説明

ローラおよびその製造方法

【課題】熱膨張による歪み、軸抜けなどを防止することができる、複写機などに使用されるローラを提供する。
【解決手段】アルミニウム製の中空シャフト11と、軸本体部211の一端に設けた細径部212の先端に、中空シャフト11の孔112よりも大径のツバ部を設けることによって周回する溝部214を設けると共に、細径部212に少なくとも一箇所以上の凹部215を設けた、中空シャフト11よりも高耐熱性のステンレス製の軸部材21とからなり、この軸部材21と同一軸上に配置され、軸心を中心にして軸部材21に対して相対的に回転している中空シャフト11の端部111の孔112内へ軸部材21のツバ部を圧入し、中空シャフト11の一部を溶融させ、その溶融部分111aで軸部材21の溝部214および凹部215を埋めて、中空シャフト11と軸部材21とを一体化してローラを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機、ファクシミリ機、コンピュータのプリンタなどの紙送りローラに使用されるローラおよびその製造方法に関し、特に、熱膨張による歪み、軸抜けなどを防止することができるローラおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大型若しくは小型の複写機、ファクシミリ機、コンピューターのプリンターなどの紙送りローラに使用されているローラは、シャフトの両端に軸部材が設けられている構造を有する。このローラは、一つの原材料、例えば、鋼管、ステンレスなどで製造されると、軽量化の要請に応えることができず、また、樹脂系材料で製造されると、剛性が劣るので寸法精度の要請に応えることができないなどの問題から、シャフトにアルミニウム系材料が採用され、軸部材にステンレス系材料が採用されて製造されることが多い。しかし、ローラへの適用に不向きな純アルミニウムとステンレス(SUS304)とが溶接できるという例外を除き、アルミニウム系材料とステンレス系材料とが溶接できないという物性の問題があり、この問題を回避する製造方法が試行錯誤されている。
【0003】
そこで、例えば、下記特許文献1にて示されたローラは、円筒状の芯金部と、この芯金部の外周を覆い芯金部の軸方向の両端から延出された樹脂層と、芯金部から延出された樹脂層内面に挿入され外周面が樹脂層の内面へ密着すると共に接着剤により樹脂層へ接着される軸端部材と、この軸端部材と一体に成形され芯金部から延出された樹脂層の軸方向の端面へ当接させた状態で樹脂層と超音波溶接により接合されるフランジと、軸端部材の軸方向の端部に軸端部材と同軸的に一体に成形され芯金部の軸方向の端部の内面へ挿入される小径部と、軸端部材の小径部とは逆方向に樹脂層と同軸的に突出されたシャフトと、を有することを特徴とする。このローラは、樹脂層と軸端部とを略一体構造とすることができ、特に、樹脂層と軸端部材とを接着剤によって接着するので、接合部分のシール性がよくなり、ローラ内部の密封性を向上させるなどの効果を有している。
【特許文献1】特開平8−190186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係るローラは、樹脂層と軸端部材とが接着剤によって接着されているので、稼働時の高熱環境などにより、接着剤が溶融してローラが歪む問題、すなわち、円筒状の芯金部の軸心と軸端部材に一体化されているシャフトの軸心とが一致しなくなる問題や、接着剤の溶融により、軸端部材が樹脂層から外れ、シャフトが芯金部から軸抜けするといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み提案され、稼働時などの高熱環境においても、熱膨張による歪み、軸抜けなどを防止することができるローラおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るローラは、金属製の中空シャフトと、軸本体部の一端に設けた細径部の先端に前記中空シャフトの孔よりも大径のツバ部を設けることによって周回する溝部を設けると共に、前記細径部に少なくとも一箇所以上の凹部を設けた、前記中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とからなり、この軸部材と同一軸上に配置され、軸心を中心にして前記軸部材に対して相対的に回転している前記中空シャフトの端部の孔内へ前記軸部材のツバ部を圧入し、前記中空シャフトの一部を溶融させ、その溶融部分で前記溝部および前記凹部を埋めることにより、前記中空シャフトと前記軸部材とを一体化した、ことを特徴とする。
