説明

ワクチンの有効性増強のためのアジュバント

本発明は、ワクチン製剤において抗原に対する直接的又は続発的な免疫応答を増強する方法、及び抗原に対する増強された免疫応答を提供するワクチン製剤を提供する。上記方法及び製剤では、抗原は、亜酸化窒素ガス用の薬学的に許容されるキャリア溶媒中の亜酸化窒素ガスの溶液を含み、且つオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸[C20:5ω3]、ドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]、リシノール酸並びにそのC1〜C6アルキルエステル、そのグリセロール−ポリエチレングリコールエステル及び主としてリシノール酸ベースの油(例えば、ヒマシ油)から構成される水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物からなる群より選択されるその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの脂肪酸或いはそのエステル又は他の適切な誘導体を包含するアジュバントとともに投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、動物体(この表現は、本明細書中では人体を包含することが意図される)を悩ませる感染性生物に対する接種による疾患の予防において使用するための医薬製剤(この表現は、本明細書中では獣医学的製剤を包含することが意図される)に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
欧州特許第9312877.3号及び米国特許第5,633,284号並びにその等価物では、皮膚科学的に許容されるキャリア媒質中に亜酸化窒素[NO]及び少なくとも1つの脂肪酸又はその低級アルキルエステルの組合せを含む皮膚用或いは局所用組成物は、各種皮膚、筋肉及び関節障害の治療で有用であることが開示されている。さらに、それらの中では、かかる組合せはまた、さらなる活性成分を有益に包含し得ることが開示されている。以下の活性成分がこの件に関して具体的に言及されている:コールタール溶液、コラーゲン、ニコチンアミド、ニコチン酸、ラノリン、ビタミンE、サリチル酸メチル、アルニカ及びH1−アンタゴニスト抗ヒスタミン(このうち、塩化ジフェンヒドラミンのみが具体的に言及される)。国際公開特許第97/17978号及び米国特許第6,221,377号並びにそれらの相当する出願及び特許では、さらに、鎮痛薬、抗炎症薬及び解熱薬の作用は、かかる薬物を、亜酸化窒素、並びにオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸並びにかかる長鎖脂肪酸のC〜Cアルキルエステル、かかる酸の混合物及びかかるエステルの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの長鎖脂肪酸を含む媒質と併せて投与することにより増強され得ることが開示されている。媒質は、ビタミンFエチルエステルとして既知の混合物を含んでもよく、任意選択でエイコサペンタエン酸[C20:5ω3]及びドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]をさらに含んでもよい。
【0003】
国際公開特許第02/05850号では、抗感染薬の効果は、同じキャリア媒質中でのそれらの配合により増強され得ることが開示される。
【0004】
国際公開特許第02/05851号では、中枢神経系及び/又は末梢神経系に影響を及ぼす既知の作用物質の効果は、同様に同じキャリア媒質中でのそれらの配合により増強され得ることが開示される。
【0005】
国際公開特許第02/05849号では、同じキャリア媒質はまた、細胞膜を通る核酸化合物の輸送に有益に使用され得ることが開示される。
【0006】
ワクチンを形成する際に使用するための抗原は、それらの中で開示されるキャリア媒質の助力を受けて有益な効果を伴って配合されることが可能であるような上述の特許及び特許出願で言及される活性成分の中の1つではない。
【0007】
上述の開示は、亜酸化窒素と脂肪酸との組合せが、感染性作用因子により引き起こされる疾患に対する予防効果において任意のアジュバント寄与を有することを示唆するとは理解されていない。上述の特許群における開示の文脈内では、概念的に受取る者は、本発明者と同様に、抗感染剤の役割は感染をすでに患う患者の治療であると理解している可能性が最も高い。
【0008】
ここで驚くべきことに、上述の媒質及びそれらに関連する媒質は、それ自体でアジュバントとして作用することが可能であり、それにより既知のワクチンの免疫原性を増強し得ることが見出された。
【0009】
「ワクチン」という表現は、本明細書中で使用する場合、身体のプライミングの任意の方法又はメカニズムにより感染性疾患の予防において寄与する化合物(複数可)としての広範な意味を有すること、並びにウイルスベース、ペプチドベース、細菌ベース、VLP−ベース及び合成化合物ベースの製剤を包含することが意図されるが、疾患の治療に使用される抗感染剤を排除することが意図される。
【0010】
本発明の範囲からの抗感染剤の排除は、その結果上述の特許及び出願が、かかる排除される化合物の任意の予防的特性の任意の開示を含有すること、或いはかかる特性が、かかる特許又は出願における開示を鑑みて明白であることを認めることなく導入される。かかる推論は具体的に否認される。排除は、潜在的な主題の一部(その一部は本質的に、それが本発明の重要な特徴の実施の遂行を過度に遅らせるため、審査中に係争する価値があるとみなされない)に関して特許の付与に対する潜在的な障害であることが見込まれるものを単に回避するために導入される。本発明の主題の残りの大部分は、B型肝炎のような場合で有意に低減されたコストで、広範囲の感染の予防用のワクチンを手に入れやすくすることに大いに貢献することが期待される。
【0011】
「治療用ワクチン」という表現はさらに、抗微生物剤、抗真菌剤又は抗ウイルス剤を使用せずに、感染性作用因子に対する特異的な免疫応答を誘発及び/又は増強することにより、既存の感染を予防及び/又は治療する働きをするワクチンを網羅することが意図される。したがって、上記表現は、免疫応答のより広い意味合いで理解されることが意図され、即ち特異的な顕微鏡的及び超顕微鏡的生物に対する免疫応答を誘発又は増強するのに寄与する化合物全てであることが意図される。この用語はさらに、全ての抗原、或いはTimes Media In South Africaにより出版されたthe Monthly Index of Medical Specialities(「MIMS」)で用いられる薬理学的分類のクラス26(生物製剤)の範疇にある自然及び合成生物製剤を包含することが具体的に意図される。したがって、この用語は、抗細菌ワクチン、抗真菌ワクチン、抗ウイルスワクチン(抗レトロウイルスワクチンを含む)、抗原生動物剤及び抗スピロヘータワクチンを包含することが意図される。
【0012】
上記で言及される媒質のアジュバント性(adjuvanticity)の見解は、文献中で亜酸化窒素自体、或いは上記で言及される製剤において使用される長鎖脂肪酸への亜酸化窒素の付加のいずれかは、ワクチンの免疫原性に対してさらなる促進効果を有するという効果に対する以前の示唆が見られないようであるという事実の背景に対して成される。
【0013】
近年では、予防目的及び治療目的での新規ワクチン系の開発においてますます関心が高まっている。定量的及び定性的の両方の意味で免疫応答に影響を及ぼすことができるアジュバントの配合戦略並びに使用は、薬物送達の問題に精通する人々から多大な注目を引き付けている。初期の試みは、非経口ワクチン、並びに生分解性ミクロスフェアに重点を置く制御放出技術の役割に集中していた1〜3
【0014】
ワクチンの第一の目的は、疾患を予防することである。歴史的に、ワクチン接種は、過去においてウイルス疾患、即ち天然痘の排除へと導いた唯一の戦略である。ほとんどの病原体の生物学は、ワクチン開発に対して天然痘よりもあまり有利ではないが、幾つかのワクチンは、様々な度合いで関連病原体に対してヒト及び動物を防御する。ワクチン免疫原性と安全性に関して、間接的な関係が観察されている。標準的なアジュバントとともに投与される合成ペプチドワクチン及び組換えペプチドワクチンに対するヒト免疫応答は乏しい傾向にあり、したがってワクチンの免疫原性及び免疫賦活性特性を増強するのに有効なワクチンアジュバントが差し迫って必要とされているが、不完全なワクチンでさえ、公衆衛生及び経済的利益を達成することができ、予防及び治療戦略に関するさらなる洞察を提供することができる。殺菌剤は、予防選択肢を有用に広げることが可能であり、ワクチン開発用の価値あるプロトタイプとして機能を果たし得るが、これらは、危険性のある全ての人に持続的に送達され得るかは明らかでない。
【0015】
B型肝炎のような疾患に対する標的とされるワクチン運動は概して、疾患発生に影響を及ぼすことができていない。公衆衛生及び経済的利益を最大限にするために、子供及び幼若動物の普遍的な免疫化を目標にすることが必要であり得る。これは、世界中で子供へ付与される現在広く使用されるワクチンに匹敵して、極めて高レベルの安全性に対する必要性を含蓄する。これらの考慮は、病原体の比較的小部分に基づくワクチンの使用を支持している。
【0016】
当然のことながら、潜在的に関連性のある免疫応答を誘発することができることが示されているワクチンでは、それが示されていないワクチンよりもはるかに高い潜在性が存在する。動物研究及びヒト免疫応答の研究室測定を使用して、さらなる研究及び開発を加速する「防御の相関物」を提供し得る。
【0017】
ワクチンは主として、無害な形態の病原体又はその幾つかの構成成分を使用して、免疫系:体液性免疫及び/又は細胞媒介性免疫の片側又は両側を含む防御用免疫応答を誘導する。体液性免疫は、抗体及びそれらを生産するB細胞に基づく。抗体は、特異的な標的、通常は感染性生物のタンパク質の副部分を認識する。抗体を「中和すること」は、感染を撃退する際に重要な役割を果たすのに対して、細胞障害性T細胞又はCD8+細胞は、細胞媒介性免疫において主要な役割を果たす。細胞障害性T細胞は、細胞タンパク質へ結合される、細胞表面上に表示される病原体タンパク質の非常に小さな断片の存在により同定されるほとんどの病原体感染細胞を破壊することが可能である。ヘルパーT細胞(CD4細胞)は、特殊「抗原提示細胞(APC)」の表面上に表示される病原体の断片を認識する。これらは、B細胞及び/又は細胞障害性T細胞を活性化するタンパク質を生産する。免疫系がワクチン接種により活性されると、メモリーT細胞及び時にはメモリーB細胞が生産される。これらの細胞は、病原体自体が遭遇されると、迅速且つ有効な免疫応答を可能とし、感染及び/又は疾患を予防する。
