説明

ワイヤハーネス及び電線保護具

【課題】電線束の分岐部に取り付けられた電線保護具を備えるワイヤハーネスにおいて、電線束の枝線部を電線保護具内に位置決めする作業を大幅に軽減できること。
【解決手段】電線保護具1において、枝線保護部20は、電線束9における幹線部91が挿入される溝を形成する幹線保護部10と一体に形成され、枝線部92の一部が挿入される溝23を形成する部分である。枝線保護部20には第一突起部51及が形成され、枝線保護部20の溝23を塞ぐ枝線用蓋部32には第二突起部52が形成されている。合計3つ以上の第一突起部51及び第二突起部52は、溝23内で突起し、溝23に沿う方向において交互に間隔を空けて並んで形成され、枝線部92を蛇行する状態に押し曲げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線束の分岐部を保護する電線保護具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤーハーネスは、幹線部から1つ又は複数の枝線部へ枝分かれした分岐構造を有する電線束を備えることが多い。さらに、ワイヤーハーネスは、電線束の分岐部に取り付けられた電線保護具を備えることが多い。分岐部用の電線保護具は、周辺の部材から電線を保護し、電線束の分岐形状を所望の形状に維持するための部材であり、通常、樹脂の成形部材である。
【0003】
分岐部用の電線保護具は、幹線部が挿入される溝を形成する幹線保護部と、枝線部が挿入される溝を形成する枝線保護部とを有する。そして、電線束の枝線部は、電線保護具の枝線保護部に位置決めされる。従来、電線束の枝線部を電線保護具の枝線保護部に位置決めするためにいくつかの手段が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電線束の枝線部が、電線保護具における枝線保護部の先端部分に粘着テープにより固定されることが示されている。
【0005】
また、特許文献2には、電線束の枝線部が、電線保護具における枝線保護部の先端部分に結束用ベルトにより固定されることが示されている。さらに、特許文献2には、電線束の枝線部が、電線保護具の溝内に設けられた壁に沿って折り返された上で枝線の出口まで配線されることにより、枝線部が電線保護具内で位置決めされることが示されている。
【0006】
また、特許文献3には、電線束の枝線部が、電線保護具における枝線保護部の側壁に設けられた複数の壁の間に曲げて挿入されることにより、枝線部が枝線保護部内で位置決めされる構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−162262号公報
【特許文献2】特開2007−330005号公報
【特許文献3】特開2004−166454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電線束の枝線部が、電線保護具の一部に粘着テープ又は結束用ベルトにより固定される場合、枝線部の固定に要する作業工数及び部品管理の工数が大きくなる。また、ワイヤハーネスの製造工数の低減のため、電線束の枝線部を曲げながら電線保護具の溝内の壁の間に配線する作業についても、さらなる作業工数の低減が求められている。
【0009】
本発明は、電線束の分岐部に取り付けられた電線保護具を備えるワイヤハーネスにおいて、電線束の枝線部を電線保護具内に位置決めする作業を大幅に軽減できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係るワイヤハーネスは、幹線部とその幹線部から分岐した枝線部とを有する電線束と、前記電線束の分岐部を覆う電線保護具と、を備える。さらに、第1発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記電線保護具は、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、前記電線束における前記幹線部の一部が挿入された第一の溝を形成する幹線保護部である。
(2)第2の構成要素は、前記幹線保護部と一体に形成され、前記電線束における前記枝線部の一部が挿入された第二の溝を形成する枝線保護部である。
(3)第3の構成要素は、前記幹線保護部及び前記枝線保護部と組み合わされて前記第一の溝及び前記第二の溝を塞ぐ蓋部である。
(4)第4の構成要素は、前記枝線保護部に形成され、前記第二の溝内で前記蓋部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有し、該頭頂部が前記枝線部を押し曲げる第一突起部である。
