説明

ワイパーアーム

【課題】ワイパー作動を正常に保つことができるとともに、ワイパー作動時に、耳障りな擦れ音が発生しないワイパーアームを提供する。
【解決手段】車両2の駆動軸にアームヘッド11の基端側が軸支され、アームヘッド11の先端寄りにリテーナ12が起倒可能に軸支され、アームヘッド11の先端にスプリングガイド7が回動可能に軸支され、スプリングガイド7の先端寄りのリテーナ12の基部にリィンフォース9が配置され、スプリングガイド7の基端寄りとリィンフォース9の先端間に圧縮コイルスプリング14が架設されたワイパーアーム1において、リィンフォース9の壁部91と圧縮コイルスプリング14との間に、圧縮コイルスプリング14を保持する圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15が設けられた構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントウインドウガラスなどを払拭するワイパーブレードを、先端のフック部に着脱可能なワイパーアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイパーアームは、車両のフロントウインドウガラスを払拭したり、サマー用やウインター用などの季節に合わせた性能を有するワイパーブレードに交換したりするのを容易とするため、アームヘッドの先端寄りにリテーナ及びアームピースが起倒可能とされている。
【0003】
このようなワイパーアームとしては、アームヘッドの先端にスプリングガイドが回動可能に軸支され、このスプリングガイドの先端寄りのリテーナの基部にリィンフォースが配置され、これらの間に圧縮コイルスプリングが架設された構成のものが、製造が容易であり、意匠的外観に優れるなどの利点から多く実施されている(例えば特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−211365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした従来のワイパーアームでは、リテーナ及びアームピースの起倒を繰り返し行っているうちに、圧縮コイルスプリングがスプリングガイドに対して位置ズレを生じてしまう。
【0006】
そのため、圧縮コイルスプリングの付勢力の大きさや方向性に狂いが生じ、ワイパーアームによる押圧力が設定通りとならず、ワイパー作動を正常に保てなくなる可能性があるという問題があった。
【0007】
また、ワイパー作動時に、圧縮コイルスプリングとスプリングガイド及びスプリングガイド先端とリィンフォースの貫通用の孔がそれぞれ干渉しやすくなり、耳障りな擦れ音が発生するようになり、車両のドライバーや同乗者などへ不快感を与えてしまうという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、ワイパー作動を正常に保つことができるとともに、ワイパー作動時に、耳障りな擦れ音が発生しないワイパーアームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のワイパーアームは、駆動軸にアームヘッドの基端側が軸支され、該アームヘッドの先端寄りにリテーナが起倒可能に軸支され、前記アームヘッドの先端にスプリングガイドが回動可能に軸支され、該スプリングガイドの先端寄りの前記リテーナの基部にリィンフォースが配置され、前記スプリングガイドの基端寄りと前記リィンフォースの先端間に圧縮コイルスプリングが架設されたワイパーアームにおいて、前記リィンフォースと前記圧縮コイルスプリングとの間に、該圧縮コイルスプリングを保持する圧縮コイルスプリング保持用のホルダが設けられていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記圧縮コイルスプリング保持用のホルダの周囲には、前記圧縮コイルスプリングの先端部の外周面を固定する位置ズレ防止用の固定片が形成されているとよい。
【0011】
また、前記圧縮コイルスプリング保持用のホルダの略中央部には、前記スプリングガイドが貫通可能な大きさの貫通孔が設けられているとともに、該貫通孔から延びて、前記リィンフォースの先端に設けられた前記スプリングガイドの貫通用の孔に係止される係止片が形成されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明のワイパーアームは、駆動軸にアームヘッドの基端側が軸支され、アームヘッドの先端寄りにリテーナが起倒可能に軸支され、アームヘッドの先端にスプリングガイドが回動可能に軸支され、スプリングガイドの先端寄りのリテーナの基部にリィンフォースが配置され、スプリングガイドの基端寄りとリィンフォースの先端間に圧縮コイルスプリングが架設されたワイパーアームである。
【0013】
そして、リィンフォースと圧縮コイルスプリングとの間に、圧縮コイルスプリングを保持する圧縮コイルスプリング保持用のホルダが設けられた構成である。
【0014】
こうした構成なので、圧縮コイルスプリング保持用のホルダにより、圧縮コイルスプリングのスプリングガイドに対する位置ズレが防止されるため、圧縮コイルスプリングの付勢力の大きさや方向性に狂いが生じず、ワイパーアームによる押圧力が設定通りとなり、ワイパー作動を正常に保つことができる。
【0015】
そのうえ、ワイパー作動時に、圧縮コイルスプリングとスプリングガイド及びスプリングガイド先端とリィンフォースの貫通用の孔がそれぞれ干渉して、耳障りな擦れ音が発生することがなく、車両のドライバーや同乗者などへ不快感を与えないで済む。
【0016】
ここで、圧縮コイルスプリング保持用のホルダの周囲には、圧縮コイルスプリングの先端部の外周面を固定する位置ズレ防止用の固定片が形成されている場合は、簡易且つ安価に圧縮コイルスプリングの位置ズレを防止する構造を実現することができる。
