説明

ロールベンダ及びロール曲げ加工方法

【課題】小さな駆動力で曲げ加工が可能で曲げ品質に優れた多点式ロールベンダ及びそれを用いたロール曲げ加工方法の提供を目的とする。
【解決手段】曲げ加工する被加工材の、R曲げ外側に位置する外側ロールと、R曲げ内側に位置する内側ロールとを備え、前記外側ロールと内側ロールとが、それぞれ3つ以上有し、且つ、それぞれが回転駆動制御されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ形材等の被加工材にR曲げ加工するのに適するロールベンダに関し、特に従来の3点ロールベンダよりもロールの数が多い多点ロールベンダに係る。
【背景技術】
【0002】
直線状の被加工材の一の側面をセンターロールで支持しながら他の側面から前記センターロールの左右に配置した2つの曲げロールで押付けるようにR曲げ加工する、いわゆる3点式ロールベンダは公知である。
例えば、特許文献1にはセンターロールの左右に配置した各曲げロールを、角度調整シリンダの作動によってセンターロールを中心とする円周方向に移動可能にした3点式ロールベンダを開示する。
しかし、上記のような3点式ロールベンダでは被加工材の曲げ外側に亀裂が発生しやすく、また曲げ内側にしわが発生しやすい技術的課題があり、小さいRの曲げ加工が難しく曲げロールの押付力にも限界があることから被加工材の肉厚や断面形状が限定されていた。
また、3点ロール式では各ロールが被加工材の側面から片面拘束した状態になるために被加工材が異形断面の場合に、製品に曲げ方向に対するねじれが生じやすい問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−142775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、小さな駆動力で曲げ加工が可能で曲げ品質に優れた多点式ロールベンダ及びそれを用いたロール曲げ加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るロールベンダは、曲げ加工する被加工材の、R曲げ外側に位置する外側ロールと、R曲げ内側に位置する内側ロールとを備え、前記外側ロールと内側ロールとが、それぞれ3つ以上有し、且つ、それぞれが回転駆動制御されていることを特徴とする。
【0006】
ここで外側ロール及び内側ロールは、例えば一方向にR曲げ加工した場合に曲げ方向外側に位置するロールを便宜上外側ロールと称し、曲げ方向内側に位置するロールを便宜上内側ロールと表現したものであって、被加工材の曲げに対する一方の側面と他方の側面にそれぞれ3つ以上ロールが配置されている場合の全ての形態を含む。
このように被加工材の内、外に3つ以上のロールを配置したことにより各ロールに必要な回転駆動力及び押圧駆動力を分散することができ従来の3点式ロールベンダに比較して設備の小型化を図りつつ、大きな断面形状や厚い肉厚の製品の曲げ加工にも対応できる。
【0007】
本発明に係るロールベンダにおいては、前記外側ロールと内側ロールとが1つずつ概ね対向配置されているのがよく、さらには、前記外側ロールは、第1センターロールと、その左右に第1Lロールと第1Rロールとを有し、前記内側ロールは、第2センターロールと、その左右に第2Lロールと第2Rロールとを有し、少なくともセンターロールの左右に対向配置された第1,第2Lロールと第1,第2Rロールとが左右方向及び前後方向に移動制御されているのがよい。
このようにすると、被加工材を対向するロールで両側から拘束しながら曲げ加工することになるため、製品にねじれが生じにくく一方向曲げ加工のみならずS字状の曲げ加工も可能になる。
【0008】
本発明に係るロールベンダにおいては、さらに、曲げ加工する前に被加工材を予備加熱するための加熱装置を備えることにより小さな力で曲げ加工が可能になる。
【0009】
これにより本発明に係るロール曲げ加工方法は、曲げ加工する被加工材のR曲げ外側に位置する外側ロールと、R曲げ内側に位置する内側ロールとを備え、前記外側ロールは、第1センターロールとその左右に第1Lロールと第1Rロールとを有し、前記内側ロールは、第2センターロールと、その左右に第2Lロールと第2Rロールとを有し、前記3つの外側ロールと3つの内側ロールとを、それぞれ直線状に対向配置した状態で被加工材を投入し、第1センターロールと第2センターロールとで被加工材を挟持保持しつつ、第1,第2Lロールと第1,第2Rロールとが、それぞれ協働して曲げ内側方向及びセンターロール側方向に移動することでR曲げ加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るロールベンダにあっては、曲げ加工する被加工材の曲げ方向に対して両側の側面から、この被加工材を拘束しながらロールの回転駆動力と押圧力にて曲げ加工することになるため、製品にしわ、亀裂が生じにくく、ねじれの発生も抑えることができる。
