説明

ワイヤレス給電装置およびワイヤレス電力伝送システム

【課題】磁場共振型のワイヤレス給電において、電力伝送効率への影響を抑制しつつ供給電力の位相を検出する。
【解決手段】給電コイルLから受電コイルLには磁気共振により電力が伝送される。電源回路200は、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQを交互にオン・オフさせることにより、エキサイト回路110に交流電力を供給し、エキサイトコイルLから給電コイルLに交流電力が供給される。位相検出回路150は、電源回路200のスイッチングトランジスタQを対象として、ソース・ドレイン電流IDS2とソース・ドレイン電圧VDS2の電流位相および電圧位相からその位相差を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスにて電力を送るためのワイヤレス給電装置、および、ワイヤレス電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電源コードなしで電力を供給するワイヤレス給電技術が注目されつつある。現在のワイヤレス給電技術は、(A)電磁誘導を利用するタイプ(近距離用)、(B)電波を利用するタイプ(遠距離用)、(C)磁場の共振現象を利用するタイプ(中距離用)の3種類に大別できる。
【0003】
電磁誘導を利用するタイプ(A)は、電動シェーバーなどの身近な家電製品において一般的に利用されているが、数cm程度の近距離でしか使えないという課題がある。電波を利用するタイプ(B)は、遠距離で使えるが電力が小さいという課題がある。共振現象を利用するタイプ(C)は、比較的新しい技術であり、数m程度の中距離でも高い電力伝送効率を実現できることから特に期待されている。たとえば、EV(Electric Vehicle)の車両下部に受電コイルを埋め込み、地中の給電コイルから非接触にて電力を送り込むという案も検討されている。以下、タイプ(C)を「磁場共振型」とよぶ。
【0004】
磁場共振型は、マサチューセッツ工科大学が2006年に発表した理論をベースとしている(特許文献1参照)。特許文献1では、4つのコイルを用意している。これらのコイルを給電側から順に「エキサイトコイル」、「給電コイル」、「受電コイル」、「ロードコイル」とよぶことにする。エキサイトコイルと給電コイルは近距離にて向かい合わされ、電磁結合する。同様に、受電コイルとロードコイルも近距離にて向かい合わされ、電磁結合する。これらの距離に比べると、給電コイルから受電コイルまでの距離は「中距離」であり、比較的大きい。このシステムの目的は、給電コイルから受電コイルにワイヤレス給電することである。
【0005】
エキサイトコイルに交流電力を供給すると、電磁誘導の原理により給電コイルにも電流が流れる。給電コイルが磁場を発生させ、給電コイルと受電コイルが磁気的に共振すると、受電コイルには大きな電流が流れる。電磁誘導の原理によりロードコイルにも電流が流れ、ロードコイルと直列接続される負荷Rから電力が取り出される。磁場共振現象を利用することにより、給電コイルから受電コイルの距離が大きくても高い電力伝送効率を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国公開2008/0278264号公報
【特許文献2】特開2006−230032号公報
【特許文献3】国際公開2006/022365号公報
【特許文献4】米国公開2009/0072629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁場共振現象を発生させるためには、エキサイトコイルや給電コイルに交流電力を供給する際、電源回路の駆動周波数を共振周波数に一致させる必要がある。たとえば、特許文献2は、駆動周波数と共振周波数が一致しているか検出する技術を開示する。特許文献2では、給電コイルに相当する1次コイルL1の電圧位相を基準位相と比較することにより、共振状態にあるか否かを判定している(特許文献2の段落[0043]、[0044]、図1等参照)。しかし、特許文献2の場合、共振させるべき1次コイルL1の電圧波形そのものを計測対象としているため、計測行為によって共振特性(Q値)が悪化しやすい。いいかえれば、「計測の影響」を受けやすいシステム構成となっている。
【0008】
本発明は、上記課題に基づいて完成された発明であり、磁場共振型のワイヤレス給電において、共振特性への影響を抑制しつつ供給電力の位相を検出することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るワイヤレス給電装置は、給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、給電コイルから受電コイルにワイヤレス送電する。この装置は、電源回路と、給電コイルと、給電コイルと磁気結合して電源回路から供給される交流電力を給電コイルに供給するエキサイトコイルと、電源回路から供給される交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出する位相検出回路を備える。電源回路は、第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを交互に導通させることにより、エキサイトコイルに交流電力を供給する。位相検出回路は、第1および第2のスイッチの双方または一方の通過電流の位相を計測することにより、交流電力の電流位相を計測する。
【0010】