(5)第5の構成要素は、前記蓋部に形成され、前記第二の溝内で前記枝線保護部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有し、該頭頂部が前記枝線部を押し曲げる第二突起部である。さらに、第1発明に係るワイヤハーネスの前記電線保護具において、合計3つ以上の前記第一突起部及び前記第二突起部が、前記第二の溝に沿う方向において交互に間隔を空けて並んで形成されている。
【0011】
第2発明に係るワイヤハーネスは、第1発明に係るワイヤハーネスの一例である。第2発明に係るワイヤハーネスの前記電線保護具において、合計3つ以上の前記第一突起部及び前記第二突起部のうちの少なくとも1つが、前記枝線保護部の先端側から前記幹線保護部側へ傾斜して突起する傾斜突起部を含む。
【0012】
第3発明に係るワイヤハーネスは、第1発明又は第2発明に係るワイヤハーネスの一例である。第3発明に係るワイヤハーネスの前記電線保護具において、前記第一突起部及び前記第二突起部の前記頭頂部に凹凸が形成されている。
【0013】
第4発明に係るワイヤハーネスは、第1発明から第3発明のいずれかに係るワイヤハーネスの一例である。第4発明に係るワイヤハーネスにおいて、前記電線束の前記枝線部は、前記幹線部から分岐した電線を覆う可撓性を有する筒状の部材である保護チューブを備える。この保護チューブにおける、前記第一突起部及び前記第二突起部により押し曲げられた部分の前記第一突起部及び前記第二突起部に対向する外側面には、周方向に沿う複数の切り目が形成されている。
【0014】
また、本発明は、第1発明から第4発明に係るワイヤハーネスが備える電線保護具の発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
第1発明において、電線束の枝線部は、枝線保護部の溝内において、枝線保護部から突起する第一突起部及び蓋部から突起する第二突起部からなる3つ以上の突起部により上下から交互に押し曲げられ、蛇行した状態で保持される。そのため、枝線部に引っ張り力が加わった場合でも、蛇行した状態の枝線部は、突起部に引っ掛かって位置がずれず、枝線保護部の溝内に安定的に位置決めされる。
【0016】
また、第1発明において、3つ以上の突起部は、枝線保護部と枝線保護部の溝を塞ぐ蓋部とに分かれて形成されている。そのため、電線束の枝線部が、枝線保護部の溝内に真っ直ぐな状態で挿入された後、枝線保護部の溝が、蓋部によって塞がれるだけで、枝線部は、3つ以上の突起部により押し曲げられて蛇行した状態となる。即ち、第1発明によれば、電線束の枝線部を曲げながら枝線保護部の溝内に配線する作業は不要であり、電線束の枝線部を電線保護具内に位置決めする作業が大幅に軽減される。
【0017】
さらに、第2発明に係るワイヤハーネスにおいては、電線束の枝線部に引っ張り力が加わった場合、傾斜突起部をより高く起き上がらせる方向へ撓ませるような力が、枝線部から傾斜突起部に対して作用する。そのため、傾斜突起部が撓むほどの強い力が電線束の枝線部に対して加わった場合、傾斜突起部は、枝線部をより大きく蛇行させるように押し曲げる。従って、第2発明によれば、傾斜突起部を含む突起部による枝線部の保持力がより高まる。
【0018】
さらに、第3発明によれば、突起部の頭頂部の凹凸が、枝線部とそれに接する突起部の頭頂部との摩擦抵抗を高めるため、枝線部が突起部に対して滑って位置ずれする不都合は生じにくくなる。
【0019】
さらに、第4発明によれば、突起部の頭頂部が、枝線部における保護チューブの切り目に引っ掛かることにより、枝線部が突起部に対して滑って位置ずれする不都合はさらに生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電線保護具1の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス2の斜視図である。
【図3】ワイヤハーネス1における枝線部の部分の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス2Aにおける枝線部の部分の断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス2Bにおける枝線部の部分の断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2Cにおける枝線部の部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0022】
