説明

ワイパ制御装置

【課題】ワイパの駆動を適切に制御するワイパ制御装置を提供する。
【解決手段】ワイパ制御装置では、車両が走行中であると判断された場合(S105:YES)、出力信号の検出に係る検出閾値を第1の閾値K1とし、水滴相当値が第1の閾値K1を超えてからウィンドシールド10に水滴が付着したと判定するまでの判定待機時間を第1の時間T1とする(S106)。また、車両が走行中でないと判断された場合(S105:NO)、出力信号の検出に係る検出閾値を第1の閾値K1より大きい第2の閾値K2とし、水滴相当値が第2の閾値K2を超えてからウィンドシールド10に水滴が付着したと判定するまでの判定待機時間を第1の時間T1以下である第2の時間T2とする(S107)。これにより、インナーミラー21の操作等の水滴以外の要因によるワイパ8の誤作動を抑制することができ、ワイパ8の駆動を適切に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパの駆動を制御するワイパ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のウィンドシールドに付着した水滴を検出する水滴検出部を備え、水滴検出部から出力される出力信号に基づき、ウィンドシールドを払拭するワイパの駆動を制御するワイパ制御装置が公知である。ところで、例えば水滴以外の物体がウィンドシールドに付着した場合等、水滴以外の要因の影響を受け、水滴が付着した場合と同様の出力信号が出力されることにより、水滴が付着していないにも関わらず水滴が付着したと誤判定され、ワイパが誤作動してしまう虞がある。そこで、特許文献1では、水滴検出に係る検出感度を低くすることにより、水滴以外の要因の影響によるワイパの誤作動を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−270361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように水滴検出に係る検出感度を低くしてしまうと、降雨開始時や小雨時などにおいて、ワイパが駆動しなかったり、ワイパの駆動が遅れたりする虞がある。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイパの駆動を適切に制御するワイパ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のワイパ制御装置は、ワイパと、ワイパ駆動部と、水滴検出部と、水滴付着判定手段と、駆動制御手段と、走行判断手段と、走行中レベル決定手段と、停止中レベル決定手段と、を備える。ワイパは、車両のウィンドシールドに付着した水滴を払拭する。ワイパ駆動部は、ワイパを駆動する。水滴検出部は、ウィンドシールドに付着した水滴に応じた出力信号を出力する。水滴付着判定手段は、出力信号の検出が継続されている状態で判定待機時間が経過した場合、ウィンドシールドに水滴が付着したと判定する。駆動制御手段は、水滴付着判定手段によりウィンドシールドに水滴が付着したと判定された場合、ワイパを駆動するようにワイパ駆動部を制御する。走行判断手段は、車両が走行中か否かを判断する。走行中レベル決定手段は、走行判断手段により車両が走行中であると判断された場合、出力信号の検出に係る感度を第1の感度とする。停止中レベル決定手段は、走行判断手段により車両が走行中でないと判断された場合、出力信号の検出に係る感度を第1の感度より低い第2の感度とする。
【0006】
水滴検出部にて水滴と誤判定される虞のある水滴以外の要因として、例えばインナーミラーの操作によるウィンドシールドのたわみがある。インナーミラーの操作は、運転開始時等の車両停止中になされることが多い。そこで本発明では、車両走行中は、出力信号の検出に係る感度を車両停止中と比べて高くして降雨開始時や小雨時においても確実に払拭できるようにしている。一方、車両停止中は、出力信号の検出に係る感度を車両走行中と比べて低くすることにより、例えばインナーミラーの操作等の水滴以外の要因による誤作動を抑制することができる。これにより、ワイパの駆動を適切に制御することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、走行中レベル決定手段は、第1の感度で出力信号を検出してからウィンドシールドに水滴が付着したと判定するまでの判定待機時間を第1の時間とし、停止中レベル決定手段は、第2の感度で出力信号を検出してからウィンドシールドに水滴が付着したと判定するまでの判定待機時間を第1の時間以下である第2の時間とする。
