説明

ワックス状樹脂と木材チップを用いた舗装材

【課題】 歩道の表層を構成する舗装材であって、アスファルト舗装プラントでの混合温度及び施工温度の低減を図って冷却した際の収縮を抑制することが出来る舗装材の提供。
【解決手段】 骨材として木材チップ4と砂5を用い、接着材としてはプラスチック廃棄物を熱分解したワックス状樹脂6を使用したものであり、該ワックス状樹脂は廃棄されたポリエチレンやポリプロピレン等のパラフィン系樹脂を燃焼して溶融、低分子・低粘度化し、該ワックス状樹脂を410〜450℃の高温に所定時間保つことでその軟化点を降下させて70〜100℃としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨材として木材チップを、接着材としてワックス状樹脂を用いた舗装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を防止するための二酸化炭素の排出縮減は、国際的な緊急課題であり、その具体的解決策として石油資源のリサイクル推進、木材利用による炭素の固定化が上げられる。現状では、プラスチック廃棄物及び廃木材、間伐木くずは充分にリサイクルされているとはいえず、環境に悪影響を及ぼしている。現状では石油から造られるプラスチック廃棄物は、国内総排出量約1000万tの内、約500万tは単純焼却や埋立てで処理されて資源としては未利用状態で、大半は二酸化炭素の排出に繋がっている。
【0003】
また、再利用されているプラスチック廃棄物の中でも、マテリアル利用されているものは約160万tに過ぎず、他は熱利用であり、これもまた二酸化炭素を排出していることには変わりない。そして、木材利用においても、特に間伐材は約3割しか有効利用されていない。それどころか需要が少ないことが要因で未間伐の場所も多く、災害の激化にも影響を及ぼしている。
【0004】
ところで、現状の舗装材は、歩道舗装においてはアスファルト混合物がもっとも多く用いられているがアスファルトが石油製品であること、及び歩行時における足腰の負担が大きく、景観性にも乏しいなどの欠点があるほか昨今要請の強い排水性仕様の場合は、転んだ際に骨材が凶器となる危険性を孕む欠点がある。また、園路などには木材利用を図るため樹脂を接着材とした木材チップ舗装が用いられるようになってきたがコストが高い他、接着力が弱く耐久性に乏しい欠点がある。
【0005】
特開2002−129133号に係る「接着剤およびこれを含む組成物」は、安全で取り扱いが容易であり、被接着物が廃棄物となったときに再利用することができ、しかも安価な接着剤である。より具体的には、例えばゴムや各種プラスチック、砂利(砂や石)、木材、鉄等の金属、紙、繊維等の被接着物同士を接着するのに好適な接着剤、及びこれを含む組成物に関するものである。
【0006】
そこで、該接着剤を用いて木材チップを骨材とした舗装材を構成することが可能となる。しかし、該接着剤はその軟化点が約114.5℃と高く、木片チップに混入して舗装材として路面に敷設する場合、冷却するならば収縮して路面が凹凸化してしまう。
【特許文献1】特開2002−129133号に係る「接着剤およびこれを含む組成物」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の舗装材には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、骨材として廃木材チップや間伐木屑を使用すると共に、ワックス状樹脂を接着材として用い、アスファルト舗装プラントでの混合温度及び施工温度の低減を図って冷却した際の収縮を抑制することが出来る舗装材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の舗装材は、接着材にオレフィン系廃プラスチックを解重合・低粘度化して精製したワックス状樹脂を用い、骨材としては廃木材チップや間伐木屑などの木材チップ、及び砂を用いた舗装材の実用化の技術である。
従来から歩道舗装はアスファルト混合物(接着材:アスファルト、骨材:砂利)がもっとも多く用いられているが、次の課題がある。
(1)二酸化炭素の発生量を抑制するため、混合温度、施工温度の低減を図る。
(2)歩行中の足腰への負担を低減するため、衝撃吸収性を高める。
(3)景観性を高めるため骨材の色合いが出るようにする。
【0009】
そこで、本発明では次の解決手段を採用している。
(1)ポリエチレン、ポリプロピレン等オレフィン系廃プラの自己燃焼能力及び分子の結合エネルギーを活用し、一切の外部のエネルギー及び溶剤を加えることなく、解重合、低粘度化を図ったワックス状樹脂を精製する。原材料とワックス状樹脂の性状を把握し適正な材料選定を行い、本樹脂の軟化点調整を行い、これを接着材に用いて、アスファルトプラント混合所の混合温度、現場の施工温度の低減を図る。
(2)骨材としては木材チップを使用し、主として廃木材チップ及び間伐木屑を利用する。