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る電線保護具1及びそれを備えたワイヤハーネス2の構成について説明する。ワイヤハーネス2は、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスである。また、電線保護具1は、ワイヤハーネス2が備える電線束9の分岐部に取り付けられる保護具である。
【0023】
<電線保護具>
図1及び図2に示されるように、電線保護具1は、幹線部91と幹線部91から分岐した枝線部92とを有する電線束9における分岐部を覆う保護具である。電線保護具1は、幹線保護部10と、枝線保護部20と、蓋部30と、ロック機構41,42と、突起部51,52とを有している。なお、図1において、電線束9は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0024】
電線保護具1は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂からなる部材である。
【0025】
<幹線保護部>
幹線保護部10は、電線束9における幹線部91の一部が挿入される幹線用溝13を形成する部分である。より具体的には、幹線保護部10は、樋状に形成された部分であり、幹線用溝13の底面を形成する底板部11と、幹線用溝13の両側面を形成する一対の側壁部12とにより構成されている。一対の側壁部12のうちの一方における枝線保護部20と連なる部分には、開口が形成されている。
【0026】
<枝線保護部>
枝線保護部20は、幹線保護部10と一体に形成され、電線束9における枝線部92の一部が挿入される枝線用溝23を形成する部分である。より具体的には、枝線保護部20は、樋状に形成された部分であり、枝線用溝23の底面を形成する底板部21と、枝線用溝23の両側面を形成する一対の側壁部22により構成されている。枝線用溝23の一端は、幹線保護部10の一方の側壁部12に形成された開口を通じて幹線用溝13と連通している。
【0027】
枝線保護部20における幹線保護部10に対して反対側の開放端が、枝線出口24である。以下の説明において、枝線保護部20における幹線保護部10側を根元側、枝線保護部20における枝線出口24側を先端側と称する。
【0028】
各図に示される座標軸において、X軸方向は、枝線用溝23に沿う方向を表し、Y軸方向は、枝線用溝23の幅方向、即ち、枝線用溝23に沿う方向に直交する方向を表し、Z軸方向は、枝線用溝23の深さ方向を表す。図1及び図2に示される例では、枝線保護部20は、幹線用溝13に対して直交する方向に沿う枝線用溝23を形成している。
【0029】
<蓋部>
蓋部30は、幹線保護部10及び枝線保護部20と組み合わされて幹線用溝13及び枝線用溝23を塞ぐ部分である。より具体的には、蓋部30は、板状に形成され、幹線用溝13の開口を塞ぐ幹線用蓋部31と、枝線用溝23の開口を塞ぐ枝線用蓋部32とにより構成されている。組み合わされた幹線保護部10及び枝線保護部20は、分岐した筒を形成する。
【0030】
本実施形態では、幹線保護部10と蓋部30とは、柔軟性を有する連結部40を介して繋がっている。連結部40は、幹線保護部10に対して蓋部30を回動可能に支持するヒンジである。なお、幹線保護部10及び枝線保護部20からなる本体部と蓋部30とは、それぞれ個別の部材であることも考えられる。以下の説明において、電線保護具1における幹線保護部10及び枝線保護部20の部分のことを本体部10,20と称する。
【0031】
<ロック機構>
また、本体部10,20及び蓋部30には、蓋部30が本体部10,20における幹線用溝13及び枝線用溝23を塞ぐ状態で、蓋部30を本体部10,20に固定するロック機構41,42が設けられている。
【0032】
図1及び図2に示されるロック機構41,42は、蓋部30の外縁から本体部10,20側へ突出して形成された爪部42と、本体部10,20の外縁に形成された枠部41とにより構成されている。爪部42が枠部41の中空部に挿入されることにより、爪部42の一部が枠部41に引っ掛かり、蓋部30が本体部10,20に固定される。これにより、蓋部30は、本体部10,20と組み合わされた状態、即ち、本体部10,20における幹線用溝13及び枝線用溝23を塞ぐ状態で保持される。
【0033】
<突起部>
また、電線保護具1は、蓋部30の枝線用蓋部32及び枝線保護部20の部分、即ち、電線束9の枝線部92の周囲を囲う部分に形成された3つ以上の突起部を備える。以下の説明において、枝線保護部20に形成された突起部を第一突起部51、枝線用蓋部32側に形成された突起部を第二突起部52と称する。
【0034】
