説明

ワイヤハーネスの保護材

【課題】ワイヤハーネスの十字状分岐部を外部干渉材から保護する保護材を提供する。
【解決手段】四輪車または二輪車に配索するワイヤハーネスの分岐部に取り付ける保護材であって、上面開口の十字形状で、四角形状の中央外装部と、該中央外装部の4方からそれぞれ延在する分岐線外装部とからなる可撓性を有するディップ成形品であり、前記4つの各分岐線外装部の先端外周にテープ止め突起を突設し、前記ワイヤハーネスの分岐部を前記中央外装部内に載置すると共に各分岐線を前記分岐線外装部にそれぞれ載置した後に該分岐線外装部から分岐線にかけて粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に配索されるワイヤハーネスの保護材に関し、詳しくは、ワイヤハーネスの分岐部分を外部干渉材から保護するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に配索されるワイヤハーネスの分岐部が車体のエッジやバリ等の外部干渉材と干渉する場合、該干渉位置からワイヤハーネスを離すようにレイアウトを変更するが、レイアウトの変更ができない場合、分岐部を保護する必要がある。
【0003】
前記分岐部を外部干渉材から保護するために、従来、本出願人は特開2006−254596号公報では、図11(A)に示すような樹脂製の保護材100で保護する構造を提供している。該保護材100は円筒チューブを切断して前後に三角形の折り曲げ部100a、100bを設け、これら折り曲げ部100aと100bを分岐部の前後両側に被せて、テープTを巻き付けてワイヤハーネスに固着している。
また、図11(B)に示す発泡ウレタンシート101をワイヤハーネスの分岐部に巻き付ける場合もある。さらに、樹脂成形品からなるプロテクタ内に通して保護する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−254596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記図11(B)に示す発泡ウレタンシート101を巻き付けた場合、車体パネルから突出するエッジやバリで発泡ウレタンシート101が破れてワイヤハーネスに損傷が生じる恐れがある。
また、前記図11(A)に示す保護材では、T字分岐部の保護材としては有効であるが、十字分岐部の保護材として用いることができない問題がある。
さらに、射出成型品からなる保護用のプロテクタを設けると、金型製作費を必要とするため製造コストがアップし、かつ、可撓性を有しないため取り扱いにくい問題もある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、車体パネルから突出するエッジやバリで破れる恐れは殆どなく、かつ、ワイヤハーネスの十字分岐部の保護が図れるワイヤハーネスの保護材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、四輪車または二輪車に配索するワイヤハーネスの分岐部に取り付ける保護材であって、
上面開口の十字形状で、四角形状の中央外装部と、該中央外装部の4方からそれぞれ延在する分岐線外装部とからなる可撓性を有するディップ成形品であり、前記4つの各分岐線外装部の先端外周にテープ止め突起を突設し、
前記ワイヤハーネスの分岐部を前記中央外装部内に載置すると共に各分岐線を前記分岐線外装部にそれぞれ載置した後に該分岐線外装部から分岐線にかけて粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるワイヤハーネスの保護材を提供している。
【0008】
本発明の保護材は塩化ビニル樹脂等の樹脂材を用いたディップ成形品としているため、発泡ウレタンシートと比較して破れにくい強度を持たせることが出来ると共に、比較的簡単な形状の雌金型だけを用いているため、製造コストが射出成型品よりも低減できる。かつ、可撓性を有するため、配索スペースやレイアウト上の要請に対しても比較的柔軟に対応させることができる。
かつ、前記のように十字分岐に対応させた形状としているため、ワイヤハーネスの十字分岐部を保護できる。かつ、可撓性を有するディップ成形品としているため、4方向に分岐する分岐角度が正確に90度間隔でなくとも、前記分岐線外装部を若干傾斜させるように変形させて対応させることができる。
【0009】
前記4つの分岐線外装部は前記粘着テープの幅以上とし、分岐線外装部の先端の突起をテープ止めとして、粘着テープを安定して巻き付けられるようにしている。
【0010】
かつ、前記ワイヤハーネスの分岐部から分岐する分岐線の本数が4本未満であれば、分岐線の本数に応じて不要な分岐線外装部を切除してT字形状等としている。
ディップ成形品である分岐線外装部をカッター等の切断具で簡単に切断することができる。よって、T字分岐部の保護用としても共用で用いることができる。
【0011】
前記中央外装部と4つの分岐線外装部との境界位置となる底面の4箇所の外面に補強用突起を設け、又は前記4カ所に段差部を設け、中央外装部と分岐線外装部の底面高さを変えてもよい。
車体パネルから突出するエッジやバリと対応する箇所を、前記のように高さを変えて、出来るだけ干渉しないようにすることができる。
【0012】
また、前記中央外装部の4隅で且つ隣接する前記分岐線外装部の連結部分に蛇腹状または1つの円弧状の屈曲部を設け、該屈曲部を変形させて前記分岐線の配線方向に応じて分岐線外装部を傾斜可能としてもよい。
可撓性を有するディップ成形品であるため、前記のように若干曲げることができるが、前記のように容易に変形できる屈曲部を予め設けておくと、隣接する分岐線外装部との間が45°や150°等であっても、分岐線外装部を屈曲部を支点として傾斜させることができる。
【0013】
