説明

ワイヤハーネス接続用コネクタ

【課題】簡素かつ軽量な構成でワイヤハーネス同士の電気接続を行う。
【解決手段】ワイヤハーネス12,18に含まれる電線W同士を電気的に接続するためのコネクタWCを提供する。このコネクタWCは、各電線Wの端末に装着される第1端子20A及び第2端子20Bと、これらを保持する絶縁ハウジング30とを備える。絶縁ハウジング30は、複数の第1端子収容室34Aを囲む第1端子保持部32Aと、これと反対側に開口する第2端子収容室34Bを囲む第2端子保持部32Bとを有する。第1端子保持部32Aは、各第1端子収容室34Aに挿入される第1端子20Aを係止する第1端子係止部36Aを含む。第2端子保持部32Bは、各第2端子収容室34Bに挿入される第2端子20Bを第1端子20Aとの嵌合位置で係止する第2端子係止部36Bを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス同士の間に介在して各ワイヤハーネスに含まれる電線同士を接続するワイヤハーネス接続用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に搭載されるワイヤーハーネスの複雑化、大型化に伴い、当該ワイヤハーネスを複数に分割し、その分割された分割ハーネス同士をコネクタを介して接続することが行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
前記の接続には、例えば図8に示すような雄コネクタ80A及び雌コネクタ80Bの組合せが多用されている。雄コネクタ80Aは、互いに接続されるべきワイヤハーネス90A,90Bのうちの一方のワイヤハーネス90Aの端末に設けられる。この雄コネクタ80Aは、複数の雄端子82Aとこれらの雄端子82Aを保持する絶縁ハウジング84Aとを備え、前記各雄端子82Aが前記ワイヤハーネス90Aに含まれる複数本の電線の端末にそれぞれ装着される。前記雌端子80Bは、他方のワイヤハーネス90Bの端末に設けられ、複数の雌端子82Bとこれらの雌端子82Bを保持する絶縁ハウジング84Bとを備える。前記各雌端子82Bは、前記各雄端子82Aと嵌合可能な形状を有し、前記ワイヤハーネス90Bに含まれる複数の電線の端末にそれぞれ装着される。
【0004】
前記両コネクタ80A,80Bの絶縁ハウジング84A,84Bも互いに嵌合可能な形状を有する。そして、当該嵌合とともに雄コネクタ80Aの各雄端子82Aが雌コネクタ80Bの各雌端子82Bに嵌合される。これにより、ワイヤハーネス90A,90Bに含まれる電線同士の電気接続が達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−176599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のようなワイヤハーネスの分割の促進は、その分割ハーネス同士を接続するためのコネクタの個数の増加を伴う。このコネクタ個数の増加は、ワイヤハーネス全体の大型化及び重量の増加を招く。特に、図8に示すようなコネクタを用いる場合、各コネクタ80A,80Bがそれぞれ複数の端子82A,82Bを保持するためのハウジング84A,84Bを具備するため、結合部位の増加に伴うワイヤハーネス全体の大型化及び重量の増大の度合いは大きい。
【0007】
このような観点から、ワイヤハーネスを極力分割せずに全体を一体化したものを製造しておき、当該ワイヤハーネスを丸ごと車両に搭載することが検討されているが、この場合でも複数のワイヤハーネス同士の接続箇所をなくすことは難しい。例えば、オプション仕様に対応するには、その仕様に対応した複数種のサブハーネスを用意しておき、これらの中から適用仕様に対応したサブハーネスを選択して共通仕様のメインハーネスに接続することが、ワイヤハーネスの量産化の観点からは好ましく、その場合に、当該メインハーネスと当該サブハーネスとの接続が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、例えばワイヤハーネスの製造過程において、当該ワイヤハーネスを構成する互いに分割された第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスとを簡素かつ軽量な構成で電気接続することができるワイヤハーネス接続用コネクタを提供することにある。