説明

ワイヤ巻癖矯正装置、ワイヤ巻癖矯正方法

【課題】ワイヤに生じた巻癖を場所によるばらつきが少なくなるように矯正しつつ、ワイヤに生じた巻癖の矯正に要する手間を低減する。
【解決手段】ワイヤ巻癖矯正装置10は、複数の第1の滑車20とこれに対向して設けられた複数の第2の滑車30とを有し、第1の滑車20および第2の滑車30に交互にワイヤを折り返すように巻き付けてワイヤに張力を掛けたときに、各所定区間のワイヤの基点となる第1の滑車20と第2の滑車30との距離を調節してワイヤに付与される張力を調節する張力調節手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンやドラムに巻回されたワイヤの巻き癖を矯正するワイヤ巻癖矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワイヤ(導線)はボビンやドラム等に巻かれた状態で販売されている。このため、ワイヤに巻癖がついてしまっている。このような巻癖は、たとえば、ワイヤをカテーテルの先端部分の偏向操作に用いる場合には、ワイヤをカテーテルに引き通すのが困難になったり、キンクが生じたりする原因になる。したがって、ワイヤを使用する前に、巻癖を予め矯正する必要がある。
【0003】
従来、ワイヤの巻癖を矯正する装置として特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1では、複数のベアリングでワイヤを挟み込み、そのままワイヤを引っ張ることによって巻癖を矯正している。
【特許文献1】実開平6−9087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボビン(ドラム)からワイヤを引っ張り出す場合に、ボビンに巻回されて残っているワイヤ残量によってワイヤに生じた巻癖を矯正するのに必要な力が変化する。このため、特許文献1に記載の装置では、場所によってワイヤに生じた巻癖が矯正されずに残ってしまうという問題があった。また、所定長さの複数のワイヤが必要になる場合に、所定長さだけボビンから引っ張り出してから切るという作業を繰り返すことが必要となるため、多大な手間が生じていた。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤに生じた巻癖を場所によるばらつきが少なくなるように矯正しつつ、ワイヤに生じた巻癖の矯正に要する手間を低減することができる技術の提供にある。また、本発明の他の目的は、巻癖が矯正された複数の所定長さのワイヤを効率よく得ることができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、ワイヤ巻癖矯正装置である。当該ワイヤ巻癖矯正装置は、支持台と、支持台に列をなして位置が固定され、支持台の面方向において回転可能な前記複数の第1の滑車と、複数の第1の滑車に対して直線的に移動可能な移動台と、移動台を前記複数の第1の滑車に近づく方向または複数の第1の滑車から離れる方向に移動させる駆動手段と、移動台の移動方向と同じ方向に移動可能に移動台に設けられた複数の中心軸と、各中心軸に回転可能に設けられた複数の第2の滑車と、各中心軸の第1の滑車側において各移動台に一端が固定され、他端が各中心軸に接続可能な弾性体と、移動台と中心軸との距離を検出する検出手段と、検出手段で検出された距離が所定の距離になるように、駆動手段を制御して移動台の移動距離を調節する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、ワイヤの各所定区間の基点となる第1の滑車と第2の滑車との間でワイヤに所定の張力を付与することにより、各所定区間のワイヤに生じていた巻癖を矯正することができる。巻癖矯正後に、第1の滑車、第2の滑車に巻回されていた不要部分を切断することにより、所定の長さに揃えられ、ボビン巻回時の巻癖が矯正されて直線状に保たれた複数のワイヤを一括して作製することができる。
【0008】
上記態様のワイヤ巻癖矯正装置において、前記弾性体の一端が前記移動台に固定される位置を調節する調節手段をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、ワイヤ巻癖矯正装置である。当該ワイヤ巻癖矯正装置は、複数の第1の滑車が列をなして配置された第1の滑車群と、第1の滑車群と対向し、複数の第2の滑車が列をなして配置された第2の滑車群と、第1の滑車および第2の滑車に交互にワイヤを折り返すように巻き付けてワイヤに張力を掛けたときに、各所定区間のワイヤの基点となる第1の滑車と第2の滑車との距離を調節してワイヤに付与される張力を調節する張力調節手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、ワイヤ巻癖矯正方法である。