【0007】
そして、上記ローラにおいて、前記ツバ部を、先端に向かって縮閉する円錐台形状にすることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るローラは、金属製の中空シャフトと、軸本体部の一端に設けた細径部の先端に前記軸本体部の外径よりも小径のツバ部を設けることによって周回する溝部を設けると共に、前記細径部に少なくとも一箇所以上の凹部を設けた、前記中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とからなり、この軸部材と同一軸上に配置され、軸心を中心にして前記軸部材に対して相対的に回転している前記中空シャフトの端部の孔内へ前記軸部材のツバ部を挿入し、前記中空シャフトの一部を前記軸本体部の端部で溶融させ、その溶融部分で前記溝部および前記凹部を埋めることにより、前記中空シャフトと前記軸部材とを一体化した、ことを特徴とする。
【0009】
そして、上記ローラのいずれにおいても、前記軸部材を、前記中空シャフトの回転方向と逆方向へ回転させることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るローラの製造方法は、金属製の中空シャフトと、軸本体部の一端に設けた細径部の先端に前記中空シャフトの孔よりも大径のツバ部を設けることによって周回する溝部を設けると共に、前記細径部に少なくとも一箇所以上の凹部を設けた、前記中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とを同一軸上に配置し、前記中空シャフトを、軸心を中心にして前記軸部材に対して相対的に回転させ、前記軸部材のツバ部を前記中空シャフトの端部の孔内へ圧入して前記中空シャフトの一部を溶融させ、その溶融部分で前記溝部および前記凹部を埋めることにより、前記中空シャフトと前記軸部材とを一体化する、ことを特徴とする。
【0011】
そして、上記ローラの製造方法において、前記ツバ部を、先端に向かって縮閉する円錐台形状にすることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るローラの製造方法は、金属製の中空シャフトと、軸本体部の一端に設けた細径部の先端に前記軸本体部の外径よりも小径のツバ部を設けることによって周回する溝部を設けると共に、前記細径部に少なくとも一箇所以上の凹部を設けた、前記中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とを軸心を同一軸上に配置し、前記中空シャフトを、軸心を中心にして前記軸部材に対して相対的に回転させ、前記軸部材のツバ部を前記中空シャフトの端部の孔内へ挿入して前記中空シャフトの一部を前記軸本体部の端部で溶融させ、その溶融部分で前記溝部および前記凹部を埋めることにより、前記中空シャフトと前記軸部材とを一体化する、ことを特徴とする。
【0013】
そして、上記ローラの製造方法のいずれにおいても、前記軸部材を、前記中空シャフトの回転方向と逆方向へ回転させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るローラは、金属製の軸部材と同一軸上に配置され、軸心を中心にして軸部材に対して相対的に回転している、軸部材よりも高耐熱性を有する金属製の中空シャフトの端部の孔内へ軸部材のツバ部を圧入し、中空シャフトの一部を溶融させ、その溶融部分で溝部および凹部を埋めることにより、中空シャフトと軸部材とを一体化したので、軸部材に引き抜きへの対抗力をツバ部(溝部)で備えさせ、回転に対する強度を凹部で備えさせることができ、軸部材が中空シャフトから外れるのを防止することができると共に、軸部材に対して中空シャフトが空回りするのを防止することができる。特に、中空シャフトと軸部材との一体化に接着剤を用いていないので、高熱環境において接着剤が溶融する問題を解決し、これにより中空シャフトの軸心と軸部材の軸心とが不一致となることがなくなって、ローラが歪んだり、軸部材が中空シャフトから外れて軸抜けすることを防止することができる。また、軸心を中心にして軸部材に対して相対的に回転する金属製の中空シャフトの端部の孔内へ、金属製の軸部材のツバ部を中空シャフトと同一軸上に配置して圧入したので、中空シャフトの軸心と軸部材の軸心とを一致させて一体化させることができ、ローラが歪むのを防止することができる。
