説明

ワークの保管方法

【課題】既存の倉庫を活用してワークを保管できるとともに、保管作業における作業者の負担を軽減できるようにしたワークの保管方法を提供する。
【解決手段】ワークWを保管するにあたり、倉庫の床面11に複数の保管エリアを設定するとともに、複数の各保管エリアの上下方向には複数の段を上下方向に積み重ね可能なバケット30の高さに対応した高さに設定し、複数の保管エリアの各段には番地を付与する。バケットにワークを収容するとともに、制御装置上でバケットに管理番号を付与し、バケットの管理番号を保管すべき保管エリアの段の番地に対応させて記憶するとともに、制御装置によって倉庫の天井クレーンを制御し、バケットを上記天井クレーンによって対応する番地の保管エリアの段に移送し、バケットを床面上又はバケット上に降ろすことによってワークを保管する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークの保管方法に関し、特に既存の倉庫の設備を活用してワークを保管でき、しかも保管作業における作業者の負担を軽減できるようにした保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプや棒鋼などのワークを保管する場合、倉庫内に多段の棚設備を設置するとともにスタッカークレーンを設け、スタッカークレーンによってワークを棚に格納しあるいは棚から取出すようにした立体式自動倉庫が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
また、倉庫内の床面に複数の保管エリアを設定し、各保管エリアに同種のワークを載置して保管する一方、板材の特性をコンピュータに入力して特性に対応するバーコードを作成してワークに貼付け、バーコードの読取りによってワークの入出庫を管理するようにした保管方法が提案されている(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−35105号公報
【特許文献2】特開平05−170303号公報
【特許文献3】特開2005−170592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2記載の立体式自動倉庫では棚設備及びスタッカークレーンという専用の設備を設ける必要があり、設備コストが高くなる。
【0006】
他方、特許文献3記載の保管方法では既存の倉庫を活用できるものの、バーコードによってワークの入出庫を管理しているので、作業者が複数のエリアに保管されたワークの間を移動しながらバーコードを読み取るという作業を必要とし、作業者の負担が大きい。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、既存の倉庫を活用してワークを保管できるとともに、保管作業における作業者の負担を軽減できるようにしたワークの保管方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係るワークの保管方法は、ワークを保管するにあたり、倉庫の床面に複数の保管エリアを設定するとともに、複数の各保管エリアの上下方向には複数の段を上下方向に積み重ね可能なバケットの高さに対応した高さに設定し、複数の保管エリアの各段には番地を付与する一方、上記バケットにワークを収容するとともに、制御装置上で上記バケットに管理番号を付与し、上記制御装置上で上記バケットの管理番号を保管すべき保管エリアの段の番地に対応させて記憶するとともに、上記制御装置によって倉庫の天井クレーンを制御し、上記バケットを上記天井クレーンによって上記対応する番地の保管エリアの段に移送し、上記バケットを床面上又はバケット上に降ろすことによって上記ワークを保管するようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つは積重ね可能なバケットに制御装置上で管理番号を付与し、この管理番号と保管エリアの段の番地とを対応させて記憶し、制御装置によって天井クレーンを制御し、バケットを対応する番地の保管エリアの段に移送してワークを保管するようにした点にある。
【0010】
これにより、ワークの管理が制御装置上での管理番号によって全て行われるので、特許文献3記載の保管方法のようにバーコードを貼付けて管理する場合に比して作業者の負担を大幅に軽減できる。
