説明

ワイヤ補強ホースの解体方法及びその装置

【課題】マリンホースなどの解体作業時における作業環境を適正化して迅速な操作性や安全性、環境保護性、メンテナンス性、コスト性に優れたワイヤ補強ホースの解体方法、解体装置を提供する。
【解決手段】ワイヤ補強された使用済みのホース10表面の軸線方向に沿って高圧水流を直線状に噴射してゴム部分を除去してホース表面にワイヤ部分14が露出した切欠部17を形成させるホース表面切欠工程と、切欠部の形成された基端側のホース部分を固定して他端側のホース切断面から露出するワイヤ部分を引き抜いてゴム部分から分離するワイヤ引抜工程と、とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マリンホース等に代表される大口径耐圧ホースの解体方法及びその装置に関し、詳しくは、タンカーと原油タンクなどを連結するためのマリンホースやフローティングホースなどに用いられるコイル状の金属ワイヤにより補強されたゴム複合体において、使用後の廃ホースをワイヤ部分とゴム部分とに分離して、金属材やゴム材の再利用を図りうるワイヤ補強ホースの解体方法及びその解体方法に用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原油などの液体や、粉体などを移送するホース(ゴム、樹脂製のものなど)には、耐圧性や対候性、耐摩耗性等が要求され、内部に鋼線や心材を入れて補強したものがある。これらのホースは、使用後廃棄したりする際に産業廃棄物となっており、環境対策や分別処理などが必要とされている。
特に海底などに付設されるマリンホースなどの耐圧ホースは、厳しい使用環境に耐えるための鋼製ワイヤを芯材とした多層構造になっており、陸上で使用する同種のホースに比べ強固に作られている。
定期的に交換されその度に大量に発生する廃マリンホースは、金属製構造物とゴム製構造物とに分別した上で処理しなければならないが、補強心材の部分が太く強固になるに伴って、一般的な破砕機では対応が難しい場合が多い。また、マリンホースの特性上、廃ホースの破砕・分別が困難なため、引取りを拒否されたり処理費用が異常に掛かったりすることがあった。
【0003】
例えば、従来、このようなマリンホースなどの金属ゴム複合体を廃棄処分する場合には、廃ホースを破砕機にかけて小部分に切断した後に、ゴム部分と金属部分とに分離する方法や、ゴム部分の焼却処理後に金属芯金部分を回収する方法、ゴム複合体の金属部分を高周波加熱して金属部分を取出すようにした方法(特許文献1参照)、トリエチレングリコールなどの溶剤により金属とゴムの結合部分を剥離して分離する方法(特許文献2参照)などが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−308923号公報
【特許文献2】特開2002−52533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の破砕機にかけて分別する方法では、弾力性のあるゴム表層を回転刃で切り込みを入れる事は危険であるし、発熱により有害な臭気が発生する。また、作業時の粉塵発生や騒音発生などに対する環境対策を要することに加えて、ホースが巨大で芯材も太くなるのに伴って、破砕機のメンテナンスや分断作業などの余分な作業が発生して処理費用が高くなるという課題があった。
また、特許文献1のような焼却処理や高周波加熱による方法では、処理のために熱エネルギーや電気エネルギーを必要とし、また、多大の時間を要する。しかも、ゴムの焼却による有害ガスの多量発生などの問題があった。
さらに、特許文献2の溶剤処理による方法では、大量の処理液を必要とするために排水処理などの問題を生じるうえに、ゴム部分を固形状態で取り出して燃料などの熱エネルギーとして再利用することが困難であるという課題もあった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するためになされたもので、マリンホースなどの解体作業時における作業環境を適正化して、迅速な操作性や安全性、環境保護性、メンテナンス性、コスト性に優れたワイヤ補強ホースの解体方法を提供するとともに、一般的な破砕機では特に対応が難しいマリンホースに代表される大口径耐圧ホースの解体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記従来の課題を解決するため、本発明のワイヤ補強ホースの解体方法は、ワイヤ補強された使用済みのホースをそのワイヤ部分とゴム部分とに分離解体するワイヤ補強ホースの解体方法であって、前記ホース表面の軸線方向に沿って高圧水流を直線状に噴射して前記ゴム部分を除去して前記ホース表面にワイヤ部分が露出した切欠部を形成させるホース表面切欠工程と、前記切欠部の形成された基端側のホース部分を固定して他端側のホース切断面から露出するワイヤ部分を引き抜いて前記本体ゴム部分から分離するワイヤ引抜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
