説明

ワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置

【課題】ワイヤ放電加工機による微細な軸などの回転体形状の加工を安定的に実施でき、ワイヤ放電加工機への着脱および調整が容易にでき、被加工物の正確な角度割り出しができる、高速度で、微細に、高精度に回転体形状を加工する放電軸加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被加工物を固定する保持機構と、回転運動する制御機能付き駆動機構と、伝達機構と、被加工物の回転検出機構とを一つの筐体内に具備し、ワイヤ放電加工機に容易に着脱でき、浸漬法に耐え、角度割り出しができ、被加工物と筐体とを電気的に接続し、被加工物は筐体を介して加工テーブルに電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ放電加工機で微細な軸などの回転体形状品を高速度で、微細に、高精度に加工するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な軸などの回転体形状の加工において、刃物などの工具を押し当てながら加工する手段では工具と被加工物間の抵抗などが要因で形状を得にくい場合、放電加工を使用する。
特開平3−178730号(以下、特許文献1という)に、「加工物を加工するときには、それを軸回転体の軸端に取付けて回転させるが、ワイヤは縦軸、横軸に移動するので、三次元加工が可能となる。」の記載がある。
ブロック電極を用いて被加工物を回転体形状に加工する方法として、特開平5−318233号(以下、特許文献2という)に「放電サーボ送りは、被加工物の径方向に切込み量Aを与える直線的な送りに続いて、この切込み量Aを維持したまま被加工物の回転に合せて回転送りが与えられるようにして、被加工物に回転体形状を付与するようにしたものである。」の記載がある。
ワイヤ放電加工の加工法として電極と被加工物の間に加工液を吹き掛ける吹掛法と電極と被加工物を加工液中に浸漬する浸漬法がある。
特開2002−239845号(以下、特許文献3という)には、「浸漬法は、加工液が常に確実に電極と被加工物の間に存在し加工反応が安定して進行すること、加工液として油を使った場合でも火災の危険が少ないことなどの利点があり、運転員の負担が軽減でき、さらには、無人連続運転に対しても適性が高い。」(特許文献3の第0003段落)の記載がある。
また、特許文献3には、その手段として「割出しのために軸を回転・駆動する駆動部分と、軸で被加工物を把持し回転させる部分を一体構成とせず、液中には後者の部分、すなわち、被加工物を回転する軸と、その軸を支持する軸受機構、軸に被加工物を把持する機構、等のみを設置し、液中に置けば完全な防液仕様が要求されるサーボモータ、サーボアンプ等の電気品や、空気圧や油圧機器、等を含む前者の部分は加工液の外に設置する。そしてその両者の間を機械的に結合させることにより、加工液外からの駆動により加工液内で被加工物の割出し操作が可能となる。」(特許文献3の第0011段落)の記載がある。
【0003】
非特許文献1に、旋盤加工に代わる外形加工技術としてワイヤ放電加工機による放電軸加工法に関して「ワイヤオフセット量による加工電圧の変化は、加工送り速度を変化させることにより一定化を図ることができ、より高精度な加工形状が得られた。」などの記載がある。
非特許文献2には、「要求形状の輪郭に沿って加工できるため単一工程で加工が済み加工時間を短縮できた。」とする旋盤加工に代わる外形加工技術であるワイヤ放電加工機による放電軸加工法に関する記載がある。
非特許文献3には、微細軸や3次元形状部品の加工が行える放電軸加工法の加工効率および安全性の向上に関して、「工作物と上下ワイヤガイドの距離を調整できるように改良し、駆動源を電気モーターからエアーモーターに変更するなどして安全性を確保した。また、本体に防水処理を施し、加工液中に浸漬できるようにした。」の記載がある。
非特許文献4には、ワイヤ放電加工機を微細な3次元の部品加工に応用できる技術である放電軸加工法について、「装置のサイズは、200×200×60mm程度で取扱い性に優れており、加工機への設置は、通常の板状工作物の固定と同様である。」および「実加工時は、装置全体が加工液中に浸漬する。」の記載がある。
非特許文献5では、角度割り出し機能を付加することで多角形体部品の作製に対応できる放電軸加工装置を開発しており「ワイヤ放電加工機の加工槽内で工作物を回転させる駆動ユニットと工作物の回転を制御するコントローラーから成る。」の記載がある。
【0004】
【特許文献1】特開平3−178730号
【特許文献2】特開平5−318233号
【特許文献3】特開2002−239845号
【非特許文献1】城門由人、「放電軸加工に関する研究」、第4回生産加工・工作機械部門講演会講演論文集、社団法人日本機械学会、2002年11月、No.02−25、P.125−126