これにより、駆動力の小さなロールベンダにて大きな断面形状や複雑な断面形状等の曲げ製品を生産することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るロールベンダの平面図を示す。
【図2】本発明に係るロールベンダの外観写視図を示す。
【図3】ロール部の拡大図を示す。
【図4】曲げ加工の流れを模式的に示す。
【図5】ロールのストッカー部分の側面図を示す。
【図6】ロールの保持機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るロールベンダにおいて6点式のロールベンダを例にして以下、図面に基づいて説明するが、これに限定されるものでなく6点を超える多点ロール式でもよく、ロールの配置方向も水平方向のみならず上下方向でもよい。
【0013】
ロールベンダは、図1及び図2に示すように外側ロールとして中央の第1センターロール11と、図1では、その左右に第1Lロール12と第1Rロール13とが第1センターロール11と所定の間隔を隔て配置されている。
内側ロールとして、中央の第2センターロール21と、その左右に第2Lロール22と第2Rロール23とか第2センターロール21と所定の間隔を隔て配置されている。
各ロールは、例えば、図2にロール回転駆動モーター13dとして示すように各ロール回転駆動モーター11d、12d、13d、21d、22d、23dにより、それぞれが単独又は連動して回転制御されている。
【0014】
本実施例では、第1センターロール11が固定式になっていて、これに対向配置した第2センターロール21が図2に示すようにロール支持部21cに支持され、第2センターモーター41の駆動によりボールネジ等を介して前後方向に移動可能になっている。
なお、本明細書では便宜上図1において、上下方向に移動することを前後方向の移動と表現し、これに対して水平方向に直交する方向の移動を左右方向と表現する。
【0015】
第1Lロール12と第1Rロール13とは、ロール支持部12c、13cに支持されながら第1前後モーター32の駆動により左右の第1前後レール32aに沿って前後移動制御されているとともに、第1左右モーター33の駆動により第1左右レール33aに沿って左右方向に移動制御されている。
本実施例においては、第1左右モーター33の駆動により第1Lロール12と第1Rロールとが相互に同速度で接近する方向の動きと、離間する方向の動きが制御された例になっているが個々に制御してもよい。
【0016】
内側ロールも外側ロールと同様に第2Lロール22と第2Rロール23とが第2前後モーター42と第2左右モーター43により前後方向及び左右方向に移動制御されている。
【0017】
本実施例においては、被加工材を加工前に予備加熱するためのヒーター50を備え、図2に示すようにワーク投入口50aに挿通する際に誘導コイルによる加熱が可能になっている。
ヒーター50は、ベース54に設けたレール53と回転可能に支持された制御部51によりハンドル52操作等により前後方向の移動及び回転可能になっている。
また、各種異形材の曲げ加工に対応できるように交換ロール14のストックヤード60を備えた例になっている。
ロールベンダの本体部とストックヤード60との間には、立枠74と横枠73とにて枠体を形成し、図5に示すようにチェンジャー70がシリンダー71とスライドレール72により前後、左右、上下方向に移動可能になっている。
チェンジャー70の下部には開閉自在のチャック爪70aを有し、図6に示すようにロールのチャック部14aをチャック保持できるようになっている。
各ロールは、ロールシャフト22eにキー22gを介して固定されていてシリンダー11a、12a、13a、21a、22a、23aにより前進後退可能な支持プレート11b、12b、13b、21b、22b、23bによってチャック保持されている。
【0018】
次に、曲げ加工の手順について説明する。
図4は、例としてL字断面のアルミ形材を曲げ加工する例を示す。