本発明に係るワイヤハーネス接続用コネクタは、前記第1ワイヤハーネスに含まれる複数の電線の端末にそれぞれ装着される複数の第1端子と、前記第2ワイヤハーネスに含まれる複数の電線の端末にそれぞれ装着され、前記各第1端子と嵌合可能な形状を有する複数の第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子をこれらが互いに嵌合した状態で保持するための絶縁ハウジングとを備える。この絶縁ハウジングは、第1の方向に開口して当該開口から前記第1端子がそれぞれ挿入可能な複数の第1端子収容室を囲む第1端子保持部と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に開口して当該開口から前記第2端子がそれぞれ挿入可能な複数の第2端子収容室を囲む第2端子保持部とを有する。さらに、前記第1端子保持部は、前記各第1端子収容室に挿入される第1端子を所定の挿入深さ位置で係止する第1端子係止部を含み、前記第2端子保持部は、前記各第2端子収容室に挿入される第2端子をこの第2端子が前記第1端子係止部に係止される第1端子と嵌合可能な挿入深さ位置に係止する第2端子係止部とを含む。
【0009】
このワイヤハーネス接続用コネクタでは、単一の絶縁ハウジングが第1端子と第2端子の双方を保持するから、従来のように雄端子及び雌端子がそれぞれ別の絶縁ハウジングに保持されるコネクタに比べ、コネクタ全体の構造は著しく簡素で小さなものとなり、その重量も小さい。そして、簡易な作業で第1端子と第2端子との嵌合を行いかつその嵌合状態を保持することができる。具体的には、例えば、前記各第1端子を前記絶縁ハウジングにおける第1端子保持部の各第1端子収容室に所定の挿入深さ位置まで挿入して同位置で第1端子係止部に係止させる作業と、前記各第2端子を同じ絶縁ハウジングにおける第2端子保持部の各第2端子収容室に挿入して前記第1端子に嵌合させるとともに第2端子係止部に係止させる作業とにより、単一の絶縁ハウジング内で第1端子と第2端子との嵌合を行うことができる。さらに、当該絶縁ハウジングの第1端子係止部及び第2端子係止部が前記第1端子と前記第2端子との嵌合状態を維持する。
【0010】
前記絶縁ハウジングでは、前記第1端子収容室がこの第1端子収容室に挿入される第1端子の軸方向と直交する特定の方向に並び、前記第2端子収容室が前記第1端子収容室の並び方向と同一の方向に並ぶように配列されることが、好ましい。この配列は、当該絶縁ハウジングの厚さ方向の寸法(前記並び方向と直交する方向の寸法)の削減を可能にし、狭いスペース内でのコネクタの使用を可能にする。
【0011】
この配列は、前記絶縁ハウジングの構造のさらなる簡素化も可能にする。例えば、当該絶縁ハウジングは、前記各第1端子収容室及び前記各第2端子収容室をこれらの並び方向と直交する方向から挟む一対の主外壁と、互いに隣接する端子収容室同士の間に介在する複数の仕切り壁と、前記並び方向の両外側に位置する第1端子収容室及び第2端子収容室をそれぞれ外側から覆いながら前記主外壁同士を連結する一対の側壁とにより構成されることが可能である。この絶縁ハウジングでは、小さな占有スペース内で前記各壁が複数の第1端子収容室及び複数の第2端子収容室を画定することができる。
【0012】
さらに、前記主外壁のうちの少なくとも一方の主外壁を利用して前記第1端子係止部及び第2端子係止部を構築することも可能であり、このことが絶縁ハウジングの構造の簡素化をさらに進める。具体的には、当該主外壁に貫通溝が形成され、この貫通溝が、前記第1端子係止部及び前記第2端子係止部を構成する部分を画定してこの部分が他の部分に対して当該主外壁の厚み方向に弾性変位することを可能にするものが、好適である。この貫通溝は、当該主外壁そのものが前記各係止部を構成することを可能にする。
【0013】
より具体的に、前記各第1端子係止部および前記各第2端子係止部の形状としては、当該係止部のうち当該係止部に対応する端子収容室における端子挿入方向の奥側の端部が弾性的に撓み変位可能な自由端部を構成する片持ちばり状であって、その自由端部に対応する端子と係合する係合部が形成されたものが、好適である。
【0014】