例えば車両走行中にインナーミラーの操作がなされたとしても、その操作に係る時間は短い蓋然性が高い。そこで、車両走行中は、車両停止中と比べて判定待機時間を長くすることにより、例えばインナーミラーの操作等の水滴以外の要因によるワイパの誤作動を抑制することができる。
【0008】
ところで、実際に降雨がある場合、ワイパの駆動は適切に継続されることが好ましい。
そこで、請求項3に記載の発明では、継続判断手段と、払拭動作継続中レベル決定手段と、をさらに備える。継続判断手段は、ワイパの払拭動作が継続して行われているか否かを判断する。ここで、「ワイパの払拭動作が継続して行われている」とは、ワイパが連続で動作している場合に限らず、ある間隔をもって駆動されている場合も含む。払拭動作継続中レベル決定手段は、継続判断手段によりワイパの払拭動作が継続して行われていると判断された場合、出力信号の検出に係る感度を第1の感度よりも高い第3の感度とする。また、請求項4に記載の発明では、払拭動作継続中レベル決定手段は、継続判断手段によりワイパの払拭動作が継続して行われていると判断された場合、第3の感度で出力信号を検出してからウィンドシールドに水滴が付着したと判定するまでの判定待機時間を第2の時間より短い第3の時間とする。これにより、ワイパの払拭動作が継続して行われている場合、すなわち降雨が続いている場合、出力信号の検出に係る感度を高め、また判定待機時間を短くすることにより、降雨時においてワイパを適切に駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるワイパ制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるワイパ制御装置の車両搭載状態を概念的に示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態による水滴検出部を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による水滴検出部の出力特性を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態によるワイパ制御処理を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態によるワイパ制御処理を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるワイパ制御装置を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態によるワイパ制御装置を図1〜図3に基づいて説明する。ワイパ制御装置は、水滴検出部1、車速検出部2、温度検出部3、ワイパスイッチ4、制御部5、ワイパ駆動部としてのワイパモータ7等を備える。
水滴検出部1は、車両のフロントウィンドシールド(以下、単に「ウィンドシールド」という。)10に付着した雨滴等の水滴量を検出するものである。水滴検出部1は、例えば図2に示すように、運転者の視界に近いエリアであって運転者の視界を妨げないように、ウィンドシールド10の上部かつインナーミラー21近傍であって、車室内側に設けられる。インナーミラー21は、図示しないアームを介し、接着剤等によりウィンドシールド10に固定されている。インナーミラー21の角度は、手動等により調整可能である。
【0011】
本実施形態の水滴検出部1は、光学式のものである。図3に示すように、水滴検出部1は、発光素子14からの出射光をプリズム16によってウィンドシールド10に導くとともに、ウィンドシールド10によって反射された反射光をプリズム16によって受光素子15が受光するように構成されている。本実施形態の発光素子14はLEDであり、受光素子15はフォトダイオードである。回路基板13は、発光素子14、受光素子15、およびその他処理回路や出力回路を構成する電子部品が実装されている。ベース12およびカバー11は、回路基板13やプリズム16等を保持しつつ収容する。
【0012】
水滴検出部1では、ウィンドシールド10の外側表面に水滴(図3中にて記号「R」で示す。)が付着していなければ、発光素子14からの出射光は、ウィンドシールド10により略全反射される。一方、ウィンドシールド10の外側表面に水滴Rが付着していると、図3中にて破線で示すように、出射光はウィンドシールド10を透過する。
【0013】