(3)上記(1)の方法で精製したワックス状樹脂はアスファルトに比べ透明性があるため、適正な材料選定、配合を決定し接着材に用いて木の色合いを出す。
【発明の効果】
【0010】
ほんはつめいの舗装材は骨材として木材チップを、接着材としてワックス状樹脂を用いて構成したものであり、従来のアスファルト舗装と比較して次のような効果がある。
(1)環境への適合性
アスファルトは石油製品精製の過程で生じる残渣物を原料にしているが、それだけでは不足する為に需要に合わせて別途製造を行っており、当然のことながら製造過程で原油資源を消費している。また、石油コンビナートの近傍でしか製造することができないことから輸送にエネルギーが必要である。更に、性質上粘性が高いことから軟化点が44〜52℃と低いにも関わらず舗装プラントの混合所での混合温度は約150℃以上にもなり、施工温度も約140℃以上に及ぶ。必然的にこれらの温度を保つエネルギーが必要となる。
【0011】
これに対して本発明に係る舗装材では、その接着材であるワックス状樹脂は、廃プラスチックを原料とするため新規の原油資源の消費はない。また、樹脂の生活依存度が高水準に達した現在、原料の廃プラスチックは全国どこでも入手でき、精製に必要な装置も経済的でコンパクトであるためどこでも製造することができる。そのため輸送に必要なエネルギーも小さくて済む。(舗装プラントに設置すれば同エネルギーは必要ない。)さらに低粘度であるため、混合温度、施工温度を低くすることができる。木材の利用促進を図ることもできるなど様々な観点から優位性がある。
(2)優れた機能性
元来、アスファルト混合物は非透水性であったが、近年は透水性等の機能を持たせるため骨材を開粒配合にしたものが使用されるようになった。車道においては問題ないが、歩行者が利用する歩道においては転んだ際に骨材の角が凶器となり危険である。本発明の舗装材は保水性を持つが木材チップと砂を骨材にしているため、このような危険性はない。また、前者は衝撃吸収性に乏しく、足腰に負担がかかるが本発明の舗装材は歩行の際のたわみが大きくて衝撃吸収性に富み、負担を緩和する。その他、タール分を含むため黒が普通であるアスファルトに比べ、該舗装材は接着材として骨材を挟み込むと透明性があるため骨材の色合いを活かすことができ景観性にも優れている。
【実施例】
【0012】
図1は歩道断面を表しているが、同図に示すように歩道は表層1、路盤2、及び路床3で構成され、路盤2の材料は粒状の砂利が使用されて敷き詰められその厚さは10cm〜15cmで、その上に4cm〜6cm厚さの表層1が敷設される。本発明の舗装材はこの表層1を形成する。
【0013】
図2は上記表層1の断面拡大図であり、同図の4は木材チップ、5は砂、6はワックス状樹脂をそれぞれ表している。すなわち、表層1を形成する舗装材は骨材として木材チップ4及び砂5を使用し、接着材6としてワックス状樹脂6が使用されている。ここで、木材チップ4としては廃木材チップや間伐木屑が主として用いられ、焼却に基づく二酸化炭素の発生を防止することが出来る。
【0014】
本発明に係る舗装材を構成して接着材として機能するワックス状樹脂は、プラスチック廃棄物を解重合・低粘度すると共に、該ワックス状樹脂の軟化点を降下しなくてはならない。
(1)プラスチック廃棄物を解重合・低粘度化する方法
プラスチック廃棄物を熱分解してワックス状樹脂を精製することが出来るが、その装置の原理は、廃棄されたポリエチレンやポリプロピレン等のパラフィン系樹脂の自己燃焼性を用い、先ず燃焼用バスケットで燃焼させる。その燃焼熱により樹脂を溶融させて熱分解反応を生起させる。溶融、低分子・低粘度化した樹脂は直下の酸欠筒状部に滴状落下し、熱分解反応時に発生したエチレンガスは燃焼用バスケットに自然還流する。この原理により熱分解は継続して行われ、低分子・低粘度化した樹脂が貯留される。
【0015】
樹脂の回収率はプラスチック廃棄物の純度によるが、75〜90%の範囲である。ところで、低粘度化に適合した材料の選定も必要に応じて行われるが、架橋ポリエチレンの場合は、屋内用電線被覆管が屋外用より適しており、又無架橋ポリエチレン、ポリプロピレン等の材料も使用できる。
本発明ではプラスチック廃棄物を原材料にし、しかも上記方法にて解重合・低粘度化することで、次のような効果がある。
(a)原料に廃棄物を利用していることにより、石油化学製品のリサイクルを推進し、二酸化炭素の発生抑制に資することができる。
(b)低分子・低粘度化にあたりエネルギー、溶剤の添加を必要とせず、採取率も75〜90%であるため経済的で環境に良い。
(c)本装置は開放低温分解法であり爆発等の危険性が小さく、触媒槽以外メンテナンスの必要がない。また、原理が単純であるため一般の人でも操作でき汎用性が高い。
(d)排ガスの測定結果はダイオキシン類濃度、ばいじん濃度、塩化水素濃度等環境基準を下回り、大気汚染の心配はない。
以下の表はあるプラスチック廃棄物を解重合・低粘度化した性状及び元素の含有量を示している。

