を配合することで、ローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の生成を顕著に抑制された液剤が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、ローヤルゼリーの有効成分をすべて含むことができるため、含有される栄養素の相乗的効果が可能となる飲料組成物を提供することが可能となり、シロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品を含む各種製剤及び栄養機能食品などのローヤルゼリー含有飲料を提供することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性加熱処理したローヤルゼリー、及びブドウ糖を含有することを特徴とする飲料組成物。
【請求項2】
pHが2.0〜4.0であることを特徴とする請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項3】
pHが2.0〜4.0であり、ブドウ糖を配合することによる、酸性加熱処理したローヤルゼリー含有飲料組成物の安定化方法。

【公開番号】特開2008−154580(P2008−154580A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303965(P2007−303965)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】