【0015】
そして、上記ローラに関し、ツバ部を先端に向かって縮閉する円錐台形状にしたので、中空シャフトの端部と軸部材のツバ部との摩擦面積が広くなって、中空シャフトの一部を効率よく溶融させることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係るローラは、金属製の軸部材と同一軸上に配置され、軸心を中心にして軸部材に対して相対的に回転している、軸部材よりも高耐熱性を有する金属製の中空シャフトの端部の孔内へ軸部材のツバ部を挿入し、中空シャフトの一部を軸本体部の端部で溶融させ、その溶融部分で溝部および凹部を埋めることにより、中空シャフトと前記軸部材とを一体化したので、軸部材に引き抜きへの対抗力をツバ部(溝部)で備えさせ、回転に対する強度を凹部で備えさせることができ、軸部材が中空シャフトから外れるのを防止することができると共に、軸部材に対して中空シャフトが空回りするのを防止することができる。特に、中空シャフトと軸部材との一体化に接着剤を用いていないので、高熱環境において接着剤が溶融する問題を解決し、これにより中空シャフトの軸心と軸部材の軸心とが不一致となることがなくなって、ローラが歪んだり、軸部材が中空シャフトから外れて軸抜けすることを防止することができる。また、軸心を中心にして軸部材に対して相対的に回転する金属製の中空シャフトの端部の孔内へ、金属製の軸部材のツバ部を中空シャフトと同一軸上に配置して挿入したので、中空シャフトの軸心と軸部材の軸心とを一致させて一体化させることができ、ローラが歪むのを防止することができる。
【0017】
そして、上記ローラに関し、軸部材を中空シャフトの回転方向と逆方向へ回転させたので、中空シャフトのみを回転させる場合よりも低い(少ない)回転数にて、中空シャフトと軸部材とを一体化させることができ、ローラを安全に製造することができる。
【0018】
また、本発明に係るローラの製造方法は、金属製の中空シャフトと、この中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とを同一軸上に配置し、中空シャフトを、軸心を中心にして軸部材に対して相対的に回転させ、軸部材のツバ部を中空シャフトの端部の孔内へ圧入して中空シャフトの一部を溶融させ、その溶融部分で溝部および凹部を埋めることにより、中空シャフトと軸部材とを一体化させてローラを製造したので、軸部材に引き抜きへの対抗力をツバ部(溝部)で備えさせ、回転に対する強度を凹部で備えさせて、軸部材が中空シャフトから外れるのを防止することができると共に、軸部材に対して中空シャフトが空回りするのを防止することができるローラを製造することができる。特に、中空シャフトと軸部材との一体化に接着剤を用いていないので、高熱環境において接着剤が溶融する問題を解決し、これにより中空シャフトの軸心と軸部材の軸心とが不一致となることがなくなって、ローラが歪んだり、軸部材が中空シャフトから外れて軸抜けすることを防止することができるローラを製造することができる。また、軸心を中心にして軸部材に対して相対的に回転する金属製の中空シャフトの端部の孔内へ、金属製の軸部材のツバ部を中空シャフトと同一軸上に配置して圧入したので、中空シャフトの軸心と軸部材の軸心とを一致させて一体化させることができ、歪むのを防止することができるローラを製造することができる。
【0019】
そして、上記ローラの製造方法に関し、ツバ部を先端に向かって縮閉する円錐台形状にした軸部材を用いてローラを製造したので、中空シャフトの端部と軸部材のツバ部との摩擦面積が広くなって、中空シャフトの一部を効率よく溶融させることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0020】