【0018】
有効な集団ワクチン接種プログラムの開発を妨げている主な障害は、適切な防御用免疫応答を誘導することができないことである。例えば、細胞内病原体に対するワクチンに関して、細胞障害性Tリンパ球活性を特徴とするような細胞媒介性免疫が必要とされる。かかる応答は、特に組換え可溶性タンパク質サブユニットにより、誘発するのが極めて困難であり得る。この欠陥は、これらの抗原が適切な抗原プロセシング経路の機構に接近することができないことに起因する。かかるプロセシングの基礎を成すメカニズムの改善された理解、並びに、送達系は、生じる免疫応答に定量的及び定性的に影響を及ぼすことが出来るという認識に続いて、ここ数十年は、この分野での真剣な研究を目の当たりにしてきた4〜8。新たなアジュバント製剤は今や主として、抗原提示細胞へ抗原を運搬する媒体を含有する。
【0019】
媒体の例は概して、粒子状物質、例えばエマルジョン、微粒子、イスコム(iscom)及びリポソーム、並びに顕微溶液化した水中スクアレン型エマルジョンである4〜8。かかる送達系の主な機能は、関連抗原を、マクロファージ及び樹状細胞を含む抗原提示細胞(APC)へと標的とさせることである。規定寸法(5ミクロン未満)の粒子状物質である複数のアジュバントが、動物モデルにおいて弱い抗原の免疫原性を増強するのに有効であることが示されている。新たなワクチンの開発に対して有意な潜在性を保有する2つの新規アジュバントとして、水中油型マイクロエマルジョン及び高分子微粒子が挙げられる。
【0020】
非経口経路は依然として、抗原の投与に使用される最も一般的な経路である。しかしながら、効率的な局所免疫応答の誘導は、粘膜表面での空気又は食物媒介性病原体の存在に依存し、この存在は、中和抗体の生産をもたらし得る。さらに、シリンジにより付与される製品は、口により、或いは例えば鼻スプレーとして摂取され得るものよりも本質的に高価である。発展途上国における針の再使用の危険性は、悪化要因である。
【0021】
粘膜の組織は、宿主に進入する抗原の大部分に遭遇し、腸、気道及び尿生殖路の感染は、ヒトにおいて死亡率及び罹患率の最も一般的な原因である。粘膜ワクチン接種を用いると、免疫系の両側を刺激すること、並びに体液性(抗体)及び細胞媒介性応答(細胞障害性リンパ球)の両方を提供することが可能である。効率的な粘膜ワクチンに対する熱望にもかかわらず、その導入は、粘膜関連リンパ系組織(MALT)への輸送中の抗原の分解、及びMALTによる低い取り込みにより依然として妨げられている。これらの問題を回避するために、粘膜ワクチン送達用の抗原は、同時に効率的な送達系として作用するアジュバントに結合され得るか、或いは同時に効率的な送達系として作用するアジュバントと同時投与され得る3。9
【0022】
MALTの各部分は、それぞれの特異的なバリアを有するため、各投与経路は、それぞれのワクチン送達系を必要とする。経口ワクチン接種はまず、胃の中での酸性環境及び腸の中の酵素の両方による抗原の分解に起因して複雑である。さらに、可溶性抗原は、胃関連リンパ系組織(GALT)のM細胞により効率的に取り込まれるとは限らない。微粒子アジュバント中に抗原を封入することにより、抗原は、粘膜組織へのその途中での分解に対して防御され得て、M細胞へ効率的に標的化され得て、M細胞により取り込まれ得る10〜13
【0023】
鼻ワクチン接種は主に、抗原の速いクリアランス及び鼻関連リンパ系組織(NALT)による低い取り込みにより複雑である。鼻上皮バリアを超える抗原輸送に関して、3つの異なるアプローチが実践され得る:免疫応答に寄与するが、同時に鼻粘膜により吸収可能であるアジュバントと抗原の同時投与、吸収エンハンサーと抗原の同時投与、或いは抗原を内部移行するようにNALT中にも存在するM細胞を刺激するための微粒子系への封入14、15
【0024】
防御用免疫応答を生産するための複数の戦略がこれまでに探究されている。これらとしては、以下のものが挙げられる:
【0025】
a)生弱毒ワクチン−被験体にとって無害である欠陥病原体、例えばnef欠失ウイルス。これらのタイプのウイルスは、場合によっては使用するのに安全ではない。
b)不活性化ワクチン、即ち「死菌ワクチン」。これらは依然として、病原体に対して防御するそれらの能力に関して完全には評価されていない。例えば、宿主及びワクチン株に適合される細胞で成長する攻撃ウイルスは、不活性化中にそれらのエンベロープタンパク質を取り除いてもよく、或いは取り除かなくてもよい。このタイプのワクチンは、より有効な狂犬病ウイルスの開発で説明される。
c)組換えサブユニットワクチン又はペプチドワクチン−これらは、その表面上にタンパク質を模倣することにより病原体に対する抗体を刺激しようとするものである(例えば、提唱されているB型肝炎ワクチン)。現在までに研究されるサブユニットワクチンは、株特異的であり、且つ乏しい抗体応答を生じている。アジュバントの最近の研究は、エンベロープワクチンの新たな領域を切り開いており、ワクチンによっては、或る範囲の病原体株に対して有効な中和抗体を誘導することが可能である。
d)組換えベクターワクチン−これらは、送達系を使用して樹立ワクチンへ病原体の遺伝子又は遺伝子の一部を組み込ませる。送達系としては、生であるが無害のウイルス(例えば、カナリア痘ウイルス)が挙げられ得る。ベクターワクチンは、被験体において病原体特異的細胞障害性T細胞応答を生じることが示されている。これらは、DNAワクチンプライミングにより増強され得る。
e)DNAワクチン及びレプリコン−これらは、細胞による抗原の発現を誘導するように被験体へ注入される遺伝子配列を包含する。レプリコンの場合では、これらの配列は、未関連ウイルスの外皮に包まれる。
f)混合ワクチン、即ち「プライムワクチン及びブーストワクチン」。これらは、免疫応答を拡張又は強化するための2つ又はそれ以上の異なるワクチンの組合せに関する戦略を伴う。例えば、抗体を生産するためのサブユニットブースターとともにT細胞応答をプライミングする抗原を有するベクター、或いはDNA、続く同じ遺伝子(複数可)又は遺伝子配列を発現する、遺伝子又は遺伝子配列を有するベクターの送達が挙げられる。2つの異なるワクチンは、同時に付与することができ、ここで一方は他方より迅速に作用することが可能である。これは、単回用量から「プライム−ブースト」効果をもたらす。
g)ワクチン設計における重要な最近の開発は、ヒト細胞において合成遺伝子の発現を最大限にするような合成遺伝子の使用である。この技術は、動物において免疫応答を増強させるHIVワクチンの設計で使用されており、この技術を使用する少なくとも3つのワクチンが現在初期段階の臨床試験に進んでいる。被験体における免疫応答の徴候は、ワクチンが感染を予防することを必ずしも意味しないことを理解することが重要である。感染の予防は、動物及びヒトの治験で確認されなくてはならない。ワクチンに関連した上述の問題が、本発明に関連する研究につながっている。
【0026】
脂肪酸/亜酸化窒素ベースの技術は、特有のサブミクロンエマルジョン型製剤で構成され、その中で安定な小胞構造又は粒子が形成される。特に、上記で言及される国際公開特許第97/17978号では、亜酸化窒素は、合成的にも生産される天然ガスであること、亜酸化窒素ガスはまた、慣用名「笑気」で既知であること、及び亜酸化窒素は、特に歯科学における吸入麻酔薬及び鎮痛薬として長年にわたって使用されていることが指摘された。
【0027】
亜酸化窒素は、水溶性であることが既知であり、亜酸化窒素は、20℃及び2atm気圧で、ガス1リットルが、水1.5リットル中に溶解することが報告されている。The Merck Index 10th Ed. p.6499を参照。
【0028】
上記で言及される特許及び特許出願以外の文献中では、亜酸化窒素の溶液がヒト又は動物に対してなんらかの影響を有するということは示唆されていないようである。また、本出願任が理解する限りでは、亜酸化窒素が、抗原特異的疾患に対して免疫応答を増強するためのアジュバントとして脂肪酸と併せて使用され得ることは示唆されていない。
【0029】
抗原を、いわゆる脂質ベースの製剤中に配合することができることは、薬学分野で既知である。これらの脂質ベースの製剤はいずれも、本発明と異なり、亜酸化窒素と組み合わせて使用されておらず、本発明では、亜酸化窒素並びに脂肪酸及びそのエステルの組合せが、マイクロエマルジョンアジュバント系の基礎を成す。以下で示されるように、研究により、免疫応答の刺激における亜酸化窒素の本質的な役割が確認された。本明細書中に記載されるような本発明によるワクチン用のアジュバントとしての亜酸化窒素と脂肪酸との組合せは、脂肪酸のみに基づくものに対して有意な差を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
[発明の目的]
本発明の目的は、抗原の作用を増強するという特徴を示すアジュバントを提供すること、及び抗原と併せたかかるアジュバントの医薬製剤を提供することであり、当該製剤は、同じ抗原を含有する既知のアジュバント製剤の作用と比較して、特異的な中和抗体の増加といった特異的な増強免疫応答をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0031】
[発明の記述]
本発明によれば、亜酸化窒素ガス用の薬学的に許容されるキャリア溶媒中の亜酸化窒素ガスの溶液を含み、且つオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸[C20:5ω3]、ドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]、リシノール酸並びにそのC〜Cアルキルエステル、そのグリセロール−ポリエチレングリコールエステル及び主としてリシノール酸ベースの油(例えば、ヒマシ油)から構成される水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物からなる群より選択されるその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの脂肪酸或いはそのエステル又は他の適切な誘導体を包含するアジュバントとともに、抗原を投与する工程を含む方法が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、亜酸化窒素ガス用の薬学的に許容されるキャリア溶媒中の亜酸化窒素ガスの溶液を含み、且つオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸[C20:5ω3]、ドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]、リシノール酸並びにそのC1〜C6アルキルエステル、そのグリセロール−ポリエチレングリコールエステル及び主としてリシノール酸ベースの油(例えば、ヒマシ油)から構成される水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物からなる群より選択されるその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの脂肪酸或いはそのエステル又は他の適切な誘導体を包含するアジュバントとともに配合される医薬製剤が提供される。
