説明

ワイヤーハーネス

【課題】分岐方向の統一化及び安定化が図られ、枝線と外装材との干渉を防止し、外装部材内での幹線の動きを阻止し、分岐部のビニールテープ巻きの簡略化が図られるような、ワイヤーハーネスの提供。
【解決手段】外装材(2)はスリット(21)を有しており、幹線(11)から分岐する枝線(12)はスリット(21)に加工された枝線分岐用加工部分(枝線用穴加工22)を介して分岐方向へ延在しており、外装材の枝線分岐用加工部分にはスリット(21)の幅寸法よりも大きな内径寸法を有する貫通穴(22)が形成され、且つ、弾性部材(例えばゴム)で構成されたグロメット(例えばラバーグロメット3)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス、特に自動車用ワイヤーハーネスの分岐部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、貨物自動車におけるワイヤーハーネス101の幹線11に、他の部位との接触等による破損や破損による漏電を防止するために、外装材であるコルゲートチューブ2によって被覆が行われる。
【0003】
然るに、ワイヤーハーネス101の幹線11から枝線12が分岐する位置(Y部)では、図8で詳細を示すように、枝線12がコルゲートチューブ2の端部2eと干渉することで、枝線が断線する危険性がある。
【0004】
また、従来技術による構造では、図9に示すように、枝線12の分岐方向が、一方向に定まらないため、ワイヤーハーネス101の枝線12と周辺の他部品とが干渉すると言う不具合があった。かかる不具合に対処するため、分岐部の広い領域で、ビニールテープ巻き処理による分岐点での枝線の安定化が不可避であった。
【0005】
その他の従来技術として、ワイヤーハーネスとコルゲートチューブとの干渉による分岐線の損傷を防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)においては、グロメットに相当する環状部材にはガイド機能が無いため、分岐方向(分枝方向)を安定化することが出来ないという問題点を有している。
【特許文献1】特開2000−166054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、分岐方向の統一化及び安定化が図られ、枝線と外装材との干渉を防止し、外装材内での幹線の移動(バタつき)を阻止し、分岐部のビニールテープ巻きの簡略化が図られるような、ワイヤーハーネスの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワイヤーハーネスは、幹線(11)と枝線(12)とから成る電線(1)と、電線(1)を被覆する非導電材料製の外装材(例えば、コルゲートチューブ2)とを有するワイヤーハーネス(100)において、外装材(2)はスリット(21)を有しており、幹線(11)から分岐する枝線(12)はスリット(21)に加工された枝線分岐用加工部分(枝線用穴加工22)を介して分岐方向へ延在しており、外装材(2)の枝線分岐用加工部分(枝線用穴加工22)にはスリット(21)の幅寸法(W)よりも大きな内径寸法(D)を有する貫通穴(22)が形成され、且つ弾性部材(例えばゴム)で構成されたグロメット(例えばラバーグロメット3)が配置されており、弾性部材で構成されたグロメット(3)はガイド部分(31)と傘状部分(傘部32)とを有しており、ガイド部分(31)は外装材(2)のスリット(21)を貫通する方向へ延在しており且つその内部に枝線(12)を包含しており、傘状部分(傘部32)は幹線(11)に接触していることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
本発明において、グロメット(3)の傘状部分(傘部32)は、接触している幹線(11)を、外装材(2)の円周方向についてスリット(21)とは反対側の(外装材2の)内壁面(2i)に押圧する様に構成されているのが好ましい(請求項2)。
【0009】
また本発明において、ビニールテープ(4)を巻き付けることにより、グロメット(3)が外装材(2)に固定されているのが好ましい(請求項3)。
【0010】
本発明は、自動車に適用されることが好ましい(請求項4)。
より具体的には、本発明は、貨物自動車に適用されるのが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
上述する構成を具備する本発明によれば、幹線(11)から分岐した枝線(12)はグロメット(3)のガイド部分(31)内に包含されるので、当該枝線(12)はガイド部分(31)により被覆されることとなる。そのため、外装材(2)の切断部分(図8の符号2eを参照)が枝線近傍に存在したとしても、外装材切断部分(2e)の端面が枝線(12)に干渉してしまうことが防止される。