当該ワイヤ巻癖矯正方法は、対向してそれぞれ列状に設けられた複数の第1の滑車、第2の滑車に交互にワイヤを巻き付けるワイヤ巻き付け工程と、各所定区間のワイヤの基点となる第1の滑車と第2の滑車との距離を調節してワイヤに付与される張力を調節する張力調節工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、カテーテルである。当該カテーテルは、上述したいずれかの態様のワイヤ巻癖矯正装置で作製されたワイヤが組み込まれたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤに生じた巻癖を場所によるばらつきが少なくなるように矯正しつつ、ワイヤについた巻癖の矯正に要する手間を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図1は、実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置10の構成を示す正面図である。図2は、実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置10の構成を示す側面図である。図3は、第1の滑車20aを示す斜視図である。図4は、第2の滑車30aを示す斜視図である。図5は、図1のA−A線上の断面図である。図6は、図1のB−B線上の断面図である。図7は、実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置10にワイヤ90を巻回した状態を示す図である。
【0015】
ワイヤ巻癖矯正装置10は、支持台12、複数の第1の滑車20、複数の第2の滑車30、第2の滑車用支持台40、モータ50、ケーシング60、検出手段70、および制御部100を備える。
【0016】
支持台12の一方の側(図1に示すX軸のマイナス側)に、複数の第1の滑車20(第1の滑車20a〜20i)が直線上(図1に示すY軸方向)に列をなして固定配置されている。複数の第1の滑車20をまとめて第1の滑車群22と呼ぶ。第1の滑車20は、支持台12から突出した軸(図示せず)を中心として回転可能である。各第1の滑車20の外周には、V形あるいはU形の溝21が設けられている(図3参照)。この溝21にワイヤを巻き付けることにより、第1の滑車20にワイヤを確実に巻き付けることができる。また、各第1の滑車20には、支持台12の側に円盤状または円形平板状の保護部材24が設けられている。保護部材24の直径は、第1の滑車20の溝21部分の最大直径より大きくなっている。これにより、第1の滑車20に巻回されたワイヤが支持台12側に外れにくくなっている。
【0017】
本実施の形態では、支持台12の中央上方部分に、ワイヤが巻回されたボビンの軸穴に挿入可能なボビン軸14が設けられている。また、第1の滑車20aの近傍にワイヤを引っかけることができる折り返し部16が設けられている。また、第1の滑車20iの近傍にワイヤの先端部分を固定可能なワイヤ固定部18が設けられている。折り返し部16およびワイヤ固定部18は、たとえば、ベースとなる軸(棒)と、バネによる弾性力によりこの軸に押圧された押し付け部材とからなり、当該軸と押し付け部材との間にワイヤを挟むことにより、ワイヤを固定することができる。
【0018】
支持台12の他方の側(図1に示すX軸のプラス側)に、複数の第2の滑車30(第2の滑車30a〜30j)が直線上(図1に示すY軸方向)に列をなしてスライド自在に配置されている。複数の第2の滑車30をまとめて第2の滑車群32と呼ぶ。第2の滑車群32は、第1の滑車群22と対向している。各第2の滑車30の外周には、V形あるいはU形の溝31が設けられている(図4参照)。この溝31にワイヤを巻き付けることにより、第2の滑車30にワイヤを確実に巻き付けることができる。また、各第2の滑車30には、支持台12の側に円盤状または円形平板状の保護部材34が設けられている。保護部材34の直径は、第2の滑車30の直径より大きくなっている。これにより、第2の滑車30に巻回されたワイヤが支持台12側に外れにくくなっている。
【0019】
図1に示すように、各第2の滑車30は、第2の滑車用支持台40に設置されたケーシング60に取り付けられている。以下、第2の滑車30の取り付け構造についてより詳しく説明する。
【0020】
第2の滑車用支持台40には、第1の滑車群22と第2の滑車群32とを結ぶ方向に、平行移動軸44が取り付けられている。
【0021】
