説明

ロール状構造体

【課題】専門メーカー以外でも簡単に交換することが可能な弾性材質の表層を有するロール状構造体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】固定軸と、前記固定軸の周囲に配されるロールと、前記ロールの外周面上に、着脱可能な固定具によりシート状弾性体を固定して形成される弾性体層と、を備え、前記固定具による固定箇所の露出部が、前記シート状弾性体と同材質でかつ前記弾性体層表面と平坦であることを特徴とするロール状構造体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状構造体に関し、より詳しくは、表層が弾性材質で構成されているロール状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
表層がゴム等の弾性材質で構成されているロール状構造体は、エキスパンダロール、搬送ロール、巻芯ロール等として広く用いられているが、弾性材質の表層は、磨耗等により劣化し易く、定期的な交換が必要である。
【0003】
しかしながら、従来のロール状構造体において、上記表層の交換は、ロール専用の加工設備を用いて劣化した表層を削り落した上でロール表面に新しい表層を形成もしくは取り付けるという専門の設備と技術を要する作業であるため、基本的にはそのような交換作業を行いうる専門メーカーに依頼せざるをえず、それゆえ、表層交換が完了するまでには数週間を要していた。
【0004】
特許文献1には、表層が弾性材質ではなく金属であるロール状構造体が開示されており、また、表層を、磨耗し難い金属とすることで表層交換の手間が省けるといった記載も開示されている。しかし、表層が金属のロール状構造体は、金属連結部に隙間ができやすいという問題点がある。
【特許文献1】特開2003−341892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を鑑みて、本発明は、専門メーカー以外でも簡単に交換することが可能な弾性材質の表層を有するロール状構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、シート状弾性体でロール表面を覆い、ロールとシート状弾性体を着脱可能な固定具により固定することで、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下、(1)〜(5)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0008】
(1)固定軸と、前記固定軸の周囲に配されるロールと、前記ロールの外周面上に、着脱可能な固定具によりシート状弾性体を固定して形成される弾性体層と、を備え、前記固定具による固定箇所の露出部が、前記シート状弾性体と同材質でかつ前記弾性体層表面と平坦であることを特徴とするロール状構造体。
【0009】
(2)前記固定具がネジであり、かつ前記ロールおよび前記シート状弾性体にネジ穴が設けられていることを特徴とする上記(1)に記載のロール状構造体。
【0010】
(3)前記固定具による固定箇所の露出部が、前記シート状弾性体と同材質の栓状体によって前記弾性体層表面と平坦化されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のロール状構造体。
【0011】
(4)前記シート状弾性体の両端がはめ合わせ構造により連結されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のロール状構造体。
【0012】
(5)少なくとも前記連結部に前記固定具による固定箇所が存在することを特徴とする上記(4)に記載のロール状構造体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、専門メーカーに依頼することなく、ロールの弾性材質表層を簡単に交換することができるため、交換時間、費用を大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のロール状構造体の一実施形態について図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
図1には、固定軸1と、当該固定軸1の周囲に一体化して配置されたロール(筒状体)2と、着脱可能な固定具4により、図3に示すようなシート状弾性体3’をロール2の外周面上に固定して形成された弾性体層3と、を備えた本発明のロール状構造体10を示す。なお、図1における着脱可能な固定具4はネジであり、また、固定具4により固定された箇所(16箇所)の露出部5については、シート状弾性体3’固定後におけるネジ頭頂部上方にできるネジ穴の窪みを、図4に示すようなシート状弾性体と同材質の栓状体7で埋めて、弾性体層3表面と平坦にしている。
【0016】
図2は、図1において、ロール2の外周面上にシート状弾性体3’を固定する前のロール状構造体20を示す図である。当該ロール2には、予め複数のネジ穴6(図2では幅方向等間隔4箇所×回転方向等間隔4箇所=16箇所)が形成されており、これらは、図3に示すシート状弾性体3’を巻きつけたときに、当該シート状弾性体3’に形成された複数のネジ穴6’の数と位置にそれぞれ対応する。
