説明

ローラ装置、包装装置、およびローラの固定および解除方法

【課題】包装装置において、フォーマローラの側方に支柱等の障害物がある場合であっても、フォーマローラの固定、解除、および移動の動作を容易に行うことができ、かつ、フォーマローラの位置決めを再現よく正確に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】フォーマローラ81の一方の端部において、上段ラック82dと軸方向の位置を違えて下段ラック82cを設ける。このため、フォーマローラ81を軸方向に進退させることにより、フォーマローラ81の固定状態と可動状態とが容易に切り替わる。フォーマローラ81は、ラックと噛み合いつつ移動するため、再現よく正確に位置決めされる。また、フォーマローラ81の側部においてナットの締め付け作業等を行う必要がないため、フォーマローラ81の側部に支柱等がある場合であっても、当該支柱等がフォーマローラ81の固定、解除、および移動の作業の妨げとなることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品をフィルムにより包装する包装装置において、フィルムをガイドするためのローラを固定、解除、および移動させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品をフィルムにより包装する包装装置が知られている。包装装置は、帯状のフィルムを筒状に成形するためのフォーマを備え、フォーマにおいて筒状に成形されたフィルム内へ物品を投入してフィルム端部をシールすることにより、物品を包装する。
【0003】
このような包装装置では、帯状のフィルムをフィルム供給部からフォーマへ供給する際に、複数のローラによってフィルムをガイドしている。特に、フォーマに最も近い位置に配置されたローラ(いわゆるフォーマローラ)は、フォーマへ供給されるフィルムの最終的な供給角度を規定し、フォーマ上におけるフィルムのずれや撓みを防止する役割を果たす。このようなフォーマローラを備えた従来の包装装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−231202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の包装装置においては、使用するフィルムのサイズに合わせて適当なサイズのフォーマを装着して使用する。そして、種々のサイズのフォーマ上においてフィルムのずれや撓みを適切に防止するために、フォーマローラの位置を変更できるようになっている。
【0006】
図8は、従来のフォーマローラ110およびフォーマローラ110を支持する支持部材120の構成を示した斜視図である。図8の構成において、フォーマローラ110は、その両端部が一対のボールねじ121,122と螺合されている。そして、一対のボールねじ121,122は、ギアを介して1本の操作軸123と連結されている。フォーマローラ110を移動させるときには、操作軸123上のナット124をゆるめ、ノブ125を操作することにより操作軸123を回転させる。そうすると、操作軸123に連結された一対のボールねじ121,122が同一の回転速度で回転し、フォーマローラ110が水平方向に移動する。また、フォーマローラ110を固定するときには、操作軸123上のナット124を締め付け、操作軸123の回転を規制することにより、フォーマローラ110を固定する。
【0007】
しかしながら、このような従来の構成では、ナット124の締め付けによりフォーマローラ110を固定していたため、ナット124のゆるみや締め忘れが発生する場合があった。また、ナット124を締め付ける際にフォーマローラ110の位置が微妙にずれるため、フォーマローラ110を再現よく正確に位置決めすることは困難であった。また、包装装置の上方には、物品を計量して一定重量ごとに包装装置へ供給するコンピュータスケールが配置される場合がある。その場合には、コンピュータスケールを支持するための支柱が障害となって、ノブ125やナット124を自由に操作できるスペースを確保することが困難であった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ローラの側方に支柱等の障害物がある場合であっても、ローラの固定、解除、および移動の動作を容易に行うことができ、かつ、ローラの位置決めを再現よく正確に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、フィルムをガイドするローラ装置であって、略水平に設けられ軸方向に進退可能なローラと、前記ローラの一方の端部に設けられたピニオンと、前記ピニオンの上方において前記ピニオンと噛み合う上段ラックと、前記ピニオンの下方において前記ピニオンと噛み合う下段ラックと、を備え、前記上段ラックと前記下段ラックとは、前記軸方向の位置を違えて設