説明

ロールスタンパ

【課題】スリーブのがたつきが抑えられ、かつセンタリング性が良好であるロールスタンパを提供する。
【解決手段】マンドレル10と、マンドレル10の先端側から基端側に向かってマンドレル10の外周に着脱可能に装着されるスリーブ40とを有し、スリーブ40の外周面に形成された微細凹凸構造を被転写体に転写するロールスタンパ1であって、スリーブ40の両端の開口部が、スリーブ40の端面に向かって拡径するテーパ部とされ、スリーブ40が、マンドレル10の先端側に設けられ、スリーブ40のテーパ部と当接する先端側係止部22と、マンドレル10の基端側に設けられ、スリーブ40のテーパ部と当接する基端側係止部24との間で挟持されたロールスタンパ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に形成された微細凹凸構造を被転写体に転写するロールスタンパに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する光学フィルムは、反射防止機能等を発現することから、その有用性が注目されている。特に、モスアイ(Moth−Eye)構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に増大していくことで有効な反射防止機能を発現することが知られている。
【0003】
微細凹凸構造を表面に有する光学フィルムの製造方法としては、基材フィルム(被転写体)の表面に、スタンパの表面に形成された微細凹凸構造を転写するインプリント法が挙げられる。該インプリント法としては、例えば、下記の方法が知られている(特許文献1)。
複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロールスタンパと、透明な基材フィルムとの間に、紫外線硬化性樹脂が介在した状態で、紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させた後、硬化樹脂とともに基材フィルムをロールスタンパから剥離する光インプリント法。
【0004】
該ロールスタンパは、中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたスリーブを、円柱状のマンドレル(軸芯)の外周に装着したものである。
該ロールスタンパにおいては、スリーブとマンドレルとの間隙は、スリーブのがたつきを抑え、かつスリーブとマンドレルとのセンタリング性を高めるため、30〜160μm程度とされる。また、アルミニウム基材の外周面に、規則性が高く、かつサイズのばらつきの小さい複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを形成するためには、アルミニウム基材として純度99%以上の高純度アルミニウムを用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−174007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高純度アルミニウムは、アルミニウム合金に比べ柔らかいため、ロールスタンパの大面積化のためにスリーブを長くしたり、スリーブの軽量化のためにスリーブを肉薄にしたりすると、中空円柱状のスリーブの中心軸が曲がりやすくなることが分かった。
そして、スリーブとマンドレルとの間隙が30〜160μm程度しかないため、スリーブの中心軸がわずかにでも曲がってしまうと、スリーブをマンドレルに装着できなくなるという問題が生じることが分かった。なお、スリーブのマンドレルへの装着性をよくするために、スリーブの内周壁とマンドレルの外周壁との間の間隙を大きくすると、スリーブのがたつき、センタリング性不良、という別の問題が生じる。
【0007】
本発明は、スリーブのがたつきが抑えられ、かつセンタリング性が良好であるロールスタンパを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロールスタンパは、円柱状のマンドレルと、該マンドレルの先端側から基端側に向かって該マンドレルの外周に着脱可能に装着される中空円柱状のスリーブとを有し、該スリーブの外周面に形成された微細凹凸構造を被転写体に転写するロールスタンパであって、前記スリーブの両端の開口部が、該スリーブの端面に向かって拡径するテーパ部とされ、前記スリーブが、前記マンドレルの先端側に設けられ、前記スリーブのテーパ部と当接する先端側係止部と、前記マンドレルの基端側に設けられ、前記スリーブのテーパ部と当接する基端側係止部との間で挟持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のロールスタンパにおいては、前記スリーブのテーパ部以外の内周壁と前記マンドレルの外周壁との間の間隙が、250μm以上であることが好ましい。
前記スリーブは、純度99%以上の高純度アルミニウムからなる中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロールスタンパは、スリーブのがたつきが抑えられ、かつセンタリング性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のロールスタンパの一例を示す断面図である。
【図2】マンドレルの先端側にあるスリーブのテーパ部付近の拡大断面図である。
【図3】アルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたスリーブの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ロールスタンパ)