【0011】
また、倉庫の床面に複数の保管エリアを設定するとともに、バケットを積み重ねて多段の棚設備を構成するようにしたので、既存の倉庫と天井クレーンを活用して立体式自動倉庫を構成することができ、特許文献1、2記載の立体式自動倉庫のように専用の棚設備及びスタッカークレーンを新設する必要がなく、設備のコスト高を招来することはない。
【0012】
ワークを取出す場合、制御装置においてバケットの管理番号を指定した時に、対応する保管エリアの段の番地を読出し、天井クレーンを制御して対応する番地の保管エリアの段に置かれたバケットを出庫エリアまで移送することによってワークを取り出すことができる。
【0013】
また、バケットを出庫エリアに移送する場合、移送するバケットの上に他のバケットが積み重ねられていることがあり、上方のバケットを移動させる必要がある。そこで、バケットを出庫エリアに移送するにあたり、取り出そうとするバケットの上方に積み重ねられたバケットを天井クレーンによって他の保管エリアの空の段に移送するとともに、上方のバケットの保管エリアの段の番地を移送先の保管エリアの段の番地に書き換えるようにするのがよい。
【0014】
保管したワークを取り出す場合、ワークの材質や寸法などの物性、入荷日時、その他の条件によって取り出すワークを指定することが多い。そこで、制御装置においてワークの情報をバケットの管理番号に対応して記憶し、取り出そうとするワークの情報を指定した時にバケットの管理番号が読み出されるように構成するのがよい。
【0015】
バケットは積み重ね可能で、天井クレーンによって吊り上げ可能となっていればどのような構造であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図10は本発明に係るワークの保管方法の好ましい実施形態を模式的に示す。図において、倉庫建屋10内の床面11は複数の保管エリア12が格子状に設定され、複数の各保管エリア12には複数の段が上下方向に後述のバケット30の高さに対応する高さに設定され、複数の各保管エリア12の各段には番地、例えば1−1−1〜1−1−n、1−2−1〜1−2−n、・・・2−6−1〜2−6−nまでの番地が付与され、又床面11にはフォークリフトの作業エリア(出庫エリア)13が設けられている。
【0017】
また、倉庫建屋10の天井には天井クレーン20が設置されている。この天井クレーン20において、建屋天井の両側には左右のガイドレール21がX軸方向に延びて配置されて天井の梁などに固定され、左右のガイドレール21の間にはガイドレール22がX軸に垂直なY軸方向に延びかつ両端のローラ22Aによって走行自在に支持され、ローラ22Aは駆動モータ22Bによって回転駆動されるようになっている。
【0018】
ガイドレール22には左右一対の巻上げ機23が相互に所定の間隔をあけかつローラ23Aによって走行自在に搭載され、ローラ23Aは駆動モータ23Bによって回転駆動されるようになっている。また、巻上げ機23には巻取りドラム23Cが設けられ、巻取りドラム23Cは駆動モータ23Fによって回転逆転されるようになっている。
【0019】
巻取りドラム23Cにはロープ23D(又はチェーン)が巻回され、ロープ23Dの先端にはフック23Eが固定され、フック23Eには吊り上げ治具40のチェーン40Aに引っ掛けられている。この吊り上げ治具40では四角形状のフレーム40Bの四隅にJ字状の係止アーム40Cを下方に向けて固定して構成され、係止アーム40Cにはバケット30の係止ロッド30Aが引っ掛けられるようになっている。
【0020】
さらに、巻上げ機23には逆U字状の揺止め具23Gが固定され、揺止め具2Gはロープ23Dの巻き上げ時に吊り上げ治具40のフレーム40Aと接して吊り上げ治具40の揺れを防止するようになっている。
【0021】
また、バケット30は図5及び図6に示されるように四角形状のフレーム30Bの上にП字状フレーム30Cを立設し、П字状フレーム30Cの両側上端部に係止ロッド30Aを外方に向けて固定し、係止ロッド30Aに位置決め片30Dを立設した上下に積み重ね可能な構造をなし、バケット30内には棒鋼(ワーク)Wが載置して収容されるようになっている。
【0022】
また、駆動モータ22B及び駆動モータ23B、23Fはコンピュータ(制御装置)50によって駆動を制御され、特に左右の駆動モータ23B、23Fは各々同期して駆動されるようになっている。