【非特許文献2】城門由人、「放電軸加工技術に関する研究」、平成14年度研究報告、大分県産業科学技術センター、平成15年6月、P.71−74
【非特許文献3】城門由人、「放電加工による微細・特殊形状加工に関する研究」、平成15年度研究報告、大分県産業科学技術センター、平成16年7月、P.45−47
【非特許文献4】城門由人、「放電軸加工法による効率的微細加工への取組み」、ツールエンジニア、株式会社大河出版、2005年3月、第46巻、第3号、P.60−65
【非特許文献5】城門由人、「放電加工による微細・特殊形状加工に関する研究」、平成16年度研究報告、大分県産業科学技術センター、平成17年7月、P.37−41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、モーターが剥き出し状態であるから浸漬法による加工ができず、加工液をワイヤ電極に垂れ流す吹掛法による加工であるため、加工屑の排出性が悪く加工の安定性に問題点があり、加工速度を向上することは困難である。
特許文献2では、ブロック電極にも消耗を生じるため、寸法精度を向上することは困難である。
また、特許文献3では、防滴仕様が必要となる電気品や空気圧・油圧機器類の駆動部分と被加工物を把持し回転させる把持・回転部分を分割し、駆動部分を加工液外に、把持・回転部分を加工液中に設置し、それらがタイミングベルトにより機械的に結合される。そのため、タイミングベルトに付着した加工液が飛散する。また、駆動部分と把持・回転部分が分割されているため加工機への設置・調整作業が複雑となる。さらに、角度割り出しにおいては、被加工物の角度位置情報の検出機構が無いため被加工物の正確な位置決めが困難などの問題点がある。
【0006】
非特許文献1および非特許文献2に、「加工送り速度が速くなるほど加工電圧は低下し、かつ、不安定になることが分かる。一方、被加工物が高回転で回転するほど加工が安定する傾向にある。」の記載がある。加工電圧の低下の要因の一つである放電軸加工装置の電気抵抗を小さくし、被加工物を高回転で回転できるよう改良する。
非特許文献3には、「工作物と上下ワイヤガイドの距離を調整できるように改良」との記載がある。本発明では、被加工物の回転軸が放電軸加工装置の接地面と同一平面上となるよう改良し、被加工物と上下ワイヤガイドの距離の調整を容易にする。
非特許文献4に、「直径数十μmの軸加工を実施する上で、課題となるのが工作物の回転の中心位置決めである。」の記載があるが、これに関する具体的な記載はない。本発明では、被加工物の回転角度を制御できるよう改良し、角度割出しした静止状態の被加工物により回転中心位置決めが実施できるようにする。
非特許文献5に、「コントローラーには、ブラシレスDCモーター用ドライバ、回転速度表示ユニット、回転数調整つまみ、回転ON/OFFボタン、回転制御ユニット(カムポジショナ)、角度割り出しボタン、回転制御ボタンおよび主電源ボタンが装備される。」の記載がある。本発明では、これらの機能を、放電軸加工装置の内部でおよび簡易な小型の設定信号発信装置を外部で実施できるように改良する。
【0007】
本発明は、ワイヤ放電加工機において、微細な軸などの回転体形状の加工を安定的に実施でき、ワイヤ放電加工機への着脱および調整が容易にでき、被加工物の正確な角度割り出しができる、微細に、高精度に回転体形状を高速度で加工する放電軸加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、被加工物を固定する保持機構と、回転運動する制御機能付き駆動機構と、伝達機構と、被加工物の回転検出機構とを一つの筐体内に具備し、ワイヤ放電加工機に容易に着脱でき、浸漬法に耐え、角度割り出しができ、被加工物と筐体とを電気的に接続し、被加工物は筐体を介して加工テーブルに電気的に接続することを特徴とするものである。
【0009】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、高速度で、微細に、高精度に回転体形状を加工するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置であって、被加工物を固定する保持機構を一つの筐体内に具備する。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、高速度で、微細に、高精度に回転体形状を加工するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置であって、被加工物を固定する保持機構と、回転運動する制御機能付き駆動機構と、伝達機構とを一つの筐体内に具備したものである。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、高速度で、微細に、高精度に回転体形状を加工するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置であって、被加工物の回転検出機構を一つの筐体内に具備したものである。