本発明の別の態様におけるワイヤレス給電装置も、給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、給電コイルから受電コイルにワイヤレス送電する。この装置は、給電コイルに駆動周波数にて交流電力を供給する電源回路と、給電コイルおよびキャパシタを含み共振周波数にて共振する給電コイル回路と、電源回路から供給される交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出する位相検出回路を備える。電源回路は、第1および第2の電流経路を含み、第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを交互に導通させることにより、給電コイルに交流電力を供給する。位相検出回路は、第1および第2のスイッチの双方または一方の通過電流の位相を計測することにより、交流電力の電流位相を計測する。
【0011】
給電コイルに対してスイッチング電源として動作する電源回路を用いることにより、電源回路から給電コイルへの電力供給効率を高めることができる。電源回路の駆動周波数を共振周波数と一致させれば、システム全体としての電力伝送効率が高くなる。電源回路に含まれるスイッチの通過電流から電流位相を計測するため、給電コイルに直接的な計測負荷がかからない。このため、給電コイルの共振特性への影響を抑制しつつ、電圧位相と電流位相の位相差(ずれ)を検出して共振状態が保たれているかを監視できる。
【0012】
この装置は、検出された位相差が減少するように電源回路の駆動周波数を調整することにより、駆動周波数を共振周波数に追随させる駆動周波数追随回路を更に備えてもよい。共振周波数に駆動周波数を追随させることができるため、電力伝送効率を高い状態に維持しやすくなる。
【0013】
第1および第2のスイッチは、電界効果トランジスタであってもよい。この場合、第1および第2のスイッチそれぞれのソース・グランド間に第1の抵抗を直列接続しておき、位相検出回路は第1の抵抗に印加される電圧の変化から電流位相を計測してもよい。また、位相検出回路は、第1および第2のスイッチの双方または一方のソース・ドレイン電圧の変化から電圧位相を計測してもよい。第1および第2のスイッチの双方または一方のソース・ドレイン間に第2の抵抗を並列接続しておき、位相検出回路は第2の抵抗の途中から取り出される中間電位の変化から電圧位相を計測してもよい。
【0014】
この装置は、交流電力の電流波形と同相となるアナログ波形をデジタル波形に整形する第1波形整流器と、交流電力の電圧波形と同相となるアナログ波形をデジタル波形に整形する第2波形整流器を更に備えてもよい。そして、位相検出回路は、2種類のデジタル波形のエッジを比較することにより、位相差を検出してもよい。デジタル化により電流波形と電圧波形の位相を比較するときの基準点が明確になるため、位相検出回路が位相差を特定しやすくなる。
【0015】
本発明におけるワイヤレス電力伝送システムは、上述したワイヤレス給電装置と、受電コイルと、受電コイルと磁気結合して、受電コイルが給電コイルから受電した電力を供給されるロードコイルと、を備える。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、磁場共振型のワイヤレス給電技術において、共振特性への影響を抑制しつつ供給電力の位相を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ワイヤレス電力伝送システムの基本システム構成図である。
【図2】第1のスイッチングトランジスタが導通するときの電流経路を示す図である。
【図3】第2のスイッチングトランジスタが導通するときの電流経路を示す図である。
【図4】2つのスイッチングトランジスタにおける共振時の電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。
【図5】給電コイル回路のインピーダンスと駆動周波数の関係を示すグラフである。
【図6】出力電力効率と駆動周波数の関係を示すグラフである。
【図7】駆動周波数>共振周波数のときのスイッチングトランジスタにおける電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。
【図8】駆動周波数<共振周波数のときのスイッチングトランジスタにおける電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。
【図9】駆動周波数の自動追随機能を備えるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図である。
【図10】位相検出回路へ入力される各種電圧の変化過程を示すタイムチャートである。
【図11】制御電圧と駆動周波数の関係を示すグラフである。
【図12】駆動周波数の自動追随機能を備えるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図の別例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム300は、ワイヤレス給電機能だけでなく駆動周波数の自動追随機能も備える。最初に、ワイヤレス給電機能を実現するための基本構成について説明する。次に、駆動周波数の自動追随機能を追加したタイプのワイヤレス電力伝送システム300を説明する。
【0020】
図1は、駆動周波数の自動追随機能を有しないワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム100は、電源回路200と、エキサイト回路110、給電コイル回路120、受電コイル回路130、ロード回路140を含む。給電コイル回路120と受電コイル回路130の間には数m程度の距離がある。ワイヤレス電力伝送システム100の主目的は、給電コイル回路120から受電コイル回路130に電力を送ることである。
【0021】
図1に示すワイヤレス電力伝送システム100は、ISM(Industry-Science-Medical)周波数帯にて動作させることを想定したシステムである。以下、給電コイル回路120や受電コイル回路130の共振周波数fはISM周波数帯内の13.56MHzであるとして説明する。