(2)本発明は前記(1)のワイヤ補強ホースの解体方法において、前記ホース表面切欠工程による切欠部が、ホース表面に軸線方向に帯状に形成されたゴム除去部分であるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
(3)本発明は前記(1)又は(2)のワイヤ補強ホースの解体方法において、前記ホースが原油タンカーと地上の原油タンク基地とを連結して海底や海上に配備されるマリンホースであって、鋼製ワイヤをゴム層にコイル状芯材として配置した多層構造を有していることを特徴とする。
【0010】
(4)本発明のワイヤ補強ホースの解体装置は、前記(1)〜(3)のワイヤ補強ホースの解体方法に適用されるワイヤ補強ホースの解体装置であって、前記ホースに高圧水流を噴射してホース軸線方向に沿って所定深さの切欠部を形成させるホース切欠処理部と、前記ホースの基端側を把持して固定するホース固定部と、前記固定部により固定された前記ホースの他端側のホース切断面から露出するワイヤを把持して引き抜くワイヤ引抜部と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホース表面の軸線方向に沿って高圧水流を直線状に掃引噴射して本体ゴム部分を除去して、ホース表面にワイヤ部分が露出した切欠部を形成させ、切欠部の形成された基端側のホース部分を固定して他端側のホース切断面から露出するワイヤ部分を引き抜いて本体ゴム部分から分離するので、ホースの構造特性に適合させたウォータージェットによってゴム部分の除去を効果的に実施でき、ゴムと鋼材を効率的に分別が可能となる。
また、マリンホースの解体作業時における作業環境を適正化して、操作性や環境保護性、メンテナンス性、コスト性に優れたワイヤ補強ホースの解体方法及びその解体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係るワイヤ補強ホースの解体方法の説明図である。
【図2】ワイヤ補強ホースの使用形態を示す説明図である。
【図3】ワイヤ補強ホースの側断面図である。
【図4】実施例2に係るワイヤ補強ホースの解体装置の説明図である。
【図5】噴射ノズルの一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係るワイヤ補強ホースの解体方法は、ワイヤ補強された使用済みのホースを、ワイヤ部分と本体ゴム部分とに分離解体するワイヤ補強ホースの解体方法であって、ホース表面の軸線方向に沿って高圧水流を直線状に掃引噴射して本体ゴム部分を除去してホース表面にワイヤ部分が露出した切欠部を形成させるホース表面切欠工程と、
切欠部の形成された基端側のホース部分を固定して他端側のホース切断面から露出するワイヤ部分を引き抜いて本体ゴム部分から分離するワイヤ引抜工程と、
とを備えている。
これによって、鋼製ワイヤなどでその円周部分をコイル状に補強されたマリンホースなどのワイヤ補強ホースを、ゴム部分と金属部分とに分離解体するに際して、高圧水流を用いてゴム部分を除去するので、粉塵や有害ガスなどを発生させることなく、迅速かつ容易に事前処理を行なうことができる。
そして、基端側のホース部分を固定して他端側のホース切断面から露出するワイヤ部分を引き抜いてワイヤ部分だけを機械的に除去するので、ゴム部分が細かく分断されることがなく後工程での処理を容易にすることができる。
【0014】
ワイヤ補強ホースは、例えば、マリンホースなどの重油輸送用ホースなどであって、その内周側から内面ゴム層、補強部材としての螺旋状ワイヤを含む中間ゴム層、繊維コードなどを含む副補強層、優れた耐候性を有する外面ゴム層などを順次積層した多層構造を備えている。
ゴム層は、例えば、繊維コードとしてのポリエステル繊維が含まれたゴム材などの積層体からなり、通常の設計基準である使用圧力の5倍の圧力に耐え得る破壊強度を持つように積層枚数などを選定することができる。
螺旋状ワイヤは、例えば、直径0.3〜1mmの硬鋼線などからなり、ピッチ35mmにてコイル状に巻かれたものなどを用いることができる。
本実施形態におけるゴム材料としては、加硫剤により架橋してゴム成形体を形成する各種の有機ゴムが適用できる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、イソプレンゴム、天然ゴムなどからなる群より選択される少なくとも1種の有機ゴムを使用することができる。
【0015】