けられており、前記ローラを前記軸方向に進退させることにより、前記ピニオンが前記上段ラックおよび前記下段ラックの双方と噛み合う固定状態と、前記ピニオンが前記上段ラックおよび前記下段ラックの一方のみと噛み合う可動状態とが、切り替わることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のローラ装置であって、前記ローラは、前記固定状態へ向けて付勢されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のローラ装置であって、前記可動状態は、前記ピニオンが前記上段ラックのみと噛み合う状態であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に記載のローラ装置であって、前記ローラの他方の端部に設けられた第2のピニオンと、前記第2のピニオンの上方において前記第2のピニオンと噛み合う第2の上段ラックと、をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1から4までのいずれかに記載のローラ装置であって、前記ローラは、軸心部と、前記軸心部の周りに回動自在に設けられた外周部とを有し、前記ピニオンは、前記ローラの前記軸心部に固設されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、物品をフィルムにより包装する包装装置であって、フィルムを供給する供給部と、前記供給部から供給されるフィルムを筒状に成形するフォーマと、前記フォーマにより筒状に成形されたフィルム内へ物品を投入する投入部と、前記フィルムをシールするシール部と、を備え、前記供給部は、請求項1から5までのいずれかに記載のローラ装置を介して前記フォーマへフィルムを供給することを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、物品をフィルムにより包装する包装装置において前記フィルムをガイドするローラの固定および解除方法であって、ローラを軸方向に進退させることにより、前記ローラの端部に設けられたピニオンが前記ピニオンの上方に設けられた上段ラックおよび前記ピニオンの下方に設けられた下段ラックの双方と噛み合う固定状態と、前記ピニオンが前記上段ラックおよび前記下段ラックの一方のみと噛み合う可動状態とを、切り替える工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項7に記載の発明によれば、ローラを軸方向に進退させることにより、ローラの固定状態と可動状態とを容易に切り替えることができる。固定状態においては、上段ラックと下段ラックとによりピニオンの回転が規制され、ローラを固定することができる。一方、可動状態においては、上段または下段ラックに沿ってピニオンが転動可能となり、ローラを軸と垂直な方向に移動させることができる。ローラは、ラックと噛み合いつつ移動するため、再現よく正確に位置決めされる。また、ローラの側部においてナットの締め付け作業等を行う必要がないため、ローラの側部に支柱等の障害物がある場合であっても、当該障害物が、ローラの固定、解除、および移動の作業の妨げとなることはない。
【0017】
特に、請求項2に記載の発明によれば、ローラは、固定状態へ向けて付勢されている。このため、ローラを安定に固定することができる。また、作業者がローラを固定し忘れる恐れがない。
【0018】
特に、請求項3に記載の発明によれば、可動状態において、ピニオンは上段ラックに沿って転動する。上段ラックは、下段ラックより粉塵が堆積しにくいため、ローラを滑らかに移動させることができる。
【0019】
特に、請求項4に記載の発明によれば、ローラの両端部にピニオンおよび上段ラックが設けられる。そして、ローラの両端部において、ピニオンが上段ラックと噛み合いつつ転動する。このため、ローラの両端部の並進性が向上し、ローラの傾斜を防止することができる。
【0020】
特に、請求項5に記載の発明によれば、ピニオンはローラの軸心部に固設されている。このため、固定状態においてもローラの外周部は自在に回動し、フィルムを滑らかにガイドすることができる。また、ローラを移動させるときには、ローラの外周部を回転させることなく軸心部のみを転動させることができる。このため、作業者は、ローラの外周部を掴んで滑らかにローラを移動させることができる。
【0021】
特に、請求項6に記載の発明によれば、フィルムをフォーマへ案内するためのローラを、容易に固定、解除、および移動させることができる。このため、フォーマのサイズに対応させて、ローラの位置を容易に変更することができる。また、ノブ、ナット、ボールねじ等の部品は必要でないため、包装装置の部品点数が削減されるとともに、装置の占有スペースを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