モータ50は支持台12に固定されている。モータ50の回転力によって回転する駆動ギア(図示せず)と、平行移動軸44に設けられたラックギア(図示せず)とが係合している。モータ50が回転することにより、平行移動軸44および第2の滑車用支持台40は、平行移動軸44の軸方向に沿って平行移動する。なお、モータ50は、第2の滑車用支持台40(移動台)を第1の滑車群22に近づく方向または第1の滑車群22から離れる方向に移動させる駆動手段の一例である。
【0022】
図5に示すように、第2の滑車用支持台40には、各第2の滑車30に対応してケーシング60がそれぞれ設けられており、各第2の滑車30は対応するケーシング60に図1のX方向に沿って直線移動可能に設置されている。
【0023】
具体的には、図6に示すように、第2の滑車30の円筒状の中心軸36は、ケーシング60の長手方向(平行移動軸44の軸方向)に設けられたスライド用溝64を通してケーシング60の中空部分63に達しており、ケーシング60の中空部分63に配設された基部37に固定されている。基部37の幅はスライド用溝64の幅に比べて大きくなっており、第2の滑車30がケーシング60から外れないようになっている。ケーシング60の中空部分63および基部37の断面形状はともに矩形状であり、基部37はケーシング60の中空部分63をスライド可能である。なお、第2の滑車30は図示しないベアリングにより中心軸36に対して回転可能に取り付けられている。
【0024】
さらに、図6に示すように、ケーシング60の中空部分63にバネ62が内蔵されている。バネ62の一方の端部は、後述する弾性力調整部66に固定または当接されている。バネ62は、第1の滑車20と第2の滑車30とを遠ざける方向(以下、「離間方向」と呼ぶ)に第2の滑車30に弾性力を付与する弾性体の一例である。
【0025】
第2の滑車30の中心軸36は、ケーシング60の中空部分においてバネ62の他方の端部に接触可能に設けられており、第2の滑車30に掛けられたワイヤの張力により、第2の滑車30が後述する弾性力調整部66に対して第1の滑車20に接近する方向(以下、「接近方向」と呼ぶ)に移動するにつれて、バネ62によって付与される離間方向の弾性力がバネ62のバネ係数に応じて増大する。
【0026】
なお、第2の滑車30a用のケーシング60には、検出手段70が設けられている。検出手段70は、第2の滑車30がワイヤの張力により、後述する弾性力調整部66に対して第1の滑車20に近接する方向に第2の滑車30が所定の距離だけ移動したことを検知してスイッチがオンとなる機構である。検出手段70は光学式でも機械式でもよい。モータ50の駆動力により平行移動軸44が離間方向に平行移動すると、第1の滑車20と第2の滑車30との間に張られたワイヤの張力が徐々に増加し、ワイヤの張力により第2の滑車30は接近方向に平行移動する。第2の滑車30の移動距離が所定の距離に達すると、検出手段70がオンになり、その位置でモータ50の駆動が停止され、第2の滑車30の位置が固定される。これにより、ワイヤに所定の張力が掛けられるように、第1の滑車20と第2の滑車30との距離が調節される。
【0027】
検出手段70のスイッチがオンとなる第2の滑車30の移動距離は、手動によりまたは後述する制御部100において設定可能である。これにより、ワイヤに付与される張力を所望の値に設定することができる。
【0028】
また、各ケーシング60には、弾性力調整部66が設けられている。弾性力調整部66は、たとえば、雄ネジであり、ケーシング60に対応する雌ネジが形成されている。このに雄ネジを雌ネジに螺合させることにより、第2の滑車30の中心軸36とは反対側のバネ62の端部の固定位置を調節することができる。これにより、出荷時やメンテナンス時において、バネ62によって第2の滑車30に付与される弾性力を微調整することができる。
【0029】
この他、第2の滑車用支持台40には、平行移動軸44と平行にガイド軸46a、46bが固定されている。第2の滑車用支持台40の裏面(支持台12に対向する面)には、ガイド軸46a、46bがそれぞれ挿入される中空部48が設けられている。これにより、第2の滑車用支持台40が平行移動する際に、移動方向と直交する方向に第2の滑車用支持台40がぶれることを抑制することができる。
【0030】
制御部100は、CPU、ROM、RAM等のメモリ、入出力ポート装置等を含み、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された周知の構成のマイクロコンピュータ及びモータ駆動回路をハードウェア構成として有する。
【0031】
制御部100は、ワイヤ巻癖矯正時にモータ50の駆動を制御して第1の滑車群22と第2の滑車群32との距離を調節する。制御部100によるモータ50の制御については後述する。