【0022】
エキサイト回路110は、エキサイトコイルLとトランスT2二次コイルLが直列接続された回路である。エキサイト回路110は、電源回路200からトランスT2二次コイルLを介して交流電力を供給される。トランスT2二次コイルLは、電源回路200のトランスT2一次コイルLおよびトランスT2一次コイルLと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により交流電力を供給される。エキサイトコイルLの巻き数は1回、導線の直径は3mm、エキサイトコイルL自体の直径は210mmである。エキサイト回路110を流れる電流Iは交流であり、同図矢印にて示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
【0023】
給電コイル回路120は、給電コイルLとキャパシタCが直列接続された回路である。エキサイトコイルLと給電コイルLは互いに向かい合っている。エキサイトコイルLと給電コイルLの距離は10mm以下と比較的近い。このため、エキサイトコイルLと給電コイルLは電磁気的に強く結合している。給電コイルLの巻き数は7回、導線の直径は5mm、給電コイルL自体の直径は280mmである。エキサイトコイルLに電流Iを流すと、給電コイル回路120に起電力が発生し、給電コイル回路120には電流Iが流れる。同図矢印にて示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。電流Iの向きと電流Iの向きは逆(逆相)である。電流Iは電流Iよりも格段に大きい。給電コイルLとキャパシタCそれぞれの値は、給電コイル回路120の共振周波数fが13.56MHzとなるように設定される。
【0024】
受電コイル回路130は、受電コイルLとキャパシタCが直列接続された回路である。給電コイルLと受電コイルLは互いに向かい合っている。給電コイルLと受電コイルLの距離は、0.2m〜1m程度と比較的長い。受電コイルLの巻き数は7回、導線の直径は5mm、受電コイルL自体の直径は280mmである。受電コイル回路130の共振周波数fも13.56MHzとなるように、受電コイルLとキャパシタCそれぞれの値が設定されている。給電コイル回路120が共振周波数fにて磁界を発生させることにより、給電コイル回路120と受電コイル回路130は磁気的に共振し、受電コイル回路130にも大きな電流Iが流れる。同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。電流Iの向きと電流Iの向きは逆(逆相)である。すなわち、電流Iは、電流Iと同相である。
【0025】
ロード回路140は、ロードコイルLと負荷Rが直列接続された回路である。受電コイルLとロードコイルLは互いに向かい合っている。受電コイルLとロードコイルLの距離は10mm以下と比較的近い。このため、受電コイルLとロードコイルLは電磁的に強く結合している。ロードコイルLの巻き数は1回、導線の直径は3mm、ロードコイルL自体の直径は210mmである。受電コイルLに電流Iが流れることにより、ロード回路140に起電力が発生し、ロード回路140に電流Iが流れる。同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。電流Iの向きと電流Iの向きは逆(逆相)である。すなわち、電流Iは、電流Iと同相である。
【0026】
電源回路200から供給される交流電力は、エキサイト回路110と給電コイル回路120により送電され、受電コイル回路130とロード回路140により受電され、負荷Rから取り出される。エキサイト回路110、給電コイル回路120、受電コイル回路130およびロード回路140に流れる電流I〜Iの周波数は同一である。
【0027】
負荷Rを受電コイル回路130に直列接続すると、受電コイル回路130のQ値が悪くなる。このため、受電用の受電コイル回路130と電力取り出し用のロード回路140を分離している。また、電力伝送効率を高めるためには、エキサイトコイルL、給電コイルL、受電コイルLおよびロードコイルLの中心線を揃えることが好ましい。
【0028】
電源回路200は、駆動周波数fにて動作するプッシュプル型の回路であり、図1に示すように上下対称形である。エキサイト回路110は、駆動周波数fの交流電力を電源回路200から供給される。この場合、エキサイト回路110、給電コイル回路120、受電コイル回路130およびロード回路140には、駆動周波数fの電流I〜Iが流れる。駆動周波数fと共振周波数fが一致するとき、すなわち、駆動周波数f=13.56MHzとなるとき、給電コイル回路120と受電コイル回路130が磁場共振するため、電力伝送効率は最大となる。
【0029】
電源回路200に含まれるゲート駆動用トランスT1の一次側には、オシレータ202が接続される。オシレータ202は、駆動周波数fの交流電圧を発生させる。電圧波形は正弦波でもよいが、ここでは矩形波であるとして説明する。この交流電圧により、トランスT1一次コイルLには正負の両方向に交互に電流が流れる。トランスT1一次コイルLとトランスT1二次コイルL、トランスT1一次コイルLはゲート駆動用の結合トランスT1を形成する。電磁誘導により、トランスT1二次コイルLとトランスT1一次コイルLにも正負の両方向に交互に電流が流れる。
【0030】
トランスT1の二次コイルは中点接地される。すなわち、トランスT1二次コイルLの一端とトランスT1二次コイルLの一端は互いに接続され、そのまま接地される。トランスT1二次コイルLの他端は、スイッチングトランジスタQのゲートと接続され、トランスT1二次コイルLの他端は、別のスイッチングトランジスタQのゲートと接続される。スイッチングトランジスタQのソースとスイッチングトランジスタQのソースも接地されている。したがって、オシレータ202が駆動周波数fにて交流電圧を発生させると、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQの各ゲートには、電圧Vx(Vx>0)が駆動周波数fにて交互に印加される。すなわち、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは駆動周波数fにて交互にオン・オフする。