また、前記のような端子収容室の配列は、各端子収容室内への各端子の挿入深さを絶縁ハウジングの外部から確認することも可能にできる。具体的には、前記主外壁のうちの一方の主外壁が、前記各第1端子及び前記各第2端子の前端部分を当該主外壁の外方に開放する窓を有するものであればよい。これらの窓を通じて絶縁ハウジング内への各端子の挿入深さを当該絶縁ハウジングの外部から視認することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係るワイヤハーネス接続用コネクタによれば、互いに嵌合する第1端子及び第2端子と、これらの端子を一括して保持する絶縁ハウジングとを備えるだけの簡素かつ軽量な構成で、互いに接続されるべきワイヤハーネスにそれぞれ含まれる複数の電線同士の電気接続を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るワイヤハーネス接続用コネクタが適用されるワイヤハーネスの例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス接続用コネクタの使用状態を示す斜視図である。
【図3】前記使用状態を示す一部断面斜視図である。
【図4】前記使用状態を示す平面図である。
【図5】前記ワイヤハーネス接続用コネクタの絶縁ハウジングを示す一部断面斜視図である。
【図6】前記絶縁ハウジングを示す平面図である。
【図7】前記絶縁ハウジングに雄端子が挿入されて係止された状態を示す一部断面斜視図である。
【図8】従来のコネクタの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態を図1〜図7を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス接続用コネクタWC(以下、単に「コネクタWC」と称する。)が適用されるワイヤハーネス10を示したものである。このワイヤハーネス10は、例えば自動車のインストゥルメントパネルに配索されるメインハーネス12と、このメインハーネス12から分岐する複数のサブハーネス14,16,18とを有する。このうちサブハーネス18は車両の仕様に応じて適宜交換されるものであり、このサブハーネス18と前記メインハーネス12との接続に前記コネクタWCが用いられる。換言すれば、この実施の形態では、前記メインハーネス12及び前記サブハーネス18がそれぞれ本発明に係る第1ワイヤハーネス及び第2ワイヤハーネスに相当し、前記コネクタWCを介して互いに電気的に接続される。
【0019】
ただし、本発明に係るワイヤハーネス接続用コネクタの用途はこれに限られない。本発明に係るワイヤハーネス接続用コネクタは、第1ワイヤハーネスに含まれる電線と第2ワイヤハーネスに含まれる電線とを互いに電気的に接続する場合に広く用いられ得るものである。
【0020】
前記コネクタWCの具体的構造を図2〜図7に示す。このコネクタWCは、複数の第1端子20A及び複数の第2端子20Bと、これらをまとめて保持する単一の絶縁ハウジング30とを備え、前記メインハーネス12に含まれる電線Wと、前記サブハーネス12に含まれる電線Wとを電気的に接続する。各電線Wは、導体及びこれを覆う絶縁被覆からなり、その端末部分では導体を露出させるように絶縁被覆が除去されている。
【0021】
前記各第1端子20Aは、この実施の形態では雄端子を構成し、前記メインハーネス12に含まれる電線Wの端末にそれぞれ装着される。具体的に、各第1端子20Aは、単一の金属板を曲げ加工することにより成形されたもので、対応する第2端子20Bと電気的に接触するための電気接触部22と、前記メインハーネス12に含まれる電線Wの端末に圧着される電線圧着部24とを有する。これら電気接触部22及び電線圧着部24は、互いに端子軸方向(前後方向)に互いに並ぶように配置される。
【0022】
前記電線圧着部24は、左右一対の導体バレル24a及び左右一対のインシュレーションバレル24bを有し、これらが前後に並ぶように配置される。前記導体バレル24aは、電線Wの端末において露出する前記導体を抱き込むように当該導体に圧着され、これにより当該導体と電気的に導通可能な状態となる。前記インシュレーションバレル24bは前記導体が露出する部分よりも後ろ側に位置する絶縁被覆を抱き込むように当該絶縁被覆に圧着される。前記電気接触部22は、この実施の形態では図7に示すように前記電線圧着部24から前方に延びるタブ(雄型接触部)として構成される。
【0023】