【0017】
また、圧縮コイルスプリング保持用のホルダの略中央部には、スプリングガイドが貫通可能な大きさの貫通孔が設けられているとともに、貫通孔から延びて、リィンフォースの先端に設けられたスプリングガイドの貫通用の孔に係止される係止片が形成されている場合は、簡易且つ安価にリィンフォースの先端に圧縮コイルスプリング保持用のホルダを固定する構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例のワイパーアームを備えた車両の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施例のワイパーアームの概略構成を示す要部を一部破断した側面図である。
【図3】実施例のワイパーアームの概略構成を示す底面図である。
【図4】図2のワイパーアームにおける要部の部分拡大図である。
【図5】(a)は、実施例の圧縮コイルスプリング保持用のホルダの正面図であり、(b)は、(a)におけるA−A線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
本実施例のワイパーアーム1は、図1に示したように、後端部にあるアームヘッド11の基端側の固定孔11aが、車両2の駆動軸(図示せず)に軸支され、リテーナ12を介して、アームピース13の先端のU字形のフック部13aへワイパーブレード3が取付け具31を介して着脱可能に設置されている(図2及び図3も参照)。
【0021】
そして、図示省略のワイパーモータにより、ワイパーアーム1を矢印で示した方向に往復動させて、ワイパーブレード3でフロントウインドウガラス4の払拭面4aを払拭し、非作動時には、フロントウインドウガラス4の下辺縁部に停止状態で待機させておくものである。
【0022】
本実施例のワイパーアーム1は、図2及び図3に示したように、アームヘッド11と、アームヘッド11の先端寄りにリベット5により軸支された断面略C字形状のリテーナ12と、リテーナ12の先端側の挟持片12a,12aにより挟持されリベット6により固定された先端にU字形のフック部13aを有するアームピース13とから主に構成されている。
【0023】
そして、図4に示したように、スプリングガイド7が、アームヘッド11の先端にローラーピン8により回転可能に軸支され、リテーナ12の基部にリィンフォース9がリベット10,10により固定して配置されている。
【0024】
また、スプリングガイド7の基端寄りに形成された凸部71,71とリィンフォース9の先端に形成された壁部91との間に、圧縮コイルスプリング14が架設されている。
【0025】
さらに、リィンフォース9と圧縮コイルスプリング14との間には、圧縮コイルスプリング14を保持する圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15が設けられている。
【0026】
ここで、圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15は、ステンレスなどの高い強度及び耐久性を有するうえに加工し易い材料から成り、図5(a)、(b)に示したように、厚さが約0.2mmの薄い円板状のホルダ本体15Aの周囲に、圧縮コイルスプリング14のホルダ本体15Aと接する側の端部近傍の外周面を固定する4つの位置ズレ防止用の固定片15a,・・・が折り曲げ加工により形成されている。
【0027】
但し、この位置ズレ防止用の固定片15aの数は、4つに限定されず、圧縮コイルスプリング14のホルダ本体15Aと接する側の端部近傍の外周面を固定することができる数だけ形成して実施すればよい。
【0028】
また、圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15は、ホルダ本体15Aの略中央部に、スプリングガイド7が貫通可能な大きさの貫通孔15bが設けられている。
【0029】
さらに、スプリングガイド7と、リィンフォース9の壁部91に設けられたスプリングガイド7の貫通用の孔91aとの間には、遊びとしての隙間が設けられているので、ホルダ本体15Aには、貫通孔15bから延びて、リィンフォース9の壁部91に設けられたスプリングガイド7の貫通用の孔91aに係止される4つの係止片15c,・・・が折り曲げ加工により形成されている。
【0030】
但し、この係止片15cの数は、4つに限定されず、リィンフォース9の壁部91に設けられたスプリングガイド7の貫通用の孔91aに係止できる数だけ形成して実施すればよい。
【0031】
なお、貫通孔15bは、係止片15c,・・・間に、略円弧状の部分をそれぞれ設けて形成したが、これらの略円弧状の部分は、係止片15c,・・・の折り曲げ加工の際に歪みを生じさせないためのものである。
【0032】
また、このワイパーアーム1は、図3に示した内部が剥き出しになった部分が車両2のフロントウインドウガラス4の払拭面4a側へ向くように装着される。
【0033】
そして、リテーナ12及びアームピース13は、図2に実線と仮想線とで示したように、リベット5を軸として、アームヘッド11の先端寄りでフロントウインドウガラス4の払拭面4aと払拭面4aから離れる略直角方向との間で、起倒可能とされている。
【0034】
こうして、リテーナ12及びアームピース13を起こしているときは、車両2のフロントウインドウガラス4の払拭面4aを払拭したり、サマー用やウインター用などの季節に合わせた性能を有するワイパーブレード3に交換したりすることが容易に行える。
【0035】
これに対し、リテーナ12及びアームピース13を倒しているときは、ワイパーブレード3のブレードラバー(図示せず)が、適切な押圧力で車両2のフロントウインドウガラス4の払拭面4aに押し付けられる。