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、高速度で、微細に、高精度に回転体形状を加工するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置であって、被加工物の回転検出機構と回転運動する制御機能付き駆動機構とを一つの筐体内に具備する。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、高速度で、微細に、高精度に回転体形状を加工するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置であって、被加工物を固定する保持機構と、回転運動する制御機能付き駆動機構と、伝達機構と、被加工物の回転検出機構とを一つの筐体内に具備する。
【0010】
被加工物を固定する保持機構と筐体とを電気的に接続することを特徴とするワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置も本発明に含まれる。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、ワイヤ放電加工機の加工液に浸漬して回転体形状を加工することもできる。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、ワイヤ放電加工機の加工テーブルへの着脱および調整を容易にする干渉防止スペーサーおよびマグネットチャック治具を具備するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明により、加工前の被加工物の直径と製品の直径の差がワイヤ電極直径以上の加工ができることから製品形状の片輪郭に沿ってワイヤ電極を移動させながら加工することができるため、1パスで製品形状を得ることができる。
回転体形状品の作製にあっては、加工前の被加工物の直径を製品直径にワイヤ電極直径を加えた寸法以上にして、さらに、浸漬法とすることにより、平均加工電圧に対し−3Vから+3V内の変動という安定した加工を実施できる。
また、回転体直径100μm以下の微細な回転体形状品の加工にあっては、加工前の被加工物の直径を製品直径にワイヤ電極直径を加えた寸法以上とすることにより加工部分が直径の大きな加工前の被加工物となるため、加工部分に変形を生じること無く微細な加工を実施できる。
【0012】
保持機構にはJIS 0級以上のベアリングを2個以上使用して、保持シャフトの回転精度を向上し、また、ワイヤ電極を1m/minから16m/minの範囲で転送させて常に劣化の無いワイヤ電極を用いて加工することにより、被加工物を粗さ2〜3μmRa、寸法公差0.5mmという高精度な加工を実施できる。
加工前の軸状被加工物の直径が10mm以下の場合、XY軸方向移動速度である加工送り速度0.1mm/min以上の高速度で加工が実現できる。例えば、直径10mmの軸状被加工物から直径100μm、長さ2mmの微細軸を10分以内で作製できる。
【0013】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、被加工物を固定する保持機構を一つの筐体内に具備するため、当該装置のみをワイヤ放電加工機の加工テーブルに取り付ければよく、容易に着脱できる。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、被加工物を固定する保持機構と、回転運動する制御機能付き駆動機構と、伝達機構とを一つの筐体内に具備するため、当該装置のみをワイヤ放電加工機の加工テーブルに取り付ければよく容易に着脱できる。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、被加工物の回転検出機構を一つの筐体内に具備するため、当該装置のみをワイヤ放電加工機の加工テーブルに取り付ければよく容易に着脱できる。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、被加工物を固定する保持機構と、回転運動する制御機能付き駆動機構と、伝達機構と、被加工物の回転検出機構とを一つの筐体内に具備するため、当該装置のみをワイヤ放電加工機の加工テーブルに取り付ければよく容易に着脱できる。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、保持シャフトの回転軸と接地面とが同一平面上にあり、保持シャフトの回転軸とワイヤ電極の一移動軸とが平行になるように調整するだけでよく、固定時の調整が容易である。
【0014】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、被加工物と一体に運動する保持シャフトの回転状態を回転検出機構により計測することで、被加工物の正確な角度位置決めを実現できる。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、保持シャフトを90°ピッチで角度割出しし、静止した保持シャフトに対しワイヤ電極を使って位置決めを行うことで、保持シャフトの正確な回転中心位置決めができる。
