説明

ワイパ装置及びワイパ装置用防水カバー

【課題】減速機のリンク機構に対する連結部と、減速機のフレームに対する締結部に雨水がかかるのを防止する。
【解決手段】ワイパ装置は、モータ17と減速機18とからなる駆動ユニット19と、駆動ユニット19の減速機18が締結固定されるフレーム16と、フレーム16に設けたピボット軸を揺動すべく駆動ユニット19と連結したリンク機構と、駆動ユニット19を覆う防水カバー30とを備えている。防水カバー30は、減速機のリンク機構に対する連結部Jを覆う本体部30aと、減速機18のフレーム16に対する締結部を覆う周辺部30bと、モータ17のヨーク17aを挟持する第1の保持部34と、フレーム16を挟持する第2の保持部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパアームを駆動してウインドシールドガラスを払拭するワイパ駆動装置と、この装置に取り付ける防水カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、フロントウィンドガラスに付着した水滴を払拭するためのワイパ装置が設けてある。このワイパ装置は、フロントウィンドガラスの下端を支持するカウルの内部に収容配置される場合がある。その場合、雨水が外気取入口からカウル内に浸入して駆動ユニットにかかる虞がある。そこで、U字状の装着部をモータのヨークに嵌合させて駆動ユニットに取り付ける防水カバーが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許公報第3364166号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この防水カバーはハーネス設置領域の被水防止は可能であるが、減速機のリンク機構に対する連結部の被水防止はできない。このため、連結部からグリスが流出してしまい、耐久性に問題がある。さらに、減速機のフレームに対する締結部に雨水が浸入し、腐食が発生する虞もある。
【0004】
本発明の目的は、減速機のリンク機構に対する連結部と、減速機のフレームに対する締結部に雨水がかかるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のワイパ装置は、モータと減速機とからなる駆動ユニットと、該駆動ユニットの減速機が締結固定されるフレームと、該フレームに設けたピボット軸を揺動すべく上記駆動ユニットと連結したリンク機構と、上記駆動ユニットを覆う防水カバーとを備えたワイパ装置であって、上記防水カバーは、上記減速機のリンク機構に対する連結部を覆う本体部と、上記減速機のフレームに対する締結部を覆う周辺部と、上記モータのヨークを挟持する第1の保持部と、上記フレームを挟持する第2の保持部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明のワイパ装置は、上記第1の保持部がモータのヨークに嵌合可能な形状であって、上記第2の保持部がフレームに嵌合可能な一対の爪であることを特徴とする。
【0007】
本発明のワイパ装置は、上記防水カバーの裏面で上記一対の爪に近接してリブを設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明のワイパ装置は、上記減速機をフレームに締結する部材の作業孔を上記防水カバーの周辺部に形成し、上記防水カバーの表面上の上記作業孔の付近に被水防止壁を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明のワイパ装置は、上記防水カバーを減速機の上面に螺子結合したことを特徴とする。
【0010】
本発明のワイパ装置は、上記減速機を螺子結合またはカシメによってフレームに締結固定したことを特徴とする。
【0011】
本発明のワイパ装置は、上記防水カバーの裏面で上記フレーム又は駆動ユニットとの接触面に干渉音発生防止材を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明のワイパ装置は、上記干渉音発生防止材がクッション材またはテープであることを特徴とする。
【0013】
本発明のワイパ装置は、上記防水カバーの本体部を筒状に形成して上記減速機の上部を収容したことを特徴とする。
【0014】
本発明のワイパ装置用防水カバーは、モータと減速機とからなる駆動ユニットと、該駆動ユニットの減速機が締結固定されるフレームと、該フレームに設けたピボット軸を揺動すべく上記駆動ユニットと連結したリンク機構とを備えたワイパ装置に取り付ける防水カバーであって、上記減速機のリンク機構に対する連結部を覆う本体部と、上記減速機のフレームに対する締結部を覆う周辺部と、モータのヨークを挟持する第1の保持部と、上記フレームを挟持する第2の保持部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、減速機のリンク機構に対する連結部に雨水がかからなくなり、この連結部からのグリス流出を防止できるとともに、減速機のフレームに対する締結部に雨水がかかるのを防止でき、耐久性の大幅な向上が可能になる。
【0016】
さらに、第1及び第2の保持部によって防水カバーをモータとフレームに固定することができ、取付強度の向上も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明のワイパ装置を取り付けた車両の概略を示している。
【0019】