また、本発明に係るローラの製造方法は、金属製の中空シャフトと、この中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とを同一軸上に配置し、中空シャフトを、軸心を中心にして軸部材に対して相対的に回転させ、軸部材のツバ部を中空シャフトの端部の孔内へ挿入して中空シャフトの一部を軸本体部の端部で溶融させ、その溶融部分で溝部および凹部を埋めることにより、中空シャフトと軸部材とを一体化させてローラを製造したので、軸部材に引き抜きへの対抗力をツバ部(溝部)で備えさせ、回転に対する強度を凹部で備えさせて、軸部材が中空シャフトから外れるのを防止することができると共に、軸部材に対して中空シャフトが空回りするのを防止することができるローラを製造することができる。特に、中空シャフトと軸部材との一体化に接着剤を用いていないので、高熱環境において接着剤が溶融する問題を解決し、これにより中空シャフトの軸心と軸部材の軸心とが不一致となることがなくなって、ローラが歪んだり、軸部材が中空シャフトから外れて軸抜けすることを防止することができるローラを製造することができる。また、軸心を中心にして軸部材に対して相対的に回転する金属製の中空シャフトの端部の孔内へ、金属製の軸部材のツバ部を中空シャフトと同一軸上に配置して挿入したので、中空シャフトの軸心と軸部材の軸心とを一致させて一体化させることができ、歪むのを防止することができるローラを製造することができる。
【0021】
そして、上記ローラの製造方法に関し、軸部材を中空シャフトの回転方向と逆方向へ回転させてローラを製造したので、中空シャフトのみを回転させる場合よりも低い(少ない)回転数にて、中空シャフトと軸部材とを一体化させてローラを製造することができ、安全にローラを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るローラの構成部品である中空シャフトおよび軸部材のそれぞれ一部を示す斜視図、図2は、本発明の一実施形態に係るローラにおける中空シャフトおよび軸部材を一体化する前の状態を示す部分断面図、図3は、本発明の一実施形態に係るローラにおける中空シャフトおよび軸部材を一体化した後の状態を示す部分断面図、図4は、本発明の他の実施形態に係るローラにおける中空シャフトおよび軸部材を一体化する前の状態を示す部分断面図、図5は、本発明の他の実施形態に係るローラにおける中空シャフトおよび軸部材を一体化した後の状態を示す部分断面図である。
【0023】
本発明の一実施形態に係るローラ1は、図1に示す通り、金属製、例えば、アルミニウム製(A5052)の中空シャフト11と、この中空シャフト11の外径(例えば、30mm)よりも小径(例えば、22mm)の軸本体部211の一端に設けた細径部212の先端に、中空シャフト11の孔112の径(例えば、16mm)よりも大径(例えば、22mm)のツバ部213を設けることによって周回する、例えば、3mmの幅を有する溝部214を設けると共に、細径部212に四箇所、例えば、周方向に等間隔に四箇所の凹部215を設けた、中空シャフト11よりも高耐熱性を有する金属製、例えば、ステンレス製(SUS420)の軸部材21と、からなる。なお、軸部材21のツバ部213は、例えば、2mmの幅(厚さ)を有し、先端(軸本体部211から離れる方向)に向かって縮閉する円錐台形状をしている。そして、軸部材21は、丸棒材に旋盤加工を施すことにより、細径部212、ツバ部213および溝部214を設けることができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係るローラ1の製造方法を説明すると、図2に示す通り、軸心を中心に、例えば、1500rpmで回転する中空シャフト11の端部111の孔112内へ、中空シャフト11と同一軸上に配置した軸部材21のツバ部213を、中空シャフト11の回転方向と逆方向へ軸心を中心に、例えば、1500rpmで回転させながら圧入する。このようにツバ部213を孔112内へ圧入すると、圧入したツバ部213と中空シャフト11との摩擦により、中空シャフト11の一部(端部111および孔112の外側)が溶融し、その溶融部分111aが軸部材21に設けた周回する溝部214および凹部215を埋めることにより、中空シャフト11と軸部材21とが一体化し、図3に示すような、本発明に係るローラ1を製造することができる。
【0025】
本発明の一実施形態に係るローラ1は、中空シャフト11の一部(端部111および孔112の外側)が溶融し、その溶融部分111aが軸部材21に設けた周回する溝部214および凹部215を埋め、これにより中空シャフト11と軸部材21とが一体化されるので、軸部材21に引き抜きへの対抗力をツバ部213(溝部214)で備えさせ、回転に対する強度を凹部215で備えさせることができるため、軸部材21が中空シャフト11から外れるのを防止することができると共に、軸部材21に対して中空シャフト11が空回りするのを防止することができる。特に、中空シャフト11と軸部材21との一体化に接着剤を用いていないので、高熱環境において接着剤が溶融する問題を解決し、これにより中空シャフト11の軸心と軸部材21の軸心とが不一致となることがなく、ローラ1が歪んだり、軸部材21が中空11シャフトから外れて軸抜けすることを防止することができる。また、軸心を中心に回転する中空シャフト11の端部111の孔112内へ、軸部材21のツバ部213を中空シャフト11と同一軸上に配置して圧入したので、中空シャフト11の軸心と軸部材21の軸心を一致させて一体化させることができ、ローラ1が歪むのを防止することができる。