前記各第2端子20Bは、この実施の形態では雄端子である前記第1端子20Aと嵌合可能な雌端子を構成し、前記サブハーネス18に含まれる電線Wの端末にそれぞれ装着される。具体的に、各第2端子20Bも単一の金属板を曲げ加工することにより成形され、対応する第1端子20Aの電気接触部22と電気的に接触するための電気接触部26と、前記サブハーネス18に含まれる電線Wの端末に圧着される電線圧着部28とを有し、これら電気接触部26及び電線圧着部28が互いに端子軸方向(前後方向)に互いに並ぶように配置される。
【0024】
前記電線圧着部28は、前記電線圧着部24と同様に、左右一対の導体バレル28a及び左右一対のインシュレーションバレル28bを有し、これらが前後に並ぶように配置され、前記導体バレル28aが電線Wの端末において露出する導体に圧着され、前記インシュレーションバレル28bが前記導体の後方に位置する絶縁被覆に圧着される。
【0025】
前記電気接触部26は、前記電線圧着部28から前方に延びてその内側に前記電気接触部22が嵌入される箱型部と、この箱型部内に位置するばね接触片とを含む雌型接触部として構成される。前記ばね接触片は、前記箱型部内に挿入される雄型の電気接触部22と弾性的に接触することで当該電気接触部22と電気的に導通可能な状態となる。すなわち、前記電気接触部22と前記電気接触部26は、互いに嵌合な形状を有し、その嵌合により互いに電気的に導通可能な状態となる。
【0026】
前記絶縁ハウジング30は、合成樹脂等の絶縁材料により単一部品として成形されたもので、前記各第1端子20Aを保持する第1端子保持部32Aと、前記各第2端子20Bを保持する第2端子保持部32Bとを一体に有する。第1端子保持部32Aは、第1の方向(図2〜図7では右方向)に開口する複数の第1端子収容室34Aを囲む部分であり、各第1端子収容室34A内にその開口から前記第1端子20Aが挿入される。これに対して第2端子保持部32Bは、前記第1の方向と反対の方向である第2の方向(図2〜図7では左方向)に開口する複数の第2端子収容室34Bを囲む部分であり、各第2端子収容室34B内にその開口から前記第2端子20Bが挿入される。
【0027】
さらに、前記第1端子保持部32Aは複数の第1端子係止部36Aを含み、これらは前記各第1端子収容室34Aに挿入される第1端子20Aを所定の挿入深さ位置でそれぞれ係止する。同様に、前記第2端子保持部32Bは複数の第2端子係止部36Bを含み、これらは、前記各第2端子収容室34Bに挿入される第2端子20Bをこの第2端子20Bが前記第1端子係止部36Aに係止される第1端子20Aと嵌合可能な挿入深さ位置に係止する。前記各端子係止部36A,36Bについては後に詳述する。
【0028】
この実施の形態では、前記第1端子収容室34Aは当該第1端子収容室34Aに挿入される第1端子20Aの軸方向と直交する特定の方向(コネクタWCの幅方向)に並ぶ。前記第2端子収容室34Bは、前記第1端子収容室34Aの並び方向と同一の方向に並び、各第2端子収容室34Bはこれと対応する第1端子収容室34Aと前記軸方向に並ぶ。このような端子収容室34A,34Bの配列は、絶縁ハウジング30の厚さ方向の寸法(図2〜図7に示す姿勢では高さ方向)の削減を可能にし、狭いスペース内でのコネクタの使用を可能にするとともに、当該絶縁ハウジング30の構造の簡素化を促進する。
【0029】
具体的に、この絶縁ハウジング30は、上下一対の主外壁41,42と、左右一対の側壁44,44と、1枚の嵌合仕切り壁46と、複数枚の仕切り壁48とによって構成される。
【0030】
前記主外壁41,42及び側壁44,44は、前記第1端子保持部32A及び前記第2端子保持部32Bにまたがるように絶縁ハウジング30の軸方向全域にわたって延びる。このうち主外壁41,42は、前記各第1端子収容室34A及び前記各第2端子収容室34Bをこれらの並び方向と直交する方向(図2〜図7に示す姿勢では上下方向)から挟むように配置される。前記側壁44,44は、前記並び方向の両外側に位置する第1端子収容室34A及び第2端子収容室34Bをそれぞれ外側から覆いながら前記主外壁41,42の左縁部同士及び右縁部同士をそれぞれ連結するように配置される。
【0031】
前記嵌合仕切り壁46は、前記第1端子保持部32Aと前記第2端子保持部32Bとの境界を画定するように一方の側壁44から他方の側壁44に至るまでコネクタ幅方向に連続して延びる。すなわち、この嵌合仕切り壁46は、互いに軸方向に並ぶ第1端子収容室34Aと第2端子収容室34Bとの間に介在し、両端子収容室34A,34Bを分離する。しかし、この嵌合仕切り壁46は、前記各端子収容室34Aに挿入される第1端子20Aの電気接触部22が当該嵌合仕切り壁46を貫通するのをそれぞれ許容する複数の端子挿通孔47を有する。この挿通は、前記嵌合仕切り壁46の存在にかかわらず、前記電気接触部22と相手方の電気接触部26との嵌合を可能にする。
