説明

ロール状ペーパー及びロール状紙製品

【課題】使用に際して、ミシン目がなくとも、あるいはハサミやカッターを使わなくても横方向に沿ってほぼ直線状に綺麗に引き裂くことが可能なロール状ペーパーを提供する。
【解決手段】 米坪が20〜65g/m2、乾燥引張強度の縦横比が1.0〜1.5、JIS P 8116に従う引裂強度が90gf以下であり、パルプ原料に対しポリアクリルアミド・エピクロルヒドリン樹脂が0.3〜0.45重量%含有され、ウエットクレープが施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用に際して、ロール状体を横方向に沿って引き裂いて所要面積のシートとして使用するロール状ペーパー及びロール状紙製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用として使用可能ではあるものの、業務用において、鮮度を保持するために肉や魚を包むあるいは肉や魚から出る体液いわゆるドリップを吸収するために、「食材紙」と呼ばれる分野のロール状ペーパーが知られ、ほんの一部のメーカーによって市販されており、使用に際して、ミシン目がなくとも、あるいはハサミやカッターを使わなくても横方向に沿ってほぼ直線状に綺麗に引き裂くことが要求されている。
この種の食材紙においては、たとえばドリップを速やかにかつ余裕のある吸収量をもった吸収特性を示す必要があるほか、主に肉や魚を対象とするために、ドリップによる食材紙の破れなどを防止する観点から、湿潤強度が高いことが要求される。
ところが、吸収特性を向上させるために、嵩高にすることが考えられるが、これを追求すると湿潤強度が低くなる傾向にあることから、吸収特性と高い湿潤強度とは相反するものであり、その改良が望まれている。しかも、その相反に加えて、前述のように、横方向に沿ってほぼ直線状に綺麗に引き裂くことが要求されることが解決手段をより一層難しくしている。
【特許文献1】特開2002−345678号公報
【特許文献2】特開平6−54777号公報
【特許文献3】特開2002−238799号公報
【特許文献4】特開2002−345676号公報
【特許文献5】特開2006−320625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、使用に際して、ミシン目がなくとも、あるいはハサミやカッターを使わなくても横方向に沿ってほぼ直線状に綺麗に引き裂くことが可能なロール状ペーパー及びロール状紙製品を提供することにある。他の課題は、吸収特性に優れると共に高い湿潤強度を示すものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
米坪が20〜65g/m2、乾燥引張強度(JIS P 8113に規定される)の縦横比が1.0〜1.5、JIS P 8116に従う横方向の引裂強度が90gf以下であり、
パルプ原料に対しポリアクリルアミド・エピクロルヒドリン樹脂が0.3〜0.45重量%含有され、ウエットクレープが施されていることを特徴とするロール状ペーパー。
【0005】
(作用効果)
本発明は、乾燥引張強度の縦横比(縦方向/横方向)を1.0〜1.5とし、縦裂けの発生を低減して、より直線状に近い引き裂きを可能とした。また、(横方向)引裂強度を90gf以下として低いものとした。さらに、所要の吸収量を確保するために、米坪を20〜65g/m2とした。
他方、前述のように食材、特に肉や魚を対象とするためには、ドリップによる破れなどを防止する観点から、湿潤強度が高いことが要求される。そこで、湿潤紙力増強剤を添加して湿潤強度を高めることが考えられるが、従来は湿潤紙力増強剤の添加によって、特に吸収速度が低下し、パルプ繊維間に十分に浸透せず、ドリップの吸収量が低いことが知見された。
これに対し、本発明に従って、ウエットクレープを施すことにより、ペーパーを嵩高にしてドリップの吸収速度及び吸収量を高めて吸収特性を向上させた結果、湿潤紙力増強剤の添加量を増やしても、吸収特性の低下がないまたは少ないことにより、湿潤強度を高めることができることを知見し、前述の相反する特性の両者を一挙に改善したものである。さらに、ウエットクレープ処理は、横方向の引裂特性にも少なからず影響し、本発明の利点を顕在化させている。なお、特許文献5のシート及び従来の食材紙はドライクレープ加工によるものである。