したがって、ウィンドシールド10における出射光の反射領域における水滴Rの付着割合が増加するほど、ウィンドシールド10を透過する出射光が増加する。その結果、図4に示すように、水滴付着割合が多くなるほど受光素子15の受光量が低下し、受光素子15から出力される出力信号が低下する。制御部5は、水滴付着割合に応じて変化する出力信号を取得し、当該出力信号に基づき、ウィンドシールド10に付着した水滴量を検出している。なお、インナーミラー21の操作等の水滴以外の要因により出力信号が低下することがあるので、本実施形態では、出力信号から算出される水滴量に相当する値を「水滴相当値」とする。
【0014】
図1に戻り、車速検出部2は、車両の走行速度を検出し、その検出信号を制御部5に出力する。
温度検出部3は、ウィンドシールド10の水滴検出部1の近傍に設けられ、ウィンドシールド10の温度を検出し、その検出信号を制御部5に出力する。
【0015】
図2に示すように、ワイパスイッチ4は、制御部5に対して、ワイパ8の動作停止(OFF)、オートモード(AUTO)、マニュアルモード(Int、Lo、Hi)の各動作モードを示すモード信号を出力するモードスイッチ41を有する。また、ワイパスイッチ4は、オートモードが選択されたとき、水滴量に対するワイパ8の払拭レベルを変更する払拭レベル信号を出力する感度ボリュームスイッチ42を有している。
【0016】
制御部5は、マイクロコンピュータであり、制御処理や演算処理を行うCPU、各種プログラムやデータを保存するための読み取り専用メモリ(ROM)や書き込み可能なメモリ(RAM)等のメモリを含む記憶装置、入力回路、出力回路、および電源回路等から構成される。制御部5は、水滴検出部1、車速検出部2、温度検出部3、ワイパスイッチ4等からの信号に基づいてワイパ8を駆動すべく、ワイパモータドライバ6からワイパモータ7へと駆動信号を出力する。これにより、ワイパモータ7が駆動され、ワイパ8による払拭動作が行われる。なお、本実施形態では、制御部5にワイパモータドライバ6が含まれるように構成されているが、制御部5とワイパモータドライバ6とは独立した構成であってもよい。
【0017】
ところで、インナーミラー21の角度調整に際し、インナーミラー21を操作すると、アームを介してウィンドシールド10に外力が伝わる。この外力によりウィンドシールド10がたわむと、発光素子14からの出射光の一部が受光素子15に受光されなくなる。受光素子15の受光量が低下すると、ウィンドシールド10に水滴が付着していないにも関わらず出力信号が低下するため、水滴が付着していると誤判定され、ワイパ8が誤作動してしまう虞がある。また、インナーミラー21の操作は、運転開始時等の車両停止中になされることが多く、車両走行中においては操作されたとしても微調整程度であって、その操作に係る時間は、例えば0.2〜0.5秒程度と短い時間である蓋然性が高い。
【0018】
そこで、本実施形態では、インナーミラー21の操作等、水滴以外の要因の影響を受けてワイパ8が誤作動するのを抑制すべく、図5に示すワイパ制御処理を行っている。図5に示すワイパ制御処理は、ワイパスイッチ4においてオートモードが選択されたときに制御部5にて実行される処理である。
【0019】
最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、各種フラグのリセット等の初期化処理を行う。
S102では、ワイパ8の払拭動作が継続して行われているか否かを判断する。具体的には、後述する継続タイマによる計時が行われており、ワイパ8の駆動からの経過時間txが所定時間TA以内である場合、「ワイパ8の払拭動作が継続して行われている」と肯定判断し、経過時間txが所定時間TAを超えている場合、「ワイパ8の払拭動作が継続して行われていない」と否定判断する。また、継続タイマがリセットされた状態であって継続タイマによる計時が行われていない場合は否定判断する。なお、「ワイパ8の払拭動作が継続して行われている」とは、ワイパ8が連続で動作している場合に限らず、例えば間歇モード等、所定時間TA以内の間隔をもって払拭動作が行われている場合も含む。ワイパ8の払拭動作が継続して行われていないと判断された場合(S102:NO)、すなわち経過時間tx=0またはtx>TAである場合、S104へ移行する。ワイパ8の払拭動作が継続して行われていると判断された場合(S102:YES)、すなわち0<tx≦TAである場合、S103へ移行する。このS102で肯定判断された場合、降雨がある蓋然性が高く、否定判断された場合、降雨がない蓋然性が高い。
【0020】