【0036】
次に、本実施例のワイパーアーム1の作用効果について説明する。
【0037】
このような本実施例のワイパーアーム1は、車両2の駆動軸にアームヘッド11の基端側の固定孔11aが軸支され、アームヘッド11の先端寄りにリテーナ12が起倒可能に軸支され、アームヘッド11の先端にスプリングガイド7が回動可能に軸支され、スプリングガイド7の先端寄りのリテーナ12の基部にリィンフォース9が配置され、スプリングガイド7の基端寄りとリィンフォース9の先端間に圧縮コイルスプリング14が架設されたワイパーアームである。
【0038】
そして、リィンフォース9の壁部91と圧縮コイルスプリング14との間に、圧縮コイルスプリング14を保持する圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15が設けられた構成である。
【0039】
こうした構成なので、圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15により、圧縮コイルスプリング14のスプリングガイド7に対する位置ズレが防止されるため、圧縮コイルスプリング14の付勢力の大きさや方向性に狂いが生じず、ワイパーアーム1による押圧力が設定通りとなり、ワイパー作動を正常に保つことができる。
【0040】
そのうえ、ワイパー作動時に、圧縮コイルスプリング14とスプリングガイド7及びスプリングガイド7先端とリィンフォース9の壁部91のスプリングガイド7の貫通用の孔91aがそれぞれ干渉して、耳障りな擦れ音が発生することがなく、車両2のドライバーや同乗者などへ不快感を与えないで済む。
【0041】
ここで、圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15のホルダ本体15Aの周囲には、圧縮コイルスプリング14の先端部の外周面を固定する位置ズレ防止用の固定片15a,・・・が形成されているので、簡易且つ安価に、圧縮コイルスプリング14の位置ズレを防止する構造を実現することができる。
【0042】
また、圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15のホルダ本体15Aの略中央部には、スプリングガイド7が貫通可能な大きさの貫通孔15bが設けられているとともに、貫通孔15bから延びて、リィンフォース9の先端の壁部91に設けられたスプリングガイド7の貫通用の孔91aに係止される係止片15c,・・・が形成されているので、簡易且つ安価に、リィンフォース9の先端の壁部91に圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15を固定する構造を実現することができる。
【0043】
さらに、圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15は、厚さが約0.2mmと大変薄いものであるので、ワイパーアーム1の他の部材は一切設計変更せずに、上記した作用効果を奏することができ、経済的に実施することができる。
【0044】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0045】
例えば、上記した実施例では、リィンフォース9と圧縮コイルスプリング保持用のホルダ15とを個別の部材として実施したが、これに限定されず、両者を一体化して実施してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ワイパーアーム
11 アームヘッド
12 リテーナ
13 アームピース
2 車両
3 ワイパーブレード
7 スプリングガイド
9 リィンフォース
91 壁部
91a スプリングガイドの貫通用の孔
14 圧縮コイルスプリング
15 圧縮コイルスプリング保持用のホルダ
15A ホルダ本体
15a 位置ズレ防止用の固定片
15b 貫通孔
15c 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸にアームヘッドの基端側が軸支され、該アームヘッドの先端寄りにリテーナが起倒可能に軸支され、前記アームヘッドの先端にスプリングガイドが回動可能に軸支され、該スプリングガイドの先端寄りの前記リテーナの基部にリィンフォースが配置され、前記スプリングガイドの基端寄りと前記リィンフォースの先端間に圧縮コイルスプリングが架設されたワイパーアームにおいて、
前記リィンフォースと前記圧縮コイルスプリングとの間に、該圧縮コイルスプリングを保持する圧縮コイルスプリング保持用のホルダが設けられていることを特徴とするワイパーアーム。
【請求項2】
前記圧縮コイルスプリング保持用のホルダの周囲には、前記圧縮コイルスプリングの先端部の外周面を固定する位置ズレ防止用の固定片が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイパーアーム。
【請求項3】
前記圧縮コイルスプリング保持用のホルダの略中央部には、前記スプリングガイドが貫通可能な大きさの貫通孔が設けられているとともに、該貫通孔から延びて、前記リィンフォースの先端に設けられた前記スプリングガイドの貫通用の孔に係止される係止片が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイパーアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−195143(P2010−195143A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40908(P2009−40908)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】