<1.包装装置の全体構成について>
図1は、本発明に係る包装装置1の正面図である。また、図2は、本発明に係る包装装置1の側面図である。図1,図2および以下の各図には、各部位の位置関係を明確にするために、XYZ直交座標系が定義されている。
【0024】
この包装装置1は、スナック菓子やキャンディ等の物品を連続的に袋詰めする縦ピロー型の製袋包装装置である。図1および図2においては、包装装置1の上部に、コンピュータスケール9が配置されている。コンピュータスケール9は、計量部91において物品を計量し、排出シュート92を介して物品を一定重量ずつ包装装置1に供給する装置である。このコンピュータスケール9と包装装置1とにより、物品を一定重量ずつ包装する計量・包装システムが構成されている。
【0025】
包装装置1は、主として、装置本体部2と、装置本体部2に帯状のフィルムfを供給するフィルム供給部3とを備えている。フィルム供給部3は、ロール31から繰り出されたフィルムfを、複数のローラ32を介して装置本体部2へ供給する。
【0026】
装置本体部2のハウジング4の内部には、コンピュータスケール9から供給される物品を、フィルム供給部3から供給されるフィルムfにより包装する包装部5が設けられている。また、ハウジング4の内部には、包装装置1全体の動作を統括的に制御するマイクロコンピュータを備えた制御部(図示省略)が設けられ、ハウジング4の正面側には、作業者からの操作入力を受け付ける操作スイッチ41と、作業者に各種情報を表示する液晶ディスプレイ42とが設けられている。
【0027】
図3は、装置本体部2のハウジング4の内部に設けられた包装部5の構成を示した斜視図である。包装部5は、コンピュータスケール9から供給される物品Arを受け止めて下方へ送る集合シュート51と、物品Arを下方へ送るとともにその周囲においてフィルムfを筒状に成形するフォーマ52と、フィルムfを下方へ送るプルダウンベルト53と、筒状に成形されたフィルムfの合わせ目をシールする縦シール機構54と、筒状に成形されたフィルムfの包装袋の上下端となる部分をシールする横シール機構55と、を備えている。
【0028】
フォーマ52は、集合シュート51から落下する物品Arを内部に導通するチューブ521と、フィルムfを筒状に成形するためのセーラ522とを有している。フィルム供給部3から供給されたフィルムfは、セーラ522の上面に略水平に受けられ、チューブ521とその周囲を取り囲むセーラ522との間隙を通過することによって、側縁部fvが重なるように筒状に成形される。
【0029】
プルダウンベルト53は、チューブ521の側部に一対に設けられている。プルダウンベルト53は、チューブ521の周りに筒状に成形されたフィルムfの表面に接触しつつ回動し、フィルムfを鉛直下方へ引き下げる。
【0030】
縦シール機構54は、チューブ521の側部においてフィルムfの側縁部fvが通過する位置に設けられている。縦シール機構54は、図示しないヒータベルト等を有しており、フィルムfの側縁部fvを一定の圧力で押圧しつつ加熱することにより、フィルムfの合わせ目を縦方向(Z軸方向)にシールする。縦シール機構54によりシールされたフィルムfは、プルダウンベルト53によりさらに下方へ搬送される。
【0031】
横シール機構55は、チューブ521の下方に設けられている。横シール機構55は、一対のシールジョー551により、筒状のフィルムfを横方向(Y軸方向)にシールする。また、一対のシールジョー551には図示しないカッターが内蔵されており、シールジョー551によるシール部分の中間高さ位置を、カッターにより横方向(Y軸方向)に切断する。筒状のフィルムfは、包装袋の底部となる位置が横シール機構55により溶着されると、下部が閉鎖され上部が開口した中間体袋Piとなる。中間体袋Piが形成されると、所定重量の物品Arが、コンピュータスケール9から集合シュート51およびチューブ521の内部を通って中間体袋Pi内へ投入される。物品Arを収容した中間体袋Piは、プルダウンベルト53によりさらに下方へ搬送される。そして、中間体袋Piの上部が横シール機構により横方向にシールされるとともに切断され、物品Arを包装した1つの包装袋Paが生成される。
【0032】
包装部5においては、上記の各部位がそれぞれの動作を繰り返すことにより、複数の包装袋Paが連続して生成される。生成された包装袋Paは、包装部5の下方に設けられた排出シュート(図示せず)を通ってベルトコンベア上に送られ、後続の装置へ搬送される。
【0033】
装置本体部2のハウジング4の内部には、フィルム供給部3から受けたフィルムfをセーラ522へ送る際にフィルムfをガイドするフォーマローラ81が設けられている。フォーマローラ81は、セーラ522へ供給されるフィルムfの最終的な供給角度を規定し、セーラ522上におけるフィルムfのずれや撓みを防止する役割を果たす。
【0034】
