説明

ローラコンベヤ装置

【課題】搬送物の各搬送ローラの間の凹部への入り込みを防止するとともに、搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりすることなく、安定して搬送物を搬送可能なローラコンベヤ装置を提供すること。
【解決手段】コンベヤフレーム130が複数の搬送ローラ111を保持するローラコンベヤ装置100において、複数の搬送ローラ111が、搬送ローラ111の幅より狭い無端状の補助ベルト140を掛け渡されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物の搬送面を構成する複数の搬送ローラと、該複数の搬送ローラをその軸周りに回転可能に並列配置して保持するコンベヤフレームを有するローラコンベヤ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送物の搬送装置において、搬送面に搬送物を載置して搬送方向に搬送するための装置として、ローラコンベヤ装置が知られている。
【0003】
そして、これらのローラコンベヤ装置500は、図6に示すように、搬送物Wの搬送面を構成する複数の搬送ローラ510と、該複数の搬送ローラ510のその軸520周りに回転可能に並列配置して保持するコンベヤフレーム530を有し、搬送ローラ510が駆動され、あるいは自由回転して搬送物Wを分岐コンベア装置590に向かって搬送するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような従来のローラコンベヤ装置は、図7に示すように、搬送面が並列する円筒状の搬送ローラ510の頂点515を結ぶ仮想平面Hで構成され、実際は隣り合う各搬送ローラ510の頂点515間は凹部550となっているため、搬送物Wが仮想平面Hより下に変形した場合、搬送物Wの前端が凹部550に入り込み各搬送ローラ510の頂点515より下の部分516に接触して搬送抵抗となり、最悪の場合、搬送物Wが停止して滞留する可能性があった。
また、傾斜したベルトコンベヤ装置から水平部に搬送物の受け渡しをするような用途においては、水平部のコンベヤ装置としてローラコンベヤ装置を使用すると、前述と同様に凹部550に搬送物Wの前端が凹部550に入り込み各搬送ローラ510の頂点515より下の部分516に接触して搬送抵抗となり、最悪の場合、搬送物Wが停止して滞留する可能性があるため、通常はベルトコンベヤ装置が使用されており、同様の理由で、ローラコンベヤ装置同士の乗り継ぎ時の相対角度も、3°〜5°程度の場合にのみ使用されていた。
【0005】
このような変形する搬送物を搬送する際や、コンベヤ乗り継ぎ時の相対角度が大きい場合は、ローラコンベヤ装置ではなく搬送面が実際の平面形状に構成できるベルトコンベヤ装置等を使用するのが一般的であった。
また、変形する搬送物を搬送するローラコンベヤ装置600として、図8、図9に示すように、搬送物Wの搬送面を構成する複数の搬送ローラ610と、該複数の搬送ローラ610の軸620を回転可能に並列配置して保持するコンベヤフレーム630を有し、補助ベルト640をコンベヤフレーム630に固定して複数の搬送ローラ610の搬送面側に設けて、補助ベルト640の搬送面側の摩擦係数を小さくし搬送物Wを滑らせて搬送することによって、搬送物Wの変形による各搬送ローラ610の間の凹部650への入り込みを防止するものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許第3228266号公報(第1頁、図7)
【特許文献2】実開昭62−68905号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、搬送面が平面で構成されるベルトコンベヤ装置等はローラコンベヤ装置と比較して装置が複雑かつ高価であり、また、ローラコンベヤ装置の利点である搬送ローラ間の凹部を利用した搬送物のスライドや滞留等のため各種付加装置の設置が極めて困難であるという問題があった。
また、従来の補助ベルトを備えたローラコンベヤ装置は、補助ベルトが固定されており搬送物との摩擦が生じるため、搬送抵抗が大きくなり搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりするという問題があった。
