説明

ローラ保持装置およびローラ保持方法

【課題】ローラ対にニップ圧が印加されたときのローラ支持部材の変形を抑制したローラ保持装置およびローラ保持方法の提供。
【解決手段】10はローラ保持機構であり、支持部材4は、レジストローラ1、レジスト従動コロ軸2、フィードローラ3を保持している。また、ハウジングには、カバー部材6〜8が取り付けられている。支持部材4のレジスト従動コロ軸2を保持する空間部4xには、金属板5と対向する面に開口部4aが形成されている。レジスト従動コロ軸2の軸端部には、ネジリバネ9を巻回している。ネジリバネ9の両側脚部を前記支持部材4の開口部4aから導出させ、その端部9a、9bは金属板5で係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラに印加される押圧力によるローラ支持部材の変形を抑制したローラ保持装置およびローラ保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式のトナー像形成手段は、外周面に感光層を有する像担持体としての感光体と、この感光体の外周面を一様に帯電させる帯電手段と、この帯電手段により一様に帯電させられた外周面を選択的に露光して静電潜像を形成する露光手段と、この露光手段により形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像手段とを有している。
【0003】
カラー画像を形成するロータリ方式の画像形成装置としては、上記のようなトナー像形成手段を、中間転写ベルトに対して配置する。これらトナー像形成手段による感光体上のトナー像を順次中間転写ベルトに転写して、中間転写ベルト上で複数色(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒))のトナー像を重ね合わせ、中間転写ベルト上でカラー画像を得る中間転写ベルト形式のものがある。
【0004】
前記構成の画像形成装置においては、用紙搬送経路にフィードローラやレジストローラなどの多数の用紙搬送ローラが設けられている。これらの用紙搬送ローラは、駆動ローラと従動ローラが一対で設けられており、用紙は駆動ローラと従動ローラ間の間隙をニップ圧(押圧力)を受けながら搬送される。このニップ圧は、一対のローラ対の中央部と両端部では一定とならず、ローラに撓みが生じて正確に位置決めされなくなるので、用紙の搬送が良好にできず、結果として画質が劣化するという問題が生じる。
【0005】
このような従来の問題に対処するために、種々の技術的手段が提案されている。例えば、特許文献1には、一対のローラの一方を長さ方向に分割し、中央部のローラを硬い部材で形成し、両端部のローラをこれよりも低硬度の部材で形成する。さらに、両端の軸端にスプリングを設けた構成としている。このような構成とすることにより、ローラの変形が生じないようにして、用紙搬送が良好にできることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平05−92837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、材質が異なる複数のローラを用いるので部品点数が増加して構成が複雑になり、コストも高くなるという問題があった。また、前記のようにニップ圧が大きいローラ、例えば、レジストローラ対を保持する支持部材は、板金や高価なガラス入りの樹脂を使用することにより支持部材の撓み等を抑え、ローラの位置精度を保ってきた。しかしながら、板金はコスト、重量に問題があり複雑な形状が作れないという問題がある。また、剛性を出す為にガラス入りの樹脂等を使用するとコストが高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、従来技術のこのような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成でローラに押圧力が印加された場合でも、ローラ支持部材の変形を抑制することができるローラ保持装置およびローラ保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のローラ保持装置は、一対のローラ対を保持する支持部材と、前記一対のローラ対における一方のローラ軸端に巻回されるバネ部材と、前記支持部材に隣接して設けられる剛性のある板状部材とを備え、前記バネ部材に交差して形成される脚部の両端部が係止される手段を設けて、前記一対のローラ対に印加される押圧力による前記支持部材の変形を抑制することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のローラ保持装置において、前記支持部材には前記一方のローラ軸端を囲む空間部が形成されており、前記空間部を区画する枠体で前記バネ部材に交差して形成される脚部の両端部を係止し、前記板状部材を前記支持部材に押圧して前記支持部材の変形を抑制することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のローラ保持装置において、前記支持部材は、前記一方のローラ軸端を囲む空間部が形成されており、前記空間部の前記板状部材と対向する面に開口部を形成し、前記バネ部材に交差して形成される脚部の両端部を前記開口部から導出して前記板状部材に係止し、前記支持部材の変形を抑制することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のローラ保持装置において、前記支持部材を合成樹脂材で形成し、前記板状部材を金属板で形成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のローラ保持装置において、前記バネ部材はネジリバネであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のローラ保持装置において、前記一対のローラ対を保持する支持部材は、単一の露光手段を有し、複数色の画像形成を順次行って中間転写媒体上に複数色の画像を重ね合わせて形成するカラー画像形成装置に設けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のローラ保持装置において、前記一対のローラ対を保持する支持部材は、複数の露光手段を用いて同時に複数色の画像形成を行うカラー画像形成装置に設けられることを特徴とする。