【0016】
(2)ワックス状樹脂の軟化点降下方法
(1)で精製したワックス状樹脂を接着材とし、廃木材チップを骨材として製造した舗装材は、樹脂の軟化点が高いことと木材チップの熱容量が小さいことから施工時に凝固が早く、締固めが難しい。そして温度収縮が大きく特に縦断勾配がある場合には同方向にひび割れを起こしやすい欠点があることを課題として、ワックス状樹脂の軟化点を降下させる必要がある。そこで約420℃の高温を保持すると次表の結果が得られる。

約420℃の高温で加熱することは、エネルギー効率が悪いように思われるが、(1)のワックス状樹脂を精製した過程で、約400℃の温度を持っており、その為にほとんど保温するだけで十分であり、(1)の過程で流失したガスを熱源に用いれば、ほとんど新たなエネルギーを消費することなく軟化点降下を実現することができる。
【0017】
以下の表は本発明の舗装材を構成する廃木チップと砂、及びワックス樹脂の配合比であり、その場合の密度、安定度、フロー値、損失率を示している。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】歩道の断面図。
【図2】本発明に係る舗装材。
【符号の説明】
【0019】
1 表層
2 路盤
3 路床
4 木材チップ
5 砂
6 ワックス状樹脂





【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装材の骨材を接着する為にプラスチック廃棄物を熱分解したワックス状樹脂において、廃棄されたポリエチレンやポリプロピレン等のパラフィン系樹脂を燃焼して溶融、低分子・低粘度化し、該ワックス状樹脂を410〜450℃の高温に所定時間保つことでその軟化点を降下させて70〜100℃としたことを特徴とする舗装材のワックス状樹脂。
【請求項2】
歩道の表層を構成する舗装材において、骨材として木材チップと砂を用い、接着材としてはプラスチック廃棄物を熱分解したワックス状樹脂を使用したものであり、該ワックス状樹脂は廃棄されたポリエチレンやポリプロピレン等のパラフィン系樹脂を燃焼して溶融、低分子・低粘度化し、該ワックス状樹脂を410〜450℃の高温に所定時間保つことでその軟化点を降下させて70〜100℃としたことを特徴とする舗装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−262852(P2007−262852A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92971(P2006−92971)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(506100897)日広開発株式会社 (3)
【Fターム(参考)】