ワイパ8の払拭動作が継続して行われていると判断された場合(S102:YES)に移行するS103では、水滴検出部1から出力される出力信号の検出に係る検出閾値を第3の閾値K3とする。また、出力信号を検出してからウィンドシールド10に水滴が付着していると判定するまでの判定待機時間を第3の時間T3とする。
【0021】
ワイパ8の払拭動作が継続して行われていないと判断された場合(S102:NO)に移行するS104では、継続タイマによる計時が行われている場合、継続タイマをリセットする。
S105では、車速検出部2から出力される車両の走行速度に係る検出信号に基づき、車両が走行中か否かを判断する。車両が走行中であると判断された場合(S105:YES)、S106へ移行する。車両が走行中でないと判断された場合(S105:NO)、S107へ移行する。
【0022】
車両が走行中であると判断された場合(S105:YES)に移行するS106では、水滴検出部1から出力される出力信号の検出に係る検出閾値を第1の閾値K1とする。また、出力信号を検出してからウィンドシールド10に水滴が付着していると判定するまでの判定待機時間を第1の時間T1とする。
車両が走行中でないと判断された場合(S105:NO)に移行するS107では、水滴検出部1から出力される出力信号の検出に係る検出閾値を第2の閾値K2とする。また、出力信号を検出してからウィンドシールド10に水滴が付着していると判定するまでの判定待機時間を第2の時間T2とする。
なお、検出閾値および判定待機時間の詳細については、後述する。
【0023】
S108では、水滴検出部1から出力信号を取得し、水滴相当値を算出する。
S109では、水滴相当値が検出閾値より大きいか否かを判断する。検出閾値は、S103、S106またはS107にて設定された値とする。水滴相当値が検出閾値以下であると判断された場合(S109:NO)、S114へ移行する。水滴相当値が検出閾値より大きいと判断された場合(S109:YES)、S110へ移行する。
【0024】
S110では、水滴相当値が検出閾値を超えてからの経過時間である検出経過時間tyの計時を判定タイマにより開始する。検出経過時間tyが計時中である場合、計時を継続する。
S111では、検出経過時間tyが判定待機時間を超えたか否かを判断する。判定待機時間は、S103、S106またはS107にて設定された値とする。検出経過時間tyが判定待機時間以内であると判断された場合(S111:NO)、S113へ移行する。検出経過時間tyが判定待機時間を超えたと判断された場合(S111:YES)、S112へ移行する。
【0025】
S112では、ウィンドシールド10に水滴が付着していると判定し、水滴フラグをセットする。
検出経過時間tyが判定待機時間以内であると判断された場合(S111:NO)に移行するS113では、ウィンドシールド10に水滴が付着していないと判定する。
水滴相当値が検出閾値以下であると判断された場合(S109:NO)に移行するS114では、判定タイマが計時中である場合、判定タイマをリセットする。なお、降雨時であってもワイパ8による払拭動作の直後には一時的に水滴相当値が検出閾値以下となるので、S109にて否定判断され、S114にて判定タイマがリセットされる。
S115では、ウィンドシールド10に水滴が付着していないと判定する。
【0026】
S116では、水滴フラグがセットされているか否かを判断する。水滴フラグがセットされていない場合(S116:NO)、S102に戻る。水滴フラグがセットされている場合(S116:YES)、S117へ移行する。
S117では、駆動信号をワイパモータドライバ6に出力し、ワイパモータ7を駆動する。ワイパモータ7の駆動によりワイパ8による払拭動作が行われ、ウィンドシールド10に付着した水滴を払拭する。また、水滴フラグをリセットする。
【0027】
S118では、ワイパ8の払拭動作が終了してからの経過時間txの計時を継続タイマにより開始し、S102へ戻る。なお、継続タイマによる計時が行われている場合は、計時を一旦リセットし、再度0から計時を開始する。本実施形態では、ワイパ8の払拭動作が終了してからの時間を計時しているが、ワイパ8の払拭動作開始時からの時間を計時してもよい。
【0028】
ここで、検出閾値および判定待機時間について言及しておく。本実施形態では、水滴相当値が検出閾値を上回った場合、出力信号として検出されるものとする。すなわち、「検出閾値」が「出力信号の検出に係る感度」に対応している。また、「第1の閾値K1」が「第1の感度」に対応し、「第2の閾値K2」が「第2の感度」に対応し、「第3の閾値K3」が「第3の感度」に対応している。