【0023】
次に、図10を参照しつつ保管方法について説明する。棒鋼Wを保管する場合、バケット30に棒鋼Wを収容し、例えばフォークリフトのフォークでバケット30を持ち上げて倉庫建屋10内まで走行し、フォークリフトの作業エリア13まで運ぶ。このとき、棒鋼Wの特性、例えば外径、長さ、組成、熱処理の条件などをコンピュータ50に入力しておく。
【0024】
次に、コンピュータ50に棒鋼Wの保管の指示を与えると(ステップS11)、天井クレーン20がフォークリフトの作業エリア13上まで走行して吊り上げ治具40を降下させ、吊り上げ治具40がX方向及びY方向に移動し、吊り上げ治具40の係止アーム40Cをバケット30の係止ロッド30Aの位置よりも少し下方まで降下させた後、係止アーム40Cのフック部分の直上に係止ロッド30Aを位置させ、吊り上げ治具40を上昇させると、係止アーム40Cを係止ロッド30Aに引っ掛けることができ、こうしてバケット30を吊り上げ治具40にセットすることができる。
【0025】
バケット30を吊り上げ治具40にセットできると、コンピュータ50が天井クレーン20を駆動制御し、吊り上げ治具40が上昇してバケット30が吊り上げられる。
【0026】
その後、コンピュータ50では保管エリア12の空の段が判別され、天井クレーン20は複数の保管エリア12のうち、空の段のある保管エリア12の上まで走行して停止し、吊り上げ治具40が降下され、バケット30が保管エリア12の空の段である床面11又はバケット30上に載置される。
【0027】
バケット30が載置された後も吊り上げ治具40を少し降下させ、水平方向に移動させると、係止アーム40Cをバケット30の係止ロッド30Aから外すことができるので、吊り上げ治具40を上昇させると、棒鋼Wをバケット30に収納した状態で保管エリア12の空の段に保管することができる(ステップS12〜ステップS14)。
【0028】
このとき、コンピュータ50内では搬入したバケット30に管理番号、例えばNo.1、No.2、No.3などが自動的に付与され、管理番号と保管エリア12の段の番地とが例えば図8に示されるように対応して記憶される。また、コンピュータ50内では図9に示されるように、バケット30の管理番号と棒鋼Wの特性とが対応して記憶される(ステップS15)。
【0029】
また、保管エリア12の段に一旦載置したバケット30を、何らかの理由で異なる番地の保管エリア12に移動させた場合、コンピュータ50ではバケット30の管理番号に対する保管エリア12の段の番地が更新されるので、棒鋼Wの保管エリア12を見失うことはなく、確実に管理できる。
【0030】
他方、ある特性の棒鋼Wを取り出す場合、コンピュータ50に指示を与え、図9に示されるバケット30の管理番号と棒鋼Wの特性との対応関係をディスプレイに表示し(あるいはプリントアウトし)、その対応関係から、取り出そうとする棒鋼Wの収容したバケット30の管理番号をコンピュータ50に入力するとともに、棒鋼Wの取り出しを指示すると(ステップS10〜ステップS12)、コンピュータ50では入力されたバケット30の管理番号からバケット30が載置されている保管エリア12の段の番地が読み出され、天井クレーン20が読み出された番地の保管エリア12の上方まで走行して停止する(ステップS16、ステップS21)。
【0031】
次に、天井クレーン20の吊り上げ治具40が降下するとともに、吊り上げ治具40がX方向及びY方向に移動され、吊り上げ治具40の係止アーム40Cがバケット30の係止ロッド30Aの直下方に来ると、吊り上げ治具40が上昇し、係止アーム40Cでバケット30の係止ロッド30Aを引っ掛けることができ、こうしてバケット30を吊り上げ治具40にセットすることができるので、コンピュータ50にバケット30の搬出の指示を与えると、吊り上げ治具40が上昇してバケット30を吊り上げる。
【0032】
その後、天井クレーン20はフォークリフトの作業エリア13の上まで走行して停止すると、吊り上げ治具40が降下してバケット30が作業エリア13に載置されるので(ステップS22)、係止アーム40Cを係止ロッド30Aから外して吊り上げ治具40を上昇させた後、フォークリフトのフォークでバケット30を持ち上げ、棒鋼Wを必要としている設備まで運搬することができる。
【0033】