図4(a)に示すように外側ロール11、12、13を直線状になるように移動し、且つ、内側ロール21、22、23を直線状になるように移動した状態で矢印に示す方向に被加工材(ワーク)Wを投入する。
ワークWは、図4(a)の側面視に示すように、例えば、内側ロールのフランジ部等に支持されることで、水平方向に保持される。
また、断面肉厚が厚い等、曲げ難いワークの場合にはヒーター50も直線状にロールの配列に合せ、ワークをヒーター内に通過させ予備加熱した後にロール間に投入する。
次に、図4(b)に示すようにワークWを各ロールの回転により矢印の方向に移動させながら第1Lロール12と第2Lロール22とでワークの両側を拘束し、且つ、第1Rロール13と第2Rロール23でワークの両側を拘束しつつ、それぞれ、X、X方向に少し移動する。
この際に、左右のロールの間隔が狭くなる方向(Yと−Y)及び(Yと−Y)の方向にも移動制御する。
図4では(b)に示すようにワークが矢印の方向に沿って左側に予めプログラムに組まれた所定量移動すると今度は図4(c)に示すようにプログラミングにより自動的に矢印方向の右側に移動する際に各ロールはX方向とY及び−Y方向にさらに少し移動する。
このようにしてワークは自動制御されて所定の曲げ形状になるまで左右の水平方向に往復運動する。
これにより、所定の各種曲げ加工が自動的にできる。
【符号の説明】
【0019】
11 第1センターロール
12 第1Lロール
13 第1Rロール
21 第2センターロール
21c ロール支持部
21d ローラー駆動モーター
22 第2Lロール
22c ロール支持部
23 第2Rロール
23c ロール支持部
32 第1前後モーター
32a 第1前後レール
33 第1左右モーター
33a 第1左右レール
41 第2センターモーター
42 第2前後モーター
42a 第2前後レール
43 第2左右モーター
43a 第2左右レール
50 ヒーター
51 ヒーター制御部
60 ストッカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工する被加工材の、
R曲げ外側に位置する外側ロールと、
R曲げ内側に位置する内側ロールとを備え、
前記外側ロールと内側ロールとが、それぞれ3つ以上有し、且つ、それぞれが回転駆動制御されていることを特徴とするロールベンダ。
【請求項2】
前記外側ロールと内側ロールとが1つずつ概ね対向配置されていることを特徴とする請求項1記載のロールベンダ。
【請求項3】
前記外側ロールは、第1センターロールと、その左右に第1Lロールと第1Rロールとを有し、
前記内側ロールは、第2センターロールと、その左右に第2Lロールと第2Rロールとを有し、
少なくともセンターロールの左右に対向配置された第1,第2Lロールと第1,第2Rロールとが左右方向及び前後方向に移動制御されていることを特徴とする請求項2記載のロールベンタ。
【請求項4】
曲げ加工する前に被加工材を予備加熱するための加熱装置を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のロールベンタ。
【請求項5】
曲げ加工する被加工材のR曲げ外側に位置する外側ロールと、R曲げ内側に位置する内側ロールとを備え、
前記外側ロールは、第1センターロールとその左右に第1Lロールと第1Rロールとを有し、
前記内側ロールは、第2センターロールと、その左右に第2Lロールと第2Rロールとを有し、
前記3つの外側ロールと3つの内側ロールとを、それぞれ直線状に対向配置した状態で被加工材を投入し、第1センターロールと第2センターロールとで被加工材を挟持保持しつつ、第1,第2Lロールと第1,第2Rロールとが、それぞれ協働して曲げ内側方向及びセンターロール側方向に移動することでR曲げ加工することを特徴とするロール曲げ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200910(P2011−200910A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70721(P2010−70721)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(510083289)ショウコウアルミ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】