検出閾値が大きい場合、水滴相当値も大きくならないと出力信号として検出されないので、「出力信号の検出に係る感度が低い」といえる。また、検出閾値が小さい場合、水滴相当値が小さくても出力信号として検出されるので、「出力信号の検出に係る感度が高い」といえる。本実施形態では、第3の閾値K3が最も小さい値であり、次いで第1の閾値K1であり、第2の閾値K2が最も大きい。すなわちK3<K1<K2である。換言すると、ワイパ駆動中であるS103で設定される感度が最も高く、次いでワイパ駆動中でなく車両走行中であるS106で設定される感度であり、ワイパ駆動中でなく車両停止中であるS107で設定される感度が最も低い。なお、第2の閾値K2は、インナーミラー21が操作されたときに検出される水滴相当値よりも大きい値に設定される。
【0029】
また、設定された感度で出力信号を検出し当該出力信号の検出が継続されている状態、すなわち水滴相当値が検出閾値を上回っている状態で判定待機時間が経過した場合、ウィンドシールド10に水滴が付着したと判定する。本実施形態では、ワイパ駆動中であるS103で設定される第3の時間T3が最も短く、次いでワイパ駆動中でなく車両停止中であるS107で設定される第2の時間T2であり、ワイパ駆動中でなく車両走行中であるS106で設定される第1の時間T1は第2の時間T2以上である。すなわち、T3<T2≦T1である。ただし、判定待機時間を長くしすぎると、大雨時等にワイパの払拭動作が遅れる虞があるので、最も長い第1の時間T1であっても、0.5秒以下程度とすることが好ましい。
【0030】
ウィンドシールド10への水滴付着判定の具体例を図6に示すタイムチャートに基づいて説明する。図6では、(a)に水滴相当値を示し、(b)にウィンドシールド10に水滴が付着しているか否かの判定結果を示した。なお、このタイムチャートのスタート時点においては、ワイパ8の払拭動作が継続して行われていないものとする(S102:NO)。
【0031】
インナーミラー21の操作に伴い、ウィンドシールド10がたわむと、受光素子15の受光量が低下する。これにより、図6(a)に示すように、インナーミラー21の操作中、水滴相当値は一時的に0でなくなるが、インナーミラー21の操作が終了すれば0に戻る。車両走行中である場合(S105:YES)、インナーミラー21の操作時間が第1の時間T1以内であれば(S111:NO)、ウィンドシールド10に水滴が付着していないと判定され(S113)、ワイパ8は駆動されない。これにより、インナーミラー21の操作によるワイパ8の誤作動が抑制される。すなわち本実施形態では、出力信号の検出が継続されている状態で判定待機時間が経過しなかった場合、ウィンドシールド10に水滴が付着したのではなく、水滴以外の要因によるものであるとみなす。
【0032】
一方、降雨によりウィンドシールド10に水滴が付着すると、水滴相当値は、ワイパ8により払拭されるまでは減少せずに保持されるとともに、水滴付着量の増加に伴って増加する。車両走行中である場合(S105:YES)、水滴相当値が第1の閾値K1よりも大きい状態が第1の時間T1よりも長く継続されると(S109:YES、かつ、S111:YES)、ウィンドシールド10に水滴が付着していると判定され(S112)、ワイパ8が駆動される(S117)。
【0033】
なお、図6中には示していないが、ワイパが駆動されると、水滴相当値は一旦0に戻る。そして、ワイパ8の駆動からの経過時間が所定時間TA以内のとき(S102:YES)、検出閾値が第3の閾値K3、判定待機時間が第3の時間T3に設定されるので(S103)、水滴相当値が第3の閾値K3よりも大きい状態が第3の時間T3よりも長く継続されると(S109:YES、かつ、S111:YES)、ウィンドシールド10に水滴が付着していると判定され(S112)、ワイパ8が駆動される(S117)。第3の閾値K3は最も小さい値に設定され、第3の時間T3は最も短い時間に設定されているので、ワイパ8の駆動中、すなわち降雨中においては、適切にワイパの駆動を継続することができる。
【0034】