【0006】
<請求項2記載の発明>
密度が0.21g/cm3以下、湿潤引張強度(横)が1000〜1400CN、吸水量が200g/m2以上である請求項1記載のロール状ペーパー。
【0007】
(作用効果)
密度が低く嵩高であるために、ウエットクレープ処理との相乗で吸収量が高いものとなり、しかも、必要な湿潤引張強度(横)の値を得ることができる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
ロール状ペーパーが横方向に沿って引き裂いて使用するロール状製品とされている請求項1または2項に記載のロール状紙製品。
【0009】
(作用効果)
本発明の効果は、ロール状製品である場合に顕在化する。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり本発明によれば、使用に際して、ミシン目がなくとも、あるいはハサミやカッターを使わなくても横方向に沿ってほぼ直線状に綺麗に引き裂くことが可能なロール状ペーパー及びロール状紙製品となる。また、吸収特性に優れると共に高い湿潤強度を示すものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳説する。
本発明のロール状ペーパーは、パルプ繊維を紙料として製造することができる。パルプ繊維としては限定されないが、LBKPやNBKPなどを使用できる。
本発明は、坪量が20〜65g/m2のロール状ペーパー全般を対象とするが、坪量が30〜60g/m2の厚手のものが好ましく、特に坪量が35〜50g/m2のものが好ましい。
【0012】
本発明のロール状ペーパーでは、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度の縦横比が1.0〜1.5とされる。この縦横比は、ワイヤーパートにおけるジェットワイヤー比等、各種抄造条件の変更により調整できる他、特に吸引脱水式円網抄紙機を用いる場合における抄造条件の調整によって達成できる。たとえば、特許文献5に記載の抄造条件を採用できる。乾燥引張強度の縦横比(縦方向/横方向)を低く抑えることで、縦裂けの発生が低減し、より直線状に近い引裂が可能となる。
また、本発明のロール状ペーパーでは、JIS P 8113に規定される引張破断伸び(縦方向)が15〜25%とすることができる。引張破断伸びは、クレープ加工の程度(所謂クレープ率)により調整することができる。引張破断伸びを低く抑えることにより、紙に加わる引裂力の方向が紙の伸びにより不規則に変化するのを防止し、縦や斜め方向への裂けの発生を低減することができる。しかるに、この伸びの値は、特許文献5のものが教示する値より大きい。これは、先にも触れたように吸収特性を高めるために大きくし、その反対に主に抄造条件の変更により引き裂き性を良好にしたものである。
より好ましい形態では、本発明のロール状ペーパーは、JIS P 8116に規定される横方向の引裂強度が90gf以下、特に85gf以下とされる。また、引裂センターからのずれが20mm下であることが好ましい。なお、引裂センターからのずれは、JIS P 8116で規定される引裂強度測定時に、引裂始めの部分から引裂く方向と逆方向に引裂いた切れ目が何mmずれたかで測定する。横方向の引裂強度は、パルプの配合、叩解度(フリーネス)、引張破断伸び等を変更することにより調整できる。横方向の引裂強度が90gf以下であると、引裂きに要する力が適切となるだけでなく、不要な力が不要な方向に作用し難くなり、より綺麗に引裂くことができるようになる。逆に、90gfを越えると、引裂きに要する力が過度となるばかりか、引裂きの方向性において抑止し難いものとなる。
【0013】
本発明のロール状ペーパーは、図1に示すように、ロール状ペーパーSをロール状にしてなり、横方向に沿って引き裂いて使用するロール状製品R、特にロール状のペーパー(たとえば食材紙)に好適である。このような製品では複数枚のロール状ペーパーを重ねて1シートとして使用する形態があるが、このような形態では本明細書で述べる乾燥・湿潤引張強度、引張破断伸び、引裂強度等の試験値は複数枚重ねたシート状態における値を意味するものである。
