説明

ワイヤハーネス用ノンハロゲンシート

【課題】柔軟で引張強度、粘着力、難燃性、耐油性、耐熱性、耐寒性があり、加熱変形性が低く、低比重であり、焼却しても塩素、臭素等のハロゲン系ガス、ダイオキシン類の発生がないシートを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系軟質樹脂60〜92重量%と、熱可塑性エラストマー8〜40重量%又は脂環族飽和炭化水素樹脂8〜40重量%とからなる樹脂と、該樹脂100重量部に対して難燃剤として赤燐3〜15重量部と、メラミンシアヌレート5〜30重量部及び\又はポリ燐酸アンモニウム5〜30重量部を少なくとも配合してなる組成物を用いて成形された難燃性シートであることを特徴とするワイヤハーネス用ノンハロゲンシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のケーブルをハーネスするために使用されるシートである。特にシート片面に両面粘着テープを貼り、ケーブルに巻き付け貼り合わせて使用するシートであって、柔軟性を有し、引張強度、粘着力、難燃性、耐油性、耐熱性、耐寒性に優れ、加熱変形性が低く、低比重で燃焼した際に塩素、臭素等のハロゲン系ガス、ダイオキシン類の発生がないワイヤハーネス用ノンハロゲンシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両のケーブルをハーネスするために使用されるシートは、塩化ビニル樹脂にジオクチルフタレート(DOP)、BBP等の可塑剤を添加して樹脂を軟質なものにし、難燃化するために塩素、臭素等のハロゲン系の難燃剤を用いて成形されている。これらの公知の組成物からなるシートは、廃棄後の焼却処理時に有害ガスである塩素、臭素等のハロゲン系ガス、更にダイオキシン類の発生があり、環境問題となっている。難燃剤を添加した塩化ビニル樹脂が用いられたワイヤハーネス用シートとしては、特許文献1等が挙げられる。
他方、ハーネスに使用するシートとしてノンハロゲンシートが近年開発されている。例えば、特許文献2〜4等が挙げられる。
しかし、現在のノンハロゲンシートに用いられる難燃剤には、難燃性を高めるために塩素等の代替物として金属水酸化物等が含有されることが多い。塩素等の代替物を用いることによってワイヤハーネス用シートの難燃性の向上を図るが、シート自体が高比重となり、車両の軽量化を図るという側面からは問題となる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−272550号公報
【特許文献2】特開2000−26696号公報
【特許文献3】特開2001−6447号公報
【特許文献4】特開2003−226792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車両のケーブルをハーネスするために使用するシートであって、柔軟性を有し、引張強度、粘着力、難燃性、耐油性、耐熱性、耐寒性に優れ、加熱変形性が低く、低比重であり、焼却しても塩素、臭素等のハロゲン系ガス、ダイオキシン類が発生しないシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために以下の構成を採用した。
【0006】
(1)ポリオレフィン系軟質樹脂60〜92重量%と、熱可塑性エラストマー8〜40重量%又は脂環族飽和炭化水素樹脂8〜40重量%からなる樹脂100重量部に対して、難燃剤として赤燐3〜15重量部と、メラミンシアヌレート5〜30重量部及び\又はポリ燐酸アンモニウム5〜30重量部を少なくとも含有する組成物を用いて成形された難燃性シートであることを特徴とするワイヤハーネス用ノンハロゲンシートである。
(2)ポリオレフィン系軟質樹脂60〜96重量%と、熱可塑性エラストマー2〜30重量%及び脂環族飽和炭化水素樹脂2〜30重量%からなる樹脂100重量部に対して、難燃剤として赤燐3〜15重量部と、メラミンシアヌレート5〜30重量部及び\又はポリ燐酸アンモニウム5〜30重量部を少なくとも含有する組成物を用いて成形された難燃性シートであることを特徴とするワイヤハーネス用ノンハロゲンシートである。
(3)ポリオレフィン系軟質樹脂が、リアクターTPOであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシートである。
(4)ポリオレフィン系軟質樹脂が、プロピレンとエチレン共重合体と、ホモプロピレン樹脂よりなるリアクターTPOであって、エチレン量25〜45モル%、MFR2〜10g/10min、融点145〜155℃、比重0.94〜0.96であることを特徴とする上記(3)に記載されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシートである。
(5)熱可塑性エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックポリマーであることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれか一に記載されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシートである。