【0017】
また、本発明のロール状構造体において、シート状弾性体の両端は、図1や図3に示すように、はめ合わせ構造により連結されていることが好ましい。シート状弾性体の両端をはめ合わせ構造とすることで、弾性体層の、連結部における層厚とその他の部分の層厚とを容易に揃えて連結させることが可能となる。また、はめ合わせ構造の形状は、弾性体層の、連結部における層厚と他の部分の層厚とが揃うような構造であれば、特に限定されない。図3では、長さ方向の両端部の厚さが他の部分の厚さの半分になっており、当該両端部が連結する(重なる)ことで、他の部分の厚さと同じになる。
【0018】
また、本発明のロール状構造体の使用時における回転方向がBの場合には、連結部を図1の(b)に示すように重ね合わせ、Aの場合、図1(b)と逆に重ね合せることが好ましい。
【0019】
また、本発明のロール状構造体においては、上記固定具による固定箇所が少なくとも上記連結部に存在することが好ましい。図1では、連結部における固定箇所(4箇所)を含め16箇所においてシート状弾性体が固定されている。また、連結部において固定するためには、シート状弾性体をロールに巻きつけて連結させた時に、当該連結部において重なって1つのネジ穴となるような仮のネジ穴をはめ合わせ構造に予め形成しておく必要がある(図3におけるシート状弾性体の長さ方向両端に形成されているネジ穴が仮のネジ穴であり、その穴深さは他の半分)。
【0020】
本発明において用いるシート状弾性体は、特に限定されないが、通常、ゴム組成物からなるものであり、その厚み、形状、大きさ、組成などは、図2に示すようなロール状構造体の形状や大きさ、用途などに合わせて適宜決定すればよい。また、固定箇所の位置や数は、特に限定されず、ロール状構造体使用時にシート状弾性体が外れてしまうなどの不具合が生じないよう、また、表層交換時に手間がかかり過ぎないように適宜決定すればよい。
【0021】
また、本発明のロール状構造体における弾性体層が劣化した場合には、着脱可能な固定具(図1ではネジと栓状体)を取り外した後に、これを除去し、その後、新たなシート状弾性体を、着脱可能な固定具でロール外周面に固定することで、容易に表層交換が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のロール状構造体の一実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は当該(a)のI−I面におけるの断面拡大図である。
【図2】シート状弾性体を取り付ける前のロール状構造体の一実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は当該(a)のII−II面におけるの断面拡大図である。
【図3】本発明に用いるシート状弾性体の一実施形態を示す図であり、(a)はシート状弾性体を幅方向から見た側面図、(b)は上面図、(c)は、当該(b)のIII−III面における断面図である。
【図4】弾性体層の固定箇所に生じうる窪みを埋めて、その露出部を平坦にするための栓状体の一実施形態を示す上面図と側面図。
【符号の説明】
【0023】
1 固定軸
2 ロール
3 弾性体層
3’ シート状弾性体
4 着脱可能な固定具(ネジ)
5 固定箇所の露出部
6、6’ ネジ穴
7 栓状体
10 ロール状構造体
20 ロール状構造体(弾性体層なし)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸と、前記固定軸の周囲に配されるロールと、前記ロールの外周面上に、着脱可能な固定具によりシート状弾性体を固定して形成される弾性体層と、を備え、前記固定具による固定箇所の露出部が、前記シート状弾性体と同材質でかつ前記弾性体層表面と平坦であることを特徴とするロール状構造体。
【請求項2】
前記固定具がネジであり、かつ前記ロールおよび前記シート状弾性体にネジ穴が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロール状構造体。
【請求項3】
前記固定具による固定箇所の露出部が、前記シート状弾性体と同材質の栓状体によって前記弾性体層表面と平坦化されていることを特徴とする請求項1または2に記載のロール状構造体。
【請求項4】
前記シート状弾性体の両端がはめ合わせ構造により連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のロール状構造体。
【請求項5】
少なくとも前記連結部に前記固定具による固定箇所が存在することを特徴とする請求項4に記載のロール状構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−254152(P2007−254152A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267397(P2006−267397)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】