【0012】
また、枝線(12)を包含しているガイド部分(31)は、外装材(2)のスリット(21)を貫通する方向へ延在しているので、幹線(11)から枝線(12)の分岐する方向は、外装材(2)のスリット(21)が形成されている方向に統一されることになる。
【0013】
そして、枝線(12)が幹線(11)から分岐している部分がガイド部分(31)の内部に包含されているので、幹線(11)から分岐した枝線(半径方向外方に延在する枝線12)の幹線近傍の領域であって、ガイド部分(31)に被覆されている領域では、枝線(12)が折り曲げられることがなく、分岐した方向へそのまま延在する。すなわち、枝線(12)の配索方向が安定化する。
【0014】
本発明において、グロメット(3)の傘状部分(傘部32)によって、接触している幹線(11)を、外装材(2)の円周方向についてスリット(21)とは反対側の(外装材の)内壁面(2i)に押圧する様に構成すれば(請求項2)、外装材の内壁面(2i)と幹線(11)との間に空隙部が存在しても、グロメットの傘状部分(傘部32)によって幹線(11)が外装材の内壁面(2i)に押し付けられるので、当該幹線(11)が外装材(2)の内部でバタついてしまうことが防止される。すなわち、外装材(2)内の充填率が向上する。
【0015】
さらに、ビニールテープを巻き付けることにより、グロメット(3)が外装材(2)に固定される様に構成すれば(請求項3)、ビニールテープを外装材(2)に巻き付ける箇所は、グロメット(3)を配置する部分、すなわち枝線(12)が幹線(11)から分岐する部分のみで足りるので、ビニールテープを外装材(2)に巻き付ける作業が簡略化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面、図1〜図3を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示すワイヤーハーネス(アッセンブリ)は、幹線11と枝線12とから成る電線1と、電線1の内の幹線11部分を被覆し外装材であるコルゲートチューブ2とを有している。
【0017】
コルゲートチューブ2は、チューブ中心線に平行で、チューブ外周で長手方向の全域に亙ってスリット21が(1箇所)設けられている。また、コルゲートチューブ2は、従来技術と同様、1つのワイヤーハーネス(アッセンブリ)当たり1本で、或いは、極めて少ない数で構成されている。すなわち、コルゲートチューブ2は切断されていない単一部材として構成されている。
図1において、符号Bは、幹線11から枝線12が分岐する分岐部Bを示している。
【0018】
スリット21は、詳細には、図2に示すように、僅かに隙間(幅)Wを有している。
図3は、図1の分岐部Bでのコルゲートチューブ3の断面を示し、図4は図3のZ矢視を示している。
図3、図4に示すように、コルゲートチューブ2における分岐部Bには枝線12が貫通するための枝線用貫通孔22が形成されている。枝線用貫通孔22の直径Dはスリット21の幅寸法Wよりも大きく形成されている。
【0019】
図5は、分岐部Bにおけるハーネス100の断面を示している。
図5において、分岐部Bの幹線11から枝線12が分岐する箇所には、全体が弾性部材、例えばゴムで構成され漏斗状のグロメット3が配置されている。
【0020】
グロメット3は、円筒状のガイド部分31と、傘状部分(傘部)32とを有している。ガイド部分31はコルゲートチューブ2のスリット21を貫通する方向へ延在しており且つその内部に枝線12を包含している。また、傘状部分(傘部)32は幹線11に接触している。
【0021】
図示は省略しているが、枝線12を包含したグロメット3の傘状部分(傘部)32が、ビニールテープによってコルゲートチューブ2の外周に巻き付けられることで、グロメット3が確実にコルゲートチューブ2に固定されている。ビニールテープ巻きの範囲は、グロメット3近傍の領域である。
【0022】
また、図6に示すように、グロメット3の傘状部分(傘部)32は、接触している幹線11を、コルゲートチューブ2の円周方向についてスリット21とは反対側のコルゲートチューブ2の内壁面2iに押圧する様に構成されている。
幹線11がコルゲートチューブ2の内壁面2iに押圧されることで、幹線11はコルゲートチューブ2内で安定するからである。
【0023】
図示の実施形態は、自動車全般に適用されることが好ましい。より具体的には、図示の実施形態は、貨物自動車に適用されるのが好ましい。
【0024】