第一突起部51は、枝線保護部20に形成され、枝線用溝23内で蓋部30へ向かって突起している。さらに、第一突起部51は、枝線用溝23に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部511を有する。即ち、第一突起部51は、枝線用溝23を横断する壁状に形成されている。本実施形態では、第一突起部51は、枝線用溝23の幅方向の稜線をなす頭頂部511を有する。
【0035】
また、第二突起部52は、枝線用蓋部32に形成され、枝線用溝23内で枝線保護部20へ向かって突起している。さらに、第二突起部52は、枝線用溝23に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部521を有する。即ち、第二突起部52は、枝線用溝23を横断する壁状に形成されている。本実施形態では、第二突起部52は、枝線用溝23の幅方向の稜線をなす頭頂部521を有する。
【0036】
本実施形態では、第一突起部51及び第二突起部52は、湾曲して凹んだ稜線をなす頭頂部511,521を有する。これにより、第一突起部51及び第二突起部52各々の頭頂部511,521は、枝線部92における湾曲した周面に対してより広い範囲で接する。
【0037】
また、本実施形態では、第一突起部51及び第二突起部52は、枝線用溝23の深さ方向に沿って、即ち、枝線保護部20の底板部21及び枝線用蓋部32の各々から垂直に起立して形成されている。
【0038】
なお、第一突起部51の頭頂部511及び第二突起部52の頭頂部521のうちの一方又は両方が、枝線用溝23に沿う方向に対して斜めに交差する稜線をなすことも一応考えられる。
【0039】
第一突起部51及び第二突起部52は、枝線用溝23の深さに満たない高さで形成されている。そのため、蓋部30が本体部10,20に組み合わされた状態において、第一突起部51と枝線用蓋部32との間、及び、第二突起部52と枝線保護部20の底板部21との間、の各々に、枝線部92を敷設可能な空間が形成されている。
【0040】
また、第一突起部51の頭頂部511及び第二突起部52の頭頂部521には、凹凸が形成されている。この凹凸は、枝線部92に対する第一突起部51及び第二突起部52の摩擦抵抗を高める役割を果たす。
【0041】
本実施形態においては、第一突起部51は、枝線保護部20を構成する底板部21及び一対の側壁部22の両方に連なって形成されている。そのため、第一突起部51は、一対の側壁部22に連なった部分において補強され、撓みにくい構造を有している。
【0042】
一方、第二突起部52は、その根元部分のみが枝線用蓋部32に連なって形成されている。そのため、第二突起部52は、第一突起部51と同じ厚みで形成されている場合、第一突起部51よりも撓みやすい。
【0043】
また、合計3つ以上の第一突起部51及び第二突起部52は、枝線用溝23に沿う方向(X軸方向)において交互に間隔を空けて並んで形成されている。ここで、「交互に」とは、第一突起部51どうし、又は、第二突起部52どうしが隣り合うことがなく、必ず、第一突起部51と第二突起部52とが隣り合うことを意味する。従って、第一突起部51の数及び第二突起部52の数は、等しい又は一方が1つ多い。
【0044】
図1及び図3に示される例では、2つの第一突起部51と1つの第二突起部52とが、枝線用溝23に沿う方向(X軸方向)において交互に間隔を空けて並んで形成されている。なお、1つの第一突起部51と2つの第二突起部52とが、交互に間隔を空けて並んで形成されることも考えられる。また、合計4つ以上の第一突起部51及び第二突起部52が、交互に間隔を空けて並んで形成されることも考えられる。
【0045】
<ワイヤハーネス>
続いて、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス2について説明する。図3は、ワイヤハーネス2における枝線部92の部分の断面図である。
【0046】
ワイヤハーネス2は、電線束9と、電線束9の分岐部を覆う電線保護具1とを備える。ワイヤハーネス2において、電線束9における幹線部91の一部が、電線保護具1の幹線保護部10における幹線用溝13に挿入されている。さらに、電線束9における枝線部92の一部が、電線保護具1の枝線保護部20における枝線用溝23に挿入されている。
【0047】
本実施形態では、電線束9の枝線部92は、幹線部91から分岐した電線である1本又は複数本の枝線921と、枝線921を覆う可撓性を有する筒状の部材である保護チューブ922とを有する。保護チューブ922は、例えば、ポリアミド、シリコン、ポリプロピレン又はポリエチレンなどの樹脂材料からなる。
【0048】