本発明は、ロール状ペーパーに限定されるものではないが、例えば35〜50g/m2程度のロール状ペーパーとする場合、湿潤引張強度(JIS P 8135)は横方向が1000〜1400CN、吸水量は200g/m2以上であるのが好ましく、乾燥引張強度(JIS P 8113)は上記本発明の縦横比を満たす範囲内で、横方向が2100〜2800CNであるのが好ましい。
なお、吸水量とは次の方法で測定されるものである。100mm×100mmの試験片を、針金でできた縦横20mm間隔でできた網の上に載せたまま水に浸し、シート片全体が浸った後、垂直に網を持ち上げ、そこから30秒間自然に水を切った後のシート重量から水に浸す前のシート重量を差し引いて、吸収した水を算出し、g/m2の単位であらわす。
【0014】
他方、本発明では、パルプ原料に対しポリアクリルアミド・エピクロルヒドリン樹脂が0.3〜0.45重量%含有され、ウエットクレープが施されているものである。
ポリアクリルアミド・エピクロルヒドリン樹脂が少ない場合は湿潤強度が不十分であり、他方で過度の添加量では吸水特性の低下となる。
また、本発明では、従来品のようにドライクレープでなく、ウエットクレープ処理のよって得る。クレープ率としては、10〜20%が望ましい。さらに望ましくは14〜17%がよい。10%未満であると、シート表面がほぼ平滑になるため、表面積が小さくなり、吸水特性が小さくなる。逆に、20%を越えると、嵩高になるため、吸水特性は向上するものの、使用に際して引裂くとき、引裂きに要する力が横方向へは伝わる一方で、紙厚方向全体に均一に伝わりにくく、引裂いた切り口が、紙厚方向で部分的に層状に剥離したようになる恐れがある。
【実施例】
【0015】
以下に、実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
(実験1)
特許文献5の図2に示すフォーマーを用い、広葉樹パルプを95重量%、針葉樹パルプ5%のパルプを使用し、ジェットワイヤー比、フリーネスなどの抄造条件を変化させながら、抄紙を行うとともに、ウエットクレープ処理を行い、幅600mm、長さ100mのロール状ペーパーを得た。
また、湿潤紙力増強剤の種類及び添加量を変化させ、市販品との比較も行った。
また、表1に示すように、各種の製造条件で各種試験性能を有するロール状ペーパーについて、横方向に引裂いた。そして引裂き特性を、◎…非常に良い、○…良い、×…悪い、の三段階で評価した。また引裂いた縁を観察し、縁の乱れ具合を「特に綺麗」、「綺麗」、「若干乱れる」、「乱れ大」の四段階で評価した。評価結果は表1に示されるとおりであり、本発明に係る実施例1〜5は、比較例1〜6と比べて著しく綺麗に引裂くことが可能であった。また、高い吸水量と高い湿潤引張強度を示すものであることが判った。
【0016】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ロール状製品の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米坪が20〜65g/m2、乾燥引張強度の縦横比が1.0〜1.5、JIS P 8116に従う横方向の引裂強度が90gf以下であり、パルプ原料に対しポリアクリルアミド・エピクロルヒドリン樹脂が0.3〜0.45重量%含有され、ウエットクレープが施されていることを特徴とするロール状ペーパー。
【請求項2】
密度が0.21g/cm3以下、湿潤引張強度(横)が1000〜1400CN、吸水量が200g/m2以上である請求項1記載のロール状ペーパー。
【請求項3】
ロール状ペーパーが横方向に沿って引き裂いて使用するロール状製品とされている請求項1または2項に記載のロール状紙製品。

【図1】
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【公開番号】特開2008−214787(P2008−214787A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50831(P2007−50831)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】