【0032】
ここで、ワイヤ巻癖矯正装置10を用いてワイヤの巻癖を矯正する際の手順について説明する。まず、図7に示すように、ワイヤ巻癖矯正装置10にワイヤを取り付ける。具体的には、まず、ボビン92に巻回されたワイヤを引っ張り出し、引っ張りだしたワイヤの先端をワイヤ固定部18に固定する。ボビン92からワイヤを引っ張り出しながら、対向して設けられた第1の滑車20および第2の滑車30に交互に巻き付けた後、折り返し部16に巻き付けて固定する。ワイヤ90が張られた第1の滑車20および第2の滑車30は、それぞれ所定区間のワイヤ90の基点となっている。所定区間とは、ワイヤ90の巻癖が矯正される区間であり、たとえば、図7に示すように、第2の滑車30aおよび第1の滑車20aは、それぞれ、ワイヤ90の所定区間の基点となっている。なお、ケーシング60に内蔵されたバネ62の弾性力は、作業者が第1の滑車20および第2の滑車30等にワイヤを巻きつけていく作業過程においてほとんど縮まない程度の強さを有することが望ましい。
【0033】
また、第1の滑車20および第2の滑車30等にワイヤを巻きつける際に、各滑車間でワイヤがたるまないようにする。このように第1の滑車20および第2の滑車30等にワイヤを巻きつけた後に、第2の滑車用支持台40が離間方向に移動することで、各ケーシング60に内蔵された全てのバネ62が所定量だけ縮み、各所定区間に渡らされたワイヤに同じテンション(負荷)を掛けることができる。
【0034】
また、第2の滑車用支持台40の移動速度が速すぎた場合であっても、第2の滑車30がケーシング60に対して接近方向に移動してバネ62を押し縮めることにより、急激な引張りが打ち消される、ワイヤがちぎれることが抑制される。
【0035】
続いて、検出手段70のスイッチがオンとなる第2の滑車30の移動距離を設定する。また、ワイヤの巻癖矯正時間を制御部100に入力する。
【0036】
続いて、制御部100により、モータ50の駆動が開始され、第1の滑車群22と第2の滑車群32との距離が徐々に広がる。検出手段70により、弾性力調整部66に対する第2の滑車30の接近距離が所定距離に到達したことが検知されるとその信号が制御部100に入力される。この信号が入力されると、制御部100はモータ50の駆動を停止させる。第2の滑車群32が第1の滑車群22から離間方向に所定距離だけ移動することにより、各所定区間の基点となる第1の滑車20と第2の滑車30との間に所定の張力(負荷)を掛けることができる。モータ50の駆動を停止してから上述した巻癖矯正時間経過後、制御部100はモータ50を先ほどと逆方向に駆動させて第1の滑車群22と第2の滑車群32との距離を縮め、両滑車間でワイヤを弛ませる。
【0037】
なお、本実施の形態によると、第1の滑車20および第2の滑車30において、摩擦のばらつきや、ローラの回転不良があったとしても、バネと滑車との作用によって、全ての所定区間の基点となる滑車間に同じ張力が掛かる。このため、検出手段70は第2の滑車30のいずれか1つ(本実施の形態では第2の滑車30a)に設けられていればよい。
【0038】
この状態で第1の滑車20及び第2の滑車30付近のワイヤを切断し、両滑車間にぶら下がっていたワイヤを取り出すことができる。取り出されたワイヤのうち、第1の滑車20および第2の滑車30に巻き付けられていた不要部分を切断することにより、巻癖が矯正された所定長さの多数のワイヤを得ることができる。
【0039】
以上の構成により、ワイヤの各所定区間の基点となる第1の滑車20と第2の滑車30との間でワイヤに所定の張力を付与することにより、各所定区間のワイヤに生じていた巻癖を矯正することができる。この状態で、第1の滑車20、第2の滑車30、折り返し部16、ワイヤ固定部18からワイヤを取り外し、第1の滑車20、第2の滑車30等に巻回されていた不要部分を切断することにより、所定の長さに揃えられ、ボビン巻回時の巻癖がばらつきなく矯正されて直線状に保たれた複数のワイヤを一括して作製することができる。これにより、巻癖が矯正されたワイヤの作製に要する手間を大幅に低減することができ、ひいてはワイヤ作製に要するコストを削減することができる。
【0040】
なお、本実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置で巻癖が矯正されるワイヤとしてはカテーテルに用いられるガイドワイヤ、操作用ワイヤ、電極接続用のワイヤなどが挙げられる。
【0041】
図8は、本実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置で作成されたワイヤが組み込まれたカテーテル200の一例を示す要部断面図である。
【0042】