(6)脂環族飽和炭化水素樹脂は、石油ナフサ分解後C〜C残留分を重合してなる芳香族系石油樹脂に水素添加を行った水素化石油系樹脂であることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれか一に記載されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシートであるである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明に係るワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの実施形態を示す。本実施形態において、具体的な製造方法を例示するが、これらの製造方法は、本発明のワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを限定するものではない。
本発明で使用するポリオレフィン系軟質樹脂はプロピレンとエチレン共重合体樹脂と、ホモプロピレン樹脂よりなるリアクターTPOを主樹脂として、これに熱可塑性エラストマーのスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックポリマー、脂環族飽和炭化水素樹脂のいずれか1又は2を配合した樹脂を使用した。
【0008】
このような樹脂組成にすることにより柔軟性に富み、樹脂組成物と難燃剤との相溶性を向上させ、更に引張強度、耐油性、耐熱性、耐寒性に優れ、加熱変形性が低い、良好なシートを成形した。
更に、本発明に係るワイヤハーネス用ノンハロゲンシートは、前記樹脂組成物に難燃剤が配合されている。該難燃剤としては、赤燐と、メラミンシアヌレート、ポリ燐酸アンモニウムのいずれか1種以上を配合している。このように、比重が大きく、多量に添加しなければ難燃効果を生じない無機物難燃剤である水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等を使用しないで難燃化をはかることによって、シートを低比重にし、柔軟性や粘着性を損なわないようにした。
【0009】
本発明で使用する樹脂、難燃剤、滑剤、顔料を混合する場合、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等を使用してコンパウンドするのが好適である。
ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工する方法としては、カレンダー成形加工、Tダイ押出加工等が挙げられる。カレンダー成形加工する場合は、コンパウンドをミキシングロールで混練し連続して混練物をカレンダーに送り成形加工する。Tダイ押出機で成形加工する場合は、コンパウンドを1軸又は2軸押出機等でペレットに加工して、このペレットをTダイ押出機で成形加工する。
【0010】
本発明で使用するポリオレフィン系軟質樹脂は、プロピレンとエチレン共重合体樹脂と、ホモプロピレン樹脂よりなるリアクターTPOで、エチレン量25〜45モル%、MFR2〜10g/10min、融点145〜155℃、比重0.94〜0.96の軟質タイプのものを用いるのが好ましい。
更に、ビカット軟化点70〜100℃(JIS K 7206)、脆化温度−50℃以下、引張強度23〜40MPa(JIS K 6251)、曲げ弾性率40〜110(JIS K 8203)で柔軟性があり、引張強度も大きい軟質樹脂を用いるのが好ましい。
ここで、ポリオレフィン系軟質樹脂の例としては、株式会社プライムポリマー製の「プ
ライム TPO T310EC」、「プライム TPO T310E」、「プライム TPO E110E」、「プライム TPO M142」等が挙げられる。
【0011】
本発明で使用する熱可塑性エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックポリマーで、MFR2〜25g/10min、引張強度10〜20MPa、ショアー硬度(A)40〜90、比重0.92〜0.95のものが好ましい。さらに、300%モジュラス1.2〜2.0MPa、オイル含有量30〜35wt%、スチレン/ゴム比30〜50/70〜50のものがより好ましい。
【0012】
該樹脂は、弾力性、可撓性があり、混合して使用する樹脂の柔軟性を改良する機能を有する。更に粘接着剤としての機能を有する樹脂である。熱可塑性エラストマーのスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)の例としては、クレイトンポリマージャパン株式会社製の「KRATON D−4270」、「KRATON D−4271」等が挙げられる。
【0013】
本発明で使用する脂環族飽和炭化水素樹脂は、石油ナフサ分解後C〜C残留分を重合してなる芳香族系石油樹脂を原料にして水添を行った水素化樹脂が好ましい。軟化点100〜145℃、Tg45〜90(DSC法)、比重0.98〜1.01で、可塑化効果があり、オレフィン系樹脂との相溶性がよく、粘着性も付与し、両面粘着テープとの接着力も向上する樹脂である低分子量、高Tgの無定形オリゴマーで幅の広い軟化点を有するものが好ましい。
【0014】
脂環族飽和炭化水素樹脂の例としては、荒川化学工業株式会社製の「アルコン P−140」、「アルコン P−115」、「アルコン P−125」、「アルコン P−100」、出光興産株式会社製の「アイマーブ P−100」、「アイマーブ P−125」、「アイマーブ P−140」、エクソンモービル有限会社製の「エスコレッズ 5300」、「エスコレッズ 5320」等が挙げられる。
【0015】
本発明における前記樹脂は、主樹脂のポリオレフィン系軟質樹脂60〜92重量%に対して、熱可塑性エラストマー8〜40重量%、又は脂環族飽和炭化水素樹脂8〜40重量%を配合して製造される。また、熱可塑性エラストマー及び脂環族飽和炭化水素樹脂の両者を配合する場合には、主樹脂のポリオレフィン系軟質樹脂60〜96重量%に対し、熱可塑性エラストマー2〜30重量%、及び脂環族飽和炭化水素樹脂2〜30重量%を配合して製造することが好ましい。
【0016】