【0015】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、被加工物を固定する保持機構と筐体とを電気的に接続することで当該放電軸加工装置をワイヤ放電加工機の加工テーブルに直接固定することで被加工物と加工テーブルとが電気的に接続できる。
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、被加工物を固定する保持機構と筐体とを電気的に接続するため接続距離を短縮でき、電気抵抗を小さくでき、加工機の発生加工電圧を維持でき、高速度で安定した加工を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を本発明装置に基づいて説明する。ワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置は、保持機構200と、制御機能付き駆動機構300と、伝達機構400と、回転検出機構500とこれらを収める筐体100、および、コントローラー600を主要部として構成される。放電軸加工装置の本体を図1に、保持機構200部分を図2に、コントローラー600を図3に示す。
【0017】
筐体100の材質は、電気抵抗の小さいもので加工できるものであればよく、金属材料、合金、導電性高分子、導電性複合体などが挙げられる。金属材料、合金としてアルミニウムやステンレスなどが好ましい。
筐体100の上面には、パッキン102を介してカバー104をボルトで固定し、筐体100上部からの加工液の浸入を防ぐ。パッキン102は、加工液が水や鉱油などの場合にニトリル系ゴムを使用し、灯油系の油の場合はフッ素系ゴムを使用する。カバー104の材質は、ガラスやアクリル樹脂などの透明体あるいは不透明体の金属材料、合金などである。
【0018】
保持機構200は、軸状の被加工物を保持する固定部202と、固定部202を軸端に持つ保持シャフト204と、保持シャフト204を保持し回転するベアリングホルダーセット206と、回転する被加工物と筐体100を電気的に接続するカップリング208と、回転接続部品210と、電線212からなる。
また、保持機構200には、伝達機構400と回転検出機構500を取り付ける。
固定部202には軸状の被加工物の直径に応じたコレットチャックを使用し、被加工物と保持シャフト204が一体となるように固定する。コレットチャックの変更により直径3mmから30mmの被加工物の加工ができる。
ベアリングホルダーセット206をセラミックスなどの絶縁板214を介して樹脂ボルトなどの絶縁ボルト216により筐体100に固定する。このとき、保持シャフト204の回転軸が筐体前面106と直交し、筐体100の接地面108と同一平面上になるように固定する。
また、ベアリングホルダーセット206および筐体100に2個以上のJIS 0級以上のベアリングを使用して保持シャフト204を保持することが好ましい。
保持シャフト204を筐体100に貫通させる。貫通部にはオイルシール218を使用し、筐体100内部への加工液の浸入を防ぐ。オイルシール218には、加工液が水や鉱油などの場合にニトリル系ゴムを使用し、灯油系の油の場合はフッ素系ゴムを使用する。
断面積0.75mmから5.5mmの電線212を用いて、電気抵抗の小さい通電性のあるカップリング208および回転接続部品210(株式会社ソルトン製MODEL110など)を介して保持シャフト204と筐体100とを電気的に接続する。電線212は、長さ3cmから100cmの範囲で使用する。また、筐体100に突起を設け、回転接続部品210と直接接続する構造も好ましい。
カップリング208の材質としては、電気抵抗の小さいものであればよく、金属材料、合金、導電性高分子、導電性複合体などが挙げられる。金属材料、合金としてアルミニウムやステンレスなどが好ましい。
【0019】
制御機能付き駆動機構300には、保持シャフト204に回転力を与える制御モーター302およびドライバ304が該当する。制御モーター302には、1°以下の分解能で高精度な位置決めができ、0rpmから3000rpmまで0.01rpm刻みで速度制御できる機能および定格トルク0.1N・m以上の能力を有するステッピングモーターやサーボモーターを使用する。
ドライバ304の電源供給およびコントローラー600との接続用電線306は、筐体100側面部の完全防水コネクタ110に接続する。
筐体100との絶縁のために制御モーター302およびドライバ304の取付けには、樹脂やアクリル等の絶縁材質の取付け部品308を使用する。
制御機能付き駆動機構300の回転動力を伝達機構400を介して保持シャフト204に伝達する。歯車や摩擦車などで構成する伝達機構400には、絶縁のために接触部分もしくは支持部分にゴムやプラスチックなどの絶縁材料を使用する。