ホース表面切欠工程は、高圧水流を噴射する噴射ノズルの先端から水流を噴射させながらホース表面の軸線方向に直線状に掃引して、表層の本体ゴム部分を除去してワイヤ部分が露出した切欠部を形成させる工程である。
この場合、例えば、水流噴射口の直径が0.1〜5mmである高圧水流発生装置のノズル部からホース表面に対して約10〜1000mmの距離をおいて、30〜500MPa、好ましくは約200MPaの高圧水を噴射することによって、表層部分の本体ゴム部分を高圧水流により除去して、有毒ガスなどを発生させることもなく、ワイヤ部分が露出した切欠部を形成することができる。
なお、本体ゴム部分とワイヤとはサンドイッチ構造であるので、ホース円周に対して必要な切欠部は1ヶ所(1条)でも良いが、効率性を図る場合には2条以上となる切欠部をホースの軸線方向に沿って複数設けるようにしてもよい。
【0016】
ワイヤ引抜工程は、切欠部の形成された基端側のホース部分を固定して、他端側のホース切断面から露出するワイヤ部分を把持した後、ワイヤ巻き取り装置やバックホーなどの重機を用いて、このワイヤ部を本体ゴム部分から機械的に引き抜いて分離する工程であり、本体ゴム部分を不必要に細かい小片に分散切断させることなく効率的に分離処理を行なうことができる。
【0017】
本実施形態に係るワイヤ補強ホースの解体方法は、ホース表面切欠工程による切欠部が、ホース表面に軸線方向に帯状に形成されたゴム除去部分であるように構成することができる。これによって、ワイヤ引抜工程において、バックホーやニプラーなどの牽引装置などを用いてワイヤ部分を引き抜きして、ゴム部分とワイヤ部分との分離処理を容易かつ効率的に行なうことができる。
【0018】
ホース表面から除去される切欠部の深さは、ホースに埋め込まれているワイヤが露出すればよく、ゴム層を完全に除去してもよい。
【0019】
本実施形態に係るワイヤ補強ホースの解体方法におけるワイヤ補強ホースとは、
原油タンカーと地上の原油タンク基地とを連結して海底や海上に配備されるマリンホースやフローティングホースであって、
鋼製ワイヤを本体ゴム部分間にコイル状芯材として配置した多層構造を有しているものをいう。
【0020】
次に、本実施形態に係るワイヤ補強ホースの解体装置は、ホースに高圧水流を噴射してホース軸線方向に沿って所定深さの切欠部を形成させるホース切欠処理部と、切断されたホースの基端側を把持して固定するホース固定部と、固定部により固定されたホースの他端側のホース切断面から露出するワイヤを把持して引き抜くワイヤ引抜部と、を備えて構成される。
【0021】
これによって、ワイヤ補強ホースに付属する被覆材料(ゴムやポリエチレン、ビニールなどの石油化学物質や不織布など)を容易に高圧水流によって破砕・剥離して除去することができる。
高圧水流を噴射することによって、通常の機械的なカッティングや剥離処理において発生する臭気、発熱、着火、粉塵、過負荷などの問題を無くすことができる。
なお、上記噴射する高圧水に、硅砂などの鉱石、シリカ、アルミナなどの所定粒径のセラミック粒子からなる研磨剤を所定量混入しておくことによって、高圧水流による被覆材料の除去効率を高めて、ホースとケーブルの材料(例えばゴムとワイヤやゴムと鋼線など)を容易に分別してリサイクルさせることができる。
【0022】
さらに、前記構成のワイヤ補強ホースの解体装置に、例えば高圧水流を噴射する噴射ノズルと、その噴射ノズルの移動冶具、各種センサー、これらの動作を制御するプログラムを備えた制御装置などとすることもでき、これらの制御技術の全部又は一部を使用して、ワイヤ補強ホースをより効率的に解体することも可能である。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例1のワイヤ補強ホースの解体方法について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施例に係るワイヤ補強ホースの解体方法の一部を示す説明図であり、図2はワイヤ補強ホースの使用形態を示す説明図である。
【0024】
実施例1に係るワイヤ補強ホースの一例であるマリンホース10は、図2に示されるように原油タンカー11と海底に設けられた係留ベース12との間に配置される。このようなマリンホース10は定期的に交換され、その度に大量の廃ホースが発生する。なお、マリンホース10を介して原油タンカー11から取り出された原油は、係留ベース12を経由して地上の原油タンク13に送られるようになっている。
図3はマリンホース10の側断面図であり、多層構造からなるゴム層9に補強用となるコイル状のワイヤ部分14が埋め込まれている。なお、マリンホース10の基端側には係留ベース12や原油タンカー11の給油口や排出口に連結されるフランジ部15が装着されている。