【0031】
スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは同一特性のエンハンスメント型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)であるが、バイポーラトランジスタなど他のトランジスタでもよい。また、駆動周波数fを低く設定して動作させる場合には、トランジスタの代わりにリレースイッチ等、他のスイッチを用いてもよい。
【0032】
スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS1、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS2とよぶ。また、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS1、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS2とする。同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
【0033】
スイッチングトランジスタQのドレインは、インダクタL、キャパシタCを介して、トランスT2一次コイルLと直列接続される。同様に、スイッチングトランジスタQのドレインは、インダクタL、キャパシタCを介して、トランスT2一次コイルLと直列接続される。トランスT2一次コイルLとトランスT2一次コイルLの接続点には、平滑用のインダクタLが接続され、さらに、電源Vddが接続される。また、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ1が並列接続され、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ2が並列接続される。インダクタLとインダクタLは同一特性のコイルである。キャパシタCとキャパシタCは同一特性のキャパシタであり、キャパシタCQ1とキャパシタCQ2も同一特性のキャパシタである。
【0034】
インダクタLとキャパシタCはソース・ドレイン電流IDS1の電流波形を整形し、インダクタLとキャパシタCはソース・ドレイン電流IDS2の電流波形を整形するために挿入される。また、キャパシタCQ1はソース・ドレイン電圧VDS1の電圧波形を整形し、キャパシタCQ2はソース・ドレイン電圧VDS2の電圧波形を整形するために挿入される。インダクタL、L、キャパシタC、C、CQ1、CQ2を省略しても、電源回路200によるワイヤレス給電は可能である。特に、駆動周波数fが低い場合には、これらのインダクタやキャパシタを省略しても電力伝送効率を維持しやすい。
【0035】
エキサイト回路110の入力インピーダンスは50(Ω)である。また、電源回路200の出力インピーダンスがこの入力インピーダンス50(Ω)と等しくなるようにトランスT2一次コイルLおよびトランスT2一次コイルLの巻き数を設定している。電源回路200の出力インピーダンスとエキサイト回路110の入力インピーダンスが一致するとき、電源回路200の出力は最大となる。
【0036】
図2は、スイッチングトランジスタQが導通するときの電流経路を示す図である。スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第1電流経路」とよぶ)は、電源Vddから平滑用のインダクタL、トランスT2一次コイルL、キャパシタC、インダクタL、スイッチングトランジスタQを経由してグランドへ至る経路となる。スイッチングトランジスタQは、第1電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0037】
図3は、スイッチングトランジスタQが導通するときの電流経路を示す図である。スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第2電流経路」とよぶ)は、電源Vddから平滑用のインダクタL、トランスT2一次コイルL、キャパシタC、インダクタL、スイッチングトランジスタQを経由してグランドへ至る経路となる。スイッチングトランジスタQは、第2電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0038】
図4は、スイッチングトランジスタQおよびスイッチングトランジスタQの電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。時刻t〜時刻tの期間(以下、「第1期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオン、スイッチングトランジスタQがオフとなる期間である。時刻t〜時刻tの期間(以下、「第2期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオフ、スイッチングトランジスタQがオンとなる期間、時刻t〜時刻tの期間(以下、「第3期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオン、スイッチングトランジスタQがオフとなる期間、時刻t〜時刻tの期間(以下、「第4期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオフ、スイッチングトランジスタQがオンとなる期間である。図4は、駆動周波数fと共振周波数fは一致しており、給電コイル回路120と受電コイル回路130が共振状態にある場合の波形を示している。