この車両11には、フロントウィンドガラス12を払拭するために運転席側のワイパブレード13aと助手席側のワイパブレード13bとが設けられている。運転席側のワイパブレード13aはワイパアーム14aの先端に取り付けられ、助手席側のワイパブレード13bはワイパアーム14bの先端に取り付けられており、それぞれのワイパブレード13a,13bは、ワイパアーム14a,14bに内装された図示しないばね部材等によりフロントウィンドガラス12に弾圧的に接触するようになっている。ワイパアーム14a,14bの基端は、車体を貫通するピボット軸20a,21aに連結されている。そして、各ワイパブレード13a,13bはフロントウィンドガラス12上の上反転位置とフロントウィンドガラス12の下端に位置する下反転位置との間の払拭範囲12a,12bを同一方向に向けて揺動運動して払拭動作を行うようになっている。すなわち、これらのワイパブレード13a,13bの払拭パターンはタンデム式となっている。
【0020】
図2は図1に示すワイパ装置15のリンク機構を示し、図3は、図2の駆動ユニット19に樹脂製の防水カバー30を取り付けた状態を示している。
【0021】
パイプ状のフレーム16には、モータ17と減速機18とからなる駆動ユニット19を搭載してある。この駆動ユニット19は2本のボルト31で減速機18をフレーム16に締結固定してある。図3(B)において、18aは減速機取付用ブラケットである。フレーム16の両端には、運転席側のワイパアーム14aが取り付けられるピボット軸20aを備えたピボットホルダ20と、助手席側のワイパアーム14bが取り付けられるピボット軸21aを備えたピボットホルダ21とが設けてある。各ピボット軸20a,21aはピボットホルダ20,21の裏側で駆動レバー22,23の一端と連結してある。駆動レバー22の他端はピン24で連結ロッド25の一端に回動自在に連結してある。駆動レバー23の他端はピン26で連結ロッド27の一端に回動自在に連結してある。各連結ロッド25,27の他端はボールジョイント28を介して減速機18の出力軸18bに設けたクランクアーム29に連結してある(図3(B)参照)。つまり、モータ17でクランクアーム29を回転させると、連結ロッド25,27が往復運動して各駆動レバー22,23を同一方向に揺動させることになる。なお、ワイパ装置15は、フレーム16の両端の取付片15aをボルトBで車体に固定するとともに、駆動ユニット19の取付片19aをボルトBで車体に固定するとで、車両のカウル(図示せず)の内部に収容配置される。
【0022】
図4は防水カバーを示す斜視図、図5は防水カバーを裏側から見た図である。
【0023】
防水カバー30は、駆動ユニット19のハーネス設置領域及び減速機18のリンク機構に対する連結部Jを覆う本体部30aと、減速機18のフレーム16に対する締結部を覆う周辺部30bとを備えている。なお、ハーネス設置領域とは、図2に示すハーネス32のモータ17内への引き込み部Dや、減速機18に設けた接続端子T、アース端子Eなどをいう。防水カバー30の後部には、フレーム16に沿って延びる平板部30cが形成してある。この平板部30cに筒状の本体部30aを延設して減速機18の上部を収容してある。なお、本体部30aの前方側の周壁を切り欠いてハーネス32の配策スペースを形成してある。
【0024】
本体部30aには、モータ17のヨーク17aに嵌合する第1の保持部34を延設してある。一方、平板部30cの後端部には、フレーム16に嵌合する一対の爪35を設けて第2の保持部36aと第3の保持部36bを構成してある。この保持部36a,36bは防水カバー30の左右両端に設けてある。そして、第1の保持部34をモータ17のヨーク17aに嵌合し、本体部30aと平板部30cの境界をビス40で減速機の上面にビス40で固定して、防水カバー30を駆動ユニット19に組み付けておく。その後、第2の保持部36aをフレーム16に嵌合し、第3の保持部36bをフレーム16にガイドさせている。なお、36bはフレーム16に挟持させてもよい。駆動ユニット19の減速機18をボルト31でフレーム16に固定してある。図2において、41はビス40が捩じ込まれる減速機18の螺子孔であり、図4と図5において、42はビス40の挿通孔である。防水カバー30は、その平板部30cが前下がりに傾斜するようにして駆動ユニット19に取り付けてある。
【0025】
図5に示す第2の保持部36aには、一対の爪35の間にリブ37を設けて平板部30cを補強してある。さらに、防水カバー30の裏面で本体部30aと第2の保持部36aと第3の保持部36bには、干渉音発生防止材としてクッション材またはテープ38を貼り付けることで、駆動ユニット19の振動による干渉音の発生を防止している。
【0026】
防水カバー30の周辺部30bには、ボルト31を締結するための作業孔33が2個設けてあり、これら孔33に連なる被水防止壁39をその後方側に隣接して形成してある。これによって、作業孔33から減速機18の締結部に雨水が浸入するのを防止している。
【0027】
以上の構造によれば、防水カバー30の本体部30aで駆動ユニット19のハーネス設置領域を覆ってあるので、被水による絶縁不良の発生が防止できる。さらに、減速機18のリンク機構に対する連結部Jも防水カバー30の本体部30aで覆ってあるので、被水による連結部Jからのグリスの流出を防止できる。また、減速機18のフレーム16に対する締結部は防水カバー30の周辺部30bで覆い、作業孔33に対する雨水の浸入を被水防止壁39で阻止しているので、フレームの締結部に雨水が浸み込んだり、フレームの締結部からフレーム内部に雨水が浸入して腐食が発生する虞はない。つまり、連結部Jからグリスが流出する虞も、フレームの締結部に雨水が浸入する虞もなくなり、耐久性の大幅な向上が期待できる。
【0028】