取り出すべきバケット30の上に他のバケット30が積み重ねられている場合、上方のバケット30を移動させる必要がある。この場合、コンピュータ50では取り出すべきバケット30の上方に他のバケット30が積み重ねられていることが自動的に判別され、天井クレーン20の駆動が制御され、上方のバケット30が吊り上げられて他の保管エリア12の空の段に移動され(ステップS16〜ステップS18)、又上方のバケット30の保管エリア12の段の番地は移動先の保管エリア12の段の番地に更新される(ステップS19)。
【0034】
上方のバケット30が全て移動されると、取り出すべきバケット30が最も上になるので、後は上述のように天井クレーン20を駆動制御してバケット30をフォークリフトの作業エリア13に移送すればよい。
【0035】
なお、上記の例では棒鋼Wを保管する場合について説明したが、ワークの種類は特に限定されず、どのようなワークの保管にも適用できる。また、バケット30の構造は上記の例に限定されず、ワークを収容できるものであればどのような形状のもの、例えばボックス形状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るワークの保管方法の好ましい実施形態に用いる設備の例を模式的に示す図である。
【図2】上記設備においてバケットを吊り上げ治具にセットした状態を示す図である。
【図3】上記設備における吊り上げ治具を示す概略斜視図である。
【図4】上記設備におけるバケットを示す概略斜視図である。
【図5】上記実施形態におけるバケットを積み重ねた状態を示す側面図である。
【図6】上記実施形態におけるバケットを積み重ねた状態を示す正面図である。
【図7】上記実施形態におけるコンピュータと駆動モータとの関係を模式的に示す図である。
【図8】上記実施形態における倉庫建屋内の保管エリア及びフォークリフトの作業エリアを模式的に示す図である。
【図9】上記実施形態におけるバケットの管理番号と棒鋼の特性との対応関係の例を示す図である。
【図10】上記実施形態におけるコンピュータの処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 倉庫建屋
11 床面
12 保管エリア
13 フォークリフトの作業領域(出庫エリア)
20 天井クレーン
23E フック
30 バケット
40 吊り上げ治具
50 コンピュータ(制御装置)
W 棒鋼(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保管するにあたり、
倉庫の床面に複数の保管エリアを設定するとともに、複数の各保管エリアの上下方向には複数の段を上下方向に積み重ね可能なバケットの高さに対応した高さに設定し、複数の保管エリアの各段には番地を付与する一方、
上記バケットにワークを収容するとともに、制御装置上で上記バケットに管理番号を付与し、
上記制御装置上で上記バケットの管理番号を保管すべき保管エリアの段の番地に対応させて記憶するとともに、上記制御装置によって倉庫の天井クレーンを制御し、上記バケットを上記天井クレーンによって上記対応する番地の保管エリアの段に移送し、上記バケットを床面上又はバケット上に降ろすことによって上記ワークを保管するようにしたことを特徴とするワークの保管方法。
【請求項2】
上記制御装置において取り出そうとするバケットの管理番号が指定された時に、対応する保管エリアの段の番地を読み出し、上記天井クレーンを制御し、対応する番地の保管エリアの段に置かれたバケットを出庫エリアに移送するようにした請求項1記載のワークの保管方法。
【請求項3】
上記バケットを出庫エリアに移送するにあたり、取り出そうとする上記バケットの上方に積み重ねられたバケットを天井クレーンによって他の保管エリアの空の段に移送するとともに、上記上方のバケットの保管エリアの段の番地を上記移送先の保管エリアの段の番地に書き換えるようにした請求項2記載のワークの保管方法。
【請求項4】
上記制御装置においてワークの情報をバケットの管理番号に対応して記憶し、取り出そうとするワークの情報を指定した時に上記バケットの管理番号が読み出されるようにした請求項2記載のワークの保管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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