【0026】
なお、軸部材21の細径部212に設ける凹部215は、軸部材21が中空シャフト11から外れて軸抜けするのを防止することができるのであれば、一箇所以上、適宜設けることが可能な複数箇所以下あればよい。そして、この溝部214および凹部215の形状、大きさ、深さなどは、製造しようとするローラ1によって、適宜調整することが望ましい。さらに、中空シャフト11のみ、または、軸部材21のみを、軸心を中心に、例えば3000rpmで回転させても、本発明に係るローラ1を製造することができる。また、軸部材21を中空シャフト11に近づけてツバ部213を孔112内へ圧入しても、中空シャフト11を軸部材21に近づけてツバ部213を孔112内へ圧入しても、本発明に係るローラ1を同様に製造することができる。
【0027】
また、本発明の他の実施形態に係るローラ10は、図4に示す通り、金属製、例えば、アルミニウム製(A5052)の中空シャフト31と、この中空シャフト31の外径(例えば、30mm)よりも大径(例えば、40mm)の軸本体部411の一端に設けた細径部412の先端に、軸本体部411の外径よりも小径であって中空シャフト31の外径(例えば、16mm)よりも小径(例えば、14mm)のツバ部413を設けることによって周回する溝部414を設けると共に、細径部412に四箇所、例えば、周方向に等間隔に四箇所の凹部415を設けた、中空シャフト31よりも高耐熱性を有する金属製、例えば、ステンレス製(SUS420)の軸部材41と、からなる。なお、この実施形態においても、軸部材41のツバ部413は、例えば、2mmの幅(厚さ)を有し、先端(軸本体部411から離れる方向)に向かって縮閉する円錐台形状をしている。そして、軸部材41は、丸棒材に旋盤加工を施すことにより、細径部412、ツバ部413および溝部414を設けることができる。
【0028】
本発明の他の実施形態に係るローラ10の製造方法は、軸心を中心に、例えば1500rpmで回転する中空シャフト31の端部311の孔312内へ、中空シャフト31と同一軸上に配置した軸部材41のツバ部413を、中空シャフト31の回転方向と逆方向へ軸心を中心に、例えば、1500rpmで回転させながら挿入する。このようにツバ部413を孔312内へ挿入すると、軸本体部411の端部4111と中空シャフト31の端部311との摩擦により、中空シャフト31の端部311の一部が溶融し、その溶融部分311aが軸部材41に設けた周回する溝部414および凹部415を埋めることにより、中空シャフト31と軸部材41とが一体化し、図5に示すような、本発明の他の実施形態に係るローラ10を製造することができる。
【0029】
本発明の他の実施形態に係るローラ10は、中空シャフト31の端部311の一部が溶融し、その溶融部分311aが軸部材41に設けた周回する溝部414および凹部415を埋め、これにより中空シャフト31と軸部材41とが一体化されるので、軸部材41に引き抜きへの対抗力をツバ部413(溝部414)で備えさせ、回転に対する強度を凹部415で備えさせることができるため、軸部材41が中空シャフト31から外れるのを防止することができると共に、軸部材41に対して中空シャフト31が空回りするのを防止することができる。特に、中空シャフト31と軸部材41との一体化に接着剤を用いていないので、高熱環境において接着剤が溶融する問題を解決し、これにより中空シャフト31の軸心と軸部材41の軸心とが不一致となることがなく、ローラ10が歪んだり、軸部材41が中空31シャフトから外れて軸抜けすることを防止することができる。また、軸心を中心に回転する中空シャフト31の端部311の孔312内へ、軸部材41のツバ部413を中空シャフト31と同一軸上に配置して挿入したので、中空シャフト31の軸心と軸部材41の軸心を一致させて一体化させることができ、ローラ10が歪むのを防止することができる。