【0025】
ワイヤ補強ホースの解体方法においては、まず、図1(a)に示すように原油タンカー11などから廃ホースとなるマリンホース10を取り外して、必要に応じて洗浄処理などを行なう。
次に、後工程でワイヤの引き抜きを容易にするために、マリンホース10の中央部などを切断して所定長さに分割する(図1(b)参照)。これによって、ワイヤ引き抜き時にホース切断部に露出したワイヤ部分14を容易に把持できるようになる。
このようなマリンホース10の分割処理は、後述するホース表面切欠工程の後に行なうこともできる。
なお、フローティングタイプのホースの場合には、予め外皮部分を剥ぎ取る作業を行なっておくとよい。
【0026】
次に、ホース表面にワイヤ部分が露出した切欠部を形成させるホース表面切欠工程においては、噴射圧力約200MPaの高圧水流を噴出するウォータージェット装置16の噴射ノズル16aを操作して、ホース表面に高圧水流に噴出させ、ゴム層9を除去する。
これによって、マリンホース10のワイヤ部分14を露出させて表層に約1〜3mm深さのゴム層9が除去された切欠部17を、ホース軸線方向に形成する(図1(c))。
なお、ホース構造材とワイヤ部分は、図3に示すようなサンドイッチ状の多層構造であるから、切欠部17はホース断面の円周に対して1ヶ所のみでも足りる。
【0027】
ウォータージェット装置16は、高圧ポンプで加圧された高圧水流を噴射ノズル16aから噴射し、高圧高速水流の運動エネルギーを利用して、ゴム層9の除去を行う装置である。高圧水の噴射スピードは、音速の3倍にも達し、破壊力のある水流が得られるようになっている。
なお、ウォータージェットを利用したゴム層9の除去には、超高圧水のみを噴射ノズル16aから噴射して除去加工を行う方法の他に、高圧水に研磨材を混入させて除去加工を行うアブレシブ除去方法があり、研磨材を混入させることで除去能力をアップさせることができる。
【0028】
前述したホース表面切欠工程によりワイヤ部分14の露出した切欠部17が形成されたマリーンホース10は、そのマリンホースのフランジ部15などをバックホーやクランプ機能を有するホース固定部19などで押さえて固定した上で、ニブラーなどのツールによりワイヤを引き抜く処理が行われる。
なお、この場合、マリンホース10の固定はバックホーで無くても良いし、ワイヤ引き抜きもニブラーである必要はない。
図1(d)では、回転駆動されるドラム状に形成したワイヤ牽引装置18などを用いて、マリンホース10から引き出されたワイヤ部分14を回転ドラム上に巻き取るようにしている。このとき、ウォータージェットにより予めホース表層部に切欠部17を形成しておくことが重要であり、ホース表層部の除去無しにワイヤ部分14を引き抜くことは困難であることが事前テストの結果などから分かっている。
【0029】
従来のように弾力性のあるゴム表層に回転刃で切り込みを入れることは危険であり、発熱により有害な臭気が発生し環境上の観点から問題があり、本実施形態のウォータージェットによる切欠部形成処理では、これらの弊害を回避することできる。
こうして、マリンホース10からワイヤ部分14を抜いて、その後のゴム部分を破砕機や切断機に掛けて、リサイクル処理・廃棄物処理に支障が無いサイズに解体・分別することができる。
【実施例2】
【0030】
実施例2のワイヤ補強ホースの解体装置20は図4に示すように、マリンホース10に高圧水流を噴射してホース軸線方向に沿って所定深さの切欠部を形成させるためのホース切欠処理部21と、切断されたホースの基端側を把持して固定するためのホース固定部22と、ホース固定部22により固定されたホースの他端側のホース切断面から露出したワイヤを把持して引き抜くためのワイヤ引抜部23と、を備えて構成されている。
【0031】
切欠処理部21として、機台24の両端に、門型枠体21aが機台24を跨ぐように立設されており、この門型枠体21aの水平部の上面には前後(ホース軸線)方向に延びるガイドレール21bが設けられ、このガイドレール21b上の移動台にウォータージェット装置25がホース軸線方向に移動可能に装着されている。移動台の移動手段は公知のスクリューネジ等を用いることができる。
ウォータージェット装置25には噴射ノズル25aが下向き(ワイヤ補強ホースに向けて)に取り付けられており、噴射ノズル25aに接続されている高圧流体管を経て供給された高圧流体を噴射することによって、機台24上に配置されたワイヤ補強ホースの表面を除去して切欠部17を形成するようにしてある。
【0032】
ワイヤ引抜部23は、図4に示すように、マリンホース10の片端をクランプするように機台24上に設けられたホース固定部22と、このホース固定部22に対向する機台24上に設けられマリンホース10の切断面から露出したワイヤ部分14を把持して牽引するためのドラム回転駆動部23aとを備えるように構成されている。