また、前記各分岐線外装部は断面半円環形状、または底壁から両側壁が近接する方向に突出する台形状としてもよい。
ディップ成形品であるため、下部が広がり、取り出し側の上部が狭くなる所謂アンダーカット形状とすることができ、前記のように上向きに狭くなる台形状とすることができる。このように台形状とすると、各分岐線を分岐線外装部の内部に挿通した状態で、分岐線を仮保持した状態とすることができ、テープ巻き作業が容易となる。
【0014】
前記各分岐線外装部の先端外周に突設するテープ止め突起と粘着テープの幅寸法をあけて分岐線外装部の中間位置から中間突起を設け、該中間突起とテープ止め突起とで粘着テープを挟むようにしてよい。
【0015】
さらに、テープ止め突起より前記分岐線外装部を更に延長し、該延長部の先端に第3突起を設け、該第3突起と前記テープ止め突起との間に前記ワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブの谷部向け傾斜部を挿入して連結可としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
前述した説明より明らかなように、本発明のワイヤハーネスの分岐部の保護材は、ディップ成形品からなる可撓性を有する十字形状の保護材としているため、十字分岐の分岐部を保護することができる。かつ、分岐角度が90度からずれていても追従させることができ、さらに、分岐線外装部の先端も容易に切断できるため、T字分岐用としても共用することができる。特に、ディップ成形であるため成形コストが安価にできる等の種々の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態のワイヤハーネスの分岐部と保護材とを示す分解斜視図である。
【図2】前記ワイヤハーネスの分岐部に保護材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】前記保護材を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図4】前記保護材の他の使用例を示す概略図である。
【図5】前記保護材の更に他の使用例を示す概略図である。
【図6】第2実施形態の保護材の正面図である。
【図7】第3実施形態の保護材の平面図である。
【図8】第4実施形態の保護材の一部斜視図である。
【図9】第5実施形態の保護材の正面図である。
【図10】第6実施形態の保護材の正面図である。
【図11】(A)(B)は従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に第1実施形態を示す。
実施形態の保護材1は、四輪車または二輪車からなる車両に配索するワイヤハーネス2の十字分岐部3を保護する保護材であり、塩化ビニル材を用いてディップ成形した可撓性を有する成形品からなる。
【0019】
保護材1は、上面開口の十字形状で、略四角形状の中央外装部10と、該中央外装部10の四辺部から、断面半円環状とした分岐線外装部11、12、13、14を突設している。中央外装部10を半円環状とした分岐線外装部11〜14で囲むことにより、中央外装部10も底壁10aと4隅に立設した円弧状周壁10b〜10eを備えた皿形状としている。
【0020】
前記4つの各分岐線外装部11〜14の先端外周にテープ止め突起11a〜14aを突設している。該テープ止め突起11a〜14aと前記中央外装部10との連続位置までの寸法S1は巻き付ける粘着テープ20の幅より若干広くしている。
【0021】
また、中央外装部10の底壁と4つの分岐線外装部11〜14との境界位置となる4箇所の外面に補強用突起15、16、17、18を設けている。
【0022】
ワイヤハーネス2の十字分岐部3への保護材1の取り付けは、ワイヤハーネス2の十字分岐部3の一面側、即ち、車両配索時にエッジやバリからなる外部干渉材が突出する車体パネルに面する一面側に保護材1を配置する。この状態で、十字分岐部3の分岐部3aを中央外装部10内に上面開口から挿入し、4本の分岐線3b〜3eを分岐線外装部11〜14内に上面開口から挿入する。
ついで、各分岐線外装部11〜14の外周面から分岐線3b〜3eの外周面にかけてそれぞれ粘着テープ20を巻き付ける。
このように、ワイヤハーネス2の十字分岐部3に保護材1を被せることにより、車両にワイヤハーネス2を配索した時に外部干渉材からワイヤハーネスを保護することができる。
【0023】
なお、車体パネルと対向する側から外部干渉材が突出する場合には、図4に示すように、一対の保護材1、1でワイヤハーネス2の十字分岐部3を挟んだ状態で両面に被せる。この状態で、対向位置となる各一対の分岐線外装部11〜14に粘着テープ20を巻き付けると、十字分岐部3を完全に一対の保護材で被覆することができる。
【0024】
また、ワイヤハーネス2の分岐が3方向に分岐するT字分岐の場合、図5に示すように、前記保護材1の4つの分岐線外装部11〜14のうち、一つの分岐線外装部12を中央外装部10との連結位置で切断し、分岐線外装部11、13、14の3つとしている。
【0025】
図6に第2実施形態の保護材1−Aを示す。
該保護材1−Aは、中央外装部10と分岐線外装部11〜14との連続部に段差19を設け、中央外装部10を深底としている。他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
前記構成とすると、車両配索時に中央外装部10を車体パネルP側に近接させ、分岐線外装部11〜14を車体パネルPより浮かせて配置し、分岐線外装部14との対向位置の車体パネルPのバリPbとの間に距離をあけることができる。
【0027】
図7に第3実施形態の保護材1−Bを示す。