【0016】
本発明のローラ保持方法は、一対のローラ対を保持する支持部材を設ける段階と、前記一対のローラ対における一方のローラ軸端にバネ部材を巻回する段階と、前記支持部材に隣接して剛性のある板状部材を設ける段階と、前記バネ部材に交差して形成される脚部の両端部を係止する段階とからなり、前記一対のローラ対に押圧力が印加されたときに、前記バネ部材の作用により前記支持部材の変形を抑制することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図4は、本発明が適用される画像形成装置の縦断側面図である。図4において、画像形成装置160には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、有機ELアレイが設けられている像書込手段(ラインヘッド)167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。
【0018】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として矢視A方向に回転する。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。162a〜162dは、前記4色の各像形成ユニットに配置されており、矢視B方向に回転する現像ローラ、163a〜163dは、矢視C方向に回転するトナ−供給ローラである。また、164a〜164dはトナーを所定の厚さに規制する規制ブレードである。
【0019】
感光体ドラム165は、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより現像ローラ162aとは逆方向の矢視D方向に駆動される。中間転写ベルト169は、従動ローラ170bと駆動ローラ170a間に張架されており、駆動ローラ170aが前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されて、中間転写ベルトに動力を伝達している。当該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆方向の矢視E方向に回動される。
【0020】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙を搬送する。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写される。二次転写ローラ171は、クラッチにより中間転写ベルト169に離当接され、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接されて用紙に画像が転写される。
【0021】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータHを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢視F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢視G方向に進行する。177は電装品ボックス、178は用紙を収納する給紙トレイ、179は給紙トレイ178の出口に設けられているピックアップローラである。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
【0022】
ピックアップローラ179の用紙搬送方向からみて下流側の用紙搬送路174には、フィードローラ3が設けられている。また、二次転写ローラ171の上流側にはレジストローラ1、レジスト従動コロ軸2が配置されている。これらのレジストローラ1、レジスト従動コロ軸2、フィードローラ3の軸端部は、後述するように合成樹脂などで形成されている支持部材に取り付けられている。なお、図4の例では、露光手段として発光素子を用いるラインヘッドが設けられているが、光源にレーザ光を用いた走査光学系を設ける構成としても良い。
【0023】
図3は、図4の用紙搬送路を部分的に示す斜視図である。図3において、合成樹脂からなる支持部材4は、多数のローラを保持する。この例では支持部材4は、レジストローラ1、レジスト従動コロ軸2、フィードローラ3を保持している。5はハウジング180に取り付けられる金属板で、支持部材4に隣接して設けられている。
【0024】
図1は、本発明の実施形態を示す側面図である。図1において10はローラ保持装置であり、支持部材4は、前記のようにレジストローラ1、レジスト従動コロ軸2、フィードローラ3を保持している。また、ハウジング180には、カバー部材6〜8が取り付けられている。支持部材4のレジスト従動コロ軸2を囲む空間部4xには、金属板5と対向する面に開口部4aが形成されている。
【0025】
レジスト従動コロ軸2の両側の軸端部には、ネジリバネ9を巻回している。ネジリバネ9に交差して形成される両側脚部を前記支持部材4の開口部4aから導出させ、その端部9a、9bは金属板5で係止する。このような構成にしているので、ローラ対にニップ圧が印加されて、レジスト従動コロ軸2が撓み支持部材4が変形しようとするときに、前記ネジリバネ9を介して金属板5に押圧力を伝達し、支持部材4の変形を打ち消す作用をする。
【0026】
このように、本発明の実施形態においては、ローラ軸端に設けたバネ脚部の両端を剛性のある板状体で係止することにより、樹脂材により形成される支持部材の撓みを防止しローラ取り付けの位置精度を保つことができる。すなわち、ニップ圧が大きいローラにおいても、一般の合成樹脂材で支持部材を構成し、剛性のある板状体、例えば金属板5によりローラを保持する支持部材の撓みを吸収させるので、ローラ位置精度を効果的に高めることができる。金属板5に代えて剛性のある合成樹脂の板状体を用いても良い。
【0027】
また、本発明の実施形態は、耐久性の良好なローラとするために、例えばレジストローラ表面にアルミナ粒子を混入させて、荷重が大きくなっているローラ対を支持する際の支持部材の撓みを抑制する上でも効果が期待できる。
【0028】