【0030】
なお、本発明に係る他の実施形態では、軸部材41のツバ部413が中空シャフト31の孔312の径よりも小径である場合、ツバ部413は、先端に向かって縮閉する円錐台形状を有しているか否かに限定されない。ただし、軸部材41のツバ部413が中空シャフト31の孔312よりも大径である場合、ツバ部413によっても中空シャフト31の端部311の一部および孔312の外側を溶融させることができるので、先端に向かって縮閉する円錐台形状であることが望ましく、これによりローラ10の製造効率を向上させることができる。
【0031】
また、軸部材41の細径部412に設ける凹部415は、一箇所以上、適宜設けることが可能な複数箇所以下であればよく、軸部材41の溝部414および凹部415の形状、大きさ、深さなども製造するローラ10によって適宜調整することができる。さらに、中空シャフト31のみ、または、軸部材41のみを、軸心を中心に、例えば3000rpmで回転させても、本発明に係るローラ10を製造することができる。また、軸部材41を中空シャフト31に近づけてツバ部413を孔312内へ挿入しても、中空シャフト31を軸部材41に近づけてツバ部413を孔312内へ挿入しても、本発明に係るローラ10を同様に製造することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態において、中空シャフトの孔は、中空シャフトを貫通しているものとして説明したが、軸部材のツバ部および溝部を圧入または挿入することができる深さを備えていればよく、貫通しているか否かに限定されない。
また、上記実施形態では、中空シャフトにアルミニウム(A5052)を、軸部材にステンレス(SUS420)をそれぞれ用いた例について説明したが、通常圧接、溶接できないアルミニウム(例えば、A5056およびA6063)とステンレス(例えば、S430およびSUS416)とのいずれを組み合わせる例であっても、本発明に係るローラを製造することができる。さらに、通常圧接、溶接できない金属同士によって中空シャフトと軸部材とを組み合わせる例であっても、本発明の特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがない限り、ローラとその製造方法を適用させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るローラとその製造方法は、複写機、ファクシミリ機、コンピュータのプリンタなどの紙送りローラに使用されるものとして説明したが、感光材料の現像処理装置などへの応用として、感光材料を挟持し搬送するためのローラとその製造方法にも適用することができる。そして、この場合にも、現像処理装置の稼働時などの高熱環境においても、熱膨張による歪み、軸抜けなどを防止することができるローラとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るローラの構成部品である中空シャフトおよび軸部材のそれぞれ一部を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るローラにおける中空シャフトおよび軸部材を一体化する前の状態を示す部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るローラにおける中空シャフトおよび軸部材を一体化した後の状態を示す部分断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るローラにおける中空シャフトおよび軸部材を一体化する前の状態を示す部分断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るローラにおける中空シャフトおよび軸部材を一体化した後の状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ローラ
10 ローラ
11 中空シャフト
111 中空シャフトの端部
111a 溶融部分
112 孔
21 軸部材
211 軸本体部
212 細径部
213 ツバ部
214 溝部
215 凹部
31 中空シャフト
311 端部
311a 溶融部分
312 孔
41 軸部材
411 軸本体部
4111 軸本体部の端部
412 細径部
413 ツバ部
414 溝部
415 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の中空シャフトと、