ポリオレフィン系軟質樹脂60〜92重量%では引張強度があり、柔軟性もある。耐油性、耐熱性、耐寒性も良好で好ましい。前記樹脂の含有量が92重量%を越えると、柔軟性が小さくなり好ましくない。また60重量%未満では、引張強度が小さくなり好ましくない。また耐熱性も悪くなり好ましくない。また、熱可塑性エラストマー及び脂環族飽和炭化水素樹脂の両者を配合する場合には、主樹脂のポリオレフィン系軟質樹脂を96重量%まで配合することができる。
【0017】
熱可塑性エラストマー8〜40重量%の範囲内でポリオレフィン系軟質樹脂に混合するとシートの弾力性、可撓性が改良され、柔軟性のあるシートになる。かかる物質を用いることにより粘着性両面粘着テープとの接着性も改善される。前記物質の含有量が8重量%未満では弾力性、可撓性の改良が小さく、40重量%を越えるとシートの引張強度が低下するので好ましくない。また、脂環族飽和炭化水素樹脂と併せて用いる場合には、少なくとも2重量%以上含有させることが好ましい。
【0018】
脂環族飽和炭化水素樹脂8〜40重量%の範囲内でポリオレフィン系軟質樹脂に混合す
るとシートは粘着性、接着性に富んだシートになる。更に柔軟性に富んだ良好なシートになる。前記樹脂の含有量が8重量%未満では粘着性、接着性の改善は小さく、また柔軟性の改善も少ないので好ましくない。また40重量%を越えると引張強度が低下するので好ましくない。また、熱可塑性エラストマーと併せて用いる場合には、少なくとも2重量%以上含有させることが好ましい。
【0019】
ポリオレフィン系軟質樹脂60〜92重量%に、熱可塑性エラストマー8〜40重量%、又は脂環族飽和炭化水素樹脂8〜40重量%を、それぞれの樹脂重量%の範囲内で混合して使用すると、引張強度、耐熱性、耐寒性、耐油性があり、柔軟性のあるシートで粘着性、接着性の良好なシートが得られる。また、熱可塑性エラストマー及び脂環族飽和炭化水素樹脂の両者を配合する場合には、主樹脂のポリオレフィン系軟質樹脂60〜96重量%に対し、熱可塑性エラストマー2〜30重量%、及び脂環族飽和炭化水素樹脂2〜30重量%を、それぞれの樹脂重量%の範囲内で混合して使用すると、引張強度、耐熱性、耐寒性、耐油性があり、柔軟性のあるシートで粘着性、接着性の良好なシートが得られる。
【0020】
本発明で使用する難燃剤の赤燐は、前記樹脂100重量部に対し3〜15重量部配合する。3重量部未満では難燃効果が小さく、15重量部を越えて添加しても難燃効果の向上が小さい。
【0021】
本発明で使用する難燃剤は、赤燐にメラミンシアヌレート、ポリ燐酸アンモニウムのいずれか一種類以上を併用する。ここで赤燐は、マイクロカプセルで内包したものでも内包しないものでもどちらを用いてもよい。ノンハロゲンシートは水に濡れることがあるが、水中での使用や洗濯されることがないので、難燃剤が水に溶出し難燃効果を悪くすることが殆どない。
【0022】
赤燐の濃度は75〜95%、平均粒径10〜40μmのものが好ましい。40μmを越えると分散性が悪く、難燃性にバラツキがでる。またシートに凹凸ができて光沢がなくなる。
また、赤燐の例としては、燐化学工業株式会社製の「ノーバエクセル 140」、「ノーバエクセル 120」等が挙げられる。
【0023】
メラミンシアヌレートの融点は250℃(300℃付近から昇華開始)、比重1.68のものが好ましい。
メラミンシアヌレートの添加量は、前記樹脂100重量部に対し、5〜30重量部である。5重量部未満では難燃効果が小さい。30重量部を越えるとシートの比重が大きくなり好ましくない。
本発明で使用する難燃剤であるメラミンシアヌレートの化学式は、
【0024】
【化1】


で示される化合物である。
【0025】
メラミンシアヌレート5〜30重量部と赤燐3〜15重量部とを併用して使用すると相乗効果により難燃性がより良好になり好ましい。
【0026】
カレンダー成形加工で押出成形加工をする場合、メラミンシアヌレートの樹脂への分散性を考えると、平均粒径30μm以下のものが好ましく、特に10μm以下のものが均一に分散してシート表面に光沢が生じるので好ましい。平均粒径30μmを越えるとシート表面に凹凸が生じて光沢がなくなり好ましくない。メラミンシアヌレートの例としては、日産化学工業株式会社製の「MC−610」、「MC−640」等が挙げられる。
【0027】
本発明で使用する難燃剤のポリ燐酸アンモニウムは、特に耐水性の考慮をする必要性がないので、マイクロカプセルで内包したものでも内包しないものでもどちらでもよい。
【0028】
ポリ燐酸アンモニウムの平均粒径は5〜40μmである。樹脂への分散性を考慮すると平均粒径が30μm以下のものが好ましく、平均粒径が10μm以下のものがより好ましい。
ここで、平均粒径が40μmを越えると、分散性が悪くなり、シート表面に凹凸が生じて光沢が無くなる。
【0029】
ポリ燐酸アンモニウムの添加量は、樹脂100重量部に対して、5〜30重量部である。前記物質の添加量が5重量部未満では難燃効果が小さい。また30重量部を越えると比重が大きくなり好ましくない。
【0030】
またポリ燐酸アンモニウム5〜30重量部と赤燐3〜15重量部とを併用して使用すると相乗効果により難燃性がより良好になり好ましい。
【0031】
ここで、ポリ燐酸アンモニウムの例としては、クラリアントジャパン株式会社製の「エクソリット AP−462」、「エクソリット AP−422」等が挙げられる。
【0032】
本発明で難燃剤として赤燐にメラミンシアヌレート、ポリ燐酸アンモニウムの一種以上を併用して使用するのは、赤燐を配合した樹脂組成物に炎を近づけると、まず樹脂の表面と赤燐が燃焼し、樹脂は空気中の酸素〔O〕と結合して二酸化炭素〔CO〕と水〔HO〕と炭素〔C〕となる。この場合に赤燐は、ポリオレフィン系軟質樹脂、熱可塑性エラストマー、脂環族飽和炭化水素樹脂のそれぞれの樹脂の炭化を促進させる。