図1は、本発明のロールスタンパの一例を示す断面図であり、図2は、マンドレルの先端側にあるスリーブのテーパ部付近の拡大断面図である。
ロールスタンパ1は、円柱状のマンドレル10と、該マンドレル10の先端側から基端側に向かって該マンドレル10の外周に着脱可能に装着される中空円柱状のスリーブ40とを有する。
【0013】
スリーブ40は、マンドレル10の先端側にあるスリーブ40の開口部がスリーブ40の端面に向かって拡径する先端側テーパ部42と、マンドレル10の基端側にあるスリーブ40の開口部がスリーブ40の端面に向かって拡径する基端側テーパ部44と、先端側テーパ部42と基端側テーパ部44との間にあるスリーブ中間部46とを有する。
スリーブ中間部46は、スリーブ40の両端部よりも外径が大きくされることが好ましく、スリーブ中間部46の外周面50には、微細凹凸構造が形成されている。
【0014】
マンドレル10は、中空円柱状のマンドレル本体部12と、マンドレル本体部12の開口部に一方の端部が挿入され、マンドレル本体部12からマンドレル10の先端側に向かって延びる円柱状の軸受け部14と、マンドレル本体部12の開口部に一方の端部が挿入され、マンドレル本体部12からマンドレル10の基端側に向かって延びる円柱状の軸受け部16とを有する。
【0015】
マンドレル本体部12の先端側には、マンドレル10の基端側に向かって縮径する、前記先端側テーパ部42のテーパ面と同じ傾斜のテーパ面を有するコレット18とコレット18の抜けを防止するための締付ナット20とからなるリング状の先端側係止部22が着脱可能に設けられている。
マンドレル本体部12の基端側には、マンドレル10の先端側に向かって縮径する、前記基端側テーパ部44のテーパ面と同じ傾斜のテーパ面を有するフランジ状の基端側係止部24がマンドレル本体部12と一体となって設けられている。
【0016】
基端側係止部24には、スリーブ40の空回りを防止するための回転止めキー28が、その一部がスリーブ40の端部の切り欠き(図示略)に嵌合した状態で、ボルトによって固定されている。
マンドレル本体部12の外周壁には、温調水が流れる水路26が形成されている。また、マンドレル10の先端側の水路26の端部には、温調水導入孔30が複数穿設され、マンドレル10の基端側の水路26の端部には、温調水導出孔32が複数穿設されている。
【0017】
軸受け部14および軸受け部16の外径は、マンドレル本体部12よりも小さくされていることが好ましい。
軸受け部14には、中心軸に沿って延びる温調水供給孔34が穿設され、該温調水供給孔34の終端は、マンドレル本体部12の温調水導入孔30に連通している。また、軸受け部16には、中心軸に沿って延びる温調水排出孔36が穿設され、該温調水排出孔36の始端は、マンドレル本体部12の温調水導出孔32に連通している。
【0018】
ロールスタンパ1においては、スリーブ40は、マンドレル10の先端側に設けられた先端側係止部22と、マンドレル10の基端側に設けられた基端側係止部24との間で挟持されている。この際、スリーブ40の先端側テーパ部42のテーパ面と先端側係止部22のテーパ面とが面で当接するとともに、先端側係止部22と先端側テーパ部42との間にはOリング52が介在する。また、スリーブ40の基端側テーパ部44のテーパ面と基端側係止部24のテーパ面とが面で当接するとともに、基端側係止部24と基端側テーパ部44との間にはOリング54が介在する。
【0019】
センタリング性を向上させるためには、テーパ面の角度αを調整することもできる。テーパ面の角度αは、先端側および基端側ともに、マンドレル10の軸方向(0°)に対して15〜45°が好ましく、22.5〜37.5°がより好ましい。テーパ面の角度αが15°未満では、締付ナット20で締め付けた際に、先端側および基端側の係止部が、スリーブ40の先端側および基端側のテーパ部とマンドレル本体部12の外周壁との間に自己拘束してしまい、スリーブ40の交換が困難となるおそれがある。テーパ面の角度αが45°を超えると、先端側および基端側の係止部によるスリーブ40の挟持が不安定となり、センタリング性が低下するおそれがある。
【0020】
また、ロールスタンパ1においては、スリーブ40の先端側テーパ部42および基端側テーパ部44以外のスリーブ中間部46の内周壁とマンドレル本体部12の外周壁との間に間隙が形成されている。該間隙は、最も狭いところ、すなわちスリーブ40のテーパ部がない部分で、かつマンドレル本体部12の水路26がない部分の間隙Cで250μm以上とすることが好ましい。マンドレル本体部12の水路26がある部分の間隙は、それよりもはるかに広くなる。該間隙の上限は特に限定はされないが、水路26を流れる温調水の流量の点から、該間隙は、15mm以下が好ましい。
【0021】
なお、スリーブ中間部46の内周壁とマンドレル本体部12の外周壁との間に比較的広い間隙Cがあっても、先端側テーパ部42と先端側係止部22との間にOリング52が介在し、基端側テーパ部44と基端側係止部24との間にOリング54が介在しているため、マンドレル本体部12の水路26を流れる温調水が、テーパ部と係止部との間から流れ出ることはない。
【0022】
(スリーブの製造方法)
スリーブ40としては、純度99%以上の高純度アルミニウムからなる中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナ(アルミニウムの酸化皮膜(アルマイト))が形成されたものが好ましい。以下、該スリーブ40の製造方法の一例について説明する。
【0023】
スリーブ40は、例えば、下記の工程(I)、(II)を経て製造される。
(I)円柱状のアルミニウムを切削加工して、中空円柱状のアルミニウム基材を作製する工程。