【0032】
前記各仕切り壁48は、前記第1端子保持部32Aおよび前記第2端子保持部32Bのそれぞれに配列される。第1端子保持部32Aでは、互いに隣接する第1端子収容室34A同士の間にそれぞれ仕切り壁48が介在し、第2端子保持部32Bでは、互いに隣接する第2端子収容室34B同士の間にそれぞれ仕切り壁48が介在する。
【0033】
従って、この絶縁ハウジング30では、小さな占有スペース内で前記各壁41,42,44,46,48が複数の第1端子収容室34A及び第2端子収容室34Bを画定することができる。
【0034】
さらに、この絶縁ハウジング30では、前記主外壁41,42のうちの上側主外壁41を利用して、前記第1端子係止部36A及び第2端子係止部36Bが構築される。具体的には、当該主外壁41において前記第1端子保持部32Aおよび前記第2端子保持部32Bを構成する部分にそれぞれ当該主外壁41をその厚み方向に貫通する所定形状の貫通溝(スリット)43が設けられ、この貫通溝43が、前記第1端子係止部36A及び前記第2端子係止部36Bを構成する部分を画定し、かつ、この部分が他の部分に対して当該主外壁41の厚み方向に弾性変位することを可能にする。
【0035】
より具体的に、前記各貫通溝43は、前記嵌合仕切り壁46の近傍でこれと平行に延びる(すなわちコネクタ幅方向に延びる)横溝43aと、この横溝43aから各仕切り壁48に沿って(すなわち互いに隣接する第1端子収容室34A同士の間及び第2端子収容室34B同士の間をそれぞれ通るように)後方に延びる複数本の縦溝43bとからなり、互いに隣接する縦溝43b同士の間に前記第1端子係止部36A及び前記第2端子係止部36Bが形成される。
【0036】
これらの端子係止部36A,36Bは、いずれも片持ちばり状をなし、対応する端子収容室34A,34Bにおける端子挿入方向の奥側の端部(すなわち嵌合仕切り壁46に近い側の端部であって前記横溝43aに隣接する端部)が反対側の端部を支点として弾性的に撓み変位可能な自由端部を構成する。そして、それぞれの自由端部に、係止対象である端子20A,20Bと係合する係合部が形成される。
【0037】
具体的に、前記第1端子係止部36A及び第2端子係止部36Bの自由端部では、その内側面(図2〜図7に示す姿勢では下面)から内向きに前記係合部である係合突起36a,36bがそれぞれ突出する。一方、前記第1端子20Aの適所(タブとして形成された電気接触部22の根元の近傍部位)及び第2端子20Bの適所(雌型の電気接触部26の前端部)には、外向きに突出する被係止突起23A,23Bが突出する。
【0038】
前記第1端子係止部36Aの係合突起36aは、前記第1端子20Aが前記の所定の挿入深さ位置まで挿入された状態でその被係止突起23Aに対して後ろ側(図2〜図7では右側)から係合することにより、当該第1端子20Aが前記挿入深さ位置から離脱方向に後退することを規制する。すなわち、第1端子20Aの抜け止めを行う。同様に、前記他人端子係止部36Bの係合突起36bは、前記第2端子20Bが前記所定の挿入深さ位置にある前記第1端子20Aに対して嵌合可能な位置まで挿入された状態で当該第2端子20Bの被係止突起23Bに対して後ろ側(図2〜図7では左側)から係合することにより、当該第2端子20Bが離脱方向に後退することを規制する。すなわち第2端子20Bの抜け止めを行う。
【0039】
さらに、この絶縁ハウジング30では、前記各端子収容室34A,34Bの平面的な配列が、当該絶縁ハウジング30内での各端子20A,20Bの挿入深さを外部から視認することを可能にする。具体的には、当該配列を利用すべく、前記上側主外壁41(下側主外壁42でもよい。)をその厚み方向に貫通する複数の窓45A及び複数の窓45Bが形成される。このうち窓45Aは、前記各第1端子収容室34Aに挿入される第1端子20Aの前端部を外部に開放する位置にそれぞれ形成される。窓45Bは、前記各第2端子収容室34Bに挿入される第2端子20Bの前端部、換言すれば、当該第2端子20Bとその相手方の第1端子20Aとの嵌合部位、を外部に開放する位置にそれぞれ形成される。