【0039】
スイッチングトランジスタQのゲート・ソース電圧VGS1が所定の閾値を超えると、スイッチングトランジスタQは飽和状態となる。したがって、第1期間の開始タイミングである時刻tにスイッチングトランジスタQがオン(導通)となると、図2に示した第1電流経路をソース・ドレイン電流IDS1が流れ始める。第1電流経路に挿入されているインダクタLとキャパシタCが電流共振するため、ソース・ドレイン電流IDS1の第1期間における電流波形は矩形波とはならず、立ち上がりと立ち下がりが緩やかになる。
【0040】
第2期間の開始タイミングである時刻tにスイッチングトランジスタQがオフ(非導通)となると、ソース・ドレイン電流IDS1は流れなくなる。スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ1が並列接続されているため、ソース・ドレイン電圧VDS1の第2期間における電圧波形は矩形波とはならず、立ち上がりと立ち下がりが緩やかになる。
【0041】
第1期間はスイッチングトランジスタQのオフ期間であるから、第1期間におけるVGS2、IDS2、VDS2の変化は、第2期間におけるVGS1、IDS1、VDS1の変化と同様である。第2期間はスイッチングトランジスタQのオン期間であるから、第2期間におけるVGS2、IDS2、VDS2の変化は、第1期間におけるVGS1、IDS1、VDS1の変化と同様である。第3期間、第4期間以降は、第1期間、第2期間と同様の波形を繰り返す。
【0042】
図5は、給電コイル回路120のインピーダンスZと駆動周波数fの関係を示すグラフである。縦軸は給電コイル回路120のインピーダンスZを示す。横軸は駆動周波数fを示す。給電コイル回路120はLC回路であるため、電源回路200やエキサイト回路110から給電コイル回路120を見たときのインピーダンスZは、共振時において最低値Zminとなる。共振時にZmin=0となるのが理想であるが、給電コイル回路120には若干の抵抗成分が含まれるため、Zminは通常ゼロとはならない。
【0043】
図5においては、駆動周波数f=13.56MHz、すなわち、駆動周波数f=共振周波数fとなるとき、インピーダンスZは最低となり、給電コイル回路120は共振状態となる。共振状態では、給電コイル回路120の容量性リアクタンスと誘導性リアクタンスが互いに打ち消しあう。駆動周波数fと共振周波数fがずれると、インピーダンスZにおける容量性リアクタンスまたは誘導性リアクタンスが優勢となるためインピーダンスZも大きくなる。
【0044】
まとめると、電源回路200の駆動周波数fが共振周波数fと一致するとき、エキサイト回路110には共振周波数fにて電流Iが流れる。これにより、給電コイル回路120には共振周波数fにて電流Iが流れ、受電コイル回路130にも共振周波数fにて電流Iが流れる。給電コイル回路120の給電コイルLおよびキャパシタCと、受電コイル回路130の受電コイルLおよびキャパシタCは、同一の共振周波数fにて共振するため、給電コイルLから受電コイルLへの電力伝送効率は最大となる。
【0045】
電源回路200の駆動周波数fと共振周波数fがずれると、エキサイト回路110には非・共振周波数にて電流Iが流れる。このため、給電コイル回路120や受電コイル回路130は共振状態ではなくなるため、電力伝送効率は急速に悪化する。
【0046】
図6は、出力電力効率と駆動周波数fの関係を示すグラフである。出力電力効率とは、給電コイル回路120から実際に給電される電力の最大出力値に対する割合を示す。駆動周波数fが共振周波数fと一致するときには、電流位相と電圧位相の差がゼロとなり、電力伝送効率が最大となるので、出力電力効率=100(%)となる。出力電力効率は、負荷Rから取り出される電力の大きさによって計測できる。
【0047】
図6に示すグラフによれば、共振周波数f=13.56MHzのときに駆動周波数f=14.06MHzに設定した場合には、出力電力効率は65(%)程度まで低下している。すなわち、両者が1MHzずれることによって電力伝送効率は35(%)も低下している。
【0048】
図7は、駆動周波数fが共振周波数fよりも大きい場合のスイッチングトランジスタQの電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。駆動周波数fが共振周波数fよりも大きい場合、給電コイル回路120のインピーダンスZには誘導性リアクタンス成分が現れ、給電コイル回路120の電流Iの電流位相は電圧位相に対して遅れる。上述したように給電コイル回路120の電流Iとエキサイト回路110の電流Iはちょうど逆相である。また、エキサイト回路110の電流Iと、第2電流経路を流れるスイッチングトランジスタQのソース・ドレイン電流IDS2とはちょうど逆相である。したがって、スイッチングトランジスタQの通過電流であるソース・ドレイン電流IDS2の電流波形を計測すれば、給電コイル回路120の電流Iの位相を検出できる。そして、ソース・ドレイン電流IDS2の電流波形と、ソース・ドレイン電圧VDS2の電圧波形を比較すれば、供給電力における電流位相と電圧位相の位相差tを検出できることになる。
【0049】
図4に示したように、駆動周波数f=共振周波数fのときには、第2期間の開始タイミングである時刻tからソース・ドレイン電流IDS2が流れ始める。この場合には、位相差t=0である。駆動周波数f>共振周波数fの場合、ソース・ドレイン電流IDS2は時刻tよりも遅い時刻tから流れ始めるため、位相差t=t−t<0となる。駆動周波数fと共振周波数fがずれると、出力電力効率が悪化し、ソース・ドレイン電流IDS2の自体も小さくなる。
【0050】