(II)中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを形成する工程。
【0024】
工程(I):
スリーブ40の中空部の加工法としては、中ぐりバイトによる切削加工法、BTA法等の公知の方法が挙げられる。本発明におけるスリーブ40については、チャックを反転することなくストレートな孔を1回で穿設でき、中心軸がずれにくい点から、BTA法が適している。BTA法によってストレートな孔を穿設した後、孔の両側からチャッキング治具を挿入し、テーパ部を公知の方法によって形成する。
【0025】
工程(II):
陽極酸化アルミナの形成法としては、大面積化が可能であり、かつ簡便である点から、下記の工程(a)〜(f)を有する方法が好ましい。
(a)中空円柱状のアルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、外周面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)前記工程(b)の後、電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)前記工程(c)の後、細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)前記工程(d)と工程(e)を繰り返し行う工程。
【0026】
工程(a):
図3に示すように、アルミニウム基材64を陽極酸化すると、細孔66を有する酸化皮膜68が形成される。アルミニウムの純度は、99%以上であり、99.5%以上が好ましく、99.8%以上がより好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光線を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりする。電解液としては、シュウ酸、硫酸等が挙げられる。
【0027】
<シュウ酸を電解液として用いる場合>
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0028】
<硫酸を電解液として用いる場合>
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0029】
工程(b):
図3に示すように、酸化皮膜68を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点70にすることで細孔の規則性を向上することができる。
【0030】
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0031】
工程(c):
図3に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材64を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔66を有する酸化皮膜68が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0032】
工程(d):
図3に示すように、細孔66の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0033】
工程(e):
図3に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔66の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔66がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0034】
工程(f):
図3に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔66を有する陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))が形成され、外周面に微細凹凸構造を有するスリーブ40が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を転写して製造され光学フィルムの反射率低減効果は不充分である。
【0035】
細孔66の形状としては、略円錐形状、角錐形状等が挙げられる。
細孔66間の平均周期は、可視光線の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔66間の平均周期は、25nm以上が好ましい。
【0036】
細孔66の深さは、100〜500nmが好ましく、150〜400nmがより好ましい。細孔66のアスペクト比(細孔の深さ/細孔の開口部の幅)は、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。図3に示すような細孔66を転写して製造された光学フィルムの表面は、いわゆるモスアイ構造となる。
【0037】
スリーブ40の外周面は、被転写体との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物等が挙げられ、離型性に優れる点、スリーブ40との密着性に優れる点から、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物が好ましい。フッ素化合物の市販品としてはフルオロアルキルシラン、ダイキン工業社製の「オプツール」シリーズが挙げられる。
【0038】
(作用効果)
以上説明したロールスタンパ1にあっては、スリーブ40が、マンドレル10の先端側係止部22と基端側係止部24との間で挟持されているため、スリーブ40のがたつきが抑えられる。