上記の包装部5において、フォーマ52は着脱可能な構成となっている。作業者は、包装材として使用するフィルムfのサイズに適したサイズのフォーマ52を装着して使用する。また、フォーマ52を取り替えたときには、フォーマ52のサイズに対応させてフォーマローラ81の位置を変更する。以下では、フォーマローラ81を固定、解除、および移動させるための構成について説明する。
【0035】
<2.ローラ装置の構成について>
図4および図5は、フォーマローラ81とフォーマローラ81を支持する支持部材82とを、X軸方向およびY軸方向から見た図である。支持部材82は、包装装置1のハウジング4に固定的に取り付けられた一対の第1支持部材82aと第2支持部材82bとからなる。第1支持部材82aおよび第2支持部材82bは、フォーマローラ81の両端部をそれぞれ支持する。これらのフォーマローラ81と支持部材82とにより、ローラ装置80が構成されている。
【0036】
フォーマローラ81は、Y軸方向にのびるシャフト(軸心部)81aと、シャフト81aの周りに回動自在に設けられたローラ外周部81bとを有する。ローラ外周部81bは、シャフト81aに対して自在に回動可能であるが、シャフト81aの軸方向にはずれないように固定されている。ローラ外周部81bと第1支持部材82aとの間のシャフト81a上には、第1ピニオン81cが固設されている。また、ローラ外周部81bと第2支持部材82bとの間のシャフト81a上には、第2ピニオン81dが固設されている。第1ピニオン81cおよび第2ピニオン81dは、同一系および同一ピッチを有する小歯車であり、いずれもシャフト81aと同軸に設けられている。
【0037】
シャフト81aは、第1ピニオン81cの先で第1支持部材82aに挿通されている。シャフト81aの第1支持部材82a側の先端と第1支持部材82aの外側面との間には、ばね81eが係合されている。このため、シャフト81aは、ばね81eの作用により第1支持部材82a側へ付勢されている。一方、シャフト81aの他端側は、第2ピニオン81dの先で第2支持部材82bに挿通されている。シャフト81aの第2支持部材82b側の先端には、第2支持部材82bの外側面に当接する当接部材81fが設けられている。このため、ローラ装置80に外力を加えていない状態では、当接部材81fと第2支持部材82bの外側面とが当接した状態でフォーマローラ81は静止している。
【0038】
第1支持部材82aの内側面には、第1ピニオン81cの下方において第1ピニオン81cと噛み合う下段ラック82cと、第1ピニオン81cの上方において第1ピニオン81cと噛み合う第1上段ラック82dとが、固定的に取り付けられている。一方、第2支持部材82bの内側面には、第2ピニオン81d上方において第2ピニオン81dと噛み合う第2上段ラック82eが、固定的に取り付けられている。下段ラック82c,第1上段ラック82d,および第2上段ラック82eは、第1ピニオン81cおよび第2ピニオン81dと同一ピッチの歯をX軸方向に有する。
【0039】
下段ラック82cと第1上段ラック82dとは、シャフト81aの軸方向に位置を違えて設けられている。すなわち、下段ラック82cのY軸方向の位置と、第1上段ラック82dのY軸方向の位置とは相違する。具体的には、第1上段ラック82dよりも外側の位置(ローラ外周部81bから遠い位置)に、下段ラック82cが配置されている。
【0040】
上記のとおり、フォーマローラ81は、ばね81eによる付勢を受けている。このため、定常時においては、フォーマローラ81は、第1支持部材82a側へ引き付けられた状態で固定されている(図4の状態)。この状態においては、第1ピニオン81cは、下段ラック82cおよび第1上段ラック82dの双方と噛み合い、第1ピニオン81cの回転が規制される。したがって、第1ピニオン81cが転動することはなく、フォーマローラ81はX軸方向に移動不能な固定状態となっている。
【0041】
一方、フォーマローラ81に第2支持部材82b側へ向かう外力を与えると、フォーマローラ81は、ばね81eの付勢に抗して第2支持部材82b側へスライド移動する。図6は、フォーマローラ81を第2支持部材82b側へスライド移動させた様子を示した図である。この状態においては、第1ピニオン81cは下段ラック82cから開放され、第1上段ラック82dのみと噛み合うため、第1ピニオン81cの回転が規制されることはない。したがって、第1ピニオン81cおよび第2ピニオン81dは、それぞれ第1上段ラック82dおよび第2上段ラック82eに沿って転動し、フォーマローラ81は、X軸方向に移動可能な可動状態となる。
【0042】
このように、このローラ装置80においては、フォーマローラ81の一方の端部において、第1上段ラック82dと軸方向の位置を違えて下段ラック82cが設けられている。このため、フォーマローラ81を軸方向に進退させることにより、フォーマローラ81の固定状態と可動状態とを、容易に切り替えることができる。