図8は、駆動周波数fが共振周波数fよりも小さい場合のスイッチングトランジスタQの電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。駆動周波数f<共振周波数fとなると、インピーダンスZに容量性リアクタンス成分が現れ、給電コイル回路120の電流Iの電流位相は電圧位相に対して進む。このため、ソース・ドレイン電流IDS2は、時刻tよりも早い時刻tから流れ始める。位相差t=t−t>0となる。ソース・ドレイン電流IDS2の振幅自体も共振時に比べて小さくなる。
【0051】
位相差tの大きさと、駆動周波数fと共振周波数fのずれの大きさは比例する。したがって、位相差tを検出し、駆動周波数fと共振周波数fのずれが解消されるように駆動周波数fを適宜調整すれば、共振周波数fが変化しても共振状態を維持できる。
【0052】
図9は、駆動周波数fの自動追随機能を備えるワイヤレス電力伝送システム300のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム300は、上述したワイヤレス電力伝送システム100の「ワイヤレス給電機能」に加えて「駆動周波数fの自動追随機能」を備える。図1と同一の符号を付した構成は、図1で説明した構成と同一または同様の機能を有する。図1に追加する構成として、ワイヤレス電力伝送システム300は、第1波形整流器142、第2波形整流器144、位相検出回路150および駆動周波数追随回路152を備える。また、電源回路200の一部に抵抗R〜Rが追加されている。
【0053】
図1に示した基本構成としてのワイヤレス電力伝送システム100は、所定の共振周波数fにて稼働することを想定している。したがって、給電コイル回路120と受電コイル回路130の設計によって定まる共振周波数fにより、電源回路200の駆動周波数fも一意に確定する。
【0054】
しかし、共振周波数fは、給電コイル回路120や受電コイル回路130の使用状態や使用環境によって微妙に変化する。また、給電コイル回路120や受電コイル回路130を交換した場合にも共振周波数fは変化する。あるいは、キャパシタCやキャパシタCの静電容量を可変とすることにより共振周波数fを積極的に変化させたい場合もあるかもしれない。このような場合でも、ワイヤレス電力伝送システム300は、駆動周波数fと共振周波数fを自動的に一致させることができる。
【0055】
ワイヤレス電力伝送システム300においては、スイッチングトランジスタQのソースとグランドとの間に抵抗R、スイッチングトランジスタQとグランドとの間に抵抗Rが直列接続される。これらの抵抗を「第1の抵抗」とよぶ。また、スイッチングトランジスタQのソース・ドレインと並列に抵抗RとRが接続され、スイッチングトランジスタQのソース・ドレインと並列に抵抗RとRが接続される。抵抗RとRの組み合わせ、あるいは、抵抗RとRの組み合わせを「第2の抵抗」とよぶ。抵抗R=R、R=R、R=Rである。
【0056】
抵抗Rと抵抗Rの接続点Aの電位Vp1(第2の抵抗の中間電位)、スイッチングトランジスタQのソースと抵抗Rの接続点Bの電位Vq1(第1の抵抗に印加される電圧値)に基づいて、位相差tが計測される。図7や図8に関連して説明したように、電圧位相はソース・ドレイン電圧VDS2のアナログ波形から計測可能である。ワイヤレス電力伝送システム300では、ソース・ドレイン電圧VDS2を抵抗Rと抵抗Rにより分圧し、その中間電位として電位Vp1を取り出している。ソース・ドレイン電圧VDS2が大きくなる場合でも、分圧により扱いやすい電圧に降圧できる。ソース・ドレイン電圧VDS2をそのまま取り扱えるのであれば、分圧は必須ではない。
【0057】
電圧位相は、ソース・ドレイン電圧VDS2以外からも計測可能である。たとえば、ソース・ゲート電圧VGS2を計測対象としてもよいし、トランスT1一次コイルの両端の電圧を計測対象としてもよい。
【0058】
電流位相はソース・ドレイン電流IDS2のアナログ波形から計測可能である。接続点Bの電位Vq1は、ソース・ドレイン電流IDS2と同相であるため、電位Vq1のアナログ波形から電流位相を計測できる。電位Vp1および電位Vq1のアナログ波形を比較することにより、電圧位相と電流位相の位相差tを特定できる。
【0059】
ワイヤレス電力伝送システム300では、スイッチングトランジスタQ側から電流位相と電圧位相を計測しているが、スイッチングトランジスタQ側から計測しても同じである。また、電源回路200の回路構成を上下対称形とするために、計測対象外のスイッチングトランジスタQ側にも抵抗R、R、Rを接続しているが、これらの抵抗は省略してもよい。
【0060】
電位Vp1と電位Vq1は、それぞれ、第1波形整流器142と第2波形整流器144によって2値化される。詳細については次の図10に関連して後述するが、第1波形整流器142は、電位Vp1が所定の閾値、たとえば、0.1(V)より大きくなると飽和電圧Vp2=5(V)を出力する増幅器である。このため、アナログ波形となる電位Vp1は、第1波形整流器142によってデジタル波形の電圧Vp2に変換される。第2波形整流器144も、電位Vp2が所定の閾値より大きくなると飽和電圧Vq2=5(V)を出力する増幅器である。第2波形整流器144により、アナログ波形の電位Vq1はデジタル波形の電圧Vq2に変換される。
【0061】
位相検出回路150は、電圧Vp2のデジタル波形と電圧Vq2のデジタル波形を比較し、位相差tを算出する。位相検出回路150は、位相差tに応じて制御電圧Vを変化させる。駆動周波数追随回路152は制御電圧Vに応じて、オシレータ202の駆動周波数fを調整する。
【0062】
なお、駆動周波数追随回路152とオシレータ202を一体化し、VCO(Voltage Controlled Oscillator)として提供してもよい。また、VCOの後段に増幅器を設け、トランスT1一次コイルLへ供給される電圧を増幅してもよい。
【0063】