また、スリーブ40の先端側テーパ部42とマンドレル10の先端側係止部22とが当接し、スリーブ40の基端側テーパ部44とマンドレル10の基端側係止部24とが当接しているため、スリーブ40とマンドレル10とのセンタリング性が良好である。
また、スリーブ40のテーパ部以外の内周壁とマンドレル10の外周壁との間の間隙が250μm以上であれば、スリーブ40のマンドレル10への装着性が良好となる。
【0039】
なお、本発明のロールスタンパは、図示例のロールスタンパ1に限定はされない。例えば、図示例では、基端側係止部24は、マンドレル本体部12と一体となって設けられているが、先端側係止部22と同様に、コレットと締付ナットとを組み合わせた着脱可能な係止部としてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
〔実施例1〕
円柱状のアルミニウム(純度99.99%)を切削加工して、図1に示すスリーブ40と同じ、中空円柱状のアルミニウム基材(長さ:1000mm、外周面50における外径:202mm、スリーブ中間部46の内径:156mm、テーパ部の軸方向長さ:29.44mm、テーパ面の角度α:30°)を作製した。
【0041】
ついで、アルミニウム基材を、0.3Mシュウ酸水溶液中で、浴温:16℃、直流:40Vの条件下で30分間陽極酸化を行い、酸化皮膜(厚さ:3μm)を形成した(工程(a))。形成された酸化皮膜を、6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸混合水溶液中で一旦溶解除去した(工程(b))後、再び工程(a)と同一条件下において、45秒間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した(工程(c))。
【0042】
その後、5質量%リン酸水溶液(32℃)中に8分間浸漬して、酸化皮膜の細孔を拡径する孔径拡大処理(工程(d))を施した。
さらに、工程(a)と同一条件下において、45秒間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した(工程(e))。
さらに工程(d)と工程(e)を繰り返し、工程(d)を合計で5回、工程(e)を合計で4回行った(工程(f))。アルミニウム基材の外周面に、周期:100nm、深さ:190nmの略円錐形状のテーパ状の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたスリーブ40を得た。
ついで、離型剤(ダイキン工業社製、オプツールDSX(商品名))の0.1質量%溶液にスリーブ40を10分間ディッピングし、24時間風乾して離型処理を行った。
【0043】
これとは別に、図1に示す、ステンレス鋼製のマンドレル10(長さ:1530mm、水路26の軸方向長さ:923.22mm)を作製した。なお、スリーブ40のテーパ部がない部分で、かつマンドレル本体部12の水路26がない部分(軸方向長さ:8.95mm)におけるスリーブ中間部46の内周壁とマンドレル本体部12の外周壁との間隙Cが280μmとなるように、マンドレル本体部12の外径は、スリーブ中間部46の内径より若干小さくされている。
【0044】
スリーブ40を、マンドレル10の先端側から基端側に向かって該マンドレル10の外周に装着したところ、スムーズに装着することができた。また、装着後のスリーブ40が、がたつくこともなく、センタリング性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のロールスタンパは、モスアイ構造と呼ばれる微細凹凸構造を表面に有する光学フィルムの製造に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 ロールスタンパ
10 マンドレル
22 先端側係止部
24 基端側係止部
40 スリーブ
42 先端側テーパ部
44 基端側テーパ部
50 外周面
64 アルミニウム基材
66 細孔
68 酸化皮膜(陽極酸化アルミナ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のマンドレルと、
該マンドレルの先端側から基端側に向かって該マンドレルの外周に着脱可能に装着される中空円柱状のスリーブとを有し、
該スリーブの外周面に形成された微細凹凸構造を被転写体に転写するロールスタンパであって、
前記スリーブの両端の開口部が、該スリーブの端面に向かって拡径するテーパ部とされ、
前記スリーブが、前記マンドレルの先端側に設けられ、前記スリーブのテーパ部と当接する先端側係止部と、前記マンドレルの基端側に設けられ、前記スリーブのテーパ部と当接する基端側係止部との間で挟持されたロールスタンパ。
【請求項2】
前記スリーブのテーパ部以外の内周壁と前記マンドレルの外周壁との間の間隙が、250μm以上である、請求項1記載のロールスタンパ。
【請求項3】
前記スリーブが、純度99%以上の高純度アルミニウムからなる中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたものである、請求項1または2に記載のロールスタンパ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−183753(P2011−183753A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53689(P2010−53689)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】