【0007】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、搬送物の搬送面を構成する複数の搬送ローラと、該複数の搬送ローラをその軸周りに回転可能に並列配置して保持するコンベヤフレームを有するローラコンベヤ装置において、簡単な構成でローラコンベヤ装置としての機能を損なうことなく、変形や乗り継ぎ時の相対角度による搬送物の各搬送ローラの間の凹部への入り込みを防止するとともに、搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりすることなく、安定して搬送物を搬送可能なローラコンベヤ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、搬送物の搬送面を構成する複数の搬送ローラと、該複数の搬送ローラをその軸周りに回転可能に並列配置して保持するコンベヤフレームを有するローラコンベヤ装置において、前記複数の搬送ローラが、該複数の搬送ローラの幅より狭い無端状の補助ベルトを掛け渡されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたローラコンベヤ装置の構成に加えて、前記搬送ローラが、前記補助ベルトの幅方向両側を案内するリング部を備えていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項3に係る発明は、請求項1に記載されたローラコンベヤ装置の構成に加えて、前記搬送ローラが、前記補助ベルトを収容して案内する溝部を備えていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項4に係る発明は、請求項1に記載されたローラコンベヤ装置の構成に加えて、前記コンベヤフレームが、前記補助ベルトの幅方向両側を案内するガイド部材を備えていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のローラコンベヤ装置は、搬送物の搬送面を構成する複数の搬送ローラと、該複数の搬送ローラをその軸周りに回転可能に並列配置して保持するコンベヤフレームを有することにより、ローラコンベヤ装置本来の利点である搬送ローラ間の凹部を利用した搬送物のスライドや滞留等のため各種付加装置の設置が可能であるとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0013】
すなわち、本請求項1に係る発明のローラコンベヤ装置は、複数の搬送ローラが、該複数の搬送ローラの幅より狭い無端状の補助ベルトを掛け渡されていることによって、各搬送ローラの間の凹部において搬送物の底面の一部を補助ベルトが支持し、変形や乗り継ぎ時の相対角度によって搬送物が各搬送ローラの間の凹部に入り込むことを防止できるため、搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりすることなく搬送することができる。
【0014】
そして、本請求項2に係る発明のローラコンベヤ装置は、請求項1に係るローラコンベヤ装置が奏する効果に加えて、搬送ローラが、前記補助ベルトの幅方向両側を案内するリング部を備えていることにより、補助ベルトが搬送ローラの幅方向に蛇行することを防止できるため、搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりすることのない搬送を安定して行うことができる。
【0015】
また、本請求項3に係る発明のローラコンベヤ装置は、請求項1または請求項2に係るローラコンベヤ装置が奏する効果に加えて、搬送ローラが、前記補助ベルトを収容して案内する溝部を備えていることにより、補助ベルトの厚みによる搬送面の段差をなくすことができるとともに、補助ベルトが搬送ローラの幅方向に蛇行することを防止できるため、搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりすることのない搬送を安定して行うことができる。
【0016】
また、本請求項4に係る発明のローラコンベヤ装置は、請求項1に係るローラコンベヤ装置が奏する効果に加えて、コンベヤフレームが、前記補助ベルトの幅方向両側を案内するガイド部材を備えていることにより、補助ベルトが搬送ローラの幅方向に蛇行することを防止できるため、搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりすることのない搬送を安定して行うことができるとともに、搬送ローラの形態を従来のローラコンベヤ装置の搬送ローラと同様のものとすることができ、ガイド部材の位置の変更のみで多様な補助ベルトの掛け渡し形態に対応できるため、汎用性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のローラコンベヤ装置は、搬送物の搬送面を構成する複数の搬送ローラと、該複数の搬送ローラをその軸周りに回転可能に並列配置して保持するコンベヤフレームを有するローラコンベヤ装置において、前記複数の搬送ローラが、該複数の搬送ローラの幅より狭い無端状の補助ベルトを掛け渡されて、簡単な構成でローラコンベヤ装置としての機能を損なうことなく、変形や乗り継ぎ時の相対角度による搬送物の各搬送ローラの間の凹部への入り込みを防止するとともに、搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりすることなく、安定して搬送物を搬送可能という効果を発揮するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0018】