【0033】
一方、赤燐は酸素と結合して酸化物となり、また水分と結合して縮合燐酸となり、該樹脂表面に酸素を通さない層が形成され、樹脂の燃焼を抑制して難燃化を促進する。この場合にメラミンシアヌレート、ポリ燐酸アンモニウムの1又は2を併用して使用すると、難燃剤は燃焼時に熱分解して窒素系ガスが発生する。この窒素系ガスは酸素を遮断する。またメラミンシアヌレート、ポリ燐酸アンモニウムは含窒素系ガスを発生しながら脱水酸化触媒としてそれぞれの樹脂の炭化を促進し、難燃効果を向上させる。
【0034】
さらに、樹脂100重量部に対して、赤燐3〜15重量部を配合すると、併用して使用する難燃剤のメラミンシアヌレート5〜30重量部、ポリ燐酸アンモニウム5〜30重量部のいずれか1又は2で効果が向上される。
【0035】
ここで、一般的に知られている難燃剤としては、金属水酸化物、例えば水酸化マグネシウム〔Mg(OH)〕:比重2.36、水酸化アルミニウム〔Al(OH)〕:比重2.42等が挙げられる。特にノンハロゲン樹脂を難燃化するために金属水酸化物は多量に添加し使用されている。添加量が少ないと難燃効果が小さく難燃性シートにならない。
【0036】
一方、本発明のワイヤハーネス用ノンハロゲンシートには、比重を小さくして軽量化を図るという課題がある。そのために比重が大きく多量に添加しなければならない金属水酸化物を使用しないで、難燃性ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを開発している。よって本発明に係るワイヤハーネス用ノンハロゲンシートは、金属水酸化物である水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等は全く使用されていない。
従来の金属水酸化物を使用したノンハロゲンシートにおける比重は、1.50〜2.0であった。本発明に係るノンハロゲンシートにおける比重は、0.97〜1.15のものが好ましい。比重0.97未満のものは実質的に難燃性に劣る。比重を1.15以下とすることにより車両の軽量化に寄与する。
【0037】
本発明のワイヤハーネス用ノンハロゲンシートは、主に片面に両面粘着テープを貼り付け、ロール状に巻き込んで他面を貼り付けてケーブル等を束ねて使用する。該シートは直径約5〜10mmに束ねられた電線に巻き付けて使用される。該シートは両面とも平滑な状態である必要がある。
【0038】
本発明のワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの厚さは、150〜600μmである。150μm未満では引張強度が小さく好ましくない。600μmを越えると両面粘着テープを貼り、該シートによってケーブル等を束ねてロール状に巻き上げた時の太さが大きくなり好ましくない。より好ましくは300〜400μmである。
本発明で顔料、染料、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を併用することができる。
【0039】
本発明のワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの成形加工について説明する。
本発明で使用する樹脂、難燃剤、滑剤、顔料をヘンシェルミキサーに投入してヘンシェルミキサーを低速で回転し、該材料を均一に分散混合する。次に該混合物を一定量ずつミキシングロールで所定の温度で所定時間練り上げて連続してカレンダーに送り込み、カレンダーロールを所定の温度に設定し、所定の厚さ、所定の幅のシートにして、所定の速度で引いてワイヤハーネス用ノンハロゲンシートをロールに巻き取る。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を示して本発明に係るワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの例を具体的に説明する。
実施例1
ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を80重量%、熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」を10重量%、脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコン P−140」を10重量%からなる樹脂100重量部に、難燃剤として赤燐「ノーバエクセル 140」を10重量部、メラミンシアヌレート「MC−610」を10重量部、ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」を10重量部とを100リットルのヘンシェルミキサーに投入して低速回転にて混合しながら、滑剤Ba−Zn0.8重量部、ヘキストジャパン株式会社製の滑剤「ヘキストワックスC」1.0重量部、酸化チタンを1.5重量部、カーボンブラックを0.3重量部を添加し、7分間攪拌して混練した。該混合物をφ14インチのミキシングロールで、ロール温度160℃にて7分間混練した後、該混練物をφ16インチのカレンダーロールで上部2本のロール温度170℃にて、ロールのギャップをコントロールし、引き取り速度を10m/min、厚さ400μmのワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工し、冷却ロールで冷却して400μmのワイヤハーネス用ノンハロゲンシートをワインダーに巻き取った。