図2は、図1の要部を示す概略の側面図である。図2(b)が図1に対応している。図2(a)は他の実施形態を示している。図2(a)においては、前記支持部材4のレジスト従動コロ軸2を保持する空間部4xの金属板5と対向する面に、開口部4aが形成されていない。この例では、前記空間部4xを区画する枠体の隅部にネジリバネ9に交差して形成された両側脚部の端部9a、9bを当接させて係止する。また、支持部材4は金属板5で押圧する(図ではわかりやすくするために、支持部材4と金属板5の両者の位置関係を離して記載している)。このような構成であるので、ネジリバネ9を介して支持部材4に加わるニップ圧による支持部材4の変形を、金属板5で抑制することができ、ローラの取り付け精度を確保している。
【0029】
このように、図2(a)の構成では、樹脂材により形成される支持部材を金属板で押圧させて取り付けることにより、ローラに印加されるニップ圧が大きい場合に、支持部材に剛性がない場合においても、支持部材の変形を抑制し、ローラ取り付けの位置精度を保つことができる。本発明の実施形態においては、レジストローラのような一対のローラ対と、前記ローラ対を保持した樹脂材からなる支持部材を有し、当該支持部材は本体ハウジングに対して精度良く位置決めする必要がある画像形成装置において、ローラに印加されるニップ圧が大きいときに、樹脂材からなる支持部材の撓みを抑制してローラ位置精度を確保するものである。
【0030】
なお、本発明のローラ保持装置をロータリ型画像形成装置の用紙搬送ローラであるレジストローラ対の例で説明したが、本発明はロータリ型画像形成装置において使用される他のローラ対、例えば転写ローラや定着ローラなどのニップ圧が印加されるローラ対にも適用できる。また、画像形成装置はロータリ型に限定されることなく、複数の露光手段を用いて同時に複数色の画像形成を行うタンデム方式の画像形成装置のローラ対にも、本発明のローラ保持装置を適用できる。
【0031】
このように、本発明の実施形態にかかるローラ保持装置は、図4に示されているようなロータリ形式の現像手段を有する画像形成装置、すなわち、単一の露光手段を有し、複数色の画像形成を順次行って中間転写媒体上に複数色の画像を重ね合わせて形成するカラー画像形成装置に設けることができる。また、本発明のローラ保持装置は、上記のようにタンデム方式の画像形成装置に設けることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態にかかるローラ支持部材の変形を抑制したローラ保持装置およびローラ保持方法について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されず種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる斜視図である。
【図4】本発明の実施形態を示す画像形成装置の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1・・・レジストローラ、2・・・レジスト従動コロ軸、3・・・フィードローラ、4・・・支持部材、5・・・金属板、6〜8・・・カバー、9・・・ネジリバネ、10・・・ローラ保持装置、160・・・画像形成装置、161・・・現像装置、165・・・感光体ドラム、167・・・ラインヘッド、169・・・中間転写ベルト、171・・・二次転写ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のローラ対を保持する支持部材と、前記一対のローラ対における一方のローラ軸端に巻回されるバネ部材と、前記支持部材に隣接して設けられる剛性のある板状部材とを備え、前記バネ部材に交差して形成される脚部の両端部が係止される手段を設けて、前記一対のローラ対に印加される押圧力による前記支持部材の変形を抑制することを特徴とする、ローラ保持装置。
【請求項2】
前記支持部材には前記一方のローラ軸端を囲む空間部が形成されており、前記空間部を区画する枠体で前記バネ部材に交差して形成される脚部の両端部を係止し、前記板状部材を前記支持部材に押圧して前記支持部材の変形を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のローラ保持装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記一方のローラ軸端を囲む空間部が形成されており、前記空間部の前記板状部材と対向する面に開口部を形成し、前記バネ部材に交差して形成される脚部の両端部の端部を前記開口部から導出して前記板状部材に係止し、前記支持部材の変形を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のローラ保持装置。
【請求項4】
前記支持部材を合成樹脂材で形成し、前記板状部材を金属板で形成したことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のローラ保持装置。
【請求項5】
前記バネ部材はネジリバネであることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のローラ保持装置。
【請求項6】
前記一対のローラ対を保持する支持部材は、単一の露光手段を有し、複数色の画像形成を順次行って中間転写媒体上に複数色の画像を重ね合わせて形成するカラー画像形成装置に設けられることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のローラ保持装置。
【請求項7】
前記一対のローラ対を保持する支持部材は、複数の露光手段を用いて同時に複数色の画像形成を行うカラー画像形成装置に設けられることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のローラ保持装置。
【請求項8】
一対のローラ対を保持する支持部材を設ける段階と、前記一対のローラ対における一方のローラ軸端にバネ部材を巻回する段階と、前記支持部材に隣接して剛性のある板状部材を設ける段階と、前記バネ部材に交差して形成される脚部の両端部を係止する段階とからなり、前記一対のローラ対に押圧力が印加されたときに、前記バネ部材の作用により前記支持部材の変形を抑制することを特徴とするローラ保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−58448(P2008−58448A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233133(P2006−233133)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】