すなわち、本発明の補助ベルトは、1本だけであっても良く、複数本を搬送ローラの幅方向の複数個所に並べても良い。
また、本発明の補助ベルトは、ローラコンベヤ装置の搬送方向の全ての搬送ローラに渡って掛け渡しても良く、一部の搬送ローラにのみ掛け渡しても良い。
さらに、複数本の補助ベルトを、ローラコンベヤ装置の搬送方向の複数組の搬送ローラに掛け渡しても良く、搬送方向、幅方向ともに掛け渡す搬送ローラや掛け渡す幅方向の位置を適宜組み合わせても良い。
【0019】
そして、本発明で用いる補助ベルトの形状は、平型の帯状、丸型、あるいは、表面に突起を有するもの等いかなるものでも良く、また、補助ベルトの材質も、ゴム、合成樹脂あるいは布等のいかなるものでも良く、適用する搬送物の形状、重量、材質等に応じて、適宜選択することができる。
【0020】
また、本発明の搬送ローラに備えられるリング部は、搬送ローラと一体成形されたものであっても良く、リング部のみを搬送ローラに嵌め合せて適宜の手段で固定されたものであっても良い。
また、本発明の搬送ローラに備えられるリング部は、補助ベルトが掛け渡される搬送ローラの全てに設けられても良く、幅方向に蛇行することを防止できれば一部の搬送ローラにのみ設けられても良い。
【0021】
また、本発明のコンベヤフレームに備えられるガイド部材は、棒状のものであっても板状のものであっても良く、その設置数は、幅方向に蛇行することを防止できれば何か所であっても良い。また、ガイド部材をコンベヤフレームに着脱可能なボルトで構成することにより、補助ベルトの本数や掛け渡す位置を自由に設定することができ好適である。
【0022】
さらに、本発明の複数の各搬送ローラは、フリーローラであっても良く、駆動装置により回転駆動されて搬送物を搬送するものであっても良い。
また、駆動される搬送ローラは一つでも複数でも良く、全ての搬送ローラが駆動されても良く、全ての搬送ローラがフリーローラであっても良い。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例であるローラコンベヤ装置について図面を基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例であるローラコンベヤ装置の斜視図であり、図2は、本発明の第1実施例であるローラコンベヤ装置の断面図であり、図3は、本発明の第2実施例であるローラコンベヤ装置の断面図であり、図4は、本発明の第3実施例であるローラコンベヤ装置の断面図、図5は、本発明の第3実施例であるローラコンベヤ装置のガイド部材の拡大図である。
【0024】
まず、本発明の実施例であるローラコンベヤ装置100は、図1に示すように、コンベヤフレーム130に複数の搬送ローラ110がその軸120周りに回転可能に並列配置されて保持されており、複数の搬送ローラ110の頂点を結ぶ仮想平面を搬送面として搬送物Wが載置されるよう構成され、各搬送ローラ110は、図示しない駆動装置により回転駆動されて搬送物Wを搬送する。
【0025】
そして、複数の搬送ローラ110に渡って、搬送ローラ110の幅より狭い無端状の補助ベルト140が搬送ローラ110の幅方向に2本並行に掛け渡されており、各搬送ローラ110の間の凹部150において搬送物Wの底面の一部を補助ベルト140が支持し、変形や乗り継ぎ時の相対角度によって搬送物Wが各搬送ローラ110の間の凹部150に入り込むことを防止している。
なお、図1では搬送方向の両端の搬送ローラ110には補助ベルト140は掛け渡されていないが、両端を含む全ての搬送ローラ110に掛け渡しても良い。
【0026】
そこで、本発明の第1実施例であるローラコンベヤ装置100の搬送ローラ110について説明すると、図2に示すように、搬送ローラ110はその外周面の幅方向の4個所にリング部111が形成されており、掛け渡された2本の補助ベルト140を2個所ずつのリング部111が対になって幅方向両側からガイドすることにより、補助ベルト140が搬送ローラ110の幅方向に蛇行することを防止している。
【0027】
次に、本発明の第2実施例であるローラコンベヤ装置の搬送ローラ210について説明すると、図3に示すように、搬送ローラ210はその外周面の幅方向の2個所に溝部212が形成されており、掛け渡された補助ベルト140が2個所の溝部212に収容されることで幅方向両側からガイドされ、補助ベルト140が搬送ローラ210の幅方向に蛇行することを防止しているとともに、補助ベルト140の厚みによる搬送面の段差が少なくなっている。
【0028】