【0033】
抗原は、全ての考え得る抗原を含む群より選択され得る。
【0034】
本発明の好ましい形態では、上記方法又は製剤で利用される抗原は、本明細書中で定義されるような種々のタイプの抗原、即ちペプチド、不活性化ウイルス、不活性化細菌及びウイルス様粒子(VLP)又はその任意の組合せの1種以上を含み得る。
【0035】
抗原は、カルメット・ゲラン杆菌、コレラ、ヘモフィルス属B型、髄膜炎菌、百日咳、肺炎球菌、破傷風、腸チフス、ジフテリア、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、おたふく風邪、ポリオ、狂犬病、風疹、ダニ媒介脳炎、水痘及び黄熱病からなる群より選択される病気の原因因子、或いは作用因子による感染に対する免疫応答を誘発するのに適している任意の抗原であり得る。
【0036】
したがって、本発明は、以下のタイプのワクチンに関係している。
【0037】
細菌ワクチン
カルメット・ゲラン杆菌ワクチン
経皮カルメット・ゲラン杆菌ワクチン
コレラワクチン
ヘモフィルス属B型複合ワクチン
髄膜炎菌多糖ワクチン
百日咳ワクチン
肺炎球菌多糖ワクチン
破傷風ワクチン
腸チフス(株Ty 21a)ワクチン(生)(経口)
腸チフス多糖ワクチン
腸チフスワクチン
細菌トキソイド
ジフテリアワクチン
破傷風ワクチン
ウイルスワクチン
肝炎ファミリーのワクチン(不活性化、ペプチド、VLP)
ヒト乳頭腫ウイルスワクチン(VLP)
不活性化インフルエンザワクチン(全ビリオン)
不活性化インフルエンザワクチン(分割ビリオン)
不活性化インフルエンザワクチン(表面抗原)
麻疹ワクチン(生)
おたふく風邪ワクチン(生)
不活性化ポリオワクチン
ポリオワクチン(生)(経口)
狂犬病ワクチン
風疹ワクチン(生)
ダニ媒介脳炎ワクチン(不活性化)
水痘ワクチン(生)、
黄熱病ワクチン
混合ワクチン
ジフテリア及び破傷風ワクチン
ジフテリア、破傷風及び百日咳ワクチン
ジフテリア、破傷風及び百日咳(無細胞構成成分)ワクチン
ジフテリア、破傷風及び百日咳(無細胞構成成分)並びにヘモフィルス属B型複合ワクチン
ジフテリア、破傷風及び百日咳(無細胞構成成分)並びに
ジフテリア、破傷風及び百日咳(無細胞構成成分)並びに不活性化ポリオワクチン
A型肝炎(不活性化)及びB型肝炎(ペプチド)ワクチン
麻疹、おたふく風邪及び風疹ワクチン(生)
【0038】
リストは、新たな抗原又は種々の形態の抗原及び新たな組合せが開発されると共に拡大すると想定される。
【0039】
特異的な抗原に応じて、アジュバントは、上記で規定されるキャリア媒質の他の構成成分の少なくとも1つに対するさらなる長鎖脂肪酸としてエイコサペンタエン酸[C20:5ω3]及び/又はドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]又はこれらの修飾を包含し得る。
【0040】
主としてリシノール酸ベースの油から構成される水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物は好ましくは、ヒマシ油から生産され、その脂肪酸含有量は、主にリシノール酸から構成されることが既知である。生成物は、水素化、エチル化及びポリエチレングリコールのような基の付加の程度に応じて修飾され得る。或る範囲のかかる生成物は、Cremophor等級の商品表示の下でBASFにより市販されている。
【0041】
亜酸化窒素ガス用のキャリア溶媒は、水或いは薬学的に許容されるアルコール、エーテル、油又はポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)等であり得る。油は、有機油又は鉱油であり得る。有機油は、脂肪酸中で炭素数14〜22を有する長鎖脂肪酸に基づく精油であり得る。油はまた、天然起源又は合成起源のいずれかであってもよく、天然起源である場合、油は、植物油又は動物油のいずれかであり得る。植物油としては、γリノレン酸[GLA]に富んだものが好ましく、動物油としては、生クリームが使用され得る。
【0042】
本発明の好ましい形態では、溶液は、亜酸化窒素で飽和された水溶液である。油構成成分及び水性構成成分は、個々にパッケージングされてもよく、専ら投与前に直接混合される。好ましくは、水は脱イオン化され、且つ微生物及びエンドトキシンを含まないように精製される。
【0043】
抗原を含有する製剤が、経口投与用の液体(カプセル化液体を含む)提示であるか、或いは鼻又は気管支又は肺スプレー製剤であるか、或いは注射用製剤の形態であり得る場合、かかる製剤は、投与媒質の一部として、水又許容される他の液体を組み込んでもよく、当該水又許容される他の液体へ上記亜酸化窒素は溶解され、また当該水又許容される他の液体中で、脂肪酸(複数可)又はそのエステル(複数可)は、ともに配合されることにより、抗原と一緒に溶解又は懸濁又は乳化される。同様に、抗原が、局所、口腔内又は膣用のクリーム、軟膏、スプレー、ローションとして、或いは坐剤として適用されることにより患者へ投与され得る場合、かかるクリーム、軟膏、スプレー、ローション又は坐剤を構成する際に使用される製剤は、ともに配合される抗原と一緒に、亜酸化窒素を含有する或る量の水又は他の液体、好ましくは亜酸化窒素で飽和された或る量の水又は他の液体、長鎖脂肪酸(複数可)又はそのエステル(複数可)及びともに配合される抗原、並びにさらにかかる薬物形態を構成する際に薬学的に慣用されているさらなる賦形剤及びキャリアを含有していてもよい。
【0044】
亜酸化窒素ガス用のキャリア溶媒は、本発明による代替的な製剤では、実質的に非水性であってもよく、且つオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸[C20:5ω3]、ドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]、リシノール酸並びにそのC1〜C6アルキルエステル、そのグリセロール−ポリエチレングリコールエステル及び主としてリシノール酸ベースの油から構成される水素化天然油又は非水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物からなる群より選択されるその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの脂肪酸或いはそのエステルから構成され得る。
【0045】
注射物質、軟膏、クリーム又はローションとして経皮適用に適するような製剤、或いは製剤用のリザーバを提供する皮膚パッチの形態での製剤もまた、本発明による製剤の好ましい形態である。
【0046】
組成物の本質的な脂肪酸構成成分は好ましくは、上記で列挙される脂肪酸のエステルの混合物を含む。したがって、本発明の最も好ましい形態では、組成物の脂肪酸構成成分は、ビタミンFとして既知の複合体により構成され、これに関しては、ビタミンFエチルエステルとして既知のビタミンFのエステル形態を利用することが好ましい。この生成物は、Vitamin F Ethyl Ester CLR 110 000 Sh.L.U./gの商品表示の下でドイツ ベルリンのCLR Chemicals Laboratorium Dr. Kurt Richter GmbHから市販されている。この生成物の典型的な脂肪酸分布は以下の通りである。
<C16: 0
16.0: 8.3%
18.0: 3.5%
18.1: 21.7%
18.2: 34.8%
18.3: 28.0%
>C18: 1.6%
未知: 2.1%
【0047】
製剤に、エイコサペンタエン酸[C20:5ω3]及びドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]として既知の長鎖脂肪酸を添加することがさらに好ましい。かかる生成物の組合せは、商品名「Incromega」の下でCrodaから入手可能である。
【0048】
顕微分析により、本明細書中に記載されるような抗原とアジュバントとの製剤は、ミクロ構造の形成を引き起こし、ミクロ構造内で、或いはミクロ構造に結合されて、抗原は安定な形態で含有され、抗原は、ミクロ構造から作用部位で送達される。
【0049】
本発明のさらなる態様は、製剤が、粘膜投与、特に鼻投与に適応されるように調製され得ることである。それにより、製剤は、粘膜免疫原性を包含する。
【0050】
本発明は、全ての抗原に適用可能であることがいまだに実験的作業により実証されていない。しかしながら、本発明の上述のアジュバントとともにすでに配合され、且つ免疫原性の予想される増強及び種々の投与経路に関して種々の方法により評価されているかかる抗原に関して、研究されている抗原の生物学的及び化学的多様性にもかかわらず、否定的な結果はいまだに観察されていない。したがって、本出願人は、かかる抗原の或る範囲の種類を表す生成物に関して、これらの予備的な観察に基づいて、本発明は、本明細書中で定義されるようなこれらの用語により包含され、且つそれらのうち、幾つかの例が以下で記載される抗原の領域全体にわたる一般的な適用を見出すことを確信して予想する。
【0051】
本発明の投与媒質は、人体又は動物体を通じて最も効率的に、ともに配合されるアジュバント化(adjuvanted)抗原を輸送する働きをする一方で、当該アジュバントはまた、いまだ解明されていないメカニズムにより、抗原を免疫系の細胞へ移動させて、それにより有効な免疫応答を引き起こす際に重要な役割を果たすことは、本出願人の現在の仮説の一部であり、それにより本出願人が本発明の理解を見出そうとするものであり、本出願人はこの段階でそれによって拘束されることは望まない。これに関して、本出願人は、本発明が、抗原のタイプ、メカニズム及び適用の多様性にもかかわらず、一般的な適用を見出すことを信じている。
【0052】
操作のメカニズムの予備仮説
免疫原性の作用の増強が本発明により達成されるメカニズムは、現在研究中である。これに関する幾つかの観察が上記で記録されている。さらに、予備観察により、幾つかのさらなる考え得る説明を提示されることが記録される。かさねて、本出願人は、現段階で本出願人が提唱し得るいかなる暫定的な説明にも拘束されることを望まない。しかしながら、本発明による製剤の亜酸化窒素と併せて、製剤中で使用される長鎖脂肪酸、或いはこれらの構成成分の少なくとも幾つかは、製剤の製造プロセス中に、これ以降「脂肪酸ベースの粒子」と称される小さな安定な小胞又はミクロスポンジを形成することが明らかであることが記録される。