【0020】
回転検出機構500は、被加工物と一体に運動する保持シャフト204の回転速度や角度位置などの回転状態を検出する機構を有するものであり、具体的には、ロータリーエンコーダなどの回転角センサを使用する。株式会社ムトーエンジニアリング製中空式ロータリーエンコーダMH−1800を使用するが、これに限定されるものではない。
信号用電線は、筐体100側面部の完全防水コネクタ110に接続する。
回転検出機構500の検出データを制御機能付き駆動機構300にフィードバックすることで、被加工物を1°以下の分解能で高精度に位置決めでき、0rpmから3000rpmまで0.01rpm刻みで速度制御できる。
【0021】
コントローラー600を筐体100側面部の完全防水コネクタ110を介して制御機能付き駆動機構300と回転検出機構500とに接続する。
コントローラー600として、回転速度や位置決め角度の設定および回転速度や回転角度の表示が可能な機器を使用する。具体的には、株式会社オリエンタルモーター製コントローラーLPG102−Uを使用するが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置のワイヤ放電加工機の加工テーブルへの着脱にあっては、被加工物とワイヤ放電加工機との干渉を防ぐために接地面108に軸状被加工物の半径に相当する干渉防止スペーサーおよびマグネットチャック治具をボルトで固定し調整する。また、保持シャフト204の回転軸がワイヤ電極の一移動軸と平行になるように調整し、ボルト押さえやマグネットチャックやバイスなどにより固定する。
干渉防止スペーサーの材質は、電気抵抗の小さいもので加工できるものであればよく、金属材料、合金、導電性高分子、導電性複合体などが挙げられる。金属材料、合金としてアルミニウムやステンレス鋼などが好ましい。
マグネットチャック治具の材質は、電気抵抗が小さくマグネットで固定できるものであればよく、金属材料、合金、導電性複合体などが挙げられる。金属材料、合金として機械構造用炭素鋼やステンレス鋼SUS430などが好ましい。
【実施例1】
【0023】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置の保持シャフト204に軸状被加工物を固定し、被加工物の半径に相当する干渉防止スペーサーを接地面にボルト締めし、保持シャフト204の回転軸とワイヤ電極の一移動軸が平行になるよう調整して、筐体100をボルト押さえで固定することで加工を実施できた。
【実施例2】
【0024】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置により、直径3mmの軸状の銅製被加工物を1200rpmで回転し、回転軸中心からワイヤ電極を任意量移動させ、軸状被加工物の端面よりワイヤ電極を回転軸に沿って加工送りすることにより1パスで直径100μmの微細軸を加工できた。直径100μm部の長さ1mmを約4分で加工できた。同時に、細部100μm、太部3mmの直径比の大きな段付き軸製品を作製できた。
【実施例3】
【0025】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置により、直径5mmの軸状の銅製被加工物から直径0.5mmの軸への加工を被加工物回転速度1000rpm、加工送り速度0.23mm/min、浸漬法、1パス加工という条件において平均加工電圧に対し−3Vから+3V内の変動で実施できた。加工電圧の変動が小さな安定した加工を実施できた。
【実施例4】
【0026】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置により、直径5mmのタフピッチ銅製軸状被加工物を直径0.5mmの軸に加工する場合において、断面積1.25mmの電線212の長さを3cmから100cmの範囲で変化させた場合および筐体100に突起を設け、回転接続部品210と筐体100とを直接接続した場合のいずれにおいても加工を実施できた。図4に電線212の長さと平均加工電圧の関係を示す。加工条件は、被加工物回転速度1200rpm、加工送り速度0.13mm/min、浸漬法とし、同一の加工電気条件で加工した。三菱電機株式会社製ワイヤ放電加工機SX−20Pを使用した。
【実施例5】
【0027】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置において、機械構造用炭素鋼S45C、タフピッチ銅C1100、合金工具鋼SKD61(JIS G 4404)、ステンレス鋼SUS304、インコネル718、チタンTB340、アルミニウムA5052の加工を実施した。これらの材料を直径10mmの軸から直径5mmの軸に加工した場合の平均加工電圧を図5に示す。加工条件は、被加工物回転速度1200rpm、加工送り速度0.1mm/min、浸漬法とし、同一の加工電気条件で加工した。三菱電機株式会社製ワイヤ放電加工機SX−20Pを使用した。