【0040】
このコネクタWCによれば、単一の絶縁ハウジング30により全ての端子20A,20Bを保持する簡素な構造で、メインハーネス12に含まれる各電線Wと、サブハーネス18に含まれる各電線Wとの電気的な接続を行うことができる。この接続は、例えば次の手順にて達成することができる。
【0041】
1)各端子20A,20Bの装着
メインハーネス12に含まれる電線Wの端末にそれぞれ第1端子20Aが装着され、同様にサブハーネス18に含まれる電線Wの端末にそれぞれ第2端子20Bが装着される。これらの装着は、この実施の形態では、導体バレル24a,28aおよびインシュレーションバレル24b,28bの圧着により行われる。しかし、本発明では各端子を電線の端末に装着するための具体的な構造は限定されない。
【0042】
2)絶縁ハウジング30への第1端子20Aの挿入(図7)
絶縁ハウジング30の各第1端子収容室34A内に前記各第1端子20Aが挿入される。この挿入の際、第1端子20Aの被係止突起23Aが第1端子係止部36Aの係合突起36aに接触し、この係合突起36aを含む第1端子係止部36Aの自由端部を外向きに撓み変位させながら当該係合突起36aを通過する。この通過が完了した時点で前記係合突起36aは元の位置に弾性復帰し、その通過した被係止突起23Aに対して後ろ側から係合する。これにより、当該第1端子20Aは所定の挿入深さ位置であって、当該第1端子20Aの電気接触部22が嵌合仕切り壁46の端子挿通孔47を通って反対側の第2端子収容室34B内に大きく突出するような位置に係止される。また、当該第1端子20Aの挿入状態は窓45Aを通じて絶縁ハウジング30の外部から容易に視認されることが可能である。
【0043】
3)絶縁ハウジング30への第2端子20Bの挿入及び端子20A,20B同士の嵌合(図2〜図4)
前記第1端子20Aに次いで第2端子20Bが絶縁ハウジング30の各第2端子収容室34B内に挿入される。この挿入の際、第2端子20Bの被係止突起23Bが第2端子係止部36Bの係合突起36bに接触し、この係合突起36bを含む第2端子係止部36Bの自由端部を外向きに撓み変位させながら当該係合突起36bを通過する。この通過が完了した時点で前記係合突起36bは元の位置に弾性復帰し、その通過した被係止突起23Bに対して後ろ側から係合する。これにより、当該第2端子20Bは、その電気接触部26が前記第1端子20Aの電気接触部22と嵌合する位置に係止される。
【0044】
この嵌合は、前記第1端子20Aが装着されるメインハーネス12側の電線Wと前記第2端子20Bが装着されるサブハーネス18側の電線Wとの電気的接続状態を形成し、その接続状態は、前記各端子係止部36A,36Bによる前記各端子20A,20Bの係止により、維持される。また、前記第2端子20Bの挿入状態、さらには当該第2端子20Bと前記第1端子20Aとの嵌合状態は、窓45Bを通じて絶縁ハウジング30の外部から容易に視認される。
【0045】
さらに、前記の接続の完了後、絶縁ハウジング30の周囲にテープが巻かれる等して前記各端子係止部36A,36Bの外向きの変位が規制されれば、これらの端子係止部36A,36Bによる各端子20A,20Bの係止がより確実になる。すなわち、絶縁ハウジング30はその主外壁41が端子係止部36A,36Bを構成するという簡素な構造を有しながら、各端子20A,20Bの係止を確実に行うことも可能である。
【0046】
本発明の技術的範囲は、以上示した実施の形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、本発明に係る第1端子は雄端子に限られず、雌端子でもよい。同様に第2端子は雌端子に限られず、雄端子でもよい。
【0048】
絶縁ハウジングにおける各端子収容室の配列も図示のものに限られない。例えば、これらの端子収容室が縦横に配列(幅方向と高さ方向の双方に並ぶように配列)されてもよい。ただし、図2〜図7に示すように各端子収容室34A,34Bが一方向に並ぶように配列されることは、上述のように、絶縁ハウジング30の構造のさらなる簡素化や、窓45A,45Bを通じての各端子20A,20Bの挿入状態の視認を可能にする。
【符号の説明】
【0049】
W 電線
WC ワイヤハーネス接続用コネクタ
10 ワイヤハーネス
12 メインハーネス(第1ワイヤハーネス)
18 サブハーネス(第2ワイヤハーネス)