【0053】
1.製剤の構造特性
投与媒質の一部を成す亜酸化窒素及び不飽和長鎖脂肪酸は、指定抗原と混合されることにより配合されて、抗原を含有する粒子を形成する。粒子は、事実上アジュバントである脂質相、(a)粒子状物質特性である合成ポリマー(複数可)及びこれらの粒子の組合せを活性化又は強化すると思われるガス、即ち亜酸化窒素を含有する。粒子の特性の幾つかは、有効なワクチンアジュバントとしてのその作用に寄与する。
粒子の封入容量及び送達効率、
粒子の多系特性−粒子は、例えば抗原及び免疫賦活分子の封入において、親水性及び疎水性分子の組合せを封入するように十分適している、
粒子の受動的ターゲッティング及び粒子と脂質構造間の親和性(かかる脂質は、細胞膜中でラフトする)及び
粒子は、安全性及び毒性の危険性を保有しないと思われること。
【0054】
これらの特性並びに粒子と併せて使用される幾つかの抗原による得られる結果を以下で論述する。
【0055】
2.粒子の組成、数及びサイズ
本発明による得られる結果、及びこの分野に関連する文献の両方により、異なる投与経路は、有効なワクチンの送達に関して異なったサイズの粒子を要することが示される。さらに、粒子に負荷される抗原のタイプ及び量、並びに粒子の吸収能力は、大体において粒子の組成、数及びサイズにより確定される。各種タイプの抗原のサイズ(例えば、ペプチド及びウイルスを比較する)は劇的に異なり、適応される必要がある。したがって、粒子のサイズ及び数を繰り返して操作する能力は重要である。本発明における粒子のサイズと数との間の関係は、正比例しないと思われるが、以下により操作することができる。
・亜酸化窒素飽和度(これは、形成される粒子のサイズ及び数に対して影響があることが示されている)
・各種ポリ不飽和脂肪酸の添加、
・使用される脂肪酸の比の変更、
・使用される脂肪酸の修飾又は誘導体化の変更
・ペプチドのような生物学的分子の添加、及び
・様々なサイズの合成ポリマーの使用。
【0056】
2つの重要な観察がこれに関して成されている。
【0057】
a)使用される不飽和長鎖脂肪酸が炭素数20以上である場合、形成されるミクロ構造は、スポンジに見られるものと類似したサブコンパートメントを伴う球状であることが見出された。
【0058】
これらの構造は安定であり、抗原(特に、ペプチド)は、これらのサブコンパートメントにおいて理想的に適合し、その結果、抗原は、標的細胞表面で特異的なエピトープ又は受容体へ結合することが可能であるということが、本発明者等の信念及び観察である。炭素数16〜20の不飽和長鎖脂肪酸が使用される場合、ミクロ構造の形態は、小胞を取り囲む自己蛍光粒子を移動させる動的領域を伴う小胞である。
【0059】
3.安定性
粒子は、室温で24時間後、構造的に無傷のままの状態であるようである。任意の負荷化合物は、この間封入されたままの状態である。この安定性の特徴は、ワクチンの使用において実質的に有意であると確信される。
【0060】
4.細胞障害性の不存在
細胞培養、動物及びヒトの研究において示されているように、粒子は、適用可能な濃度で明白な細胞障害性又は毒性を有さない。
【0061】
5.作用メカニズム
5.1 負荷効率
粒子の高い負荷効率は、共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)により説明されたように、本発明による粒子中のジフテリアトキソイド(DT)及び不活性化狂犬病ウイルスの高度の封入により実証することができる。不活性化ウイルスは、the SA State Vaccine Institute、現在のthe BIOVAC Instituteからの好意的な贈与であった。
【0062】
5.2 吸収及び輸送
本発明の粒子は、鼻投与及び経口投与の場合には吸収メカニズムとして、また非経口投与の場合には輸送メカニズムとして、免疫正常細胞へ抗原を送達するように作用すると思われる。送達効率は、組織浸透、細胞吸着、細胞膜の構成成分の構成成分と粒子との間の相互作用、細胞による粒子の内部移行、及び細胞内安定性に関する。
【0063】
5.3 放出
高い送達効率の結果は、膜部位においてだけでなく、細胞内部位における抗原の放出であり、上記ワクチンの増強された有効性をもたらす。粒子は、抗原との相乗作用で作用して、増強された免疫原性を達成する。粒子の放出速度は、それらの組成により影響を受ける。持続及び/又は制御放出粒子は、ワクチン接種のプライム要素及びブースト要素を組み合わせる目的で使用され得る。
【0064】
5.4:可撓性及び弾性
共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)により、粒子のコンホメーションはそれらの環境により変化し得ることが示される。例えば、小胞が、生物学的バリア(例えば、循環毛細管)を通って移動する場合、管外遊出に適応させるためのコンホメーション変化が、顕微鏡法により可視化されている。
【0065】
不飽和長鎖脂肪酸構成成分は、膜維持に対するその寄与により細胞完全性に寄与する。本発明の粒子の亜酸化窒素構成成分は、膜流動性を増強し、これはおそらく、吸着、吸収及び他の膜結合プロセスに対して前向きな効果を有する。本発明の組成物は、抗原の免疫原性に対して有益な効果を有することが見出された。
【0066】
これらの有益な効果は、脂肪酸ベースの粒子の動的特性に起因すると考えられる。
【0067】
5.5動的脂質間小胞関係
粒子脂質間及び粒子/細胞関係が存在することが示されている。粒子は、それらの安定性を損なわずに連続して粒子自体のサイズを変更するように組み合わせることができる。これらの相互作用的な膜特性は、細胞を通る小胞の移動を最適にさせる。粒子の相互関係にもかかわらず、粒子は、血液及び体液中で最大5時間安定であることが示された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
[本発明の実施例]
ここで、それにより本発明の範囲を限定することなく、幾つかの実施例について記載して、本発明を説明する。
【0069】
調製1
非経口狂犬病ワクチン及び鼻ジフテリアトキソイド(DT)ワクチンのためのFAA−1の調製
工程1:特異的な抗原に適用可能な緩衝液溶液を、圧力容器及びスパージャを使用して、外気圧力で亜酸化窒素で飽和させる。狂犬病の場合、使用する緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり、鼻投与に関するDTの場合、蒸留水を使用した。
【0070】
工程2:以下の群の脂肪酸を70℃に加熱した:オレイン酸21%、リノレン酸34%、及びリノール酸28%。これらの脂肪酸は、カルボキシ末端のエチレン基を用いたエステル化により修飾した。ペグ化水素化脂肪酸であるリシノール酸(PEG−n−水素化ヒマシ油としてINCI名でも既知)を80℃まで加熱して、70℃で第1の群の脂肪酸と混合した。第1の群の脂肪酸対後者の脂肪酸の比は、3:1であった。
【0071】
工程3:緩衝液溶液を70℃に加熱して、最終濃度1.85%となるように脂肪酸ミックスと混合した。この脂肪酸混合物は、アジュバントを構成しており、本明細書中ではFAA−1(μ)と称する。μの符号は、粒子のマイクロサイズ範囲を示し、これらは、Malvern寸法測定器における粒子サイズ分析により確定される場合、2〜5μmのサイズであった。FAA−1(n)は、超音波処理(短期間)により、又はリシノール酸構成成分を増大させること(長期間)によりFAA−1(μ)から調製した。
【0072】
工程4:アジュバントにおける抗原の封入:それぞれの抗原は、室温で3時間(狂犬病)又は4時間(DT)、Vibramix中で完全に混合させることにより、種々のアジュバント組成物中に封入した。
【0073】
調製2
非経口B型肝炎ワクチンのためのFAA−2の調製
上記FAA−1中に含有される脂肪酸に、下記を加えた:
1.酸化防止剤としてのdl−a−トコフェロール
2.さらなるエチル化脂肪酸DHA(ドコサヘキサエン酸)及びEPA(エイコサペンタエン酸)。本発明に関する2つの脂肪酸の好適な量は0.2%であった。
3.外気温でVibramix中で30分間混合することにより行われるB型肝炎ペプチドの封入。
【0074】
20nm〜50μmの範囲の極めて一様なサイズの安定な粒子を、大規模で容易に製造することができる。粒子のサイズ及び形状は、再現可能に制御することができる。本発明に関するような動物研究におけるFAA−1及びFAA−2の使用について以下説明する。本発明にかかるワクチンの範囲の代表であり、したがって本発明が関するワクチンの範囲を例証するが、本発明が関するワクチンの範囲を包括しないとみなされる下記抗原を、本発明を確認するための細胞研究及び動物研究において使用した:
抗原としてのトキソイド(ジフテリア)
抗原としての不活性化ウイルス(狂犬病)
抗原としてのタンパク質/ペプチド(B型肝炎)
【0075】
研究及びその結果の幾つかの例を、以下の実施例で記載する。
【実施例1】
【0076】
FAA−1/DTワクチンの、それぞれ経口及び鼻投与後に全身免疫応答を誘導する能力の確定
本実施例は、現在使用される判断基準である水酸化アルミニウム(アラム(alum))ベースの非経口ワクチンと比較した、動物において具体的に鼻及び経口投与されるワクチンにおけるジフテリアトキソイドに対する免疫応答の増強に関する。
【0077】
1.研究の目的
この研究の主な目的は、a)PBS生理食塩水、b)非経口経路によるアラム中で投与される抗原と比較した場合に、モデル抗原DTの経口及び鼻投与後に全身免疫応答を増強する際の本発明のFAA由来製剤の有効性を評価することであった。
【0078】
Desai他16は、M細胞によるキトサン粒子の取り込みが、粒子のサイズ及び粒子の疎水性/親水性に依存することを示した。ナノメートル範囲のサイズを有する粒子は、パイアー斑に位置するM細胞により、より容易に摂取されることが確立されている。第2の目的は、以下の:
a)FAA粒子の大きさは、DTに関する免疫応答の増加に対してなんらかの影響を有するかどうか、及び
b)経口又は鼻免疫応答は、非経口投与経路を使用したアジュバントとしてのアラムの使用で得られる免疫応答に匹敵するかどうか
を確定することであった。
【0079】
2.研究に対する背景