【実施例6】
【0028】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置の保持シャフト回転速度を2000rpmに設定し、加工液中で1日8時間の連続運転を10日間実施した。異常は認められなかった。
【実施例7】
【0029】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置において、保持シャフト204を90°ピッチで角度割出しを実施し、静止した保持シャフト204に対しワイヤ電極を使って位置決めを行うことで、保持シャフト204の正確な回転中心位置決めができた。
【実施例8】
【0030】
本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置により、直径5mmの軸状の合金工具鋼SKD61(JIS G 4404)製被加工物を1100rpmで回転し、ワイヤ電極を6m/minで転送し、加工送り速度0.4mm/minとし、1パスで直径1mmの軸の加工を実施した。加工面粗さ2〜3μmRa、寸法公差0.5mmで加工できた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置の本体の概観図である。
【図2】本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置の保持機構200部分の概観図である。
【図3】本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置のコントローラー600の概観図である。
【図4】電線212の長さと平均加工電圧の関係を示す。
【図5】本発明のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置において、各種材質を直径10mmの軸から直径5mmの軸に加工した場合の平均加工電圧を示す。
【符号の説明】
【0032】
100 筐体
102 パッキン
104 カバー
106 筐体前面
108 接地面
110 完全防水コネクタ
200 保持機構
202 固定部
204 保持シャフト
206 ベアリングホルダーセット
208 カップリング
210 回転接続部品
212 電線
214 絶縁板
216 絶縁ボルト
218 オイルシール
300 制御機能付き駆動機構
302 制御モーター
304 ドライバ
306 電線
308 取付け部品
400 伝達機構
500 回転検出機構
600 コントローラー
602 回転速度や位置決め角度の設定キー
604 回転速度や位置決め角度の表示パネル





























【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細に、高精度に回転体形状を高速度で加工するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置であって、被加工物の回転検出機構を一つの筐体内に具備したワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置。
【請求項2】
微細に、高精度に回転体形状を高速度で加工するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置であって、被加工物を固定する保持機構と、回転運動する制御機能付き駆動機構と、伝達機構と、被加工物の回転検出機構とを一つの筐体内に具備するワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の放電軸加工装置において、被加工物を固定する保持機構と、回転運動する制御機能付き駆動機構と、伝達機構と、被加工物の回転検出機構とそれぞれが絶縁状態にあるワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置。
【請求項4】
被加工物を固定する保持機構と筐体とを電気的に接続することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置。
【請求項5】
ワイヤ放電加工機の加工液に浸漬して回転体形状を加工する請求項1から請求項4のいずれかに記載のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置。
【請求項6】
ワイヤ放電加工機の加工テーブルへの着脱および調整を容易にする干渉防止スペーサーおよびマグネットチャック治具を具備する請求項1から請求項5のいずれかに記載のワイヤ放電加工機用の放電軸加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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