カテーテル200は、先端偏向操作が可能な電極カテーテルであり、たとえば心臓における不整脈の診断または治療に好適に用いられる。
【0043】
カテーテル200は、管状部材204の遠位端部に先端チップ電極210、およびリング状電極212a、212bを有する。先端チップ電極210およびリング状電極212a、212bは、たとえば接着剤などを用いて管状部材204に固定されている。
【0044】
管状部材204の近位端には、ハンドル(図示せず)が装着されている。ハンドルからは、先端チップ電極210、およびリング状電極212a、212bに電気的に接続される導線の引き出し線が引き出される。また、ハンドルには、管状部材204の先端部の偏向移動操作(首振り操作)を行うための摘み(図示せず)が装着されている。
【0045】
管状部材204は、軸方向に沿って形成された複数のルーメンを有する中空構造を有する。管状部材204の遠位端部分は相対的に可撓性が高く、管状部材204の近位端部分は相対的に剛性が高い。
【0046】
管状部材204の主要部は、たとえばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタンなどの合成樹脂で構成される。管状部材204の軸方向に形成されたルーメンには、先端チップ電極210およびリング状電極212a、12bにそれぞれ接続される導線が絶縁された状態で通されている。
【0047】
先端チップ電極210および複数のリング状電極212a、212bは、たとえばアルミニウム、銅、ステンレス、金、白金など、熱伝導性の良好な金属で構成される。なお、X線に対する造影性を良好に持たせるためには、先端チップ電極210およびリング状電極212a、212bは、白金などで構成されることが好ましい。
【0048】
管状部材204には、軸方向に沿って第1のルーメン220および第2のルーメン222が形成されている。
【0049】
第1のルーメン220には、操作用ワイヤ240がスライド可能に挿通されている。操作用ワイヤ240の遠位端には、第1のルーメン220内の操作用ワイヤ240より径が大きい球形状のアンカー242が形成されている。操作用ワイヤ240の近位端は、摘みに接続されている。
【0050】
先端チップ電極210の内側に凹部250が形成されている。この凹部250に、はんだ260が充填されている。操作用ワイヤ240の遠位端は、はんだ250に埋め込まれ、操作用ワイヤ240の遠位端がはんだ260および先端チップ電極210に対して固定されている。これにより、摘みを操作することにより、操作用ワイヤ240を引っ張り、カテーテル200の遠位端を矢印A方向に首振り偏向可能になっている。なお、本実施の形態では、操作用ワイヤ240の遠位端にアンカー242が設けられているため、操作用ワイヤ240の遠位端がはんだ260から抜けにくくなっている。これにより、カテーテル200の動作信頼性を向上させることができる。
【0051】
また、第2のルーメン222に導線270が挿通されている。導線270の遠位端は、はんだ260に埋め込まれている。これにより、はんだ260を介して導線270と先端チップ電極210とが電気的に接続される。
【0052】
また、管状部材204には、図示しない第3のルーメンおよび第4のルーメンが形成されている。第3のルーメンおよび第3のルーメンは、それぞれ、リング状電極212a、リング状電極212bに電気的に接続される導線の挿通用に用いられる。
【0053】
一般的に、カテーテルの管状部材は1m程度の長さがある。そして、そのルーメン内に導線や操作用ワイヤを引き通す作業を経て、カテーテルが製造される。このとき、導線や操作用ワイヤに巻癖があると、作業工程で導線同士が絡みやすくなり、作業効率が悪くなるという問題があった。また、巻癖がついたものを使って長いルーメン内に導線等を引き通すと、導線等を引っ張ったときにキンク等が発生し易いという問題もあった。
【0054】
上述したワイヤ巻癖矯正装置10を用いて作製された操作用ワイヤ240、導線270等を用いてカテーテル200を製造することにより、巻癖に起因する作業効率の低下が抑制されるため、カテーテル200の製造を容易にし、製造時間の短縮を図ることができる。
【0055】
また、上述したワイヤ巻癖矯正装置10を用いて作製された操作用ワイヤ240、導線270等をカテーテル200に組み込むことにより、カテーテル200の遠位部分がユーザの意図しない方向に偏向することを抑制し、カテーテル200の操作性を向上させることができる。
【0056】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0057】