非経口経路は依然として、抗原を投与するための最も一般的な経路である。有効な経口又は鼻ワクチンの導入は、患者のコンプライアンスを改善し、且つコスト及び有資格者が抗原を投与する必要性を減少させるが、ほとんどのワクチンは依然として、経口的に投与されなくてはならない。例えば看護士が集団予防接種中に同じ針で最大170人の学童に注射したという発展途上国からの最近の報告により明らかであるように、AIDSの流行を考慮して、代替的な投与経路は、特にかかる発展途上国において有益である。さらに、粘膜ワクチン接種は、全身免疫応答のみの誘導をもたらす非経口ワクチン接種に対比して、局所免疫応答並びに全身免疫応答の両方を誘導する。効率的な局所免疫応答の誘導後に、空気又は食物媒介性病原体は、到着時に粘膜表面で中和され得る。
【0080】
文献により、種々のアジュバントの設計及び適用に関する様々な研究がマウスモデルで試験されていることが明らかである。したがって、モデルは十分に記載されている。試験されるアジュバントの幾つかが、現在使用される水酸化アルミニウムアジュバント化非経口ワクチンのアジュバントに匹敵することが見出された。例えば、Van der Lubben他17の結果により、鼻によりワクチン接種したマウスの半分だけが免疫応答を示したため、キトサン微粒子は、鼻内投与後に免疫応答を刺激するのにあまり効率的ではないことが示唆された。
【0081】
3.ワクチン接種の一般的な方法論
3.1 マウスにおける鼻ワクチン接種
以下の群のマウスに、製剤の鼻投与を施した。
【0082】
I.陽性対照1:鼻により投与されるPBS中の40 Lf DT
II.陽性対照2:皮下注射により投与されるアラム(水酸化アルミニウム)に吸着された40 Lf DT(登録された投薬形態)
III.40 Lf DTを伴うFAA−1(μ)
IV.40 Lf DTを伴うFAA−1(n)
V.陰性対照1:DTなしのFAA−1(μ)
VI.陰性対照2:DTなしのFAA−1(n)
【0083】
群それぞれにおいて、6週齢の10匹のSPF balb/c雌マウスにワクチン接種した。balb/cマウスは、抗原としてジフテリアトキソイドを用いた経口及び鼻ワクチン接種研究でこれまでに使用されており、結果により、この動物モデルは、これらの研究に適していることが示された。IgG確定用の血液サンプルを得るために、4週でマウスの半分(5匹)を断頭により屠殺した。残りの半分は、同様に6週で処置した。それぞれの場合で、アラムへ吸着されたDTを陽性対照として皮下に注射した。
【0084】
ワクチン投与:鼻製剤は、10μl/日(各鼻孔において5μl)の容量で付与した。DTの総用量は、1週及び3週で連続3日にわたって分配された。
【0085】
サンプル回収:断頭後に、血液及び鼻洗浄液を適用可能な容器中に回収した。抗凝固剤は存在しなかった。血清は、遠心分離により調製された。サンプルは−20℃で保管した。
【0086】
3.1 マウスにおける経口ワクチン接種
以下の群のそれぞれ6匹のマウスに、研究中にワクチン接種した。
【0087】
I.陽性対照1:鼻により投与されるPBS中の40 Lf DT
II.陽性対照2:皮下注射により投与されるアラム(水酸化アルミニウム)に吸着された40 Lf DT(登録された投薬形態)
III.40 Lf DTを伴うFAA−1(μ)
IV.40 Lf DTを伴うFAA−1(n)
V.陰性対照1:DTなしのFAA−1(μ)
VI.陰性対照2:DTなしのFAA−1(n)
【0088】
ワクチン投与:製剤は、鈍針による胃内供給により経口投与した。マウスに、1週及び3週で連続3日でワクチン接種した。用量は分割され、供給された総容量は、300μl未満であった。
【0089】
血液サンプリング:文献によれば、免疫応答は、6週目に依然として観察されるはずである。したがって、血液は、IgG力価の確定用に6週の最後に鼻研究に関するのと同様に回収した。サンプルは、抗原特異的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で分析した。
【0090】
4.設計、算出及び統計学的評価
i)実験設計:鼻研究及び経口研究に関する実験設計は平行設計であり、ここで動物は、処理群に従って準備されており、実験動物1匹当たり1つの処理が施される。
【0091】
ii)実験動物の群の数:動物の数は、これまでに公開された研究に従っており、南アフリカノースウエスト大学の統計学部で論述及び確認された。
【0092】
iii)群中の実験動物の無作為の割り当て:マウスは全て、ほぼ同じ年齢であり、体格は同程度であった。動物は、鼻研究用に10匹、及び経口研究用に6匹の群へ無作為に分けた。マウスを、番号を付与した容器に収納した。処理は、各動物群へ無作為に割り当てた。研究は、同じ研究者がトキソイドを調製及び投与して、サンプルを回収して、分析を実施したため、研究は盲検ではなかった。投与及び収集は全て、正規の研究者により監督及び確認された。任意の考え得る偏りの可能性を低減させるために、分析を含む経口及び鼻研究が、2人の異なる研究者により実施された。バックグラウンド変数は、供給者からの単一バッチのマウスを使用すること、全ての分析に関して同じ研究室装置を使用すること、及び全てのマウスに関して同じ日に血液サンプル及び鼻洗浄液を得ることのような手段によりできる限り最低限に抑えられた。経口研究及び鼻研究はそれぞれ、各々の対照を包含した(陰性対照群を参照されたい)。繁殖用施設の動物はモニタリングされ、動物が病原体を含まない状態のままであるように世話をする。
【0093】
iv)統計学的方法:採取したサンプルの分析は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により実施され、ELISAは、生物学的サンプルの分析で広く使用される高感度で且つ特異的なアッセイである。経口研究及び鼻研究の両方において、ELISAアッセイで得られるIgG力価(全身免疫応答)は、p<0.05で対照と統計学的に比較した。2つの処理は、ピアソン法により互いに比較した。
【0094】
5.結果:
5.1 鼻ワクチン接種
本発明の調製1で記述されるように調製するDT抗原の結合を包含するアジュバント製剤FAA−1で実施された研究は、陽性PBS−DT対照製剤と比較して、ワクチン有効性の劇的な増強を示した。得られた免疫応答は、アラムアジュバント化非経口投与に関して見出される免疫応答に匹敵していた。
【0095】
表1は、ELISAアッセイの段階希釈の1つに関して得られる結果を反映する。
【0096】
【表1】

【0097】
予想通り、陰性対照は、局所的又は全身的に、いかなる時点でも抗体応答を示さなかった。陽性対照(抗原を伴うPBS生理食塩水)は、確定したIgG力価により反映されるように、小さいが、観察可能な全身免疫応答を示した。不運にも、4週のFAA−1(n)群のマウスのうち2匹が、接種手順に起因して死亡した。死は、使用した特定のアジュバントに関連しなかった。
【0098】
図1は、4週及び6週後の血中に見出されるDTに対する中和抗体の力価により反映されるように、DTに対する全身免疫応答を示す。力価は、対数目盛上のY軸上に記述される。
【0099】
図2は、アジュバントを伴うDT抗原の製剤に起因した特異的な抗体産生の増強を示す。陽性対照PBS−DTは、参照及びディバイダーとして使用された。この陽性対照に対する増強は、初期接種の4週後に、アラム及びFAA−1(μ)に関しては2000倍を超え、またFAA−1(n)に関しては1000倍を超えた。6週までには、応答の増強は、アラム及びFAA−1(μ)の場合ではほんの500倍超まで、またFAA−1(n)の場合では200倍超まで減少している。これらの結果により、粒子の大きさが、鼻投与後に誘発される全身免疫応答の度合いにおける役割を果たすことが確認される。アラムベースの免疫応答とFAA−1(μ)ベースの免疫応答との間の共分散は、676800.7901であったのに対して、アラムベースとFAA−1(n)との間の共分散は、377679であった。PBS−DT対照と3つのアジュバント化群との間の統計学的な差は、各場合で0.05未満であった。
【0100】
5.2 経口ワクチン接種
経口ワクチン接種の結果により、観察される免疫応答は、鼻ワクチン接種の場合においてよりもはるかに低いが、それにもかかわらず、以下で図3に示されるように、アラム及びFaa−1(n)の場合に、この増強が統計学的に有意であることが示される。
【0101】
結果により、アジュバント粒子のサイズの重要性が確認され、鼻投与に対比して、全身免疫応答は、本発明のナノサイズの粒子により40倍増強されたが、マイクロサイズの粒子によりほんの2倍増強された。特異的な抗体の増強は、おそらく以下の理由の幾つかにより、鼻ワクチン接種後よりも経口投与後で低かった:増強は、陽性PBS−DT対照に対して確定され、これが、経口研究では2.9倍高かったこと、及びジフテリアトキソイドは、低pHに対して感受性が高く、ジフテリアトキソイドが胃の中で低pHに暴露されたこと。しかしながら、アラムベースのワクチンの応答はまた、鼻投与後よりも著しく低く、非経口投与されて、したがって低pHのような要因に暴露されなかった。したがって、これらの2つの研究は、鼻ワクチン接種が、この特定のトキソイドに関しては経口ワクチン接種よりも良好な免疫応答を生じることを示す。それにもかかわらず、アラムベース及びFAA−1(n)ベースのトキソイドによるワクチン接種は、統計学的に有意な応答(>10AU/ml)を導いており、これは、ジフテリアのワクチン有効性に関する世界保健機構の国際要件を満たす(0.01AU/mlを超えるレベルは、WHOに従って人において防御的である)。
【0102】
6.結論
FAAは、溶液として鼻及び経口経路により投与され、この溶液は、内部にトキソイドが封入されたマイクロ粒子又はナノ粒子のいずれかを含有した。応答は、経口又は鼻研究のいずれにおいても、未負荷FAA−1(μ)又はFAA−1(n)に関しては観察されなかった。陽性対照であるPBA−DTによるワクチン接種後に、免疫応答は低く、設定される要件を満たさなかった。さらに、鼻研究における5匹のマウスのうち2匹のみ、及び経口研究における6匹のマウスのうち1匹のみが、PBS−DTによるワクチン接種後にいくらか免疫応答を示した。
【0103】
ワクチンの有効性を増強する際にアジュバントが果たす役割は、これらの研究により明確に説明される。アラムベースの非経口ワクチン接種は、文献で記載されるものと同様に、有意な全身免疫応答を生じた。同様に、FAA−1(μ)及びFAA−1(n)の両方が、鼻投与後に同程度で且つ統計学的に有意な全身免疫応答を示したのに対して、FAA−1(n)は、経口投与後に同程度で且つ統計学的に有意な全身免疫応答を示したが、FAA−1(μ)は示さなかった。
【0104】
これらの研究の結果により、本発明は、針及び注射物質を必要とすることなく、非経口経路に代わって、ワクチン接種に関して鼻投与経路の使用を可能にするはずであることが示唆される。したがって、本発明は、より安全で、より安価で且つより環境にやさしいワクチンに寄与する。