そして、本発明の第3実施例であるローラコンベヤ装置の搬送ローラ310およびコンベヤフレーム330について説明すると、図4に示すように、コンベヤフレーム330にはガイド部材であるガイドボルト331を螺合するナット332が固定されており、搬送ローラ310はその外周面が平滑な円筒状で補助ベルト140が掛け渡されている。コンベヤフレーム330の、補助ベルト140が掛け渡された隣り合う搬送ローラ310の間の凹部350に位置するナット332には、ガイド部材としてのガイドボルト331が4本立設され、掛け渡された2本の補助ベルト140を2本ずつのガイドボルト331が対になって幅方向両側からガイドすることにより、補助ベルト140が搬送ローラ310の幅方向に蛇行することを防止している。
ガイド部材は、図4に示すように、ガイドボルト331が直接補助ベルト140と摺接するように構成されても良く、図5に一部拡大して示すように、ガイドローラ333をガイドボルト331に遊嵌したものでも良く、ガイドローラ333の形状も、補助ベルト140をガイドするものであればいかなる形状でも良い。
また、ガイド部材の固定手段も、ナット332への螺着に限定されるものではなく、コンベヤフレーム330に固定されるものであれば溶接や嵌着等でもよく、その具体的な形態は如何なるものでも良い。
【0029】
このようにして得られた本発明の第1実施例乃至第3実施例のローラコンベヤ装置によれば、ローラコンベヤ装置本来の利点である搬送ローラ間の凹部を利用した搬送物のスライドや滞留等のため各種付加装置の設置が可能であるとともに、各搬送ローラの間の凹部において搬送物の底面の一部を補助ベルトが支持し、変形や乗り継ぎ時の相対角度によって搬送物が各搬送ローラの間の凹部に入り込むことを防止できるため、搬送能力が低下したり、搬送物が停止して滞留したりすることなく搬送することができる。
【0030】
さらに、搬送物の変形が防止され各搬送ローラの間の凹部に入り込むことを防止できることにより、搬送ローラの間隔を大きく設定することができるため、ローラコンベヤ装置の製造コストが削減できるとともに、搬送ローラ間の凹部を利用した搬送物のスライドや滞留等のため各種付加装置の設置の自由度が大幅に向上するなど、その効果は甚大である。
【0031】
また、本発明の第3実施例のローラコンベヤ装置によれば、コンベヤフレームにあらかじめ多数の所定位置にナットのみを固定しておけば、ガイドボルトの着脱作業のみで搬送物の種類や搬送条件に応じた多種多様な補助ベルトの掛け渡し形態に簡単に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例であるローラコンベヤ装置の斜視図。
【図2】本発明の第1実施例であるローラコンベヤ装置の断面図。
【図3】本発明の第2実施例であるローラコンベヤ装置の断面図。
【図4】本発明の第3実施例であるローラコンベヤ装置の断面図。
【図5】本発明の第3実施例であるローラコンベヤ装置のガイド部材の拡大図。
【図6】従来のローラコンベヤ装置の斜視図。
【図7】従来のローラコンベヤ装置の一部拡大断面図。
【図8】従来の補助ベルトを使用したローラコンベヤ装置の側面図。
【図9】従来の補助ベルトを使用したローラコンベヤ装置の正面図。
【符号の説明】
【0033】
100, 500,600 ・・・ローラコンベヤ装置
110,210,310,510,610 ・・・搬送ローラ
111 ・・・リング部
212 ・・・溝部
515 ・・・頂点
120,220,320,520 ・・・軸
130,230,330,530,630 ・・・コンベヤフレーム
331 ・・・ガイドボルト
332 ・・・ガイドナット
140 640 ・・・補助ベルト
150,250,350,550,650 ・・・凹部
590 ・・・分岐コンベア装置
W ・・・搬送物




【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物の搬送面を構成する複数の搬送ローラと、該複数の搬送ローラをその軸周りに回転可能に並列配置して保持するコンベヤフレームを有するローラコンベヤ装置において、
前記複数の搬送ローラが、該複数の搬送ローラの幅より狭い無端状の補助ベルトを掛け渡されていることを特徴とするローラコンベヤ装置。
【請求項2】
前記搬送ローラが、前記補助ベルトの幅方向両側を案内するリング部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項3】
前記搬送ローラが、前記補助ベルトを収容して案内する溝部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項4】
前記コンベヤフレームが、前記補助ベルトの幅方向両側を案内するガイド部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のローラコンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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