図10は、位相検出回路150へ入力される各種電圧の変化過程を示すタイムチャートである。ソース・ドレイン電圧VDS2は、スイッチングトランジスタQのオン・オフに同期して変化する。このソース・ドレイン電圧VDS2を抵抗Rと抵抗Rにより分圧することにより、接続点Aから電位Vp1が検出される。電位Vp1は、ソース・ドレイン電圧VDS2と同相であり、振幅(最大電圧値)が減少した波形となる。スイッチングトランジスタQがオフとなる第1期間と第3期間において、ソース・ドレイン電圧VDS2>0、すなわち、電位Vp1>0となる。第1波形整流器142は、アナログ波形の電位Vp1を増幅することにより、デジタル波形の電圧Vq1を生成する。
【0064】
接続点Bの電位Vq1は、ソース・ドレイン電流IDS2に同期して変化する。同図は、駆動周波数f>共振周波数fとなり、電流位相が電圧位相よりも遅れた状態を示している。第2波形整流器144は、アナログ波形の電位Vq1を増幅し、デジタル波形の電圧Vq2を生成する。
【0065】
位相検出回路150は、電圧Vp2の立ち下がりエッジ時刻tと、電圧Vq2の立ち上がりエッジ時刻tを比較し、t−tにより位相差tを求める。第1波形整流器142と第2波形整流器144により、アナログ波形である電位Vp1と電位Vq1をデジタル波形に変換することにより、位相検出回路150は位相差tを検出しやすくなる。もちろん、位相検出回路150は、電位Vp1と電位Vq1を直接比較して位相差tを検出してもよい。
【0066】
特許文献2のように、給電コイルLに流れる電流Iを計測対象とすると、給電コイル回路120に新たな負荷がかかり、給電コイル回路120のインピーダンスZが変化するため、Q値が悪化してしまう。共振している給電コイルLの電流経路に位相検出回路150を接続するのは、音叉を触りながらその振動を測定するようなものである。本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム300では、電源回路200中の電位Vq1に基づいて電流位相を計測している。エキサイト回路110、給電コイル回路120、受電コイル回路130、ロード回路140という4つの共振回路に計測負荷をかけないため、Q値への影響を抑制しつつ電流位相を計測できる。
【0067】
図11は、制御電圧Vと駆動周波数fの関係を示すグラフである。図11に示す関係は、駆動周波数追随回路152において設定されている。位相差tの大きさは、共振周波数fの変化量に比例する。そこで、位相検出回路150は、位相差tに応じて制御電圧Vの変化量を決定し、駆動周波数追随回路152は制御電圧Vに応じて駆動周波数fを決定する。
【0068】
まず、初期状態では共振周波数f=13.56MHzなので、駆動周波数f=13.56MHzに設定される。制御電圧V=3(V)に初期設定される。共振周波数fが13.56MHzから12.56MHzに変化した場合を想定する。駆動周波数f(=13.56MHz)>共振周波数f(=12.56MHz)となるため、位相差t<0となる。位相差tは、共振周波数fの変化量(−1.0MHz)に比例する。位相検出回路150は、位相差tに応じて制御電圧Vの変化量を決定する。上記設例では、位相検出回路150は制御電圧Vの変化量を−1(V)とし、新たな制御電圧V=2(V)を出力する。駆動周波数追随回路152は、図11のグラフに示す関係にしたがって、制御電圧V=2(V)に対応する駆動周波数f=12.56MHzを出力する。このような処理により、共振周波数fが変化しても駆動周波数fを自動的に追随させることができる。
【0069】
位相検出回路150と駆動周波数追随回路152、オシレータ202はワンチップとして回路構成されてもよい。また、位相検出回路150や駆動周波数追随回路152の処理はソフトウェアにより処理されてもよい。たとえば、位相差tと駆動周波数fの変化量とをあらかじめ対応づけた設定情報を保持しておき、検出された位相差tの大きさに応じて駆動周波数fを調整してもよい。
【0070】
図12は、駆動周波数fの自動追随機能を備えるワイヤレス電力伝送システム400のシステム構成図の変形例である。ワイヤレス電力伝送システム400では、電源回路200がエキサイト回路110を介さずに、直接、給電コイル回路120を駆動する。図1や図9と同一の符号を付した構成は、図1や図9で説明した構成と同一または同様の機能を有する。
【0071】
ワイヤレス電力伝送システム400の給電コイル回路120は、給電コイルL、キャパシタCにトランスT2二次コイルLが直列接続された回路である。トランスT2二次コイルLは、トランスT2一次コイルL、トランスT2一次コイルLと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により電源回路200から交流電力を供給される。このように、エキサイト回路110を介さず、電源回路200から給電コイル回路120に直接交流電力を供給してもよい。
【0072】
以上、実施形態に基づいてワイヤレス電力伝送システム300を説明した。エキサイト回路110、給電コイル回路120、受電コイル回路130、ロード回路140は、いずれも同一の共振周波数fで共振するため、これらの回路になんらかの負荷を追加するとQ値が敏感に反応してしまう。本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム300の場合、給電コイルLに流れる電流Iを計測対象とするのではなく、電源回路200に含まれるスイッチングトランジスタQの通過電流を計測対象とするため、給電コイル回路120のQ値への影響を抑制しやすい。すなわち、システムの共振特性への計測による影響を抑制しつつ、駆動周波数fと共振周波数fが一致しているかを常時監視できる。
【0073】
図5や図6に関連して説明したように、磁場共振型のワイヤレス給電の場合、共振周波数fと駆動周波数fの一致度が電力伝送効率に大きく影響する。位相検出回路150や駆動周波数追随回路152等を設ければ、共振周波数fが変化しても駆動周波数fを自動的に追随させることができるため、使用条件が変化しても、電力伝送効率を最大値に維持しやすくなる。