【実施例2】
【0105】
商業用ワクチンの有効性と比較したFAA−1ベースの狂犬病ワクチンの有効性の増強の確定
実施例1における動物研究により、本発明で記載される脂肪酸ベースのアジュバントFAA−1が、鼻及び経口投与後にジフテリアに対して、全身的に特異的な免疫応答(IgG抗体)を増強するのに有効であることが示された。FAA−1マイクロ粒子又はナノ粒子と結合したDTをワクチン接種したマウスは全て、ジフテリア毒素の影響に対して防御するのに十分な中和抗体を産生した。
【0106】
この実施例は、現在使用される市販の非経口ワクチンの有効性よりも高い有効性を有する狂犬病ワクチンの製剤に関する不活性化狂犬病ウイルスに対する免疫応答の増強に関する。非経口投与による狂犬病抗原の効率的な送達は、上記で示される狂犬病ワクチン製剤を使用して、動物研究で研究された。マウスに、不活性化狂犬病ウイルス(対照)若しくはFAA結合不活性化ウイルスを、腹腔内又は皮下のいずれかで注射して、攻撃させて、それらの生存を測定した。
【0107】
1.研究目的
これらの研究の主な目的は、非経口アジュバントとしての本発明の有効性の確定であった。上述の実施例1は、非経口投与に関する脂肪酸ベースのアジュバントの有効性に対応しなかった。これらの研究は、本発明によるアジュバントと商業的に使用されるアジュバントアラムとのアジュバント性の直接的な比較に関する。
【0108】
研究の第2の目的は、以下を包含した。
・実施例1は、モデル抗原を伴うモデルシステムについて記載してきた。この実施例では、研究される抗原は、商業用ワクチンの調製のために産業で使用されるものである。
・目的の1つは、研究1回当たりの動物の数を拡大させること、及び動物における有効性の観察される増強の再現性を確認することであった。
・投薬数が記載の発明で低減することができるかどうかを確定すること。
・脂肪酸ベースのアジュバント自体が免疫応答に寄与するかどうかを確定すること。
【0109】
2.研究の背景
狂犬病は、ヒト及び動物の両方に影響を及ぼす急性で進行性の不治のウイルス性脳炎である1〜3。原因因子は、宿主として肉食動物並びにコウモリ種を利用するリッサウイルス(Lyssavirus)属のラブドウイルス(Rhabdoviridade)科の神経向性RNAウイルスである。ウイルス伝播は、主に動物咬傷により起こり、いったんウイルスが末梢創傷で堆積されると、求心性継代が中枢神経系に向かって行われる。ウイルス複製後、主要な出口である唾液腺への遠心的な広がりが見られ、次の宿主の感染用の伝達経路を創出する1〜3
【0110】
医学的介入での継続した試みにもかかわらず、狂犬病は、最も高い致命率を伴う感染性疾患であるという疑わしい特質を保持する。少なくとも50000人の人々が、狂犬病により毎年亡くなっており、1千万を超える人々が、この疾患に対する暴露後ワクチン接種を受けており、その一方で25億を超える人々が、狂犬病が風土病である地域に居住している。風土病地域の幾つかが容易には到達可能ではないため、これらの数量は過少評価であり、過少報告を引き起こしている。
【0111】
初歩的な調査によると、15分毎に1人の人間が当該疾患により死亡しており、300人を超える他の人間が暴露される。狂犬病にかかった動物からのヒトの感染は、いったん疾患の症状が起きると、ほぼ常に命にかかわる。潜伏期間は、1〜3ヶ月を平均とするが、暴露後の疾患発生の日数又は年数は文書化されており、5〜15歳の年齢の子供は特に危険性がある。
【0112】
狂犬病は、南極大陸を除く全ての大陸で見出される。狂犬病によるヒトの死全ての99%超が、アジア、アフリカ及び南アメリカで起こり、インド単独では、毎年30000人の死亡が報告されている。世界規模の観点から、広範囲に及ぶ分布、公衆衛生関係、獣医学含意及び経済的負担を考慮すると、狂犬病は、最も重要なウイルスゾーノーシスである。WHOは、狂犬病が主な健康問題である地域社会における幼児及び児童の初期予防接種プログラムにおいて、最新の狂犬病ウイルスを組み込ませることの実現可能性及び影響に関する慎重に設計された研究を奨励する。
【0113】
最も効率的で且つコスト効率のよい制御方法は、ワクチン接種である。歴史的に、多くの狂犬病ワクチンは、感染脳組織に由来された。比較的な安価であるが、狂犬病ワクチンは、様々なレベルの有効性を有する。狂犬病ワクチンの効力及び安全性は、細胞培養増殖の開発に伴って過去20年間で大いに改善されている。それにもかかわらず、国によっては、唯一の入手可能なワクチンが、ヒツジ、ヤギ又は乳畜げっ歯類由来の神経組織起源であるところもある。
【0114】
WHOは、2006年までには発展途上国において細胞培養ワクチンで置き換えられるべきである未精製の神経組織ワクチンの完全な中止を是認している。これを可能にする唯一の方法は、国々が安価な高品質細胞培養ワクチンを入手することである。標準的な細胞培養ワクチン接種レジメン(例えば、Essenスケジュール)は、児童に関して三角筋で或いは大腿前部で、0日、3日、7日、14日及び28日に投与されるワクチンから構成される。典型的な内皮レジメン(8−0−4−0−1−1)は、0日目で8つの部位で、続いて7日目に4つの内皮接種で投与されるワクチン、及び28日目及び90日目に1つの部位でのワクチンから構成される。
【0115】
内皮暴露後予防に使用されるワクチンとしては、ヒト2倍体細胞ワクチン、ベロ細胞狂犬病ワクチン、精製ニワトリ胚細胞ワクチン及び精製アヒル胚細胞ワクチンが挙げられている。Aventis Pasteurに続いて、the South African Biovac Institute(BI)は、世界で2番目に狂犬病ウイルスをヒト2倍体細胞(HDC)で成長するように適応させた研究室である。HDCワクチンは、「判断基準」であるとみなされる。HDCワクチンは、患者において高い血清学的力価をもたらし、外来動物組織を含有せず、したがってより少ない悪影響を引き起こすが、生産するのに高価である。より高い有効性を伴うHDCワクチンは、コストが低減するであろう。HDC狂犬病ワクチンは、弱い抗原であり、それらの効力は、アジュバントの使用により増強され得る。ほとんどのヒト狂犬病ワクチンは、アジュバントともに配合されないが、RVA(リン酸アルミニウム上へ吸着された狂犬病ワクチン)が米国で利用可能である。しかしながら、アルミニウムアジュバント含有狂犬病ワクチンとアルミニウムアジュバント非含有狂犬病ワクチンとの効果を比較する動物での最近の研究は、アジュバントが存在することに利点はないことを示した。それにもかかわらず、適切なアジュバントに使用は、他の不活性化ウイルスワクチンに一般的に使用されるように、HDC狂犬病ワクチンの効力を増大させる最良の方法であり得る。予備研究では、本明細書中で記載される脂肪酸ベースのアジュバントが、HDC抗原を使用して、マウスにおける狂犬病に対して劇的に増強されるレベルの防御(非アジュバント化狂犬病ワクチンと比較して抗体力価の9倍増加)をもたらした。
【0116】
3.一般的な方法論
様々な比較in vitro研究及び動物研究が、不活性化狂犬病ウイルスの種々の製剤に関して着手された。in vitroアッセイは、熱により部分的に分解される狂犬病ワクチンの効力の減少を検出することが不可能であるため11、狂犬病ワクチン効力は、抗原含有量に基づくin vitro試験10ではなく、マウスにおける攻撃実験(NIH試験)の使用により確定した。不活性化狂犬病ワクチンの効力評価は、多くの研究の対象となっており、多様な結果を付与し、且つWHOにより現在承諾されている唯一の試験であるNIH効力試験が最も広く使用される12。この動物試験は、実施するのに30日かかり、試験及び参照抗原によるマウスの免疫化、続く狂犬病ワクチンの標準的な株による脳内攻撃を包含する。狂犬病ウイルスは、肺線維芽細胞中で培養された後、Dr Woolf Katzにより開発された新規手順に従って、the SA State Vaccine Instituteにより不活性化された。ウイルスの培養の手順は、本発明の一部を成さない。
【0117】
概して、不活性化狂犬病ウイルスを、2つのワクチンそれぞれで腹腔内又は皮下的に、マウスに注射した。リン酸緩衝液を注射した第3の群のマウスを対照として使用した。ワクチンそれぞれの6つの希釈(最大1:2500希釈)を、1日目にそれぞれ10匹のマウス(各ワクチンに関して総計60匹のマウス)に投与して、接種を15日目に繰り返した。さらに14日後、マウスを生狂犬病ウイルスの脳内注射により攻撃させた。マウイルスに対して耐性を有さないか、又は弱い免疫応答を有するマウスは、数日以内に死亡した。典型的な動物研究について以下説明する。
【0118】
3.1 サンプルの調製
ワクチンの1/20、1/100、1/500及び1/2500の段階希釈をほとんどの研究で使用して、ワクチンの効力を確定した。ワクチンの効力は、段階希釈それぞれで死に対して防御されたマウスの数に正比例する。3つの研究の結果は、以下に記載する研究の設計を導いた。この動物研究は、以下の群のマウスを含有した。
I.陽性対照1:標準的なワクチン:2つの(2)バイアル標準的ワクチンを水中で再構成させて(水にワクチンを供給)、上記希釈シリーズでPBS中で希釈させて、標準的なマウスワクチン接種手順通りに2度投与する。
II.試験ワクチン1:PBS中で希釈されるFAA−1:2つのバイアル標準的ワクチンをFAA−1中で再構成させて、上記希釈シリーズでPBS中で希釈させて、標準的なマウスワクチン接種手順通りに2度注射する。
III.試験ワクチン2:PBS中で希釈されるFAA−1:2つのバイアル標準的ワクチンをFAA−1中で再構成させて、上記希釈シリーズでPBS中で希釈させて、標準的なマウスワクチン接種手順通りに1度注射する。
IV.試験ワクチン3:標準的なワクチンの2つのバイアルをFAA−1中で再構成させて、上記希釈シリーズでFAA−1中で希釈させて、標準的なマウスワクチン接種手順通りに1度注射する。
V.陽性対照2:高い有効性を伴うアラムアジュバント化ワクチンは、上記希釈シリーズに従って希釈されるBIOVAC Instituteへ供給され、標準的なマウスワクチン接種手順通りに2度注射する。
VI〜VIII:ワクチン接種を施さない陰性対照群。
【0119】
3.2 ワクチン投与及び攻撃
マウスをケージ1つ当たり10匹のマウスの群に分けた。NIHの標準的な記載の狂犬病ワクチン試験手順及び表2に記述されるワクチン投与スケジュール通りに、1つの希釈のワクチン製剤の1つを各群に付与した。3つの群のマウスにはワクチン製剤を付与せず、14日目の攻撃ウイルス(CVS)の力価に関して、陰性対照として使用した。総計180匹のbalb/cマウスをこの研究で使用した。全ての群は、4つの段階希釈(それらそれぞれに関して、10匹のbalb/cマウスをワクチン接種及び攻撃する)に関してそれぞれ4つの亜群を、したがって1群当たり32匹のマウスを含有した。