このようにして製造されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシートにおける諸性能を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
実施例2
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を90重量%、脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコン P−140」は使用しなかった。難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を12重量部を使用した。メラミンシアヌレート「MC−610」を7重量部を使用した。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工しワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表1に示す。
【0042】
実施例3
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を90重量%、熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」は使用しなかった。難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を5重量部を使用した。メラミンシアヌレート「MC−610」を20重量部を使用した。ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」を7重量部を使用した。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工しワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表1に示す。
【0043】
実施例4
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を60重量%、熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」を25重量%にし、脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコン P−140」を15重量%にした。難燃剤のポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」25重量部を使用した。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。その他は実施例1においてカレンダーロールのギャップを狭くコントロールした。その他は実施例1と同様にして厚さ200μmのワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工しワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表1に示す。
【0044】
実施例5
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を60重量%、熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」を15重量%にし、脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコン P−140」を25重量%にした。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1においてカレンダーロールのギャップを少し広くコントロールした。その他は実施例1と同様にして厚さ500μmのワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工しワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表1に示す。
【0045】
実施例6
実施例1において、難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を12重量部にし、メラミンシアヌレート「MC−610」を25重量部にした。ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」は使用しなかった。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表1に示す。
【0046】
実施例7
実施例1において、難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を12重量部にし、ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」を25重量部を使用した。メラミンシアヌレート「MC−610」は使用しなかった。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表1に示す。
【0047】
実施例8
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を96重量%、熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」を2重量%、脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコン P−140」を2重量%にした。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表1に示す。