図示の実施形態において、分岐した枝線12はグロメット3のガイド部分31内に包含されるので、枝線12はガイド部分31により被覆されることとなる。そのため、コルゲートチューブ2の切断部分(端部:図8の符号2e参照)が枝線近傍に存在したとしても、従来技術であったようなコルゲートチューブ2の切断部分の端面が枝線12に干渉してしまうことが防止される。
【0025】
また、枝線12を包含しているガイド部分31は、コルゲートチューブ2のスリット21を貫通する方向へ延在しているので、幹線11から枝線12の分岐する方向は、外装材2のスリット21が形成されている方向に統一されることになる。枝線の向きの統一は、枝線が他部品と干渉する可能性を低減させてくれる。
【0026】
そして、分岐部分Bがグロメット3のガイド部分31の内部に包含されているので、幹線11から分岐した枝線(半径方向外方に延在する枝線12)の幹線近傍の領域であって、ガイド部分31に被覆されている領域では、枝線12が折り曲げられることがなく、分岐した方向へそのまま延在する。すなわち、枝線12の配索方向が安定化するのである。この安定化は、枝線12の分岐点におけるブラつきを防止し、ハーネスの分岐点での疲労破壊を防止する。
【0027】
図示の実施形態において、グロメット3の傘状部分32によって、接触している幹線11を、コルゲートチューブ2の円周方向についてスリット21とは反対側の内壁面2iに押圧する様に構成してある。そのため、コルゲートチューブ2の内壁面2iと幹線11との間に空隙部が存在しても、グロメットの傘状部分32によって幹線11がコルゲートチューブ2の内壁面2iに押し付けられ、当該幹線11が外装材2の内部でバタついてしまうことが防止される。
【0028】
さらに、ビニールテープをコルゲートチューブ2に巻き付ける箇所は、グロメット3を配置する部分、すなわち枝線12が幹線11から分岐する部分のみで足りるので、ビニールテープをコルゲートチューブ2に巻き付ける作業が簡略化される。
【0029】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示した斜視図。
【図2】コルゲートチューブのスリットを説明する断面図。
【図3】コルゲートチューブの形成された枝線用貫通孔を説明する断面図。
【図4】図3におけるZ矢視図。
【図5】ワイヤーハーネス分岐点の断面図の一例。
【図6】ワイヤーハーネス分岐点の断面図の他の例。
【図7】従来のワイヤーハーネスの斜視図。
【図8】従来のワイヤーハーネスにおける分岐点の要部断面図。
【図9】従来の幹線から分岐する枝線の向きを示す断面図。
【符号の説明】
【0031】
1・・・ハーネス/ハーネスアッセンブリー
2・・・外装材/コルゲートチューブ
3・・・グロメット
11・・・幹線
12・・・枝線
21・・・スリット
2i・・・内壁面
31・・・ガイド部分
32・・・傘状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線と枝線とから成る電線と、電線を被覆する非導電材料製の外装材とを有するワイヤーハーネスにおいて、外装材はスリットを有しており、幹線から分岐する枝線はスリットに加工された枝線分岐用加工部分を介して分岐方向へ延在しており、外装材の枝線分岐用加工部分にはスリットの幅寸法よりも大きな内径寸法を有する貫通穴が形成され、且つ、弾性部材で構成されたグロメットが配置されており、弾性部材で構成されたグロメットはガイド部分と傘状部分とを有しており、ガイド部分は外装材のスリットを貫通する方向へ延在しており且つその内部に枝線を包含しており、傘状部分は幹線に接触していることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
グロメットの傘状部分は、接触している幹線を、外装材の円周方向についてスリットとは反対側の内壁面に押圧する様に構成されている請求項1のワイヤーハーネス。
【請求項3】
ビニールテープを巻き付けることにより、グロメットが外装材に固定されている請求項1、2の何れかのワイヤーハーネス。
【請求項4】
自動車に適用される請求項1〜3の何れか1項のワイヤーハーネス。
【請求項5】
貨物自動車に適用される請求項4のワイヤーハーネス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−235048(P2008−235048A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74047(P2007−74047)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】