【0120】
【表2】

【0121】
種々のワクチンの投与に続いて、NIH試験に従って、マウス全てにおいて生感染ウイルスCVSの適用可能な希釈で、2週後に生ウイルスを用いて脳内攻撃を行った。
【0122】
4.結果
NIH試験(BI)を使用したアジュバント製剤の相対効力の測定は、マウスの生存により確定される。以下の図4は、各群の4つの異なる段階希釈に関するマウスの生存を示す。
【0123】
群に関して確定される相対効力は、WHOの推奨に従ってIU/mlとして表され、図5に反映される。非ワクチン接種マウス及び乏しい免疫応答を有するマウスは6日以内に死亡した(小さいバーは、動物の群を示し、動物の生存は示さない)。現在のアルミニウムベースのワクチンを接種したマウスの大部分は死亡したのに対して、FAAベースのワクチンの最低希釈(1:2500)を付与したマウスはたった2匹が死亡した。実験は全て、WHOの指定に従って実施された(WHO. Rabies: Human Vaccines, (2004) [Web:] http://www.who.int/rabies/vaccines/human_vaccines/en [Date of use: 27 Jan 2004])。
【0124】
WHOは、狂犬病ワクチンに関して2.5IU/mlの相対効力を要する。
【0125】
5.結論
狂犬病ワクチン接種は、3つの主な問題を提示する:反復される投薬(5回)、非経口投与及びとりわけ細胞培養した高い有効性のワクチンの開発。本明細書中で記載される脂肪酸ベースのアジュバントは、細胞培養調製される抗原を使用して、有意に増大された免疫原性指数を伴うアジュバントを提供する。
【0126】
これまでの研究の結果及び本明細書で表される結果は、以下を示す。
a)HDC抗原を含有する試験ワクチンのうち、本明細書に記載される脂肪酸アジュバントを含有するもののみが、WHOにより設定される基準にかなった。
b)ワクチンのより高い免疫原性指数は、FAA−1で希釈されるFAA−1ベースの抗原を1度だけ付与して、依然としてマウスの最高の生存及び防御をもたらした群IVのマウスにより示されるように、より少ない接種を促進し得る。接種の数を減少させることにより、コストが制限され、使いやすさが増大する。
c)したがって、FAAベースのワクチンは、利用可能なワクチンよりもはるかに有効であり、固有の免疫賦活活性を示し、いったん動物がFAA−1及び抗原の第1の接種によりプライミングされると、抗原の非存在にもかかわらずブースターとして作用すると思われる。
d)FAAベースのワクチンは、有効性及び安全性に関して、この特定のワクチンに関する国際要件にかなう。FAAベースのワクチンは、水酸化アルミニウムベースのワクチンよりも平均7〜9倍有効である。
e)この研究は、再現可能であり、研究自体及び結果の統計学的有意性に関して確証された。非経口投与による抗原の効率的な送達は、狂犬病ワクチン製剤を使用して、類似した動物研究により確認された。
f)狂犬病ワクチンの有効性の増強におけるFAA自体の役割は、生理緩衝液で希釈したFAAベースの狂犬病ワクチンの有効性、及びFAAで希釈したFAAベースのワクチンの有効性を比較することにより確定された。結果により、FAAによる希釈は、激的にワクチンの有効性を増強し、あらためてFAAアジュバントが、固有の免疫賦活特性を有することが示される。
(g)亜酸化窒素の役割は、凍結乾燥及び再構成研究により示され、凍結乾燥に使用される真空下で、亜酸化窒素は全て除去される。FAAワクチンの再構成は、亜酸化窒素が存在しないワクチンを生じる。結果により、このワクチンの有効性は、アラムアジュバント化ワクチンの有効性と同様であるが、亜酸化窒素を含有するFAAベースのワクチンとほぼ同じように有効ではないことが示される。
h)ワクチン有効性の増強がFAAベースの製剤に含有される発熱物質に起因するという可能性は、凍結乾燥されたFAAベースの再構成狂犬病ワクチンがかかる増強を示さないという事実により同様に排除された。再構成ワクチンは、依然として発熱物質を含有するが、凍結乾燥プロセスに起因したFAA構造の変化が、ワクチン有効性の損失をもたらした。
【0127】
多様な治療群(arm)による類似した動物研究を4回繰り返した。配合されるアジュバントは、薬学的に安全であると認識されている構成成分を含有する。したがって、アジュバントと協調してこのヒト2倍体細胞(HDC)培養抗原又は他の抗原を使用して、高品質、低コストの免疫学的に有効な狂犬病ワクチンを開発する機会が存在する。このアジュバントを使用して、ワクチンの投与はまた、他の投与経路へ拡大されてもよく、概して言えば非経口経路の使用を排除する。
【実施例3】
【0128】
提唱されるB型肝炎ワクチン
推定4億人の人々が、B型肝炎ウイルス(HBV)に慢性的に感染している13。B型肝炎ウイルス(HBV)感染は、肝臓を感染させる小さいエンベロープを持つDNAウイルスにより引き起こされ、免疫媒介性肝細胞壊死及び炎症を引き起こす。感染は、急性又は慢性であり得る。臨床的重篤性は、(a)無症候性及び完全解消から(b)進行性、さらには致死的な病気を伴う症状又は(c)偶発的な劇症肝不全に及び得る。感染の経過は、宿主の免疫応答により確定されるようである。ほとんどの免疫正常成体では、急性感染は、急性肝炎、続くウイルスの迅速なクリアランス及び生涯免疫の発達を導く。しかしながら、感染が新生児期で或いは生後数年間に起きる場合、HBVによる感染は通常、永続的となる。慢性ウイルス肝炎感染は、肝硬変及び肝細胞癌のような重症な健康被害を引き起こす14。予防ワクチンは、免疫正常固体では感染を有効に防止する中和抗体の生成を可能にするはずである。本発明を動物研究で使用して、B型肝炎ワクチンの有効性を増強する際のFAAベースのアジュバントの適用性を確認した。
【0129】
B型肝炎の表面抗原(ペプチド)をFAA中に封入して、ペプチドを有するPBS(対照)、現在使用されるアラムベースのワクチン及びFAAベースのワクチンによる接種後に得られる特異的な抗体応答をアッセイすることにより、その有効性を測定した。接種の2週後に、マウス(10匹の動物/群)に第2の接種を付与した。2週後に、動物の尾から血液を得て、抗体の数を確定した。FAAベースのB型肝炎接種マウスから得られる抗体を、測定を可能にするために1:1に希釈した。以下の図6は、マウスにおけるB型肝炎に対する提唱されるFAAベースのワクチンの比較有効性を示す。図7は、ディバイダーとしてペプチド抗原単独で得られる結果を使用して、種々のワクチンの相対効率を示す。Rec FAAは、凍結乾燥及び再構成されたFAAベースの肝炎ワクチンである。
【0130】
したがって、結果により、FAA中でのペプチド抗原の封入は、アラムベースのワクチンに関して観察される増強の10倍を上回り、また任意のアジュバントなしの抗体の増強の250倍を上回るB型肝炎抗体産生の増強を導いたことが示される。提唱される狂犬病ワクチンの場合のように、再構築又は再構成FAAは、激的な増強を伴わないアラムベースのワクチンと類似した応答を示した。
【0131】
本発明の多くの変更は、それにより本発明の精神を逸脱することなく講じられ得る。
【0132】
参照文献:
1.WHO. Rabies: Epidemiology, (2004) [Web:] http://www.who.int/rabies/epidemiology/en/ [Date of use: 27 Jan 2004]
2.O'Hagen, D.T. Drug Targets Infect_Disord, 1(2001) 273-86
3.Rupprecht, CE, Hanlon, A,及びHemachudha, T. The Lancet; Infectious Diseases, 2 (2002) 101-9
4.Singh J, Jain DC, Bhatia R,他 Indian Pediatr 38 (2001) 1354-60
5.Meltzer MI, Rupprecht CE. Pharmacoeconomics 14 (1998) 365-83
6.Dreesen DW. Vaccine 15 (Suppl) (1997) s2-s6
7.Moingeon P, Haensler J, Lindberg A. Vaccine 19 (2001) 4363-4372
8.Lin H及びPerrin P. Zhonghua Shi Yan He Lin Chuang Bing Du Xue Za Zhi 13 (1999) 133-5
9.WHO Technical Report Series 658, Anne 2,「ヒト使用のための狂犬病ワクチンに関する要件(Requirements for rabies vaccine for human use)」. WHO, Geneva, 1981
10.Hulskotte EGJ, Dings MEM, Norley SG及びOsterhause ADME. Vaccine 15 (1997) 1839-1845
11.Madhusudana SN, Shamsundarb R 及びSeetharamanc S. Int. J. Infect. Dis. 8(2004) 21-25
12.Brarth R, Diderrich G及びWeinmann E.「NIH試験、不活性化狂犬病ワクチンの効率を試験するのに問題ある方法(NIH test, a problematic methods for testing potency of inactivated rabies vaccine)」. Vaccine, 1988, 6: 369-377
13.Vaccines and Biologicals.「WHOワクチン予防可能な疾患:モニタリングシステム(WHO vaccine-preventable diseases: monitoring system)」; 2002 global summary
14.Tiollais, P., Pourcel, C.及びDejean, A., 「B型肝炎ウイルス(The hepatitis B virus)」. Nature 1985. 317, pp. 489-495
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】4週及び6週後の血中に見出されるDTに対する中和抗体のIgG力価を示すグラフである。
【図2】アジュバントを伴うDT抗原の製剤に起因した特異的な抗体産生の増強を示すグラフである。
【図3】IgG応答の増強を示すグラフである。
【図4】NIH試験(BI)を使用したアジュバント製剤の相対効力の測定において、各群の4つの異なる段階希釈に関するマウスの生存を示すグラフである。