たとえば、上述の実施の形態では、バネ62は、押しバネであるが、第1の滑車20と第2の滑車30とを遠ざける方向に第2の滑車に弾性力を付与する弾性体として引きバネを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置の構成を示す正面図である。
【図2】実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置の構成を示す側面図である。
【図3】第1の滑車を示す斜視図である。
【図4】第2の滑車を示す斜視図である。
【図5】図1のA−A線上の断面図である。
【図6】図1のB−B線上の断面図である。
【図7】実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置にワイヤを巻回した状態を示す図である。
【図8】本実施の形態に係るワイヤ巻癖矯正装置で作成されたワイヤが組み込まれたカテーテルの一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 ワイヤ巻癖矯正装置、12 支持台、20 第1の滑車、22 第1の滑車群、24,34 保護部材、30 第2の滑車、32 第2の滑車群、40 第2の滑車用支持台、44 平行移動軸、50 モータ、60 ケーシング、62 バネ、70 検出手段、100 制御部、200 カテーテル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、
前記支持台に列をなして位置が固定され、前記支持台の面方向において回転可能な複数の第1の滑車と、
前記複数の第1の滑車に対して直線的に移動可能な移動台と、
前記移動台を前記複数の第1の滑車に近づく方向または前記複数の第1の滑車から離れる方向に移動させる駆動手段と、
前記移動台の移動方向と同じ方向に移動可能に前記移動台に設けられた複数の中心軸と、
各中心軸に回転可能に設けられた複数の第2の滑車と、
各中心軸の前記第1の滑車側において各移動台に一端が固定され、他端が各中心軸に接続可能な弾性体と、
前記移動台と前記中心軸との距離を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された距離が所定の距離になるように、前記駆動手段を制御して前記移動台の移動距離を調節する制御部と、
を備えることを特徴とするワイヤ巻癖矯正装置。
【請求項2】
前記弾性体の一端が前記移動台に固定される位置を調節する調節手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ巻癖矯正装置。
【請求項3】
複数の第1の滑車が列をなして配置された第1の滑車群と、
前記第1の滑車群と対向し、複数の第2の滑車が列をなして配置された第2の滑車群と、
前記第1の滑車および前記第2の滑車に交互にワイヤを折り返すように巻き付けて前記ワイヤに張力を掛けたときに、各所定区間の前記ワイヤの基点となる前記第1の滑車と前記第2の滑車との距離を調節して前記ワイヤに付与される張力を調節する張力調節手段と、
を備えることを特徴とするワイヤ巻癖矯正装置。
【請求項4】
対向してそれぞれ列状に設けられた複数の第1の滑車、第2の滑車に交互にワイヤを巻き付けるワイヤ巻き付け工程と、
各所定区間のワイヤの基点となる前記第1の滑車と第2の滑車との距離を調節して前記ワイヤに付与される張力を調節する張力調節工程と、
を備えることを特徴とするワイヤ巻癖矯正方法。
【請求項5】
前記張力調節工程において、各所定区間の前記ワイヤの基点となる前記第1の滑車および前記第2の滑車のうち少なくとも一方に、前記第1の滑車と前記第2の滑車との距離が広がる方向に弾性力を付与し、前記弾性力と前記張力が釣り合う位置に、前記第1の滑車と前記第2の滑車との距離を調節することを特徴とする請求項4に記載のワイヤ巻癖矯正方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のワイヤ巻癖矯正装置で作製されたワイヤが組み込まれたことを特徴とするカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−64113(P2010−64113A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233691(P2008−233691)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【特許番号】特許第4286901号(P4286901)
【特許公報発行日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(594170727)日本ライフライン株式会社 (83)
【Fターム(参考)】