また、保護チューブ922は、不図示の粘着テープなどによって枝線921に固定されている。枝線部92の末端には、コネクタ93が設けられている。
【0049】
図3に示されるように、電線束9の枝線部92は、枝線保護部20の枝線用溝23内において、枝線保護部20から突起する第一突起部51及び枝線用蓋部32から突起する第二突起部52からなる3つ以上の突起部により上下から交互に押し曲げられ、蛇行した状態で保持されている。
【0050】
<効果>
図3に示されるように、ワイヤハーネス2において、電線束9の枝線部92は、枝線保護部20の枝線用溝23内において、3つ以上の突起部により押し曲げられ、蛇行した状態で保持されている。そのため、枝線部92に引っ張り力が加わった場合でも、蛇行した状態の枝線部92は、突起部51,52に引っ掛かって位置がずれず、枝線保護部20の枝線用溝23内に安定的に位置決めされる。
【0051】
また、ワイヤハーネス2、3つ以上の突起部51,52は、枝線保護部20と枝線用溝23を塞ぐ枝線用蓋部32とに分かれて形成されている。そのため、電線束9の枝線部92が、枝線保護部20の枝線用溝23内に真っ直ぐな状態で挿入された後、本体部10,20の溝13,23が蓋部30によって塞がれるだけで、枝線部92は、3つ以上の突起部51,52により押し曲げられて蛇行した状態となる。
【0052】
即ち、電線保護具1が採用されることにより、電線束9の枝線部92を曲げながら枝線用溝23内に配線する作業は不要であり、枝線部92を電線保護具1内に位置決めする作業が大幅に軽減される。
【0053】
さらに、電線保護具1が採用されることにより、各突起部の頭頂部511,521の凹凸が、枝線部92とそれに接する突起部51,52の頭頂部511,521との摩擦抵抗を高めるため、枝線部92が突起部51,52に対して滑って位置ずれする不都合は生じにくくなる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、図4を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る電線保護具1A及びそれを備えるワイヤハーネス2Aについて説明する。ワイヤハーネス2Aは、図1から図3に示されたワイヤハーネス2と比較して、電線保護具における一部の突起部の形状のみが異なる構成を有している。図4において、図1から図3に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電線保護具1Aにおける電線保護具1と異なる点についてのみ説明する。
【0055】
電線保護具1Aは、枝線保護部20に形成された2つの第一突起部51と、枝線用蓋部32に形成された1つの第二突起部52Aとを備える。電線保護具1Aの第一突起部51は、電線保護具1の第一突起部51と同じ構造を有する。
【0056】
一方、電線保護具1Aの第二突起部52Aは、電線保護具1の第二突起部52とは異なり、枝線保護部20の先端側(枝線出口24側)から根元側(幹線保護部10側)へ傾斜して突起している。第二突起部52Aは、傾斜突起部の一例であり、電線保護具1Aは、枝線部92を押し曲げる3つ以上の突起部のうちの一部が傾斜突起部である場合の例である。
【0057】
ワイヤハーネス2においては、電線束9の枝線部92に対して末端方向D1への引っ張り力が加わった場合、第二突起部52Aをより高く起き上がらせる方向D2へ撓ませるような力が、枝線部92から第二突起部52Aに対して作用する。そのため、第二突起部52Aが撓むほどの強い力が電線束9の枝線部92に対して加わった場合、第二突起部52Aは、枝線部92をより大きく蛇行させるように押し曲げる。
【0058】
従って、電線保護具1Aが採用されることにより、電線保護具1が採用された場合と同様の作用及び効果が得られ、さらに、第二突起部52Aを含む3つ以上の突起部による枝線部92の保持力がより高まる。
【0059】
また、電線保護具1Aが採用された場合、特に補強がなされておらず傾斜して起立する第二突起部52Aは、その頭頂部521が枝線用溝23の深さ方向において変形可能な可撓性を有する。そのため、第二突起部52Aは、比較的細い枝線部92を押し曲げることが可能な程度に背が高く形成されていれば、その可撓性により比較的太い枝線部92に対しても適応可能である。従って、枝線部92の太さに対する適応性が高まる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る電線保護具1B及びそれを備えるワイヤハーネス2Bについて説明する。ワイヤハーネス2Bは、図1から図3に示されたワイヤハーネス2と比較して、電線保護具における3つの突起部の形状のみが異なる構成を有している。図5において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電線保護具1Bにおける電線保護具1及び電線保護具1Aと異なる点についてのみ説明する。