保護材1−Bは、中央外装部10の4隅で且つ隣接する分岐線外装部11と12、12と13、13と14、14と11の連結部分に蛇腹状屈曲部21〜24を設け、分岐線外装部11〜14を外装する分岐線の配線方向に応じて傾斜できるようにしている。他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
なお、連続した複数の屈曲部からなる前記蛇腹状屈曲部に変えて、1つの大きな外方へ膨出させた円弧状屈曲部としてもよい。
【0028】
図8に第4実施形態の保護材1−Cを示す。
保護材1−Cは各分岐線外装部11〜14は底壁11b〜14bから立設する両側壁11c〜14c、11d〜14dが近接する方向に傾斜する台形状としている。
この台形状のアンダーカットはディップ成形であるため、容易に成形できる。
他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
前記のように上面開口側を幅狭な台形状とし、これら分岐線外装部11〜14に分岐線3b〜3eをそれぞれ上面開口を押し広げて挿入すると、挿入後に弾性復帰して、各分岐線外装部11〜14に分岐線3b〜3eをそれぞれ仮保持できる。よって、粘着テープ20の巻き付けを容易とすることができる。
【0030】
図9に第5実施形態の保護材1−Dを示す。
保護材1−Dは各分岐線外装部11〜14の先端外周に突設するテープ止め突起11a〜14aと粘着テープ20の幅寸法をあけて分岐線外装部11〜14の中間位置から中間突起11h〜14hを設け、該中間突起11h〜14hと先端のテープ止め突起11a〜14aとで粘着テープ20を挟むようにしている。
他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
図10に第6実施形態の保護材1−Eを示す。
保護材1−Eは各分岐線外装部11〜14の先端外周に突設するテープ止め突起11a〜14a(11a、13aは不図示)より更に延長し、該延長部の先端に第3突起11j〜14j(11j、13jは不図示)を設け、テープ止め突起11a〜14aと第3突起11j〜14jとの間に分岐線3b〜3eに外装するコルゲートチューブ60の先端挿入凹部11m〜14m(11m、13mは不図示)を設けている。
他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
上記構成とすると、コルゲートチューブ60の先端エッジを先端挿入凹部11m〜14mに挿入することができ、コルゲートチューブの先端エッジが分岐線に接触して損傷が生じるのを防止できる。
【符号の説明】
【0032】
1、1A〜1E 保護材
2 ワイヤハーネス
3 十字分岐部
3a 分岐中央部
3b〜3e 分岐線
10 中央外装部
11〜14 分岐線外装部
20 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四輪車または二輪車に配索するワイヤハーネスの分岐部に取り付ける保護材であって、
上面開口の十字形状で、四角形状の中央外装部と、該中央外装部の4方からそれぞれ延在する分岐線外装部とからなる可撓性を有するディップ成形品であり、前記4つの各分岐線外装部の先端外周にテープ止め突起を突設し、
前記ワイヤハーネスの分岐部を前記中央外装部内に載置すると共に各分岐線を前記分岐線外装部にそれぞれ載置した後に該分岐線外装部から分岐線にかけて粘着テープを巻き付けてワイヤハーネスに取り付けるワイヤハーネスの保護材。
【請求項2】
前記4つの分岐線外装部は前記粘着テープの幅以上とし、かつ、
前記ワイヤハーネスの分岐部から分岐する分岐線の本数が4本未満であれば分岐線の本数に応じて不要な分岐線外装部を切除可能とするものである請求項1に記載のワイヤハーネスの保護材。
【請求項3】
前記中央外装部と4つの分岐線外装部との境界位置となる底面の4箇所の外面に補強用突起を設け、又は前記4カ所に段差部を設けて中央外装部と分岐線外装部の底面高さを変えている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネスの保護材。
【請求項4】
前記中央外装部の4隅で且つ隣接する前記分岐線外装部の連結部分に蛇腹状または1つの円弧状の屈曲部を設け、該屈曲部を変形させて前記分岐線の配線方向に応じて分岐線外装部を傾斜可能としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの保護材。
【請求項5】
前記各分岐線外装材は断面半円環形状、または底壁から両側壁が近接する方向に突出する形状としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの保護材。
【請求項6】
前記各分岐線外装部の先端外周に突設するテープ止め突起と粘着テープの幅寸法をあけて分岐線外装部の中間位置から中間突起を設け、該中間突起とテープ止め突起とで粘着テープを挟むようにしている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの保護材。
【請求項7】
前記テープ止め突起より前記分岐線外装部を更に延長し、該延長部の先端に第3突起を設け、該第3突起と前記テープ止め突起との間に前記ワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブの谷部向け傾斜部を挿入して連結可としている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの保護材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−115043(P2012−115043A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261797(P2010−261797)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】