さらに、防水カバー30は、第1の保持部34をモータ17のヨーク17aに嵌合させると、第2の保持部36aも同時にフレーム16に嵌合するので、防水カバー30の取付作業が極めて容易になる。
【0029】
本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、以上の実施の形態おいては、防水カバー30の本体部30aは減速機18の上部を収容すべく筒状に形成してあるが、必ずしもこのような形状にする必要はない。
【0030】
また、減速機18のフレーム16に対する締結は、螺子結合ではなくカシメによって行ってもよい。さらに、フレーム16に防水カバー30と減速機18をボルト31で共締めしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のワイパ装置を取り付けた車両の概略を示す図である。
【図2】同ワイパ装置のリンク機構を示す斜視図である。
【図3】図2の駆動ユニットに防水カバーを取り付けた状態を示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)を矢印C方向から見た図である。
【図4】防水カバーの斜視図である。
【図5】防水カバーを裏側から見た図である。
【符号の説明】
【0032】
11 車両
12 フロントウィンドガラス
12a 払拭範囲
13a ワイパブレード
13b ワイパブレード
14a ワイパアーム
14b ワイパアーム
15 ワイパ装置
15a 取付片
16 フレーム
17 モータ
17a ヨーク
18 減速機
18a 減速機取付用ブラケット
18b 出力軸
19 駆動ユニット
19a 取付片
20 ピボットホルダ
20a ピボット軸
21 ピボットホルダ
21a ピボット軸
22 駆動レバー
23 駆動レバー
24 ピン
25 連結ロッド
26 ピン
27 連結ロッド
28 ボールジョイント
29 クランクアーム
30 防水カバー
30a 本体部
30b 周辺部
30c 平板部
31 ボルト
32 ハーネス
33 作業孔
34 第1の保持部
35 爪
36a 第2の保持部
36b 第3の保持部
37 リブ
39 被水防止壁
40 ビス
41 螺子孔
42 挿通孔
B ボルト
D 引き込み部
E アース端子
J 連結部
T 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと減速機とからなる駆動ユニットと、該駆動ユニットの減速機が締結固定されるフレームと、該フレームに設けたピボット軸を揺動すべく上記駆動ユニットと連結したリンク機構と、上記駆動ユニットの少なくとも上面側を覆う防水カバーとを備えたワイパ装置であって、
上記防水カバーは、上記減速機のリンク機構に対する連結部を覆う本体部と、上記減速機のフレームに対する締結部を覆う周辺部と、上記モータのヨークを挟持する第1の保持部と、上記フレームを挟持する第2の保持部とを備えたことを特徴とするワイパ装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイパ装置において、上記第1の保持部がモータのヨークに嵌合可能な形状であって、上記第2の保持部がフレームに嵌合可能な一対の爪であることを特徴とするワイパ装置。
【請求項3】
請求項2記載のワイパ装置において、上記防水カバーの裏面で上記一対の爪に近接してリブを設けたことを特徴とするワイパ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3記載のワイパ装置において、上記減速機をフレームに締結する部材の作業孔を上記防水カバーの周辺部に形成し、上記防水カバーの表面上の上記作業孔の付近に被水防止壁を設けたことを特徴とするワイパ装置。
【請求項5】
請求項4記載のワイパ装置において、上記防水カバーを減速機の上面に螺子結合したことを特徴とするワイパ装置。
【請求項6】
請求項4ないし5記載のワイパ装置において、上記減速機を螺子結合またはカシメによってフレームに締結固定したことを特徴とするワイパ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6記載のワイパ装置において、上記防水カバーの裏面で上記フレーム又は駆動ユニットとの接触面に干渉音発生防止材を設けたことを特徴とするワイパ装置。
【請求項8】
請求項7記載のワイパ装置において、上記干渉音発生防止材がクッション材またはテープであることを特徴とするワイパ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8記載のワイパ装置において、上記防水カバーの本体部を筒状に形成して上記減速機の上部を収容したことを特徴とするワイパ装置。
【請求項10】
モータと減速機とからなる駆動ユニットと、該駆動ユニットの減速機が締結固定されるフレームと、該フレームに設けたピボット軸を揺動すべく上記駆動ユニットと連結したリンク機構とを備えたワイパ装置に取り付ける防水カバーであって、
上記減速機のリンク機構に対する連結部を覆う本体部と、上記減速機のフレームに対する締結部を覆う周辺部と、上記モータのヨークを挟持する第1の保持部と、上記フレームを挟持する第2の保持部とを備えたことを特徴とするワイパ装置用防水カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−184041(P2008−184041A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19532(P2007−19532)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】