【0061】
電線保護具1Bは、枝線保護部20に形成された2つの第一突起部51Aと、枝線用蓋部32に形成された1つの第二突起部52Aとを備える。電線保護具1Bの第二突起部52Aは、電線保護具1Aの第二突起部52Aと同じ構造を有する傾斜突起部である。
【0062】
一方、電線保護具1Bの第一突起部51Aは、電線保護具1,1Aの第一突起部51とは異なり、枝線保護部20の先端側(枝線出口24側)から根元側(幹線保護部10側)へ傾斜して突起している。さらに、電線保護具1Bの第一突起部51Aは、枝線保護部20における一対の側壁部22各々との間に隙間を隔てて形成されている。即ち、電線保護具1Bの第一突起部51Aは、一対の側壁部22と連なっていないため、電線保護具1,1Aの第一突起部51よりも撓みやすい。
【0063】
第一突起部51A及び第二突起部52Aは、傾斜突起部の一例であり、電線保護具1Bは、枝線部92を押し曲げる3つ以上の突起部の全てが傾斜突起部である場合の例である。
【0064】
ワイヤハーネス2においては、電線束9の枝線部92に対して末端方向D1への引っ張り力が加わった場合、第一突起部51A及び第二突起部52Aをより高く起き上がらせる方向D2,D3へ撓ませるような力が、枝線部92から第一突起部51A及び第二突起部52Aに対して作用する。そのため、第一突起部51A及び第二突起部52Aが撓むほどの強い力が電線束9の枝線部92に対して加わった場合、第一突起部51A及び第二突起部52Aは、枝線部92をより大きく蛇行させるように押し曲げる。
【0065】
従って、電線保護具1Bが採用されることにより、電線保護具1が採用された場合と同様の作用及び効果が得られ、さらに、第一突起部51A及び第二突起部52Aによる枝線部92の保持力がより高まる。
【0066】
また、電線保護具1Bが採用された場合、特に補強がなされておらず傾斜して起立する第一突起部51A及び第二突起部52Aは、それらの頭頂部511,521が枝線用溝23の深さ方向において変形可能な可撓性を有する。そのため、第一突起部51A及び第二突起部52Aは、比較的細い枝線部92を押し曲げることが可能な程度に背が高く形成されていれば、その可撓性により比較的太い枝線部92に対しても適応可能である。従って、枝線部92の太さに対する適応性が高まる。
【0067】
<第4実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス2Cについて説明する。ワイヤハーネス2Cは、図1から図3に示されたワイヤハーネス2と比較して、枝線部92における保護チューブの構造のみが若干異なる構成を有している。図6において、図1から図3に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2Cにおけるワイヤハーネス2と異なる点についてのみ説明する。
【0068】
ワイヤハーネス2Cは、ワイヤハーネス2と同様に、枝線921を覆う可撓性を有する筒状の部材である保護チューブ922Aを有する。但し、ワイヤハーネス2Cの保護チューブ922Aにおける、第一突起部51及び第二突起部52により押し曲げられた部分の第一突起部51及び第二突起部52に対向する外側面には、周方向に沿う複数の切り目9221が形成されている。
【0069】
ワイヤハーネス2Cが採用されることにより、ワイヤハーネス2が採用された場合と同様の作用及び効果が得られる。さらに、ワイヤハーネス2Cが採用されることにより、各突起部51,52の頭頂部511,521が、枝線部92における保護チューブ922Aの切り目9221に引っ掛かることにより、枝線部92が突起部51,52に対して滑って位置ずれする不都合はさらに生じにくくなる。
【0070】
<その他>
電線保護具1,1A,1Bにおいて、枝線保護部20は、幹線用溝13に対して直交する方向に沿う枝線用溝23を形成している。しかしながら、枝線保護部20が、幹線用溝13に対して90°以外の角度をなす方向に沿う枝線用溝23を形成することも考えられる。
【0071】
また、電線保護具1,1A,1Bは、1つの枝線保護部20のみ備えている。しかしながら、電線保護具1,1A,1Bが、1つの幹線保護部10と複数の枝線保護部20とを備えることも考えられる。
【0072】
また、電線保護具1,1A,1Bにおいて、枝線保護部20は、幹線用溝13の中間部分から枝分かれした枝線用溝23を形成している。しかしながら、電線保護具1が、複数の枝線保護部20を備え、それら複数の枝線保護部20が、幹線用溝13の一方の端から複数の方向へ分岐した複数の枝線用溝23を形成することも考えられる。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B 電線保護具