また、車両停止中におけるインナーミラー21の操作に要する時間は運転者の特性等によりばらつきが大きい。そこで本実施形態では、車両停止中である場合(S105:NO)、インナーミラー21の操作による水滴相当値よりも十分に大きい第2の閾値K2を検出閾値として設定することで、インナーミラー21の操作によるワイパ8の誤作動を抑制している。なお、検出閾値を大きくすることにより、水滴相当値が検出閾値を超えるまでの時間が長くなる。図6(a)に示す例では、降雨開始から時間tpで水滴相当値が第1の閾値K1より大きくなるのに対し、検出閾値を第1の閾値K1より大きい第2の閾値K2とした場合、降雨開始から時間tpより遅い時間tqで水滴相当値が第2の閾値K2より大きくなる。特に小雨時には、水滴相当値の増加割合が小さいので、水滴相当値が第2の閾値K2より大きくなるのに要する時間がより長くなる。水滴相当値が第2の閾値K2より大きくなるのに要する時間が長くなると、ワイパ8の払拭開始が車両走行中と比べて遅くなるが、車両停止中であるので運転に支障は出にくい。なお、車両停止中、検出閾値を第1の閾値より大きい第2の閾値とすることにより水滴相当値の検出に要する時間が長くなる分、水滴相当値が検出されてからウィンドシールド10に水滴が付着していると判定するまでの判定待機時間である第2の時間T2を、第1の時間T1より短くすることが好ましい。これにより、水滴相当値が第2の閾値より大きくなった後は比較的速やかにワイパ8を駆動することができる。
【0035】
以上詳述したように、水滴検出部1は、ウィンドシールド10に付着した水滴に応じた出力信号を出力する。制御部5は、車両が走行中であるか否かを判断し、車両が走行中であると判断された場合(S105:YES)、出力信号の検出に係る検出閾値を第1の閾値K1とし、水滴相当値が第1の閾値K1を超えてからウィンドシールド10に水滴が付着したと判定するまでの判定待機時間を第1の時間T1とする(S106)。また、車両が走行中でないと判断された場合(S105:NO)、出力信号の検出に係る検出閾値を第1の閾値K1より大きい第2の閾値K2とし、水滴相当値が第2の閾値K2を超えてからウィンドシールド10に水滴が付着したと判定するまでの判定待機時間を第1の時間T1以下である第2の時間T2とする(S107)。そして、水滴相当値が検出閾値を超えている状態で判定待機時間が経過した場合(S109:YES、かつ、S111:YES)、ウィンドシールド10に水滴が付着したと判定し(S112)、ワイパ8を駆動するようにワイパモータ7を制御する(S117)。
【0036】
本実施形態では、車両走行中は、出力信号の検出に係る感度を車両停止中と比べて高くして降雨開始時や小雨時においても確実に払拭できるようにした上で、判定待機時間を車両停止中よりも長くすることにより、インナーミラー21の操作等、水滴以外の要因によるワイパ8の誤作動を抑制している。一方、車両停止中は、出力信号の検出に係る感度を車両走行中と比べて低くすることにより、インナーミラー21の操作等の水滴以外の要因によるワイパ8の誤作動を抑制することができる。これにより、ワイパ8の駆動を適切に制御することができる。
【0037】
また、ワイパ8の払拭動作が継続して行われていると判断された場合(S102:YES)、出力信号の検出に係る検出閾値を第1の閾値K1よりも小さい第3の閾値とし、水滴相当値が第3の閾値K3を超えてからウィンドシールド10に水滴が付着したと判定するまでの判定待機時間を第2の時間より短い第3の時間とする(S103)。これにより、ワイパ8の払拭動作が継続して行われている場合、すなわち降雨が続いている場合、検出閾値を小さくして出力信号の検出に係る感度を高め、判定待機時間を短くすることにより、降雨時におけてワイパ8を適切に駆動させることができる。すなわち本実施形態では拭き始めのみ、インナーミラー21の操作等の水滴以外の要因によるワイパ8の誤作動を抑制すべく、感度を低くする、または、判定待機時間を長くしている。
【0038】
なお、本実施形態では、制御部5が「水滴付着判定手段」、「駆動制御手段」、「走行判断手段」、「走行中レベル決定手段」、「停止中レベル決定手段」、「継続判断手段」、「払拭動作継続中レベル決定手段」を構成する。また、図5中のS112が「水滴付着判定手段」の機能としての処理に相当し、S117が「駆動制御手段」の機能としての処理に相当し、S105が「走行判断手段」の機能としての処理に相当し、S106が「走行中レベル決定手段」の機能としての処理に相当し、S107が「停止中レベル決定手段」の機能としての処理に相当する。また、S102が「継続判断手段」の機能としての処理に相当し、S103が「払拭動作継続中レベル決定手段」の機能としての処理に相当する。
【0039】
(他の実施形態)