【0074】
ワイヤレス電力伝送システム300の場合、エキサイトコイルLと給電コイルLの距離を給電コイルLおよび受電コイルLの直径と同一にして実験してみたところ、給電コイル回路120から送電された電力の約70%をロード回路140から取り出すことができた。
【0075】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0076】
100、300、400 ワイヤレス電力伝送システム
110 エキサイト回路
120 給電コイル回路
130 受電コイル回路
140 ロード回路
142 第1波形整流器
144 第2波形整流器
150 位相検出回路
152 駆動周波数追随回路
200 電源回路
202 オシレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、前記給電コイルから前記受電コイルにワイヤレス送電するための装置であって、
電源回路と、
前記給電コイルと、
前記給電コイルと磁気結合し、前記電源回路から供給される交流電力を前記給電コイルに供給するエキサイトコイルと、
前記電源回路から供給される前記交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出する位相検出回路と、を備え、
前記電源回路は、第1および第2の電流経路を含み、前記第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを交互に導通させることにより、前記エキサイトコイルに前記交流電力を供給し、
前記位相検出回路は、前記第1および第2のスイッチの双方または一方の通過電流の位相を計測することにより、前記交流電力の電流位相を計測することを特徴とするワイヤレス給電装置。
【請求項2】
給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、前記給電コイルから前記受電コイルにワイヤレス送電するための装置であって、
前記給電コイルに駆動周波数にて交流電力を供給する電源回路と、
前記給電コイルおよびキャパシタを含み、前記共振周波数にて共振する給電コイル回路と、
前記電源回路から供給される前記交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出する位相検出回路と、を備え、
前記電源回路は、第1および第2の電流経路を含み、前記第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを交互に導通させることにより、前記給電コイルに前記交流電力を供給し、
前記位相検出回路は、前記第1および第2のスイッチの双方または一方の通過電流の位相を計測することにより、前記交流電力の電流位相を計測することを特徴とするワイヤレス給電装置。
【請求項3】
前記電源回路に含まれる一次側コイルと前記給電コイルに含まれる二次側コイルにより結合トランスを形成し、前記結合トランスを介して、前記電源回路から前記給電コイル回路に交流電力を供給することを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項4】
前記検出された位相差が減少するように前記電源回路の駆動周波数を調整することにより、前記駆動周波数を前記共振周波数に追随させる駆動周波数追随回路、を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
【請求項5】
前記第1および第2のスイッチは、電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
【請求項6】
前記第1および第2のスイッチそれぞれのソースとグランドとの間には第1の抵抗が直列接続されており、
前記位相検出回路は、前記第1の抵抗に印加される電圧の変化から前記電流位相を計測することを特徴とする請求項5に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項7】
前記位相検出回路は、前記第1および第2のスイッチの双方または一方のソース・ドレイン電圧の変化から前記電圧位相を計測することを特徴とする請求項5または6に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項8】
前記第1および第2のスイッチの双方または一方のソースとドレインとの間には第2の抵抗が並列接続されており、
前記位相検出回路は、前記第2の抵抗の途中から取り出される中間電位の変化から前記電圧位相を計測することを特徴とする請求項7に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項9】
前記交流電力の電流波形と同相となるアナログ波形をデジタル波形に整形する第1波形整流器と、
前記交流電力の電圧波形と同相となるアナログ波形をデジタル波形に整形する第2波形整流器と、を更に備え、
前記位相検出回路は、2種類のデジタル波形のエッジを比較することにより、前記位相差を検出することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のワイヤレス給電装置と、
前記受電コイルと、
前記受電コイルと磁気結合し、前記受電コイルが前記給電コイルから受電した電力を供給されるロードコイルと、を備えることを特徴とするワイヤレス電力伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−78299(P2011−78299A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147538(P2010−147538)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】