軸本体部の一端に設けた細径部の先端に前記中空シャフトの孔よりも大径のツバ部を設けることによって周回する溝部を設けると共に、前記細径部に少なくとも一箇所以上の凹部を設けた、前記中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とからなり、
この軸部材と同一軸上に配置され、軸心を中心にして前記軸部材に対して相対的に回転している前記中空シャフトの端部の孔内へ前記軸部材のツバ部を圧入し、前記中空シャフトの一部を溶融させ、その溶融部分で前記溝部および前記凹部を埋めることにより、前記中空シャフトと前記軸部材とを一体化した、
ことを特徴とするローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のローラにおいて、
前記ツバ部を、先端に向かって縮閉する円錐台形状にした、
ことを特徴とするローラ。
【請求項3】
金属製の中空シャフトと、
軸本体部の一端に設けた細径部の先端に前記軸本体部の外径よりも小径のツバ部を設けることによって周回する溝部を設けると共に、前記細径部に少なくとも一箇所以上の凹部を設けた、前記中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とからなり、
この軸部材と同一軸上に配置され、軸心を中心にして前記軸部材に対して相対的に回転している前記中空シャフトの端部の孔内へ前記軸部材のツバ部を挿入し、前記中空シャフトの一部を前記軸本体部の端部で溶融させ、その溶融部分で前記溝部および前記凹部を埋めることにより、前記中空シャフトと前記軸部材とを一体化した、
ことを特徴とするローラ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のローラにおいて、
前記軸部材を、前記中空シャフトの回転方向と逆方向へ回転させた、
ことを特徴とするローラ。
【請求項5】
金属製の中空シャフトと、軸本体部の一端に設けた細径部の先端に前記中空シャフトの孔よりも大径のツバ部を設けることによって周回する溝部を設けると共に、前記細径部に少なくとも一箇所以上の凹部を設けた、前記中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とを同一軸上に配置し、
前記中空シャフトを、軸心を中心にして前記軸部材に対して相対的に回転させ、
前記軸部材のツバ部を前記中空シャフトの端部の孔内へ圧入して前記中空シャフトの一部を溶融させ、その溶融部分で前記溝部および前記凹部を埋めることにより、前記中空シャフトと前記軸部材とを一体化する、
ことを特徴とするローラの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のローラの製造方法において、
前記ツバ部を、先端に向かって縮閉する円錐台形状にした、
ことを特徴とするローラの製造方法。
【請求項7】
金属製の中空シャフトと、軸本体部の一端に設けた細径部の先端に前記軸本体部の外径よりも小径のツバ部を設けることによって周回する溝部を設けると共に、前記細径部に少なくとも一箇所以上の凹部を設けた、前記中空シャフトよりも高耐熱性を有する金属製の軸部材とを軸心を同一軸上に配置し、
前記中空シャフトを、軸心を中心にして前記軸部材に対して相対的に回転させ、
前記軸部材のツバ部を前記中空シャフトの端部の孔内へ挿入して前記中空シャフトの一部を前記軸本体部の端部で溶融させ、その溶融部分で前記溝部および前記凹部を埋めることにより、前記中空シャフトと前記軸部材とを一体化する、
ことを特徴とするローラの製造方法。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のローラの製造方法において、
前記軸部材を、前記中空シャフトの回転方向と逆方向へ回転させる、
ことを特徴とするローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−290794(P2008−290794A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135241(P2007−135241)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(599036978)有限会社戸田製作所 (1)
【Fターム(参考)】