20A 第1端子
20B 第2端子
22,26 電気接触部
23A,23B 被係止突起
24,28 電線圧着部
30 絶縁ハウジング
32A 第1端子保持部
32B 第2端子保持部
34A 第1端子収容室
34B 第2端子収容室
36A 第1端子係止部
36B 第2端子係止部
36a,36b 係合突起(係合部)
41 上側主外壁
42 下側主外壁
43 貫通溝
44 側壁
45A,45B 窓
46 嵌合仕切り壁
47 端子挿通孔
48 仕切り壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ワイヤハーネスに含まれる複数の電線と、第2ワイヤハーネスに含まれる複数の電線とを互いに接続するためのワイヤハーネス接続用コネクタであって、
前記第1ワイヤハーネスに含まれる複数の電線の端末にそれぞれ装着される複数の第1端子と、
前記第2ワイヤハーネスに含まれる複数の電線の端末にそれぞれ装着され、前記各第1端子と嵌合可能な形状を有する複数の第2端子と、
前記第1端子及び前記第2端子をこれらが互いに嵌合した状態で保持するための絶縁ハウジングとを備え、この絶縁ハウジングは、第1の方向に開口して当該開口から前記第1端子がそれぞれ挿入可能な複数の第1端子収容室を囲む第1端子保持部と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に開口して当該開口から前記第2端子がそれぞれ挿入可能な複数の第2端子収容室を囲む第2端子保持部とを有し、前記第1端子保持部は、前記各第1端子収容室に挿入される第1端子を所定の挿入深さ位置で係止する第1端子係止部を含み、前記第2端子保持部は、前記各第2端子収容室に挿入される第2端子をこの第2端子が前記第1端子係止部に係止される第1端子と嵌合可能な挿入深さ位置に係止する第2端子係止部とを含む、ワイヤハーネス接続用コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤハーネス接続用コネクタにおいて、前記第1端子収容室がこの第1端子収容室に挿入される第1端子の軸方向と直交する特定の方向に並び、前記第2端子収容室が前記第1端子収容室の並び方向と同一の方向に並ぶように配列される、ワイヤハーネス接続用コネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のワイヤハーネス接続用コネクタにおいて、前記各第1端子収容室及び前記各第2端子収容室をこれらの並び方向と直交する方向から挟む一対の主外壁と、互いに隣接する端子収容室同士の間に介在する複数の仕切り壁と、前記並び方向の両外側に位置する第1端子収容室及び第2端子収容室をそれぞれ外側から覆いながら前記主外壁同士を連結する一対の側壁とを有する、ワイヤハーネス接続用コネクタ。
【請求項4】
請求項3記載のワイヤハーネス接続用コネクタにおいて、前記主外壁のうちの少なくとも一方の主外壁に前記第1端子係止部及び前記第2端子係止部を構成する部分を画定してこの部分が他の部分に対して当該主外壁の厚み方向に弾性変位することを可能にする形状の貫通溝が形成された、ワイヤハーネス接続用コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のワイヤハーネス接続用コネクタにおいて、前記各第1端子係止部および前記各第2端子係止部は、当該係止部のうち当該係止部に対応する端子収容室における端子挿入方向の奥側の端部が弾性的に撓み変位可能な自由端部を構成する片持ちばり状であって、その自由端部に、対応する端子と係合する係合部が形成された、ワイヤハーネス接続用コネクタ。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載のワイヤハーネス接続用コネクタにおいて、前記主外壁のうちの一方の主外壁が、前記各第1端子及び前記各第2端子の前端部分を当該主外壁の外方に開放する窓を有する、ワイヤハーネス接続用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−165474(P2011−165474A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26710(P2010−26710)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】