(ア)上記実施形態では、水滴相当値と検出閾値とを比較することにより水滴付着の有無を判定した。他の実施形態では、出力信号の低下量に基づいて水滴付着の有無を判定してもよい。また、図4に示す出力信号そのものに基づいて水滴付着の有無を判定してもよい。この場合、出力信号が検出閾値を下回っている状態で判定待機時間が経過したとき、ウィンドシールドに水滴が付着していると判定する。この場合、検出閾値が大きいほど感度が高く、小さいほど感度が低く、したがって、第3の閾値が最も大きく、次いで第1の閾値であり、第2の閾値が最も小さい値となる。
【0040】
(イ)上記実施形態では、ワイパ駆動からの経過時間txが所定時間TA以内である場合(S102:YES)、検出閾値を第3の閾値K3とし、判定待機時間を第3の時間T3(S103)としたが、他の実施形態では、S102およびS103に係る処理を省略してもよい。
【0041】
(ウ)上記実施形態では、フロントウィンドシールドの水滴を払拭するワイパの制御について説明したが、フロントウィンドシールドの水滴を払拭するワイパに限らず、例えばリアウィンドシールドの水滴を払拭するリアワイパ等、車両のいずれの箇所に設けられたワイパに適用してもよい。
【0042】
(エ)上記実施形態では、ウィンドシールドに水滴が付着したと誤判定される虞のある水滴以外の要因としてインナーミラーの操作を中心に説明したが、誤判定される虞のある水滴以外の要因は、インナーミラーの操作に限らない。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・水滴検出部
2・・・車速検出部
3・・・温度検出部
4・・・ワイパスイッチ
5・・・制御部(水滴付着判定手段、駆動制御手段、走行判断手段、走行中レベル決定手段、停止中レベル決定手段、継続判断手段、払拭動作継続中レベル決定手段)
6・・・ワイパモータドライバ
7・・・ワイパモータ(ワイパ駆動部)
8・・・ワイパ
10・・・フロントウィンドシールド(ウィンドシールド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウィンドシールドに付着した水滴を払拭するワイパと、
前記ワイパを駆動するワイパ駆動部と、
前記ウィンドシールドに付着した水滴に応じた出力信号を出力する水滴検出部と、
前記出力信号の検出が継続されている状態で判定待機時間が経過した場合、前記ウィンドシールドに水滴が付着したと判定する水滴付着判定手段と、
前記水滴付着判定手段により前記ウィンドシールドに水滴が付着したと判定された場合、前記ワイパを駆動するように前記ワイパ駆動部を制御する駆動制御手段と、
前記車両が走行中か否かを判断する走行判断手段と、
前記走行判断手段により前記車両が走行中であると判断された場合、前記出力信号の検出に係る感度を第1の感度とする走行中レベル決定手段と、
前記走行判断手段により前記車両が走行中でないと判断された場合、前記出力信号の検出に係る感度を前記第1の感度より低い第2の感度とする停止中レベル決定手段と、
を備えることを特徴とするワイパ制御装置。
【請求項2】
前記走行中レベル決定手段は、前記第1の感度で前記出力信号を検出してから前記ウィンドシールドに水滴が付着したと判定するまでの前記判定待機時間を第1の時間とし、
前記停止中レベル決定手段は、前記第2の感度で前記出力信号を検出してから前記ウィンドシールドに水滴が付着したと判定するまでの前記判定待機時間を前記第1の時間以下である第2の時間とすることを特徴とする請求項1に記載のワイパ制御装置。
【請求項3】
前記ワイパの払拭動作が継続して行われているか否かを判断する継続判断手段と、
前記継続判断手段により前記ワイパの払拭動作が継続して行われていると判断された場合、前記出力信号の検出に係る感度を前記第1の感度よりも高い第3の感度とする払拭動作継続中レベル決定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のワイパ制御装置。
【請求項4】
前記払拭動作継続中レベル決定手段は、前記継続判断手段により前記ワイパの払拭動作が継続して行われていると判断された場合、前記第3の感度で前記出力信号を検出してから前記ウィンドシールドに水滴が付着したと判定するまでの前記判定待機時間を前記第2の時間より短い第3の時間とすることを特徴とする請求項3に記載のワイパ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−56500(P2012−56500A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202909(P2010−202909)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】