【0048】
実施例9
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を87重量%、熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」を9重量%、脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコン P−140」を4重量%にした。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表1に示す。
【0049】
比較例1
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を95重量%にし、熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」を5重量%にした。脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコン P−140」は使用しなかった。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表2に示す。
【0050】
比較例2
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を95重量%にし、脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコン P−140」を5重量%にした。熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」は使用しなかった。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。その他は実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表2に示す。
【0051】
比較例3
実施例1において、ポリオレフィン系軟質樹脂「プライム TPO T310EC」を50重量%にし、熱可塑性エラストマー「KRATON D−4270」を40重量%にした。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表2に示す。
【0052】
比較例4
実施例1において、難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を2重量部にし、メラミンシアヌレート「MC−610」を25重量部にし、ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」を25重量部にした。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表2に示す。
【0053】
比較例5
実施例1において、難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を12重量部にし、メラミンシアヌレート「MC−610」を3重量部にし、ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」を3重量部にした。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表2に示す。
【0054】
比較例6
実施例1において、難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を3重量部にし、メラミンシアヌレート「MC−610」を使用しなかった。ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」を使用しなかった。無機物難燃剤の水酸化アルミニウム「ハイジライト H−42M」(昭和電工株式会社製)130重量部を使用した。実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表2に示す。
【0055】
比較例7
実施例1において、難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を3重量部にし、メラミンシアヌレート「MC−610」を使用しなかった。ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」を使用しなかった。無機物難燃剤の水酸化マグネシウム「キスマ5」(協和化学株式会社製)130重量部を使用した。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表2に示す。
【0056】
比較例8
実施例1において、難燃剤の赤燐「ノーバエクセル 140」を3重量部にした。メラミンシアヌレート「MC−610」を使用しなかった。ポリ燐酸アンモニウム「エクソリット AP−462」を使用しなかった。無機物難燃剤の水酸化マグネシウム「キスマ5」80重量部を使用した。その他は実施例1と同様の原材料を使用した。実施例1と同様の成形加工条件でワイヤハーネス用ノンハロゲンシートを成形加工してワインダーに巻き取った。使用した樹脂、難燃剤の組成及び該ワイヤハーネス用ノンハロゲンシートの性能を測定した結果は表2に示す。
【0057】
【表1】


【表2】

【0058】
−諸性能の測定方法−
1.引張試験
「JIS K 7130」に準じて測定
試験片の形状:4号ダンベル打ち抜き品
【0059】
2.柔軟性
柔軟である ◎
使用に問題のない柔軟性である ○
やや柔軟性に欠ける △
柔軟性に欠ける ×