【0043】
<3.フォーマローラの固定、解除、および移動の動作について>
上記のローラ装置80において、フォーマ52のサイズに対応させてフォーマローラ81の位置を変更するときの動作について、図7のフローチャートを参照しつつ、説明する。
【0044】
フォーマローラ81の位置を変更するときには、まず、フォーマローラ81に軸方向の外力を与え、フォーマローラ81を第2支持部材82b側へスライド移動させる。作業者は、フォーマローラ81の端部を押し込んでフォーマローラ81をスライド移動させてもよいが、フォーマローラ81のローラ外周部81bを掴んでフォーマローラを押し込んでもよい。このようにして、フォーマローラ81を固定状態から可動状態へ切り替える(ステップS1)。可動状態においては、フォーマローラ81の第1ピニオン81cおよび第2ピニオン81dは、それぞれ第1上段ラック82dおよび第2上段ラック82eのみと噛み合う。
【0045】
次に、フォーマローラ81にX軸方向の外力を与え、フォーマローラ81を移動させる。第1ピニオン81cおよび第2ピニオン81dは、それぞれ第1上段ラック82dおよび第2上段ラック82eと噛み合いつつ転動し、これによりフォーマローラ81がX軸方向に移動する(ステップS2)。このフォーマローラ81においては、ローラ外周部81bを回転させることなくシャフト81aを転動させることができる。このため、作業者は、ローラ外周部81bを掴んだ状態のまま、滑らかにフォーマローラ81をX軸方向に移動させることができる。
【0046】
フォーマローラ81をX軸方向に移動させるときには、第1ピニオン81cおよび第2ピニオン81dが、それぞれ第1上段ラック82dおよび第2上段ラック82eと噛み合いつつ転動する。このため、所定のピッチ単位でフォーマローラ81を正確に移動させることができる。また、繰り返しフォーマローラ81を移動させた場合にも、フォーマローラ81を再現よく位置決めすることができる。
【0047】
また、このローラ装置80においては、フォーマローラ81の両端部に同一ピッチの第1上段ラック82dおよび第2上段ラック82eが設けられる。そして、フォーマローラ81の両端部において、第1ピニオン81cおよび第2ピニオン81dが第1上段ラック82dおよび第2上段ラック82eと噛み合いつつ転動する。このため、フォーマローラ81の両端部の並進性が向上し、フォーマローラ81の傾斜を防止することができる。
【0048】
フォーマローラ81を所望の位置まで移動させると、フォーマローラ81を軸方向の外力から解放し、ばね81eの付勢によりフォーマローラ81を第1支持部材82a側へスライド移動させる。これにより、フォーマローラ81を可動状態から固定状態へ切り替える(ステップS3)。固定状態においては、フォーマローラ81の第1ピニオン81cは、第1上段ラック82dだけでなく下段ラック82cとも噛み合い、フォーマローラ81のX軸方向の移動が規制される。
【0049】
このローラ装置80においては、フォーマローラ81は、ばね81eにより第1支持部材82a側へ付勢されている。すなわち、フォーマローラ81は、固定状態へ向けて付勢されている。このため、フォーマローラ81は、固定状態において安定に固定される。また、フォーマローラ81が固定し忘れたまま放置される恐れがない。フォーマローラ81のローラ外周部81bは、シャフト81aの固定にかかわらず自在に回動することができる。このため、シャフト81aが固定された状態であっても、ローラ外周部81bは、フィルムfを滑らかにガイドすることができる。
【0050】
このように、このローラ装置80においては、フォーマローラ81を軸方向に進退させることにより、フォーマローラ81の固定状態と可動状態とを、容易に切り替えることができる。このため、フォーマ52のサイズに対応させて、フォーマローラ81の位置を容易に変更することができる。作業者は、ローラ外周部81bを掴んでフォーマローラ81の固定、解除、および移動の作業を行う。このため、フォーマローラ81の側部付近に、コンピュータスケール9を支持するための支柱等が配置されている場合であっても、当該支柱等がフォーマローラ81の固定、解除、および移動の作業の妨げとなることはない。また、この包装装置1においては、フォーマローラ81の固定、解除、および移動のためにノブ、ナット、ボールねじ等の部品は必要でないため、部品点数が削減されるとともに、包装装置1の占有スペースを低減することができる。