これによって、ホースが細かく分断されることがなく後工程での処理を容易にして、鋼製ワイヤなどで補強されたマリーンホースをそのゴム部分と金属部分とに確実かつ迅速に分離することができる。
【0033】
図5はマリンホース10に切欠部17を形成する際に使用する噴射ノズルの一例を示す縦断面図であって、内部に噴射ノズル25aが装着されたノズルホルダ31に高圧流体管32の先端部が挿入装着してある。
このノズルホルダ31は外周部に環状フランジ部33が形成された上部胴体34内に装着されており、この上部胴体34の下半部が下端にアブレシブノズル35を装着した下部胴体36に装着されている。上部胴体34の下端部に形成された開口37の下方には研磨剤を高圧流体に混合するミキシングチャンバ38が形成されている。そのミキシングチャンバ37で研磨剤が混合された高圧流体がアブレシブノズル35から噴出されるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本実施形態では原油等の液体をタンカーから陸上のタンクに輸送するための液体輸送用のマリンホースに関して述べたが、本発明は同様の構造(ワイヤを内部に含む構造)を持つホースは勿論、ケーブル等にも幅広く応用して、本体をゴム部分とワイヤ部分とに分離してリサイクル処理を効率的に行なうことができ、産業上広く利用できる。
【符号の説明】
【0035】
9 ゴム層
10 マリンホース(ワイヤ補強ホース)
11 原油タンカー
12 係留ベース
13 原油タンク
14 ワイヤ部分
15 フランジ部
16 ウォータージェット装置
16a 噴射ノズル
17 切欠部
18 ワイヤ牽引装置
19 ホース固定部
20 ワイヤ補強ホースの解体装置
21 ホース切欠処理部
21a 門型枠体
21b ガイドレール
22 ホース固定部
23 ワイヤ引抜部
24 機台
25 ウォータージェット装置
25a 噴射ノズル
31 ノズルホルダ
32 高圧流体管
33 環状フランジ部
34 上部胴体
35 アブレシブノズル
37 開口
38 ミキシングチャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ補強された使用済みのホースをそのワイヤ部分とゴム部分とに分離解体するワイヤ補強ホースの解体方法であって、
前記ホース表面の軸線方向に沿って高圧水流を直線状に噴射して前記ゴム部分を除去して前記ホース表面にワイヤ部分が露出した切欠部を形成させるホース表面切欠工程と、
前記切欠部の形成された基端側のホース部分を固定して他端側のホース切断面から露出するワイヤ部分を引き抜いて前記ゴム部分から分離するワイヤ引抜工程と、とを備えたことを特徴とするワイヤ補強ホースの解体方法。
【請求項2】
前記ホース表面切欠工程による切欠部が、ホース表面に軸線方向に帯状に形成されたゴム除去部分であるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のワイヤ補強ホースの解体方法。
【請求項3】
前記ホースが、原油タンカーと地上の原油タンク基地とを連結して海底や海上に配備されるマリンホースであって、鋼製ワイヤをゴム層にコイル状芯材として配置した多層構造を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤ補強ホースの解体方法。
【請求項4】
請求項1〜3の内いずれか1項に記載のワイヤ補強ホースの解体方法に適用されるワイヤ補強ホースの解体装置であって、
前記ホースに高圧水流を噴射してホース軸線方向に沿って所定深さの切欠部を形成させるホース切欠処理部と、
前記ホースの基端側を把持して固定するホース固定部と、
前記固定部により固定された前記ホースの他端側のホース切断面から露出するワイヤを把持して引き抜くワイヤ引抜部と、を備えたことを特徴とするワイヤ補強ホースの解体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−110705(P2011−110705A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265943(P2009−265943)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【特許番号】特許第4632323号(P4632323)
【特許公報発行日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(593036888)日進工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】