【0060】
3.耐油性
耐油後残率
試験片:4号ダンベル 70%以上
「JIS K 2215」に規定する1号潤滑油を1の4号ダンベル試験片に塗布し50℃±3℃の温度で20時間保持後、1時間以上放置冷却した後、引張試験を行う。
残率(%)=(加熱後の値/加熱前の値)×100
【0061】
4.耐熱性
50μm幅×300mm長さのシートを取り、電線を束ねて約10mmφの径にしたものに巻き付ける。両面テープの剥離紙を剥がし、図1のようにシートの端末を固定したものを試験試料とする。次にこの試料を120℃±3℃、30分間加熱後常温で1時間以上放冷し、外径10mmの円筒にU字形に180度以上巻き付ける。この時、試料の表面状態を調べ、シートの剥がれ、ひび割れ等の異常の有無を評価する。
シートの剥がれ、ひび割れなし ○
シートの剥がれ、ひび割れ僅かあり △
シートの剥がれ、ひび割れあり ×
【0062】
5.耐寒性
50μm幅×300mm長さのシートを取り、電線を束ねて約10φの径にしたものに巻き付ける。両面テープの剥離紙を剥がし、図1のようにシートの端末を固定したものを試験試料とする。次にこの試料を−20℃±3℃、30分間保持後取り出し、すぐに外径100mmの円筒にU字形に180度以上巻き付ける。この時、試料の表面状態を調べ、シートのひび及割れが生じているかどうかを目視で調べる。
ひび及び割れなし ○
ひび及び割れ僅かあり △
ひび及び割れあり ×
【0063】
6.難燃性
FMVSS No.302
(連邦自動車安全基準)
都市ガス使用
【0064】
7.加熱変形性:25%以下
長さ30mmのシートを2枚とり、両面粘着テープ部を切り取ったものを試験片とする。次に試験片を2枚重ね合わせ、厚さを測定する。試験片120℃±3℃にて30分間保持後、図2の装置に置き400gの荷重を加え、前記温度で30分間保持後、そのままの状態で厚さを測定し、次式により厚さ変化率を求める。
変化率(%)=(加熱前の厚さ−加熱後の厚さ)/加熱前の厚さ×100
【0065】
8.熱収縮率
「JIS K 7133」プラスチックフィルム及びシートの加熱寸法変化測定方法に準ずる。
9.粘着力
90度引き剥がし:N/20mm:4.4N/20mm幅以上で、図3に示す測定方法によって計測した。
重ね合わせ粘着力:N/20mm:29.4N/20mm幅以上で図4に示す測定方法によって計測した。
10.比重
「JIS K 0061」化学製品の密度及び比重測定方法に準ずる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るワイヤハーネス用ノンハロゲンシートによってケーブルを結束した使用状態を示す斜視図である。
【図2】加熱変形性の測定方法を示す図である。
【図3】粘着力の測定方法を示す図である。
【図4】粘着力の測定方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系軟質樹脂60〜92重量%と、熱可塑性エラストマー8〜40重量%又は脂環族飽和炭化水素樹脂8〜40重量%からなる樹脂100重量部に対して、難燃剤として赤燐3〜15重量部と、メラミンシアヌレート5〜30重量部及び\又はポリ燐酸アンモニウム5〜30重量部を少なくとも含有する組成物を用いて成形された難燃性シートであることを特徴とするワイヤハーネス用ノンハロゲンシート。
【請求項2】
ポリオレフィン系軟質樹脂60〜96重量%と、熱可塑性エラストマー2〜30重量%及び脂環族飽和炭化水素樹脂2〜30重量%からなる樹脂100重量部に対して、難燃剤として赤燐3〜15重量部と、メラミンシアヌレート5〜30重量部及び\又はポリ燐酸アンモニウム5〜30重量部を少なくとも含有する組成物を用いて成形された難燃性シートであることを特徴とするワイヤハーネス用ノンハロゲンシート。
【請求項3】
ポリオレフィン系軟質樹脂が、リアクターTPOであることを特徴とする請求項1又は2に記載されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシート。
【請求項4】
ポリオレフィン系軟質樹脂が、プロピレンとエチレン共重合体と、ホモプロピレン樹脂よりなるリアクターTPOであって、エチレン量25〜45モル%、MFR2〜10g/10min、融点145〜155℃、比重0.94〜0.96であることを特徴とする請求項3に記載されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシート。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックポリマーであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシート。
【請求項6】
脂環族飽和炭化水素樹脂は、石油ナフサ分解後C〜C残留分を重合してなる芳香族系石油樹脂に水素添加を行った水素化石油系樹脂であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載されたワイヤハーネス用ノンハロゲンシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−170413(P2009−170413A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320695(P2008−320695)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(392031572)キョーワ株式会社 (22)
【出願人】(505244394)日本ウェーブロック株式会社 (19)
【Fターム(参考)】