【0051】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の例に限定されるものではない。たとえば、上記の例では、フォーマローラ81を第1上段ラック82dおよび第2上段ラック82eに沿って移動させ、固定のために下段ラック82cを使用していたが、これらのラックの上下を入れ替えた構成でもよい。すなわち、フォーマローラ81を下段側のラックに沿って移動させ、固定のために上段側のラックを使用する構成であってもよい。ただし、下段側のラックと比べて上段側のラックの歯間には、粉塵が堆積しにくい。このため、フォーマローラ81を上段側のラックに沿って移動させる方が、フォーマローラ81をより滑らかに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】包装装置の正面図である。
【図2】包装装置の側面図である。
【図3】包装部5の構成を示した斜視図である。
【図4】固定状態のローラ装置をX軸方向から見た図である。
【図5】ローラ装置をY軸方向から見た図である。
【図6】解除状態のローラ装置をX軸方向から見た図である。
【図7】フォーマローラの固定、解除、および移動の動作を示したフローチャートである。
【図8】従来のフォーマローラおよび支持部材の構成を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 包装装置
2 装置本体部
3 フィルム供給部
5 包装部
9 コンピュータスケール
51 集合シュート
52 フォーマ
53 プルダウンベルト
54 縦シール機構
55 横シール機構
80 ローラ装置
81 フォーマローラ
81a シャフト
81b ローラ外周部
81c 第1ピニオン
81d 第2ピニオン
81e ばね
82 支持部材
82c 下段ラック
82d 第1上段ラック
82e 第2上段ラック
521 チューブ
522 セーラ
Ar 物品
f フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムをガイドするローラ装置であって、
略水平に設けられ軸方向に進退可能なローラと、
前記ローラの一方の端部に設けられたピニオンと、
前記ピニオンの上方において前記ピニオンと噛み合う上段ラックと、
前記ピニオンの下方において前記ピニオンと噛み合う下段ラックと、
を備え、
前記上段ラックと前記下段ラックとは、前記軸方向の位置を違えて設けられており、
前記ローラを前記軸方向に進退させることにより、前記ピニオンが前記上段ラックおよび前記下段ラックの双方と噛み合う固定状態と、前記ピニオンが前記上段ラックおよび前記下段ラックの一方のみと噛み合う可動状態とが、切り替わることを特徴とするローラ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のローラ装置であって、
前記ローラは、前記固定状態へ向けて付勢されていることを特徴とするローラ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のローラ装置であって、
前記可動状態は、前記ピニオンが前記上段ラックのみと噛み合う状態であることを特徴とするローラ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のローラ装置であって、
前記ローラの他方の端部に設けられた第2のピニオンと、
前記第2のピニオンの上方において前記第2のピニオンと噛み合う第2の上段ラックと、
をさらに備えたことを特徴とするローラ装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載のローラ装置であって、
前記ローラは、軸心部と、前記軸心部の周りに回動自在に設けられた外周部とを有し、
前記ピニオンは、前記ローラの前記軸心部に固設されていることを特徴とするローラ装置。
【請求項6】
物品をフィルムにより包装する包装装置であって、
フィルムを供給する供給部と、
前記供給部から供給されるフィルムを筒状に成形するフォーマと、
前記フォーマにより筒状に成形されたフィルム内へ物品を投入する投入部と、
前記フィルムをシールするシール部と、
を備え、
前記供給部は、請求項1から5までのいずれかに記載のローラ装置を介して前記フォーマへフィルムを供給することを特徴とする包装装置。
【請求項7】
物品をフィルムにより包装する包装装置において前記フィルムをガイドするローラの固定および解除方法であって、
ローラを軸方向に進退させることにより、前記ローラの端部に設けられたピニオンが前記ピニオンの上方に設けられた上段ラックおよび前記ピニオンの下方に設けられた下段ラックの双方と噛み合う固定状態と、前記ピニオンが前記上段ラックおよび前記下段ラックの一方のみと噛み合う可動状態とを、切り替える工程を含むことを特徴とするローラの固定および解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−290445(P2006−290445A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116581(P2005−116581)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】