【図5】各群に関して確定されたワクチンの相対効力を示すグラフである。
【図6】マウスにおけるB型肝炎に対し提唱されたFAAベースのワクチンの比較有効性を示すグラフである。
【図7】ディバイダーとしてペプチド抗原単独で得られる結果を使用した種々のワクチンの相対的効力を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチン製剤において抗原に対する直接的又は続発的な免疫応答を増強する方法であって、亜酸化窒素ガス用の薬学的に許容されるキャリア溶媒中の亜酸化窒素ガスの溶液を含み、且つオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸[C20:5ω3]、ドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]、リシノール酸並びにそのC1〜C6アルキルエステル、そのグリセロール−ポリエチレングリコールエステル及び主としてリシノール酸ベースの油(例えば、ヒマシ油)から構成される水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物からなる群より選択されるその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の脂肪酸或いはそのエステル又は他の適切な誘導体を包含するアジュバントとともに、前記抗原を投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
抗原を含むワクチンとして使用するのに適した医薬製剤であって、亜酸化窒素ガス用の薬学的に許容されるキャリア溶媒中の亜酸化窒素ガスの溶液を含み、且つオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸[C20:5ω3]、ドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]、リシノール酸並びにそのC1〜C6アルキルエステル、そのグリセロール−ポリエチレングリコールエステル及び主としてリシノール酸ベースの油(例えば、ヒマシ油)から構成される水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物からなる群より選択されるその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの脂肪酸或いはそのエステル又は他の適切な誘導体を包含するアジュバントとともに処方されることを特徴とする医薬製剤。
【請求項3】
前記方法又は前記製剤において利用される前記抗原(複数可)が、ペプチド、不活性化ウイルス、不活性化細菌及びウイルス様粒子(VLP)から成る抗原の群より選択される請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記抗原が、カルメット・ゲラン杆菌、コレラ、ヘモフィルス属B型、髄膜炎菌、百日咳、肺炎球菌、破傷風、腸チフス、ジフテリア、A型肝炎、B型肝炎、ヒト乳頭腫ウイルス、インフルエンザ、麻疹、おたふく風邪、ポリオ、狂犬病、風疹、ダニ媒介脳炎、水痘及び黄熱病からなる群より選択される病気の原因因子、或いは作用因子による感染に対する免疫応答を誘発するのに適している請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記アジュバントが、前記キャリア媒質の他の構成成分の少なくとも1つに対するさらなる長鎖脂肪酸としてエイコサペンタエン酸[C20:5ω3]及び/又はドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]、或いはこれらの変異体を包含する請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記の主としてリシノール酸ベースの油から構成される水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物が、ヒマシ油から生産され、該ヒマシ油の脂肪酸含有量が主にリシノール酸から構成されていることが既知である請求項1に記載方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記の亜酸化窒素用のキャリア溶媒が、水並びに薬学的に許容されるアルコール、エーテル、油及びポリエチレングリコールを含むポリマーからなる群より選択される請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記油が、天然起源又は合成起源の油を包含し、且つ植物油及び動物油を包含する、脂肪酸中に炭素数14〜22を有する長鎖脂肪酸に基づく精油からなる群より選択される有機油である請求項5に記載の方法又は医薬製剤。
【請求項9】
前記溶液が、亜酸化窒素で飽和された水溶液であり、水が脱イオン化されており、且つ微生物及びエンドトキシンを含まないように精製されている請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記の抗原を含有する製剤が、経口投与用の液体(カプセル化液体を含む)形態であるか、或いは鼻又は気管支又は肺スプレー製剤であるか、或いは注射用製剤の形態であり、前記製剤が、前記投与媒質の一部として、前記亜酸化窒素が溶解される水又許容される他の液体及び脂肪酸を含有しており、該脂肪酸(複数可)又はそのエステル(複数可)が共に配合されることにより前記抗原と一緒に溶解又は懸濁又は乳化されている請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記の抗原を含有する製剤が、局所、口腔内、鼻又は膣用のクリーム、軟膏、スプレー、ローションとして、或いは坐剤として適用されることにより患者に投与されるように処方されており、かかるクリーム、軟膏、スプレー、ローション又は坐剤を構成する際に使用される製剤が、共に配合される前記抗原と一緒に、亜酸化窒素を含有し、好ましくは亜酸化窒素で飽和された或る量の水又は他の液体、前記長鎖脂肪酸(複数可)又はそのエステル(複数可)及び共に配合される前記抗原、並びにさらにかかる薬物形態を構成する際に薬学的に慣用されているさらなる賦形剤及びキャリアを含有している請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記の亜酸化窒素ガス用のキャリア溶媒が、本発明による代替的な製剤では、実質的に非水性であってもよく、且つ本製剤の一部とされるべきオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸[C20:5ω3]、ドコサヘキサエン酸[C22:6ω3]、リシノール酸並びにそのC1〜C6アルキルエステル、そのグリセロール−ポリエチレングリコールエステル及び主としてリシノール酸ベースの油から構成される水素化天然油とエチレンオキシドとの反応生成物からなる群より選択されるその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの脂肪酸或いはそのエステルから構成され得る。
【請求項13】
処方が、注射剤、軟膏、クリーム又はローションとして経皮投与に適するように構成されるているか、或いは前記製剤用のリザーバを提供する皮膚パッチの形態である請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記組成物の前記脂肪酸構成成分がビタミンFエチルエステルとして既知の複合体により構成される、請求項1に記載のワクチン製剤において抗原に対する直接的又は続発的な免疫応答を増強する方法又は請求項2に記載の抗原を含むワクチンとして使用するのに適した医薬製剤。
【請求項15】
前記製剤が、粘膜投与、特に鼻投与に適応されるように調製されている請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記製剤が、カルメット・ゲラン杆菌ワクチン、コレラワクチン、ヘモフィルス属B型複合ワクチン、髄膜炎菌多糖ワクチン、百日咳ワクチン、肺炎球菌多糖ワクチン、破傷風ワクチン、腸チフスワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、不活性化A型肝炎ワクチン、B型肝炎(ペプチド)、不活性化インフルエンザワクチン(全ビリオン)、不活性化インフルエンザワクチン(分割ビリオン)、不活性化インフルエンザワクチン(表面抗原)、麻疹(生)、おたふく風邪(生)、不活性化ポリオワクチン、ポリオワクチン(生)(経口)、狂犬病ワクチン、風疹ワクチン、ダニ媒介脳炎ワクチン(不活性化)、水痘ワクチン(生)、黄熱病ワクチン、ジフテリア/破傷風ワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳ワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(無細胞構成成分)ワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(無細胞構成成分)/ヘモフィルス属B型複合ワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(無細胞構成成分)/B型肝炎(ペプチド)ワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(無細胞構成成分)/不活性化ポリオワクチン、A型肝炎(不活性化)/B型肝炎(rDNA)ワクチン、麻疹/おたふく風邪/風疹ワクチン(生)からなる群より選択されるワクチンとして使用するのに適切なものにする1種以上の抗原を含む請求項2に記載の製剤を含むワクチン。
【請求項17】
実質的に本明細書中に記載されるように抗原に対する免疫応答を増強する方法。
【請求項18】
実質的に本明細書中に記載されるようにワクチンとして使用するのに適した医薬製剤。
【請求項19】
実質的に本明細書中に記載されるワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−528570(P2008−528570A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552795(P2007−552795)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050286
【国際公開番号】WO2006/079989
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(506061794)ノース−ウエスト ユニヴァーシティ (9)
【Fターム(参考)】