2,2A,2B,2C ワイヤハーネス
9 電線束
10 幹線保護部(本体部)
11 幹線保護部の底板部
12 幹線保護部の側壁部
13 幹線用溝
20 枝線保護部
21 枝線保護部の底板部
22 枝線保護部の側壁部
23 枝線用溝
24 枝線出口
30 蓋部
31 幹線用蓋部
32 枝線用蓋部
40 連結部
41 枠部(ロック機構)
42 爪部(ロック機構)
51,51A 第一突起部
52,52A 第二突起部
91 幹線部
92 枝線部
93 コネクタ
511 第一突起部の頭頂部
521 第二突起部の頭頂部
921 枝線
922,922A 保護チューブ
9221 切り目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線部と該幹線部から分岐した枝線部とを有する電線束と、
前記電線束の分岐部を覆う電線保護具と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記電線保護具は、
前記電線束における前記幹線部の一部が挿入された第一の溝を形成する幹線保護部と、
前記幹線保護部と一体に形成され、前記電線束における前記枝線部の一部が挿入された第二の溝を形成する枝線保護部と、
前記幹線保護部及び前記枝線保護部と組み合わされて前記第一の溝及び前記第二の溝を塞ぐ蓋部と、
前記枝線保護部に形成され、前記第二の溝内で前記蓋部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有し、該頭頂部が前記枝線部を押し曲げる第一突起部と、
前記蓋部に形成され、前記第二の溝内で前記枝線保護部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有し、該頭頂部が前記枝線部を押し曲げる第二突起部と、を備え、
合計3つ以上の前記第一突起部及び前記第二突起部が、前記第二の溝に沿う方向において交互に間隔を空けて並んで形成されていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
合計3つ以上の前記第一突起部及び前記第二突起部のうちの少なくとも1つが、前記枝線保護部の先端側から前記幹線保護部側へ傾斜して突起する傾斜突起部を含む、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第一突起部及び前記第二突起部の前記頭頂部に凹凸が形成されている、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記電線束の前記枝線部は、前記幹線部から分岐した電線を覆う可撓性を有する筒状の部材である保護チューブを備え、
前記保護チューブにおける、前記第一突起部及び前記第二突起部により押し曲げられた部分の前記第一突起部及び前記第二突起部に対向する外側面には、周方向に沿う複数の切り目が形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
幹線部と該幹線部から分岐した枝線部とを有する電線束における分岐部を覆う電線保護具であって、
前記電線束における前記幹線部の一部が挿入される第一の溝を形成する幹線保護部と、
前記幹線保護部と一体に形成され、前記電線束における前記枝線部の一部が挿入される第二の溝を形成する枝線保護部と、
前記幹線保護部及び前記枝線保護部と組み合わされて前記第一の溝及び前記第二の溝を塞ぐ蓋部と、
前記枝線保護部に形成され、前記第二の溝内で前記蓋部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有する第一突起部と、
前記蓋部に形成され、前記第二の溝内で前記枝線保護部へ向かって突起するとともに前記第二の溝に沿う方向に交差する方向の稜線をなす頭頂部を有する第二突起部と、を備え、
合計3つ以上の前記第一突起部及び前記第二突起部が、前記第二の溝に沿う方向において交互に間隔を空けて並んで形成されていることを特徴とする電線保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90527(P2013−90527A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231573(P2011−231573)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】